JPH10205383A - ディーゼルエンジンの燃料噴射装置 - Google Patents

ディーゼルエンジンの燃料噴射装置

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JPH10205383A
JPH10205383A JP9020881A JP2088197A JPH10205383A JP H10205383 A JPH10205383 A JP H10205383A JP 9020881 A JP9020881 A JP 9020881A JP 2088197 A JP2088197 A JP 2088197A JP H10205383 A JPH10205383 A JP H10205383A
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fuel
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engine
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昌明 西頭
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Isuzu Motors Ltd
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 この発明は、パイロット噴射の終了に伴って
生じる燃料圧の変動によってメイン噴射の燃料噴射率が
変動してエンジンの回転速度が不安定になるのを防止す
るエンジンの燃料噴射装置を提供する。 【解決手段】 メイン噴射の開始時期θmを基準とし
て、パイロット噴射の噴射時期θpを、パイロット噴射
の終了時tp2からメイン噴射の開始時tm1との間の
期間Tが一定となるように電子制御する。アイドリング
運転中で、メイン噴射が、パイロット噴射の終了時tp
2の水撃作用によって生じる燃料路内の燃料圧の変動中
に開始され、且つエンジンの回転速度が変化しても、パ
イロット噴射の終了時tp2から期間Tの経過後では燃
料圧の大きさは略同じであるから、メイン噴射の燃料圧
に変化はなく、エンジンの回転速度が不安定にならな
い。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】この発明は、コモンレールに
貯留された燃料をインジェクタによって噴射するディー
ゼルエンジンの燃料噴射装置に関する。
【0002】
【従来の技術】ディーゼルエンジンの燃料噴射制御に関
して、噴射圧力の高圧化を図り、且つ燃料の噴射タイミ
ング及び噴射量等の噴射条件をエンジンの運転状態に応
じて最適に制御する方法として、コモンレール燃料噴射
システムが知られている。コモンレール燃料噴射システ
ムは、燃料ポンプによって所定圧力に加圧された燃料を
貯留し、貯留された加圧燃料をコントローラの制御の下
で複数のインジェクタによって各燃焼室内に噴射するシ
ステムである。コモンレールから分岐管を通じて各イン
ジェクタの噴孔に至る燃料流路内には、常時、噴射圧力
相当の燃料圧が作用している。コントローラは、各イン
ジェクタにおいて加圧燃料をエンジンの運転状態に対し
て最適な噴射条件で噴射するように各インジェクタを制
御する。
【0003】コモンレール燃料噴射システムの概要を図
3に記載した例に基づいて説明する。コモンレール燃料
噴射システムにおいて、燃料をエンジンの各燃焼室内に
噴射する複数のインジェクタ1への燃料供給は、コモン
レール2から、燃料流路の一部を構成する分岐管3を通
じて供給される。燃料は、燃料タンク4からフィルタ5
及びフィードポンプ6を経た後、燃料管7を通じて燃料
ポンプである可変容量式高圧ポンプ8に供給される。可
変容量式高圧ポンプ8は、燃料を要求される所定圧力に
昇圧し、燃料管9を通じてコモンレール2に供給する。
また、可変容量式高圧ポンプ8は、コモンレール2にお
ける燃料圧を所定圧力に維持する。可変容量式高圧ポン
プ8からリリーフされた燃料は、戻し管10を通じて燃
料タンク4に戻される。また、分岐管3からインジェク
タ1に供給された燃料のうち、燃焼室への噴射に費やさ
れなかった燃料は、戻し管11を通じて燃料タンク4に
戻される。
【0004】電子制御ユニットであるコントローラ12
には、エンジン回転数Neを検出するためのエンジン気
筒判別センサ及びクランク角度センサ、アクセル踏込み
量Accを検出するためのアクセル踏込み量センサ、冷
却水温度Twを検出するための水温センサ、並びに吸気
管内圧力Pbを検出するための吸気管内圧力センサ等の
エンジンに関する運転状態を検出するための各種センサ
からの信号が入力されている。コントローラ12は、こ
れらの信号に基づいて、エンジン出力が運転状態に即し
た最適出力になるように、インジェクタ1による燃料の
噴射条件、即ち、燃料の噴射タイミング及び噴射量を制
御する。また、コモンレール2には圧力センサ13が設
けられており、圧力センサ13によって検出されたコモ
ンレール2内の燃料圧の検出信号がコントローラ12に
送られる。インジェクタ1から燃料が噴射されることで
コモンレール2内の燃料が消費されても、コントローラ
12は、コモンレール2内の燃料圧が一定となるように
可変容量式高圧ポンプ8の吐出圧を制御する。
【0005】図4には、インジェクタ1の構造が断面と
して示されている。インジェクタ1は、シリンダヘッド
等のベースに設けられた穴部にシール部材によって密封
状態に取付けられるものであるが、シリンダヘッド等の
構造については図示を省略している。インジェクタ1の
上側側部には燃料入口継手20を介して分岐管3が接続
されている。インジェクタ1の本体内部には、燃料通路
21,22が形成されており、分岐管3及び燃料通路2
1,22から燃料流路が構成されている。燃料流路を通
じて供給された燃料は、燃料溜まり23及び針弁24の
周囲の通路を通じて、針弁24のリフト時に開く噴口2
5から燃焼室内に噴射される。
【0006】インジェクタ1には、針弁24のリフトを
制御するために、バランスチャンバ式の針弁リフト機構
が設けられている。即ち、インジェクタ1の最上部に
は、電磁アクチュエータ26が設けられており、コント
ローラ12からの制御信号としての制御電流が、信号線
27を通じて電磁アクチュエータ26の電磁ソレノイド
28に送られる。電磁ソレノイド28が励磁されると、
アーマチュア29が上昇して、燃料路31の端部に設け
られた開閉弁32を開くので、燃料流路からバランスチ
ャンバ30に供給された燃料の燃料圧が燃料路31を通
じて解放される。インジェクタ1の本体内部に形成され
た中空穴33内には、コントロールピストン34が昇降
可能に設けられている。低下したバランスチャンバ30
内の圧力に基づく力とリターンスプリング35のばね力
とによってコントロールピストン34に働く押下げ力よ
りも、燃料溜まり23に臨むテーパ面36に作用する燃
料圧に基づいてコントロールピストン34を押し上げる
力が勝るため、コントロールピストン34は上昇する。
その結果、針弁24のリフトが許容され、噴口25から
燃料が噴射される。燃料噴射量は、燃料流路内の燃料圧
と針弁のリフト(リフト量、リフト期間)とによって定
められる。針弁のリフトは、開閉弁32の開閉制御をす
るために電磁ソレノイド28へ送られる制御電流として
の噴射パルスによって決定される。
【0007】一般に、図6にインジェクタ1の燃料噴射
量Qとコントローラ12から電磁ソレノイド28に供給
される噴射パルス幅Wとの関係が、燃料圧Pc(コモン
レール2内の燃料圧)をパラメータとして示されてい
る。燃料圧Pcを一定とすると、噴射パルス幅Wが大き
いほど燃料噴射量Qは多くなり、また、同じ噴射パルス
幅Wであっても、燃料圧Pcが大であるほど、燃料噴射
量Qは大きくなる。一方、燃料噴射は、噴射パルスの立
ち上がり時刻と立ち下がり時刻に対して一定時間遅れて
開始又は停止されるので、噴射パルスがオン又はオフと
なる時期を制御することによって、噴射タイミングを制
御することが可能である。
【0008】ところで、ディーゼルエンジンは、アイド
リング運転のような低速、低負荷の運転状態にあるとき
に燃焼騒音を生じやすい。かかる燃焼騒音は、燃料の着
火遅れに起因して発生するものである。そのため、燃焼
騒音に対処する手段として、燃焼サイクルにおける総燃
料噴射量のうち一部の量の燃料をメイン噴射に先行して
行うパイロット噴射(予備噴射)で噴射することが有効
であることが知られている。パイロット噴射によって噴
射された燃料を燃焼させることによって燃焼室の壁面の
温度を充分に高めておき、その後に残りの主たる燃料量
を噴射(メイン噴射)するので、メイン噴射の着火遅れ
を防止することができる。
【0009】燃焼サイクル毎の燃料噴射量は、図5に示
される基本噴射量特性マップに基づいて計算される。図
5には、横軸をエンジン回転数Neとし縦軸を基本噴射
量Qbとし、パラメータとしてのアクセル踏込み量Ac
cを幾つかの値に採ったときのエンジン回転数Neに応
じた基本噴射量Qbの変化の様子が示されている。図5
によれば、アクセル踏込み量Accが一定の状態では、
エンジン回転数Neが上昇すると基本噴射量Qbが減少
する特性を示すことが分かる。したがって、エンジン回
転数Neが何らかの原因で増加したとき、基本噴射量Q
bに合わせて燃料噴射量を減少するようにフィードバッ
クを働かせると、エンジン回転数Neは低下する方向に
変化し、結局、エンジンの内部抵抗と釣り合うときの燃
料噴射量で回転速度が安定することになる。
【0010】アイドリング運転時には必ずしもエンジン
の回転速度は常に固定された値ではなく、例えば車両に
搭載したエンジンの場合、エンジンの駆動力をコンプレ
ッサやポンプ等の機器の駆動力に使用しているときに
は、その必要とする駆動力に応じてエンジンの回転速度
を変更する必要がある。したがって、通常は、図5に示
す基本噴射量に対して必要な動力に応じた補正噴射量が
加算される。パイロット噴射を行う場合には、基本噴射
量と補正噴射量との合計である総噴射量が、パイロット
噴射による噴射量とメイン噴射による噴射量とに分配さ
れる。
【0011】パイロット噴射とメイン噴射との噴射タイ
ミングと噴射量の分配についての制御については、従
来、様々な研究及び提案がなされてきている。パイロッ
ト噴射制御として、例えば、特開昭63−5140号公
報に開示されたものがある。この公報に開示されたパイ
ロット噴射制御は、パイロット噴射及びメイン噴射が燃
料加圧源である噴射ポンプの加圧室の圧力自体を調圧す
ることで行われるが、メイン噴射は、パイロット噴射が
終了した時点を基準として、所定期間経過後にメイン噴
射が開始され、既に求められているメイン噴射量に従っ
てメイン噴射の終了時点が決定される。
【0012】パイロット噴射終了時からメイン噴射開始
時までの前記所定期間は、エンジンの運転状態、即ち、
エンジンの回転速度や噴射量(負荷)が大きくなるほど
短くなるようにクランク角を用いて制御されることが多
い。コモンレール燃料噴射システムにおけるパイロット
噴射の制御では、通常、パイロット噴射の終了時とメイ
ン噴射の開始時との間の間隔が、クランク角度で一定に
なるように制御され、パイロット噴射とメイン噴射との
総噴射期間が燃焼サイクル周期において長くなり過ぎな
いように制御される。
【0013】
【発明が解決しようとする課題】パイロット噴射は、エ
ンジンの燃焼騒音を抑制する効果を奏するものである
が、コモンレールから各インジェクタに至る分岐管やイ
ンジェクタ本体内の燃料通路、即ち、燃料流路に存在す
る燃料に圧力変動を生じさせて、その後のメイン噴射の
燃料噴射率(したがって、燃料噴射量)に影響を及ぼす
ことがある。即ち、パイロット噴射の終了は、インジェ
クタの針弁によって燃料通路を遮断することによって行
われるが、針弁によって燃料通路を急激に遮断すると、
燃料流路に存在する燃料が水撃作用によって圧力変動を
生じる。メイン噴射は、燃料流路に存在する燃料が圧力
変動を生じているときに行われる状態となり、エンジン
固有の特性によってエンジン回転数が僅かに変化する
と、変動する燃料圧のどの圧力域でメイン噴射が行われ
るかによって噴射圧力が変化し、その結果、メイン噴射
の燃料噴射率が変動することになる。特に、エンジン回
転数が低いアイドリング運転状態では、燃料噴射率が僅
かに変動しても回転速度が敏感に変化するので、上記燃
料流路内における燃料圧の変動によって、必要なエンジ
ン出力が得られなかったり或いは不必要にエンジン回転
数が上昇する等、エンジンの回転速度の安定性が損なわ
れるという問題があった。
【0014】圧力変動がメイン噴射の噴射圧力に及ぼす
影響について、以下に詳述する。メイン噴射は、パイロ
ット噴射の終了時を基準として、所定のクランク角度経
過後にメイン噴射が開始されるものとする。図7には、
インジェクタ1の電磁アクチュエータ26に対する噴射
パルス(a)、インジェクタ1の針弁24のリフト
(b)、分岐管3内の燃料圧(c)及び燃料噴射率(d
1)(d2)が、燃料噴射サイクルの時間tの経過にし
たがって変化する様子が示されている。燃料噴射率(d
1)は、エンジン回転数が上昇する前のものであり、燃
料噴射率(d2)はエンジン回転数が上昇した後のもの
である。なお、針弁24のリフト量はインジェクタ1に
設けられた針弁24のリフト量を検知するセンサによ
り、また分岐管3内の燃料圧は分岐管3に設けられた圧
力センサにより検出した。
【0015】図7の(a)に示されているように、コン
トローラ12からインジェクタ1の電磁アクチュエータ
26に対して、パイロット噴射のための噴射パルスPp
とメイン噴射のための噴射パルスPmが、パイロット噴
射−メイン噴射間の一定のクランク角度に対応する期間
1 を置いて送り出される。電磁アクチュエータ26の
電磁ソレノイド28、アーマチュア29、開閉弁32を
含む針弁24のリフト機構に内在する遅延動作のため
に、時間の遅れを伴って針弁24がリフトし、且つ下降
する。時刻t1 にオンとなるパイロット噴射の噴射パル
スPpに応答して針弁24が(b)のLpで示すように
リフトを開始し、パイロット噴射が時刻t3 に(d1)
の燃料噴射率Rpで示すように開始される。この場合、
分岐管3内の燃料圧Pcは(c)に示すように噴射直後
には低下する。噴射パルスPpが時刻t2 でオフとなる
ことに応答して針弁24が下降して時刻t4 にパイロッ
ト噴射が終了する。また、メイン噴射については、時刻
5 〜t6 間にオンとなる噴射パルスPmに応答して針
弁24が(b)のLmで示すようにリフトし、メイン噴
射が(d1)の燃料噴射率Rm1で示すように時刻t7
に開始され、時刻t8で針弁24が閉じてメイン噴射が
終了する。メイン噴射の燃料噴射率Rm1は、増加率が
角度α1 で示されている。
【0016】メイン噴射の燃料噴射率は、噴射圧力によ
って動的な変動をする。即ち、噴射開始時の燃料圧が燃
料の圧力変動の中のどの圧力であるかによって、メイン
噴射の燃料噴射率が変わる。パイロット噴射が時刻t4
に終了するときには燃料の噴射が急激に停止されるた
め、燃料流路内の燃料には水撃作用によって瞬間的に大
きな圧力が生じる。この圧力は、図7の(c)に示すよ
うに、以後、減衰しながらも振動する圧力変動として残
る。メイン噴射は、燃料圧Pcがこのように変動してい
る中で行われることになる。例えば、図7の(c)及び
(d1)に示すように、あるエンジン回転数で運転され
ているとした場合に、燃料圧が降下中の時刻t7 にメイ
ン噴射が開始されるとすると、その時の燃料圧はP1
ある。
【0017】パイロット噴射とメイン噴射との間隔はク
ランク角度で一定になるように定められている一方で、
分岐管3等の燃料流路内の圧力変動の周期等の振動パタ
ーンは、燃料と燃料流路に依存するものであってエンジ
ン回転数とは無関係である。したがって、例えばエンジ
ン特有の特性に起因してエンジン回転数が上昇すると、
一定のクランク角度を経過するために必要な時間は短く
なり、メイン噴射の開始時が変動中の燃料圧に対して相
対的に早まるので、メイン噴射は、時刻t9 で開始さ
れ、時刻t10で終了することになる。このことは、図7
の(c)及び(d2)に示すように、メイン噴射の開始
時の燃料圧P2 が、エンジン回転数が上昇する前での噴
射圧力である燃料圧P1 よりも高いことを意味する。し
たがって、メイン噴射の噴射期間全体を考慮しても、エ
ンジン回転数上昇前と比較して総体的に燃料圧が高く、
その結果、図7の(d2)に示す噴射率Rm2の増加率
α2が図7の(d1)に示す噴射率Rm1の増加率α1
よりも大となっていることに現れているようにエンジン
回転数上昇後の燃料噴射率が高くなり、目標噴射量に対
して実噴射量が多くなる。基本噴射量特性は、図5に基
づいて上述したとおり、エンジン回転数が速くなると噴
射量を減らすものであるが、燃料流路内の燃料の圧力変
動は、これと逆の作用がありエンジンの回転速度を不安
定にする。
【0018】
【課題を解決するための手段】この発明の目的は、上記
課題を解決することであり、パイロット噴射とメイン噴
射とを行うエンジンにおいて、特にアイドリング運転状
態にある場合にエンジン回転数が変化しても、パイロッ
ト噴射の終了に伴って燃料流路内に生じる燃料の圧力変
動の影響を受けないようにして、メイン噴射の燃料噴射
量が基本噴射量特性に従って変化するすることを可能に
するエンジンの燃料噴射装置を提供することである。
【0019】この発明は、上記の目的を達成するため、
次のように構成されている。即ち、この発明は、燃料ポ
ンプによって送り出された燃料を貯留するコモンレー
ル、前記コモンレールから燃料流路を通じて供給された
前記燃料をエンジンの燃焼室内に噴射するインジェク
タ、前記エンジンの運転状態を検出するセンサ、及び前
記センサからの検出信号に応答して前記インジェクタに
よるメイン噴射と前記メイン噴射に先行するパイロット
噴射との噴射条件を制御するコントローラを具備し、前
記コントローラは、前記メイン噴射の噴射タイミングが
前記燃料流路内に生じる燃料圧の変動に対してずれるこ
とによって前記メイン噴射の燃料噴射率が変動するのを
回避するため、アイドリング運転状態に応答して、前記
パイロット噴射の終了時から前記メイン噴射の開始時ま
での期間が一定になるように前記メイン噴射の開始時を
基準として前記パイロット噴射の噴射条件を制御するこ
とから成るディーゼルエンジンの燃料噴射装置に関す
る。
【0020】この発明によれば、パイロット噴射が行わ
れても、パイロット噴射の噴射条件は、メイン噴射の開
始時を基準として、パイロット噴射終了時とメイン噴射
開始時との間の期間が一定となるように制御されるか
ら、パイロット噴射の終了によって燃料流路内の燃料圧
に変動が生じても、パイロット噴射の終了時から常に一
定時間後にメイン噴射が開始されることになる。一方、
燃料流路内の燃料圧の変動はエンジンの回転速度に依存
しないから、パイロット噴射の終了時から一定時間後の
メイン噴射の開始時における燃料圧は、略一定となる。
したがって、エンジン回転数が変動してもメイン噴射に
おける燃料の燃料噴射率にバラツキが生じることはな
く、アイドリング運転時の回転速度が安定する。なお、
パイロット噴射における燃料噴射量の増減は、通常はパ
イロット噴射期間によって制御されることになるので、
パイロット噴射開始時を制御することになる。
【0021】前記噴射条件は、燃料の噴射を開始時及び
終了時を定める噴射タイミングと、燃料噴射率と噴射期
間によって定まる噴射量とを意味する。また、前記イン
ジェクタは燃料を燃焼室内に噴射する噴口と当該噴口を
開閉する針弁とを備えており、針弁の開閉はコントロー
ラによって制御されるものである。燃料流路内の燃料圧
の変動は、噴口からの燃料の噴射を停止するために針弁
を急激に閉鎖することによって生じるものである。
【0022】
【発明の実施の形態】以下、添付図面を参照しつつ、こ
の発明の実施例を説明する。図1はこの発明によるエン
ジンの燃料噴射装置による燃料噴射制御のフローを示す
図であり、図2はパイロット噴射とメイン噴射との噴射
パルスの経時的関係を示す図である。この発明によるエ
ンジンの燃料噴射装置が適用されるコモンレール燃料噴
射システム及び当該システムに用いられるインジェクタ
については、図1及び図2に基づいて既に説明した従来
のものと同じものでよく、再度の説明を省略する。
【0023】以下、コントローラ12が行う燃料噴射制
御の手順、即ち、パイロット噴射とメイン噴射との噴射
タンミング及び噴射量の制御ルーチンを、図1に示した
フローチャートを参照しつつ説明する。 (1)スタートの後、センサによって検出されたエンジ
ン回転数Ne〔単位rpm〕とアクセル踏込み量Acc
とが、コントローラ12に入力される(ステップ1,S
1と略す。以下同じ)。 (2)コントローラ12は、アクセルが踏み込まれてい
ない(即ち、アクセル踏込み量Acc=0)状態で、入
力されたエンジン回転数Neが、アイドリング回転判定
値Nimよりも小であるか否かに応じて、アイドリング
運転状態であるか否かを判定する(S2)。即ち、コン
トローラ12は、アクセルが踏み込まれておらず、且つ
エンジン回転数Neがアイドリング回転判定値Nimよ
りも小である(Ne<Nim)場合には、エンジンはア
イドリング運転状態にあると判定し、エンジン回転数N
eがアイドリング回転判定値Nim以上(Ne≧Ni
m)である場合には、アイドリング運転状態ではないと
判定する。 (3)コントローラ12は、S2の判定で、エンジンが
アンドリング運転状態にあると判定したときには、エン
ジン回転数Neとアクセル踏込み量Acc(この場合、
Acc=0)とに基づいて、図5に示す基本噴射量特
性、即ち、2次元マップ基本噴射量データにより、基本
目標噴射量Qbを求める(S3)。 (4)アイドリング運転中においても、エンジンに要求
される出力により、目標アイドリング回転数Nirが定
まっている。目標アイドリング回転数Nirと実際のエ
ンジン回転数Neとの偏差に基づいて、アイドリング補
正噴射量Qicを予め定められた関係g、即ち、Qic
=g(Nir−Ne)により求める(S4) (5)基本目標噴射量Qbとアイドリング補正噴射量Q
icとの和により、最終目標噴射量Qfが求められる
(S5)。即ち、Qf=Qb+Qicとなる。 (6)最終目標噴射量Qfのうちパイロット噴射に配分
すべき噴射量、即ち、目標パイロット噴射量Qpが、2
次元マップパイロット噴射量データを参照してエンジン
回転数Neに対して求められる(S6)。2次元マップ
パイロット噴射量データは燃料の着火遅れを防止するた
め適宜定められるものであるが、このデータ自体はこの
発明の直接の対象ではないのでここでの詳細な説明を省
略する。 (7)メイン噴射に配分すべき噴射量、即ち、目標メイ
ン噴射量Qmが、最終目標噴射量Qfから目標パイロッ
ト噴射量Qpを差し引いた量として求められる(S
7)。即ち、Qm=Qf−Qpとなる。 (8)コントローラ12には、圧力センサ13が検出し
たコモンレール2内の燃料圧Pcを示す信号が取り入れ
られる(S8)。 (9)燃料噴射量は燃料圧と噴射期間によって定まる。
燃料圧PcはS8から求められているから、求められた
燃料圧に応じて噴射量と噴射パルスの時間幅との関係、
即ち、図6に示したような2次元マップパルス幅データ
に基づいて、目標パイロット噴射量Qpと目標メイン噴
射量Qmとの噴射期間、即ち、噴射パルスの時間幅T
p,Tmが求められる。 (10)燃焼サイクルにおいて、メイン噴射の開始時期
θm(クランク角)を、最終目標噴射量Qfとエンジン
回転数Neとを参照した2次元マップメイン噴射時期デ
ータに基づいて求める(S10)。2次元マップメイン
噴射時期データは、あるエンジン回転数Neに対して、
最終目標噴射量Qfを噴射するには、クランク角で何時
噴射を開始すればよいかをマップデータとして得たもの
である。 (11)パイロット噴射の開始時期θp(クランク角)
は、パイロット噴射終了時からメイン噴射の開始時期θ
mとの間の期間T(単位は時間(秒))が一定となるよ
うに求められる(S11)。この場合、6Neは、時間
をクランク角度に変換する係数である。 (12)上記のフローで求められた、Tm,θm,T
p,θpの各量がメモリに記憶される(S12)。 メモリに記憶された上記各量に従ってアイドリング運転
中のパイロット噴射とメイン噴射とが実行される。ま
た、このようなフローが繰り返されて、各燃焼サイクル
が制御される。
【0024】S2において、コントローラ12が、エン
ジンの運転状態をアイドリング運転ではないと判定した
場合には、フローはS13以下の制御ルーチンに移行す
る。 (13)コントローラ12は、エンジン回転数Neとア
クセル踏込み量Accとに基づいて、図5に示す基本噴
射量特性、即ち、2次元マップ基本噴射量データによ
り、基本目標噴射量Qbを求める(S13)。 (14)前回最終目標噴射量QfbとS13で求めた基
本目標噴射量Qbとの差ΔQを求める。即ち、ΔQ=Q
fb−Qbとなる。 (15)エンジン回転数Ne,冷却水温Tw,及び吸気
管内圧力Pb等に基づいて、予め定めた関係h、即ち、
K=h(Ne,Tw,Pb,etc)により、ΔQの補
正量を定める補正係数Kを求める(S15)。 (16)前回最終目標噴射量Qfb、S14で求めた差
ΔQ及びS15で求めた補正係数Kを用いて、次式によ
り、最終目標噴射量Qfを算出する(S16)。 Qf=Qfb+K×ΔQ (17)S6と同様に、最終目標噴射量Qfのうち、パ
イロット噴射に配分すべき噴射量、即ち、目標パイロッ
ト噴射量Qpが、2次元マップパイロット噴射量データ
を参照して、エンジン回転数Neに対して求められる
(S17)。 (18)S7と同様に、メイン噴射に配分すべき噴射
量、即ち、目標メイン噴射量Qmが、最終目標噴射量Q
fから目標パイロット噴射量Qpを差し引いた量として
求められる(S18)。即ち、Qm=Qf−Qpとな
る。 (19)S8と同様に、コントローラ12には、コモン
レール2に設けられている圧力センサ13が検出したコ
モンレール2内の燃料圧Pcを示す信号が取り入れられ
る(S19)。 (20)S9と同様に、燃料噴射量は燃料圧と噴射期間
によって定まる。燃料圧PcはS19から求められるか
ら、求められた燃料圧に応じて噴射量と噴射パルスの時
間幅との関係、即ち、図6に示すような二次元マップパ
ルス幅データから、目標パイロット噴射量Qpと目標メ
イン噴射量Qmとの噴射期間、即ち、噴射パルスの時間
幅Tp,Tmが求められる(S20)。 (21)燃料サイクルにおいて、メイン噴射の開始時期
θm(クランク角)とパイロット噴射の開始時期θp
(クランク角)とを、Qfと実回転数Neとを参照した
2次元マップメイン噴射時期データに基づいて求める
(S21)。 (22)上記のフローで求められた、Tm,θm,T
p,θpの各量がメモリに記憶される(S12)。 メモリに記憶された上記各量に従ってアイドリング運転
中のパイロット噴射とメイン噴射とが燃料噴射が実行さ
れる。また、このようなフローが繰り返されて、各燃焼
サイクルが制御される。
【0025】図2に、パイロット噴射とメイン噴射のた
めに、噴射パルスPp,Pmのクランク角度の経過に従
う関係(a)と時間の経過に従う関係(b)が示されて
いる。メイン噴射の開始時期θm(tm1)が優先して
決定されているので、メイン噴射による燃料の燃焼はエ
ンジンの回転数が変動しても一定時期に行われ、アンド
リング運転が不安定になることはない。更に、図1のフ
ローチャートにおいてS11で示したように、メイン噴
射の開始時期θm(tm1)を基準として、パイロット
噴射の終了時tp2とメイン噴射の開始時tm1との間
の一定期間Tとパイロット噴射に必要な噴射期間Tpと
を逆上るようにしてパイロット噴射の開始時tp1が求
められ、開始時tp1に対応してクランク角度θpが求
められる。即ち、Δθtは、期間Tに相当するクランク
角度範囲であり、Δθpは、パイロット噴射の噴射期間
Tpに相当するクランク角度範囲である。パイロット噴
射の終了時に燃料の圧力変動が発生しても、メイン噴射
の開始時期θmはパイロット噴射の終了時から一定の期
間Tの後に設定されているので、メイン噴射開始時にお
ける燃料圧はエンジンの回転速度が変動しても変わらな
いことになる。なお、Δθmは、メイン噴射の開始時t
m1と終了時tm2との間の期間Tm、即ち、メイン噴
射による噴射期間に相当するクランク角度範囲である。
図2に示したメイン噴射とパイロット噴射との関係の状
態から、例えば、エンジン回転数が上昇したとすると、
期間Tは一定であるから、Δθtは大きくなる。メイン
噴射の開始時期θmは優先して決定されるから、パイロ
ット噴射の開始時期θpが、ΔθtとΔθpとからクラ
ンク角度に変換して、前倒しとなるように求められる。
【0026】
【発明の効果】この発明は、上記のように構成されてい
るので、次のような効果を奏する。即ち、この発明によ
れば、コントローラは、メイン噴射の噴射タイミングが
燃料流路内に生じる燃料圧の変動に対してずれることに
よってメイン噴射の燃料噴射率が変動するのを回避する
ため、エンジンがアイドリング運転状態にあることを検
出することに応答して、パイロット噴射の終了時からメ
イン噴射の開始時までの期間が一定になるようにメイン
噴射の開始時を基準としてパイロット噴射の噴射条件を
制御するので、燃料の噴射条件が僅かに変動するとエン
ジンの回転速度が大きく変化するアイドリング運転時
に、負荷等の変動でエンジン回転数が変化したとして
も、パイロット噴射の終了に伴う燃料圧の変動とメイン
噴射の開始時刻との関係が一定であるので、メイン噴射
の噴射量の変化が少なく、エンジンの回転速度が安定す
る。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明によるエンジンの燃料噴射装置におけ
る燃料噴射制御の内容の一例を示すフローチャートであ
る。
【図2】この発明によるエンジンの燃料噴射装置におい
て、パイロット噴射とメイン噴射の噴射時期の関係を示
す線図である。
【図3】エンジンにおけるコモンレール燃料噴射システ
ムを示す概略図である。
【図4】図3に示すコモンレール燃料噴射システムに適
用されるインジェクタの一例を示す断面図である。
【図5】コモンレール燃料噴射システムにおいて、アク
セル踏込み量をパラメータとしたエンジン回転数と基本
噴射量との関係を示す基本噴射量特性線図である。
【図6】燃料圧Pcをパラメータとして、インジェクタ
の燃料噴射量と噴射パルス幅との関係を示す特性線図で
ある。
【図7】燃料噴射サイクルにおけるインジェクタの作動
説明図である。
【符号の説明】
1 インジェクタ 2 コモンレール 3 分岐管 8 可変容量式高圧ポンプ 12 コントローラ 13 圧力センサ 21,22 燃料通路 24 針弁 25 噴口 Acc アクセル踏込み量 Ne エンジン回転数 Pc コモンレールの燃料圧 Pp パイロット噴射パルス Pm メイン噴射パルス Qm メイン噴射量 Qp パイロット噴射量 θp パイロット噴射の噴射時期 θm メイン噴射の噴射時期 T パイロット噴射終了時からメイン噴射開始時まで
の期間 Tm メイン噴射の噴射期間 Tp パイロット噴射の噴射期間 tp2 パイロット噴射の終了時 tm1 メイン噴射の開始時

Claims (3)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 燃料ポンプによって送り出された燃料を
    貯留するコモンレール、前記コモンレールから燃料流路
    を通じて供給された前記燃料をエンジンの燃焼室内に噴
    射するインジェクタ、前記エンジンの運転状態を検出す
    るセンサ、及び前記センサからの検出信号に応答して前
    記インジェクタによるメイン噴射と前記メイン噴射に先
    行するパイロット噴射との噴射条件を制御するコントロ
    ーラを具備し、前記コントローラは、前記メイン噴射の
    噴射タイミングが前記燃料流路内に生じる燃料圧の変動
    に対してずれることによって前記メイン噴射の燃料噴射
    率が変動するのを回避するため、アイドリング運転状態
    に応答して、前記パイロット噴射の終了時から前記メイ
    ン噴射の開始時までの期間が一定になるように前記メイ
    ン噴射の開始時を基準として前記パイロット噴射の噴射
    条件を制御することから成るディーゼルエンジンの燃料
    噴射装置。
  2. 【請求項2】 前記噴射条件は、噴射タイミングと噴射
    量とである請求項1に記載のディーゼルエンジンの燃料
    噴射装置。
  3. 【請求項3】 前記インジェクタは前記燃料を前記燃焼
    室内に噴射する噴口と前記噴口を開閉する針弁とを備え
    ており、前記針弁の開閉は前記コントローラによって制
    御されることから成る請求項1又は2に記載のディーゼ
    ルエンジンの燃料噴射装置。
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