JPH09279328A - 耐摩耗性に優れる温熱間鍛造用金型 - Google Patents

耐摩耗性に優れる温熱間鍛造用金型

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JPH09279328A
JPH09279328A JP11320396A JP11320396A JPH09279328A JP H09279328 A JPH09279328 A JP H09279328A JP 11320396 A JP11320396 A JP 11320396A JP 11320396 A JP11320396 A JP 11320396A JP H09279328 A JPH09279328 A JP H09279328A
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mold
die
iron oxide
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region
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JP11320396A
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Makoto Komori
誠 小森
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Original Assignee
Hitachi Metals Ltd
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 耐摩耗性に優れる温熱間鍛造用金型を提供す
る。 【解決手段】 金型表面部にSi、Cr、Co、Sのう
ちのいずれかの1種以上の元素が金型基地の濃度より濃
厚な領域をもつ鉄酸化物を主体とした1〜20μmの厚
さの層が存在する耐摩耗性に優れる温熱間鍛造用金型で
あり、上記層の下の金型基地表層部に窒化層を設けるの
が望ましい。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、金属材料などの被
加工材をを温間ないし熱間で鍛造加工する際に使用され
る金型に関するものである。
【0002】
【従来の技術】温熱間鍛造用金型(以後、金型と称す
る)には、主にSKD61、SKT4に代表される熱間
工具鋼が用いられている。また、より耐久性の要求が厳
しい用途には、これらより高温強度の高いSKD7、S
KD8、高速度工具鋼やこれらの改良鋼を用いることが
一般に広く行われている。
【0003】近年、鍛造工程の効率向上や、仕上げ鍛造
後の削り代を少なくして歩留の改善を目的とした、鍛造
のニヤネットシェイプ化が進んできている。それに伴い
金型の形状が複雑な部分には、応力負荷や肉流れの点で
金型表面部の負荷が増大するため、金型の寿命数が低下
している。このような背景から金型の耐久性を向上させ
る要求が高まっている。被加工材を温間や熱間で鍛造す
る際に用いる金型は、寿命原因のうちの6割は摩耗によ
る損傷であり、特に金型の耐摩耗性を向上させることが
有効である。このような要求に対して、高合金化した高
強度材を用いると、材料コストが高くなるだけでなく、
靭性がSKD61やSKT4に比べて低いため、欠損や
割れが生ずる問題があった。上記の問題点を解決する手
段の一つとして、靭性の高い金型材料を選択し、金型作
業面に表面処理を行なう方法が進んできている。金型作
業面に表面処理を施して用いると、損傷を受ける金型表
面部だけ特に強化させることが可能で、金型の基地側は
高靭性にすることで、耐摩耗性と耐欠け性や耐割れ性を
同時に解決することができる。表面処理としては窒化が
主流である。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】通常の金型は次のよう
なプロセスを経て摩耗が進行する。まず加熱された被加
工材との接触による熱伝達、および鍛造時の金型表面と
被加工材との間で発生する摩擦熱や被加工材の塑性変形
による発熱などの熱により金型表層部が加熱され、熱影
響を受けて軟化する。そして強度が低下した金型表層部
でヒートチェックや塑性流動が起こり摩耗が進行してい
く。従って、金型表層部の熱影響を抑制することができ
れば金型の寿命向上が可能となる。一方、金型作業面の
裏側を冷却する方法や、潤滑剤を用いたりして金型の熱
影響を抑制することも行われてきたが、これらの方法は
冷却手段や潤滑剤塗布の手段の付加で生産コストの上昇
になっていた。
【0005】近年のニヤネットシェイプ化は、製品の形
状が複雑になるほど、鍛造時に被加工材の肉流れが大き
くなり、金型表面との摩擦量が増すため、摩擦熱による
金型表層部の軟化がより進行するようになってきた。一
般に、摩擦熱による金型表面部の熱影響深さは比較的小
さいため、金型母材への影響は少ないが、瞬間的に表層
部だけが高温になるため、金型材料に熱間工具鋼等の焼
入れ焼戻しを施した調質鋼を用いた場合、鋼の変態点
(700〜900℃程度)を越えてしまうため、高温の
強度がより低下してしまい、金型材料が本来もつべき強
度特性を失わせ摩耗を促進させる結果となる。また、窒
化処理などの表面処理を施した金型は、窒化層を形成す
る窒化物の一部が高熱のために分解してしまい、その効
果を十分に発揮できなくなるという問題があった。
【0006】
【課題を解決するための手段】本発明者は、温間や熱間
鍛造する際に予め加熱された被加工材が、金型表面との
摩擦や塑性変形による発熱等によりさらに昇熱し、これ
が金型表面部に熱伝達される経路を遮断できれば、金型
は比較的靭性の高い低合金の金型を適用することができ
ないか検討した。その結果、摩擦熱の発生を抑制すると
ともに、断熱効果があり耐剥離性の優れた新規な表面構
造を有する金型、およびその表面構造の形成に適した金
型材料を新たに見出した。
【0007】すなわち本発明の第1発明は、金型表面部
に、Si、Crの1種または2種が基地の濃度よりも濃
厚な領域を有する鉄酸化物を主体とした1〜20μmの
厚さの層が存在することを特徴とする耐摩耗性に優れる
温熱間鍛造用金型である。本発明の温熱間鍛造型とは、
温間で使用される鍛造金型、熱間で使用される鍛造金型
を総称するものである。第2発明は、金型表面部に、S
が基地の濃度よりも濃厚な領域を有する鉄酸化物を主体
とした1〜20μmの厚さの層が存在することを特徴と
する耐摩耗性に優れる温熱間鍛造用金型である。また、
第3発明は、金型表面部に、Si、Crの1種または2
種およびSが基地の濃度よりも濃厚な領域を有する鉄酸
化物を主体とする1〜20μmの厚さの層が存在するこ
とを特徴とする耐摩耗性に優れる温熱間鍛造用金型であ
る。望ましくは、第1ないし第3発明のいずれかに記載
する金型表面部に存在する層に、さらにCoが基地の濃
度より濃厚な領域を有する耐摩耗性に優れる温熱間鍛造
用金型である。
【0008】そして、第4発明は、耐摩耗性に優れる温
熱間鍛造用金型表面部に形成させる鉄酸化物を主体とす
る層の望ましい構造を示したものであり、少なくとも金
型表面部の最表面が鉄酸化物領域で、該鉄酸化物領域の
下部にSi,Cr,S,Coのうちのいずれか1種以上
の元素が基地の濃度よりも濃厚な鉄酸化物を主体とした
酸化物の領域を有することを特徴とする耐摩耗性に優れ
る温熱間鍛造用金型である。上記の鉄酸化物を主体とす
る層の構造は、図1の金属組織写真に例示するように、
金型基地と表面との間に存在する黒色の層が鉄酸化物を
主体とする層で、EPMA(微小部X線分析装置)によ
る線分析のチャートからわかるように酸素の高い部分で
ある。さらに上記黒色層の鉄酸化物を主体とする層に
は、金型基地との境界K(図1のチャートの一点破線部
に相当)の近傍でSi,Cr,S,Coが基地の濃度よ
りも濃厚な領域が存在することがわかる。上記第1ない
し第4発明の金型表面部に存在する層を形成させるのに
好適な金型基地の組成は、重量%で、C 0.1〜1.
0%、Si 1.5%以下、Mn0.1〜1.5%、N
i 5.0%以下、Cr 0.5〜12.0%、WとMo
の1種または2種を1/2W+Moで1.0〜5.0
%、V 5.0%以下、Nb0.4%以下、Co 5.0
%以下、残部Feおよび不可避的不純物からなる。さら
に上記第1ないし第4発明のより望ましい構成は、金型
表面部に存在する鉄酸化物を主体とする層の下に、窒化
層を有するのがよく、前記窒化層の深さが100μm以
下とするのが好ましい。
【0009】
【発明の実施の形態】本発明金型の最も大きな特徴の一
つは、金型表面部に鉄酸化物を主体とする層だけでな
く、後述する元素のうちのいずれか1種以上の元素が金
型基地の濃度よりも濃厚な領域として存在させることが
重要である。鉄酸化物はそれ自体高硬度であるため耐摩
耗性に優れており、被加工材との凝着を抑制して発熱を
防止だけでなく、摩擦係数を減少させ、さらに被加工材
から金型表面に伝達される熱を遮断する効果を有する。
鉄酸化物を主体とする層の厚さは、薄いとその効果が十
分に発揮されないので1μm以上とし、厚くなりすぎる
と容易に剥離してしまうため20μm以下とする。
【0010】金型表面部に、予めSi、Crの1種また
は2種が基地の濃度よりも濃厚な領域を有する鉄酸化物
を主体とする層を設けることにより、金型の使用中、金
型表層部に新たに生成する表面上の酸化物の成長を抑制
し、鉄酸化物を主体とする層が剥離するのを防止するだ
けでなく、金型の基地との密着性を向上させる効果を有
する。SiやCrは、鉄酸化物を主体とした層を形成す
るための酸化処理により、基地の濃度よりも濃厚な領域
を形成させることができる。すなわち、例えば金型の少
なくとも型彫り面を大気中、Co2雰囲気中、H2O雰囲
気中などで加熱するなどにより金型基地中に含有してい
るSiやCrを鉄酸化物を主体とした層に拡散させ、鉄
酸化物を主体とした層中のCrやSiの濃度を高めるの
である。
【0011】また、金型表面部に、予めSが基地の濃度
よりも濃厚な領域を有する鉄酸化物を主体とする層は、
浸硫処理、浸硫窒化処理等のSを外部から供給する表面
処理によって形成させることができる。このS濃度が濃
厚な層は、金型の最表面部に存在する場合には、潤滑効
果を有し、また図1に示すように、Sが基地の濃度より
も濃厚な領域を金型基地と鉄酸化物を主体とする層との
境界Kの近傍に存在させることにより、金型使用中に最
表面の鉄酸化物層が剥離した場合においても、その効果
を持続させることができる。
【0012】さらに金型表面部に、予めCoが基地の濃
度よりも濃厚な領域を有する鉄酸化物を主体とする層
は、金型基地の界面に存在させることにより、界面の形
状を櫛状にして、界面の接触面積を大きくし、金型の基
地との密着性を向上させる効果を有する。Coは、金型
基地中に含有された一部を、前述の酸化処理中に鉄酸化
物を主体とした層に拡散させて基地の濃度よりも濃厚な
領域を形成することができる。上記のようなSi,Cr
のグループ、S,Coが金型表面部に基地の濃度よりも
濃厚な領域を有する鉄酸化物を主体とする層は、それぞ
れ特有の効果を有するので、これらを組み合わせればよ
り一層の効果を発揮させることができる。
【0013】また、金型表面部に形成させる鉄酸化物を
主体とする層の望ましい構造は、少なくとも最表面部を
鉄酸化物領域とすることで耐摩耗性、断熱、摩擦係数低
減等を有効に発揮させ、この鉄酸化物領域の下部にS
i,Cr,S,Coのうちのいずれか1種以上の元素が
基地の濃度よりも濃厚な鉄酸化物を主体とする領域にす
れば、鉄酸化物を主体とする層の剥離が防止されて金型
の耐久性を大幅に向上することができる。
【0014】次に金型基地組成の限定理由について述べ
る。Cは、優れた焼入れ性、焼戻し硬さ、および高温硬
さを維持し、またW、Mo、V、Crなどの炭化物形成
元素と結合して炭化物を形成し、結晶粒の微細化、耐摩
耗性、焼戻し軟化抵抗、高温硬さを付与するために添加
する。Cの含有量が0.1%未満になると調質後の硬さ
が得られなくなり、金型表面部に形成する硬質層を支え
きれなくなり、多すぎると過度の炭化物の析出により靭
性が低下して金型の欠けや割れの発生原因になるため、
Cの範囲を0.1〜1.0%にするのがよい。望ましい
Cの範囲は0.2〜0.8%であり、より望ましくは
0.3〜0.6%である。
【0015】Siは、脱酸剤として用いる他、本発明の
金型においては、前述した図1のように金型表面部に形
成させる鉄酸化物を主体とした層の一部に、基地の濃度
よりも濃厚な領域を形成させ、鉄酸化物層の成長を抑制
して鉄酸化物層の剥離を防止する効果を有する反面、S
iを過度に含有させると金型基地の靭性が低下してしま
うために1.5%以下にするのがよい。Mnは、焼入れ
性を向上させるが、多すぎるとAc1変態点を過度に低
下させ、また機械加工性を低下させるので、0.1〜
1.5%とするのがよい。
【0016】Crは、適正量含有させることにより、焼
戻し軟化抵抗および高温強度を高める他、Cと結合して
炭化物を形成することにより耐摩耗性の向上、焼入れ性
の向上の効果を有する。また、本発明の金型において
は、金型表面部に形成させる鉄酸化物を主体とした層
に、Crが基地の濃度よりも濃厚な領域を形成させ、鉄
酸化物層の成長を抑制して鉄酸化物層の剥離を防止す
る。さらにCrは、窒化物形成元素であるために、窒化
をした場合に硬質の硬化層を得ることができる。上記の
効果得るために、Crは最低0.1%が必要であるが、
逆に12.0%を超えて含有すると粗大な炭化物を形成
して金型基地の靭性が低下するため、その範囲を0.1
〜12.0%とするのがよい。望ましいCrの範囲は
2.0〜10.0%であり、さらに望ましくは3.0〜
8.0%である。
【0017】WとMoは焼戻し処理時に微細な特殊炭化
物を析出して、軟化抵抗や高温強度を高める効果を有す
る。ただし過度の添加は炭化物の粗大化をまねき靭性を
低下させるので、金型の使用条件に応じた常温強度、高
温強度を勘案して、W、Moの1種または2種を1/2
W+Moで1.0〜5.0%添加するのがよい。Vは、
必ずしも添加する必要はないが、添加する場合は固溶し
にくい炭化物を形成して耐摩耗性の向上に効果があり、
また焼戻し時に微細で凝集しにくい炭化物を析出して高
温域における焼戻し軟化抵抗を大きくすることにより高
温強度を高める。またVは、結晶粒を微細化して靭性を
向上させる効果も有する。多すぎると巨大な炭化物を生
成して熱間加工方向に沿う縞状炭化物の分布傾向を増大
させて、その方向に沿うクラックの進展の助長による靭
性の低下をまねくため、Vの上限は5.0%とするのがよ
い。望ましいVの範囲は、0.1〜3.0%であり、さ
らに望ましくは0.2〜1.5%である。
【0018】Niは、必ずしも添加する必要はないが、
添加する場合はC、Cr、Mn、Mo、Wなどとともに
優れた焼入れ性を付与し、緩やかな焼入れ冷却速度の場
合にもマルテンサイト主体の組織を形成させて靭性の低
下を防ぐ作用があり、また基地の本質的な靭性改善効果
を与える作用がある。しかし多量の添加はAc1変態点
を過度に低下させ、また機械加工性を低下させるので添
加する場合には5.0%以下とする。
【0019】Nbは、必ずしも添加する必要はないが、
添加する場合は、高温まで固溶しにくい炭化物を形成し
て焼入れ加熱保持中の結晶粒成長を抑制して、結晶粒を
微細化して靭性を向上させるものである。多すぎると粗
大な炭化物が生じてかえって靭性を低下させるので0.
4%以下とする。Coは、必ずしも添加する必要はない
が、添加した場合には前述したように、本発明金型に非
常に大きな効果を与える。金型表面部に形成させる鉄酸
化物を主体とした層にCoの濃厚な領域を形成させる
と、鉄酸化物を主体とする層と金型基地との界面形状を
櫛状にして接触面積を拡大させて密着性を向上させる効
果を有する。多すぎると靭性の低下をまねくこと、およ
び材料が高価になることより、Coの上限を5.0%と
するのがよい。
【0020】本発明金型の重要な特徴の一つである金型
表面部に、Si,Crの1種または2種が基地の濃度よ
りも濃厚な領域を有する鉄酸化物を主体とした層、Sが
基地の濃度よりも濃厚な領域を有する鉄酸化物を主体と
した層、Coが基地の濃度よりも濃厚な領域を有する鉄
酸化物を主体とした層のいずれかまたはこれらの層を組
合せることにより、摩擦熱の低減と同時に被加工材から
の熱伝達が遮断されることにより、金型基地の表層部で
は軟化が抑制されるが、金型基地の表層部に窒化層を存
在させることにより相乗効果を発揮することができる。
特にヒートクラックが問題となる金型には、窒化深さを
100μm以下にすることにより、クラックの進展を抑
制することができる。
【0021】上記のようにSi、Cr、Coのいずれ
か、または複合して基地の濃度よりも濃厚な領域を有す
る鉄酸化物を主体とする層を得るには、これらの元素を
含有する鋼からなる金型の、少なくとも型彫り面を大気
中、CO2雰囲気中、H2O雰囲気中など、例えば大気中
600℃で5時間、CO2雰囲気中540℃で5時間、
2O雰囲気中550℃で5時間など金型を保持する方
法等の適正な条件で加熱することにより得られる。加熱
にはバーナーや雰囲気炉、塩浴等を用いることができ
る。また、Sが基地の濃度よりも濃厚な領域を持つ鉄酸
化物を主体とした層を得るには浸硫処理や浸硫窒化処理
などを適正な処理条件で金型に施すことによって得られ
る。これらの処理や窒化処理を組み合わせることにより
本発明の表面構造とすることができるのである。
【0022】
【発明の実施の形態】
(実施例1)表1に示す組成の鋼を準備し、焼入れ焼戻
しにより鋼4を除いて50HRC、鋼4は57HRCに
調質した。その後、直径5mm、長さ20mmの形状を
持つ丸棒試験片を作成し、その端面は旋盤にて砥石で仕
上げた。これらの試験片に表2に示す種々の処理を施し
たものを用いて熱間焼付試験を行なった。
【0023】
【表1】
【0024】
【表2】
【0025】熱間焼付試験は、試験片をボール盤に取り
付け、600℃に加熱したSNCM439製のブロック
に押し付け、1540rpmで30秒間摩擦摺動させる
もので、押し付け荷重は588Nとした。上記の試験条
件で試験を終了した後、試験片端面の焼き付き発生状況
を観察して耐焼付性を判定した。表3に表面構造と試験
結果を示す。なお表3中の熱間焼付試験の評価は、焼付
現象が認められた試験片を×印、焼付現象が起こらなか
った試験片を○印で表示した。本発明の表面構造を持つ
試験片はいずれも本試験において焼付を起こさなかっ
た。焼付を起こした試験片を解析するといずれも再焼入
れ組織を呈しており鋼のAc1変態点越える温度上昇、
すなわち大きな摩擦発熱があったことが分かる。これに
より本発明は摩擦発熱を著しく減少させることがわかっ
た。
【0026】
【表3】
【0027】なお、表3のうち、No.7(比較金型に
相当)、No.17およびNo.18(いずれも本発明
金型に相当)と同じ処理を行なった試験片の表面部を切
り出して金型表面部の断面についてEPMA(微小部X
線分析装置)による線分析を行ない、その結果をそれぞ
れ図2、図3、図4に示す。図2は、本発明金型の対象
外となるもので最表部には、鉄酸化物層と、金型基地部
の表面側に白層を主体とする窒素の濃厚な領域が認めら
れるだけで、最表面部の鉄酸化物層には、Si,Cr,
S,Coなどが金型基地の濃度よりも濃厚な領域は認め
られない。これに対して、図3では鉄酸化物を主体とす
る層にCrとSが金型基地の濃度よりも濃厚な領域とし
て存在し、また図4では鉄酸化物を主体とする層にS
i,Sが金型基地の濃度よりも濃厚な領域として存在し
ているのが認められる。 (実施例2)表3のNo.6、12、17の表面構造を
持つサイドフランジ成形用熱間鍛造用金型を用意した。
金型の寸法は直径220mm、150mm高さである鋼
1は金型に成形後、焼入れ焼戻しにより45HRCに調
質し、所定の表面構造が得られる様にそれぞれ処理を行
った。1600tの鍛造プレスを用い、被加工材をS4
8Cとし、これを1200℃に高周波加熱して1000
ケずつ鍛造した。鍛造は14秒おきに行い、1回の鍛造
毎に水溶性黒鉛潤滑剤を金型表面に噴霧した。
【0028】1000ケ鍛造後、金型型彫り部コーナー
の解析を行った。このコーナーは被加工材の肉流れが大
きい、すなわち摩擦発熱が激しく発生する部位である。
1000ケ鍛造した後ではこの部位の摩耗は10μm以
下であった。この部位の表面から0.05mm位置の硬
さを測定した結果を表4に示す。比較であるNo.6は
鍛造前に比べて硬さの低下が非常に大きいが、本発明で
あるNo.12、No.17は硬さの低下が小さく、本
発明の表面構造を持つ金型は摩擦発熱を抑制するととも
に、熱伝達を遮断することにより、金型基地への熱負荷
を軽減することがわかった。
【0029】
【表4】
【0030】(実施例3)鋼1を焼入れ焼戻しにより4
7HRCに調質し、鋼4を焼入れ焼戻しにより57HR
Cに調質した。調質後、それぞれ直径90mm、50m
m高さの円柱状試験片を作成し、表2に示す処理4を行
った。なお、処理4を施すのに先立って、金型に窒化条
件を変えて、窒化深さの違うものを2種類用意した。1
つは窒化深さ200μm前後のもの(Aと表示する)で
あり、もう1つは窒化深さ90μm前後のもの(Bと表
示する)である。この試験片を用いてヒートクラック試
験を行った。試験条件は、試験片の端面を高周波加熱に
より680℃に加熱した後、32℃の水を噴霧する試験
方法で、3000回繰り返すことにより、試験片端面に
ヒートクラックを発生させるものである。
【0031】試験後、ヒートクラック発生部の断面ミク
ロ組織を観察し、ヒートクラックの発生状況を観察し
た。Aはヒートクラックが200μm深さの内部まで進
展していたが、Bはクラックは多数発生するが、その深
さも90μm程度に留まり、それ以上のクラックの進展
は認められなかった。従って、本発明の表面構造で窒化
層を有する場合、窒化深さを100μm以下にすること
によりクラックの進展を抑制する効果のあることがわか
る。
【0032】(実施例4)表3に示すNo.6、12、
17の表面構造を持つサイドフランジ成形用熱間鍛造用
金型を用意した。金型の寸法は直径220mm、150
mm高さである。鋼1の鋼を金型に成形後、焼入れ焼戻
しにより45HRCに調質し、所定の表面構造が得られ
る様にそれぞれ処理を行った。1600tの鍛造プレス
を用い、1200℃に高周波加熱したS48Cワークを
鍛造した。鍛造は14秒おきに行い、1回の鍛造毎に水
溶性黒鉛潤滑剤を金型表面に噴霧した。表5に金型の寿
命を示す。金型はいずれも摩耗による損傷で寿命となっ
た。本発明の表面構造を持つ金型は従来の金型に比べて
いずれも金型寿命が向上し、耐摩耗性に優れていること
がわかる。
【0033】
【表5】
【0034】
【発明の効果】以上に述べたように、本発明の表面構造
を有する金型は、摩擦熱による熱負荷の抑制効果と断熱
効果により、金型の寿命を向上させることが可能とな
り、しかも金型の使用中に鉄酸化物層を主体とする層が
厚くなるのを防止する効果や、密着性に優れることから
耐剥離性が良好となる。さらに適正な深さの窒化処理を
組み合わせることによって一段と金型寿命が改善され
る。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の鉄酸化物を主体とする層の構造を示す
金属組織写真とEPMAによる線分析チャートである。
【図2】表3に示す比較金型No.7の鉄酸化物を主体
とする層の構造を示す金属組織写真とEPMAによる線
分析チャートである。
【図3】表3に示す本発明金型No.17の鉄酸化物を
主体とする層の構造を示す金属組織写真とEPMAによ
る線分析チャートである。
【図4】表3に示す本発明金型No.18の鉄酸化物を
主体とする層の構造を示す金属組織写真とEPMAによ
る線分析チャートである。

Claims (8)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 金型表面部に、Si、Crの1種または
    2種が基地の濃度よりも濃厚な領域を有する鉄酸化物を
    主体とした1〜20μmの厚さの層が存在することを特
    徴とする耐摩耗性に優れる温熱間鍛造用金型。
  2. 【請求項2】 金型表面部に、Sが基地の濃度よりも濃
    厚な領域を有する鉄酸化物を主体とした1〜20μmの
    厚さの層が存在することを特徴とする耐摩耗性に優れる
    温熱間鍛造用金型。
  3. 【請求項3】 金型表面部に、Si、Crの1種または
    2種およびSが基地の濃度よりも濃厚な領域を有する鉄
    酸化物を主体とする1〜20μmの厚さの層が存在する
    ことを特徴とする耐摩耗性に優れる温熱間鍛造用金型。
  4. 【請求項4】 金型表面部に、Coが基地の濃度より濃
    厚な領域を有する鉄酸化物を主体とした1〜20μmの
    厚さの層が存在する請求項1ないし3のいずれかに記載
    の耐摩耗性に優れる温熱間鍛造用金型。
  5. 【請求項5】 少なくとも金型表面部の最表面が鉄酸化
    物領域で、該鉄酸化物領域の下にSi,Cr,S,Co
    のうちのいずれか1種以上の元素が基地の濃度よりも濃
    厚な鉄酸化物を主体とした酸化物の領域を有することを
    特徴とする耐摩耗性に優れる温熱間鍛造用金型。
  6. 【請求項6】 金型基地の組成が、重量%で、C 0.
    1〜1.0%、Si1.5%以下、Mn 0.1〜1.
    5%、Ni 5.0%以下、Cr 0.5〜12.0%、
    WとMoの1種または2種を1/2W+Moで1.0〜
    5.0%、V5.0%以下、Nb 0.4%以下、Co
    5.0%以下、残部Feおよび不可避的不純物からなる
    請求項1ないし4のいずれかに記載の耐摩耗性に優れる
    温熱間鍛造用金型。
  7. 【請求項7】 金型表面部に存在する鉄酸化物を主体と
    する層の下に、窒化層を有する請求項1ないし6のいず
    れかに記載の耐摩耗性に優れる温熱間鍛造用金型。
  8. 【請求項8】 窒化層の深さが100μm以下である請
    求項7に記載の耐摩耗性に優れる温熱間鍛造用金型。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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WO2004020685A1 (ja) * 2002-08-29 2004-03-11 Honda Giken Kogyo Kabushiki Kaisha 有層鋼材製部材およびその製造方法

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