JPH101537A - 水に分散もしくは溶解可能な珪素含有ポリエステル樹脂及びそれを用いた皮膜形成用樹脂組成物並びにポリエステルフィルム - Google Patents

水に分散もしくは溶解可能な珪素含有ポリエステル樹脂及びそれを用いた皮膜形成用樹脂組成物並びにポリエステルフィルム

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JPH101537A
JPH101537A JP8158635A JP15863596A JPH101537A JP H101537 A JPH101537 A JP H101537A JP 8158635 A JP8158635 A JP 8158635A JP 15863596 A JP15863596 A JP 15863596A JP H101537 A JPH101537 A JP H101537A
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 滑り性及び耐ブロック性等に優れた珪素含有
ポリエステル樹脂であって、水に分散若しくは溶解可能
なものを提供する。 【解決手段】 ジカルボン酸成分と、グリコール成分
と、前記ジカルボン酸成分と水溶性付与性成分の合計中
で1〜60モル%の水溶性付与性成分と、全反応成分中
で1〜50重量%の上記各成分と縮合または重縮合可能
な反応性シリコーンオイルとを重縮合反応させる。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、耐磨耗性、滑り性
及び耐ブロック性等に優れた珪素含有ポリエステル樹脂
に関する。詳しくは水に分散もしくは溶解可能であるた
め、それを用いて基材の加工処理を行う際の労働安全性
及び環境保全性の観点から優れた珪素含有ポリエステル
樹脂に関する。更に本発明は、上記珪素含有ポリエステ
ル樹脂を含んでなる皮膜形成用樹脂組成物、及びこの皮
膜形成用樹脂組成物で表面処理したポリエステルフィル
ムに関する。
【0002】
【従来の技術】ポリエステル樹脂は、周知のごとく優れ
た機械的性質、電気絶縁性及び耐熱性等を有することか
ら、各種用途に多量に使用されている。就中、PETフ
ィルム等のポリエステルフィルムにおいては、各種汎用
プラスティックフィルムの中でも特に引っ張り強さに優
れかつ適度な伸びを有し、機械的性質、耐薬品性、耐水
耐湿性及びガスバリヤー性等に優れているところから、
磁気テープ、フロッピーディスク等の磁気記録材料用基
材として、或いは写真用、電気絶縁用、ケーブルラッピ
ング用、コンデンサー用、蒸着用、粘着テープ用、プリ
ンターリボン用及び磁気カード用基材として、また、F
RP等の離型用、包装用及び農業用等の各種産業用途に
も幅広く用いられている。
【0003】このような用途の中で例えば、近年急速な
進展を示している磁気テープ等の磁性記録材料用基材と
して用いる場合には、使用時に発生する摩擦熱によるフ
ィルムが劣化が問題であり、またフィルムの薄膜化傾向
と相まって、特に優れた耐磨耗性が要求されるととも
に、滑り性、平滑性(フィルム表面の平らさ)及び耐ブ
ロッキング性等も要求されている。
【0004】そこで、この様な性質を付与するため、P
ET等のポリエステルフィルム素材にシリコーン油或い
はシリコーン樹脂等を機械的混練により混合等する方法
も考えられるが、本来ポリエステルとシリコ−ンとは相
溶性が悪く、シリコーン油においてはフィルム化した後
にフィルム表面へのシリコーン油のブリードを生じ易
く、また、シリコーン樹脂とのブレンドポリマーにおい
ては、相分離状態となり均一な表面物性を有するフィル
ムを得にくい。
【0005】このため、従来から、例えば特開平4−2
77532号公報に開示される如く、水溶性ポリエステ
ル樹脂にワックス等の減摩剤を含ませてなる、水系で塗
布可能な皮膜形成性組成物を用いてポリエステルフィル
ムの表面処理が行われている。しかしながら、この場合
は、減摩剤を含ませることで耐磨耗性及び滑り性は一時
的には満足されるものの、その持続性が充分でなく、滑
り性及び耐ブロック性等が低下する傾向にある。
【0006】一方、末端に官能基を含有するポリオルガ
ノシロキサンを用いた珪素含有ポリエステル樹脂も報告
されており、特開平2−1731号公報には、両末端に
一級のアルコール性水酸基を有するポリオルガノシロキ
サンを共重合して得られる珪素含有ポリエステル樹脂、
特開平59−168027号公報にはアルコール性の水
酸基を末端に有するポリオルガノシロキサンを共重合し
て得られる摩擦係数の減少により優れた滑り性を有する
線状の珪素含有ポリエステル樹脂が、また特開平4−1
52136号公報等には末端に官能基を有するポリオル
ガノシロキサンを共重合して得られる珪素含有ポリエス
テル樹脂で構成される高滑性表面を有する積層ポリエス
テルフィルムが開示されている。
【0007】しかしながら、これらの珪素含有ポリエス
テル樹脂は、トルエン、キシレン等の汎用有機溶剤に難
溶なものが多く、PETフィルム等の基材表面処理用樹
脂として塗布により施す場合には、ジオキサン、DM
F、HFIP、OCP等の溶解性は高いがより作業環
境、環境保全の見地から問題のある溶剤に溶解する必要
がある。加えて、これらの有機溶剤を用いた場合、加工
基材であるPETフィルム等自体を侵すという問題もあ
る。そこで、汎用有機溶剤系からの塗布を可能とすべ
く、上記珪素含有ポリエステル樹脂をトルエン、キシレ
ン等の汎用有機溶剤に可溶なものとすることも考えられ
るが、そのためにはソフトセグメントを多くしなければ
ならず、珪素含有ポリエステル樹脂の融点が低下し、耐
熱性を維持しにくい。しかも、これらの珪素含有ポリエ
ステル樹脂は水への分散もしくは溶解性も有さない。従
って、上記珪素含有ポリエステルを、PETフィルム等
のコーティングのための溶液、或いは溶媒分散型の加工
剤とすることは困難である。
【0008】そこで、これらの珪素含有ポリエステル樹
脂を溶液型等の加工剤とせず、溶融塗工することも考え
られ、例えば、ホットメルトコーティング等によるか、
或いは特開平4−152136号公報に開示されている
ごとく積層状のフィルムとして提供し得る。しかしなが
ら、これらの場合は、工程が煩雑である上、基材上への
均一な薄膜の形成は困難である。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】本発明の一の課題は耐
磨耗性、滑り性及び耐ブロック性等に優れた珪素含有ポ
リエステル樹脂であって、水に分散もしくは溶解可能な
ものを提供することにある。本発明の他の課題は上記珪
素含有ポリエステルの性質を利用し、水系により基材の
加工を行うことが可能であり、労働安全性、環境保全性
及び基材の加工の容易性等の観点から優れかつ、それに
より形成された皮膜が優れた耐磨耗性、滑り性及び耐ブ
ロック性等を示す皮膜形成用樹脂組成物を提供すること
にある。
【0010】
【課題を解決するための手段】本発明の請求項1に記載
の水に分散もしくは溶解可能な珪素含有ポリエステル樹
脂は、ジカルボン酸成分と、グリコール成分と、前記ジ
カルボン酸成分と水溶性付与性成分の合計中で2〜60
モル%の水溶性付与性成分と、全反応成分中で1〜50
重量%の上記各成分と縮合または重縮合可能な反応性シ
リコーンオイルとを重縮合反応させて成ることを特徴と
するものであり、このように反応成分として反応性シリ
コーンオイルを用いることにより、ポリエステル樹脂中
に耐磨耗性、滑り性及び耐ブロック性等に優れた性質を
付与するポリオルガノシロキサンセグメントを導入し、
かつ反応成分として水溶性付与性成分を用いることによ
りスルホン基もしくはカルボキシル基を導入しポリエス
テル樹脂を水に分散もしくは溶解可能なものとし、目的
を達成するものである。
【0011】また本発明の請求項2に記載の水に分散も
しくは溶解可能な珪素含有ポリエステル樹脂は、請求項
1の構成に加えて、反応性シリコーンオイルが官能基を
1個又は2個のみ有し、当該官能基がカルボキシル基又
は水酸基から選ばれる少なくとも1種のものであること
を特徴とするものである。また本発明の請求項3に記載
の水に分散もしくは溶解可能な珪素含有ポリエステル樹
脂は、請求項1の構成に加えて、反応性シリコーンオイ
ルが一般式(I) で表されるものであることを特徴とする
ものである。 一般式(I)
【0012】
【化5】
【0013】〔式中nは、1〜50の整数であり、X1
及びX2 は同一でも異なってもよく、C1 〜C8 のアル
キル基及びC6 〜C14のアリール基もしくはアラルキル
基から成る群より選択される基であり、X3 及びX4
同一でも異なってもよくそれぞれ下記(a)及び(b)
の群から選択される基である(但しX3 及びX4 は共に
(a)であるか共に(b)であるかである。X3 及びX
4 で表される基の末端はX3 及びX4 合わせて1個もし
くは2個の官能基を有しており、2個の官能基を有する
場合
には、2個は同一の官能基である。)〕 (a)は下記一般式 (II)
【0014】
【化6】
【0015】〔式中R1 乃至R4 は水素原子もしくはア
ルキル基、mは1〜10の整数、pは0〜50の整数、
qは0〜30の整数であり、p>0かつq=0のときY
1 は水素原子であり、それ以外のときY1 は水素原子、
OH、COOH又は下記一般式(IV)で表される基であ
る。〕で表される基である。(b)は下記一般式(III)
【0016】
【化7】
【0017】〔式中R5 乃至R6 は水素原子もしくはア
ルキル基、rは1〜10の整数、tは〜50の整数であ
る。また、Y2 は水素原子、OH、COOH又は下記一
般式(IV)で表される基である。〕で表される基である。 一般式(IV)
【0018】
【化8】
【0019】(式中、A1 及びA2 は同一でも異なって
も良く、−で示される単なる共有結合又はC1 〜C6
アルキレン基である。)。また本発明の請求項4に記載
の水に分散もしくは溶解可能な珪素含有ポリエステル樹
脂は、請求項1乃至3のいずれかの構成に加えて、水溶
性付与性成分が金属スルホネート基を有するジカルボン
酸成分であることを特徴とするものである。
【0020】また本発明の請求項5に記載の水に分散も
しくは溶解可能な珪素含有ポリエステル樹脂は、請求項
1乃至3のいずれかの構成に加えて、水溶性付与性成分
が金属スルホネート基を有するジカルボン酸成分及び無
水トリメリット酸であることを特徴とするものである。
また本発明の請求項6に記載の水に分散もしくは溶解可
能な珪素含有ポリエステル樹脂は、請求項4又は5の構
成に加えて、金属スルホネート基を有するジカルボン酸
成分が5−ソジウムスルホイソフタル酸であることを特
徴とするものである。
【0021】また本発明の請求項7に記載の水に分散も
しくは溶解可能な珪素含有ポリエステル樹脂は、請求項
1乃至3のいずれかの構成に加えて、水溶性付与性成分
が無水トリメリット酸であることを特徴とするものであ
る。また本発明の請求項8に記載の皮膜形成用樹脂組成
物は、請求項1乃至7のいずれかの1項に記載の水に分
散もしくは溶解可能な珪素含有ポリエステル樹脂を含ん
でなることを特徴とするものである。
【0022】また本発明の請求項9に記載の皮膜形成用
樹脂組成物は、請求項8に記載の皮膜形成用組成物がポ
リエステルフィルム表面加工用であることを特徴とする
ものである。また本発明の請求項10に記載の皮膜形成
用樹脂組成物は、請求項8に記載の皮膜形成用組成物
が、繊維加工用であることを特徴とするものである。
【0023】また本発明の請求項11に記載のポリエス
テルフィルムは、請求項8又は9に記載の皮膜形成用樹
脂組成物で表面処理されることを特徴とするものであ
る。
【0024】
【発明の実施の形態】以下に本発明の実施の形態を詳述
する。本発明の水に分散もしくは溶解可能な珪素含有ポ
リエステル樹脂の製造に用いられるジカルボン酸成分と
しては、例えば芳香族ジカルボン酸及び脂肪族ジカルボ
ン酸を挙げることができる。芳香族ジカルボン酸として
は、例えばテレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸ジフ
ェン酸、ナフタル酸、1,2−ナフタレンジカルボン
酸、1,4−ナフタレンジカルボン酸、1,5−ナフタ
レンジカルボン酸及び2,6−ナフタレンジカルボン酸
等を挙げることができ、脂肪族ジカルボン酸としては例
えば直鎖、分岐及び脂環式のシュウ酸、マロン酸、コハ
ク酸、グルタール酸、アジピン酸、ピメリン酸、2,2
−ジメチルグルタール酸、スベリン酸、アゼライン酸、
セバシン酸、ドデカン二酸、1,3−シクロペンタンジ
カルボン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、ジ
グリコール酸、チオジプロピオン酸等を挙げることがで
きる。また、上記ジカルボン酸成分には、これらジカル
ボン酸の無水物、エステル、酸クロライド及びハロゲン
化物等エステル形成性誘導体も含まれる。ジカルボン酸
成分は1種もしくは2種以上を併せて使用することがで
きる。
【0025】特に本発明の珪素含有ポリエステル樹脂を
皮膜形成性組成物に用いる場合、テレフタル酸、イソフ
タル酸等の芳香族ジカルボン酸成分及びこれらのエステ
ル形成性誘導体を使用するのが最適である。また、皮膜
の強度、耐熱性、耐ブロック性等を良好なもとするため
にはジカルボン酸成分中で芳香族ジカルボン酸成分が5
0モル%以上であることが好ましい。
【0026】本発明の珪素含有ポリエステル樹脂の製造
に用いられるグリコール成分としては、例えばエチレン
グリコール及びジエチレングリコール、トリエチレング
リコール、テトラエチレングリコール、ペンタエチレン
グリコール、ヘキサエチレングリコール、ヘプタエチレ
ングリコール、オクタエチレングリコール等のポリエチ
レングリコール、並びにプロピレングリコール及びジプ
ロピレングリコール、トリプロピレングリコール、テト
ラプロピレングリコール等のポリプロピレングリコー
ル、並びに1,3−プロパンジオール、1,3−ブタン
ジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタン
ジオール、1,6−ヘキサンジオール、2,2−ジメチ
ル−1,3−プロパンジオール、2−エチル−2−ブチ
ル−1,3−プロパンジオール、2−エチル−2−イソ
ブチル−1,3−プロパンジオール、2,2,4−トリ
メチル−1,6−ヘキサンジオール、1,2−シクロヘ
キサンジメタノール、1,3−シクロヘキサンジメタノ
ール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、2,2,
4,4−テトラメチル−1,3−シクロブタンジオー
ル、4,4' −ジヒドロキシビフェノール、4,4' −
メチレンジフェノール、4,4' −イソプロピリデンジ
フェノール、1,5−ジヒドロキシナフタリン、2,5
−ジヒドロキシナフタリン、2,2−ビス(4−ヒドロ
キシフェニル)プロパン(ビスフェノールA)、ビスフ
ェノールS等を挙げることができる。また、グリコール
成分にはこれらのグリコールに対応するジアセテート化
合物等のエステル形成性誘導体も含まれる。これらグリ
コール成分は1種もしくは2種以上を併せて使用するこ
とができる。
【0027】これらの中でも特にエチレングリコール、
ジエチレングリコール、並びに1,4−ブタンジオール
等のブタンジオール類、並びに1,6−ヘキサンジオー
ル等のヘキサンジオール類、並びに1,4−シクロヘキ
サンジメタノール類、ネオペンチルグリコール及びビス
フェノールA等が反応の容易性、得られる樹脂の強度等
の点から好適である。
【0028】特に本発明の珪素含有ポリエステル樹脂を
皮膜形成性組成物に用いる場合、皮膜の強度、耐熱性、
耐ブロック性等を良好なもとするためにはエチレングリ
コール成分がグリコール成分中で50モル%以上である
ことが好ましい。本発明の珪素含有ポリエステル樹脂の
製造に用いられる水溶性付与性成分は、3価以上の多価
カルボン酸成分及び金属スルホネート基を有するジカル
ボン酸成分である。
【0029】金属スルホネート基を有するジカルボン酸
成分は、例えば5−スルホイソフタル酸、2−スルホイ
ソフタル酸、4−スルホイソフタル酸、スルホテレフタ
ル酸、4−スルホナフタレン−2,6−ジカルボン酸等
のアルカリ金属塩及びこれらのエステル形成性誘導体が
挙げられるが、ポリエステル樹脂に良好な水分散もしく
は水溶性を付与するためには、アルカリ金属がナトリウ
ム又はカリウムであることが好ましい。
【0030】三価以上の多価カルボン酸成分を用いて本
発明のポリエステル樹脂に水分散性もしくは水溶性を付
与する場合、多価カルボン酸に起因するカルボキシル基
を残存させて重縮合反応を終了させ、この残存カルボキ
シル基を、例えばアンモニア、アルカノールアミン、ア
ルカリ金属化合物等の塩基性化合物で中和することによ
りポリエステル樹脂を水に分散もしくは溶解することが
できる。
【0031】三価以上の多価カルボン酸成分としては、
例えばヘミメリット酸、トリメリット酸、トリメジン
酸、メロファン酸、ピロメリット酸、ベンゼンペンタカ
ルボン酸、メリット酸、シクロプロパン−1,2,3−
トリカルボン酸、シクロペンタン−1,2,3,4−テ
トラカルボン酸、エタンテトラカルボン酸等が挙げられ
これらに対応するエステル形成性誘導体も含まれる。ポ
リエステル樹脂の三次元架橋をできるだけ防止し、重縮
合反応後においてもカルボキシル基を有効に残存させる
ためには、これらの中でも、無水トリメリット酸、ピロ
メリット酸無水物を用いるのが好ましい。
【0032】水溶性付与性成分は、上記する3価以上の
多価カルボン酸成分及び金属スルホネート基を有するジ
カルボン酸成分の内から1種、もしくは2種以上を併せ
て使用することができる。金属スルホネート基を有する
ジカルボン酸成分を用いる場合、その使用量は、ジカル
ボン酸成分及び水溶性付与性成分の合計中で0〜50モ
ル%を使用でき、50モル%を越える場合は引張破壊強
さ等の樹脂強度の低下が問題となる。
【0033】多価カルボン酸成分を用いる場合、その使
用量は、全カルボン酸成分に対してジカルボン酸成分及
び水溶性付与性成分の合計中で0〜40モル%を使用で
きる。40モル%を越える場合、製造工程における不必
要な架橋反応を排除できる重合条件下では、充分な重合
度を得ることができない。なお、水溶性付与性成分全体
としては、ジカルボン酸成分及び水溶性付与性成分の合
計中で1〜60モル%でなければならない。1モル%未
満では水分散もしくは水溶性を与えることがでない。ま
た、60モル%を越える場合、樹脂強度の低下が問題と
なる。また、後記する反応性シリコーンオイルが取り得
る分子量の幅が大きいことを考慮すれば、水溶性付与性
成分の量は、上記範囲内であり且つ全反応成分成分中の
合計中で、重量比で1〜60%であることが好ましい。
【0034】特に本発明の珪素含有ポリエステル樹脂を
皮膜形成性組成物に用いる場合、その耐摩耗性、耐ブロ
ック性等を特に良好なものとするためには、水溶性付与
性成分として金属スルホネート基を有するジカルボン酸
成分のみを使用する場合にはは同成分をジカルボン酸成
分及び水溶性付与性成分の合計中で1〜30モル%、多
価カルボン酸成分を単独で使用する場合は多価カルボン
酸成分は同5〜40モル%、また、同様に金属スルホネ
ート基を有するジカルボン酸成分と多価カルボン酸成分
を併せて用いる場合にはこれらを併せて同2〜40モル
%使用することが望ましい。
【0035】なお、本明細書において「水に分散もしく
は溶解可能な」とは、珪素含有ポリエステル樹脂が水に
対し透明に溶解し得る場合のみならず、それ自体のみで
水に透明、半透明もしくは不透明の状態に安定に分散も
しくは乳濁し得る場合を含む意である。次に本発明の水
に分散もしくは溶解可能な珪素含有ポリエステル樹脂を
製造するためには、他の成分と縮合もしくは重縮合可能
なシリコーン化合物を用いる必要がある。これは、反応
性シリコーンオイルとの名称で知られもしくは市販され
ており、容易に入手可能である。このような反応性シリ
コーンオイルの内でも、分子中に1又は2個の官能基を
有するものが好適である。さらに、これら官能基がカル
ボキシル基又は水酸基であるものは、製造工程において
良好な反応性を与えるため好ましい。特に、官能基を2
個有する場合においては、2個が共にカルボキシル基
か、共に水酸基である場合により良好な結果が得られ
る。これらの反応性シリコーンオイルの具体例として
は、信越化学工業(株)社製X−22−162A、X−
22−162C、X−22−160AS、X−22−1
67DX、KF−6001、KF−6002、KF−6
003、X−22−165B、X−22−170B、X
−22−176B、X−22−3701E、X−22−
4015、X−22−161AS、X−22−161
A、X−22−161B、X−22−161C、KF−
864、KF−865、X−22−167B、X−22
−980を挙げることができる。
【0036】なお、上で列挙される反応性シリコーンオ
イルは、そのポリオルガノシロキサンセグメント部分が
他の成分であるポリエステルセグメント部分と結合する
部位においてポリオルガノシロキサンセグメントの末端
がSi−C結合を介してポリエステルセグメント部分と
エステル結合するものであるが、本発明においては、S
i−O−C結合を介してポリエステル部分と結合するシ
リコーンオイルも使用可能であり、本明細書中ではこれ
らも反応性シリコーンオイルに含む。
【0037】本発明の珪素含有ポリエステル樹脂を皮膜
形成性樹脂組成物に用いる場合、上記のいずれの反応性
シリコーンオイルを用いることも可能であるが、特に、
反応性シリコーンオイルが一般式(I)で表されるもの
である場合最適な効果が得られる。 一般式(I)
【0038】
【化9】
【0039】〔式中nは、1〜50の整数であり、X1
及びX2 は同一でも異なってもよく、C1 〜C8 のアル
キル基及びC6 〜C14のアリール基もしくはアラルキル
基から成る群より選択される基であり、X3 及びX4
同一でも異なってもよくそれぞれ下記(a)及び(b)
の群から選択される基である(但しX3 及びX4 は共に
(a)であるか共に(b)であるかである。X3 及びX
4 で表される基の末端はX3 及びX4 合わせて1個もし
くは2個の官能基を有しており、2個の官能基を有する
場合には、2個は同一の官能基である。)〕 上記(a)は下記一般式(II)
【0040】
【化10】
【0041】〔式中R1 乃至R4 は水素原子もしくはア
ルキル基、mは1〜10の整数、pは0〜50の整数、
qは0〜30の整数であり、p>0かつq=0のときY
1 は水素原子であり、それ以外のときY1 は水素原子、
OH、COOH又は下記一般式(IV)で表される基であ
る。〕で表される基である。上記(b)は下記一般式(I
II)
【0042】
【化11】
【0043】〔式中R5 乃至R6 は水素原子もしくはア
ルキル基、rは1〜10の整数、tは〜50の整数であ
る。また、Y2 は水素原子、OH、COOH又は下記一
般式(IV) で表される基である。〕で表される基であ
る。 一般式(IV)
【0044】
【化12】
【0045】(式中、A及びBは同一でも異なっても良
く、−で示される単なる共有結合又はC1 〜C6 のアル
キレン基である。)。上記一般式(I)においては、n
が1以上であるのは、より優れた滑り性及び耐ブロック
性が得られ、また、揮発性が低いため、珪素含有ポリエ
ステル樹脂の合成反応において樹脂中に構成単位として
容易に組み込まれるためである。また50以下であるの
は、樹脂のミクロな相分離の影響がより少なく、特に均
一な皮膜を形成可能なためである。
【0046】上記一般式(II)において、pが50以下
及びqが30また、一般式(III) においてtが50以下
であるのは、これらの範囲において特に重縮合反応が容
易なこと及び樹脂の耐熱性が良好なことのためである。
なお、上記反応性シリコーンオイルを使用する場合、こ
れから得られた珪素含有ポリエステル樹脂において、ポ
リオルガノシロキサンセグメント部分がポリエステルセ
グメント部分と結合する部位においてポリオルガノシロ
キサンセグメントの末端がSi−C結合を介してポリエ
ステルセグメント部分とエステル結合する場合には、珪
素含有ポリエステル樹脂は、その耐加水分解性が特に優
れたものとなる点で好ましい。
【0047】本発明において反応性シリコーンオイルの
使用量は、ジカルボン酸とグリコール成分と水溶性付与
性成分と反応性シリコーンオイル等から成る全反応成分
に対して1〜50重量%とする必要があり、好ましくは
10〜30重量%である。1重量%未満では滑り性、耐
ブロック性付与効果が不十分でとなる。一方、50重量
%を越えても効果の向上が期待できないばかりか、重合
性等が不良となりポリエステル樹脂本来の特性が損なわ
れる。
【0048】本発明の水に分散もしくは溶解可能な珪素
含有ポリエステル樹脂の製造には上記の各反応成分を必
須のものとして用いるが、これら以外の反応成分とし
て、例えばp-ヒドロキシ安息香酸、2価の脂肪族アルコ
ール等を併せて用いることも可能である。本発明の水に
分散もしくは溶解可能な珪素含有ポリエステル樹脂は、
公知のポリエステル製造方法により得ることができる。
例えばジカルボン酸とグリコールを用いる直接エステル
化反応或いはジカルボン酸のエステル形成性誘導体とグ
リコールとのエステル交換反応を第1段反応とし、この
反応生成物を重縮合させる第2段反応により製造するこ
とができる。なお、上記のジカルボン酸成分及びグリコ
ール成分以外の成分は上記第1段反応の当初から第2段
反応終了に至るまでの任意の時期に添加して反応に供す
ることができる。
【0049】これらの中で、最も一般的なジカルボン酸
ジエステルとグリコールとのエステル交換反応を第1段
反応とし、この反応生成物を重縮合させる第2段反応か
らなる製造方法を用いて具体的に説明する。第1段のエ
ステル交換反応においては、本発明の珪素含有水溶性ポ
リエステルの製造に供する全ての反応成分を最初から一
括で仕込んでもよいし、反応性シリコーンオイル、長鎖
グリコール成分或いは多価カルボン酸成分等はエステル
重縮合反応時に添加してもよい。一括仕込みの場合に
は、エステル交換反応は、例えばジカルボン酸ジエステ
ルとグリコール化合物と反応性シリコーンオイルとを反
応容器に加え、窒素ガス等の不活性ガス雰囲気で常圧条
件下で、150〜250℃まで徐々に昇温加熱してエス
テル交換反応を行なう。
【0050】第2段の重縮合反応は、例えば5mmHg
以下の減圧下、160〜280℃の温度範囲内で行なう
が、長鎖グリコール化合物や反応性シリコーンオイルの
熱分解を考慮すると、特に230〜260℃の範囲が好
ましい。このようにして、本発明の水に分散もしくは溶
解可能な珪素含有ポリエステル樹脂が得られる。なお、
エステル交換反応及び重縮合反応において、任意の時期
に触媒として、従来公知のチタン、アンチモン、鉛、亜
鉛、マグネシウム、カルシウム、マンガン、アルカリ金
属化合物等を用いてもよい。
【0051】本発明の珪素含有ポリエステル樹脂の製造
においては、反応性シリコーンオイルの種類を選択する
ことで得られる樹脂をブロック共重合体、グラフト共重
合体とすることもできる。例えば反応性シリコーンオイ
ルとして、充分長いポリオルガノシロキサンセグメント
を有しかつ分子鎖の末端に1個のみの官能基を有するも
のを用いた場合、得られる珪素含有ポリエステル樹脂を
ポリエステルセグメント部分とポリオルガノシロキサン
セグメント部分とからなるブロック共重合体とすること
もできる。また、例えば反応性シリコーンオイルとし
て、直鎖の分子鎖の片末端に2個の官能基を有するもの
を用いた場合、得られる珪素含有ポリエステルをポリエ
ステルセグメントを主鎖としポリオルガノシロキサンセ
グメントを側鎖とする櫛形のグラフト共重合体とするこ
とができる。
【0052】本発明の水に分散もしくは溶解可能な珪素
含有ポリエステル樹脂は各種用途に用いることができ
る。その中でも、上述した如く、耐磨耗性、滑り性等に
優れかつ水に分散もしくは溶解可能であるという特徴に
より、皮膜形成用樹脂組成物に好適に用いられる。な
お、皮膜形成用樹脂組成物に用いる場合の本発明の珪素
含有ポリエステル樹脂は、後記の実施例に記載する測定
方法にて、数平均分子量が5000以上であることが好
ましい。数平均分子量が5000以上のとき、ポリエス
テル樹脂の強度及び耐摩耗性が特に優れたものとなり、
また、耐ブロック性の向上の点で充分な効果を得られ
る。数平均分子量が5000未満であれば、ポリエステ
ル樹脂の強度及び耐摩耗性が優れたものとなりにくく、
また、耐ブロック性の向上の点で充分な効果を得られな
くなる恐れがある。
【0053】また皮膜形成用樹脂組成物に用いる場合の
本発明の珪素含有ポリエステル樹脂は、より優れた強度
のフィルムを得やすくするために且つ分散液もしくは溶
液の長期保存安定性を良好なものとしやくするために、
固有粘度が0.1〜0.7であることが好ましい。固有
粘度が0.1未満であれば、優れた強度のフィルムを得
にくく、固有粘度が0.7を超えると分散液もしくは溶
液の長期保存安定性を良好なものとしにくい。特に固有
粘度が0.2〜0.6の範囲において最適な上記効果が
得られる。
【0054】また皮膜形成用樹脂組成物に用いる場合の
本発明の珪素含有ポリエステル樹脂は、より優れた耐ブ
ロック性を有するフィルムを得やすくするために且つ充
分な水溶性を得やすくするために、ガラス転移点(T
g)が−20〜90℃であることが好ましい。ガラス転
移点が−20℃未満であれば、より優れた耐ブロック性
を有するフィルムを得にくく、ガラス転移点が90℃を
超えると、充分な水溶性を得にくい。特に皮膜形成用樹
脂組成物をポリエステルフィルム処理用として用いる場
合には、ガラス転移点が30〜80℃の範囲であれば最
適な上記効果を得られる。
【0055】また皮膜形成用樹脂組成物に用いる場合の
本発明の珪素含有ポリエステル樹脂は、フィルムとして
形成した場合に、25℃、湿度55%RHの条件下で、
引張破壊強さが10〜500kg/cm2 の範囲におい
て、より優れた平滑性を有する皮膜の形成が可能とな
る。本発明の皮膜形成用樹脂組成物には溶媒として水単
独を用いるのみならず、これに親水性有機溶剤、例えば
メタノール、エタノール、2−プロパノール等のアルコ
ール類、プロピレングリコールモノメチルエーテル、エ
チルセロソルブ及びブチルセロソルブ等のグリコールエ
ーテル等、シクロヘキサノン等の親水性の有機溶媒を加
えても良い。また、本発明のポリエステル樹脂におい
て、多価カルボン酸成分を水溶性手段として用いる場合
には、例えばアンモニア、アルカノールアミン等の塩基
性化合物で中和することにより水溶化することができ
る。本発明の皮膜形成用樹脂組成物は上記の様な溶剤組
成のものとすることができるため水系による塗布が可能
であり、基材の加工処理を行う際の労働安全性及び環境
保全性に優れている。なお、必要に応じ、例えば浸透
剤、難燃剤、静電気防止剤、顔料、染料、酸化防止剤、
紫外線吸収剤、消泡剤、分散助剤等の添加剤を加えるこ
ともできる。
【0056】本発明の珪素含有ポリエステル樹脂を含ん
でなる皮膜形成用樹脂組成物をPET等のポリエステル
フィルムの表面処理用として使用する方法について述べ
れば、例えば、PETフィルムを製造し、事後的に本発
明の皮膜形成用樹脂組成物を塗布する方法がある。ま
た、例えばPETを常法によりフィルム化する過程のい
ずれかの段階で、ポリエステルフィルムの表面に本発明
の皮膜形成用樹脂組成物を塗布するという方法も採りう
る。後者の場合PETのフィルム化は、例えば、PET
を乾燥後、溶融押し出しし、未延伸シートとした後、二
軸延伸、次いで熱処理することにより行うことができ、
皮膜形成用樹脂組成物はこのいずれかの工程で、例えば
浸漬法、カーテンコート法、グラビアコート法、ワイヤ
ーバー法、スプレーコート法、リバースコート法または
ダイコート法等によりフィルム表面に塗布することがで
きる。
【0057】また、繊維製品の処理用としての使用方法
について述べれば、例えば本発明の珪素含有ポリエステ
ル樹脂を含んでなる皮膜形成用樹脂組成物を不織布、ウ
エブ等に浸漬法、パディング法等により塗布する方法、
糸条に経糸糊付け方法と同様のサイジング機を用いて塗
布する方法、さらに処理された糸条を製織に供する方法
等がある。
【0058】さらに、本発明の珪素含有ポリエステル樹
脂を含んでなる皮膜形成用樹脂組成物は、上記に例示さ
れる用途のみならず、金属、ガラス、紙、木材等のコー
ティング剤、並びに整髪用セット剤、トリートメント
剤、ネイルラッカー等の化粧料、並びにポリ塩化ビニ
ル、ポリカーボネート等のプラスティックフィルムの表
面処理剤等としても使用することができる。
【0059】
【実施例】以下に本発明を実施例に基づいて説明する
が、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、
以下に使用される「部」及び「%」は、特に示さない限
り、全て重量基準である。また、下記実施例1乃至1
0、比較例1及び2のポリエステル樹脂の物性は以下の
試験方法により測定したものである。 (1)固有粘度の測定方法 o-クロロフェノールを溶媒とし、オストワルド粘度計に
て20℃の条件下で測定した。 (2)ガラス転移点の測定方法 示差走査熱量計 DSC 8230(理学電機(株)
製)により、昇温速度10K/分 の条件で測定した。 (3)数平均分子量の測定 各試料を固型分について10mg/ミリリットルとなる
様にTHF溶液を調製し、各々インジェクション量10
0マイクロリットルにて測定した。 測定条件 GPC測定装置:昭和電工(株)製SHODEX SY
STEM 11 カラム :SHODEX KF−800P、KF
−005、KF−003及びKF−001(いずれも昭
和電工(株)製)の4本直列 移動層 :THF 流 量 :1ml/分 カラム温度 :45℃ 検出器 :RI 換 算 :ポリスチレン (4)赤外線吸収スペクトルの測定 赤外線吸収スペクトルの測定はフィルム法にて行った。 (5)鉛筆硬度の測定 実施例及び比較例の各水溶液を、各々フィルム形成用容
器に流し込み60℃で48時間乾燥し、形成されたフィ
ルムを取り出した後、裏表各々105℃で12時間絶乾
して厚さ0.4mmの絶乾されたフィルムを得た。これ
らのフィルムを25℃で、55%RHで10時間状態調
節したものを試料とし、鉛筆ひっかき試験法(JIS
K 5400)に準拠して測定した。 (6)引張試験 実施例及び比較例の各水溶液を、各々フィルム形成用容
器に流し込み60℃で48時間乾燥し、形成されたフィ
ルムを取り出した後、裏表各々105℃で12時間絶乾
して厚さ0.4mmの絶乾されたフィルムを得た。これ
らのフィルムを用いて200mm×15mmの1号型試
験片を作成し、25℃で、55%RHで100時間状態
調節して試験に供した。引張試験は抗張力試験機
((株)オリエンテック製 RTC−1225)を用
い、プラスチックフィルム及びシートの引張力試験法
(JIS K 7127)に準拠して行い引張破壊強
さ、引張破壊伸びを求めた。 (7)耐煮沸試験 耐煮沸試験については、煮沸による加水分解の影響を調
べるため、各実施例及び比較例の水溶液を15日間煮沸
処理してフィルム作成に供した以外は、上記引張試験の
場合と同様方法により試験片を作成し、引張破壊強さ、
引張破壊伸びを求め、上記引張試験における測定値と比
較しその保持率を求めた。 (8)未反応シリコーンの確認試験 珪素含有水溶性ポリエステル樹脂溶液100部をn−ヘ
キサン100部にて抽出操作を行い、n−ヘキサン層を
分離の後n−ヘキサンを留去して、その残渣の赤外線吸
収スペクトルを測定し、未反応シリコーンに由来するピ
ークの有無により未反応シリコーンの残存の有無を確認
した。 〔実施例1〕反応器に、ジメチルテレフタル酸121.
4部、イソフタル酸20.8部、セバシン酸25.3
部、5−スルホン酸ナトリウムジメチルイソフタル酸2
5.9部、エチレングリコール77.6部、1,4−ブ
タンジオール28.2部、ネオペンチルグリコール3
2.5部、X−22−162A(下記一般式(V)で示
される両末端にカルボキシル基が導入された信越化学工
業(株)社製 官能基当量約1,000の反応性シリコ
ーンオイル)25.0部及び触媒としてシュウ酸チタン
カリウム0.1部を加え、160℃、常圧、窒素雰囲気
中で攪拌混合しながら200℃に昇温した。次に、4時
間かけて反応温度を260℃にまで徐々に昇温しエステ
ル交換反応を終了させた。その後、250℃で徐々に減
圧し250℃、0.5mmHgの条件下で1時間重縮合
反応を行い、固有粘度0.35、ガラス転移点50℃、
数平均分子量6800の珪素含有水溶性ポリエステル樹
脂を得た。この樹脂の赤外線吸収スペクトルを測定した
ところ、2957、1723、1450、1407、1
265、1100、1019、875、799、729
及び627cm-1に吸収が確認された。
【0060】この珪素含有水溶性ポリエステル樹脂25
部及び水75部を溶解槽に加え攪拌下、温度80〜95
℃で2時間かけて溶解させ、珪素含有水溶性ポリエステ
ル樹脂の25%水溶液を得た。この溶液を用いて上述の
ような鉛筆硬度の測定、引張試験及び耐煮沸試験を行な
い、その結果を表1に示した。また、この溶液を用いた
未反応シリコーンの確認試験においては、未反応シリコ
ーンの残存は無かった。 一般式(V)
【0061】
【化13】
【0062】〔式中nは、1〜50の整数であり、X5
及びX6 は同一でも異なってもよく下記一般式(VI)で表
される基である。〕 一般式(VI)
【0063】
【化14】
【0064】〔式中R9 乃至R12は水素原子もしくはア
ルキル基、mは1〜10の整数、pは0〜50の整数、
qは0〜30の整数である。〕 〔実施例2〕X−22−162Aの配合量を50部とし
た以外は実施例1と同様にして、固有粘度0.35、ガ
ラス転移点48℃、数平均分子量6900の珪素含有水
溶性ポリエステル樹脂を得た。この樹脂の赤外線吸収ス
ペクトルを測定したところ、2601、1721、14
52、1405、1265、1100、1020、87
7、800、730及び626cm-1に吸収が確認され
た。
【0065】この珪素含有水溶性ポリエステル樹脂25
部、水75部を溶解槽に加え攪拌下、温度80〜95℃
で2時間かけて溶解させ、珪素含有水溶性ポリエステル
樹脂の25%水溶液を得た。この溶液を用いて鉛筆硬度
の測定、引張試験及び耐煮沸試験を行ない、その結果を
表1に示した。また、この溶液を用いた未反応シリコー
ンの確認試験においては、未反応シリコーンの残存は無
かった。 〔実施例3〕ジメチルテレフタル酸145.7部とし、
かつセバシン酸を除外したこと以外は、実施例1と同様
にして、固有粘度0.37、ガラス転移点56℃、数平
均分子量6500の珪素含有水溶性ポリエステル樹脂を
得た。この樹脂の赤外線吸収スペクトルを測定したとこ
ろ、2958、1721、1449、1406、137
6、1266、1102、1013、874、729及
び624cm-1に吸収が確認された。
【0066】この珪素含有水溶性ポリエステル樹脂25
部及び水75部を溶解槽に加え攪拌下、温度80〜95
℃で2時間かけて溶解させ、珪素含有水溶性ポリエステ
ル樹脂の25%水溶液を得た。この溶液を用いて鉛筆硬
度の測定、引張試験及び耐煮沸試験を行ない、その結果
を表1に示した。また、この溶液を用いた未反応シリコ
ーンの確認試験においては、未反応シリコーンの残存は
無かった。 〔実施例4〕ジメチルテレフタル酸97.2部、セバシ
ン酸52.6部を用いたこと以外は実施例1と同様にし
て、固有粘度0.36、ガラス転移点42℃、数平均分
子量6800の珪素含有水溶性ポリエステル樹脂を得
た。この樹脂の赤外線吸収スペクトルを測定したとこ
ろ、2955、1723、1449、1406、137
0、1263、1099、1014、872、724及
び630cm-1に吸収が確認された。
【0067】この珪素含有水溶性ポリエステル樹脂25
部及び水75部を溶解槽に加え攪拌下、温度80〜95
℃で2時間かけて溶解させ、珪素含有水溶性ポリエステ
ル樹脂の25%水溶液を得た。この溶液を用いて鉛筆硬
度の測定、引張試験及び耐煮沸試験を行ない、その結果
を表1に示した。また、この溶液を用いた未反応シリコ
ーンの確認試験においては、未反応シリコーンの残存は
無かった。 〔実施例5〕反応器にジメチルテレフタル酸121.4
部、イソフタル酸20.8部、セバシン酸25.3部、
5−スルホン酸ナトリウムジメチルイソフタル酸25.
9部及び、エチレングリコール77.6部、1,4−ブ
タンジオール28.2部、ネオペンチルグリコール3
2.5部及び触媒としてシュウ酸チタンカリウム0.1
部を加え160℃、常圧、窒素雰囲気中で攪拌混合しな
がら200℃に昇温した。次に、4時間かけて反応温度
を260℃にまで徐々に昇温しエステル交換反応を終了
させた後、X−22−167DX(下記一般式(IX)で
示される片末端にOH基が2個導入された信越化学工業
(株)社製の反応性シリコーンオイル)32.5部を添
加し、250℃で徐々に減圧し、250℃、0.5mm
Hgの条件下で1時間重縮合反応を行い、固有粘度0.
33、ガラス転移点48℃、数平均分子量6400の珪
素含有水溶性ポリエステル樹脂を得た。この樹脂の赤外
線吸収スペクトルを測定したところ、2958、172
4、1609、1505、1453、1406、137
4、1266、1103、1020、875、802、
729及び628cm-1に吸収が確認された。
【0068】この珪素含有水溶性ポリエステル樹脂25
部及び水75部を溶解槽に加え攪拌下、温度80〜95
℃で2時間かけて溶解させ、珪素含有水溶性ポリエステ
ル樹脂の25%水溶液を得た。この溶液を用いて鉛筆硬
度の測定、引張試験及び耐煮沸試験を行ない、その結果
を表1に示した。また、この溶液を用いた未反応シリコ
ーンの確認試験においては、未反応シリコーンの残存は
無かった。 一般式(VII)
【0069】
【化15】
【0070】〔式中nは、1〜50の整数であり、X7
は下記一般式(VIII) で表される基である。〕 一般式(VIII)
【0071】
【化16】
【0072】〔式中R13乃至R16は水素原子もしくはア
ルキル基、mは1〜10の整数、pは0〜50の整数、
qは1〜30の整数でありY3 は下記一般式(IX)表され
る基である。〕 一般式(IX)
【0073】
【化17】
【0074】(式中、A3 及びA4 は同一でも異なって
も良く、−で示される単なる共有結合又はC1 〜C6
アルキレン基である。)。 〔実施例6〕反応器にジメチルテレフタル酸121.4
部、イソフタル酸208.0部、セバシン酸25.3
部、5−スルホン酸ナトリウムジメチルイソフタル酸2
5.9部、エチレングリコール77.6部、1,4−ブ
タンジオール28.2部、ネオペンチルグリコール3
2.5部、X−22−160AS(下記一般式(X) で示
される両末端にOH基が導入された信越化学工業(株)
社製 官能基当量約120の反応性シリコーンオイル)
25.0部及び触媒としてシュウ酸チタンカリウム0.
1部を加え160℃、常圧、窒素雰囲気中で攪拌混合し
ながら200℃に昇温した。次に、4時間かけて反応温
度を260℃にまで徐々に昇温しエステル交換反応を終
了させた。その後、250℃で徐々に減圧し、250
℃、0.5mmHgの条件下で1時間重縮合反応を行
い、固有粘度0.35、カラス転移点48℃、数平均分
子量7000の珪素含有水溶性ポリエステル樹脂を得
た。この樹脂の赤外線吸収スペクトルを測定したとこ
ろ、2960、1727、1501、1455、140
4、1380、1269、1110、1010、87
0、731及び627cm-1に吸収が確認された。
【0075】この珪素含有水溶性ポリエステル樹脂25
部及び水75部を溶解槽に加え攪拌下、温度80〜95
℃で2時間かけて溶解させ、珪素含有水溶性ポリエステ
ル樹脂の25%水溶液を得た。この溶液を用いて鉛筆硬
度の測定、引張試験及び耐煮沸試験を行ない、その結果
を表1に示した。また、この溶液を用いた未反応シリコ
ーンの確認試験においては、未反応シリコーンの残存は
無かった。 一般式(X)
【0076】
【化18】
【0077】〔式中nは、自然数であり、X8 及びX9
は同一でも異なってもよくそれぞれ下記一般式(XI)で表
される基である。〕 一般式(XI)
【0078】
【化19】
【0079】〔式中R17乃至R20は水素原子もしくはア
ルキル基、mは1〜10の整数、pは0〜50の整数、
qは1〜30の整数である。〕 〔実施例7〕反応器にジメチルテレフタル酸121.4
部、イソフタル酸20.8部、セバシン酸25.3、5
−スルホン酸ナトリウムジメチルイソフタル酸25.9
部、エチレングリコール77.6部、1,4−ブタンジ
オール28.2部、ネオペンチルグリコール32.5
部、X−22−162A 25.0部及び触媒としてシ
ュウ酸チタンカリウム0.1部を加え160℃、常圧、
窒素雰囲気中で攪拌混合しながら200℃に昇温した。
次に、4時間かけて反応温度を260℃にまで徐々に昇
温しエステル交換反応を終了させた後、無水トリメリッ
ト酸12.0部を添加し、250℃で徐々に減圧し、2
50℃、0.5mmHgの条件下で30分重縮合反応を
行い、固有粘度0.36、ガラス転移点 45℃、数平
均分子量6900の珪素含有水溶性ポリエステル樹脂を
得た。この樹脂の赤外線吸収スペクトルを測定したとこ
ろ、2956、1725、1452、1406、137
3、1267、1104、1009、874、729及
び627cm-1に吸収が確認された。
【0080】この珪素含有水溶性ポリエステル樹脂25
部及び水75部を溶解槽に加え攪拌下、温度80〜95
℃で2時間かけて溶解させ、珪素含有水溶性ポリエステ
ル樹脂の25%水溶液を得た。この溶液を用いて鉛筆硬
度の測定、引張試験及び耐煮沸試験を行ない、その結果
を表1に示した。また、この溶液を用いた未反応シリコ
ーンの確認試験においては、未反応シリコーンの残存は
無かった。 〔実施例8〕反応器にジメチルテレフタル酸133.5
部、イソフタル酸20.8部、セバシン酸25.3部、
エチレングリコール77.6部、1,4−ブタンジオー
ル28.2部、ネオペンチルグリコール22.5部、X
−22−162A 25.0部及び触媒としてシュウ酸
チタンカリウム0.1部を加え160℃、常圧、窒素雰
囲気中で攪拌混合しながら200℃に昇温した。次に、
4時間かけて反応温度を260℃にまで徐々に昇温しエ
ステル交換反応を終了させた後、無水トリメリット酸1
6.8部を添加し、220℃で徐々に減圧し、220
℃、2.0mmHgの条件下で30分重縮合反応を行
い、酸価31.0、固有粘度0.32、ガラス転移点4
7℃、数平均分子量7100の珪素含有水溶性ポリエス
テル樹脂を得た。この樹脂の赤外線吸収スペクトルを測
定したところ、2955、1725、1452、140
2、1375、1268、1100、1011、87
0、731及び628cm-1に吸収が確認された。
【0081】この珪素含有水溶性ポリエステル樹脂25
部、25%アンモニア水1.0部及び水74部を溶解槽
に加え攪拌下、温度80〜95℃で2時間かけて溶解さ
せ、珪素含有水溶性ポリエステル樹脂の25%水溶液を
得た。この溶液を用いて鉛筆硬度の測定、引張試験及び
耐煮沸試験を行ない、その結果を表1に示した。また、
この溶液を用いた未反応シリコーンの確認試験において
は、未反応シリコーンの残存は無かった。 〔実施例9〕反応性シリコーンオイルをX−22−16
0AS 25.0部に置き換えた以外は、実施例8と同
様にして、酸価29.0、固有粘度0.31、ガラス転
移点45℃、数平均分子量7000の珪素含有水溶性ポ
リエステル樹脂を得た。この樹脂の赤外線吸収スペクト
ルを測定したところ、2956、1721、1458、
1404、1370、1109、1008、869、7
30及び630cm-1に吸収が確認された。
【0082】この珪素含有水溶性ポリエステル樹脂25
部、25%アンモニア水1.1部及び水73.9部を溶
解槽に加え攪拌下、温度80〜95℃で2時間かけて溶
解させ、珪素含有水溶性ポリエステル樹脂の25%水溶
液を得た。この溶液を用いて鉛筆硬度の測定、引張試験
及び耐煮沸試験を行ない、その結果を表1に示した。ま
た、この溶液を用いた未反応シリコーンの確認試験にお
いては、未反応シリコーンの残存は無かった。 〔実施例10〕実施例5において反応性シリコーンオイ
ルを下記一般式(XII) で表される数平均分子量1600
の反応性シリコーンオイル 52.0部に置き換えた以
外は、実施例5と同様にして、酸価29.0、固有粘度
0.33、ガラス転移点47℃、数平均分子量6500
の珪素含有水溶性ポリエステル樹脂を得た。この樹脂の
赤外線吸収スペクトルを測定したところ、2958、1
722、1456、1400、1377、1099、1
008、869、728及び631cm-1に吸収が確認
された。
【0083】この珪素含有水溶性ポリエステル樹脂25
部及び水75部を溶解槽に加え攪拌下、温度80〜95
℃で2時間かけて溶解させ、珪素含有水溶性ポリエステ
ル樹脂の25%水溶液を得た。この溶液を用いて鉛筆硬
度の測定、引張試験及び耐煮沸試験を行ない、その結果
を表1に示した。また、この溶液を用いた未反応シリコ
ーンの確認試験においては、未反応シリコーンの残存は
無かった。 一般式(XII)
【0084】
【化20】
【0085】〔式中nは1〜50の整数であり、X10
びX11は共にO−C4 8 OHである。〕 〔比較例1〕反応性シリコーンオイルを除外したこと以
外は、実施例5と同様にして、固有粘度0.32、ガラ
ス転移点48℃、数平均分子量6900の水溶性ポリエ
ステル樹脂を得た。この樹脂の赤外線吸収スペクトルを
測定したところ2957、1719、1503、145
0、1408、1340、1265、1100、101
8、871、721及び627cm-1に吸収が確認され
た。
【0086】この水溶性ポリエステル樹脂25部及び水
75部を溶解槽に加え攪拌下、温度80〜95℃で2時
間かけて溶解させ、水溶性ポリエステル樹脂の25%水
溶液を得た。この溶液を用いて鉛筆硬度の測定、引張試
験及び耐煮沸試験を行ない、その結果を表1に示した。 〔比較例2〕比較例1で得られた水溶性ポリエステル樹
脂水溶液92部、ペインダッド51(ダウ・コーニング
社製 水溶性シリコーンオイル)2、5部及び水 5.
5部を添加して不揮発成分 25%の水溶液を得た。こ
の水溶液を用いて鉛筆硬度の測定、引張試験及び耐煮沸
試験を行ない、その結果を表1に示した。 〔皮膜形成用組成物の調製〕実施例1乃至7、実施例1
0及び、比較例1及び2で得られた各水溶液75部にプ
ラスコートRY−2(互応化学工業(株)製 浸透剤)
0.1部及び水24.9部を撹拌溶解し、各実施例1乃
至7、実施例10及び比較例1、2のそれぞれに対応し
た皮膜形成用樹脂組成物として実施例11乃至17、実
施例20及び比較例3、4を得た。尚、実施例8、9に
ついては水24.9部に代え、t−ブチルセロソルブ1
0部及び水14.9部を用いた他は上記と同様にして皮
膜形成用樹脂組成物の実施例18、19を得た。 〔皮膜形成用組成物を用いてのPETの表面処理工程〕
未処理PETフィルム(フィルム厚 50μm)を20
cm×25cmのサイズに裁断したものに、上記の実施
例11乃至20及び比較例3、4の各皮膜形成用組成物
2を、乾燥後の皮膜の厚みが5μmとなるようにバーコ
ーターを用いて塗布し、110℃で5分間乾燥した後、
60℃で2時間エージングし、更に25℃、55%RH
で10時間状態調節して各組成物により、図1に示すよ
うな表面処理されたPETフィルム1(実施例21乃至
30及び比較例5、6)を評価試料として得た。 〔表面処理されたPETフィルムの性質の評価〕 (1) 滑り性 ステンレス板(ステンレス鋼板)上に上記工程により得
られた実施例21乃至30及び比較例5、6の表面処理
済みPETフィルムを、その皮膜形成用組成物2側をス
テンレス板の上面に当接させて置き、その上に1.0K
gの荷重をかけ摩擦角度測定機(「摩擦角度測定機A
N」(商品名) (株)東洋精機製)を用いて、各表面
処理済みPETフィルムの滑り始め角度(θ)を測定
し、静摩擦係数(tanθ)を求めた。結果を表2に示
す。 〔皮膜形成用組成物を用いての織物の樹脂加工〕ポリエ
ステルタフタ(経糸、緯糸とも75デニール/24フィ
ラメントのポリエステルフィラメント糸、経糸密度10
5本/インチ、緯糸密度95本/インチ)を上記で得ら
れた実施例11乃至20及び比較例3、4の各皮膜形成
用組成物に浸漬してマングルで絞り、110℃で5分間
乾燥した後、170℃で2分熱処理し、更に25℃、5
5%RHで10時間状態調節して、樹脂付着量が10g
/m2 の樹脂加工済み織物(実施例31乃至40及び比
較例7、8)を評価試料として得た。 〔樹脂加工された織物の性質の評価〕 (1) 滑り性 ガラス板上に、上記工程により得られた実施例31乃至
40及び比較例7、8の樹脂加工済み織物を置き、その
上に1.0Kgの荷重をかけ摩擦角度測定機(「摩擦角
度測定機 AN」(商品名) (株)東洋精機製)を用
いて、各樹脂加工済み織物の滑り始め角度(θ)を測定
し、静摩擦係数(tanθ)を求めた。結果を表3に示
す。 (2) 耐摩耗性 JIS L0849に準拠し、染色堅牢度用摩擦試験機
((株)東洋精機製により、摩擦子(500gf)の先
端に乾燥状態の摩擦用白綿布(カナキン3号)をかぶ
せ、試験台上に固定された上記各樹脂加工済み織物上を
10cmの間を30回/分の速度で1000回及び50
00往復した後の、樹脂加工済み織物の表面状態の変化
を肉眼にて観察した。結果を摩擦強さとして表3に示
す。
【0087】評価等級 1 : 表面の毛羽立ちが極めて著しかった。 2 : 表面の毛羽立ちが著しかった。 3 : 表面に明瞭な毛羽たちが確認された。 4 : 表面にわずかな変化が見られた。
【0088】 5 : 表面の変化がほとんど認められなかった。
【0089】
【表1】
【0090】
【表2】
【0091】
【表3】
【0092】表2から判るように、実施例11乃至20
の皮膜形成用樹脂組成物で表面処理されたPETフィル
ムである実施例21乃至30の方が、比較例3、4の皮
膜形成用樹脂組成物で表面処理されたPETフィルムで
ある比較例5、6よりもすべり性を高くすることができ
る。また表3から判るように、実施例11乃至20の皮
膜形成用樹脂組成物で表面処理された織物である実施例
31乃至40の方が、比較例3、4の皮膜形成用樹脂組
成物で表面処理された織物である比較例7、8よりもす
べり性を高くすることができると共に耐磨耗性も高くす
ることができる。
【0093】
【発明の効果】本発明の水に分散もしくは溶解可能な珪
素含有ポリエステル樹脂は以上に特定されるので、シリ
コーンの特徴である耐磨耗性、滑り性及び耐ブロック性
等に優れ、かつポリエステル樹脂が本来の有する優れた
強度を保持するとともに、水に分散もしくは溶解可能で
あるという性質を有する。このことから、特にこれを用
いてPETフィルム等の基材を加工する場合、水性系に
より加工処理を行うことが可能となり、労働安全性、環
境保全性及び基材の加工の容易性等の観点から優れてい
る。
【0094】これらの特徴により、本発明の水に分散も
しくは溶解可能な珪素含有ポリエステル樹脂を含んでな
る皮膜形成用樹脂組成物は、PETフィルムの表面処
理、繊維製品の樹脂加工に特に好適に用いることができ
るものである。また本発明の水に分散もしくは溶解可能
な珪素含有ポリエステル樹脂を含んでなる皮膜形成用樹
脂組成物が塗布されたりして表面処理されたPETフィ
ルムや繊維製品は、シリコーンの特徴である耐磨耗性、
滑り性及び耐ブロック性等に優れる皮膜形成用樹脂組成
物の層を表面に有することになり、耐磨耗性、滑り性及
び耐ブロック性等が向上するものでものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例21乃至30及び比較例5、6のポリエ
ステルフィルムを示す断面図である。
【符号の説明】
1 ポリエステルフィルム 2 皮膜形成用樹脂組成物

Claims (11)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 ジカルボン酸成分と、グリコール成分
    と、前記ジカルボン酸成分と水溶性付与性成分の合計中
    で1〜60モル%の水溶性付与性成分と、全反応成分中
    で1〜50重量%の上記各成分と縮合または重縮合可能
    な反応性シリコーンオイルとを重縮合反応させて成るこ
    とを特徴とする水に分散もしくは溶解可能な珪素含有ポ
    リエステル樹脂。
  2. 【請求項2】 反応性シリコーンオイルが官能基を1個
    又は2個のみ有し、当該官能基がカルボキシル基及び水
    酸基の群から選ばれた少なくとも1種のものである請求
    項1に記載の水に分散もしくは溶解可能な珪素含有ポリ
    エステル樹脂。
  3. 【請求項3】 反応性シリコーンオイルが一般式(I) で
    表されるものである請求項1に記載の水に分散もしくは
    溶解可能な珪素含有ポリエステル樹脂。 一般式(I) 【化1】 〔式中nは、1〜50の整数であり、X1 及びX2 は同
    一でも異なってもよく、C1 〜C8 のアルキル基及びC
    6 〜C14のアリール基もしくはアラルキル基から成る群
    より選択される基であり、X3 及びX4 は同一でも異な
    ってもよくそれぞれ下記(a)及び(b)の群から選択
    される基である(但しX3 及びX4 は共に(a)である
    か共に(b)であるかである。X3 及びX4 で表される
    基の末端はX3 及びX4 合わせて1個もしくは2個の官
    能基を有しており、2個の官能基を有する場合には、2
    個は同一の官能基である。)〕 (a)は下記一般式 (II) 【化2】 〔式中R1 乃至R4 は水素原子もしくはアルキル基、m
    は1〜10の整数、pは0〜50の整数、qは0〜30
    の整数であり、p>0かつq=0のときY1 は水素原子
    であり、それ以外のときY1 は水素原子、OH、COO
    H又は下記一般式(IV)で表される基である。〕で表され
    る基である。(b)は下記一般式(III) 【化3】 〔式中R5 乃至R6 は水素原子もしくはアルキル基、r
    は1〜10の整数、tは〜50の整数である。また、Y
    2 は水素原子、OH、COOH又は下記一般式(IV)で表
    される基である。〕で表される基である。 一般式(IV) 【化4】 (式中、A1 及びA2 は同一でも異なっても良く、−で
    示される単なる共有結合又はC1 〜C6 のアルキレン基
    である。)。
  4. 【請求項4】 水溶性付与性成分が金属スルホネート基
    を有するジカルボン酸成分である請求項1から3のいず
    れか1項に記載の水に分散もしくは溶解可能な珪素含有
    ポリエステル樹脂。
  5. 【請求項5】 水溶性付与性成分が金属スルホネート基
    を有するジカルボン酸成分及び無水トリメリット酸であ
    る請求項1から3のいずれか1項に記載の水に分散もし
    くは溶解可能な珪素含有ポリエステル樹脂。
  6. 【請求項6】 金属スルホネート基を有するジカルボン
    酸成分が5−ソジウムスルホイソフタル酸である請求項
    4から5のいずれか1項に記載の水に分散もしくは溶解
    可能な珪素含有ポリエステル樹脂。
  7. 【請求項7】 水溶性付与性成分が無水トリメリット酸
    である請求項1から3のいずれか1項に記載の水に分散
    もしくは溶解可能な珪素含有ポリエステル樹脂。
  8. 【請求項8】 請求項1から7のいずれか1項に記載の
    水に分散もしくは溶解可能な珪素含有ポリエステル樹脂
    を含んでなる皮膜形成用樹脂組成物。
  9. 【請求項9】 ポリエステルフィルム表面加工用である
    請求項8に記載の皮膜形成用樹脂組成物。
  10. 【請求項10】 繊維加工用である請求項8に記載の皮
    膜形成用樹脂組成物。
  11. 【請求項11】 請求項8又は9に記載の皮膜形成用樹
    脂組成物で表面処理されることを特徴とするポリエステ
    ルフィルム。
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