JPH10138385A - 酸化物薄膜を備えたプラスチックフィルム及びその製造方法 - Google Patents

酸化物薄膜を備えたプラスチックフィルム及びその製造方法

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JPH10138385A
JPH10138385A JP30032396A JP30032396A JPH10138385A JP H10138385 A JPH10138385 A JP H10138385A JP 30032396 A JP30032396 A JP 30032396A JP 30032396 A JP30032396 A JP 30032396A JP H10138385 A JPH10138385 A JP H10138385A
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thin film
oxide thin
plastic
layer
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JP30032396A
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Takao Ishikawa
敬郎 石川
Daigoro Kamoto
大五郎 嘉本
Tomoji Oishi
知司 大石
Ken Takahashi
高橋  研
Yozo Nagai
陽三 長井
Koji Kouchi
浩二 古内
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Hitachi Ltd
Nitto Denko Corp
Original Assignee
Hitachi Ltd
Nitto Denko Corp
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 低温で高強度の酸化物薄膜を形成すること。 【解決手段】 紫外線を照射したとき、該紫外線をAg
膜3によって反射させることができ、PETフィルム1
を保護できる。しかも、Ag膜3によって反射した光が
酸化物薄膜2に再度照射され、光照射効率が向上し、酸
化物薄膜を十分に燒結させることができる。その結果、
第一の従来技術に比較し、真空装置等のように大がかり
な装置が不要になるばかりでなく、第二の従来技術に比
較し、温度が低くとも酸化物薄膜2を強固に形成するこ
とができ、また第三の従来技術に比較し、PETフィル
ムにダメージを与えるおそれがない。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、酸化物薄膜を備え
たプラスチックフィルムとその製造方法に係り、特に低
温で高強度を有するのに好適なプラスチックフィルムに
関するものである。
【0002】
【従来の技術】従来、酸化物薄膜の形成方法としては、
ガラス基板や金属板上にスパッタリングによって形成す
る物理的方法(以下、第一の従来技術という)と、ゾル
ゲル法のような塗布などの化学的な方法(以下、第二の
従来技術という)とがある。このうち、前者は真空装
置,イオンビームの出射装置などを用い、低い温度での
成膜が可能である。一方、後者はスピンコート,スプレ
ーなどの簡単な装置で基板上に塗布するものであり、通
常数百℃の温度で熱処理することによって成膜すること
ができる。従って、ゾルゲル法の塗布法などの化学的手
法では、耐熱性の低いプラスチック上への作成は困難で
ある。
【0003】ところが、近年、酸化物微粒子をシリカゾ
ル中に分散させ、これを塗布することで200℃以下の
低温で成膜することが可能となり、プラスチックフィル
ム上への成膜に応用できるようになってきているものが
ある。特開平3−188958号公報に示される技術の
もの(以下、第三の従来技術という)は、光を照射させ
て低温で酸化物薄膜を得る方法が提案されている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】しかし、上記に示す従
来技術のものは、以下の点について配慮されていない。
即ち、スパッタリングのような物理的方法を用いる従来
技術では、真空装置やイオンビーム装置などの大がかり
なものを必要とし、生産コストが高い問題がある。しか
も、成膜時には熱が発生するので、プラスチックフィル
ムにダメージを与え、該フィルムに変形等が発生するお
それがある。
【0005】また、ゾルゲルのような塗布法などの化学
的方法を用いる第二の従来技術では、酸化物微粒子を分
散させたシリカゾルを用いると、熱処理の温度が低いた
めに酸化物を充分に燒結させることができず、従って、
プラスチックフィルム上に形成した酸化物薄膜の強度が
不充分となる問題がある。
【0006】さらに、光を照射させることにより、低温
で酸化物薄膜を形成する第三の従来技術では、光に含ま
れる紫外線等で酸化物薄膜の強度が向上するものの、紫
外線がプラスチックフィルム中の有機物を分解し、該フ
ィルムにダメージを与えてしまう問題がある。
【0007】本発明の目的は、上記従来技術の問題点に
鑑み、プラスチックフィルム上に低温で高強度の酸化物
薄膜を容易に形成することができ、しかも生産コストの
低廉化を確実に図り得る酸化物薄膜を備えたプラスチッ
クフィルムを提供することにあり、他の目的は、上記プ
ラスチックを的確に製造し得る酸化物薄膜を備えたプラ
スチックフィルムの製造方法を提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】本発明のプラスチックフ
イルムでは、酸化物薄膜とプラスチックフィルムとの間
に、コート液から析出して形成されるか、または塗布に
よって形成されたAg膜と塗布によって形成された銅膜
との何れか一方の薄膜を形成することを特徴とするもの
である。
【0009】上述の如く、酸化物薄膜とプラスチックフ
イルムの間にAg膜またはCu膜の何れかが形成される
と、紫外線を低温で照射したとき、該紫外線をAg膜ま
たはCu膜によって反射させることができ、そのため、
プラスチックフィルムの有機物が紫外線によって分解す
るおそれがなくなり、またAg膜の形成に際してはコー
ト液を用いて低温で形成するので、PETフィルム1が
高温の影響を受けることもなく、従って、プラスチック
フィルムを保護することができる。しかも、Ag膜また
はCu膜によって反射した光が酸化物薄膜に再度照射さ
れ、光照射効率が向上し、酸化物薄膜を十分に燒結させ
ることができる。
【0010】その結果、第一の従来技術に比較し、真空
装置等のように大がかりな装置が不要になるばかりでな
く、第二の従来技術に比較し、温度が低くとも酸化物薄
膜を強固に形成することができ、また第三の従来技術に
比較し、プラスチックフィルムにダメージを与えるおそ
れがない。
【0011】この場合、酸化物薄膜として、少なくとも
TiO2とZrO2とIn23とSnO2との何れか一種
類により形成された第一層膜と、この第一層膜上にコー
ティングしかつ乾燥によって形成された第二薄膜とから
なる。該第二薄膜としては、TiO2とZrO2とIn2
3とSnO2とSiO2との何れか一種類からなる。
【0012】また本発明のプラスチックフィルムでは、
酸化物薄膜としての第一層膜の屈折率が第二層膜の屈折
率より大きい部材で形成し、良好な反射防止特性を有し
たことを特徴とするものである。反射防止は、光の干渉
により行われるものがあり、高屈折率の膜上に低屈折率
の膜を積層すれば、反射防止特性が得られる。良く知ら
れているIn23を主成分とするITO、またSnO2
を主成分とするATOは、それぞれSiO2より屈折率
が大きく、積層化により反射防止効果が得られる。それ
以外としてはTiO2,ZrO2,Nb25等があり、こ
れらもSiO2より屈折率が大きい。
【0013】従って、良好な反射防止特性を得る酸化物
薄膜として、第一層膜は、TiO2,ZrO2,In
23,SnO2,Nb25のうちの少なくとも何れか一
種類の酸化物であって、第二層膜は、SiO2である。
また、第一層膜がSiO2,TiO 2,Nb25,ZrO
2のうちの少なくとも一種のもので、これにTiO2,N
25,In23,SnO2,ZrO2のうちの少なくと
も一種の微粒子が分散していてもよい。なお、反射率の
制御は各層膜の膜厚を制御すればよい。
【0014】さらに、本発明のプラスチックフイルムで
は、プラスチックフィルムの表面に形成されたAg膜ま
たはCu膜上に、コーティングしかつ乾燥して導電性を
有する酸化物薄膜を形成したことを特徴とするものであ
る。
【0015】プラスチックフイルム上に形成したAg膜
またはCu膜は、一般に導電性に優れるため、これだけ
で導電性フィルムとして機能する。しかし、プラスチッ
クフィルムに透過性が要求される場合は、Ag膜または
Cu膜を薄くコートする必要がある。ところが薄くコー
トすると、Ag膜またはCu膜は表面抵抗値としては高
抵抗化するので、帯電防止のような高抵抗の膜でも十分
な機能を生じる場合は、薄いAg膜またはCu膜だけで
よい。
【0016】導電性プラスチックフィルムとして使用す
る場合、さらに低抵抗化が要求される。フイルムに透過
率の高い導電性フィルムとしての機能を付ける場合、透
明導電性の酸化物薄膜をコーティングする。この透明導
電性の酸化物薄膜の材料としては、上述したIn23
たはSnO2を主体としたITOまたはATOを用いる
ことができる。ITO,ATO膜の導電性は、ITO,
ATOを結晶化させることにより向上する。ゾルゲル法
によりITO,ATO膜を結晶化させるには数百℃の温
度が必要であり、プラスチックフィルム上では不可能と
なる。
【0017】そこで、予め結晶化したITO,ATOの
微粒子を、SiO2,TiO2,ZrO2のうちの少なく
とも一種の酸化物中に分散させることにより、透明で導
電性の高い膜を形成する。即ち、本発明の導電性を有す
る酸化物薄膜としては、Ag膜またはCu膜の表面上に
コーティングしかつ乾燥して形成され、In23とSn
2との何れかを主成分とする第一の導電性層膜と、該
層膜の上にコーティングしかつ乾燥して形成され、かつ
第一の導電性層膜の微粒子間に分散するSiO2,Ti
2,ZrO2の何れか一種類からなる第二層膜とからな
る。
【0018】また本発明のプラスチックフイルムの製造
方法では、プラスチックフィルムの表面上に、コート液
から析出して形成されたAg膜と塗布によって形成され
たCu膜との何れか一方の薄膜を設け、次いで、何れか
一方の薄膜上に、TiO2ZrO2とIn23とSnO
2とNb25との何れか一種類をコーティングしかつ乾
燥して酸化物薄膜としての第一層膜を形成し、さらに、
第一層膜上に、TiO2とZrO2とIn23とSnO2
とSiO2との何れか一種類をコーティングしかつ乾燥
して酸化物薄膜としての第二層膜を形成した後、第二層
膜に向かって紫外線を低温照射して酸化物薄膜を燒結す
ることを特徴とするものである。これにより、低温で強
固な酸化物薄膜を形成したプラスチックフィルムを的確
に製造し得る。
【0019】
【発明の実施の形態】以下、本発明の実施例を図1及び
図2により説明する。
【0020】〔実施例1〕実施例のプラスチックフィル
ムは、図1に示すように、ポリエチレンテレフタートフ
ィルム(以下、PETフィルムと略称す)1上に酸化物
薄膜2が形成されている。酸化物薄膜2は本例では、I
23を主成分とするITO(In23−SnO2)か
らなる第一層膜21と、その上に形成されたSiO2
らなる第二層膜22とからなっている。そして、これら
ITOの第一層膜21及びSiO2の第二層膜22から
なる酸化物薄膜2と、PETフィルム1との間に、コー
ト液を析出することによって形成されたAg膜3が設け
られている。
【0021】このAg膜3は、予めPETフィルム1の
表面に銀コート液を塗布し、かつ低温で加熱乾燥するこ
とにより析出して形成される。
【0022】このようなAg膜3及び酸化物薄膜2を備
えたプラスチックフィルムを製作するには、次のように
して行う。
【0023】まず、硝酸銀5wt%の水溶液にアンモニ
ア水を加えて沈殿させ、該沈殿が溶解するまでさらにア
ンモニア水を加え続け、その溶解後、これにアセトアル
デヒドを3wt%添加して銀コート液を作製しておく。
次いで、作製した銀コート液にPETフィルム1を浸し
た後、該PETフィルム1をゆっくりと引き上げること
により、PETフィルム1に銀コート液を塗布する。そ
の後、銀コート付きのPETフィルム1を60℃で2〜
3分間程度乾燥させることにより、図1に示す如く、P
ETフィルム1の表面にAg膜3を析出して形成する。
【0024】また、PETフィルム1のAg膜3上に、
ITO微粒子分散シリカゾルを塗布し、これを60℃で
5分間加熱して乾燥することにより、PETフィルム1
のAg膜3上にITOからなる第一層膜21を形成す
る。さらに、第一層膜21の表面にシリカゾルを塗布
し、ITOの場合と同様60℃で5分間加熱して乾燥す
ることにより、第一層膜21上にSiO2からなる第二
層膜22を形成し、これにより、ITO/SiO2から
なる酸化物薄膜2を積層する。
【0025】但し、この状態では、何れの膜も触るだけ
で傷のつく弱い膜であるため、上記第二層膜22に低圧
紫外線ランプを120℃の温度で20分間照射し、これ
によってプラスチックフィルムを作製した。
【0026】このように、PETフィルム1上にAg膜
3を析出して形成した後、そのAg膜3上に塗布した第
一層膜21及び第二層膜22からなる酸化物薄膜2を低
温で乾燥し、かつ120℃の低温で紫外線を照射するこ
とにより形成するので、紫外線を照射したとき、該紫外
線をAg膜3によって反射させることができる。そのた
め、PETフィルム1中の有機物が紫外線によって分解
するおそれがなくなり、またAg膜3の形成に際しては
コート液を用いて低温で形成するので、PETフィルム
1が高温の影響を受けることもなく、従って、PETフ
ィルム1を保護することができる。しかも、Ag膜3に
よって反射した光が酸化物薄膜2に再度照射され、光照
射効率が向上し、酸化物薄膜を十分に燒結させることが
できる。
【0027】その結果、第一の従来技術に比較し、真空
装置等のように大がかりな装置が不要になるばかりでな
く、第二の従来技術に比較し、温度が低くとも酸化物薄
膜2を強固に形成することができ、また第三の従来技術
に比較し、PETフィルムにダメージを与えるおそれが
ない。
【0028】因みに、実施例の強度を比較するため、P
ETフィルム上にAg膜を用いないでITO膜/SiO
2膜の酸化物薄膜を直接形成したものを作製した。この
場合の酸化物薄膜も、120℃の低圧紫外線を照射しな
がら20分間で加熱形成した。
【0029】比較においては、消しゴム試験及び引張り
試験により強度を調べた。即ち、消しゴム試験では、本
例のAg膜3付きPETフィルム上の酸化物薄膜2と、
比較のPETフィルム上の酸化物薄膜とをそれぞれ20
0回こすったところ、何れも酸化物薄膜のSiO2膜に
傷が見られなかった。しかし、引張り試験においては、
本例のものが19.6MPaであるのに対し、比較のも
のは9.8MPaと半分の引張り強度しか得られなかっ
た。
【0030】これは、本例のようにAg膜3をコートし
たことにより、紫外線の影響をうけず、PETフィルム
1を保護できると共に、全体としての引張り強度が確実
に上がることが確認できた。また、消しゴム試験から、
強度の高いITO/SiO2積層膜付きPETフィルム
を作製できることが明らかである。
【0031】〔実施例2〕前述した実施例1ではITO
微粒子のバインダーとしてSiO2を用いたが、本実施
例においては他の酸化物で代用したものである。
【0032】即ち、順を追って述べると、PETフィル
ム1の表面に実施例1と同様にしてAg膜3を形成し、
次いでAg膜3上に実施例1と同様にしてITOからな
る第一層膜21を形成する。その後、第一層膜21の上
にバインダー用としての第二層膜22を形成する。この
場合の第二層膜22としては、イソプロポキシチタン,
イソプロポキシジルコニア,イソプロポキシスズ,イソ
プロポキシインジウムをそれぞれプロパノールに溶解
し、これらに微量の硝酸及び水を加えて攪拌することに
より、TiO2,ZrO2,SnO2,In23のゾル溶
液をそれぞれ作成する。この作成したTiO2,Zr
2,SnO2,In23それぞのゾル溶液中に、上記A
g膜3及び第一層膜21付きのPETフィルム1を浸し
た後に引き上げ、これを60℃で5分間加熱して乾燥
し、その後120℃の紫外線を20分間照射することに
より作成する。
【0033】第二層膜22として作成したそれぞれのT
iO2膜,ZrO2膜,SnO2膜,In23膜を有する
プラスチックフィルムについても、実施例1と同様に消
しゴム試験と引張り試験とを行った。その結果、引張り
試験は何れのものの19MPa以上であった。
【0034】一方、消しゴム試験ではTiO2膜,Zr
2膜が200回こすっても傷が付かないのに対し、S
nO2膜,In23膜のそれぞれが100回と半分でか
なりの傷が付いた。
【0035】この結果によれば、TiO2,ZrO2は実
施例1のようにSiO2からなる第二層膜膜22の場合
と同様、バインダーとして強い酸化物薄膜を得ることが
できる。しかし、SnO2,In23はそれ自身では膜
強度が不充分であるため、TiO2,ZrO2またはSi
2中に添加するか、あるいは酸化物微粒子を分散させ
る方が好ましいと云うことがわかった。
【0036】そこで、本例では、さらにTiO2,Zr
2それぞれの溶液中に、In23を主成分とするIT
Oの微粒子,あるいはSnO2を主成分とするATO微
粒子を分散させた溶液を作成し、これらをそれぞれPE
Tフィルム1の第一層膜21上にコートし、これを60
℃で乾燥した後、120℃で20分間紫外線を照射する
ことにより、ITO分散TiO2膜,ATO分散TiO2
膜,ITO分散ZrO2膜,ATO分散ZrO2膜をそれ
ぞれ形成する。それぞれのプラスチックフィルムについ
て消しゴム試験を行ったところ、何れの膜も200回こ
すっても傷が付かず、強固な酸化物薄膜を有するプラス
チックフィルムを得ることができた。
【0037】〔実施例3〕ところで、実施例1のプラス
チックフィルムは、第一層膜21として導電性のITO
微粒子が分散しており、さらにAg膜3が形成されてい
ることから導電性フィルムとなっている。しかし、Ag
膜3の膜厚が厚いと、プラスチックフィルム全体として
の透過性が無くなるため、本例では、透過性を必要とす
るプラスチックフィルムを得るようにしたものである。
【0038】例えば、硝酸銀として、wt%がそれぞれ
0.5と1.0と2.0と5.0と10と20との水溶
液にアンモニア水を加えて沈殿させ、該沈殿が溶解する
までさらにアンモニア水を加え続け、その溶解後、これ
にアセトアルデヒドを3wt%添加して銀コート液をそ
れぞれ作製しておく。次いで、作製した銀コート液にP
ETフィルム1を浸し、該PETフィルム1をゆっくり
と引き上げることにより、PETフィルム1に銀コート
液を塗布する。その後、銀コート付きのPETフィルム
1を60℃で乾燥させることにより、図2に示す如く、
PETフィルム1の表面にAg膜3を析出して形成す
る。
【0039】また、PETフィルム1のAg膜3上に酸
化物薄膜2としてシリカゾルを塗布し、これを60℃で
5分間乾燥した後、120℃で低圧紫外線ランプにより
20分間照射することにより、PETフィルム1とAg
膜3とSiO2からなる酸化物薄膜2との三層構造のプ
ラスチックフィルムを作成した。
【0040】この場合、Ag膜3については、硝酸銀濃
度の異なるそれぞれの溶液を用い、それぞれの溶液によ
って作成したプラスチックフィルムについて、透過率,
表面抵抗,膜厚を測定した結果を表1に示す。なお、膜
厚は酸化物薄膜2としてのシリカが表面にコーティング
されているため、フィルムを切断し、その断面をTEM
(透過型電子顕微鏡)を用いてAg膜3の厚さを測定し
た。
【0041】
【表1】
【0042】上記表1より、硝酸銀の濃度によりAg膜
3の膜厚を制御できることが理解できよう。但し、電子
顕微鏡の観察ではAg膜3の膜厚が5nm以下の極めて
薄いものの場合、Ag膜の付いていない部分もあり、均
一性に劣ることも分かった。また、膜厚の増加に伴い、
透過率が確実に小さくなるばかりでなく、表面抵抗もほ
ぼ小さくなることが分かった。これらの結果から総合す
ると、プラスチックフィルムに透過性が要求される場
合、Ag膜3の膜厚を30nm以下に、より正確には1
0〜30nmにすることが好ましい。また、導電性が要
求される場合は20nm以上にすることが好ましい。さ
らに、透過性と導電性との両方を満足するためには膜厚
が20〜30nmにする必要があることが望ましい。
【0043】〔実施例4〕実施例1では、ITOからな
る第一層膜21上にSiO2からなる第二層膜22が積
層されることにより、屈折率の異なる二種類の膜で反射
防止機能を果たしているが、本例では、その反射防止機
能をさらに良好にしたものである。
【0044】即ち、硝酸銀2wt%水溶液にアンモニア
を加えて沈殿させ、該沈殿が溶解するまでアンモニア水
を加え続け、その溶解後、これにアセトアルデヒドを5
wt%添加して銀コート液を作製し、この銀コート液に
PETフィルムを浸した後、該PETフィルムをを引き
上げることにより、PETフィルム上に銀コート液を塗
布する。その後、銀コート付きのPETフィルムを実施
例1と同様に60℃で乾燥し、PETフィルム1の表面
にAg膜3を析出して形成する。
【0045】次に酸化物薄膜2の第一層膜21として、
イソプロポキシチタン,イソプロポキシジルコニア,イ
ソプロポキシスズ,イソプロポキシインジウム,イソプ
ロポキシニオブを用意し、これらをそれぞれプロパノー
ルに溶解すると共に、微量の硝酸及び水を加えて攪拌す
ることにより、TiO2,ZrO2,SnO2,In
23,Nb25それぞれのゾル溶液を作製する。
【0046】このようにして作製したそれぞれのゾル溶
液を、PETフィルム1表面のAg膜3上に塗布し、こ
れを60℃で5分間加熱して乾燥することにより、酸化
物薄膜2としての第一層膜21をそれぞれ形成し、その
後、第一層膜21の表面にシリカゾルを塗布して同様に
60℃で5分間加熱し乾燥することにより酸化物薄膜と
しての第二層膜22を形成する。従って、Ag膜3上に
Ti02/SiO2と、ZrO2/SiO2と、SnO2
SiO2と、In23/SiO2と、Nb25/SiO2
とのそれぞれからなる積層膜を別個に形成する。
【0047】次に、作製したそれぞれの酸化物薄膜を1
20℃で紫外線を20分照射することによりプラスチッ
クフィルムを作製する。
【0048】上記の如き作製した積層膜の反射率を測定
したところ、以下の表2の結果となった。なお、反射率
は視感感度が最も大きい波長である560nmの値を評
価した。
【0049】
【表2】
【0050】表2により、反射率は何れもフィルム表面
反射率より低くなり、反射防止特性を有したプラスチッ
クフィルムを作製することができる。また、表面抵抗を
測定した結果、何れのフィルムも108Ω/□代の値で
あり、帯電防止効果も有している。このように、Ag膜
3付きPETフィルム1上に、第一層膜21と第二層膜
22とからなる酸化物薄膜2を積層することにより、反
射防止機能と帯電防止機能とを有するプラスチックフィ
ルムを得ることができる。
【0051】ところで、上記プラスチックフィルムは、
酸化物薄膜2を低温で形成しており、屈折率の値が酸化
物本来の値となっていない。
【0052】そこで、第一層膜21の屈折率を大きくす
るため、PETフィルム上に以下の表3に示す如き材質
の第一層膜を形成し、その反射率を調べた。
【0053】
【表3】
【0054】結果は、上記のように反射率が何れも1%
以下となったが、第一層膜21としては、所望のものを
それぞれ個々に選択してもよいが、何れかを組み合わせ
てもよいものである。このように高屈折率を有するTi
2,Nb25,ZrO2の何れかまたは混合系に、Ti
2,Nb25,ITO,ATOからなる酸化物微粒子
を分散することで優れた反射防止特性を有するプラスチ
ックフィルムを得ることができる。
【0055】〔実施例5〕前述した実施例3の結果か
ら、透過率80%以上では表面抵抗が107(Ω/□)
以上で、かつ104(Ω/□)以下の導電性フィルムと
するには、Ag膜3だけでは不可能であることがわかっ
た。そこで、本例では、透明導電性酸化物を積層するこ
とにより、透過率80%以上で、かつ低抵抗化が可能か
否かを調べた。
【0056】即ち、硝酸Ag2wt%の水溶液から実施
例4と同様にすることにより、PETフィルム1上にA
g膜3を析出して形成する。
【0057】次に、そのAg膜3の表面上に、ITO微
粒子分散液をそれぞれ1.0,2.0,5.0,10w
t%塗布し、これらを60℃で5分間乾燥することによ
りITOからなる第一層膜21を形成し、この第一層膜
21上に保護膜としてシリカゾルを塗布し、これを60
℃で5分間乾燥してAg膜3上にITO/SiO2の酸
化物薄膜2を形成し、これに前述した実施例と同様にし
て紫外線を照射することにより、プラスチックフィルム
を作製した。
【0058】この作製したプラスチックフィルムの透過
率及び表面抵抗を測定したところ、以下の表4の結果と
なった。なお、プラスチックフィルムの断面をTEM
(透過型電子顕微鏡)で観察したところ、第二層膜22
中のSiO2が第一層膜21のITOの微粒子間に侵入
していた。従って、酸化物薄膜2としては、ITO微粒
子がSiO2中に分散した状態になっていることが確認
された。
【0059】
【表4】
【0060】上記表4より、Ag膜3が薄くかつ抵抗が
高い場合でも、酸化物薄膜2のITO微粒子が分散する
ことにより、低抵抗化できることが確認された。この場
合、ITO膜の代わりとして、ATO微粒子を用いて同
様に第一層膜22を作製した結果、表面抵抗が10
4(Ω/□)代の導電性プラスチックフィルムが得られ
た。
【0061】このようなプラスチックフィルムは、酸化
物薄膜2としての第一層膜21では膜強度がないため、
上述の如くSiO2からなる第二層膜22を保護膜とし
ているが、該保護膜としてはSiO2の他、実施例2に
おいて前述した如く、TiO2またはZrO2を用いるこ
ともできる。
【0062】そこで、SiO2の代わりに、TiO2また
はZrO2を保護膜として同様にプラスチックフィルム
を作製し、その表面抵抗を測定すると共に、消しゴム試
験を行った。その結果は、何れの膜も抵抗値が10
4(Ω/□)代の値であり、消しゴム試験では200こ
すっても傷のない強い膜を得ることがわかった。
【0063】このように、保護膜としてのSiO2,T
iO2,ZrO2膜の何れかに、導電性酸化物であるAT
O微粒子とITO微粒子との何れかを分散させることに
より、透過率が約80%以上で、かつ抵抗の低い透明導
電性プラスチックフィルムを製作することができる。
【0064】なお、これまで述べた実施例1〜5の各々
では、硝酸銀に基づいてAg膜3を形成した例を示した
が、Ag膜3の代わりとしてCu膜を形成しても、Ag
膜3の場合とほぼ同様の結果を得ることができ、Cu膜
も有効である。このようなAg,Cuのコート液は、以
下のように作製したAgあるいはCu微粒子分散液を用
いることができる。
【0065】例えば、直径1mmのAgあるいはCu線
で電極を形成し、これに30〜100Vの直流電源と可
変抵抗をつなぐ。また、蒸留水を蒸発皿に入れ、氷で冷
やしておく。次に、蒸留水中でAgあるいはCu電極を
接触させてから静かに話し、アークを生じさせると、A
g(Cu)の微粒子分散液が得られる。このときの電流
は5Aくらいになるように可変抵抗で調節する。
【0066】また、分散液を蒸留水ではなく、有機溶媒
(エタノール,プロバノールなど)を用いるときは、直
流でなく高周波の交流を用いれば、作製することができ
る。このようにして得られたAg,Cu微粒子分散液を
コート液に用いれば、フィルム上にコーティングして乾
燥することにより、簡単にAg,Cu膜を得ることがで
きる。
【0067】
【発明の効果】以上述べたように、本発明の請求項1〜
3によれば、酸化物薄膜とプラスチックフィルムとの間
に、コート液から析出して形成されたAg膜と塗布によ
って形成されたCu膜との何れか一方の薄膜を形成した
ので、酸化物薄膜に紫外線を照射したとき、該紫外線を
前記一方の薄膜によって反射させることができ、また一
方の薄膜を低温で形成したとき、プラスチックフィルム
が高温の影響を受けることがないことにより、プラスチ
ックフィルムを確実に保護できる。従って、真空装置等
のように大がかりな装置が不要になるばかりでなく、温
度が低くとも酸化物薄膜2を強固に形成することがで
き、プラスチックフィルムにダメージを与えるおそれが
ない結果、低温で高強度の酸化物薄膜を容易に形成で
き、しかも低廉化を図り得る効果がある。
【0068】また、請求項4,5によれば、優れた反射
防止特性を有するプラスチックフイルムを得ることがで
きる効果がある。請求項6,7によれば、抵抗の低いプ
ラスチックフイルムを得ることができ、特に請求項7に
よれば、透過率が高くかつ抵抗の低い透明導電性プラス
チックを容易に得ることができる効果がある。
【0069】そして、請求項8,9によれば、プラスチ
ックフィルムの表面上に、コート液から析出して形成さ
れたAg膜と塗布によって形成されたCu膜との何れか
一方の薄膜を設け、次いで、何れか一方の薄膜上に、T
iO2とZrO2とIn23とSnO2とNb25との何
れか一種類をコーティングしかつ乾燥して酸化物薄膜と
しての第一層膜を形成し、さらに、第一層膜上に、Ti
2とZrO2とIn23とSnO2とSiO2との何れか
一種類をコーティングしかつ乾燥して酸化物薄膜として
の第二層膜を形成した後、第二層膜に向かって紫外線を
低温照射して酸化物薄膜を燒結するように構成したの
で、低温で高強度の酸化物薄膜を備えたプラスチックフ
ィルムを的確に製造し得る効果がある。特に請求項9に
よれば、透過率が高くかつ抵抗の低い透明導電性プラス
チックを的確に製造し得る効果がある。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明のプラスチックフィルムの実施例1,実
施例2,実施例4,実施例5を示す断面図。
【図2】本発明のプラスチックフィルムの実施例3を示
す断面図。
【符号の説明】
1…PETフィルム、2…酸化物薄膜、21…第一層
膜、22…第二層膜、3…Ag膜。
フロントページの続き (72)発明者 大石 知司 茨城県日立市大みか町七丁目1番1号 株 式会社日立製作所日立研究所内 (72)発明者 高橋 研 茨城県日立市大みか町七丁目1番1号 株 式会社日立製作所日立研究所内 (72)発明者 長井 陽三 大阪府茨木市下穂積一丁目1番2号 日東 電工株式会社内 (72)発明者 古内 浩二 大阪府茨木市下穂積一丁目1番2号 日東 電工株式会社内

Claims (9)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 プラスチックフィルム上に酸化物薄膜を
    形成したものにおいて、酸化物薄膜とプラスチックフィ
    ルムとの間に、コート液から析出して形成されるか、ま
    たは塗布によって形成されたAg膜と塗布によって形成
    されたCu膜との何れか一方の薄膜を形成することを特
    徴とする酸化物薄膜を備えたプラスチックフィルム。
  2. 【請求項2】 プラスチックフィルム上に酸化物薄膜を
    形成したものにおいて、酸化物薄膜とプラスチックフィ
    ルムとの間に、コート液から析出して形成されるか、ま
    たは塗布によって形成されたAg膜と塗布によって形成
    されたCu膜との何れか一方の薄膜を形成し、該一方の
    薄膜の表面上に前記酸化物薄膜として、少なくともTi
    2とZrO2とIn23とSnO2との何れか一種類に
    より形成された第一層膜と、該第一層膜上にコーティン
    グしかつ乾燥によって形成された第二層膜とからなるこ
    とを特徴とする酸化物薄膜を備えたプラスチックフィル
    ム。
  3. 【請求項3】 前記第二層膜は、TiO2とZrO2とI
    23とSnO2とSiO2との何れか一種類からなるこ
    とを特徴とする請求項2に記載の酸化物薄膜を備えたプ
    ラスチックフイルム。
  4. 【請求項4】 プラスチックフィルム上に酸化物薄膜を
    形成したものにおいて、酸化物薄膜とプラスチックフィ
    ルムとの間に、コート液から析出して形成されるか、ま
    たは塗布によって形成されたAg膜と塗布によって形成
    されたCu膜との何れか一方の薄膜を形成し、前記酸化
    物薄膜として、前記一方の薄膜上に形成される第一層膜
    と、該第一層膜の上に形成される第二層膜とからなり、
    第一層膜の屈折率が第二層膜の屈折率より大きい部材で
    形成したことを特徴とする酸化物薄膜を備えたプラスチ
    ックフィルム。
  5. 【請求項5】 前記酸化物薄膜は、少なくともTiO2
    とZrO2とIn23とSnO2とNb25との何れか一
    種類をコーティングしかつ乾燥して第一層膜を形成する
    と共に、該第一層膜上にSiO2をコーティングしかつ
    乾燥して第二層膜を形成することを特徴とする請求項4
    に記載の酸化物薄膜を備えたプラスチックフィルム。
  6. 【請求項6】 プラスチックフィルム上に酸化物薄膜を
    形成したものにおいて、酸化物薄膜とプラスチックフィ
    ルムとの間に、コート液から析出して形成されるか、ま
    たは塗布によって形成されたAg膜と塗布によって形成
    されたCu膜との何れか一方の薄膜を形成し、該一方の
    薄膜の表面上に、コーティングしかつ乾燥して導電性を
    有する酸化物薄膜を形成することを特徴とする酸化物薄
    膜を備えたプラスチックフィルム。
  7. 【請求項7】 前記導電性を有する酸化物薄膜は、前記
    一方の薄膜の表面上にコーティングしかつ乾燥して形成
    され、In23とSnO2との何れかを主成分とする第
    一の導電性薄膜と、該第一の導電性薄膜の上にコーティ
    ングしかつ乾燥して形成され、かつ第一の導電性薄膜の
    微粒子間に分散すると共に、SiO2,TiO2,ZrO
    2の少なくとも何れか一種類からなる第二層膜とからな
    ることを特徴とする請求項6に記載の酸化物薄膜を備え
    たプラスチックフィルム。
  8. 【請求項8】 プラスチックフィルム上に酸化物薄膜を
    形成する方法において、プラスチックフィルムの表面上
    に、コート液から析出して形成されるか、または塗布に
    よって形成されたAg膜と塗布によって形成されたCu
    膜との何れか一方の薄膜を設け、次いで、何れか一方の
    薄膜上に、TiO2とZrO2とIn23とSnO2とN
    25との何れか一種類をコーティングしかつ乾燥して
    酸化物薄膜としての第一層膜を形成し、さらに、第一層
    膜上に、TiO2とZrO2とIn23とSnO2とSi
    2との何れか一種類をコーティングしかつ乾燥して酸
    化物薄膜としての第二層膜を形成した後、第二層膜に向
    かって紫外線を低温照射して酸化物薄膜を燒結すること
    を特徴とする酸化物薄膜を備えたプラスチックフィルム
    の製造方法。
  9. 【請求項9】 プラスチックフィルム上に酸化物薄膜を
    形成する方法において、プラスチックフィルムの表面上
    に、コート液から析出して形成されるか、または塗布に
    よって形成されたAg膜と塗布によって形成されたCu
    膜との何れか一方の薄膜を形成し、次いで、何れか一方
    の薄膜上に、In23とSnO2との何れか一種類をコ
    ーティングしかつ乾燥して酸化物薄膜としての第一層膜
    を形成し、さらに、第一層膜上に、SiO2とTiO2
    ZrO2との少なくとも何れか一種類をコーティングし
    かつ乾燥して酸化物薄膜としての第二層膜を形成した
    後、第二層膜に向かって紫外線を低温照射して酸化物薄
    膜を燒結することを特徴とする酸化物薄膜を備えたプラ
    スチックフィルムの製造方法。
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JP5296691B2 (ja) * 2007-08-29 2013-09-25 旭硝子株式会社 導電体層の製造方法

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