JP2019204780A - 電子顕微鏡 - Google Patents

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Abstract

【課題】回折図形を取得する場合に、作動距離を短くできる電子顕微鏡を提供する。【解決手段】電子顕微鏡100は、試料Sに電子線を照射して、試料Sから放出される電子によって形成される回折図形を取得するための電子顕微鏡であって、対物レンズ4と、試料Sが配置される試料ステージ6と、対物レンズ4と試料ステージ6との間に配置され、試料Sから放出される電子によって形成された回折図形が投影される蛍光板10と、蛍光板10に投影された回折図形を撮影する撮像装置12と、を含む。【選択図】図1

Description

本発明は、電子顕微鏡に関する。
走査電子顕微鏡(Scanning Electron Microscope、SEM)において、結晶性の試料の方位を解析する手法として、後方散乱電子回折パターン(Electron Back Scatter Diffraction Patterns、EBSD)法が知られている。EBSD法は、水平方向に対して約70°と大きく傾斜させた試料に細く絞った電子線を入射して、電子線が試料表面で回折することで生じる回折図形を取得し、取得した回折図形を解析することによって、電子線が入射した領域の結晶方位を求める手法である(例えば特許文献1参照)。
特開2014−178154号公報
上述したように、EBSD法で回折図形を取得する際には、試料を約70°傾斜させている。これは、試料を大きく傾斜させて試料表面に対して斜め方向から電子線を入射させることで、電子が試料表面に近い領域で散乱し、エネルギーロスの少ない電子が試料表面から放出されやすくなるためである。回折図形は、エネルギーロスの少ない電子によって形成されるため、試料を大きく傾斜させることで、明瞭な回折図形を得ることができる。
しかしながら、試料を大きく傾斜させた場合、作動距離が大きくなってしまう。一般的に、走査電子顕微鏡では、作動距離が短いほうが電子線を細く絞れるので空間分解能が高い。試料を大きく傾斜させると、対物レンズと試料とが衝突するおそれがあるため、作動距離を短くできず、空間分解能が低下する。具体的には、SEM像を取得する際の空間分解能はナノオーダーであるが、EBSD法による測定を行う際の空間分解能は数十nm程度である。
本発明に係る目的は、回折図形を取得する場合に、作動距離を短くできる電子顕微鏡を提供することにある。
本発明に係る電子顕微鏡の一態様は、
試料に電子線を照射して、前記試料から放出される電子によって形成される回折図形を取得するための電子顕微鏡であって、
対物レンズと、
前記試料が配置される試料ステージと、
前記対物レンズと前記試料ステージとの間に配置され、前記試料から放出される電子によって形成された回折図形が投影される蛍光板と、
前記蛍光板に投影された回折図形を撮影する撮像装置と、
を含む。
このような電子顕微鏡では、低エネルギーの電子線を試料に入射させることによって、試料表面が水平または水平に近い状態でも、蛍光板には菊池線を含む回折図形が投影される。そのため、このような電子顕微鏡では、回折図形を撮影する際に試料を大きく傾斜さ
せる必要がないため、作動距離を短くできる。
第1実施形態に係る電子顕微鏡の構成を示す図。 蛍光板を模式的に示す断面図。 鉄原子に対する電子の弾性散乱断面積を示すグラフ。 試料から放出された電子が散乱を起こした深さを示すグラフ。 撮像装置で蛍光板を撮影して得られた画像を模式的に示す図。 歪み補正後の回折像を模式的に示す図。 第1実施形態に係る電子顕微鏡の処理部の処理の一例を示すフローチャート。 第2実施形態に係る電子顕微鏡の構成を示す図。 第3実施形態に係る電子顕微鏡の構成を示す図。 第3実施形態に係る電子顕微鏡の複数のミラーの配置を模式的に示す図。 2つのミラーに映った回折図形を撮影して得られた画像から取り出された2つの回折像を模式的に示す図。 2つの回折像を合成して得られた画像を模式的に示す図。 第3実施形態に係る電子顕微鏡の処理部の処理の一例を示すフローチャート。 第3実施形態に係る電子顕微鏡のミラーの配置の変形例を説明するための図。 第4実施形態に係る電子顕微鏡の構成を示す図。 第5実施形態に係る電子顕微鏡の構成を示す図。 光学素子の機能を説明するための図。 光学素子の機能を説明するための図。 光学素子の機能を説明するための図。 光学素子が平面ミラーである場合の光学素子の機能を説明するための図。 光学素子が平面ミラーである場合の光学素子の機能を説明するための図。 光学素子が平面ミラーである場合の光学素子の機能を説明するための図。 第6実施形態に係る電子顕微鏡の構成を示す図。 第7実施形態に係る電子顕微鏡の構成を示す図。 第7実施形態に係る電子顕微鏡の蛍光板を模式的に示す断面図。 第7実施形態に係る電子顕微鏡の蛍光板の変形例を模式的に示す断面図。
以下、本発明の好適な実施形態について図面を用いて詳細に説明する。なお、以下に説明する実施形態は、特許請求の範囲に記載された本発明の内容を不当に限定するものではない。また、以下で説明される構成の全てが本発明の必須構成要件であるとは限らない。
1. 第1実施形態
1.1. 電子顕微鏡
まず、第1実施形態に係る電子顕微鏡について図面を参照しながら説明する。図1は、第1実施形態に係る電子顕微鏡100の構成を示す図である。
電子顕微鏡100は、走査電子顕微鏡(SEM)である。すなわち、電子顕微鏡100では、SEM像を取得することができる。また、電子顕微鏡100では、試料Sに電子線を照射して、試料Sから放出される電子によって形成される回折図形を取得することができる。
電子顕微鏡100は、図1に示すように、電子源2と、収束レンズ3と、対物レンズ4
と、走査偏向器5と、試料ステージ6と、二次電子検出器8と、蛍光板10と、撮像装置12と、処理部20と、表示部30と、記憶部32と、を含む。
電子源2は、電子を発生させる。電子源2は、例えば、陰極から放出された電子を陽極で加速し電子線を放出する電子銃である。電子顕微鏡100では、電子を加速させるための加速電圧を、数kV〜数十kVの範囲で変更可能である。
収束レンズ3は、電子源2から放出された電子線を収束させる。収束レンズ3によって、電子プローブ(収束された電子線)の径やプローブ電流(照射電流量)を制御することができる。
対物レンズ4は、試料Sの直前に配置された電子プローブを形成するためのレンズである。対物レンズ4は、例えば、コイルと、ヨークと、を含んで構成されている。対物レンズ4では、コイルで作られた磁力線を、透磁率の高い材料で作られたヨークに閉じ込め、ヨークの一部に切欠きを作ることで、高密度に分布した磁力線を光軸OA上に漏洩させる。電子顕微鏡100では、収束レンズ3および対物レンズ4によって、電子線を細く絞ることで電子プローブが形成される。
走査偏向器5は、収束レンズ3および対物レンズ4によって形成された電子プローブを偏向させる。走査偏向器5は、電子プローブで、試料S上を走査するために用いられる。走査偏向器5は、走査信号発生器(図示せず)が発生させた走査信号に基づき駆動し、電子線を偏向させる。これにより、電子プローブで試料S上を走査することができる。
試料ステージ6には、試料Sが載置される。試料ステージ6は、試料Sを支持している。試料ステージ6は、試料Sを水平方向、および鉛直方向に移動させるための移動機構を有している。また、試料ステージ6は、試料Sを傾斜させるための傾斜機構を有している。図1に示す例では、試料ステージ6は、試料Sの試料表面が水平になるように試料Sを支持している。
二次電子検出器8は、試料Sに電子線が照射されることによって試料Sから放出される二次電子を検出する。電子プローブで試料Sを走査し、二次電子検出器8で試料Sから放出される二次電子を検出することによって、SEM像(二次電子像)を得ることができる。
蛍光板10は、試料ステージ6と対物レンズ4との間に配置されている。図示の例では、蛍光板10は、対物レンズ4の直下に配置されている。蛍光板10は、試料Sに照射される電子線を通過させるための貫通孔10aを有している。貫通孔10aは、光軸OA上に設けられている。蛍光板10は、例えば、光軸OAが貫通孔10aの中心を通るように配置されている。蛍光板10には、試料Sから放出される電子によって形成された回折図形が投影される。蛍光板10に投影される回折図形は、菊池線を含む。
試料に入射した電子が結晶性の試料内で原子の熱振動による非弾性散乱を受けた後にブラッグ反射(弾性散乱)を起こすことによって菊池図形(kikuchi pattern)が生じる。非弾性散乱を受けた電子の進行方向は、広い角度にわたって分布するので、ブラッグ反射位置には、ある結晶面の表面と裏面の反射による明線と暗線のペアが生じる。この明線と暗線のペアを菊池線という。
図2は、蛍光板10を模式的に示す断面図である。
蛍光板10は、図2に示すように、金属板102と、蛍光体104と、を有している。
蛍光板10は、金属板102上に、粉状の蛍光体104を配置したものである。蛍光板10は、金属板102上に粉状の蛍光体104を塗布することで形成できる。蛍光板10は、蛍光体104が塗布された面102aが試料ステージ6側を向くように配置される。
金属板102は、例えば、導電性の金属で構成されている。金属板102の材質は、例えば、Al、Cu、ステンレス鋼などである。金属板102の面102aは、例えば、鏡面である。金属板102の平面形状、すなわち、金属板102の面102aの形状は、例えば、正多角形、円である。
蛍光体104は、金属板102上に配置されている。蛍光体104は、低エネルギーで発光するものが好ましく、例えば、P47(YSiO:Ce)などである。蛍光板10は、金属板102上に粉状の蛍光体104を配置したものであるため、光った位置を判別しやすい。また、金属板102が反射鏡としての役割も果たすため、光量を増やすことができる。
撮像装置12は、図1に示すように、蛍光板10の斜め下方向に配置されている。撮像装置12は、蛍光板10に投影された回折図形を撮影する。撮像装置12は、蛍光板10に投影された回折図形を斜め方向から撮影する。これは、電子顕微鏡100では、蛍光板10の正面、すなわち、金属板102の面102aの垂線方向には、試料ステージ6が位置しているためである。撮像装置12は、例えば、CCD(Charge Coupled Device)カメラなどの光学カメラである。
表示部30は、処理部20によって生成された画像を表示するものである。表示部30は、LCD(Liquid Crystal Display)などのディスプレイにより実現できる。
記憶部32は、処理部20が各種の計算処理や制御処理を行うためのプログラムやデータ等を記憶している。また、記憶部32は、処理部20の作業領域として用いられ、処理部20が各種プログラムに従って実行した算出結果等を一時的に記憶するためにも使用される。記憶部32は、RAM(Random Access Memory)や、ROM(Read Only Memory)、ハードディスクなどにより実現できる。
処理部20は、記憶部32に記憶されているプログラムに従って、各種の制御処理や計算処理を行う。処理部20の機能は、各種プロセッサ(CPU(Central Processing Unit)等)でプログラムを実行することにより実現することができる。処理部20は、像取得部21と、明るさムラ補正部22と、歪み補正部23と、解析部24と、含む。
像取得部21は、撮像装置12で蛍光板10に投影された回折図形を撮影することで得られた画像(以下、「回折像」ともいう)を取得する。
明るさムラ補正部22は、回折像の明るさムラを補正する。明るさムラ補正部22は、例えば、回折像を含まない状態で蛍光板10を撮影して得られた像を、回折像から差し引くことで、回折像の明るさムラを補正する。
歪み補正部23は、蛍光板10に投影された回折図形を斜め方向から撮影したことによる回折像の歪みを補正する。
解析部24は、明るさムラおよび歪みが補正された回折像を用いて、結晶方位の解析を行う。解析部24は、回折像から菊池線を検出し、検出された菊池線から結晶方位の解析を行う。解析部24は、例えば、EBSD法による結晶方位の解析手法を用いて、結晶方位の解析を行う。
1.2. 手法
電子顕微鏡100を用いた、結晶方位の解析手法について説明する。
試料に電子線を入射させると試料内で散乱されて、様々なエネルギーの電子が試料表面から放出される。EBSD法による結晶方位の解析に利用される回折図形は、試料表面から放出される電子のうち、入射エネルギーに対してエネルギーロスの少ない電子によるものである。
図3は、鉄原子に対する電子の弾性散乱断面積を示すグラフである。図3に示すグラフは、直線運動している電子が原子に近づいて電子と原子の相互作用により散乱を起こしたときの角度変化量とその確率を示している。
まず、試料に入射する電子のエネルギーが高い場合を考える。図3からわかるように、高エネルギーの電子は、試料内で散乱しても角度変化が小さい。また、試料に入射した電子は、試料最表面で散乱するわけでなく、平均自由行程の深さまで侵入して散乱するが、平均自由行程は、電子のエネルギーが高くなるほど大きくなる。そのため、試料を水平にして試料に高エネルギーの電子線を入射すると、すなわち、試料表面に対して垂直に高エネルギーの電子線を入射すると、電子の散乱は試料表面から比較的深い領域で起こり、大部分の電子が試料の深い方向へ散乱する。また、ごくまれに電子が試料表面に到達して試料から放出されたとしても、このような電子は、散乱を繰り返しているため、エネルギーロスが大きい。したがって、試料を水平にして試料に高エネルギーの電子線を入射しても、回折図形を形成するエネルギーロスの少ない電子はごくわずかしか試料表面から放出されない。
そのため、EBSD法では、試料を大きく傾斜させて、試料表面に対して電子線を斜め方向から入射させている。これにより、試料中での電子の散乱領域と試料表面とが近づくので、散乱回数の少ない、すなわち、エネルギーロスの少ない電子が試料表面に到達しやすくなる。この結果、回折図形を形成するエネルギーロスの少ない電子が試料表面から多く放出され、回折図形を得やすい。
次に、試料に入射する電子のエネルギーが低い場合を考える。図3に示すように、低エネルギーの電子は、180°方向に散乱する確率が高エネルギーの電子に比べて高い。そのため、低エネルギーの電子線を試料に入射した場合、電子線の入射方向とは反対向きの散乱量が増加する。また、低エネルギーの電子は、高エネルギーの電子に比べて、試料中での平均自由行程が短いので、散乱が試料表面に近いところで起きやすい。そのため、低エネルギーの電子線を試料に入射させた場合、試料表面が水平でも、エネルギーロスの少ない電子が多く放出される。
本実施形態では、このことを利用して、試料表面が水平または水平に近い状態(例えば試料傾斜角が10°以下)にした試料Sに低エネルギーの電子線を入射させることによって、回折図形を取得する。例えば、電子顕微鏡100では、加速電圧を10kV以下、より好ましくは加速電圧を5kV以下とする。これにより、試料Sに低エネルギーの電子を入射することができ、試料表面が水平または水平に近い状態であっても、明瞭な回折図形を得ることができる。
図4は、試料から放出された電子(反射電子)が、散乱を起こした深さを示すグラフである。横軸は散乱が起きた深さであり、縦軸はその深さで散乱を起こした電子の割合を示している。図4では、試料は、金である。
加速電圧15kV、試料傾斜角70degの条件は、一般的に、EBSD法で菊池線を取得するために用いられる条件である。試料傾斜角とは、水平方向に対する試料表面の傾き角である。言い換えると、試料傾斜角とは、水平面を基準、すなわち0°とした場合の試料表面の傾きである。なお、電子線は、水平面に対して鉛直方向から試料に入射するものとする。
加速電圧15kV、試料傾斜角70degの場合、試料Sから放出される電子のうち、散乱を起こした深さが40nm以下の電子の割合が80%以上である。このように、試料傾斜角を大きくすることで、電子の散乱が起こる深さを浅くすることができ、試料Sから放出される電子において、エネルギーロスの少ない電子の割合を大きくすることができる。これにより、明瞭な回折図形を得ることができる。
加速電圧15kV、試料傾斜角0deg(すなわち試料表面が水平)の場合、散乱は100nmよりも深い領域でも起こっている。そのため、この条件では、回折図形のコントラスは非常に弱く、明瞭な回折図形は得られない。
これに対して、加速電圧5kV、試料傾斜角0degの場合、散乱が浅い箇所で集中して起こる。図4に示すように、加速電圧5kV、試料傾斜角0degの場合、電子が散乱を起こした深さは、40nm以下に集中している。具体的には、加速電圧5kV、試料傾斜角0degの場合、試料Sから放出される電子において、散乱を起こした深さが40nm以下の電子の割合が90%以上である。このように、加速電圧を低くすることで、試料表面が水平または水平に近い状態であっても、電子が散乱を起こす深さを浅くすることができ、試料Sから放出される電子において、エネルギーロスの少ない電子の割合を大きくすることができる。
電子顕微鏡100では、上記のように、試料表面が水平または水平に近い状態(例えば試料傾斜角を10°以下)となるように試料Sを保持した状態で、低エネルギーの電子線を試料Sに入射する。これにより、電子は試料Sの浅い領域で散乱を起こし、エネルギーロスの少ない電子が試料Sから放出される。この結果、蛍光板10には、菊池線を含む回折図形が投影される。蛍光板10に投影された回折図形は、撮像装置12で撮影される。これにより、回折像を得ることができる。
図5は、撮像装置12で蛍光板10を撮影して得られた画像(回折像)を模式的に示す図である。
蛍光板10を撮影して得られた回折像には、蛍光体104の厚さムラや、蛍光面のゴミ、試料面の傾きなど様々な要因で明るさのムラ(以下、単に「明るさムラ」ともいう)が生じる。この回折図形以外に起因する明るさムラが回折像に反映されると、解析の精度が落ちてしまう。そのため、電子顕微鏡100では、回折像に対して、明るさムラを補正する処理を行う。
具体的には、まず、電子線を試料上で走査しながら、撮像装置12で蛍光板10を撮影する。このとき、撮像装置12の像取得時間(露光時間)に対して、電子線のスキャンスピードを十分に速くして、様々な方位の結晶粒を横断するようにする。この結果、得られた画像は、様々な結晶方位に対応する回折図形が平均化されたものとなり、実質的に回折図形を含まない、明るさムラのみの画像(以下、「バックグラウンド画像」ともいう)となる。
次に、回折像からバックグラウンド画像を差し引く。なお、回折像を取得する際の像取得時間(露光時間)とバックグラウンド画像を取得する際の像取得時間(露光時間)とが
同じ場合には、回折像からバックグラウンド画像をそのまま差し引くことができる。回折像を取得する際の像取得時間(露光時間)とバックグラウンド画像を取得する際の像取得時間(露光時間)とが異なる場合には、像取得時間の差を考慮してバックグラウンド画像に像取得時間に応じた係数を掛けてから、回折像から差し引く。これにより、回折像から明るさムラを除去することができる。
図5に示すように、回折像には、撮像装置12が蛍光板10に投影された回折図形を斜め方向から撮影したことによる歪みがある。そのため、回折像の歪みを補正する処理を行う。具体的には、まず、適当な試料に電子線を照射し、試料から放出された電子によって蛍光板10を発光させて撮像装置12で撮影を行い、蛍光板10の蛍光面が含まれる画像を取得する。例えば、蛍光面の形状が正八角形の場合、得られた画像中の蛍光面の形状が正八角形となるように、画像の歪みを補正し、このときの補正値を記録する。補正値は、蛍光板10と撮像装置12の位置関係で決まるため、一度補正値を求めれば、この位置関係が変わらない限り、同じ補正値を使って回折像の歪みを補正できる。そのため、電子顕微鏡100では、あらかじめ歪みを補正するための補正値の情報が記憶部32に記憶されている。
なお、上記では、蛍光面の形状から歪みを補正するための補正値を求める場合について説明したが、例えば、既知の回折図形を持つ試料Sで得られた回折図形から補正値を求めてもよい。
図6は、歪み補正後の回折像を模式的に示す図である。
上記のようにして、明るさムラおよび歪みの補正が行われた回折像に対しては、一般的なEBSD法による解析と同様の手法で、結晶方位の解析を行うことができる。具体的には、図6に示す回折像から菊池線を検出し、菊池線の角度から方位解析を行うことができる。なお、菊池線を検出する際には、例えば、ハフ変換を用いることができる。回折像において、蛍光板10の貫通孔10aによって菊池線が途切れていても、ハフ変換を用いることで、方位解析が可能である。菊池線から方位解析を行う手法は公知であり、その説明を省略する。
1.3. 処理
次に、電子顕微鏡100の処理部20の処理について説明する。図7は、電子顕微鏡100の処理部20の処理の一例を示すフローチャートである。
電子顕微鏡100において、例えば、加速電圧を5kV以下にして、試料Sの解析点に電子線を照射すると、試料Sから放出される電子によって形成される回折図形が蛍光板10に投影される。蛍光板10に投影された回折図形を撮像装置12で撮影することで回折像を得ることができる。回折像を得た後、明るさムラを補正するためのバックグラウンド補正画像を得るための撮影を行う。具体的には、上述したように、電子線を試料S上で走査しながら、撮像装置12で蛍光板10を撮影することでバックグラウンド補正画像が得られる。
像取得部21は、撮像装置12で蛍光板10を撮影することで得られた回折像およびバックグラウンド補正画像を取得する(S100)。
次に、明るさムラ補正部22が、取得された回折像からバックグラウンド補正画像を差し引いて、回折像の明るさムラを補正する(S102)。
次に、歪み補正部23が、取得された回折像に対して、蛍光板10に投影された回折図
形を斜め方向から撮影したことによる歪みを補正する処理を行う(S104)。歪み補正部23は、記憶部32に記憶されている補正値を用いて、回折像の歪みを補正する。
次に、解析部24が、明るさムラおよび歪みの補正が行われた回折像に対して、試料Sの解析点における結晶方位の解析を行う(S106)。
処理部20は、解析部24における結晶方位の解析結果を表示部30に表示させる制御を行い、処理を終了する。
1.4. 特徴
電子顕微鏡100は、例えば、以下の特徴を有する。
電子顕微鏡100は、対物レンズ4と試料ステージ6との間に配置され、試料Sから放出される電子によって形成された回折図形が投影される蛍光板10と、蛍光板10に投影された回折図形を撮影する撮像装置12と、を含む。そのため、電子顕微鏡100では、低エネルギーの電子線を試料Sに入射させることによって、試料表面が水平または水平に近い状態でも、蛍光板10には菊池線を含む回折図形が投影される。したがって、電子顕微鏡100では、回折図形を撮影する際に、試料Sを大きく傾斜させる必要がなく、作動距離(working distance)を短くできる。ここで、作動距離とは、対物レンズ4と試料Sとの間の距離である。作動距離を短くすることで、空間分解能を高めることができる。
さらに、電子顕微鏡100では、対物レンズ4と試料ステージ6との間には、蛍光板10を配置すればよく、例えば対物レンズ4と試料ステージ6との間に検出器を配置する場合と比べて、作動距離を小さくできる。例えば、回折図形を得るために、CCDなどの二次元配列型の検出器を用いた場合、対物レンズ4と試料ステージ6との間に、電源を供給するための配線や、信号を出力するための配線などを配置するためのスペースが必要となる。これに対して、蛍光板10は、金属板102と、蛍光体104と、で構成されているため、非常に薄くでき、かつ、配線を配置するためのスペースも不要である。
また、電子顕微鏡100では、試料Sを大きく傾斜させないことにより、被写界深度を気にすることなく解析が可能であり、試料Sの広範囲の解析が可能である。例えば、試料表面が大きく傾いている場合、フォーカスが合う領域が限定され、視野が狭まる。
また、試料Sを傾斜させた場合、解析点での電子線の形状が楕円になり、傾斜方向の空間分解能が低下してしまう。これに対して、電子顕微鏡100では、回折図形を撮影する際に、試料Sを大きく傾斜させなくてもよいため、解析点での電子線の形状が円または円に近い楕円となる。そのため、試料Sを大きく傾斜させることによる空間分解能の低下を抑制できる。
また、図示はしないが、電子顕微鏡100がエネルギー分散型X線分析装置(energy dispersive X-ray spectrometer、EDS)を備えている場合、EDSによる測定と、回折図形の撮影とを、同じ試料傾斜角で行うことができる。例えば、従来のEBSD法による測定では、試料Sを大きく傾斜させるが、試料Sを大きく傾斜させた状態ではEDSによる測定を行うことができない。そのため、従来、EBSD法による測定は、試料Sを大きく傾斜させた状態で行われ、EDSによる測定は試料Sを大きく傾斜させることなく行われた。この場合、得られたEBSD法の測定結果とEDSの測定結果の整合を取ることは難しい。
電子顕微鏡100は、蛍光板10に投影された回折図形を斜め方向から撮影したことによる回折像の歪みを補正する歪み補正部23を含む。そのため、電子顕微鏡100では、
精度よく、結晶方位の解析を行うことができる。
電子顕微鏡100では、加速電圧は、5kV以下であることが好ましい。これにより、試料Sに低エネルギーの電子を入射することができ、試料表面が水平または水平に近い状態でも、明瞭な回折図形を得ることができる。
電子顕微鏡100では、加速電圧は、試料Sから放出される電子のうち、散乱を起こした深さが40nm以下の電子の割合が90%以上となるような電圧であることが好ましい。これにより、試料表面が水平または水平に近い状態でも、明瞭な回折図形を得ることができる。
電子顕微鏡100では、蛍光板10は、試料Sに照射される電子を通過させる貫通孔10aを有している。そのため、電子顕微鏡100では、対物レンズ4と試料ステージ6との間に蛍光板10を配置して、回折図形を蛍光板10に投影することができる。
電子顕微鏡100では、蛍光板10は、金属板102と、金属板102上に配置された粉状の蛍光体104と、を有している。このような蛍光板10では、例えば、板状の蛍光体を用いた場合と比べて、回折図形を明瞭に映し出すことができる。
2. 第2実施形態
2.1. 電子顕微鏡
次に、第2実施形態に係る電子顕微鏡について図面を参照しながら説明する。図8は、第2実施形態に係る電子顕微鏡200の構成を示す図である。以下、第2実施形態に係る電子顕微鏡200において、第1実施形態に係る電子顕微鏡100の構成部材と同様の機能を有する部材については同一の符号を付し、その詳細な説明を省略する。
電子顕微鏡200では、図8に示すように、蛍光板10に投影された回折図形を写すミラー202を含んで構成されている。電子顕微鏡200では、撮像装置12は、ミラー202に映った回折図形を撮影する。そのため、電子顕微鏡200では、撮像装置12の配置の自由度が高い。例えば、ミラー202の角度を調整することで、撮像装置12を水平に配置することが可能である。
2.2. 処理
電子顕微鏡200の処理部20の処理は、上述した電子顕微鏡100の処理と同じであるため、その説明を省略する。
3. 第3実施形態
3.1. 電子顕微鏡
次に、第3実施形態に係る電子顕微鏡について図面を参照しながら説明する。図9は、第3実施形態に係る電子顕微鏡300の構成を示す図である。図10は、電子顕微鏡300の複数のミラー(第1ミラー202aおよび第2ミラー202b)の配置を模式的に示す図である。以下、第3実施形態に係る電子顕微鏡300において、第1実施形態に係る電子顕微鏡100、および第2実施形態に係る電子顕微鏡200の構成部材と同様の機能を有する部材については同一の符号を付し、その詳細な説明を省略する。
電子顕微鏡300は、図9および図10に示すように、蛍光板10に投影された回折図形を互いに異なる方向から映す複数のミラー(第1ミラー202aおよび第2ミラー202b)を含んで構成されている。電子顕微鏡300では、撮像装置12は、複数のミラー(第1ミラー202aおよび第2ミラー202b)に映った回折図形を撮影する。
例えば、図1に示す電子顕微鏡100において、作動距離を小さくすると、試料Sと蛍光板10との間の距離が小さくなる。そのため、撮像装置12から見て、蛍光板10の一部が試料Sの影に隠れてしまい、蛍光板10に投影された回折図形の全体が撮影できない場合がある。
これに対して、電子顕微鏡300では、第1ミラー202aおよび第2ミラー202bが蛍光板10に投影された回折図形を互いに異なる方向から映すように配置されている。第1ミラー202aおよび第2ミラー202bは、互いの死角を補い合うように配置されている。そのため、電子顕微鏡300では、作動距離を短くしても、蛍光板10に投影された回折図形の全体を撮影できる。
電子顕微鏡300では、処理部20は、画像サイズ補正部25と、位置補正部26と、画像合成部27と、を含んで構成されている。
像取得部21は、撮像装置12で2つのミラー202a,202bに映った回折図形を撮影して得られた画像を取得する。取得した画像には、第1ミラー202aに映った回折図形と、第2ミラー202bに映った回折図形と、が含まれている。そのため、像取得部21は、取得した画像から、これらの回折図形を取り出して、2つの回折像を取得する。
図11は、撮像装置12で2つのミラー202a,202bに映った回折図形を撮影して得られた画像から取り出された、2つの回折像(第1回折像IAおよび第2回折像IB)を模式的に示す図である。第1回折像IAは、第1ミラー202aに映った回折図形を含む画像であり、第2回折像IBは、第2ミラー202bに映った回折図形を含む画像である。
図11に示すように、第1回折像IAでは、回折図形の一部、具体的には右側が欠けている。また、第2回折像IBでは、回折図形の一部、具体的には左側が欠けている。
明るさムラ補正部22は、2つの回折像IA,IBに対して、それぞれ明るさムラを補正する処理を行う。明るさムラ補正部22は、例えば、第1回折像IAに対応するバックグラウンド補正画像を用いて第1回折像IAの明るさムラを補正する。明るさムラ補正部22は、同様に、第2回折像IBに対応するバックグラウンド補正画像を用いて第2回折像IBの明るさムラを補正する。
歪み補正部23は、2つの回折像IA,IBに対して、それぞれ蛍光板10に投影された回折図形を斜め方向から撮影したことによる歪みを補正する処理を行う。歪み補正部23は、上述した電子顕微鏡100の場合と同様に、記憶部32に記憶されている第1回折像IAに対する補正値を用いて、第1回折像IAの歪みを補正する。また、歪み補正部23は、同様に、記憶部32に記憶されている第2回折像IBに対する補正値を用いて、第2回折像IBの歪みを補正する。
画像サイズ補正部25は、2つの回折像IA,IBの画像サイズの違いを補正する。すなわち、画像サイズ補正部25は、2つの回折像IA,IBの画像サイズを同じにする処理を行う。画像サイズ補正部25は、記憶部32に記憶されている補正値を用いて、2つの回折像IA,IBの画像サイズの補正を行い、2つの回折像IA,IBの画像サイズを同じにする。
位置補正部26は、2つの回折像IA,IBが重なるように、2つの回折像IA,IBの位置関係を補正する。位置補正部26は、例えば、記憶部32に記憶されているオフセット量を用いて、第1回折像IAおよび第2回折像IB間の位置関係の補正を行い、第1
回折像IAおよび第2回折像IBを重ねる。
画像合成部27は、2つの回折像IA,IBを合成して、試料Sの解析点における回折図形の全体を含む回折像を生成する。例えば、図11に示すように、第1回折像IAは右側が欠けており、第2回折像IBは左側が欠けている場合、第1回折像IAの左側と、第2回折像IBの右側と、を用いて1つの回折像IA+IBを生成する(図12参照)。
解析部24は、画像合成部27で生成された回折像IA+IBを用いて、結晶方位の解析を行う。結晶方位の解析は、電子顕微鏡100の例と同様に行うことができる。
なお、上述した歪みを補正するための補正値、画像サイズを補正するための補正値、およびオフセット量は、蛍光板10、ミラー202a,202b、および撮像装置12の位置関係が変わらない限り、同じ値を用いることができる。そのため、例えば、適当な試料Sを用いて、これらの補正値やオフセット量を求めておき、求めた補正値およびオフセット量を記憶部32に記録しておく。
具体的には、試料Sに電子線を照射して、蛍光板10に投影された回折図形を第1ミラー202aおよび第2ミラー202bを介して撮影する。このとき、回折図形が欠けないように作動距離を長めに設定しておく。そして、取得した2つの回折像の歪みを補正し、このときの補正値を記録する。また、取得した2つの回折像の画像サイズが同じになるように、2つの回折像の少なくとも一方を補正し、このときの補正値を記録する。また、取得した2つの回折像が重なるように位置を調整し、このときの移動量(オフセット量)を記録する。このようにして、歪みを補正する補正値、画像サイズを補正する補正値、およびオフセット量をあらかじめ記録することができる。
3.2. 処理
次に、電子顕微鏡300の処理部20の処理について説明する。図13は、電子顕微鏡300の処理部20の処理の一例を示すフローチャートである。
電子顕微鏡100において、例えば、加速電圧を5kV以下にして、試料Sの解析点に電子線を照射すると、試料Sから放出される電子によって形成される回折図形が蛍光板10に投影される。蛍光板10に投影された回折図形は、2つのミラー202a,202bに映る。撮像装置12は2つのミラー202a,202bに映った回折図形を撮影する。回折図形を撮影した後、明るさムラを補正するためのバックグラウンド補正画像を得るための撮影を行う。具体的には、上述したように、電子線を試料S上で走査しながら、撮像装置12で2つのミラー202a,202bに映った像を撮影する。
像取得部21は、このようにして得られた2つの回折図形を含む画像、およびバックグラウンド補正画像を得るための画像を取得する。像取得部21は、2つの回折図形を含む画像から2つの回折像(第1回折像IAおよび第2回折像IB)を取得し、バックグラウンド補正画像を得るための画像から2つのバックグラウンド補正画像を取得する(S200)。
次に、明るさムラ補正部22が、第1回折像IAに対して、対応するバックグラウンド補正画像を差し引く処理を行い、第2回折像IBに対して、対応するバックグラウンド補正画像を差し引く処理を行う(S202)。これにより、第1回折像IAおよび第2回折像IBの明るさムラを補正できる。
次に、歪み補正部23が、第1回折像IAおよび第2回折像IBに対して、蛍光板10に投影された回折図形を斜め方向から撮影したことによる歪みを補正する処理を行う(S
204)。歪み補正部23は、記憶部32に記憶されている第1回折像IAの補正値を用いて、第1回折像IAの歪みを補正する。同様に、歪み補正部23は、記憶部32に記憶されている第2回折像IBの補正値を用いて、第2回折像IBの歪みを補正する。
次に、画像サイズ補正部25が、第1回折像IAおよび第2回折像IBの画像サイズを同じにする処理を行う(S206)。画像サイズ補正部25は、記憶部32に記憶されている第1回折像IAの補正値を用いて、第1回折像IAの画像サイズを補正する。同様に、歪み補正部23は、記憶部32に記憶されている第2回折像IBの補正値を用いて、第2回折像IBの画像サイズを補正する。
次に、位置補正部26が、第1回折像IAおよび第2回折像IBが重なるように、第1回折像IAと第2回折像IBとの位置関係を補正する処理を行う(S208)。位置補正部26は、記憶部32に記憶されているオフセット量を用いて第1回折像IAと第2回折像IBとの位置関係の補正を行う。
次に、画像合成部27が、第1回折像IAと第2回折像IBを合成して、試料Sの解析点における回折図形の全体を含む回折像IA+IBを生成する(S210)。
次に、解析部24が、画像合成部27で生成された回折像IA+IBに対して、試料Sの解析点における結晶方位の解析を行う(S212)。
処理部20は、解析部24における結晶方位の解析結果を表示部30に表示させる制御を行い、処理を終了する。
3.3. 特徴
電子顕微鏡300は、例えば、以下の特徴を有する。
電子顕微鏡300は、蛍光板10に投影された回折図形を互いに異なる方向から映す第1ミラー202aおよび第2ミラー202bを含み、撮像装置12は、第1ミラー202aおよび第2ミラー202bに映った回折図形を撮影する。そのため、電子顕微鏡300では、作動距離を短くした場合でも、第1ミラー202aおよび第2ミラー202bを用いることによって、蛍光板10に投影された回折図形の全体を撮影できる。
電子顕微鏡300は、第1ミラー202aおよび第2ミラー202bに映った回折図形を撮影して得られた第1回折像IAおよび第2回折像IBを合成する画像合成部27を含む。そのため、電子顕微鏡300では、作動距離を短くした場合でも、蛍光板10に投影された回折図形の全体を含む回折像IA+IBを得ることができる。
なお、上述した実施形態では、蛍光板10に投影された回折図形の全体を撮影するために、2つのミラー(第1ミラー202aおよび第2ミラー202b)を用いる場合について説明したが、蛍光板10に投影された回折図形の全体を撮影するために、3つ以上のミラーを用いてもよい。
3.4. 変形例
図14は、第3実施形態に係る電子顕微鏡のミラーの配置の変形例を説明するための図である。
電子顕微鏡300は、図14に示すように、第1ミラー202aに映った回折図形を、撮像装置12に導く複数のミラー203a,203bと、第2ミラー202bに映った回折図形を撮像装置12に導く複数のミラー203c,203bと、を含む。
図示の例では、蛍光板10に投影された回折図形は、第1ミラー202a、ミラー203a、およびミラー203bに投影されて、撮像装置12で撮影される。また、蛍光板10に投影された回折図形は、第2ミラー202b、ミラー203b、およびミラー203bに投影されて、撮像装置12で撮影される。
このように、複数のミラー202a,202b,203a,203b,203cを用いることで、蛍光板10に投影された回折図形の全体を撮影することができる。さらに、撮像装置12の配置の自由度を高めることができる。
4. 第4実施形態
次に、第4実施形態に係る電子顕微鏡について図面を参照しながら説明する。図15は、第4実施形態に係る電子顕微鏡400の構成を示す図である。以下、第4実施形態に係る電子顕微鏡400において、第1〜第3実施形態に係る電子顕微鏡100、200,300の構成部材と同様の機能を有する部材については同一の符号を付し、その詳細な説明を省略する。
電子顕微鏡400では、図15に示すように、撮像装置12は、複数設けられ、複数の撮像装置12は、互いに異なる方向から蛍光板10に投影された回折図形を撮影する。
図15に示す例では、撮像装置12は、2つ設けられているが、撮像装置12の数は、3つ以上であってもよい。2つの撮像装置12は、互いの死角を補い合うように配置されている。
2つの撮像装置12で蛍光板10に投影された回折図形を撮影することによって、上述した電子顕微鏡300と同様に、2つの回折像を得ることができ、2つの回折像を合成することで、蛍光板10に投影された回折図形の全体を含む回折像を得ることができる。
2つの回折像から試料Sの解析点の結晶方位を解析する処理部20の処理は、上述した電子顕微鏡300の場合と同様であり、その説明を省略する。
電子顕微鏡400では、撮像装置12は、複数設けられ、複数の撮像装置12は、互いに異なる方向から蛍光板10に投影された回折図形を撮影する。また、画像合成部27は、複数の撮像装置12で取得された複数の回折像を合成する。そのため、電子顕微鏡400では、作動距離を短くした場合でも、複数の撮像装置12を用いることによって、蛍光板10に投影された回折図形の全体を撮影できる。
5. 第5実施形態
5.1. 電子顕微鏡
次に、第5実施形態に係る電子顕微鏡について図面を参照しながら説明する。図16は、第5実施形態に係る電子顕微鏡500の構成を示す図である。以下、第5実施形態に係る電子顕微鏡500において、第1実施形態に係る電子顕微鏡100、第2実施形態に係る電子顕微鏡200、第3実施形態に係る電子顕微鏡300、および第4実施形態に係る電子顕微鏡400の構成部材と同様の機能を有する部材については同一の符号を付し、その詳細な説明を省略する。
電子顕微鏡500は、図16に示すように、蛍光板10に投影された回折図形を撮像装置12に投影する光学系40を含む。
光学系40は、試料ステージ6の近傍に配置されている。光学系40は、電子顕微鏡5
00の本体の内部、すなわち、真空に維持された部分に配置されている。なお、光学系40の一部が電子顕微鏡本体の外部に配置されてもよい。この場合、撮像装置12は電子顕微鏡本体の外部に配置される。例えば、2つのミラー42のうちの一方が電子顕微鏡本体の内部に配置され、他方が電子顕微鏡本体の外部に配置されている場合、2つのミラー42の間には、蛍光板10が発した光を通過させる窓部が設けられる。
光学系40は、ミラー41と、ミラー42と、光学素子43と、レンズ44と、を有している。光学系40では、光の経路に沿って、光源側から、ミラー41、2つのミラー42、光学素子43、レンズ44の順で配置されている。
ミラー41は、蛍光板10に投影された回折図形を撮像装置12に結像させる。ミラー41は、正の屈折力を有している。なお、蛍光板10に投影された回折図形を撮像装置12に結像させることができればミラー41のかわりに、正の屈折力を有するレンズなどのその他の光学素子を用いてもよい。
ミラー42は、例えば、平面ミラーである。ミラー42は、複数配置されている。図示の例では、2つのミラー42が配置されている。ミラー42は、試料ステージ6などの電子顕微鏡500の内部の構造物を回避するために用いられる。また、ミラー42を用いることによって、回折像の結像面と電子顕微鏡500を構成する鏡筒などの構造物とを、平行にできる。これにより、光学系40を構成する光学素子や撮像装置12の傾きの調整が不要になる。
光学素子43は、蛍光板10に投影された回折図形を斜め方向から見たことによるパースペクティブを補正する。光学素子43は、例えば、自由曲面ミラーである。
パースペクティブが生じた状態では、蛍光板10上に格子状に光源が並んでいたとすると、それぞれの光源を起点とする光線が撮像装置12に投影されたときに、拡大側では光線の密度が低く、縮小側では光線の密度が高くなる。
自由曲面ミラーは、その曲率がミラー上の位置によって異なる。そのため、自由曲面ミラーを用いて光線を反射させると、光線とミラーの接点の位置に応じて光線の反射角度が変化する。これを利用することによって、蛍光板10上のそれぞれの光源を起点とする光線に、連続的に異なる反射角度を与えて、撮像装置12に投影される光線の単位面積あたりの密度を変えることが可能となる。これにより、パースペクティブを補正できる。
光学素子43の形状は特に限定されず、回転対称性を有していなくてもよい。例えば、光学素子43として回転対称な自由曲面ミラーの一部のみを利用してもよい。光学素子43は、パースペクティブ以外の像の歪みを光学的に補正する機能を備えていてもよい。また、光学素子43は、複数の自由曲面ミラーを有し、複数の自由曲面ミラーを用いて、パースペクティブを補正してもよい。さらに、光学素子43は、収差を補正するために、複数のレンズや複数のミラーを有していてもよい。
レンズ44は、光学素子43を通過した後の像の歪みや収差を光学的に補正する。レンズ44としては、例えば、ダブレットレンズ、トリプレットレンズ、ガウスレンズなどといった、凹レンズや凸レンズを組み合わせることによって球面収差、非点収差、および像面湾曲を補正するレンズタイプが用いられる。また、レンズ44において、非球面レンズを用いて球面収差を補正してもよいし、アプラナティックレンズによってコマ収差を補正してもよいし、これらを上記レンズタイプの構成要素としてもよい。
なお、レンズ44を用いた光学的な歪み補正を行わずに、処理部20の処理によって歪
みを補正してもよいし、レンズ44を用いた光学的な歪み補正と、処理部20の処理による歪み補正と、を併用してもよい。
撮像装置12は、電子顕微鏡本体の内部に配置されてもよいし、外部に配置されてもよい。撮像装置12を電子顕微鏡本体の外部に配置する場合、光学系40の一部を電子顕微鏡本体の外部に配置してもよい。
図17〜図19は、光学素子43の機能を説明するための図である。図17は、光学系40における光の経路を示す光線図である。図18は、光学系40の理想的な結像面における集光度合いを示す図である。図19は、光学系40の理想的な結像面における像の歪みを示す図である。
なお、図17〜図19において、「A」と「B」は、光線図において、蛍光板10側の光線と、結像側の光線とを、対応づけるための記号である。光学系40の理想的な結像面には、撮像装置12の検出面が配置される
図20〜図22は、参考例として、光学素子43が平面ミラーである場合の光学素子43の機能を説明するための図である。図20は、参考例に係る光学系40における光の経路を示す光線図である。図21は、参考例に係る光学系40の理想的な結像面における集光度合いを示す図である。図22は、参考例に係る光学系40の理想的な結像面における像の歪みを示す図である。
光学素子43が平面ミラーである場合、図22に示すように、理想的な結像面の位置において、下側であるA側に比べて、上側であるB側が縮小されている。さらに、図21に示す集光度合いを示す図では、点の分布が集中しているほど、撮像装置12の検出面上で集光している状態を表すが、A側に比べて、B側において上下方向の集光度が悪いことがわかる。これは、結像面が、撮像装置12の検出面に対して傾いていることを示しており、図20に示す光線図における焦点が撮像装置12の検出面よりも光源側に傾いていることと対応する。この状態で得られる回折像は、A側では、はっきりとした輪郭が得られるのに対して、B側ではぼやける。
これに対して、電子顕微鏡100の光学系40では、光学素子43が自由曲面ミラーであるため、図19に示すように、回折図形の上下方向の格子間隔の変化が軽減され、上下方向のパースペクティブが補正されていることがわかる。さらに、図18に示すように、理想的な結像面における上下方向の集光度合いが均一化されており、図17に示すように光線が交わる部分が理想的な結像面と重なっている。これは、光学素子43によって結像面の傾きが補正され、結像面と理想的な結像面とがほとんど一致していることを示している。
なお、図17〜図19に示す例では、非点収差が生じた状態、すなわち、結像面における左右方向の集光度合いと上下方向の集光度合いが一致していない状態となっている。このような非点収差や、図19に見られるような縦横圧縮比の差や糸巻収差などについては、レンズ44としてシリンドリカルレンズなどを配置することで補正できる。
電子顕微鏡500では、試料表面が水平または水平に近い状態となるように試料Sを保持した状態で、低エネルギーの電子線を試料Sに入射する。これにより、電子は試料Sの浅い領域で散乱を起こし、エネルギーロスの少ない電子が試料Sから放出される。この結果、蛍光板10には、菊池線を含む回折図形が投影される。蛍光板10に投影された回折図形は、光学系40によってパースペクティブを含む像の歪みが補正され、撮像装置12に投影される。撮像装置12によって撮影された回折像は、像取得部21に送られる。明
るさムラ補正部22は、回折像の明るさムラを補正する処理を行い、解析部24は、明るさムラが補正された回折像の結晶方位の解析を行う。なお、光学系40の構成によっては、明るさムラを補正した後に、処理部20において、歪み補正を行ってもよい。
5.2. 処理
電子顕微鏡500の処理部20の処理は、上述した図7に示す電子顕微鏡100の処理部20の処理と、回折像の歪みを補正する処理(S104)を行わない点を除いて同じであり、その説明を省略する。
5.3. 特徴
電子顕微鏡500は、例えば、以下の特徴を有する。
電子顕微鏡500は、蛍光板10に投影された回折図形を撮像装置12に投影する光学系40を含み、光学系40は蛍光板10に投影された回折図形を斜め方向から見たことによるパースペクティブを補正する光学素子43を有している。そのため、電子顕微鏡500では、光学的にパースペクティブを補正できるため、処理部20の処理に要する時間を短縮できる。
ここで、撮像装置12で得られる回折像には、収差やパースペクティブが含まれる。収差は主に光学系に含まれるレンズやミラーに起因するのに対し、パースペクティブは遠近感とも呼ばれ、物体と撮像装置の位置関係に起因する像の大きさの違いによって生じる。具体的には、遠くのものが小さく投影され、近くのものが大きく投影されることをいう。
物体を斜め方向から見る場合には、撮像装置に対して物体の一方の端は遠く、他方の端は近い。そのため、撮像装置には、中心と比べて、一方側では像が縮小され、他方側では像が拡大されたパースペクティブの生じた像が投影される。作動距離を小さくするほど、撮像装置と物体の一方の端との距離と、撮像装置と物体の他方の端との距離と、の差は大きくなり、パースペクティブは増大する。そのため、作動距離を小さくした場合、例えば、上述した図1に示す電子顕微鏡100では、歪み補正部23における処理が増大する。すなわち、電子顕微鏡100では、作動距離を小さくして空間分解能を向上させた場合に、歪み補正部23における処理に時間がかかってしまうという問題がある。
これに対して、電子顕微鏡500では、光学素子43によって光学的にパースペクティブを補正できるため、例えば作動距離を小さくしても、処理部20の処理に要する時間を短くできる。
なお、図示はしないが、光学系40の構成によっては、電子顕微鏡500の処理部20は、歪み補正部23で歪みの補正を行ってもよい。この場合でも、光学素子43によって光学的にパースペクティブを補正できるため、歪み補正部23の処理の時間を短縮できる。
6. 第6実施形態
次に、第6実施形態に係る電子顕微鏡について図面を参照しながら説明する。図23は、第6実施形態に係る電子顕微鏡600の構成を示す図である。以下、第6実施形態に係る電子顕微鏡600において、第1実施形態に係る電子顕微鏡100、第2実施形態に係る電子顕微鏡200、第3実施形態に係る電子顕微鏡300、第4実施形態に係る電子顕微鏡400、および第5実施形態に係る電子顕微鏡500の構成部材と同様の機能を有する部材については同一の符号を付し、その詳細な説明を省略する。
電子顕微鏡600では、図23に示すように、撮像装置12と光学系40の組み合わせ
た撮像部50が、複数設けられ、複数の撮像部50は、互いに異なる方向から蛍光板10に投影された回折図形を撮影する。
図23に示す例では、撮像部50は2つ設けられているが、撮像部50の数は3つ以上であってもよい。2つの撮像部50は、互いの死角を補い合うように配置されている。電子顕微鏡600では、撮像部50は光学素子43を含むため、撮像部50で得られた回折像は歪みが補正されている。
2つの撮像部50で蛍光板10に投影された回折図形を撮影することによって、上述した電子顕微鏡300および電子顕微鏡400と同様に、2つの回折像を得ることができ、2つの回折像を合成することで、蛍光板10に投影された回折図形の全体を含む回折像を得ることができる。
2つの回折像から試料Sの解析点の結晶方位を解析する処理部20の処理は、歪み補正部23の処理を行わない点、すなわち、図13に示す回折像の歪みの補正(S204)を行わない点を除いて、上述した図13に示す電子顕微鏡300の場合と同様であり、その説明を省略する。
電子顕微鏡600では、撮像部50は複数設けられ、複数の撮像部50は互いに異なる方向から蛍光板10に投影された回折図形を撮影する。また、画像合成部27は、複数の撮像装置12で取得された複数の回折像を合成する。そのため、電子顕微鏡600では、作動距離を短くした場合でも、複数の撮像部50を用いることによって、蛍光板10に投影された回折図形の全体を撮影できる。
ここで、撮像部50は、蛍光板10に投影された回折図形を斜め方向から撮影しているため、蛍光板10のなかでも撮像部50から遠い端部は暗く、撮像部50から近い端部は明るく見える。つまり、得られる回折像は、明るさムラを持つ。このように、明るさムラがある場合、例えば1つの撮像部50で回折像を撮影する場合、暗い部分の回折像を得るためには、明るい部分の回折像を得るよりも長い露光時間が必要となる。このような問題に対して、電子顕微鏡600では、複数の撮像部50が互いに異なる方向から回折図形を撮影するため、撮像部50に近い明るい部分だけを撮影できればよい。そのため、撮像部50が1つの場合よりも、短い露光時間で回折図形を撮影できる。したがって、電子顕微鏡600では、回折像の取得に要する時間が減少する。
7. 第7実施形態
7.1. 電子顕微鏡
次に、第7実施形態に係る電子顕微鏡について図面を参照しながら説明する。図24は、第7実施形態に係る電子顕微鏡700の構成を示す図である。図25は、蛍光板10を模式的に示す断面図である。
以下、第7実施形態に係る電子顕微鏡700において、第1実施形態に係る電子顕微鏡100、第2実施形態に係る電子顕微鏡200、第3実施形態に係る電子顕微鏡300、第4実施形態に係る電子顕微鏡400、第5実施形態に係る電子顕微鏡500、および第6実施形態に係る電子顕微鏡600の構成部材と同様の機能を有する部材については同一の符号を付し、その詳細な説明を省略する。
電子顕微鏡700では、蛍光板10は、図25に示すように、板部材106と、蛍光体104と、を有している。
板部材106は、蛍光体104が発した光を通過させる物質で構成された板である。板
部材106は、例えば、ガラス板、アクリル板である。板部材106は、第1面106aと、第1面106aとは反対側の第2面106bと、を有している。
板部材106の第1面106aには、蛍光体104が配置されている。板部材106の第2面106bには、複数の光ファイバー60が接続されている。第2面106bには、複数の光ファイバー60の端部が敷き詰められている。蛍光板10は、板部材106の第1面106aが試料ステージ6側、第2面106bが対物レンズ4側を向くように、対物レンズ4と試料ステージ6との間に配置される。
光ファイバー60は、蛍光体104が発した光を撮像装置12に導く。光ファイバー60の一方の端は、板部材106の第2面106bに接続され、光ファイバー60の他方の端は、撮像装置12に接続されている。板部材106の第2面106bにおける各光ファイバー60の位置の情報は、あらかじめ記憶部32に記憶されている。
撮像装置12は、例えば、光を電気信号に変換する光/電気交換装置である。撮像装置12は、光ファイバーからの光(光信号)を電気信号に変換して、処理部20に送る。撮像装置12は、例えば、光電子増倍管である。撮像装置12では、1本の光ファイバー60に対して1つの光電子増倍管が配置されている。すなわち、撮像装置12は、複数の光電子増倍管で構成されている。
撮像装置12は、CCDイメージセンサーや、CMOSイメージセンサーなどのイメージセンサーであってもよい。イメージセンサーは、2次元のイメージセンサーであってもよいし、1次元のイメージセンサーであってもよい。撮像装置12がイメージセンサーである場合、1本の光ファイバー60からの光を複数のイメージセンサーで検出してもよい。
電子顕微鏡700では、試料表面が水平または水平に近い状態となるように試料Sを保持した状態で、低エネルギーの電子線を試料Sに入射する。これにより、電子は試料Sの浅い領域で散乱を起こし、エネルギーロスの少ない電子が試料Sから放出される。この結果、蛍光板10には、菊池線を含む回折図形が投影される。蛍光板10で発生した光は、光ファイバー60によって撮像装置12に導かれる。撮像装置12では、光が電気信号に変換され、処理部20に送られる。
ここで、電子顕微鏡700では、光ファイバー60を用いることによって、回折図形を直上から取得できるため、回折図形を斜め方向から撮影したことによる画像の歪みを補正することなく、パースペクティブのない回折像を得ることができる。
像取得部21は、撮像装置12からの電気信号を取得し、記憶部32に記憶されている光ファイバー60の位置情報に基づいて、回折像を生成する。このようにして、回折像を取得できる。明るさムラ補正部22は、回折像の明るさムラを補正する処理を行い、解析部24は、明るさムラが補正された回折像の結晶方位の解析を行う。
7.2. 処理
電子顕微鏡700の処理部20の処理は、上述した図7に示す電子顕微鏡100の処理部20の処理と、回折像の歪みを補正する処理(S104)を行わない点を除いて同じであり、その説明を省略する。
7.3. 特徴
電子顕微鏡700では、蛍光板10は、蛍光体104が発する光を通過させる板部材106と、板部材106の第1面106aに配置された蛍光体104と、を有し、板部材1
06の第2面106bには、蛍光板10が発した光を撮像装置12に導く光ファイバー60が接続されている。そのため、電子顕微鏡700では、回折図形を直上から取得でき、回折図形を斜め方向から撮影したことによる画像の歪みを補正することなく、パースペクティブのない回折像を得ることができる。したがって、電子顕微鏡700では、処理部20の処理の時間を短縮できる。
7.4. 変形例
図26は、第7実施形態に係る電子顕微鏡の蛍光板10の変形例を説明するための図である。
電子顕微鏡700は、図26に示すように、蛍光板10が発した光を撮像装置12に導く複数の光ファイバー60を含み、蛍光板10は、複数の光ファイバー60の先端に配置された蛍光体104で構成されている。すなわち、蛍光板10は板部材を有しておらず、光ファイバー60の先端に、直接、蛍光体104が配置されている。例えば、光ファイバー60の束の先端に、蛍光体104が塗布されている。図26に示す蛍光板10を用いた場合でも、上述した図25に示す蛍光板10を用いた場合と同様の作用効果を奏することができる。
なお、上述した実施形態及び変形例は一例であって、これらに限定されるわけではない。例えば各実施形態及び各変形例は、適宜組み合わせることが可能である。
本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、さらに種々の変形が可能である。例えば、本発明は、実施形態で説明した構成と実質的に同一の構成を含む。実質的に同一の構成とは、例えば、機能、方法、及び結果が同一の構成、あるいは目的及び効果が同一の構成である。また、本発明は、実施形態で説明した構成の本質的でない部分を置き換えた構成を含む。また、本発明は、実施形態で説明した構成と同一の作用効果を奏する構成又は同一の目的を達成することができる構成を含む。また、本発明は、実施形態で説明した構成に公知技術を付加した構成を含む。
2…電子源、3…収束レンズ、4…対物レンズ、5…走査偏向器、6…試料ステージ、8…二次電子検出器、10…蛍光板、10a…貫通孔、12…撮像装置、20…処理部、21…像取得部、22…明るさムラ補正部、23…歪み補正部、24…解析部、25…画像サイズ補正部、26…位置補正部、27…画像合成部、30…表示部、32…記憶部、40…光学系、41…ミラー、42…ミラー、43…光学素子、44…レンズ、50…撮像部、60…光ファイバー、100…電子顕微鏡、102…金属板、102a…面、104…蛍光体、106…板部材、106a…第1面、106b…第2面、200…電子顕微鏡、202…ミラー、202a…第1ミラー、202b…第2ミラー、203a…ミラー、203b…ミラー、203c…ミラー、300…電子顕微鏡、400…電子顕微鏡、500…電子顕微鏡、600…電子顕微鏡、700…電子顕微鏡

Claims (17)

  1. 試料に電子線を照射して、前記試料から放出される電子によって形成される回折図形を取得するための電子顕微鏡であって、
    対物レンズと、
    前記試料が配置される試料ステージと、
    前記対物レンズと前記試料ステージとの間に配置され、前記試料から放出される電子によって形成された回折図形が投影される蛍光板と、
    前記蛍光板に投影された回折図形を撮影する撮像装置と、
    を含む、電子顕微鏡。
  2. 請求項1において、
    前記蛍光板に投影された回折図形を映すミラーを含み、
    前記撮像装置は、前記ミラーに映った回折図形を撮影する、電子顕微鏡。
  3. 請求項1において、
    前記蛍光板に投影された回折図形を互いに異なる方向から映す複数のミラーを含み、
    前記撮像装置は、前記複数のミラーに映った回折図形を撮影する、電子顕微鏡。
  4. 請求項3において、
    前記複数のミラーに映った回折図形を撮影して得られた複数の画像を合成する画像合成部を含む、電子顕微鏡。
  5. 請求項1において、
    前記撮像装置は、複数設けられ、
    複数の前記撮像装置は、互いに異なる方向から前記蛍光板に投影された回折図形を撮影する、電子顕微鏡。
  6. 請求項5において、
    複数の前記撮像装置で取得された複数の画像を合成する画像合成部を含む、電子顕微鏡。
  7. 請求項1ないし6のいずれか1項において、
    前記蛍光板に投影された回折図形を斜め方向から撮影したことによる画像の歪みを補正する歪み補正部を含む、電子顕微鏡。
  8. 請求項1において、
    前記蛍光板に投影された回折図形を前記撮像装置に投影する光学系を含み、
    前記光学系は、前記蛍光板に投影された回折図形を斜め方向から見たことによるパースペクティブを補正する光学素子を有している、電子顕微鏡。
  9. 請求項8において、
    前記光学素子は、自由曲面ミラーである、電子顕微鏡。
  10. 請求項8または9において、
    前記蛍光板に対して前記光学系とは異なる方向に配置された他の光学系と、
    他の撮像装置と、
    を含み、
    前記他の光学系は、前記蛍光板に投影された回折図形を前記他の撮像装置に投影し、
    前記他の光学系は、前記蛍光板に投影された回折図形を斜め方向から見たことによるパ
    ースペクティブを補正する光学素子を有している、電子顕微鏡。
  11. 請求項1ないし10のいずれか1項において、
    前記蛍光板は、
    金属板と、
    前記金属板上に配置された粉状の蛍光体と、
    を有している、電子顕微鏡。
  12. 請求項1において、
    前記蛍光板は、
    第1面と、前記第1面とは反対側の第2面と、を有する板部材と、
    前記第1面に配置された蛍光体と、
    を有し、
    前記板部材は、前記蛍光体が発する光を通過させ、
    前記第2面には、前記蛍光体が発した光を前記撮像装置に導く光ファイバーが接続されている、電子顕微鏡。
  13. 請求項1において、
    前記蛍光板が発した光を前記撮像装置に導く光ファイバーを含み、
    前記蛍光板は、前記光ファイバーの先端に配置された蛍光体で構成されている、電子顕微鏡。
  14. 請求項1ないし13のいずれか1項において、
    加速電圧は、10kV以下である、電子顕微鏡。
  15. 請求項1ないし14のいずれか1項において、
    加速電圧は、5kV以下である、電子顕微鏡。
  16. 請求項1ないし15のいずれか1項において、
    加速電圧は、前記試料から放出される電子のうち、散乱を起こした深さが40nm以下の電子の割合が80%以上となるような電圧である、電子顕微鏡。
  17. 請求項1ないし16のいずれか1項において、
    前記蛍光板は、前記試料に照射される電子を通過させる貫通孔を有している、電子顕微鏡。
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