JPH10209572A - 半導体発光素子およびその製造方法 - Google Patents

半導体発光素子およびその製造方法

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JPH10209572A
JPH10209572A JP825597A JP825597A JPH10209572A JP H10209572 A JPH10209572 A JP H10209572A JP 825597 A JP825597 A JP 825597A JP 825597 A JP825597 A JP 825597A JP H10209572 A JPH10209572 A JP H10209572A
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JP
Japan
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semiconductor light
emitting device
light emitting
exciton
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JP825597A
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English (en)
Inventor
Satoshi Kamiyama
智 上山
Ayumi Tsujimura
歩 辻村
Koji Nishikawa
孝司 西川
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Panasonic Holdings Corp
Original Assignee
Matsushita Electric Industrial Co Ltd
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Publication date
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 極低しきい値電流、長寿命の短波長半導体レ
ーザを提供する。 【解決手段】 基板101上に、n−GaAs層10
2、n−ZnMgSSeクラッド層103、i−ZnS
Se光ガイド層104、ZnCdSe量子ドット活性領
域105、i−ZnSSe光ガイド層106、p−Zn
MgSSeクラッド層107、p−ZnSe/ZnTe
超格子層108、p−ZnTeコンタクト層109が順
次積層されている。ZnCdSe量子ドット活性領域1
05の大きさはボーア半径の2倍に近いために電子−正
孔間のクーロン相互作用が強く、ひとつの電子−正孔対
は直ちに励起子となる。そして2つの励起子もほぼ10
0%励起子分子となり単独の2つの励起子に分離する確
率は極めて小さい。このように空間的に電子−正孔対を
閉じ込める作用によってわずかな励起子密度、あるいは
キャリア密度においても容易に反転分布を作り出すこと
ができる。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、光情報処理などに
用いられるZnSe系青緑色半導体発光素子およびGa
N系半導体発光素子およびそれを用いた光ディスク装置
に関するものである。
【0002】
【従来の技術】近年、光情報処理分野において高密度の
光ディスク装置の需要が高まりそれに必要不可欠なピッ
クアップ用光源として、より波長の短い半導体レーザが
強く求められている。現在、既に発振波長が635nm
程度の半導体レーザまではAlGaInP系材料を用い
て製品レベルのものが入手可能となっている。しかしさ
らに波長の短い半導体レーザについては未だ研究レベル
であり、ZnSe系材料による500nm付近の発振波
長を有する青緑色レーザや、GaN系材料による400
nmの紫色半導体レーザの開発が進められている。
【0003】ZnSe系青緑色半導体レーザは既に室温
での連続発振が実現されており、次世代の短波長半導体
レーザとして非常に有望視されている。図13にZnS
e系青緑色半導体レーザの素子断面構造図を示す。n−
GaAs基板501上にMBE法(分子線エピタキシー
法)により、n−GaAsバッファー層502、n−Z
nMgSSe第1クラッド層503、ZnSSe第1光
ガイド層504、ZnCdSe量子井戸活性層505、
ZnSSe第2光ガイド層506、p−ZnMgSSe
第2クラッド層507、p−ZnSe/ZnTe超格子
層508、p+−ZnTeコンタクト層509が連続的
に積層されている。さらにp電極511は絶縁膜510
をパターニングすることによってストライプ状にp+−
ZnTeコンタクト層509と接している。ここでp電
極511に+、n電極512に−の電圧を印加すると、
ZnCdSe量子井戸活性層505に電子およびホール
が注入され、それらが放射再結合することにより光学利
得が生じ、レーザ発振を起こす。ZnCdSe量子井戸
活性層505はバンドギャップが約2.4eVあるので
それに相当した光子エネルギーの光である500nm付
近の波長の光が放出される。
【0004】一方、GaN系紫外半導体レーザは現在、
室温パルス発振が実現されておりZnSe系半導体レー
ザ同様次世代の短波長半導体レーザとしての開発が進め
られている。
【0005】図14にGaN系紫外半導体レーザの素子
断面構造図を示す。サファイア基板601上にMOVP
E法(有機金属気相成長法)により、i−GaNバッフ
ァー層602、n−AlGaN第1クラッド層603、
GaN第1光ガイド層604、InGaN量子井戸活性
層605、GaN第2光ガイド層606、p−AlGa
N第2クラッド層607、p−GaNコンタクト層60
9が連続的に積層されている。さらにp電極611は絶
縁膜610をパターニングすることによってストライプ
状にp−GaNコンタクト層609と接している。また
ドライエッチングによりここでp電極611に+、n電
極612に−の電圧を印加すると、InGaNe量子井
戸活性層605に電子およびホールが注入され、それら
が放射再結合することにより光学利得が生じ、レーザ発
振を起こす。InGaN量子井戸活性層605はバンド
ギャップが約3.2eVあるのでそれに相当した光子エ
ネルギーの光である400nm付近の波長の光が放出さ
れる。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら前記Zn
Se系青緑色半導体レーザに用いられるII−VI族半
導体は本質的に構成原子であるZnやMg等のII族原
子とSやSe等のVI族原子がイオン性結合により結合
しているため、結合エネルギーが小さく結晶が不安定と
なる。半導体レーザは1kA/cm2程度の非常に高い
電流密度で動作させるため、結晶の不安定性により一般
のIII−V族半導体から成る半導体レーザと比較して
素子の寿命が短くなるという大きな問題点を有してい
る。
【0007】またGaN系半導体レーザに関しては、共
有結合であるIII−V族半導体を用いているためZn
Se系のような結晶の不安定性はないが、しきい値電流
密度や動作電圧が高く室温以上での連続発振が困難であ
る。したがってGaN系半導体レーザにおいてもしきい
値電流密度を低減させることが実用化において不可欠で
ある。
【0008】素子の寿命は動作させる電流密度に大きく
依存するため素子構造の工夫などによりしきい値電流を
低減させる試みが行われているが、伝導帯と価電子帯間
での反転分布による誘導放出を利用してレーザを動作さ
せる以上、大幅なしきい値電流の低減は理論的にも不可
能である。
【0009】一般に半導体レーザは、活性層中の伝導帯
−価電子帯間の反転分布によって生ずる誘導放出を光学
利得として用い、レーザ発振動作を実現している。すな
わち電子と正孔を活性層に注入し、電子の基底状態であ
る価電子帯に存在する電子よりも励起状態である伝導帯
に存在する電子の数が多い状態を作りだし、レーザ動作
を生じさせている。
【0010】しかしながら反転分布には5×1012cm
-2以上の非常に高いキャリア密度を要する。伝導帯およ
び価電子帯はエネルギー幅を有する帯であるためであ
る。図15に量子井戸中の伝導帯および価電子帯の状態
密度と各々のバンドに存在するキャリアのエネルギー分
布を示す。伝導帯下端および価電子帯上端において反転
分布が形成されるだけのキャリアを注入したときに図1
5のようにキャリアはバンド端のみならず、フェルミー
ディラック分布に従い広いエネルギー範囲に分布する。
したがってこれら全てを足し合わせたトータルのキャリ
ア密度は前述のように非常に高い値となっているわけで
ある。このような反転分布下においてレーザ発振に必要
な光学利得に寄与するのは各々のバンド端近傍のキャリ
アのみであるが、自然放出による再結合電流は全てのキ
ャリアである。この結果、以上のような伝導帯−価電子
帯間の反転分布を用いる限り、比較的高いしきい値電流
密度というものを避けることは不可能である。
【0011】近年、この伝導帯−価電子帯間の反転分布
に代わり、図16に示すような励起子分子−励起子状態
間の反転分布をレーザ発振に利用することが提案されて
いる。
【0012】電子−正孔対が存在しない状態を基底状態
A、電子、正孔が互いにクーロン力によって結びついた
励起子状態B、そしてスピンの異なる二つの励起子が結
びついた励起子分子状態Cは図16のようなエネルギー
の関係にある。基底状態Aのエネルギーをゼロとすると
励起子分子のエネルギーECは、励起子のエネルギーE
Bの2倍よりDだけ小さい値、すなわち2EB−Dとな
る。Dは励起子分子の結合エネルギーである。そして励
起子分子と励起子の間の遷移によってEB−Dのエネル
ギーの光を放出する。
【0013】図16には各状態のエネルギーを線で表し
ているが、励起子分子や励起子の状態はエネルギー的な
広がりは極めて小さくディスクリートなエネルギー状態
と考えて差し支えない。したがって伝導帯や価電子帯の
ように広いエネルギー範囲にわたって分布する不要なキ
ャリアは存在しない。しかも励起子分子−励起子間の遷
移を考えた場合、励起子状態が新たに基底状態となるが
この基底状態の密度は活性領域に注入する電子、正孔の
密度に依存するものであり伝導帯や価電子帯のように状
態密度という材料によって決まった値ではなく、工夫次
第ではいくらでも反転分布を生ずるキャリア密度を低減
できる可能性を有している。
【0014】ただし、室温以上で励起子分子−励起子間
の反転分布を実現するのでは容易ではない。この状態を
実現するための第1の条件は、室温以上で熱的に励起子
が独立した電子−正孔対に分解しないだけの強い結合エ
ネルギーを持っていること、第2の条件は同じく室温以
上で熱的に励起子分子が2つの励起子に分解しないだけ
の強い結合エネルギーを持っていること、そして第3の
条件は励起子間の距離が比較的近く2つの励起子が結合
して励起子分子を作る割合が高いことである。
【0015】第1、第2の条件はZnSe系やGaN系
のワイドギャップ半導体材料に量子井戸構造を適用する
ことで実現できることが知られている。一方第3の条件
は量子井戸を用いても励起子密度を1012cm-2程度ま
で高めないと実現できないことが既に理論的に明らかと
されている。しかし1012cm-2程度の励起子密度を得
ることは不可能である。この密度の励起子を得るために
はそれと同等以上の電子−正孔対を量子井戸に注入しな
ければならないが、この場合本来クーロン力によって結
合して励起子をつくるべき電子−正孔対に他の電子や正
孔が近接しすぎそのクーロン力を遮断する、いわゆるス
クリーニングが起こり、励起子の生成を妨げるからであ
る。
【0016】以上のように従来から用いられている量子
井戸を活性層とする半導体レーザでは、室温以上での励
起子分子−励起子間の反転分布を実現することができな
い。
【0017】本発明はかかる点に鑑みてなされたもので
あり、室温以上での励起子分子−励起子間の反転分布を
利用した半導体発光素子を実現し、低いしきい値電流密
度とともに実用十分な短波長半導体発光素子を実現する
ものである。
【0018】
【課題を解決するための手段】上記の課題を解決するた
めに、3次元のキャリア閉じこめ構造を用いて室温以上
での活性層中での励起子分子と励起子との状態間での反
転分布を可能とし、低しきい値電流密度、低動作電圧、
長寿命の短波長半導体レーザを提供する。
【0019】具体的には、室温以上の温度で活性領域に
おいて複数の励起子が存在可能であり、前記活性領域で
励起子間の距離をボーア半径の10倍以下に近接させる
機能を備えた半導体発光素子とする。
【0020】
【発明の実施の形態】
(実施の形態1)以下、この発明の実施例を図面を参照
しながら説明する。
【0021】図1に第1の発明による青緑色半導体レー
ザの構造図を示す。n−GaAs基板101上に、n−
GaAsバッファー層102、n−ZnMgSSe第1
クラッド層103、i−ZnSSe第1光ガイド層10
4、ZnCdSe量子ドット活性領域105、i−Zn
SSe第2光ガイド層106、p−ZnMgSSe第2
クラッド層107、p−ZnSe/ZnTe超格子層1
08、p−ZnTeコンタクト層109が順次積層され
ている。
【0022】さらにストライプ状に加工されたp−Zn
Se/ZnTe超格子層108およびp−ZnTeコン
タクト層109の両側に絶縁膜110、そして素子上部
および下部に電流注入のためのp電極111、n電極1
12が形成されている。ZnCdSe量子ドット活性領
域105は図1に示すように例えば直径が5nm、高さ
が2nmで成長面113に占める割合を1%とする。
【0023】このときの活性領域を含む面内のエネルギ
ーバンドギャップの分布を図2に示すが、ZnCdSe
量子ドット活性領域105はその周囲を囲むi−ZnS
Se第2光ガイド層106よりも約400meVバンド
ギャップが小さいのでそこに注入された電子−正孔対は
ZnCdSe量子ドット活性領域105に閉じ込められ
る。しかもZnCdSe量子ドット活性領域105の大
きさはボーア半径の2倍に近いために電子−正孔間のク
ーロン相互作用が強く、ひとつの電子−正孔対は直ちに
励起子となる。そして2つの励起子もほぼ100%励起
子分子となり単独の2つの励起子に分離する確率は極め
て小さい。
【0024】この場合の反転分布に必要なキャリア密度
は面内での平均に換算して5×10 10cm-2程度であ
る。
【0025】図3に励起子密度に対する励起子分子−励
起子間遷移に基づく光学利得特性を示す。励起子が存在
しないときは当然利得も光吸収も生じない。ZnCdS
e量子ドット活性領域105に1対の電子−正孔が注入
されると利得は負となり光吸収を生じるようになる。
【0026】1対の電子−正孔だけでは励起子分子を作
ることはできず、光吸収によりもう1つの励起子がで
き、最初の1対とともに初めて励起子分子を作るためで
ある。しかしZnCdSe量子ドット活性領域105に
2対目の電子−正孔対が注入され始めると励起子分子と
なるために反転分布となり光学利得曲線は図3のように
正に反転し、励起子分子の増加とともに利得が増大して
いく。
【0027】レーザ発振に必要な光学利得を100cm
-1と仮定すると、しきい値でのキャリア密度は5×10
10cm-2であり、一般の半導体レーザと比べると1/1
00程度である。
【0028】図4には再結合電流に対する光学利得特性
を示す。電子−正孔対に比べ、励起子の寿命は短いもの
のしきい値電流密度は約20A/cm2と非常に低い値
を見積もるこができる。一般の半導体レーザのしきい値
電流密度の1/20−1/100に相当する値であり発
光ダイオードに匹敵する。ストライプ幅5mm、共振器
長500mmの標準的なレーザ構造を仮定すると、しき
い値電流はわずか0.5mAである。ZnSe系青緑色
半導体レーザの素子寿命は動作電流に大きく依存するの
で本素子は寿命の点でも3桁程度の向上が期待できる。
【0029】本実施例ではZnCdSe量子ドット活性
領域105の大きさを直径が5nmとボーア半径の2倍
程度の理想的な場合を取り上げておりこのとき最も容易
に反転分布を作り出すことができるが、何らかの理由に
よりドットのサイズが数倍大きくなったとしても、図1
3に挙げた従来の量子井戸活性層よりも、励起子の局在
化による励起子分子の生成確率を高めることが可能であ
る。
【0030】引き続き図5に本発明の青緑色半導体レー
ザの製造方法を示す。有機金属気相成長法(MOVPE
法)によりn−GaAs基板101上に、n−GaAs
バッファー層102、n−ZnMgSSe第1クラッド
層103、i−ZnSSe第1光ガイド層104を例え
ば基板温度400℃で成長する。次に一旦成長を中断
し、基板温度を600℃に昇温した後ZnCdSeを
0.8原子層成長するのに相当する原料原子を供給す
る。この基板温度では原子のマイグレーションが大き
く、しかもZnCdSeはn−GaAs基板101との
格子不整合率が1.5%と大きいために、層状の結晶は
堆積せず、図5(b)のようにほぼ大きさのそろったド
ット状のZnCdSe量子ドット活性領域105が自己
組織的に形成される。
【0031】ドットの大きさはこの場合、直径が5n
m、高さが2nm程度、被覆率は約1%であるが、これ
らはZnCdSeの組成、基板温度、原料の供給量等の
条件によって可変できる。ここで再び基板温度を400
℃に下げた後、i−ZnSSe第2光ガイド層106を
成長し、第1の結晶成長は完了する。
【0032】次に基板を分子線エピタキシー(MBE)
装置に移し、基板温度300℃でp−ZnMgSSe第
2クラッド層107、p−ZnSe/ZnTe超格子層
108、p−ZnTeコンタクト層109を成長する。
その後結晶基板を取り出し、ストライプエッチング、絶
縁膜110の堆積、p電極111およびn電極112の
形成を行って本素子の作製がすべて完了する。
【0033】本製造方法では結晶成長を2回に分け、第
1の成長ではMOVPE法を用い、量子ドットの自己組
織的形成を可能とし、第2の成長においては、低抵抗の
p型ドーピングをMBE法におけるNラジカルドーピン
グにより実現したものである。
【0034】以上のように本発明では3次元の量子閉じ
込めを利用して室温以上においても励起子分子−励起子
の状態間での反転分布を可能とし、極低動作電流、長寿
命の青緑色半導体レーザを実現できる。
【0035】なお、本発明はZnSe系半導体レーザに
ついて述べたが例えばGaN系等励起子の結合エネルギ
ーが大きく、室温以上で励起子が安定して存在しうる材
料においても適用が可能であることは言うまでもない。
【0036】(実施の形態2)図6に第2の発明による
青緑色半導体レーザの構造図を示す。
【0037】n−GaAs基板201上に、n−GaA
sバッファー層202、n−ZnMgSSe第1クラッ
ド層203、i−ZnSSe第1光ガイド層204、Z
nCdSe量子井戸活性層205、i−ZnSSe第2
光ガイド層206、i−ZnMgSe歪導入ドット領域
213、p−ZnMgSSe第2クラッド層207、p
−ZnSe/ZnTe超格子層208、p−ZnTeコ
ンタクト層209が順次積層されている。
【0038】さらにストライプ状に加工されたp−Zn
Se/ZnTe超格子層208およびp−ZnTeコン
タクト層209の両側に絶縁膜210、そして素子上部
および下部に電流注入のためのp電極211、n電極2
12が形成されている。
【0039】ZnCdSe量子活性層205の膜厚は5
nmである。またi−ZnMgSeドット領域213は
図6に示すように例えば直径が20nm、高さが8nm
とする。ZnCdSe量子井戸活性層205はその上に
位置するi−ZnMgSe歪導入ドット領域213から
の歪の影響を受ける。
【0040】本来、ZnCdSe量子井戸活性層205
にはn−GaAs基板201との格子定数の違いにより
面内に1.5%の圧縮歪みが存在する。さらにi−Zn
MgSe歪導入ドット領域213は格子定数差から見積
もると約3%の圧縮歪となる。しかし実際には周囲の結
晶を膨張させ、i−ZnMgSe歪導入ドット領域21
3自体の歪みは少し緩和している。
【0041】したがってi−ZnMgSe歪導入ドット
領域214の直下のZnCdSe量子井戸活性層205
では元々の圧縮歪1.5%より小さくなり、i−ZnS
Se第2光ガイド層206の膜厚を例えば100nmと
すると、最小0.5%ぐらいになっている。このときの
ZnCdSe量子井戸活性層205面内でのエネルギー
バンドギャップの分布を図7に示すが、i−ZnMgS
e歪導入ドット領域214の下に歪量の違いにより深さ
100meVのポテンシャル井戸が形成されている。
【0042】ここに電子−正孔対は閉じこめられる。し
かもi−ZnMgSe歪導入ドット領域213の大きさ
はボーア半径の2倍に近いためにポテンシャル井戸内で
の電子−正孔間のクーロン相互作用が強く、ひとつの電
子−正孔対は直ちに励起子となる。そして2つの励起子
もほぼ100%励起子分子となり単独の2つの励起子に
分離する確率は極めて小さい。この結果、実施の形態1
で述べた半導体レーザと同様に励起子密度、あるいはキ
ャリア密度においても容易に反転分布が実現できるので
極低しきい値電流の良好な特性が容易に得られる。
【0043】本実施例ではi−ZnMgSe歪導入ドッ
ト領域214の大きさを直径が5nmとボーア半径の数
倍程度の理想的な場合を取り上げておりこのとき最も容
易に反転分布を作り出すことができるが、何らかの理由
によりドットのサイズがさらに数倍大きくなったとして
も、図13に挙げた従来の量子井戸活性層よりも、励起
子の局在化による励起子分子の生成確率を高めることが
可能である。
【0044】引き続き図8に本発明の青緑色半導体レー
ザの製造方法を示す。有機金属気相成長法(MOVPE
法)によりn−GaAs基板201上に、n−GaAs
バッファー層202、n−ZnMgSSe第1クラッド
層203、i−ZnSSe第1光ガイド層204、Zn
CdSe量子井戸活性層205、i−ZnSSe第2光
ガイド層206を例えば基板温度400℃で成長する。
次に一旦成長を中断し、基板温度を600℃に昇温した
後ZnMgSeを3.2原子層成長するのに相当する原
料原子を供給する。この基板温度では原子のマイグレー
ションが大きく、しかもZnMgSeはn−GaAs基
板101との格子不整合率が3%と大きいために、層状
の結晶は堆積せず、図8(b)のようにほぼ大きさのそ
ろったドット状のi−ZnMgSe歪導入ドット領域2
13が自己組織的に形成される。
【0045】ドットの大きさはこの場合、直径が5n
m、高さが2nm程度、被覆率は約1%であるが、これ
らはZnMgSeの組成、基板温度、原料の供給量等の
条件によって可変できる。次に基板を分子線エピタキシ
ー(MBE)装置に移し、基板温度300℃でp−Zn
MgSSe第2クラッド層207、p−ZnSe/Zn
Te超格子層208、p−ZnTeコンタクト層209
を成長する。その後結晶基板を取り出し、ストライプエ
ッチング、絶縁膜210の堆積、p電極211およびn
電極212の形成を行って本素子の作製がすべて完了す
る。
【0046】本製造方法では結晶成長を2回に分け、第
1の成長ではMOVPE法を用い、量子ドットの自己組
織的形成を可能とし、第2の成長においては低抵抗のp
型ドーピングをMBE法におけるNラジカルドーピング
により実現したものである。
【0047】以上のように本発明では3次元のキャリア
閉じ込めを利用して室温以上においても励起子分子−励
起子の状態間での反転分布を可能とし、極低動作電流、
長寿命の青緑色半導体レーザを実現できる。
【0048】なお、本発明はZnSe半導体レーザにつ
いて述べたが例えばGaN系等励起子の結合エネルギー
が大きく、室温以上で励起子が安定して存在しうる材料
においても適用が可能であることは言うまでもない。た
だしGaN系の場合にはp型ドーピングはMOVPE法
においても可能であるため全ての結晶をMOVPE法で
作製可能である。また、ここでは歪導入ドット領域を第
2光ガイド層の上においているが、活性層に近接して歪
を及ぼすことが可能な距離にあれば、如何なる場所でも
よい。
【0049】(実施の形態3)図9に第3の発明による
青緑色半導体レーザの構造図を示す。あらかじめMOV
PE法により半隋円体状のInGaAs微結晶315が
形成されたn−GaAs基板301上に、n−GaAs
バッファー層302、n−ZnMgSSe第1クラッド
層303、i−ZnSSe第1光ガイド層304、Zn
CdSe量子井戸活性層305、i−ZnSSe第2光
ガイド層306、p−ZnMgSSe第2クラッド層3
07、p−ZnSe/ZnTe超格子層308、p−Z
nTeコンタクト層309がMBE法により、例えば基
板温度300℃で順次積層されている。さらにストライ
プ状に加工されたp−ZnSe/ZnTe超格子層30
8およびp−ZnTeコンタクト層309の両側に絶縁
膜310、そして素子上部および下部に電流注入のため
のp電極311、n電極312が形成されている。
【0050】半隋円体状のInGaAs微結晶315は
MOVPE法により例えば基板温度800℃で0.8原
子層に相当する原料を供給して成長を行えば、自己組織
的に作製が可能で、その大きさは例えば直径が5nm、
高さが2nmとする。半隋円体状のInGaAs微結晶
315付近の上部に積層された結晶の様子を拡大したの
を図10に示す。
【0051】ZnCdSe量子井戸活性層305の膜厚
は半隋円体状のInGaAs微結晶315の上およびそ
の側面下部では厚く、最大で約5nmとなっているのに
対し、平坦部では1nm程度と薄くなっている。このた
め量子効果の作用により、図11に示すように半隋円体
状のInGaAs微結晶315付近が他の平坦部に比べ
てエネルギーバンドギャップが約100meV小さくな
っている。この結果、実施の形態1および2で述べた素
子と同様にこの領域に選択的にキャリアを閉じこめるこ
とが可能となり、ひとつの電子−正孔対は直ちに励起子
となる。そして2つの励起子もほぼ100%励起子分子
となり単独の2つの励起子に分離する確率は極めて小さ
い。
【0052】このように空間的に電子−正孔対を閉じ込
める作用によってわずかな励起子密度、あるいはキャリ
ア密度においても容易に反転分布を作り出すことができ
る。この結果、実施の形態1で述べた半導体レーザと同
様に極低しきい値電流の良好な特性が容易に得られる。
【0053】本実施例では半隋円体状のInGaAs微
結晶315の大きさを直径が5nmとボーア半径の2倍
程度の理想的な場合を取り上げておりこのとき最も容易
に反転分布を作り出すことができるが、何らかの理由に
よりドットのサイズが数倍大きくなったとしても、図1
3に挙げた従来の量子井戸活性層よりも、励起子の局在
化による励起子分子の生成確率を高めることが可能であ
る。
【0054】以上のように本発明ではキャリアの3次元
の閉じ込めを利用して室温以上においても励起子分子−
励起子の状態間での反転分布を可能とし、極低動作電
流、長寿命の青緑色半導体レーザを実現できる。
【0055】なお、本発明はZnSe系半導体レーザに
ついて述べたが例えばGaN系等励起子の結合エネルギ
ーが大きく、室温以上で励起子が安定して存在しうる材
料においても適用が可能であることは言うまでもない。
【0056】(実施の形態4)実施の形態1から3で述
べた極低しきい値電流半導体レーザを光ディスク装置に
応用したものを図12に示す。キャンにレーザチップが
入ったキャンタイプの半導体レーザ401より波長51
0nmのレーザ光402は、コリメータレンズ403で
平行光にされた後、回折格子404で3ビームに分離さ
れ(図示していない)、ハーフプリズム405を通り集
光レンズ406で集光され、光ディスク407上に直径
1μmのスポットを結ぶ。ディスク407上での反射光
は、再度、集光レンズ406を通り、ハーフプリズム4
05で反射され、受光レンズ408で絞られたシリンド
リカルレンズ409を経てホトダイオード410に入り
電気信号に変換される。
【0057】この際、分割された3ビームにより光ディ
スク407の半径方向のずれを検出し、またシリンドリ
カルレンズ409により焦点の位置ずれを検出する。そ
してこのずれは、駆動系411により光学系が微動調整
され修正される。
【0058】このように、本発明の半導体レーザを、半
導体レーザからのレーザ光を光ディスクに導く集光光学
系、光ディスクで反射した光を読む光検出器を備えた光
ディスク装置に応用すれば、非常に消費電力の少ない光
ディスク装置が可能となる。
【0059】
【発明の効果】以上のように本発明では3次元のキャリ
ア閉じ込めを利用して室温以上においても励起子分子−
励起子の状態間での反転分布を可能とし、極低動作電
流、長寿命の半導体発光素子を実現できる。またこの半
導体発光素子を用い、半導体発光素子からのレーザ光を
光ディスクに導く集光光学系、光ディスクで反射した光
を読む光検出器を備えた光ディスク装置に応用すれば、
非常に消費電力の少ない光ディスク装置が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】第1の発明による青緑色半導体レーザの構造図
【図2】活性領域を含む面内のエネルギーバンドギャッ
プの分布を示す図
【図3】励起子密度に対する励起子分子−励起子間遷移
に基づく光学利得特性を示す図
【図4】再結合電流に対する光学利得特性を示す図
【図5】第1の発明による青緑色半導体レーザの製造方
法を示す図
【図6】第2の発明による青緑色半導体レーザの構造図
【図7】ZnCdSe量子井戸活性層205面内でのエ
ネルギーバンドギャップの分布を示す図
【図8】第2の発明による青緑色半導体レーザの製造方
法を示す図
【図9】第3の発明による青緑色半導体レーザの構造図
【図10】InGaAs微結晶315付近の上部に積層
された結晶の拡大図
【図11】ZnCdSe量子井戸活性層305面内での
エネルギーバンドギャップの分布を示す図
【図12】極低しきい値電流半導体レーザを搭載した光
ディスク装置の構成図
【図13】従来のZnSe系青緑半導体レーザの素子断
面構成図
【図14】従来のGaN系紫外光半導体レーザの素子断
面構造図
【図15】量子井戸中の伝導帯および価電子帯の状態密
度と各々のバンドに存在するキャリアのエネルギー分布
を示す図
【図16】励起子分子−励起子状態のエネルギーを示す
【符号の説明】
101 n−GaAs基板 102 n−GaAsバッファー層 103 n−ZnMgSSe第1クラッド層 104 i−ZnSSe第1光ガイド層 105 ZnCdSe量子ドット活性領域 106 i−ZnSSe第2光ガイド層 107 p−ZnMgSSe第2クラッド層 108 p−ZnSe/ZnTe超格子層 109 p−ZnTeコンタクト層 110 絶縁膜 111 p電極 112 n電極 113 成長面 201 n−GaAs基板 202 n−GaAsバッファー層 203 n−ZnMgSSe第1クラッド層 204 i−ZnSSe第1光ガイド層 205 ZnCdSe量子井戸活性層 206 i−ZnSSe第2光ガイド層 207 p−ZnMgSSe第2クラッド層 208 p−ZnSe/ZnTe超格子層 209 p−ZnTeコンタクト層 210 絶縁膜 211 p電極 212 n電極 213 i−ZnMgSe歪導入ドット領域 301 n−GaAs基板 302 n−GaAsバッファー層 303 n−ZnMgSSe第1クラッド層 304 i−ZnSSe第1光ガイド層 305 ZnCdSe量子井戸活性層 306 i−ZnSSe第2光ガイド層 307 p−ZnMgSSe第2クラッド層 308 p−ZnSe/ZnTe超格子層 309 p−ZnTeコンタクト層 310 絶縁膜 311 p電極 312 n電極 315 InGaAs微結晶 401 半導体レーザ 402 レーザ光 403 コリメータレンズ 404 回折格子 405 ハーフプリズム 406 集光レンズ 407 光ディスク 408 受光レンズ 409 シリンドリカルレンズ 410 ホトダイオード 501 n−GaAs基板 502 n−GaAsバッファー層 503 n−ZnMgSSe第1クラッド層 504 i−ZnSSe第1光ガイド層 505 ZnCdSe量子井戸活性層 506 i−ZnSSe第2光ガイド層 507 p−ZnMgSSe第2クラッド層 508 p−ZnSe/ZnTe超格子層 509 p−ZnTeコンタクト層 510 絶縁膜 511 p電極 512 n電極 601 サファイア基板 602 i−GaNバッファー層 603 n−AlGaN第1クラッド層 604 GaN第1光ガイド層 605 InGaN量子井戸活性層 606 GaN第2光ガイド層 607 p−AlGaN第2クラッド層 609 p−GaNコンタクト層 610 絶縁膜 611 p電極 612 n電極

Claims (13)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 室温以上の温度で活性領域において複数
    の励起子が存在可能であり、前記活性領域で励起子間の
    距離をボーア半径の10倍以下に近接させる機能を備え
    た半導体発光素子。
  2. 【請求項2】 活性領域が直径20nm以下、厚さ10
    nm以下の複数の円盤状あるいは半隋円体状の結晶であ
    る半導体発光素子。
  3. 【請求項3】 活性領域がZnSeまたはGaNを含む
    材料により構成されている請求項1に記載の半導体発光
    素子。
  4. 【請求項4】 基板に対して少なくとも1%以上の格子
    不整合を有する材料を自己組織的に円盤状あるいは半隋
    円体状に形成した活性領域とを成長する工程を有する半
    導体発光素子の製造方法。
  5. 【請求項5】 活性領域が少なくともZnSe、Zn
    S、MgSe、MgS、ZnTeのいずれかを含む請求
    項4に記載の半導体発光素子の製造方法。
  6. 【請求項6】 基板上にn型クラッド層と、前記基板に
    対して少なくとも1%以上の格子不整合を有する材料を
    自己組織的に円盤状あるいは半隋円体状に形成した活性
    領域と、p型クラッド層を成長する工程とを備えた半導
    体発光素子の製造方法。
  7. 【請求項7】 活性領域が少なくともGaN、AlN、
    InNのいずれかを含む請求項6に記載の半導体発光素
    子の製造方法。
  8. 【請求項8】 量子井戸活性層と、前記量子井戸活性層
    から1μm以内の距離に位置し直径20nm以下、厚さ
    10nm以下でしかも基板との格子不整合率が1%以上
    の材料から成る複数の円盤状あるいは半隋円体状の結晶
    により構成される半導体発光素子。
  9. 【請求項9】 量子井戸活性層がZnSeまたはGaN
    を含む材料により構成されている請求項8に記載の半導
    体発光素子。
  10. 【請求項10】 有機金属気相成長法によりn型クラッ
    ド層と、基板に対して少なくとも1%以上の格子不整合
    を有する材料を自己組織的に円盤状あるいは半隋円体状
    に形成した歪導入領域とを成長する工程と、分子線エピ
    タキシー法によりp型クラッド層を成長する工程を備え
    た半導体発光素子の製造方法。
  11. 【請求項11】 量子井戸活性層がZnSeまたはGa
    Nを含む材料により構成されている請求項10に記載の
    半導体発光素子の製造方法。
  12. 【請求項12】 半導体基板上に直径20nm以下、厚
    さ10nm以下の複数の円盤状あるいは半隋円体状の微
    結晶を備え、前記基板上に量子井戸活性層を含む発光素
    子結晶が積層されている半導体発光素子。
  13. 【請求項13】 有機金属気相成長法により基板に対し
    て少なくとも1%以上の格子不整合を有する材料を自己
    組織的に円盤状あるいは半隋円体状に形成した微結晶を
    成長する工程と、分子線エピタキシー法により量子井戸
    活性層を含む発光素子結晶を成長する工程を備えた半導
    体発光素子の製造方法。
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Cited By (4)

* Cited by examiner, † Cited by third party
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DE10134825A1 (de) * 2001-06-20 2003-01-09 Infineon Technologies Ag Photonen-Emitter und Datenübertragungsvorrichtung
US7030407B2 (en) 2001-06-20 2006-04-18 Infineon Technologies Ag Photon emitter and data transmission device
JP2006185985A (ja) * 2004-12-27 2006-07-13 Sony Corp 発光デバイス及びその製造方法
CN105870273A (zh) * 2016-06-02 2016-08-17 厦门市三安光电科技有限公司 一种氮化物发光二极管

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