JPH10138029A - スローアウェイ式カッター、それに使用するチップ及びｈ形鋼の開先部の加工方法 - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 （修正有） 【課題】スローアウェイ式カッターによって比較的曲率
半径が小さく、異なる曲率半径の円弧部を有する切欠部
を切削する場合に単種のチップで対応でき、チップ寿命
を向上させる。 【解決手段】カッター基体１は、本質的に直円柱状で中
心部には取着軸孔を有し、側面１２と底面１１とを円弧
状に交わるよう形成し、この円弧状部から側面１２にか
けてはチップ溝１３、１３ａが傾斜を設けて配列してあ
る。チップ溝１３、１３ａはチップ固着凹部１３１と切
屑ポケット１３２を備えている。チップ溝１３、１３ａ
のチップ固着凹部１３１には、切刃側が回転方向に向け
て所要の掬い角を形成するようにチップＴ１、Ｔ２、Ｔ
３が固着し、円弧状部に設置されているチップＴ１、Ｔ
２は、カッター基体１の回転に伴う切刃稜ｒ１、ｒ２の
回転軌跡が、切削を予定した円弧部と本質的に同じ円弧
を描くように配置される。

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【発明の属する技術分野】本発明はスローアウェイ式カ
ッター、それに使用するチップ及びＨ形鋼の開先部の加
工方法に関するものである。更に詳しくは、切削される
円弧部の曲率半径が比較的小さい場合でも、単種のチッ
プで異なる曲率半径の円弧部の切削に対応でき、チップ
の寿命も向上させることができるスローアウェイ式カッ
ター、それに使用するチップ及びＨ形鋼の開先部の加工
方法に関する。

【０００２】

【従来の技術】Ｈ形鋼で形成される柱と梁の接合におい
ては、梁の接合端部に開先加工が施される。従来の開先
加工部の施工構造の一例を図８を参照して説明する。図
８はＨ形鋼の下部フランジ部分の構造を示している。Ｈ
形鋼８のフランジ８１の先端部は全幅にわたりスローア
ウェイ式カッターで切削されており、端面８２は所要角
度で傾斜している。ウェブ８３の先端部は図に示すよう
に二箇所の円弧部８４１、８４２を含む切欠部８４が同
じくスローアウェイ式カッターで切削されて形成されて
いる。そして、フランジ８１先端部はブラケット８５を
設けて仮止めをした後、全幅にわたり溶接されている。

【０００３】一方、ウェブ８３の切欠部８４は円弧部を
含んでいるが、径小な円弧部を切削する場合、スローア
ウェイ式カッターには図９（ａ）、（ｂ）に示すような
チップを使用していた。（ａ）は円板状のチップ、
（ｂ）は円弧部を有する異形チップである。円弧部の曲
率半径が小さい場合、そのサイズ的制約から、円弧部全
部の切削を単種のチップでまかなう必要がある。このた
め、上記各チップは切刃稜が切欠部の円弧形状と同じに
なるように形成され、切刃稜の形状がそのまま切削部に
表われるようにチップの切刃側の表面が切削面とほぼ直
角に当たるようにしてカッター基体に装着されていた。

【０００４】

【発明が解決しようとする課題】けれども、上記したよ
うなＨ形鋼の開先部の従来の加工方法及び径小な円弧部
が切削可能なスローアウェイ式カッターには、次のよう
な課題があった。まず、Ｈ形鋼の開先部の加工形状は切
欠部が大きく、かつ応力集中を防止して地震等による破
壊が起こりにくいようにする円弧部が二箇所にある。こ
れによりカッターの構造が複雑になるか、あるいは二種
類のカッターが必要になり、加工にも手間がかかる。

【０００５】一方、従来のスローアウェイ式カッターに
よって比較的曲率半径が小さい円弧部を有する切欠部を
切削する場合、異なる曲率半径の円弧部を有する切欠部
を切削するには、その曲率半径専用のチップをそれぞれ
用意する必要がある。このため、製造者側ではチップそ
れぞれに金型が必要であるのでチップ供給のためのコス
トが高くなり、使用者側では維持費用が高くなる。

【０００６】また、従来型のチップは切刃側の表面が切
削面とほぼ直角に当たるようカッター基体に装着されて
いるために、切削時に大きな負荷がかかり、チップの摩
滅が早い。しかも、使用可能な切刃稜は表裏それぞれ一
箇所ずつの合計二箇所だけであるので、付け替え使用は
一回しかできず、不経済である。

【０００７】本発明は上記課題を解消するもので、Ｈ形
鋼の開先部の加工形状を簡単にして加工が容易にできる
Ｈ形鋼の開先部の加工方法を提供することを目的とす
る。また、スローアウェイ式カッターを使用し、曲率半
径が比較的小さく異なる曲率半径の円弧部を有する切欠
部を切削する場合でも、単種のチップの組み合わせによ
りそれぞれの曲率半径に対応でき、チップの摩滅も少な
く耐久性に優れたスローアウェイ式カッターを提供する
ことを目的とする。更には、単種かつ複数の切刃稜の組
み合わせにより、異なる曲率半径の円弧部をトレースす
ることができ、付け替え使用が複数回にわたり可能で経
済的なチップを提供することを目的とする。

【０００８】

【課題を解決するための手段】上記目的を達成するため
に講じた本発明の手段は次のとおりである。第１の発明
にあっては、スローアウェイ式カッターであって、本質
的に直円柱状で中心部には取着軸孔を有し、側面と底面
とが交わる部分のうちの少なくとも一方は円弧状に形成
してあるカッター基体と、当該カッター基体の上記円弧
状部から側面にかけて傾斜を設けて配列してあり、切刃
側が回転方向に向けて所要の掬い角を形成するよう固着
してあるチップと、を備えており、上記円弧状部に設置
されているチップは、カッター基体の回転に伴う切刃稜
の回転軌跡が、切削を予定した円弧部と本質的に同じ円
弧を描くように配置されている、スローアウェイ式カッ
ターである。

【０００９】第２の発明にあっては、スローアウェイ式
カッターであって、本質的に直円柱状で中心部には取着
軸孔を有し、側面と底面とが交わる部分のうちの少なく
とも一方は円弧状に形成してあるカッター基体と、当該
カッター基体の上記円弧状部から側面にかけて傾斜を設
けて配列してありチップ固着凹部と切屑誘導凹部を備え
ている複数列のチップ溝と上記チップ溝のチップ固着凹
部に切刃側が回転方向に向けて所要の掬い角を形成する
よう固着してあるチップと、を備えており、上記円弧状
部に設置されているチップは、カッター基体の回転に伴
う切刃稜の回転軌跡が、切削を予定した円弧部と本質的
に同じ円弧を描くように配置されている、スローアウェ
イ式カッターである。

【００１０】第３の発明にあっては、スローアウェイ式
カッターに使用するチップであって、表面側と裏面側に
曲率半径の小さい切刃稜を各々三箇所に有し、当該曲率
半径の小さい切刃稜を結ぶ曲率半径の大きい切刃稜を三
箇所に有し、上記曲率半径の小さい切刃稜の中心は同面
側において相互に同距離にある、チップである。

【００１１】第４の発明にあっては、チップとして第３
の発明に係るチップを使用した、第１または第２の発明
に係るスローアウェイ式カッターである。

【００１２】第５の発明にあっては、Ｈ形鋼の開先部の
加工方法であって、接合端部のウェブに設けられる切欠
部を構成する縦方向と横方向及びそれらを繋ぐ円弧部の
切削面を同時に設けるステップ、接合端部のフランジを
上記切欠部より基部側で先端面を傾斜させ除去するステ
ップ、を含む、Ｈ形鋼の開先部の加工方法である。

【００１３】（作 用）本発明に係るスローアウェイ式
カッターにあっては、チップはカッター基体の円弧状部
から側面にかけて傾斜を設けて配列してあり、切刃側が
回転方向に向けて所要の掬い角を形成するよう固着して
あるので、チップの切刃側が切削面とほぼ直角になるよ
う固着してある曲率半径が比較的小さい円弧部を切削可
能な従来型のものと比較してチップにかかる負荷が小さ
く、チップが摩滅しにくく耐久性に優れている。

【００１４】またチップは、カッター基体の回転に伴う
切刃稜の回転軌跡が、切削を予定した円弧部と本質的に
同じ円弧を描くようになっている。これにより、チップ
の切刃側の掬い角及びチップの方向、位置を調整するこ
とによって、切刃稜の回転軌跡を曲率が異なる円弧部に
本質的に対応させることが可能になる。従って、従来型
のものと相違して異なる曲率半径を有する円弧部ごとに
専用のチップを必要とせず、製造者側ではチップ供給の
ためのコストが安価になり、使用者側では維持費用が安
価にすむ。

【００１５】チップが、カッター基体の底面から側面に
かけて傾斜を設けて配列されているチップ溝のチップ固
着凹部に固着してあるものにあっては、チップの切刃稜
で削られた切屑が切屑誘導凹部に誘導され弾かれるよう
にしてカッター基体の周囲へ飛ばされる。このように、
チップ溝によって切屑の飛散方向がある程度制御される
ので、作業がしやすく、切削効率も良好になる。

【００１６】表面側と裏面側に曲率半径の小さい切刃稜
をそれぞれ三箇所に有し、曲率半径の小さい切刃稜を結
ぶ曲率半径の大きい切刃稜を三箇所に有し、曲率半径の
小さい切刃稜の中心は同面側において相互に同距離にあ
るチップにあっては、カッター基体に固着されるチップ
の切刃側の掬い角及びチップの方向、位置を調整するこ
とによって、切刃稜の回転軌跡を曲率が異なる円弧部に
本質的に対応させることが可能になる。

【００１７】すなわち、曲率半径の大きい各切刃稜をつ
なぐ曲率半径の小さい各切刃稜が円弧状であるため、切
刃稜が描く回転軌跡が滑らかになり円弧部に沿わせやす
い。また、複数のチップの切刃稜で描く回転軌跡の組合
せによって切削を予定した円弧部に沿わせるので、チッ
プの切刃部として一本の曲率半径の大きい切刃稜と一本
の曲率半径の小さい切刃稜を使用するように設計するこ
とが可能である。この場合においては、一つのチップで
片面で三回、両面では六回にわたり使用できるので、掬
い角をもって固着されることにより耐久性に優れている
こととも相まって、維持費を安価にすることができる。

【００１８】本発明に係るＨ形鋼の開先部の加工方法に
あっては、接合端部のウェブに設けられる切欠部を構成
する縦方向と横方向及びそれらを繋ぐ円弧部の切削面を
同時に設け、接合端部のフランジを切欠部より基部側で
先端面を傾斜させ除去するだけでよいので、従来の加工
方法と比較して簡単に作業ができる。また、形成される
切欠部の円弧部分は一箇所だけであるので、カッターの
構造も簡単な構造にできる。更には、切欠部を構成する
縦方向と横方向及びそれらを繋ぐ円弧部の切削面を同時
に設けるので、作業効率がよく、使用するカッターの数
も低減できる。

【００１９】

【発明の実施の形態】本発明の実施の形態を図面に基づ
き更に詳細に説明する。図１は本発明に係るスローアウ
ェイ式カッターの一実施の形態を示す正面図、図２は図
１のスローアウェイ式カッターの平面図、図３は本発明
に係るチップの一実施の形態を示す説明図、図４はスロ
ーアウェイ式カッターに装着された二個のチップの切刃
稜がトレースする線と理論線を比較した説明図である。

【００２０】符号Ｃはスローアウェイ式カッターで、本
質的に直円柱状でクロムモリブデン鋼製のカッター基体
１を有している。カッター基体１の中心部には回転軸に
取り付けるための取着軸孔１０が軸方向に貫通して設け
てある。また、カッター基体１の先部外周部は円弧状に
形成してある。カッター基体１にはチップ溝１３、１３
ａが先端面１１から側面１２にかけて傾斜を設けて複数
配列してある。チップ溝はチップ溝１３、１３ａを一組
とし、合計三組が設けてあり、六本の各溝は周方向へ等
間隔で設けてある。なお、各溝の傾斜方向は図１におい
て右下がりの螺旋状に設けてある。

【００２１】チップ溝１３、１３ａはそれぞれチップ固
着凹部１３１と切屑誘導凹部である切屑ポケット１３２
を備えており、切屑ポケット１３２は連設されて一本の
溝を形成している。チップ溝１３は上部（図１におい
て）始点がチップ溝１３ａより上にあり、チップ溝１３
の回転方向（図２に矢印で図示）と反対側には溝部に沿
って等間隔で六箇所にチップ固着凹部１３１が設けてあ
る。チップ溝１３の回転方向側には、それぞれのチップ
固着凹部１３１に対応して陵部を円弧状とした上記切屑
ポケット１３２が設けてある。

【００２２】また、チップ溝１３ａは上記チップ溝１３
とほぼ同様の構造であるが、上部始点が低い分だけ全長
がやや短く、チップ固着凹部１３１が設けられているの
は一箇所少なく五箇所である。また、チップ溝１３ａの
チップ固着凹部１３１は、それぞれ軸方向においてチッ
プ溝１３の各チップ固着凹部１３１の中間に位置するよ
う設けてある。そして、各チップ固着凹部１３１にはチ
ップＴ１、Ｔ２、Ｔ３が固着されている。なお、チップ
Ｔ１、Ｔ２、Ｔ３を固着する固着手段は特に限定せず公
知手段（例えば、実開昭５８−１７７２１５号公報記載
の固着装置、またはボルトでチップを直接固定する手
段）を用いるので、本例では詳細な説明を省略する。

【００２３】図３を参照する。図３はチップの正面図と
縦断面図を表している。後述するＨ型鋼の切欠部の円弧
部は各チップ溝１３の最上部にあるチップＴ１と各チッ
プ溝１３ａの最上部にあるチップＴ２によって切削され
る。また、チップＴ１は直線の横切削面も併せて切削す
る。他のチップＴ３は直線の縦切削面を切削する。な
お、説明の便宜上、チップＴ１、Ｔ２、Ｔ３は異なる符
号となっているが、構造は同じである。

【００２４】チップＴ１、Ｔ２、Ｔ３は超硬またはサー
メット製である。チップＴ１、Ｔ２、Ｔ３は表面側と裏
面側に曲率半径Ｒ１の曲率半径の小さい切刃稜ｒ１をそ
れぞれ三箇所に有し、各曲率半径の小さい切刃稜ｒ１を
接線方向に結ぶ曲率半径Ｒ２の曲率半径の大きい切刃稜
ｒ２を三箇所に有している。そして、各曲率半径の小さ
い切刃稜ｒ１の中心１４０は同面側において相互に同距
離にあり、それらを直線で結ぶと正三角形になる。チッ
プＴ１、Ｔ２、Ｔ３の中心部にはチップ固着用の孔１４
が設けてある。孔１４の両側の開口部は皿ぐりされてい
る。

【００２５】各チップＴ１、Ｔ２、Ｔ３は固着手段を介
し、チップ固着凹部１３１に切刃側が回転方向に向けて
所要の掬い角を形成するよう固着してある。上記したよ
うに、Ｈ型鋼の切欠部の円弧部は各チップ溝１３の最上
部にあるチップＴ１と各チップ溝１３ａの最上部にある
チップＴ２によって切削される。

【００２６】ここで、図４を参照する。図４から分かる
ように、本例では切削される円弧部の上側約１／２はチ
ップＴ１によって切削され、下側の約１／２はチップＴ
２によって切削される。このように、チップＴ１、Ｔ２
は切刃稜ｒ１、ｒ２の回転軌跡が円弧部をほぼトレース
しながら回転移動するようにチップの切刃側の掬い角及
びチップの方向、位置が設定されている。なお、チップ
Ｔ３は切刃稜ｒ２のみの回転軌跡が軸方向に直線を描き
ながら回転移動するようにチップの切刃側の掬い角及び
チップの方向、位置が設定されている。

【００２７】（作 用）図５は本発明に係るＨ形鋼の開
先部の加工方法の説明図、図６は開先加工をしたＨ形鋼
の開先部の形状を示す要部斜視図、図７は開先加工部の
施工構造を示す説明図である。図を参照して本発明の実
施の形態の作用を説明する。スローアウェイ式カッター
Ｃは図５に示すように使用され、Ｈ形鋼２の開先部の加
工を行う。その手順は、まず接合端部のウェブ２１に縦
切削面２２、横切削面２３及び円弧部２４からなる切欠
部２０を同時に設ける。

【００２８】次に、接合端部のフランジ２５を専用のス
ローアウェイ式カッター（図示省略）により切欠部２０
より基部側で全幅にわたり切削する。フランジ２５の開
先面２６は本例では垂直面と３５°で傾斜させてある。
この方法によれば、従来の加工方法と比較して簡単に作
業ができる。また、形成される切欠部２０の円弧部２４
は一箇所だけであるので、カッターの構造も簡単な構造
にできる。更には、切欠部を構成する縦方向と横方向及
びそれらを繋ぐ円弧部の切削面を同時に設けるので、作
業効率がよく、使用するカッターの数も低減できる。な
お、Ｈ形鋼２の接合は柱面３０とウェブ２１先端面とを
突き合わせ、フランジ２５の内面にブラケット３１を配
置し、フランジ２５の開先面２６と柱面３０を溶接して
行われる。

【００２９】切削時におけるスローアウェイ式カッター
Ｃの作用は次の通りである。スローアウェイ式カッター
Ｃは、チップＴ１、Ｔ２、Ｔ３がカッター基体１の先端
面１１から側面１２にかけて捩れ方向に傾斜して配列し
てあり、切刃側が回転方向に向けて所要の掬い角を形成
するよう固着してあるので、従来のようにほぼ直角に当
る場合と比較してチップＴ１、Ｔ２、Ｔ３にかかる負荷
が軽減され、摩滅しにくく耐久性に優れている。

【００３０】またチップＴ１、Ｔ２は、カッター基体１
の回転に伴う切刃稜ｒ１、ｒ２の回転軌跡の組合せによ
り、切削を予定した円弧部（結果として円弧部２４）と
本質的に同じ円弧を描くように設定してある。この構造
では、チップＴ１、Ｔ２の切刃側の掬い角及びチップＴ
１、Ｔ２の固着位置を調整することによって、切刃稜ｒ
１、ｒ２の回転軌跡を曲率半径が異なる円弧部に本質的
に対応させることが可能になる。従って、チップの切刃
側の掬い角とチップの位置がチップ固着凹部１３１によ
ってあらかじめ設定された複数の種類のカッター基体１
を用意することにより、異なる円弧部ごとに専用のチッ
プを必要とせず、製造者側ではチップ供給のためのコス
トが安価になり、使用者側では維持費用が安価にすむ。

【００３１】チップＴ１、Ｔ２、Ｔ３が固着されている
チップ溝１３、１３ａには切屑ポケット１３２を備えて
いるので、チップＴ１、Ｔ２、Ｔ３の切刃稜ｒ１、ｒ２
で削られた切屑が切屑ポケット１３２に誘導され弾かれ
るようにしてカッター基体１の周囲へ飛ばされる。この
ように、チップ溝によって切屑の飛散方向がある程度制
御されるので、作業がしやすく、切削効率も良好であ
る。

【００３２】チップＴ１、Ｔ２、Ｔ３は、曲率半径の大
きい各切刃稜ｒ２をつなぐ曲率半径の小さい各切刃稜ｒ
１が円弧状であるため、切刃稜ｒ１、ｒ２が描く回転軌
跡が滑らかになり、円弧部に沿わせやすい。また、複数
のチップＴ１、Ｔ２の切刃稜ｒ１、ｒ２で描く回転軌跡
の組合せによって円弧部２４に沿わせるので、チップ
（本例ではＴ２）の切刃部として一本の曲率半径の大き
い切刃稜ｒ２と一本の曲率半径の小さい切刃稜ｒ１を使
用するように設計することが可能である。

【００３３】従って、チップＴ２の場合は、一つのチッ
プを回したり反転させたりして使用することにより片面
で三回、両面では六回にわたり使用できるので、掬い角
をもって固着されることにより耐久性に優れていること
とも相まって、維持費を安価にすることができる。ま
た、カッター基体１の側面１２に配置されているチップ
Ｔ３は切刃部として一本の曲率半径の大きい切刃稜ｒ２
のみを使用しているが、チップＴ２と同様に六回にわた
り使用できる。なお、図４において、チップＴ１は切刃
稜ｒ１とその両側の二つの切刃稜ｒ２で円弧部を描くよ
うに設定してあるが、上部側の切刃稜ｒ２は陵線が回転
方向とそれ程角度を持たないので切削量が少なく、摩耗
が少ない。従って、上記チップＴ２、Ｔ３と同様に両面
で六回使用することも可能である。

【００３４】なお、本明細書で使用している用語と表現
はあくまで説明上のものであって、限定的なものではな
く、上記用語、表現と等価の用語、表現を除外するもの
ではない。また、本発明は図示の実施の形態に限定され
るものではなく、技術思想の範囲内において種々の変形
が可能である。

【００３５】

【発明の効果】本発明は上記構成を備え、次の効果を有
する。 （ａ）本発明に係るスローアウェイ式カッターにあって
は、チップはカッター基体の円弧状部から側面にかけて
傾斜を設けて配列してあり、切刃側が回転方向に向けて
所要の掬い角を形成するよう固着してあるので、チップ
の切刃側が切削面とほぼ直角になるよう固着してある曲
率半径が比較的小さい円弧部を切削可能な従来型のもの
と比較してチップにかかる負荷が小さく、チップが摩滅
しにくく耐久性に優れている。

【００３６】（ｂ）チップは、カッター基体の回転に伴
う切刃稜の回転軌跡が、切削を予定した円弧部と本質的
に同じ円弧を描くようになっている。これにより、チッ
プの切刃側の掬い角及びチップの方向、位置を調整する
ことによって、切刃稜の回転軌跡を曲率が異なる円弧部
に本質的に対応させることが可能になる。従って、従来
型のものと相違して異なる曲率半径を有する円弧部ごと
に専用のチップを必要とせず、製造者側ではチップ供給
のためのコストが安価になり、使用者側では維持費用が
安価にすむ。

【００３７】（ｃ）チップが、カッター基体の底面から
側面にかけて傾斜を設けて配列されているチップ溝のチ
ップ固着凹部に固着してあるものにあっては、チップの
切刃稜で削られた切屑が切屑誘導凹部に誘導され弾かれ
るようにしてカッター基体の周囲へ飛ばされる。このよ
うに、チップ溝によって切屑の飛散方向がある程度制御
されるので、作業がしやすく、切削効率も良好になる。

【００３８】（ｄ）表面側と裏面側に曲率半径の小さい
切刃稜をそれぞれ三箇所に有し、曲率半径の小さい切刃
稜を結ぶ曲率半径の大きい切刃稜を三箇所に有し、曲率
半径の小さい切刃稜の中心は同面側において相互に同距
離にあるチップにあっては、カッター基体に固着される
チップの切刃側の掬い角及びチップの方向、位置を調整
することによって、切刃稜の回転軌跡を曲率が異なる円
弧部に本質的に対応させることが可能になる。

【００３９】（ｅ）曲率半径の大きい各切刃稜をつなぐ
曲率半径の小さい各切刃稜が円弧状であるため、切刃稜
が描く回転軌跡が滑らかになり円弧部に沿わせやすい。
また、複数のチップの切刃稜で描く回転軌跡の組合せ
によって円弧部に沿わせるので、チップの切刃部として
一本の曲率半径の大きい切刃稜と一本の曲率半径の小さ
い切刃稜を使用するように設計することが可能である。
この場合においては、一つのチップで片面で三回、両面
では六回にわたり使用できるので、掬い角をもって固着
されることにより耐久性に優れていることとも相まっ
て、維持費を安価にすることができる。

【００４０】（ｆ）本発明に係るＨ形鋼の開先部の加工
方法にあっては、接合端部のウェブに設けられる切欠部
を構成する縦方向と横方向及びそれらを繋ぐ円弧部の切
削面を同時に設け、接合端部のフランジを切欠部より基
部側で先端面を傾斜させ除去するだけでよいので、従来
の加工方法と比較して簡単に作業ができる。また、形成
される切欠部の円弧部分は一箇所だけであるので、カッ
ターの構造も簡単な構造にできる。更には、切欠部を構
成する縦方向と横方向及びそれらを繋ぐ円弧部の切削面
を同時に設けるので、作業効率がよく、使用するカッタ
ーの数も低減できる。

【図面の簡単な説明】

【図１】本発明に係るスローアウェイ式カッターの一実
施の形態を示す正面図。

【図２】図１のスローアウェイ式カッターの平面図。

【図３】本発明に係るチップの一実施の形態を示す説明
図。

【図４】スローアウェイ式カッターに装着された二個の
チップの切刃稜がトレースする線と理論線を比較した説
明図。

【図５】本発明に係るＨ形鋼の開先部の加工方法の説明
図。

【図６】開先加工をしたＨ形鋼の開先部の形状を示す要
部斜視図。

【図７】開先加工部の施工構造を示す説明図。

【図８】従来の開先加工部の施工構造を示す説明図。

【図９】従来の径小円弧部を有するスローアウェイ式カ
ッターに使用されているチップの説明図。

【符号の説明】

Ｃ スローアウェイ式カッター １ カッター基体 １０ 取着軸孔 １１ 先端面 １２ 側面 １３、１３ａ チップ溝 １３１ チップ固着凹部 １３２ 切屑ポケット Ｔ１、Ｔ２、Ｔ３ チップ ｒ１ 曲率半径の小さい切刃稜 ｒ２ 曲率半径の大きい切刃稜 １４ 固着用の孔 ２ Ｈ形鋼 ２０ 切欠部 ２１ ウェブ ２２ 縦切削面 ２３ 横切削面 ２４ 円弧部 ２５ フランジ ２６ 開先面 ３０ 柱面 ３１ ブラケット

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【手続補正書】

【提出日】平成９年６月３０日

【手続補正１】

【補正対象書類名】図面

【補正対象項目名】全図

【補正方法】変更

【補正内容】

【図１】

【図２】

【図３】

【図５】

【図７】

【図４】

【図６】

【図８】

【図９】

Claims (5)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】 スローアウェイ式カッターであって、 本質的に直円柱状で中心部には取着軸孔を有し、側面と
   底面とが交わる部分のうちの少なくとも一方は円弧状に
   形成してあるカッター基体と、 当該カッター基体の上記円弧状部から側面にかけて傾斜
   を設けて配列してあり、切刃側が回転方向に向けて所要
   の掬い角を形成するよう固着してあるチップと、を備え
   ており、 上記円弧状部に設置されているチップは、カッター基体
   の回転に伴う切刃稜の回転軌跡が、切削を予定した円弧
   部と本質的に同じ円弧を描くように配置されていること
   を特徴とする、 スローアウェイ式カッター。
2. 【請求項２】 スローアウェイ式カッターであって、 本質的に直円柱状で中心部には取着軸孔を有し、側面と
   底面とが交わる部分のうちの少なくとも一方は円弧状に
   形成してあるカッター基体と、 当該カッター基体の上記円弧状部から側面にかけて傾斜
   を設けて配列してありチップ固着凹部と切屑誘導凹部を
   備えている複数列のチップ溝と上記チップ溝のチップ固
   着凹部に切刃側が回転方向に向けて所要の掬い角を形成
   するよう固着してあるチップと、を備えており、 上記円弧状部に設置されているチップは、カッター基体
   の回転に伴う切刃稜の回転軌跡が、切削を予定した円弧
   部と本質的に同じ円弧を描くように配置されていること
   を特徴とする、 スローアウェイ式カッター。
3. 【請求項３】 スローアウェイ式カッターに使用するチ
   ップであって、 表面側と裏面側に曲率半径の小さい切刃稜を各々三箇所
   に有し、当該曲率半径の小さい切刃稜を結ぶ曲率半径の
   大きい切刃稜を三箇所に有し、上記曲率半径の小さい切
   刃稜の中心は同面側において相互に同距離にあることを
   特徴とする、 チップ。
4. 【請求項４】 チップとして請求項３記載のチップを使
   用したことを特徴とする、 請求項１または２記載のスローアウェイ式カッター。
5. 【請求項５】 Ｈ形鋼の開先部の加工方法であって、 接合端部のウェブに設けられる切欠部を構成する縦方向
   と横方向及びそれらを繋ぐ円弧部の切削面を同時に設け
   るステップ、 接合端部のフランジを上記切欠部より基部側で先端面を
   傾斜させ除去するステップ、を含むことを特徴とする、 Ｈ形鋼の開先部の加工方法。