JPH10193424A - 射出成形機の射出速度切換制御方法 - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 （修正有） 【課題】 逆流防止用チェック弁のチェックリングの閉
まりのばらつきや、溶融樹脂の状態変化に対して、射出
工程で行われる仕事量が常に一定となるように制御す
る。 【解決手段】 溶融樹脂の射出圧力を検出する圧力検出
器と、射出ストローク位置を検出する位置検出器または
射出開始時点からの経過時間を検出する時間検出器とを
備え、射出速度を予め設定した射出ストローク位置また
は射出スクリュの射出開始時点からの経過時間に基づい
て切換え制御するように構成した射出成形機において、
設定された複数段の各射出速度区間ないし射出全工程に
亘って、射出圧力と射出ストローク位置との各検出値の
積（ＰＳ値）または射出圧力と射出開始時点からの経過
時間との各検出値の積（ＰＴ値）が、常に一定となるよ
うに、射出ストローク位置または経過時間に修正を加え
る。

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【発明の属する技術分野】本発明は、射出成形機の速度
制御方法に係り、特にショット毎における成形の不安定
を生じさせる要因の影響が最小となるように、射出工程
での射出速度の切換位置または切換時間をリアルタイム
で補正して、常に安定した良品の成形を達成できる射出
成形機の射出速度切換制御方法に関する。

【０００２】

【従来の技術】従来、溶融樹脂の射出成形においては、
例えば図５に示すように、横軸を射出スクリュの位置ま
たは時間Ｔとし、縦軸を射出スクリュの前進速度Ｖまた
は圧力Ｐとして、前記速度Ｖを高速で多段階に制御して
金型キャビティ内へ溶融樹脂を充填する充填工程Ｓ1
と、溶融樹脂の充填後において、金型キャビティ内の樹
脂に前記圧力Ｐを多段階に制御して加えて成形する保圧
工程Ｓ2 とによって射出制御が行われている。

【０００３】そこで、多くの場合、前記充填工程Ｓ1
は、油圧回路の圧力調整弁を高圧に設定し、射出スクリ
ュの前進位置または射出開始からの経過時間を基準に、
速度を複数段に変化させるように、流量制御弁の開度を
射出スクリュの射出ストローク位置に応じて、あるいは
時間の経過と共に変化させるように設定している。従っ
て、前記流量制御弁の調整により射出シリンダのピスト
ン、すなわち射出スクリュの射出速度を制御し、金型キ
ャビティ内の樹脂が空気を巻き込まない程度に高速で、
溶融樹脂を前記キャビティ内へ充填する。

【０００４】そして、溶融樹脂が前記キャビティに充填
された後は、流量制御弁を比較的小さい開度に固定し、
次いで圧力調整弁により油圧を調整する保圧工程Ｓ2 と
し、この保圧工程Ｓ2 は時間の経過に応じて、前記キャ
ビティに充填された溶融樹脂に、所定の圧力を加え得る
ように圧力調整弁の開度を変化させている。

【０００５】一般に、充填工程における射出速度制御
は、前述したように、射出スクリュ位置の検出値が、予
め設定された射出速度位置に一致したことによって、複
数段の射出速度の制御目標値を切換えている。図６は、
この場合の制御例を示し、充填工程において４段の速度
設定値Ｖ1 、Ｖ2 、Ｖ3 、Ｖ4 に切換制御した場合にお
ける、射出速度Ｖ並びに圧力Ｐの変化の状態を示してい
る。

【０００６】しかしながら、溶融樹脂の射出に際して、
射出スクリュの前方に位置する溶融樹脂が、射出スクリ
ュ側へ逆流することを防止するために設けられているチ
ェック弁の動作、すなわちチェックリングの閉まる動作
は、ショット毎にタイミングが異なっている。

【０００７】従来の射出制御方法においては、予め射出
速度と射出圧力との切換え位置が固定位置として設定さ
れており、チェックリングの閉まる動作が遅れた場合の
ショットでは、前記射出速度と射出圧力との各区間の実
射出ストロークが短くなる。すなわち、図６に示すよう
に、チェックリングの閉まる動作が速いショット（実線
特性Ａ）における射出工程の仕事量を表わす射出領域Ｓ
Ａに比べて、チェックリングの閉まる動作が遅いショッ
ト（破線特性Ｂ）における射出工程の仕事量を表わす射
出領域ＳＢが、小さくなる。

【０００８】このように、チェックリングの閉まる動作
が遅いショットでは、同じ射出時間および同じ射出速度
の設定にも拘らず、実際の射出により行われる仕事量は
少なくなり、製品の重量や品質に影響を与え、チェック
リングの閉まる動作のバラツキは、製品の重量や品質に
バラツキを生じる。

【０００９】なお、射出油圧または樹脂圧を検知し、こ
れにより射出制御の充填工程から保圧工程に制御を切換
える方法も提案されているが（特開平８−６６９４４号
公報）、この提案された制御方法では、１点の圧力のみ
で切換え判断をすることになり、射出工程における仕事
量の考慮がなされていないため、前述した製品の重量や
品質のバラツキを十分に解消することができない。

【００１０】このように、チェックリングの閉まる動作
が遅いショットでは、射出時間が長くなり、この射出時
間が長くなった分だけ金型キャビティ内の溶融樹脂は多
量に冷却されることになり、金型キャビティ内の流動抵
抗が大きくなって、キャビティ内への充填量が不足して
不良成形品が生じる難点がある。

【００１１】また、このような射出工程の不安定により
不良成形品を発生させる射出成形機側の要因としては、
前述した溶融樹脂の逆流を防止するチェック弁のチェッ
クリングの閉まる動作の変動以外に、計量樹脂の密度の
変化、計量ボリュームの変動、射出速度の変動等が考え
られる。

【００１２】このような観点から、従来においては、例
えば射出成形機に対し、射出スクリュ位置を検出する位
置検出器と、圧力検出器と、前記位置検出器を介して検
出した射出ストロークの時間微分値を算出する速度演算
器、もしくは射出スクリュの射出速度検出器とを設け、
さらに充填工程を複数段の異なる射出速度で射出スクリ
ュの射出速度制御を行うよう構成する。また、この射出
成形機における溶融樹脂の逆流を防止するためのチェッ
ク弁すなわちチェックリングの閉まる動作を判定する圧
力を、予め充填工程の任意点に設定すると共に、充填開
始後に射出圧力が前記判定圧力に達したときの射出スク
リュ位置と、予め設定した基準ショットにおける前記判
定圧力到達時の射出スクリュ位置との、差異を演算記憶
して置く。そして、前記複数段の射出速度の変更切換点
のうち、前記判定圧力に達する前の切換えは、それぞれ
予め設定した射出スクリュの基準変更切換位置で速度切
換えを行い、前記判定圧力に達した後の切換えに際して
は、それぞれ予め設定した射出スクリュの基準変更切換
位置に、前記差異分を増減して修正した射出スクリュ位
置による位置切換えによって、速度切換えを行うように
構成した射出成形機の速度制御方法が提案されている
（特開平８−６６９４４号公報）。

【００１３】また、同様の観点から、射出成形機の射出
工程の異常を監視するために、射出ラムの油圧を検出す
ると共に、射出スクリュの射出速度を検出し、前記両検
出値の乗算値を射出開始から保圧終了時点まで時間積分
し、この積分値を予め基準範囲設定器によって設定され
た値の範囲と比較器により比較し、前記範囲から外れて
いた場合に信号を発するように構成した射出成形機の工
程監視方法が提案されている（特公平２−３９９７３号
公報）。

【００１４】さらに、射出成形機の射出圧力の上昇時間
により射出工程の異常を監視するために、射出成形機で
圧力が生ずる部分に設けられた圧力検出器と、この圧力
検出器で検出された圧力信号が所定の値に達したときを
検出して所定の圧力検出信号を出力する所定圧力検出手
段と、開始信号を受けた時点から一定の基準電圧を積分
していきこの積分した積分電圧を出力すると共に前記所
定圧力検出信号を受けたとき積分動作を停止する積分手
段と、前記積分電圧を所定の上限設定電圧と比較して前
記積分電圧が前記上限設定電圧に達した時点で上限信号
を出力する第１の比較部を有し、前記所定圧力検出信号
が前記上限信号より遅れて発生した場合に上限警報を出
力する上限警報発生部と、前記積分電圧を所定の下限設
定電圧と比較し前記積分電圧がこの下限設定電圧に達し
た時点で下限信号を出力する第２の比較部を有し、前記
下限信号の発生により先に前記所定圧力検出信号が発生
した場合に下限警報を出力する下限警報発生部とを備え
て、射出成形機の射出圧力を監視して、所定の圧力に達
する時間が設定範囲に無い場合に、警報を出力するよう
に構成した射出圧力監視装置が提案されている（特公平
４−５７４９０号公報）。

【００１５】さらにまた、射出成形機の射出工程におい
て、充填工程中に金型キャビティに加えられるエネルギ
ー量を常に一定にすることにより成形品の品質を安定化
させる手段として、射出圧力と射出スクリュの射出速度
を検出して、これらの検出値の積を充填工程中の時間に
より積分して、この積分値を予め設定した設定値と比較
して、それらの値が一致した場合に保圧工程へ切換える
ように制御する方法も提案されている（特公平３−１１
３９号公報）。

【００１６】

【発明が解決しようとする課題】しかしながら、前記従
来の射出成形機の射出速度制御方法ないし射出工程の監
視方法および装置においては、例えば充填工程の任意点
に溶融樹脂の逆流を防止するためのチェック弁の閉まり
判定圧力を設定して、充填開始後に射出圧力がこの判定
圧力に達した時の射出スクリュ位置と、予め設定した基
準ショットにおける判定圧力時の射出スクリュ位置の差
異を演算記憶して、射出成形機の速度切換えを行うよう
に構成した速度制御方法によれば、射出時の前記チェッ
ク弁の閉まり特性のばらつきの悪影響を最少限に抑制す
ることは可能であるが、計量樹脂の密度の変化、計量ボ
リュームの変動、射出速度の変動等による、射出工程に
おける溶融樹脂の状態変化等は考慮されていないため、
ショット毎に生じる溶融樹脂の状態変化による成形の不
安定性を確実に解消するには、満足すべきものではなか
った。

【００１７】また、前記従来におけるような、射出圧力
と射出速度とを検出し、前記両検出値の乗算値を、射出
開始から保圧終了まで時間積分して、この積分値が基準
設定値の範囲から外れていた場合を判定する射出成形機
の工程監視方法や、射出圧力を監視して所定の圧力に達
する時間が設定範囲に無い場合を判定する射出成形機の
射出圧力監視装置では、それぞれ警報を発生するための
判定を行うものであり、射出成形機の制御に対するフィ
ードバックのための方法や装置について、全く考慮され
ていない。

【００１８】さらに、射出圧力と射出速度とを検出し、
前記両検出値の乗算値を充填工程中の時間で積分して、
この積分値が基準設定値と一致する場合を判定して、保
圧工程への切換えを制御する方法では、保圧工程の直前
の速度領域しか修正されず、充填工程での経時的に変化
する溶融樹脂の状態変化に対して、射出工程の仕事量が
逐次適正に追従し得ないため、安定した良品の成形を行
うには、満足すべきものではなかった。

【００１９】そこで、本発明者等は、鋭意研究を重ねた
結果、射出工程において、その射出速度区間または射出
全工程に亘って、射出圧力の検出値（Ｐ）と射出ストロ
ーク位置の検出値（Ｓ）との乗算値（ＰＳ値）、または
射出圧力の検出値（Ｐ）とその経過時間（Ｔ）との乗算
値（ＰＴ値）が、常に一定となるように射出速度切換点
位置（または時間）と、射出ストローク位置（または時
間）とを、リアルタイムで修正を加えることにより、射
出工程で行われる仕事量が常に一定となり、ショット毎
に生じる逆流防止用チェック弁のチェックリングの閉ま
りのばらつきや、溶融樹脂の状態変化に対しても、常に
安定した成形を達成することができることを突き止め
た。

【００２０】従って、本発明の目的は、ショット毎にお
ける成形の不安定を生じさせる逆流防止用チェック弁の
チェックリングの閉まりのばらつきや、溶融樹脂の状態
変化に対して、射出工程で行われる仕事量が常に一定と
なるように制御することにより、常に安定した良品の成
形を達成することができる射出成形機の射出速度切換制
御方法を提供することにある。

【００２１】

【課題を解決するための手段】前記目的を達成するため
に、本発明に係る射出成形機の射出速度切換制御方法
は、射出スクリュによる溶融樹脂の射出圧力を検出する
圧力検出器と、射出スクリュの射出ストローク位置を検
出する位置検出器または射出スクリュの射出開始時点か
らの経過時間を検出する時間検出器とを備え、射出工程
を複数段の異なる射出速度に設定すると共に前記射出速
度を予め設定した射出スクリュの射出ストローク位置ま
たは射出スクリュの射出開始時点からの経過時間に基づ
いて切換え制御するように構成した射出成形機におい
て、射出工程中において設定された複数段の各射出速度
区間ないし射出全工程に亘って、射出圧力と射出ストロ
ーク位置との各検出値の積（ＰＳ値）または射出圧力と
射出開始時点からの経過時間との各検出値の積（ＰＴ
値）が、常に一定となるように、射出速度の切換位置ま
たは切換時間についてそれぞれ射出ストローク位置また
は経過時間に修正を加えることを特徴とする。

【００２２】この場合、前記射出工程中において設定さ
れた複数段の各射出速度区間ないし射出全工程に亘っ
て、安定した良品成形を達成することができる射出速度
特性および射出圧力特性とを設定すると共に、前記各射
出速度区間ないし射出全工程におけるＰＳ値またはＰＴ
値を演算して記憶設定し、ショット毎に前記ＰＳ値また
はＰＴ値をリアルタイムで演算して前記設定値とそれぞ
れ比較し、前記演算値が設定値と一致する時点またはそ
れ以前の近似した時点において、前記射出速度の切換位
置または切換時間を修正するように設定することができ
る。

【００２３】

【実施例】次に、本発明に係る射出成形機の射出速度切
換制御方法の実施例につき、添付図面を参照しながら以
下詳細に説明する。

【００２４】図１は、本発明に係る射出成形機の射出速
度切換制御方法を実施する射出制御装置の一構成例を示
すものである。そこで、図１において、参照符号１０は
射出成形機を示し、この射出成形機１０は、ホッパ１２
を備えた加熱シリンダ１４内に、射出スクリュ１６が回
転自在にかつ進退可能に挿通配置されている。すなわ
ち、前記スクリュ１６の後端部には、これを回転駆動す
るための油圧モータ１８がフレーム２０を介して結合さ
れ、またこのフレーム２０に対しては、前記スクリュ１
６を進退動作させるための射出シリンダ装置２２が結合
されている。さらに、前記スクリュ１６の前端部には、
溶融樹脂の逆流を防止するためのチェックリング２４ａ
を備えたチェック弁２４が設けられ、加熱シリンダ１４
の先端に形成されたノズル１４ａが金型２６のノズル口
へ押圧当接されて、金型キャビティ２６ａ内へ加熱シリ
ンダ１４内で生成された溶融樹脂を供給するように構成
されている。

【００２５】しかるに、前記フレーム２０に対しては、
射出工程において順次前進動作するスクリュの射出スト
ローク位置（移動量）を検出するためのスクリュ位置検
出器３０が設けられている。また、前記射出シリンダ装
置２２は、油圧源３２に対し油圧流量制御装置３４を介
して配管接続されて、進退動作するように構成されると
共に、油圧検出器３６が接続されて、その作動油圧（射
出圧力）を検出するように構成されている。

【００２６】前記スクリュ１６の進退動作を行う射出シ
リンダ装置２２を制御する油圧流量制御装置３４に対し
ては、後述するように前記スクリュ位置検出器３０と油
圧検出器３６とで得られる検出信号に基づいて演算し、
射出速度切換位置に関する射出速度制御指令信号を算出
して出力する射出速度制御装置３８を設ける。なお、参
照符号４０は、金型２６のノズル口に対して加熱シリン
ダ１４のノズル１４ａを押圧当接させるために、加熱シ
リンダ１４を移動させる移動シリンダ装置を示す。

【００２７】そして、前記射出速度制御装置３８に対し
ては、前記油圧検出器３６による射出圧力の検出値
（Ｐ）と、前記スクリュ位置検出器３０によるスクリュ
の射出ストローク位置の検出値（Ｓ）とから、予め設定
した複数段の射出速度区間における前記各値の積（ＰＳ
値）をそれぞれ演算し、射出速度切換位置を算出して、
この射出速度切換位置の制御信号を供給するように構成
される。

【００２８】次に、前述した射出成形機の射出制御装置
の制御動作について、図２に示す制御フローと、図３に
示す射出圧力および射出速度特性を参照しながら説明す
る。なお、図３において、横軸はスクリュの射出ストロ
ーク位置を示すと共に、縦軸は圧力および速度を示す。

【００２９】まず最初に、良品成形のための基準値に基
づいて射出成形を行う（ＳＴＥＰ１）。この場合、各速
度区間毎の切換スクリュ位置（移動距離）を基準値とし
て、（位置×圧力）の積分値を演算する（ＳＴＥＰ
２）。そして、このようにして算出される基準値を記憶
装置４２に設けた基準設定器にストアする（ＳＴＥＰ
３）。なお、この記憶装置４２に対しては、外部より良
品成形時の設定データおよび制御する工程の選択結果等
が入力され、それぞれ所要の制御手段に対して制御指令
ないし制御値の設定が行われるように構成される。

【００３０】次に、射出速度を制御する工程（充填工程
および／または保圧工程）を選択し（ＳＴＥＰ４）、こ
れにより射出速度制御に際して参照すべき基準設定器の
選択を行う（ＳＴＥＰ５）。

【００３１】以上の操作を行った後に、射出成形機の射
出速度制御による射出成形を開始する（ＳＴＥＰ６）。

【００３２】そこで、本実施例においては、スクリュ位
置検出器３０により検出されるスクリュ位置（移動量）
を電圧値に変換する変換器４４と、油圧検出器３６によ
り検出される射出油圧を電圧値に変換する変換器４６と
を設けると共に、これらの変換器４４、４６より得られ
る出力信号の掛算を行う掛算器４８を設ける。そして、
前記掛算器４８で得られる算出値を積分する積分器５０
と、この積分器５０で得られる積分値を設定基準値と比
較する比較器５２とを設け、この比較器５２で得られる
出力に基づいて、良品成形を行うための射出速度の保持
または切換え、次の速度区間の制御を行うための射出速
度切換位置を算出する演算装置５４を設ける。

【００３３】このようにして、前記演算装置５４で算出
された射出速度切換位置の制御信号は、前記射出速度制
御装置３８へ供給されると共に、記憶装置４２を介して
射出速度切換位置設定変換装置５６を作動させて、射出
速度切換位置の設定信号を前記射出速度制御装置３８へ
供給するように構成される。

【００３４】従って、前記ＳＴＥＰ６において、射出成
形機の射出速度制御による射出成形を開始するに際して
は、前記積分器５０をリセットし（ＳＴＥＰ７）、次い
で前記スクリュ位置検出器３０および油圧検出器３６に
より、実際のスクリュ位置（移動量）および射出圧力を
検出し、スクリュ位置（移動量）電圧変換器４４および
射出圧力電圧変換器４６を介して掛算器４８により、ス
クリュ位置（移動量）と射出圧力との掛算を行う（ＳＴ
ＥＰ８）。

【００３５】その後、積分器５０により前記射出圧力を
その移動位置（移動量）で積分し（ＳＴＥＰ９）、この
積分値が良品成形時の対応する速度区間の積分値と一致
するかどうかの判定を行う（ＳＴＥＰ１０）。前記各積
分値が一致すれば、次のＳＴＥＰ１１において次の速度
区間の有無の判定を行う。しかし、前記各積分値が不一
致であれば、現在の射出速度区間の射出速度をそのまま
保持して（ＳＴＥＰ１２）、前記各積分値が一致するま
で前記ＳＴＥＰ１０を繰り返す。

【００３６】前記ＳＴＥＰ１１において、次の速度区間
が有る場合は、前記積分器５０をリセットして、積分を
開始するように指令し（ＳＴＥＰ１２）、次の速度区間
の基準値の読み込みを行い（ＳＴＥＰ１４）、前記ＳＴ
ＥＰ９以降の前記操作を繰返し実行するよう設定され
る。

【００３７】一方、次の速度区間が無い場合は、成形終
了の判定を行い（ＳＴＥＰ１３）、成形が終了であれ
ば、１ショットの射出成形制御動作を終了する。また、
成形が終了でなければ、再び前記ＳＴＥＰ７以降の前記
操作を繰返し実行するように設定される。

【００３８】しかるに、図３において、特性曲線ＰA
は、良品成形時に記憶保持した射出圧力特性を示すもの
である。また、この時の射出速度特性ＶI1、ＶI2、ＶI
3、ＶI4は、実線で示す通りである。従って、この場合
における複数段に設定した射出速度区間における射出圧
力の検出値（Ｐ）とスクリュの射出ストローク位置の検
出値（Ｓ）との積（ＰＳ値）は、前記掛算器４８および
積分器５０において、次式(1)〜(4) に示すように演算
され、記憶装置４２の基準設定器に記憶保持される。

【００３９】

【数１】

【００４０】従って、前記区間１の良品成形時のＰＳ1
の値は、前記図３においてハッチングを施した面積とな
る。以下、同様にして、区間２〜区間４における良品成
形時のＰＳ2 〜ＰＳ4 の値は、前記式 (2)〜(4) に示す
通りとなる。

【００４１】ところで、射出工程においては、例えばチ
ェックリングの閉まりのばらつきにより、チェックリン
グの閉まりが良品成形時よりも遅れることがあり、この
場合の射出圧力特性は、図３において破線で示す特性曲
線ＰB となることにより、良品成形時のスクリュの射出
ストローク位置（ＬＳ4A、ＬＳ4B、ＬＳ4C、ＬＳ4 ）で
の射出速度の切換えを行うことによる射出速度特性ＶI
1、ＶI2、ＶI3、ＶI4では、不良品を成形することにな
る。

【００４２】そこで、この不良品成形の射出圧力特性Ｐ
B （破線で示す）において、良品成形を行うためには、
前記区間１の良品成形時のＰＳ1 値と同じ値をとること
が必要である。すなわち、この不良品成形の射出圧力特
性ＰB において、良品成形を行うためには、区間１にお
いて、ＰＳ1 値が同じ値となるスクリュの射出ストロー
ク位置ＬＳ4A′で、区間２への射出速度の切換えを行え
ばよいことになる。従って、前記射出速度を切換えるス
クリュの射出ストローク位置ＬＳ4A′の算出は、区間１
においては、前記式(1) により、射出成形開始と同時に
リアルタイムで演算を実行し、予め設定されたＰＳ1 値
と一致（仕事量が一定）した際に、射出速度の切換えを
行うように修正して、前記射出速度制御装置３８を制御
するように構成する。

【００４３】以下、区間２〜区間４についても、前記と
同様にして、それぞれ前記式 (2)〜(3) の演算を実行
し、予め設定されたＰＳ2 値〜ＰＳ4 値と一致した際
に、それぞれの射出ストローク位置ＬＳ4B′、ＬＳ4
B′、ＬＳ4C′、ＬＳ4 ′で、射出速度の切換えを行う
ように修正制御する。

【００４４】なお、前述した実施例においては、良品成
形時に記憶保持した射出圧力特性に対する制御手段とし
て、射出速度の切換えをスクリュの射出ストローク位置
（Ｓ）で行う場合を示したが、この射出ストローク位置
に代えて、射出成形開始からの経過時間（Ｔ）により射
出速度の切換えを行うように構成することもできる。ま
た、スクリュ位置（移動量）電圧変換器４４に代えて、
タイマ（カウント量）電圧変換器等により構成すること
もできる。そして、これらの場合に設定される演算式
は、前記式 (1)〜(4) に準じて、ＰＴ1 値〜ＰＴ4 値と
なる。

【００４５】図４の（ａ）〜（ｃ）は、本発明における
射出速度切換制御方法の具体的な実施例を示すものであ
って、それぞれ射出工程の速度制御特性と圧力制御特性
との関係を示す特性線図である。

【００４６】図４の（ａ）は、良品成形時における射出
工程でのスクリュ位置の基準速度切換位置に対する、射
出速度設定値と射出圧力特性を示すものである。

【００４７】図４の（ｂ）は、実際の成形時における射
出工程における射出圧力特性（破線で示す）と、修正速
度切換位置の関係を示す特性線図の一実施例を示すもの
である。この実施例においては、射出速度の切換位置の
修正は、射出圧力と射出ストローク位置との検出値に基
づく積分値（ＰＳ値）が設定値と一致する時点を基準と
して切換えたものであり、充填工程に対してのみ実施し
たものである。

【００４８】図４の（ｃ）は、実際の成形時における射
出工程における射出圧力特性（破線で示す）と、修正速
度切換位置の関係を示す特性線図の別の実施例を示すも
のである。この実施例においては、射出速度の切換位置
の修正は、射出圧力と射出ストローク位置との検出値に
基づく積分値（ＰＳ値）が設定値と一致する時点に対
し、９０％となる時点で判定し推定して切換えたもので
あり、充填工程に対してのみ実施したものである。

【００４９】以上、本発明の好適な実施例について説明
したが、本発明は前記実施例に限定されることなく、そ
の精神を逸脱しない範囲内において多くの設計変更が可
能である。

【００５０】

【発明の効果】以上説明したように、本発明に係る射出
成形機の射出速度切換制御方法は、射出スクリュによる
溶融樹脂の射出圧力を検出する圧力検出器と、射出スク
リュの射出ストローク位置を検出する位置検出器または
射出スクリュの射出開始時点からの経過時間を検出する
時間検出器とを備え、射出工程を複数段の異なる射出速
度に設定すると共に前記射出速度を予め設定した射出ス
クリュの射出ストローク位置または射出スクリュの射出
開始時点からの経過時間に基づいて切換え制御するよう
に構成した射出成形機において、射出工程中において設
定された複数段の各射出速度区間ないし射出全工程に亘
って、射出圧力とストローク位置との各検出値の積（Ｐ
Ｓ値）または射出圧力と射出開始時点からの経過時間と
の各検出値の積（ＰＴ値）が、常に一定となるように、
射出速度の切換位置または切換時間についてそれぞれ射
出ストローク位置または経過時間に修正を加えるよう構
成したことにより、ショット毎における成形の不安定を
生じさせる逆流防止用チェック弁のチェックリングの閉
まりのばらつきや、溶融樹脂の状態変化に対して、射出
工程で行われる仕事量が常に一定となるように制御する
ことができ、常に安定した良品の成形を達成することが
できる。

【図面の簡単な説明】

【図１】本発明に係る射出速度切換制御方法を実施する
射出成形機の射出制御装置の一構成例を示す概略構成と
その制御系統図である。

【図２】図１に示す射出成形機の射出制御装置に基づく
本発明に係る射出速度切換制御方法の一実施例を示すフ
ローチャート図である。

【図３】本発明に係る射出速度切換制御方法の基本原理
を示す射出工程の速度制御特性と圧力制御特性との関係
を示す特性線図である。

【図４】（ａ）〜（ｃ）は本発明に係る射出速度切換制
御方法により得られる射出工程の速度制御特性と圧力制
御特性との関係をそれぞれ示す特性線図である。

【図５】従来の射出制御における充填工程および保圧工
程における速度制御特性および圧力制御特性を示す特性
線図である。

【図６】従来の射出工程制御における速度制御特性およ
び圧力制御特性の関係を示す特性線図である。

【符号の説明】

１０ 射出成形機 １２ ホッパ １４ 加熱シリンダ １４ａ ノズル １６ 射出スクリュ １８ 油圧モータ ２０ フレーム ２２ 射出シリンダ装置 ２４ チェック弁 ２４ａ チェックリング ２６ 金型 ２６ａ 金型キャビティ ３０ スクリュ位置検出器 ３２ 油圧源 ３４ 油圧流量制御装置 ３６ 油圧検出器 ３８ 射出速度制御装置 ４０ 移動シリンダ装置 ４２ 記憶装置 ４４ スクリュ位置（移動量）電圧変換器 ４６ 射出圧力電圧変換器 ４８ 掛算器 ５０ 積分器 ５２ 比較器 ５４ 射出速度切換位置演算装置 ５６ 射出速度切換位置設定変換装置

Claims (2)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】 射出スクリュによる溶融樹脂の射出圧力
   を検出する圧力検出器と、射出スクリュの射出ストロー
   ク位置を検出する位置検出器または射出スクリュの射出
   開始時点からの経過時間を検出する時間検出器とを備
   え、射出工程を複数段の異なる射出速度に設定すると共
   に前記射出速度を予め設定した射出スクリュの射出スト
   ローク位置または射出スクリュの射出開始時点からの経
   過時間に基づいて切換え制御するように構成した射出成
   形機において、 射出工程中において設定された複数段の各射出速度区間
   ないし射出全工程に亘って、射出圧力と射出ストローク
   位置との各検出値の積（ＰＳ値）または射出圧力と射出
   開始時点からの経過時間との各検出値の積（ＰＴ値）
   が、常に一定となるように、射出速度の切換位置または
   切換時間についてそれぞれ射出ストローク位置または経
   過時間に修正を加えることを特徴とする射出成形機の射
   出速度切換制御方法。
2. 【請求項２】 射出工程中において設定された複数段の
   各射出速度区間ないし射出全工程に亘って、安定した良
   品成形を達成することができる射出速度特性および射出
   圧力特性とを設定すると共に、前記各射出速度区間ない
   し射出全工程におけるＰＳ値またはＰＴ値を演算して記
   憶設定し、ショット毎に前記ＰＳ値またはＰＴ値をリア
   ルタイムで演算して前記設定値とそれぞれ比較し、前記
   演算値が設定値と一致する時点またはそれ以前の近似し
   た時点において、前記射出速度の切換位置または切換時
   間を修正して切換制御を行う請求項１記載の射出成形機
   の射出速度切換制御方法。