JPH10204610A - 温熱間用部材およびその製造方法ならびにこれを用いた温熱間用金型 - Google Patents

温熱間用部材およびその製造方法ならびにこれを用いた温熱間用金型

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JPH10204610A
JPH10204610A JP2588397A JP2588397A JPH10204610A JP H10204610 A JPH10204610 A JP H10204610A JP 2588397 A JP2588397 A JP 2588397A JP 2588397 A JP2588397 A JP 2588397A JP H10204610 A JPH10204610 A JP H10204610A
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gas
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nitrogen
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JP2588397A
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Yoshitaka Chiba
芳孝 千葉
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Hitachi Metals Ltd
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  • Solid-Phase Diffusion Into Metallic Material Surfaces (AREA)

Abstract

(57)【要約】 【課題】 温間ないし熱間で使用される摺動部を有する
機械部品などの温熱間用部材、およびその製造方法、な
らびにこれを用いた温熱間用金型を提供する。 【解決手段】 部材の表層部に硫化鉄と酸化鉄を主体と
する窒素を含む混合物層を有し、前記混合物層中の硫黄
と酸素の重量濃度比(S/O)が0.5<S/O<10
の式を満足する領域を有する温熱間用部材であり、部材
本体側には少なくとも窒化層が形成される。上記部材は
温熱間用金型に好適である。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、温間ないし熱間で
使用される温熱間用部材、およびその製造方法、ならび
にこれを用いた温熱間用金型に関するものである。
【0002】
【従来の技術】従来、例えば温熱間鍛造用金型(以下、
金型と記す)には、主にJISに規定されるSKD6
1,SKT4に代表される熱間工具鋼が用いられてお
り、特に耐久性を要求される用途には、これらよりも高
温強度の高いSKD7,SKD8,高速度鋼あるいはこ
れらの改良鋼が用いられている。近年、被加工製品の高
精度化や加工能率の向上の要求に呼応して、金型の靭性
を保持するとともに、金型表面に耐摩耗性、耐焼付性を
付与する目的から、一般に表面処理が施されるようにな
ってきた。このような金型に対して実施される表面処理
方法としては、イオン法、塩浴法、ガス法等による単一
窒化処理が主流である。
【0003】例えば、特開平7−138733号には、
金型の耐ヒートクラック性および塑性流動を軽減するた
めに、イオン窒化処理後に950℃まで昇温させて高周
波加熱により最表面の脆弱な、白層と呼ばれている高濃
度窒素化合物の低減と、窒素拡散層を3.0mmまで深
くする方法が提案されている。また、特開昭57−54
551号には金型芯部の靭性を保持しながら、同時に焼
付き防止を目的として、低温(350〜450℃)でイ
オン窒化する熱間加工用金型を提案しているが、これら
の効果は従来手法の窒化処理材と比較して金型寿命は2
〜3割程度の金型寿命の向上であり、飛躍的な金型寿命
改善の手法とは必ずしも言えない面があった。
【0004】近年のニアネットシェイプ化は、製品の形
状が複雑で、加工時に被加工材の肉流れが大きくなり、
金型作業面との摩擦が過大となり、摩擦熱による金型表
面部の軟化がより進行し、金型自身の変態点(700〜
900℃)を越えてしまうほど高温になる場合がある。
その結果、金型自身が本来持つべき特性を失わせ、高温
特性が著しく低下し、金型の損耗現象が加速されて短寿
命となる。また現在、表面処理の主流として実施されて
いるイオン窒化など、単一の窒化処理を施した金型で
は、形成させた窒化物の一部が過熱のため分解してしま
い、その効果が十分に発揮できなくなるという問題があ
った。
【0005】単一窒化処理以外の手法としては、特開平
4−228557号には、建設機械の油圧ポンプおよび
モータなどに使用されるピストン、シリンダ等の潤滑油
保有性向上を目的として、油中で使用される冷間摺動部
材に対してガス浸硫窒化方法および装置が提案されてい
る。また、特開昭60−39155号の提案では、硫化
アンモニウムの分解ガスとアンモニアガスを導入し、鉄
系製品の表面に主に硫化第2鉄(FeS2)からなる第
一層を形成させ、第二層としてFe4Nの窒化鉄を形成
させた構造としている。
【0006】さらに片桐等(日本金属学会第51巻、第
10号(1987),P.930〜934)は、無色硫
化アンモニウム溶液を用い、硫化水素濃度150pp
m、アンモニア濃度75%、処理温度580℃、処理時
間1〜6時間の条件で鉄鋼材料に浸硫窒化処理を施すこ
とにより、最表面に多孔質の硫化第1鉄(FeS)層が
形成され、これに酸化鉄(Fe34)が共存した表面層
を得たことが報告されている。その他、特公平7−42
566号では、軟鋼、鋳鉄からなるボルト、ナットなど
地下埋設下での防食、または地上部の防錆や美観向上を
目的として四酸化三鉄(Fe34)を母材に形成させる
酸化鉄形成方法などが提案されている。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】一般に、高温の被加工
材を塑性加工する際の金型の損耗は、下記に示す経過に
より進行する。金型表面部は、次のような被加工材との
接触により熱的衝撃を受ける。すなわち、高温の被加工
材の表面は、金型作業面上に強く押し付けられ、型彫面
に沿って流動し、摩擦熱の発生と塑性変形による発熱を
伴いながら塑性加工を受ける。この作業中に金型表面部
は、急激に昇温して膨張する。作業が終了すると被加工
材は、素早く金型から離型される。金型表面部は、被加
工材が離型するのと同時に冷却し始め、収縮が起る。
【0008】上記のような被加工材の塑性加工が繰り返
される結果、金型表面部には膨張と収縮による熱疲労を
受けるだけでなく、熱影響により軟化した金型表面部
は、加工応力や膨張・収縮に伴って発生する応力に対す
る抵抗力が低下しており、金型表層部でヒートクララッ
クや塑性流動が生じ易くなり、摩耗などの損耗が進行す
る。この際、特に金型表面と被加工材が直接接触すると
焼付現象が発生し易くなる。焼付が発生すると被加工材
から金型表面部への熱伝達が容易となり、金型の損耗が
より急速に進行する。
【0009】このため、通常の作業では、1サイクル毎
に金型表面に潤滑剤あるいは離型剤が塗布され、これら
が金型表面と被加工材との間に、フィルム状に介在し、
金型作業面と被加工材が直接接触しない利点がある。反
面、昇温した金型表面部は、上記の冷剤が塗布されるた
め冷却速度が大きくなり、単位時間内の収縮量が大きく
なる弊害を伴う。前述したように通常の熱間鍛造用金型
には、単一窒化処理されたものが使用されている他、従
来から室温付近の比較的低温側で使用される摺動部を有
する機械部品等に浸硫窒化処理が施されている。特開平
4−228557号に開示された内容は、潤滑油保有性
の高いFeS2を200〜350℃で二次加熱処理を行
なって、鉄鋼部材の最表面に硫化第2鉄(FeS2)を
形成させて潤滑効果を高めたものである。ところが、例
えばこのような処理を施した金型を本発明が対象とする
600℃以上に加熱された被加工材を高圧のもとで成形
すると、硫化第2鉄の結合力が弱いために容易に剥離や
脱落が起り、温熱間用金型としては使用に耐えないもの
である。
【0010】また、特開昭60−39155号に提案さ
れた各層は多孔質であるため、金型に適用した場合に
は、600℃以上の被加工材を高圧のもとで成形する
と、ヒートクラックの起点または伝搬通路となり易く使
用に適さない。さらに片桐等によって提案された方法
は、供給原料として無色硫化アンモニウム溶液を用いて
いるため、得られた表層部の硫黄と酸素の重量濃度比
(S/O)が0.5未満となり、金型表面と被加工材と
の摩擦係数を十分下げることができず、また上述したよ
うに多孔質層に起因するヒートクラックの起点または伝
播の通路となり易く、高温の被加工材を高圧下で塑性加
工する金型の用途には必ずしも適したものとは言えな
い。これら従来の浸硫窒化法によって鉄鋼材料の表面に
形成される層は、本発明が対象の一つとする金型のよう
に高温に加熱された被加工材を塑性加工する場合には、
多孔質層に起因するヒートクラックの起点や伝播の通路
となり易く、十分機能できなかったのである。
【0011】
【課題を解決するための手段】発明者は、例えば金型と
して使用する場合、高温に加熱された被加工材の熱や塑
性変形による発熱等の熱をどうすれば直接金型表面に伝
達されずに遮断でき、金型の寿命を大幅に向上すること
ができるかについて検討した。その結果、金型自身の表
面を改質して、金型表面と被加工材との間に焼付が起こ
りにくく、かつ潤滑効果と断熱効果とを兼備できる緻密
な表面処理皮膜を形成することができれば、摩擦熱の発
生を抑制し、さらに熱伝達による金型表面部の軟化防止
となり、ひいては金型の寿命向上が可能となることがわ
かった。発明者が部材の表層部に形成される各種皮膜に
ついて、実験を重ねた結果、硫化鉄と酸化鉄を主体とす
る窒素を含む混合物層を形成させ、特に前記混合物層中
の硫黄と酸素の重量濃度比(S/O)を高目の特定範囲
内に限定すると、非常に効果が高くなることを見出し
た。
【0012】すなわち、本発明の第1発明は、部材の表
層部に硫化鉄と酸化鉄を主体とする窒素を含む混合物層
を有し、前記混合物層中の硫黄と酸素の重量濃度比(S
/O)が0.5<S/O<10の式を満足する領域を有
することを特徴とする温熱間用部材である。また、第2
発明は、部材の表層部に硫化鉄と酸化鉄を主体とする窒
素を含む混合物層を有し、前記混合物層中の硫黄と酸素
の重量濃度比(S/O)が0.5<S/O<10の式を
満足する領域を有し、かつ前記混合物層の部材本体側に
少なくとも窒化層が形成され、前記窒化層は白層と窒素
拡散層からなることを特徴とする温熱間用部材である。
【0013】第3発明は、部材の表層部に硫化鉄と酸化
鉄を主体とする窒素を含む混合物層を有し、前記混合物
層中の硫黄と酸素の重量濃度比(S/O)が0.5<S
/O<10の式を満足する領域を有し、かつ前記混合物
層の部材本体側に少なくとも窒化層が形成され、前記窒
化層は窒素拡散層からなることを特徴とする温熱間用部
材である。上記混合物層中のSの濃度は、重量%で5〜
30とするのが好ましい。また、上記混合物層の厚さは
0.1〜20μmの緻密な層であることが望ましく、さ
らに上記窒化層の最高硬さは900HV以上とするのが
よい。
【0014】上記温熱間用部材を製造する第4発明は、
ガス発生容器内に無色硫化アンモニウム溶液と黄色硫化
アンモニウム溶液を6:1ないし1:1の割合で供給
し、発生する液面上ガスと窒素ガスまたはアルゴンガス
からなる搬送用ガスとの混合ガス中の硫化水素ガス濃度
を100〜600ppm、アンモニアガス濃度を0.1
〜1.0%に調整して、温熱間用部材を配置して460
〜600℃に加熱された反応炉に導入するとともに、別
容器から供給する窒素ガスとアンモニアガスにより前記
反応炉内のアンモニア濃度を10〜70%に調整して、
ガス浸硫窒化処理をすればよい。
【0015】なお、少なくとも部材本体側に形成させる
窒化層に、白層と窒素拡散層とを含有させるには、第4
発明の反応炉の加熱温度を高めの500〜600℃と
し、かつ前記反応炉内のアンモニア濃度を高めの20〜
70%にするのがよい。さらに、少なくとも部材本体側
に形成させる窒化層に窒素拡散層のみ含有させるには、
第4発明の反応炉の加熱温度を低めの460〜550℃
とし、かつ前記反応炉内のアンモニア濃度を低めの10
〜40%にするのがよい。また、上記第1ないし第3発
明で構成される温熱間用部材は温熱間用金型として好ま
しい。
【0016】
【発明の実施の形態】本発明の温熱間用部材の特徴の一
つは、部材の表層部に硫化鉄と酸化鉄を主体とする窒素
を含む混合物層を有し、該混合物層中の硫黄と酸素の重
量濃度比(S/O)を0.5<S/O<10に限定した
点にある。前記混合物層中の硫黄と酸素の濃度比(S/
O)が0.5以下では、機械部品などの摺動部や金型作
業面と被加工材との摩擦係数を十分低減することができ
ず、逆に10以上の場合には、部材や金型本体または前
記混合物層の部材や金型本体側に形成される窒化層との
密着性が不十分となり、剥離や脱落が容易となり、長期
使用に耐えられなくなるため10未満とする。
【0017】また他の特徴は、上記混合物層が形成され
た部材や金型本体側には、少なくとも窒化層が形成さ
れ、前記窒化層が白層と窒素拡散層からなるか、または
窒素拡散層からなる点にある。前記窒化層は、比較的高
温で摺動する相手材を有する部材や被加工材が高圧下で
塑性加工される金型の場合、部材や金型本体の表面部の
強度不足を補う効果を有する他、長期使用後に上記混合
物層が部分的に磨滅した際、耐焼付性が短時間に低下す
るのを防止する効果を有する。なお上記窒化層は、例え
ば金型の型彫面が比較的起伏の少ない形状か、または塑
性加工が容易な被加工材の場合には白層と称されるε−
Fe23Nおよび窒素拡散層と呼ばれるγ′−Fe4
からなる白層と窒素拡散層とを形成させるのがよい。
【0018】また、型彫面の起伏が大きく、鋭角状の突
起や谷部を施した金型、または起伏が小さくても被加工
材が難加工性の場合には、上記の硬質の白層が存在する
とクラックの発生起点となり易いため、白層のない窒素
拡散層だけの窒化層とするのがよい。上述した本発明の
第1発明ないし第3発明の構成要件を満足する混合物層
中のSの濃度は、同じ理由から重量%で5〜30とする
のが良く、また混合物層の厚さは上記効果を発揮させる
ために0.1μmが必要であり、逆に20μmを越える
と剥離しやすくなるため0.1〜20μmの緻密な層と
することが望ましい。さらに望ましくは、上記窒化層の
硬さを、部材や金型本体の強度を補うために900HV
以上とするのが良い。本発明が対象とする温熱間用部材
は、例えばアルミホイールの成形用ロール、レールやガ
イドなどの摺動部材、押出ピン、コアピン、中子ピンな
ど温熱間で使用されるピン類、さらに押出ダイスの他、
ギア、バルブ成形用型、鍛造またはプレス成形用型の温
熱間用金型など、特に250℃以上の温度に晒される部
材として好適である。
【0019】上記構成要件を満足させる本発明の温熱間
用部材、特に温熱間用金型を製造するには、例えば浸硫
と酸化の供給源に硫化アンモニウム溶液を用いる方法が
ある。この方法では、部材表層部に硫化鉄と酸化鉄を主
体とする窒素を含む緻密な混合物層中の硫黄と酸素の重
量濃度比(S/O)を0.5より多く形成させるのに好
都合である。
【0020】すなわち、予めガス発生容器内に硫化水素
濃度が低く水分の多い無色硫化アンモニウム溶液(JI
S K8943)と、硫化水素濃度が高く水分の少ない
黄色硫化アンモニウム溶液(JIS K8942)とを
加えて混合溶液とし、発生する液面上ガスを搬送用ガス
である窒素ガスまたはアルゴンガスと混合した状態で硫
化水素ガス濃度を100〜600ppm、アンモニアガ
ス濃度を0.1〜1.0%に調整して、被処理部材を配
置して460〜600℃に加熱された反応炉に導入する
とともに、例えばボンベ等の別容器から供給する窒素ガ
スとアンモニアガスにより、反応炉内のアンモニア濃度
を10〜70%に調整して所定時間の浸硫窒化処理を行
なえばよい。
【0021】ここで無色硫化アンモニウム溶液の液面上
ガス(ヘッドガス)中のH2Sの濃度は25℃において
30ppm、黄色硫化アンモニウム溶液の液面上ガス中
のH2S濃度は1250ppmであるので、上記部材表
層部に形成する構成要件を満足させるためには、無色硫
化アンモニウム溶液と黄色硫化アンモニウム溶液の割合
を6:1ないし1:1の範囲とし、液面上ガス中のH2
S濃度を100ppmないし600ppmの範囲とす
る。
【0022】上記浸硫窒化処理のうち、少なくとも部材
本体側に形成させる窒化層に、白層と窒素拡散とを含有
させるには、反応炉の加熱温度を高めにして窒素の拡散
効率を高めるとともに、窒化の供給源となる前記反応炉
内のアンモニア濃度を高めるのが望ましい。そのために
反応炉の加熱温度を500〜600℃、反応炉内のアン
モニア濃度を20〜70%にするのがよい。また、少な
くとも部材本体側に形成させる窒化層が窒素拡散層のみ
含有させるには、反応炉の加熱温度を低めにして窒素の
拡散を抑制するとともに、窒化の供給源となる前記反応
炉内のアンモニア濃度を低めとするのが望ましい。その
ためには、反応炉の加熱温度を460〜550℃、反応
炉内のアンモニア濃度を10〜40%にするのがよい。
【0023】なお、硫化アンモニウム溶液以外に、浸硫
と酸化の供給源として、亜硫酸アンモニウム−水和物、
亜硫酸アンモニウム溶液などを用いることもできる。温
間ないし熱間で使用される部材または金型の表層部は、
形態上は多孔質でなく緻密であること、構成上は摩擦係
数が小さく、かつ断熱効果が高く、特に温熱間用金型の
場合には耐焼付性の向上に寄与する硫化鉄を多めに存在
させることが重要である。一方、本発明の温熱間用金型
に用いられる金型母材は、JIS規格に規定されるSK
D61,SKT4に代表される高温強度と靭性を有する
熱間工具鋼が好適であり、これらよりも高温強度の高い
SKD7,SKD8,高速度鋼あるいはこれらの改良鋼
に対しても必要に応じて適用することができる。
【0024】
【実施例】以下に実施例に基づいて詳細に説明する。 (実施例1)表1に示す組成の鋼を準備し、焼入れ焼戻
しにより鋼1および鋼2とも48HRCに調質した。そ
の後、直径5mm、長さ20mmの形状を持つ丸棒試験
片を作製し、その端面は砥石で仕上げた。これらの試験
片に表2に示す種々の表面処理を施したものを用いて熱
間焼付試験を行なった。熱間焼付試験は、試験片の一端
部をボール盤のチャックに取付け1540rpmで回転
させ、600℃に加熱したSNCM439製のブロック
に試験片の他端を押し付け、30秒間摩擦摺動させるも
ので、押し付け荷重は0.31〜1.70KNとし、焼
付が発生した押し付け荷重を断面積で除した値を焼付限
界面圧(MPa)として耐焼付性を評価した。
【0025】
【表1】
【0026】
【表2】
【0027】表3に、各種表面処理後の表面構造と試験
結果を示す。本発明部材の焼付限界面圧は69.9〜8
6.6MPaの範囲にあり、イオン窒化と比較して2.
2〜2.7倍、塩浴浸硫窒化Aおよび無色硫化アンモニ
ウム溶液を用いたガス浸硫窒化と比較して1.2〜1.
4倍、塩浴浸硫窒化Bと比較して1.8〜2.3倍であ
る。このように本発明部材は、比較部材と比較して焼付
限界面圧が大幅に改善されていることがわかる。なお、
焼付限界面圧に至った後の試験片端部を切り出してミク
ロ組織観察したところ、これらはいずれも再焼入れ組織
を呈しており、鋼のAC1変態点を越える温度に昇温し
ていることが認められ、大きな摩擦発熱があったことが
認められた。これにより、本発明部材は摩擦発熱を著し
く抑制できることがわかる。
【0028】
【表3】
【0029】なお、表3のうち試料No.6と試料N
o.8(いずれも比較部材に相当)、試料No.12と
試料No.20(いずれも本発明部材に相当)と同じ処
理を行なった試験片表面部の断面組織観察およびEPM
A(微少部X線分析装置)による線分析を行ない、その
結果を図1、図2、図3および図4にそれぞれ示す。図
1は、本発明部材の対象外である塩浴浸硫窒化Aのもの
で、表面処理層の最上部の混合物層中のSの最大濃度が
2.2wt%、混合物層中の硫黄と酸素の濃度比(S/
O)が0.29で、混合物層の厚さは22μmであっ
た。図2も本発明部材の対象外である塩浴浸硫窒化Bの
もので、混合物中のSの最大濃度が1.1wt%、混合
物層中の硫黄と酸素の濃度比(S/O)が0.03で、
混合物層の厚さは5μmであった。
【0030】これに対して、本発明部材に相当する表面
処理層の混合物層のSの最大濃度は、図3に示すように
21wt%で硫黄と酸素の濃度比(S/O)が1.24
で、混合物層の厚さは3μm、また図4ではSの最大濃
度が20wt%、硫黄と酸素の濃度比(S/O)が1.
18で、混合物層の厚さは3.5μmであった。このよ
うに本発明部材の試料No.12(図3)および試料N
o.20(図4)は高濃度のS濃度を有し、混合物層中
のS/Oも従来部材よりも大きいことがわかる。
【0031】次に前述の混合物層および部材本体側の窒
化層の構造を光学顕微鏡組織で説明する。本発明部材の
試料No.12および試料No.20を図3および図4
に示す。図3は前述の3μm厚さを有する混合物層の部
材本体側に窒化層を有し、窒化層は窒素拡散層単独で形
成され、その厚さは0.08mmであった。図4は前述
の3.5μm厚さを有する混合物層より形成され、その
厚さはそれぞれ白層が5μmおよび窒素拡散層は0.1
4mmであった。なお、混合物層および窒化層の構成物
質については実施例3のX線解析で詳しく述べる。
【0032】(実施例2)表3に示した試料No.5か
ら試料No.10(比較部材に相当)、試料No.11
から試料No.12および試料No.19から試料N
o.20(本発明部材に相当)と同じ処理を行なった試
験片表面部の断面について表面より25μm毎に荷重1
00gを付加して硬さを測定し、それぞれの最高硬さを
測定した結果を表4に示す。本発明部材の試料No.1
1および試料No.12の最高硬さは他の試料と比較し
て最も軟らかい硬さを示したが、最高硬さは900HV
以上であった。また、本発明部材の試料No.19およ
び試料No.20の最高硬さはそれぞれ1033HVお
よび1042HVであり、最高硬さは900HV以上で
あった。
【0033】
【表4】
【0034】(実施例3)表3に示した試料No.6お
よび試料No.8(比較部材に相当)、試料No.12
および試料No.20(本発明部材に相当)と同じ処理
を行なった試験片表面部について、最表面よりX線回折
装置を用いてX線解析を行なった結果を図5に示す。X
線回折条件は、Coターゲットを用いて印加電圧40K
V、印加電流200mAの条件で回折角(2θ)は30
°より120°まで測定した。図5の試料No.6およ
び試料No.8の定性分析結果は酸化鉄がFe34およ
び窒化鉄はFe3NおよびFe4Nであり、硫化鉄は検出
されなかった。図5の試料No.12の定性分析結果
は、硫化鉄がFeS、酸化鉄がFe34および窒化鉄は
Fe4Nであった。図5の試料No.20の定性分析結
果は硫化鉄がFeS、酸化鉄がFe34および窒化鉄は
Fe3NとFe4Nであった。
【0035】以上のことから実施例1で示した混合物層
のEPMAの結果と総合的に考えると、試料No.6お
よび試料No.8の混合物層は、少量のSをそれぞれ
2.5wt%と1.1wt%含んではいるが、実質的に
はFe34とFe3Nより形成されることが確認され
た。また、混合物層の部材本体側の窒化層は、光学顕微
鏡の結果と総合的に考えるとFe3N(白層)およびF
4N(窒素拡散層)であることが確認された。次に試
料No.12および試料No.20の混合物層は、実質
的にはFeSとFe34を主体としてFe3Nを含むこ
とが確認された。また、混合物層の部材本体側の窒化層
は試料No.12はFe4N(窒素拡散層)単独より形
成され、試料No.20はFe3N(白層)およびFe4
N(窒素拡散層)より形成されることが確認された。
【0036】(実施例4)表3に示した試料No.6お
よび試料No.8(比較部材に相当)、試料No.12
および試料No.20(本発明部材に相当)と同じ処理
を行なった試験片表面部について表面より連続加重式表
面性測定機にて混合物層と窒化層界面での密着性を評価
するため、引っ掻き抵抗力を測定した結果を表5に示
す。連続加重式表面性測定機の測定条件は、30μのダ
イヤモンド引掻針を用い、移動速度 0.2mm/se
c、垂直荷重のフルスケールが500gを用いた。
【0037】
【表5】
【0038】本発明部材の試料No.12および試料N
o.20の引っ掻き抵抗力は、比較部材と比べて引っ掻
き抵抗力が大きいことが確認された。このことより、本
発明の混合物層の密着性は比較部材と比べて密着性が良
好であると言える。さらに表層部の形態より試料No.
6および試料No.8の混合物層は多孔質形態であるの
に対し、本発明部材の試料No.12および試料No.
20の混合物層は緻密な形態であり、例えば高温鍛造作
業で金型に負荷される熱応力に対して、多孔質で密着性
が乏しい比較部材は、多孔質に起因するヒートクラック
の起点または伝播の通路となり易いのに対して本発明部
材は密着性の改善と緻密な形態を有しているので、温熱
間用金型として使用した場合に寿命向上が予想できる。
【0039】(実施例5)表3の試料No.2,4,
6,8,10,12,18および20の表層部の構造を
有するリングプレッシャー成形に使用する熱間鍛造金型
を用意した。金型の寸法は直径148mm、高さ66m
mである。鋼2の鋼を金型近似寸法に荒加工し、焼入
れ、焼戻しにより48HRCに調質し、上記の寸法に仕
上げ加工後、所定の表層部の構造が得られるようにそれ
ぞれ表面処理を行なった。鍛造は1600tonの鍛造
プレスを用い、1200℃に高周波加熱したSCM42
0Hワークをアップセット加工後14秒おきに鍛造し
た。表6に金型の寿命を示す。
【0040】
【表6】
【0041】金型はいずれも摩耗による損傷で寿命とな
った。本発明金型は従来の金型である比較金型に比べ
て、いずれも金型寿命が比較金型に比べて約2倍向上
し、耐摩耗性に優れた金型であることがわかる。
【0042】
【発明の効果】以上に述べたように、本発明の表層部の
構造を有する温熱間用部材や温熱間用金型は、主として
硫化鉄が摩擦熱による熱負荷の抑制効果と断熱効果によ
り、金型の寿命を向上させることが可能となり、しかも
主として酸化鉄は金型に使用中に生成されるFe23
FeOにより混合物層が厚くなるのを防止する効果や、
混合物層の形態が緻密であり、混合物層と窒化層の密着
性が向上していることから使用中の混合物層の剥離やク
ラックの起点または伝播の通路になりにくくなる利点が
あり、長期使用に効果の高いものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】比較部材の試料No.6の混合物層の構造を示
す電子顕微鏡写真とEPMAによる線分析チャートおよ
び混合物層の部材本体側の窒化層の構造を示す光学顕微
鏡写真である。
【図2】比較部材の試料No.8の混合物層の構造を示
す電子顕微鏡写真とEPMAによる線分析チャートおよ
び混合物層の部材本体側の窒化層の構造を示す光学顕微
鏡写真である。
【図3】本発明部材の試料No.12の混合物層の構造
を示す電子顕微鏡写真とEPMAによる線分析チャート
および混合物層の部材本体側の窒化層の構造を示す光学
顕微鏡写真である。
【図4】本発明部材の試料No.20の混合物層の構造
を示す電子顕微鏡写真とEPMAによる線分析チャート
および混合物層の部材本体側の窒化層の構造を示す光学
顕微鏡写真である。
【図5】比較部材の試料No.6および試料No.8と
本発明部材の試料No.12および試料No.20のX
線回折図である。
【手続補正書】
【提出日】平成9年2月7日
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0025
【補正方法】変更
【補正内容】
【0025】
【表1】 ─────────────────────────────────────────────────────
【手続補正書】
【提出日】平成9年7月24日
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0025
【補正方法】変更
【補正内容】
【0025】
【表1】

Claims (10)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 部材の表層部に硫化鉄と酸化鉄を主体と
    する窒素を含む混合物層を有し、前記混合物層中の硫黄
    と酸素の重量濃度比(S/O)が0.5<S/O<10
    の式を満足する領域を有することを特徴とする温熱間用
    部材。
  2. 【請求項2】 部材の表層部に硫化鉄と酸化鉄を主体と
    する窒素を含む混合物層を有し、前記混合物層中の硫黄
    と酸素の重量濃度比(S/O)が0.5<S/O<10
    の式を満足する領域を有し、かつ前記混合物層の部材本
    体側に少なくとも窒化層が形成され、前記窒化層は白層
    と窒素拡散層からなることを特徴とする温熱間用部材。
  3. 【請求項3】 部材の表層部に硫化鉄と酸化鉄を主体と
    する窒素を含む混合物層を有し、前記混合物層中の硫黄
    と酸素の重量濃度比(S/O)が0.5<S/O<10
    の式を満足する領域を有し、かつ前記混合物層の部材本
    体側に少なくとも窒化層が形成され、前記窒化層は窒素
    拡散層からなることを特徴とする温熱間用部材。
  4. 【請求項4】 請求項1ないし3のいずれかに記載の混
    合物層中のSの濃度が重量%で5〜30である温熱間用
    部材。
  5. 【請求項5】 請求項1ないし4のいずれかに記載の混
    合物層の厚さが0.1〜20μmの緻密な層である温熱
    間用部材。
  6. 【請求項6】 請求項2または3に記載の窒化層の最高
    硬さが900HV以上である温熱間用部材。
  7. 【請求項7】 ガス発生容器内に無色硫化アンモニウム
    溶液と黄色硫化アンモニウム溶液を6:1ないし1:1
    の割合で供給し、発生する液面上ガスと窒素ガスまたは
    アルゴンガスからなる搬送用ガスとの混合ガス中の硫化
    水素ガス濃度を100〜600ppm、アンモニアガス
    濃度を0.1〜1.0%に調整して、温熱間用部材を配
    置して460〜600℃に加熱された反応炉に導入する
    とともに、別容器から供給する窒素ガスとアンモニアガ
    スにより前記反応炉内のアンモニア濃度を10〜70%
    に調整して、ガス浸硫窒化処理することを特徴とする温
    熱間用部材の製造方法。
  8. 【請求項8】 反応炉の加熱温度が500〜600℃で
    あり、前記反応炉内のアンモニア濃度が20〜70%で
    ある請求項7に記載の温熱間用部材の製造方法。
  9. 【請求項9】 反応炉の加熱温度が460〜550℃で
    あり、前記反応炉内のアンモニア濃度が10〜40%で
    ある請求項7に記載の温熱間用部材の製造方法。
  10. 【請求項10】 請求項1ないし6のいずれかに記載の
    温熱間用部材で構成したことを特徴とする温熱間用金
    型。
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Cited By (2)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2003328109A (ja) * 2002-05-14 2003-11-19 Nissan Motor Co Ltd マルエージング鋼の窒化処理方法およびその方法によって窒化処理されたベルト式無段変速機用のベルト
US7600556B2 (en) 2002-10-30 2009-10-13 Honda Motor Co., Ltd. Mold for casting and method of surface treatment thereof

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JP2003328109A (ja) * 2002-05-14 2003-11-19 Nissan Motor Co Ltd マルエージング鋼の窒化処理方法およびその方法によって窒化処理されたベルト式無段変速機用のベルト
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