JPH10196397A - 船外機の被吊設装置 - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 【課題】エンジンの大型化や重量増を招かずにエンジン
重心の鉛直上部に近接して被吊設部を設置可能にする。 【解決手段】本発明に係る船外機の被吊設装置35Ａは、
クランク軸20が鉛直方向を向くように縦置きにエンジン
が搭載され、クランク軸20の上端部がエンジンの上面か
ら突出し、この上端部に回転部材（例えばフライホイー
ル23）が締結部材（例えばボルト24Ａ）を用いて回転一
体に設けられた船外機において、クレーン等のフックに
掛止可能な形状に形成した被吊設部36Ａを締結部材（24
Ａ）に着脱可能に固定したことを特徴とするものであ
る。

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【発明の属する技術分野】本発明は、船外機のエンジン
単体、若しくは船外機全体を吊り上げるためにエンジン
の上部に設けられる船外機の被吊設装置に関する。

【０００２】

【従来の技術】多くの船外機はエンジンが最上部に搭載
されており、エンジンの上部に被吊設装置が設けられて
いる。この被吊設装置は、エンジン単体を船外機に着脱
する場合や、船外機全体を船体に着脱する場合に、クレ
ーンやチェーンブロック等の吊設用フックを掛止させて
エンジン単体若しくは船外機全体を吊り上げるためのも
のである。

【０００３】被吊設装置の設置場所は、特にエンジン単
体を吊り上げた時におけるエンジンの傾きを防止して船
外機への搭載を容易にするため、エンジン重心の鉛直上
部とするのが望ましい。従来では、図７に示すようにエ
ンジン100 の上面のほぼ中央部に被吊設装置101 が設置
されていた。一般に被吊設装置101 は、シリンダーブロ
ック102 の上面に突設されたボス103 に被吊孔の開いた
ブラケット104 を捩じ込み或いはボルト止めすることに
より構成されている。

【０００４】

【発明が解決しようとする課題】しかしながら、このよ
うに被吊設装置101 のボス103 がシリンダーブロック10
2 の上面に設けられるため、シリンダーブロック102 全
体を非常に堅牢に製造しなければならず、これによって
エンジン100 が大型化し、重量が増すという大きな課題
があった。

【０００５】また、被吊設装置101 がクランク軸105 に
回転一体に設けられたフライホイール106 等の回転部材
と干渉することを避けるため、被吊設装置101 のボス10
3 をクランク軸105 から離れた位置に設ける必要があ
り、結果的にブラケット104 がエンジン重心の鉛直上部
から逸れた位置に配置され、吊設されたエンジン100 単
体の傾斜を余儀なくされていた。

【０００６】さらに、エンジン100 の上面に被吊設装置
101 が高く突出するため、被吊設装置101 の不使用時に
は邪魔になるばかりか、フライホイール106 等の回転部
材を上方から覆う図示しないカバー部材に被吊設装置10
1 が干渉するので上記カバー部材に孔を開けざるを得
ず、カバー部材の防水性を損う原因となっていた。

【０００７】本発明に係る船外機の被吊設装置は、この
ような問題点を解決するために発明されたもので、その
第一の目的は、エンジンの大型化や重量増を招かずにエ
ンジン重心の鉛直上部に近接して被吊設部を設置可能に
することにある。

【０００８】また、本発明に係る船外機の被吊設装置の
第二の目的は、被吊設装置の不使用時に被吊設装置が邪
魔にならないようにすることである。

【０００９】さらに、本発明に係る船外機の被吊設装置
の第三の目的は、フライホイール等の回転部材の上方を
覆うカバー部材の防水性を損うことなく被吊設部を設置
可能にすることにある。

【００１０】

【課題を解決するための手段】前記第一の目的を達成す
るため、本発明に係る船外機の被吊設装置は、請求項１
に記載したように、クランク軸が鉛直方向を向くように
縦置きにエンジンが搭載され、クランク軸の上端部がエ
ンジンの上面から突出し、この上端部に回転部材が締結
部材を用いて回転一体に設けられた船外機において、ク
レーン等のフックに掛止可能な形状に形成した被吊設部
を締結部材に固定したことを特徴とする。

【００１１】このように構成した場合、被吊設装置の被
吊設部がエンジンのクランク軸に直接的に設けられるこ
とから、従来の被吊設装置のように被吊設部をシリンダ
ーブロックに設置するためにシリンダーブロックを堅牢
に製造する必要がなくなる。しかも、エンジンの重心は
クランク軸の近くに位置しており、このクランク軸の上
端に被吊設部が設けられることから、エンジン重心の鉛
直上部に近接して被吊設部が配置される。

【００１２】また、前記第二の目的を達成するため、本
発明に係る船外機の被吊設装置は、請求項２に記載した
ように前記被吊設部を前記締結部材に対して着脱可能に
した。こうすれば、被吊設装置の不使用時には被吊設部
を締結部材（クランク軸）から取り外すことができるた
め、被吊設装置が邪魔になることがない。

【００１３】さらに、前記第三の目的を達成するため、
本発明に係る船外機の被吊設装置は、請求項３に記載し
たように前記回転部材の上方を覆うカバー部材の、締結
部材の真上に対応する部分に孔を設け、この孔を液密に
閉塞するキャップを着脱可能に設けた。

【００１４】このようにカバー部材に孔を設けることに
よってカバー部材を取り外すことなく被吊設部を使用
（着脱）することができ、しかも被吊設部の不使用時に
はカバー部材の孔にキャップを装着すればカバー部材の
防水性が損われる懸念もない。

【００１５】

【発明の実施の形態】以下、本発明の一実施形態につい
て図面を参照しながら説明する。図１は、本発明に係る
被吊設装置を適用可能な船外機の一例を示す左側面図で
ある。

【００１６】この船外機１は、船体２のトランサム３に
クランプブラケット４を介して装着され、クランプブラ
ケット４の後部に縦向きに設けられたスイベルシャフト
５を軸に左右に首振り自在とされる。スイベルシャフト
５に軸支されるのは船外機１の中央部に位置するドライ
ブハウジング６とその上方に載置された厚板状のエンジ
ンホルダー７の部分であり、エンジンホルダー７の上に
はエンジン８が搭載されている。なお、エンジン８は上
下２分割式のエンジンカバー11,12 によって覆われる。

【００１７】一方、ドライブシャフトハウジング６の下
部にはギヤケース13が設けられており、このギヤケース
13の後部にプロペラ14が軸支されている。そして、エン
ジン８から鉛直下に延びる図示しないドライブ軸により
プロペラ14が回転駆動されるように構成されている。

【００１８】エンジン８は、例えば直列４気筒の４サイ
クルガソリン機関であり、前方から順に配置されたクラ
ンクケース15、シリンダーブロック16、シリンダヘッド
17、ヘッドカバー18等を主要部材にして組み立てられて
いる。また、エンジン８は、クランクケース15とシリン
ダーブロック16との間に軸支されたクランク軸20が鉛直
方向を向くように縦置きにエンジンホルダー７上に搭載
されている。

【００１９】エンジン８の左側面には吸気装置21が取り
付けられ、前面には始動用のスターターモーター22が設
置されている。また、クランク軸20の上端部はエンジン
８の上面よりも上方に突出しており、この部分にフライ
ホイール23がボルト24を用いて回転一体に設けられてい
る（図２も参照）。なお、フライホイール23とボルト24
は、それぞれ請求項１に記載した回転部材と締結部材に
相当する部材である。

【００２０】さらに、クランク軸20には、フライホイー
ル23の下部に位置するドライブプーリー26が回転一体に
設けられている。一方、シリンダーヘッド17の内部には
クランク軸20に平行するカム軸27が軸支されており、そ
の上端部がエンジン８の上面から突出し、この突出部に
ドリブンプーリー28が回転一体に設けられている。

【００２１】クランク軸20のドライブプーリー26とカム
軸27のドリブンプーリー28との間にはベルト29が掛け渡
されており、このベルト29を介してクランク軸20の回転
がカム軸27に伝達され、シリンダーヘッド17の内部に収
容された図示しない動弁装置が作動するように構成され
ている。

【００２２】ところで、フライホイール23の周囲にはリ
ングギヤ31が鍔状に設けられており、スターターモータ
ー22がＯＮになった際には、スターターモーター22のピ
ニオンギヤ32が上方に突出してリングギヤ31に噛み合
い、エンジン８の始動が行われる。

【００２３】スターターモーター22、フライホイール2
3、ドライブプーリー26、ドリブンプーリー28、ベルト2
9等の部材は全て合成樹脂等で形成されたカバー部材33
によって上方から覆われ、これによって上から降り注ぐ
水滴が遮蔽されて各部の防水性が確保される。

【００２４】このように構成された船外機１を船体に着
脱する場合や、エンジン８を単体で船外機１に着脱する
場合に備えて、エンジン８の上部には本発明に係る被吊
設装置が設けられている。図２は、被吊設装置の設置部
を拡大した縦断面図であり、本発明の第１実施形態を示
している。

【００２５】この被吊設装置35Ａは被吊設部36Ａを備え
ている。被吊設部36Ａはクレーン等のフックに掛止可能
な形状に形成されており、この被吊設部36Ａがフライホ
イール23をクランク軸20に締結固定しているボルト24Ａ
の頭部に着脱可能に固定されるようになっている。

【００２６】例えば、被吊設部36Ａはカップ状に形成さ
れた基部37の上面にリング状の環状部38が一体に立設さ
れた形状であり、基部37の内周面に雌ねじ部39が形成さ
れている。一方、ボルト24Ａは６角ボルトであり、その
６角形の頭部41の下部には頭部41よりも一回り大径な雄
ねじ部42が形成されている。そして、この雄ねじ部42に
被吊設部36Ａの雌ねじ部39が捩じ込まれることによって
被吊設部36Ａがボルト24Ａの頭部41に着脱可能に固定さ
れる。

【００２７】また、図３は本発明の第２実施形態を示し
ている。この被吊設装置35Ｂは、ボルト24Ｂが６角穴付
ボルトとされており、その円柱状の頭部44の外周に雄ね
じ部45が形成され、この雄ねじ部45に、第１実施形態の
被吊設部36Ａと同形状の被吊設部36Ｂの雌ねじ部39が捩
じ込まれて固定されるようになっている。

【００２８】さらに、図４は本発明の第３実施形態を示
している。この被吊設装置35Ｃは、ボルト24Ｃの６角形
の頭部47の上面に、頭部47よりも一回り小径な雄ねじ部
48が形成されており、この雄ねじ部48に被吊設部36Ｃの
雌ねじ部49が捩じ込まれる構成になっている。ここで
は、被吊設部36Ｃの基部50の外径が第１および第２実施
形態の被吊設部36Ａ，36Ｂの基部37よりも小さくなって
いる。

【００２９】また、図５は本発明の第４実施形態を示し
ている。この被吊設装置35Ｄは、ボルト24Ｄが長い頭部
52を有する６角ボルトであり、その頭部52には中心軸に
沿って雌ねじ部53が形成されている。一方、被吊設部36
Ｄはリング状に形成された環状部54の下部に雄ねじ部55
が設けられた形状であり、その雄ねじ部55がボルト24Ｄ
の雌ねじ部53に捩じ込まれるようになっている。

【００３０】上記被吊設装置35Ａ〜35Ｄのいずれの場合
も、被吊設部36Ａ〜36Ｄの環状部38,54,57にクレーン等
のフックを掛止させて船外機１全体、若しくはエンジン
８単体を吊り上げる。これらの被吊設装置35Ａ〜35Ｄに
よれば、その被吊設部36Ａ〜36Ｄがエンジン８のクラン
ク軸20に直接的に設けられることから、従来の被吊設装
置のように被吊設部をシリンダーブロック16に設置する
ためにシリンダーブロック16を堅牢に製造する必要がな
く、エンジン８の大型化や重量増を招く恐れがない。

【００３１】しかも、エンジン８の重心はクランク軸20
の近くに位置しており、クランク軸20の上端に被吊設部
36Ａ〜36Ｄが設けられることから、エンジン重心の鉛直
上部に近接して被吊設部36Ａ〜36Ｄが配置され、特にエ
ンジン８を単体で吊り上げた際におけるエンジン８の傾
きを防止して船外機１への搭載を容易にすることができ
る。

【００３２】さらに、被吊設部36Ａ〜36Ｄがクランク軸
20のボルト24Ａ〜24Ｄに対して着脱可能であるため、被
吊設装置35Ａ〜35Ｄの不使用時には被吊設部36Ａ〜36Ｄ
をボルト24Ａ〜24Ｄ（クランク軸20）から取り外すこと
ができる。このため、被吊設装置35Ａ〜35Ｄが邪魔にな
ることがない。

【００３３】ところで、図６に示すように、フライホイ
ール23の上方を覆っているカバー部材33の、ボルト24Ａ
〜24Ｄの真上に対応する部分には孔59が穿設されてお
り、この孔59を液密に閉塞するキャップ60が着脱可能に
設けられている。キャップ60はゴム等の弾性材料を用い
て形成されている。

【００３４】被吊設装置35Ａ〜35Ｄを使用する時には、
キャップ60を取り外してクランク軸20のボルト24Ａ〜24
Ｄに被吊設部36Ａ〜36Ｄを固定する。これにより、カバ
ー部材33を取り外すことなく被吊設部36Ａ〜36Ｄを使用
（着脱）することができて便利である上、被吊設部36Ａ
〜36Ｄの不使用時にはカバー部材33の孔59にキャップ60
を装着すればカバー部材33の防水性が損われる心配もな
い。このように、カバー部材33の防水性を損うことなく
被吊設部36Ａ〜36Ｄを設置することができる。

【００３５】なお、被吊設部36Ａ〜36Ｄとボルト24Ａ〜
24Ｄとの固定構造は前記第１〜第４実施形態のものに限
定されることはなく、要するに被吊設部がフライホイー
ル23の固定用締結部材に着脱可能に固定される構造であ
ればよい。また、前記第１〜第４実施形態では被吊設部
36Ａ〜36Ｄの上部が環状に形成されているが、他の形
状、例えばフック状に形成しても構わない。

【００３６】

【発明の効果】以上説明したように、本発明に係る船外
機の被吊設装置は、クランク軸が鉛直方向を向くように
縦置きにエンジンが搭載され、クランク軸の上端部がエ
ンジンの上面から突出し、この上端部に回転部材が締結
部材を用いて回転一体に設けられた船外機において、ク
レーン等のフックに掛止可能な形状に形成した被吊設部
を締結部材に固定したことを特徴とするものである。

【００３７】こうすれば、従来の被吊設装置のようにシ
リンダーブロックを堅牢に製造してこれに被吊設部を設
ける必要がなくなり、エンジンの大型化や重量増を避け
ることができる。しかも、エンジンの重心はクランク軸
の近くに位置しており、このクランク軸の上端に被吊設
部が設けられることから、エンジン重心の鉛直上部に近
接して被吊設部を設けることができる。

【００３８】また、本発明に係る船外機の被吊設装置
は、前記被吊設部を締結部材に対して着脱可能にしたた
め、被吊設装置の不使用時には被吊設部を締結部材（ク
ランク軸）から取り外すことができ、被吊設装置が邪魔
になることを防止できる。

【００３９】さらに、本発明に係る船外機の被吊設装置
は、前記回転部材の上方を覆うカバー部材の、締結部材
の真上に対応する部分に孔を設け、この孔を液密に閉塞
するキャップを着脱可能に設けたため、カバー部材を取
り外すことなく被吊設部を使用（着脱）することがで
き、しかも被吊設部の不使用時にはカバー部材の孔にキ
ャップを装着すればカバー部材の防水性が損われる懸念
もない。

【図面の簡単な説明】

【図１】本発明に係る被吊設装置を適用可能な船外機の
一例を示す左側面図。

【図２】本発明の第１実施形態を示す被吊設装置の拡大
縦断面図。

【図３】本発明の第２実施形態を示す被吊設装置の拡大
縦断面図。

【図４】本発明の第３実施形態を示す被吊設装置の拡大
縦断面図。

【図５】本発明の第４実施形態を示す被吊設装置の拡大
縦断面図。

【図６】クランク軸およびフライホイール、カバー部
材、キャップ等の拡大縦断面図。

【図７】従来の技術を示す船外機用エンジンの左側面
図。

【符号の説明】

１ 船外機 ８ エンジン 20 クランク軸 23 回転部材としてのフライホイール 24Ａ〜24Ｄ 締結部材としてのボルト 33 カバー部材 35Ａ〜35Ｄ 被吊設装置 36Ａ〜36Ｄ 被吊設部 59 孔 60 キャップ

Claims (3)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】 クランク軸20が鉛直方向を向くように縦
   置きにエンジン８が搭載され、クランク軸20の上端部が
   エンジン８の上面から突出し、この上端部に回転部材(2
   3)が締結部材（24Ａ〜24Ｄ）を用いて回転一体に設けら
   れた船外機において、クレーン等のフックに掛止可能な
   形状に形成した被吊設部36Ａ〜36Ｄを締結部材（24Ａ〜
   24Ｄ）に固定したことを特徴とする船外機の被吊設装置
   35Ａ〜35Ｄ。
2. 【請求項２】 被吊設部36Ａ〜36Ｄを締結部材（24Ａ〜
   24Ｄ）に対して着脱可能にした請求項１に記載の船外機
   の被吊設装置35Ａ〜35Ｄ。
3. 【請求項３】 回転部材(23)の上方を覆うカバー部材33
   の、締結部材（24Ａ〜24Ｄ）の真上に対応する部分に孔
   59を設け、この孔59を液密に閉塞するキャップ60を着脱
   可能に設けた請求項１および２に記載の船外機の被吊設
   装置35Ａ〜35Ｄ。