JPH10184917A - 金属製ガスケット - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 【課題】 金属製ガスケットの厚さを、シリンダヘッド
とシリンダブロックとの締付け隙間の変化に対応させる
ことにより、燃焼室孔の周囲において均一な面圧を確保
し、以て、燃焼ガスのシール性を確保することにあり、
しかも、それを簡単な手段で行う。 【解決手段】 金属製ガスケット５０はビード６，７を
有する２枚の基板１，２とこれらの間に積層される中間
板３とからなる。中間板３は中間主板３１と中間従板３
２との２枚の金属板からなる。中間主板３１は燃焼室孔
の周囲に折り返し部分８を有する。折り返し部分８は、
ヘッドボルト孔から離れた箇所では、厚さ調節用の段部
１０を有し、折り返し片１１の端部が段部１０の高い方
の面に密着しており、ヘッドボルト孔の近傍箇所では、
厚さ調節用の段部１０は形成されておらず、折り返し片
１１の全面がその対向部分に隙間なく重ねられている。

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【発明の属する技術分野】本発明は、シリンダヘッドと
シリンダブロックとの接合部に介装される金属製ガスケ
ット、詳しくは、ビードを成形した弾性金属板からなる
２枚の基板間に中間板が積層されている金属製ガスケッ
トに関する。

【０００２】

【従来の技術】シリンダヘッドとシリンダブロックとの
接合部に介装される金属製ガスケットは、例えば特公平
８−３３１７８号に記載されている。この金属製ガスケ
ットはビードを成形した金属弾性板からなる２枚の基板
と、これらの基板間に中間板が積層されている構造を有
しており、ビードのへたりや疲労破壊の防止のために、
次の提案がなされている。

【０００３】すなわち、中間板に形成されている燃焼室
孔の周囲の縁部を折り返して折り返し部分を形成し、こ
の折り返し部分をビードのつぶされに対するストッパと
して機能させている。さらには、中間板に、２枚の基板
に対するストッパ高さ調整用の段部を設けてストッパ高
さが２枚の基板に対して略同一になるようにし、以て、
ストッパ機能を２枚の基板に対して充分に発揮できるよ
うにしている。

【０００４】

【発明が解決しようとする課題】近年のエンジンは軽量
化、高出力化が図られているため、ヘッドボルトの締付
力や燃焼圧力によってシリンダヘッドの変形が益々大き
くなる傾向にある。特に、燃焼室孔周囲において、ヘッ
ドボルト近傍とそれから離れた位置とでは、シリンダヘ
ッドとシリンダブロックとのデッキ面の隙間の差が大き
くなる。

【０００５】しかし、従来のガスケットは、燃焼室孔の
周囲で厚さが一定なので、ヘッドボルト近傍では面圧が
高くなる反面、ヘッドボルトから離れた箇所では面圧が
低くなり、燃焼ガスのシール性を確保することが困難と
なってきている。

【０００６】また、前記特公平８−３３１７８号には、
中間板における燃焼室孔の周囲の縁部の厚さをヘッドボ
ルト近傍で薄くし、ヘッドボルトから離れた位置で厚く
することにより、シール面圧の均一化を図ることが記載
されている。そして周縁部の厚さを変化させる手段とし
ては、一般的に、溶射、めっき、研削、プレス等が知ら
れている。しかしながら、溶射やめっきあるいは研削に
よる方法は製造が煩雑であり、プレスは充分な効果を発
揮できない問題がある。

【０００７】本発明の目的は、金属製ガスケットの厚さ
を、シリンダヘッドとシリンダブロックとの締付け隙間
の変化に対応させることにより、燃焼室孔の周囲におい
て均一な面圧を確保し、以て、燃焼ガスのシール性を確
保することにあり、しかも、それを簡単な手段で行うこ
とにある。

【０００８】

【課題を解決するための手段】本発明は、ビードを成形
した弾性金属板からなる２枚の基板間に、燃焼室孔の周
囲の縁部に折り返し片を有している中間板が積層されて
いる金属製ガスケットにおいて、前記中間板の折り返し
片と、その折り返し片が重ねられる部分との少なくとも
一方に、中間板の折り返し部分における厚さを調節する
段部が形成されていることを特徴とする。

【０００９】前記折り返し片と、折り返し片が重ねられ
る部分との間には隙間が形成されるため、この部分にお
ける対向面の少なくとも一方に凸部を形成するか、ある
いは、前記隙間に軟質材を充填するのが望ましい。

【００１０】前記段部は、燃焼室孔の周囲において、一
部分に形成するか、あるいは、全周囲にわたって形成す
る。また、段部は、燃焼室孔の周囲において、段差が一
定の部分と、段差が変化している部分とから構成するの
がよい。

【００１１】前記段部を設けることで、中間板の折り返
し部分における厚さを段差分だけ厚くすることができ
る。

【００１２】したがって、本発明の金属製ガスケット
は、例えば、シリンダヘッドとシリンダブロックとのデ
ッキ面の隙間がヘッドボルト近傍よりも大きくなる箇所
すなわちヘッドボルト孔から離れた箇所では、中間板に
厚さ調節用の段部を設けて中間板の折り返し部分の厚さ
を段差分だけ厚くし、ヘッドボルト孔の近傍箇所では、
折り返し部分に厚さ調節用の段部を設けないで中間板の
折り返し部分の厚さを厚くしないことによって、シリン
ダヘッドとシリンダブロックとの締付け隙間の変化に対
応させることにより、均一な面圧を確保することができ
る。

【００１３】また、段部を燃焼室孔の全周囲にわたって
設け、その段差を、ヘッドボルト孔の近傍箇所で小さく
して中間板の折り返し部分の厚さをヘッドボルト孔から
離れた箇所に比べて薄くし、ヘッドボルト孔から離れた
箇所で段差を大きくして中間板の折り返し部分の厚さを
ヘッドボルト孔近傍箇所よりも厚くすることによって、
シリンダヘッドとシリンダブロックとの締付け隙間の変
化に対応させることにより、均一な面圧を確保すること
もできる。

【００１４】

【発明の実施の形態】本発明の一実施形態を図１〜図３
により説明する。金属製ガスケット５０は、２枚の基板
１，２と、これらの間に積層されている中間板３とで構
成されており、直列に配置されている４つの燃焼室孔４
と、ヘッドボルトが挿通する複数のヘッドボルト孔５と
が各板１，２，３を貫通して形成されている。

【００１５】複数のヘッドボルト孔５は、金属製ガスケ
ット５０の周縁部に所定の間隔をおいて設けられている
とともに、各燃焼室孔４間においてクランク軸の両側位
置にそれぞれ設けられている。

【００１６】各基板１，２は弾性金属板からなり、燃焼
室孔４を囲むようにしてビード６，７が中間板３側に突
出するようにしてそれぞれ形成されている。

【００１７】中間板３は中間主板３１と中間従板３２と
の２枚の金属板で構成されている。基板１，２と略同じ
形状を有している中間主板３１は、燃焼室孔４の周囲の
縁部に折り返し部分８を有している。この折り返し部分
８の構造は燃焼室孔４の全周囲で同じ形状を有しておら
ず、相違している。以下、折り返し部分８の構造を説明
する。

【００１８】各ヘッドボルト孔５から遠い位置にある箇
所すなわちクランク軸の上方にある箇所（図３における
Ａ部位）における折り返し部分８の構造は、図１（ａ）
に示されている。図１（ａ）は図２のａ−ａ線断面図で
ある。

【００１９】中間主板３１にはストッパ位置調節用の段
部９と厚さ調節用の段部１０が燃焼室孔４に向かって階
段状に形成されている。そして燃焼室孔４の周囲の縁部
が折り返されてその折り返し片１１の端部が、厚さ調節
用の段部１０における高い方の面に密着している。

【００２０】したがって、中間主板３１は折り返し部分
８で、折り返し片１１と折り返し片１１が重ねられる部
分との間に隙間が形成されて、中間主板３１の厚さの２
倍よりも大きい厚さを有しており、厚さ調節用の段部１
０の段差分だけ厚くなっている。

【００２１】このように厚さ調節用の段部１０は、中間
板３における折り返し部分８の厚さを調節するものであ
る。これに対して、もう一方のストッパ位置調節用の段
部９は、中間板３における折り返し部分８の２枚の基板
１，２に対するストッパ量を調節するものであり、その
機能は相違している。

【００２２】中間従板３２は中間主板３１の折り返し部
分８側の表面において、折り返し部分８を除く表面上に
積層されており、中間板３の折り返し部分８以外の部分
の厚さを調節している。

【００２３】次に、各ヘッドボルト孔５から比較的近い
位置にある箇所（図３におけるＢ部位）における折り返
し部分８の構造を説明する。その構造は図１（ｂ）に示
されている。図１（ｂ）は図２のｂ−ｂ線断面図であ
る。

【００２４】中間主板３１には、上記で説明した２つの
段部９，１０のうちの一方のストッパ位置調節用の段部
９しか形成されていない。したがって、中間主板３１の
燃焼室孔４の周囲の縁部は折り返されてその折り返し片
１１の全面が段部９における低い方の面に隙間なく重ね
られている。

【００２５】したがって、中間主板３１は折り返し部分
８で、中間主板３１の厚さの２倍の厚さを有しており、
クランク軸の上方箇所（Ａ部位）の折り返し部分８の厚
さよりも厚さ調節用の段部１０の段差分だけ薄い厚さに
形成されている。

【００２６】また、折り返し部分８の厚さを調節する段
部１０が形成されていない部位Ｂと、折り返し部分８の
厚さを調節する段部１０が形成されている部位Ａとの接
続部位Ｃ（図３参照）は、２つの段部９，１０を有して
いるが、折り返し部分８の厚さを調節する段部１０の段
差が漸次変化し、部位Ａと部位Ｂとがスムーズに接続さ
れるようにされている。

【００２７】上記金属製ガスケット５０は、シリンダヘ
ッドとシリンダブロックとの間に介装され、ヘッドボル
トで締結される。

【００２８】以下、作用を説明する。

【００２９】シリンダヘッドとシリンダブロックとの間
に介装された金属製ガスケット５０は、ヘッドボルトの
締付け力によって圧縮され、各基板１，２のビード６，
７が中間板３の表面に押し付けられてビード６，７が圧
縮変形される。

【００３０】この際、各基板１，２が中間板３の折り返
し部分８に当接することにより、ビード６，７の弾性変
形が抑制される。

【００３１】そして、ヘッドボルトの締付け力によって
シリンダヘッドが変形し、シリンダヘッドとシリンダブ
ロックとのデッキ面の隙間が、ヘッドボルトに近い箇所
では小さく、ヘッドボルトから遠い箇所では大きくな
る。

【００３２】しかし、本発明の金属製ガスケット５０
は、上記で説明したように、ヘッドボルト孔５に遠い部
位Ａ，Ｃで、中間板３の折り返し部分８の厚さをヘッド
ボルト孔５に近い部位Ｂよりも厚くし、シリンダヘッド
とシリンダブロックとの隙間の変化に対応させているた
め、燃焼室孔４の周囲において面圧が均一になり、確実
なシールを保証する。

【００３３】図５は本発明の金属製ガスケットの効果を
確認したものであり、燃焼室孔の周囲の位置における面
圧を測定した結果を示している。従来品は、中間板の折
り返し部分が燃焼室孔の全周囲にわたって図１（ｂ）で
示した構造を有している。

【００３４】面圧の測定方法は、シリンダブロックとガ
スケットおよびガスケットとシリンダヘッドとの間に感
圧紙（例えば富士フィルム プレスケール：商標名）を
挟み、指定のトルクでヘッドボルトを締め付ける。感圧
紙の指定する時間保持した後、感圧紙を取り出し、圧力
による発色の濃淡から、読み取り機によって圧力を読み
取る。

【００３５】図５に示されているように、従来品は燃焼
室孔間で面圧が低下しているが、本発明品は面圧の変化
が小さくなっていることがわかる。

【００３６】図４（ａ）は本発明の別の実施形態を示し
ている。本実施形態が上記実施形態と相違している点
は、中間板３の折り返し片１１の中間部に凸部４０が成
形されている点である。すなわち、中間主板３１の折り
返し片１１の中間部が、折り返し片１１が重ねられる部
分の方に突出して凸部４０を形成するように成形加工さ
れ、凸部４０の先端面が折り返し片１１が重ねられる部
分の表面に当接するようにされている。

【００３７】本実施形態では、折り返し片１１と折り返
し片１１が重ねられる部分との間に形成される隙間に突
出する上記凸部４０によって、中間板３の折り返し部分
８がヘッドボルトの締め付け時に、つぶされるのを防止
している。

【００３８】なお、上記では凸部４０を折り返し片１１
に形成したが、これに限ることはなく、折り返し片１１
が重ねられる部分に折り返し片１１の方に突出する凸部
を成形加工するようにしてもよい。

【００３９】図４（ｂ）は本発明のさらに別の実施形態
を示している。本実施形態も中間板３の折り返し部分８
がヘッドボルトの締め付け時につぶされるのを防止する
ものである。本実施形態では、上記凸部４０に代えて、
中間主板３１の折り返し片１１と折り返し片１１が重ね
られる部分との間に形成される隙間に軟質材４１が充填
されている。

【００４０】軟質材４１は耐熱性ゴム（例えばフッ素ゴ
ム）などを使用できる。この軟質材４１の充填は、中間
主板３１のプレス成形−液状の軟質材の塗布−折り曲げ
加工によると、余分な軟質材４１がはみ出して空間部に
隙間なく充填することができる。

【００４１】なお、前記実施形態では、折り返し部分８
の厚さ調節用の段部１０を燃焼室孔４の周囲の一部分に
形成した例を示したが、これに限ることはなく、燃焼室
孔４の全周囲にわたって折り返し部分８に厚さ調節用の
段部１０を設け、その段差をシリンダヘッドとシリンダ
ブロックとの隙間の変化に対応させて変化させるように
構成することもできる。例えば、ヘッドボルト孔５の近
傍箇所すなわち図３のＢ部位では段差を小さく、ヘッド
ボルト孔５から離れた箇所すなわち図３のＡ部位では段
差を大きくし、それらの接続部すなわち図３のＣ部位で
は段差が漸次変化してＡ部位とＢ部位とをスムーズに接
続するようにしてもよい。

【００４２】また、折り返し部分８の厚さ調節用の段部
１０は、前記実施形態で示したように折り返し片１１が
重ねられる部分に形成する他、折り返し片１１に形成す
るようにしてもよく、あるいは折り返し片１１と折り返
し片１１が重ねられる部分の双方に形成するようにして
もよい。

【００４３】

【発明の効果】以上説明したように本発明の金属製ガス
ケットは、燃焼室孔の周囲において均一な面圧を確保で
き、以て、燃焼ガスのシールを確実とする。

【図面の簡単な説明】

【図１】本発明の金属製ガスケットの一実施形態を示
し、（ａ）は図２のａ−ａ線断面図、（ｂ）は図２のｂ
−ｂ線断面図である。

【図２】本発明の金属製ガスケットの一実施形態を示す
平面図である。

【図３】中間板を示す平面図である。

【図４】（ａ）は本発明の金属製ガスケットの別の実施
形態を示し、厚さ調節用の段部が形成されている部分の
断面図、（ｂ）は本発明の金属製ガスケットのさらに別
の実施形態を示し、厚さ調節用の段部が形成されている
部分の断面図である。

【図５】（ａ）は本発明品と従来品における燃焼室孔周
囲の面圧を測定した結果を示すグラフ、（ｂ）は測定位
置を示す図である。

【符号の説明】

１，２ 基板 ３ 中間板 ４ 燃焼室孔 ５ ヘッドボルト孔 ６，７ ビード ８ 折り返し部分 ９ ２枚の基板に対するストッパ位置調節用段部 １０ 折り返し部分の厚さ調節用段部 １１ 折り返し片 ３１ 中間主板 ３２ 中間従板 ４０ 凸部 ４１ 軟質材 ５０ 金属製ガスケット

───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 岡野 順 埼玉県熊谷市大字三ケ尻字出口3308 日本 メタルガスケット株式会社内

Claims (6)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】 ビードを成形した弾性金属板からなる２
   枚の基板間に、燃焼室孔の周囲の縁部に折り返し片を有
   している中間板が積層されている金属製ガスケットにお
   いて、 前記中間板の折り返し片と、その折り返し片が重ねられ
   る部分との少なくとも一方に、中間板の折り返し部分に
   おける厚さを調節する段部が形成されていることを特徴
   とする金属製ガスケット。
2. 【請求項２】 前記折り返し片と、折り返し片が重ねら
   れる部分との間に形成される隙間部分における対向面の
   少なくとも一方に凸部が形成されていることを特徴とす
   る請求項１記載の金属製ガスケット。
3. 【請求項３】 前記折り返し片と、折り返し片が重ねら
   れる部分との間に形成される隙間に軟質材が充填されて
   いることを特徴とする請求項１記載の金属製ガスケッ
   ト。
4. 【請求項４】 前記段部が、燃焼室孔の周囲において、
   一部分に形成されており、他の部分には形成されていな
   いことを特徴とする請求項１、２、または３記載の金属
   製ガスケット。
5. 【請求項５】 前記段部が、燃焼室孔の全周囲にわたっ
   て形成されていることを特徴とする請求項１、２、また
   は３記載の金属製ガスケット。
6. 【請求項６】 前記段部が、燃焼室孔の周囲において、
   段差が一定の部分と、段差が変化している部分とからな
   っていることを特徴とする請求項４または５記載の金属
   製ガスケット。