JPH10214587A - 立体観察用走査透過電子顕微鏡及び立体画像形成システム - Google Patents

立体観察用走査透過電子顕微鏡及び立体画像形成システム

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JPH10214587A
JPH10214587A JP1667697A JP1667697A JPH10214587A JP H10214587 A JPH10214587 A JP H10214587A JP 1667697 A JP1667697 A JP 1667697A JP 1667697 A JP1667697 A JP 1667697A JP H10214587 A JPH10214587 A JP H10214587A
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electron
sample
scanning
incident
coil
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JP1667697A
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Inventor
Hiroshi Kakibayashi
博司 柿林
Kuniyasu Nakamura
邦康 中村
Ruriko Tokida
るり子 常田
Masanari Takaguchi
雅成 高口
Sakae Saito
栄 斎藤
Mikio Ichihashi
幹雄 市橋
Shigeto Isagozawa
成人 砂子沢
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Hitachi Ltd
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Hitachi Ltd
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Abstract

(57)【要約】 【課題】試料傾斜を行なわずに種々の方向から試料を観
察できる電子顕微鏡光学系を構成することによって、試
料の立体像を高精度で、簡便にかつ短時間で観察するこ
とが可能な立体観察用走査透過電子顕微鏡装置を提供す
る。 【解決手段】電子銃1と照射・対物レンズ2と入射電子用
走査コイル3と入射電子用偏向コイル11と電子検出器か
ら成る電子光学系を2式設置し、かつ該2式の電子光学系
の光軸が試料位置で直交するように配置する。また、前
記2式の電子光学系には、各々に試料10と電子検出器の
間に配置された散乱電子用偏向コイル12を具備させる。 【効果】立体化画像処理に必要な全ての電子顕微鏡像
を、試料の傾斜,及び観察視野ずれや焦点外れの補正操
作をせずに、簡便にかつ短時間で撮影、記録することが
可能となる。これによって観察に要する時間を、従来技
術の100分の1以下にすることができる。更に、観察方向
の設定精度が従来技術より1桁以上高いため、立体像の
再構成精度を10%以上改善することも可能となる。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、電子デバイスや材
料中の微細パターン形状、析出物、不純物、欠陥などを
立体的に観察することに好適な電子顕微鏡に関する。
【0002】
【従来の技術】従来の立体観察用走査透過電子顕微鏡は
図4に示す構成になっている。電子銃1、照射・対物レ
ンズ2、入射電子用走査コイル3、試料ステージ4、試
料ステージ駆動系5、電子−光変換用のシンチレータ6
とライトガイド7と光電子増倍管8からなる電子検出
器、画像処理系と制御系を含む制御ユニット9から構成
されている。
【0003】電子銃1から放出された100〜300keVに加
速された電子線は、照射・対物レンズ2によって収束さ
れ、太さが数nm以下の入射電子線となって試料10に照
射される。試料10に入射した電子は、試料10を構成
する原子によって散乱された散乱電子となって、ドーナ
ツ形のシンチレータ6に到達する。前記散乱電子はシン
チレータ6内で光子に変換され、ライトガイド7を伝っ
た後に光電子増倍管8内で増幅され、電気信号として出
力される。該出力信号を入射電子用走査コイル3による
入射電子線の試料上における走査と同期して制御ユニッ
ト9のモニタ上に輝度変調表示すれば、試料の内部構造
を反映した散乱電子コントラストを有する電子顕微鏡像
が観察される。
【0004】前記散乱電子コントラストは、結像に用い
られる散乱電子の散乱角度範囲によって変化する。該散
乱角度範囲は、ドーナツ形のシンチレータ6の内外径と
試料10からの距離(カメラ長)によって決まる。散乱角
がおよそ50mradから200mradの時(例えばカメラ長
が50mm、シンチレータの内径が5mm、外径が20mmに
相当)に、立体観察に適した散乱電子コントラスト(厚さ
と原子番号に依存)が得られる。
【0005】立体観察は、図5に示す手順で行なわれ
る。先ず、観察用試料を試料ステージ4に含まれる試料
ホルダにセットする。次に、該試料ホルダを電子顕微鏡
の試料室に挿入する。制御ユニット9を用いて電子線加
速電圧、入射電子線の直径や電流などの電子線照射条件
および像倍率、焦点、非点などの結像条件を設定した後
に、試料ステージ4と試料ステージ駆動系5のθ傾斜機
構を用いて試料ステージ4上の試料ホルダを所望の角度
に傾斜する。
【0006】次に、試料ステージ4と試料ステージ駆動
系5のX,Y微動機構を用いて、試料中の立体観察する
視野を制御ユニット9のモニタ上の撮影画面中央に移動
する。更に、試料ステージ4と試料ステージ駆動系5の
Z微動機構を用いて、像の焦点を調整する。
【0007】ここで最初の試料傾斜角度θ1における電
子顕微鏡像を撮影、記録する。試料の傾斜角度ステップ
Δθを例えば2°、傾斜角度範囲を例えばθ1=−50
°からθn=+50°までとして、試料傾斜から撮影、
記録までの操作をn回繰り返す(前記の角度条件ではn=
51回繰り返す)。前記操作によって記録されたn枚の
画像データを、制御ユニット9の画像処理系に搭載され
た3次元再構成ソフト(一般にはフィルター補正逆投影
法)を用いて立体化画像処理し、得られた立体像が制御
ユニット9のモニタ上に表示される。
【0008】このような従来の立体観察用走査透過電子
顕微鏡に関連するものとして、例えば特開平4−337
236号公報が知られている。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】上記従来技術では、立
体化画像処理に必要な様々な方向から試料を観察した電
子顕微鏡像を、試料を傾斜して観察することによって得
ている。該試料傾斜の操作は、観察中の電子顕微鏡像に
様々な障害をもたらす。
【0010】先ず、傾斜に伴って試料位置が変化するた
め、観察視野が電子顕微鏡の光軸からずれてしまい、像
表示モニタから該観察視野が失われてしまう場合があ
る。観察視野を像表示モニタ上に戻すためには、試料傾
斜後に試料ステージ駆動系5のX,Y微動機構を用いて
試料ステージ4を移動させ失われた観察視野を探すか、
試料傾斜中における像表示モニタ上の観察視野のずれ方
向を確認しておき、前記X,Y微動機構を用いて前記観
察視野のずれ方向とは逆方向に試料を移動させ、試料傾
斜中でも像表示モニタ上から観察視野が失われないよう
にする必要がある。 傾斜に伴う試料位置の変化は、
X,Y方向のみならずZ方向にも発生する。該Z方向の
位置変化は、像の焦点位置からの外れ、すなわち像のボ
ケをもたらす。像の焦点を合わせるために、照射・対物
レンズ2の励磁電流を調整しても良いが、Z方向の位置
変化が大きいと前記励磁電流の調整幅も大きくなるた
め、像倍率が変化してしまう問題が生ずる。
【0011】従って、試料ステージ駆動系5のZ微動機
構を用いてZ方向の位置変化を補正することが必須であ
る。上記の視野ずれおよび焦点外れ補正は自動化する技
術が確立されていないため、観察者がマニュアルで試料
ステージ駆動系5を制御する必要がある。しかも試料傾
斜毎に数十回も前記補正を繰り返さなければならないの
で、多大な労力と時間を要する。
【0012】試料傾斜に伴う別な障害として、立体化画
像処理の精度を低下させるという問題がある。立体化画
像処理において、試料の傾斜角度は立体化の精度を決め
る重要なパラメータとなるため、設定した傾斜角度と実
際の傾斜角度が正確に一致していることが必須条件とな
る。もし、両者の角度がずれていれば、立体化画像処理
によって構築された立体像には、傾斜角度の誤差による
アーティファクト(偽像)が発生し、実際の立体像との
一致精度が悪くなる。
【0013】従って、試料ステージ4の傾斜軸は振れや
軸ずれが全く無い高精度な角度制御ができることが重要
である。しかしながら、試料ステージ4や試料ステージ
駆動系5の加工精度や動作中の摩擦、バックラッシュ等
により、傾斜軸の振れや軸ずれは必ず発生するため、傾
斜角度精度を0.1°以下にすることは困難であり、立体
像の精度が10%以上低下することは避けられない。
【0014】本発明の目的は、試料の傾斜を行なわずに
種々の方向から試料を観察できる電子顕微鏡光学系を構
成することによって、試料の立体像を高精度で、簡便に
かつ短時間で観察することが可能な立体観察用走査透過
電子顕微鏡装置を提供することである。
【0015】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成するため
に、電子銃と照射・対物レンズと入射電子用走査コイル
と入射電子用偏向コイルと電子検出器から成る電子光学
系を2式設置し、かつ該2式の電子光学系の光軸が試料
位置で直交するように配置する。また、前記2式の電子
光学系には、各々に試料と電子検出器の間に配置された
散乱電子用偏向コイルを具備させる。
【0016】すなわち、本発明の請求項1に記載の第1
の発明は、加速した電子線を収束して試料に照射するた
めの電子銃および照射・対物レンズ、前記電子線を試料
上で走査するための入射電子用走査コイル、前記電子線
の試料への照射角度を変化させるための入射電子用偏向
コイル、試料内で散乱した散乱電子を検出する電子検出
器、検出された電子強度の画像化や画像処理を行なうた
めの画像処理系、および電子銃、レンズ、走査・偏向コ
イル、試料ステージなどを制御するための制御系を備
え、かつ前記電子銃および照射・対物レンズと前記入射
電子用走査コイルと前記入射電子用偏向コイルと前記電
子検出器から成る電子光学系は2式具備され、かつ該2
式の電子光学系の光軸が試料位置で互いに直交するよう
に配置されてなる立体観察用走査透過電子顕微鏡であ
る。
【0017】また、請求項2に記載の第2の発明は、請
求項1記載の立体観察用走査透過電子顕微鏡において、
前記2式の電子光学系が、各々に試料と電子検出器の間
に配置された散乱電子用偏向コイルを具備するものであ
る。
【0018】また、請求項3に記載の第3の発明は、請
求項1または請求項2記載の立体観察用走査透過電子顕
微鏡において、前記2式の電子光学系の各々が、散乱電
子用偏向コイルと電子検出器の間に配置された散乱角制
限絞りを具備するものである。 また、請求項4に記載
の第4の発明は、請求項3記載の立体観察用走査透過電
子顕微鏡において、前記散乱角制限絞りが、ドーナツ形
開口部からなるものである。
【0019】また、請求項5に記載の第5の発明は、請
求項4記載の立体観察用走査透過電子顕微鏡において、
前記散乱角制限絞りが、異なる内外径寸法を有する複数
種類の前記ドーナツ形開口部からなるものである。
【0020】また、請求項6に記載の第6の発明は、加
速した電子線を収束して試料に照射するための電子銃お
よび照射・対物レンズ、前記電子線を試料上で走査する
ための入射電子用走査コイル、前記電子線の試料への照
射角度を変化させるための入射電子用偏向コイル、試料
内で散乱した散乱電子を検出する電子検出器、検出され
た電子強度の画像化や画像処理を行なうための画像処理
系、および電子銃、レンズ、走査・偏向コイル、試料ス
テージなどを制御するための制御系を有し、かつ前記電
子銃および照射・対物レンズと前記入射電子用走査コイ
ルと前記入射電子用偏向コイルと前記電子検出器から成
る電子光学系については2式備え、かつ該2式の電子光
学系の光軸が試料位置で該試料の垂線に対しそれぞれ−
45°,45°をなすように配置されてなる立体観察用
走査透過電子顕微鏡を具備し、前記2式の電子光学系に
よる電子線照射角度をそれぞれ試料表面上の垂線に対し
−45°+αと45°+αとに設定して撮像した電子顕
微鏡像及び前記2式の電子光学系による電子線照射角度
をそれぞれ試料表面上の垂線に対し−45°−αと45
°−αとなるように設定して撮像した電子顕微鏡像の、
計4つの観察方向における電子顕微鏡像を基に立体像を
再構築するよう構成された立体画像形成システムであ
る。
【0021】また、請求項7に記載の第7の発明は、請
求項6記載の立体画像形成システムにおいて前記αを1.
3°〜2.6°の範囲内に設定するものである。
【0022】
【発明の実施の形態】先ず、本発明の第1の実施の形態
について図1及び2を用いて説明する。図1は本発明の
第1の実施形態で用いる立体観察用走査透過電子顕微鏡
の構成図である。図4に示した構成との違いは、電子銃
1と照射・対物レンズ2と入射電子用走査コイル3と電
子検出器(電子−光変換用のシンチレータ6とライトガ
イド7と光電子増倍管8から成る)から成る電子光学系
を2式具備し、かつ該2式の電子光学系の光軸が試料位
置で直交するように配置されていることである。また、
前記2式の電子光学系は、各々に入射電子用偏向コイル
11(照射・対物レンズ2と試料10の間に配置)と散乱
電子用偏向コイル12(試料10と電子検出器の間に配
置)を具備していることである。
【0023】上記以外の装置構成や制御ユニット9によ
る制御内容等は図4の場合と同様である。前記入射電子
用偏向コイル11及び散乱電子用偏向コイル12は、X
及びY方向偏向用の偏向コイルの組が2段重ねられてお
り、前段偏向コイルで曲げられた電子線を後段偏向コイ
ルで振り戻すことができる。従って、先ず、入射電子用
偏向コイル11では、前、後段偏向コイルに印加する電
流を制御ユニット9を用いて調整することにより、試料
10に入射する電子線の角度を光軸からαだけ傾けるこ
とができる(図1で試料10の上側に破線で示した電子
線経路)。
【0024】一方、散乱電子用偏向コイル12では、前
記入射電子用偏向コイル11と同様の操作により、試料
から散乱角度0°で放出された電子線を光軸上すなわち
ドーナツ形シンチレータ6の中央に振り戻すことができ
る(図1で試料10の下側に破線で示した電子線経路)。
これによって、入射電子線の角度を光軸に対して±αの
範囲で変化させることと、電子検出器で検出される散乱
電子の散乱角度を入射電子線の角度に依らず一定に保つ
ことが同時に可能となる。
【0025】従って、図4において試料10を角度±α
の範囲で傾斜した場合と同様の像観察が達成できる。図
1に示した構成では、上記の光学系2式を、それらの光
軸が試料10の位置で直交するように配置しているの
で、実質的には図4において試料10を角度−45°±α
および角度+45°±αの範囲で傾斜した場合と等価であ
る。
【0026】本発明における立体化画像処理の3次元再
構成ソフトとしては、上記構成に適した代数的方法(詳
細については、例えば、電子通信学会論文誌’84/1
Vol.J67−D No.1 PP. 41-48 に記述されている)を用い
る。図4の構成に対して一般に用いられているフィルタ
ー補正逆投影法は、基本的には試料を全方向から観察し
た投影像を逆投影して立体像を構築するものであるた
め、試料傾斜の角度範囲は極力大きく、かつ傾斜角度ス
テップは極力小さい方が画像立体化精度を向上できるも
のであった。
【0027】これに対して前記代数的方法は、以下のよ
うにして立体像を構築する。立体構造は、スライスを積
み重ねたものと見做す。そこで、このスライスをM個の
標本点から作られるm次元ベクトルfによって定義し、
このスライスの投影デ−タをN個の標本点から作られる
n次元ベクトルgによって定義する。両者の関係は投影
システム[A]によって、g=[A]fと書ける。この
関係式を基に、gからfを求める。このfを全スライス
について求め、積み重ねると立体像が得られる。
[A]は観察方向の数や電子顕微鏡像をAD変換したと
きの画素数などに依存する行列式であるが、観察方向の
数が4である時に最も解の収束性が良いことが分かって
いる。前記4方向は電子顕微鏡像の画素数に依存し、例
えば、2048画素では試料表面の垂線に対する角度が−45
°±1.3°および+45°±1.3°の4種類、1024画素では
−45°±1.9°および+45°±1.9°の4種類、512画素
では−45°±2.6°および+45°±2.6°の4種類であ
る。前記角度は図1で示したαを±1.3°,±1.9°およ
び±2.6°に選択することにより全て設定できる。ま
た、これらの角度は、入射電子用偏向コイル11の性能
で十分に達成可能な角度範囲にある。このように前記代
数的方法は前記フィルター補正逆投影法と比較して観察
方向の数が少ないという長所がある。
【0028】上記の装置構成によって達成される本実施
の形態の特徴は、従来技術の立体観察において、試料を
種々の方向から観察するために必須であった試料を傾斜
することを必要としないことである。従って、従来技術
において、試料傾斜に伴い発生していた障害、すなわ
ち、観察視野ずれ及び焦点外れが解消されるため、試料
傾斜毎に行なっていた前記観察視野ずれ及び焦点外れの
補正操作が全く不要となる。
【0029】当然の如く、試料ステージ4および試料ス
テージ駆動系5において、θ傾斜機構が不要となるた
め、前記試料ステージ4および試料ステージ駆動系5の
機構の簡略化とコスト低減も図れる。また、入射電子用
偏向コイル11によって曲げられる入射電子線の角度誤
差は、大きく見積もっても0.01°以下であり、図4の構
成において試料傾斜軸振れや軸ずれによって低下してい
た立体化画像処理後の立体像の精度を10%以上改善でき
る。
【0030】次に、本実施の形態における立体観察の手
順を図2を用いて説明する。試料10を試料ホルダにセ
ットする操作から電子顕微鏡の電子線照射及び結像条件
を設定する操作までは、従来技術と同様である。但し、
この時観察される電子顕微鏡像は、図1に示した2式の
光学系によって90°異なる方向から試料10を観察した
2つの像であり、該2つの像が制御ユニット9の2つの
モニタ上に各々表示される。
【0031】次に、試料ステージ4及び試料ステージ駆
動系5のX,Y駆動機構を制御ユニット9により制御し
て、試料中の立体観察しようとする観察視野を制御ユニ
ット9のモニタ上の撮影画面の中央に移動させる。次
に、前述の如く電子線照射角度(光軸に対する入射電子
線の角度),+αを撮影する電子顕微鏡像の画素数に応
じて設定し、電子顕微鏡像を撮影する。ここで撮影され
る像の観察方向は、試料表面の垂線に対する角度が−45
°+αと+45°+αの2方向である。
【0032】次に、上記と同様にして電子線照射角度を
−αに設定し電子顕微鏡像を撮影する。ここで撮影され
る像の観察方向は、試料表面の垂線に対する角度が−45
°−αと+45°−αの2方向である。以上の操作で4つ
の観察方向からの像撮影が終了する。
【0033】上記のように、本実施の形態によれば、立
体化画像処理に必要な全ての電子顕微鏡像を、試料を傾
斜することなく、かつ観察視野ずれや焦点外れの補正操
作をすることなく、簡便にかつ短時間で撮影,記録する
ことが可能となった。これによって観察に要する時間
を、従来技術の100分の1以下にすることができた。
更に、観察方向の設定精度が従来技術より1桁以上高い
ため、立体像の再構成精度を10%以上改善することも
可能となった。
【0034】次に、本発明の第2の実施の形態につい
て、図3を用いて説明する。図3はこの実施の形態で用
いる立体観察用走査透過電子顕微鏡の構成図である。図
1に示した本発明の第1の実施の形態の構成との違い
は、散乱電子用偏向コイル12と電子検出器14の間に
散乱角制限絞り13が具備されていることと、電子検出
器14として、従来技術や本発明の第1の実施の形態で
用いたタイプに加え、撮像装置を用いることもできる。
【0035】散乱角制限絞り13は、結像に用いられる
散乱電子の散乱角度の上限及び下限を設定するものであ
る。厚さ十〜数百μmの薄板(材料は例えばMo)に、複数
個の開口部を配列したものであり、該開口部の形状はド
ーナツ形である。開口部の加工は板厚と開口径に応じ
て、機械加工、写真製版を用いた化学研磨、放電加工な
どで行う。各開口部には、その中央部の円形薄板を支え
るためのブリッジを設ける。
【0036】開口部の内径dと外径D1は、例えばdを0.
5,1.5,3.0,5.0mmとし、D1を全開口について10mmとす
る。前記ブリッジの幅は、例えば最小内径dの10%以下
にする。開口径の選択は、散乱角制限絞り13を支持し
ている散乱角制限絞り駆動機構を用いて行う。該散乱角
制限絞り駆動機構は、従来技術の可動絞り駆動機構と同
様の構造を有する。
【0037】電子検出器14のタイプとしては、例えば
以下の3つがある。
【0038】第1のタイプは、本発明の第1の実施の形
態で用いたタイプと同様であるが、シンチレータ6の形
状がドーナツ形ではなく円形である。シンチレータ6の
材料としては、例えばAgドープZnS、Cd,S,AgドープZn
S、EuドープSr2P2O7、YAG、EuドープCaF2、CeドープGd2
SiO5、CeドープY2SiO5、CeドープLu2SiO5、Pr,Ce,Fドー
プGd2O2S等を用いる。シンチレータ6の条件は、電子顕
微鏡の加速電圧(汎用型では100〜300kV)に相当するエネ
ルギーを持つ電子線に対して、発光出力が大きく、劣化
が少なく、かつ入射した電子線の広がりが小さいことで
ある。シンチレータ6の厚さは、入射した電子線が広が
り、電子顕微鏡像がボケないようにするために数十μm
程度にする。また、表面にチャージアップ防止のために
Al膜を数十nmの厚さに蒸着する。
【0039】第2のタイプは、円形のシンチレータ6で
電子−光変換された後の光子をCCD(charge coupled
device)で検出する。
【0040】第3のタイプは、上記光子を信号電荷のア
バランシェ増倍を用いた撮像素子で検出する。但し、こ
のタイプではシンチレータ6における光像を前記信号電
荷のアバランシェ増倍を用いた撮像素子の光電面に結像
するために光学レンズが必要である。該光学レンズに
は、光強度のロスを少なくするために、口径に対する焦
点距離の短い、小さなF値を持つものを用いる。
【0041】上記第2及び第3のタイプは画素を有する
撮像素子を用いるので、光子検出面の動作領域の形状を
ドーナツ形に制御することや、検出後の画像処理でドー
ナツ形領域の画素からのみ強度データを抽出することが
できる。従って、散乱角制限絞り13を用いずに散乱電
子の検出角度範囲を制御することもできる。
【0042】次に、散乱角制限絞り13を用いた場合
に、電子検出器14の検出面(シンチレータ表面)上で設
定される散乱電子の散乱角範囲がどのように決まるかを
説明する。試料10と散乱角制限絞り13の間隔をL、
散乱角制限絞り13と電子検出器14の間隔をa、電子
検出器14の検出面の直径をWとする。本実施の形態で
は,例えばL=25mm、a=25mm、W=20mmとする。
【0043】電子検出器14で検出可能な散乱電子の最
大角は、検出面の半径(W/2)を試料10と電子検出
器14の間隔で除算したもの、すなわち、10/(25+25)
≒0.2radである。同様にして、散乱角制限絞り13の開
口部を通過する散乱電子の散乱角は、下限が開口部内径
の2分の1(d/2)をLで除算したもの、上限が開口部外径
の2分の1(D1/2)をLで除算したものとなり、上記の例で
示した開口径d=0.5, 1.5, 3.0, 5.0mm, D1=10mmの場
合、下限が10, 30, 60, 100mrad、上限が200mradとな
る。
【0044】本実施の形態での立体観察の手順は、本発
明の第1の実施の形態で示したものと同様である。但
し、図2で示した観察手順の「電子顕微鏡の電子線照射
及び結像条件を設定」の工程に、散乱角制限絞り13の
開口径の選択工程が含まれる。上記のように、本発明を
用いれば、種々の散乱角範囲で散乱電子を検出できるの
で、散乱電子強度の角度分布のうち所望の角度範囲を用
いた結像が可能となった。これによって、試料を構成す
る元素のうち特定の元素をコントラスト強調した電子顕
微鏡像の観察、さらには該コントラストの定量測定と電
子散乱理論を用いたコントラスト計算との比較から原子
番号Zの決定すなわち原子種を同定することも可能とな
った。
【0045】
【発明の効果】立体化画像処理に必要な全ての電子顕微
鏡像を、試料の傾斜,及び観察視野ずれや焦点外れの補
正操作をせずに、簡便にかつ短時間で撮影、記録するこ
とが可能となる。これによって観察に要する時間を、従
来技術の100分の1以下にすることができる。更に、
観察方向の設定精度が従来技術より1桁以上高いため、
立体像の再構成精度を10%以上改善することも可能と
なる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明による立体観察用走査透過電子顕微鏡の
第1の実施形態を示す構成図。
【図2】本発明の第1の実施の形態における立体観察手
順を示すフローチャート。
【図3】本発明による立体観察用走査透過電子顕微鏡の
第2の実施形態を示す構成図。
【図4】従来技術の立体観察用走査透過電子顕微鏡の構
成図。
【図5】従来技術の立体観察手順を示すフローチャー
ト。
【符号の説明】
1…電子銃、2…照射・対物レンズ、3…入射電子用走
査コイル、4…試料ステージ、5…試料ステージ駆動
系、6…シンチレータ、7…ライトガイド、8…光電子
増倍管、9…制御ユニット、10…試料、11…入射電
子用偏向コイル、12…散乱電子用偏向コイル、13…
散乱角制限絞り、14…電子検出器
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 高口 雅成 東京都国分寺市東恋ケ窪一丁目280番地株 式会社日立製作所中央研究所内 (72)発明者 斎藤 栄 東京都国分寺市東恋ケ窪一丁目280番地株 式会社日立製作所中央研究所内 (72)発明者 市橋 幹雄 茨城県ひたちなか市市毛882番地株式会社 日立製作所計測器事業部内 (72)発明者 砂子沢 成人 茨城県ひたちなか市市毛882番地株式会社 日立製作所計測器事業部内

Claims (7)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】加速した電子線を収束して試料に照射する
    ための電子銃および照射・対物レンズ、前記電子線を試
    料上で走査するための入射電子用走査コイル、前記電子
    線の試料への照射角度を変化させるための入射電子用偏
    向コイル、試料内で散乱した散乱電子を検出する電子検
    出器、検出された電子強度の画像化や画像処理を行なう
    ための画像処理系、および電子銃、レンズ、走査・偏向
    コイル、試料ステージなどを制御するための制御系を備
    え、かつ前記電子銃および照射・対物レンズと前記入射
    電子用走査コイルと前記入射電子用偏向コイルと前記電
    子検出器から成る電子光学系は2式具備され、かつ該2
    式の電子光学系の光軸が試料位置で互いに直交するよう
    に配置されてなる立体観察用走査透過電子顕微鏡。
  2. 【請求項2】前記2式の電子光学系が、各々に試料と電
    子検出器の間に配置された散乱電子用偏向コイルを具備
    する請求項1記載の立体観察用走査透過電子顕微鏡。
  3. 【請求項3】前記2式の電子光学系の各々が、散乱電子
    用偏向コイルと電子検出器の間に配置された散乱角制限
    絞りを具備する請求項1または2記載の立体観察用走査
    透過電子顕微鏡。
  4. 【請求項4】前記散乱角制限絞りが、ドーナツ形開口部
    からなる請求項3記載の立体観察用走査透過電子顕微
    鏡。
  5. 【請求項5】前記散乱角制限絞りが、異なる内外径寸法
    を有する複数種類の前記ドーナツ形開口部からなる請求
    項4記載の立体観察用走査透過電子顕微鏡。
  6. 【請求項6】加速した電子線を収束して試料に照射する
    ための電子銃および照射・対物レンズ、前記電子線を試
    料上で走査するための入射電子用走査コイル、前記電子
    線の試料への照射角度を変化させるための入射電子用偏
    向コイル、試料内で散乱した散乱電子を検出する電子検
    出器、検出された電子強度の画像化や画像処理を行なう
    ための画像処理系、および電子銃、レンズ、走査・偏向
    コイル、試料ステージなどを制御するための制御系を有
    し、かつ前記電子銃および照射・対物レンズと前記入射
    電子用走査コイルと前記入射電子用偏向コイルと前記電
    子検出器から成る電子光学系については2式備え、かつ
    該2式の電子光学系の光軸が試料位置で該試料の垂線に
    対しそれぞれ−45°,45°をなすように配置されて
    なる立体観察用走査透過電子顕微鏡を具備し、前記2式
    の電子光学系による電子線照射角度をそれぞれ試料表面
    上の垂線に対し−45°+αと45°+αとに設定して
    撮像した電子顕微鏡像及び前記2式の電子光学系による
    電子線照射角度をそれぞれ試料表面上の垂線に対し−4
    5°−αと45°−αとなるように設定して撮像した電
    子顕微鏡像の、計4つの観察方向における電子顕微鏡像
    を基に立体像を再構築するよう構成された立体画像形成
    システム。
  7. 【請求項7】前記αが、1.3°〜2.6°の範囲にある請求
    項6記載の立体画像形成システム。
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Cited By (6)

* Cited by examiner, † Cited by third party
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JP2005183369A (ja) * 2003-11-25 2005-07-07 Hitachi High-Technologies Corp 試料の観察方法及びその装置
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JP2012507728A (ja) * 2008-10-31 2012-03-29 エフ イー アイ カンパニ 試料膜厚の測定及びエンドポインティング

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