JPH10134961A - 発光素子 - Google Patents

発光素子

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JPH10134961A
JPH10134961A JP8291734A JP29173496A JPH10134961A JP H10134961 A JPH10134961 A JP H10134961A JP 8291734 A JP8291734 A JP 8291734A JP 29173496 A JP29173496 A JP 29173496A JP H10134961 A JPH10134961 A JP H10134961A
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light
light emitting
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JP8291734A
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Inventor
Yutaka Majima
豊 真島
Toshiro Hiraoka
俊郎 平岡
Shuji Hayase
修二 早瀬
Norio Takami
則雄 高見
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Toshiba Corp
Original Assignee
Toshiba Corp
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Publication date
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Abstract

(57)【要約】 【課題】発光層に注入された電子の陽極での酸化又はホ
ールの陰極での還元を減少させて、発光効率の高いEC
L素子を提供すること。 【解決手段】本発明の発光素子は、一対の電極と、前記
一対の電極の間に設けられ、発光性物質及び電解質を含
む第1の発光層とを具備し、前記電解質の陰イオンが、
前記第1の発光層中で位置が固定されたイオンを含み、
前記第1の発光層中の全陰イオン基数に対する前記第1
の発光層中で位置が固定されたイオンの陰イオン基数の
比が、0.0001〜0.99であることを特徴とす
る。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、電気化学的に発光
層にキャリアが注入される発光素子に係り、より詳細に
は、発光効率の良好な電気化学発光素子に関する。
【0002】
【従来の技術】有機EL素子は、発光色を自由に変える
ことができること、種々の薄膜形成方法を選択できるこ
と、及び大面積の薄膜を形成することが可能であること
等の特徴を有しており、注目を集めている。
【0003】この有機EL素子として従来から知られて
いる注入型EL素子では、キャリアは、電極から有機発
光層あるいは有機電荷輸送層に、トンネル過程やショッ
トキー過程により注入される。そのため、電極−有機物
層界面のミクロ的な剥離や、電極の酸化によりダークス
ポットが形成されやすく素子寿命が短かった。
【0004】また、低電圧駆動を実現するために、通
常、有機物層の厚さを数千オングストロ−ム程度にし
て、電極−有機物層界面に効率的に電界を印加すること
がなされているが、このように有機物層の厚さを薄くす
ると、厚さのムラによる局部的な電界の集中により、素
子が破壊されるという問題を有していた。
【0005】これらの注入型EL素子の欠点を解決する
ために、ヒーガー(Heeger)らは、電気化学発光
素子(以下ECL素子という)を考案した。ECL素子
は、従来の注入型EL素子の有機発光層と有機電荷輸送
層とのかわりに有機発光性物質と電解質等との混合物と
からなる発光層を用い、これを一対の電極間にそれらの
対向面と接するように配置したものである。このECL
素子に適当な電圧を印加すると、電解質が電離し、陽イ
オンと陰イオンとがそれぞれ陰極と陽極近傍へと移動し
て、電極近傍に電気二重層が形成される。その結果、電
極と発光層との界面に高い電界がかかり、かつ注入電荷
が電極近傍のイオンによって補償されるため、電荷の注
入が極めて容易に起こるようになる。そのため、注入型
EL素子に比べて、低い電圧で比較的高い電流を素子に
流すことができるようになった。
【0006】以上のように、上述のECL素子では、電
荷の注入が容易に起こるため、低い電圧で多くの電流が
流れ、また、一般に、このような直流駆動の有機EL素
子では、発光輝度は素子を流れる電流値にほぼ比例する
ことから、大幅な輝度の改善が期待されるが、実際には
発光効率は期待される値までは改善されていない。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】上述の問題について本
発明者らが調査したところ、電極から発光層に注入され
た電子とホールの多くが、再結合して励起子を形成する
ことなく、対向する電極へ到達してしまうことが原因で
あることが判明した。すなわち、注入された電子とホー
ルの多くが発光に寄与せずに単に電極間を移動するだけ
であるために、高い電流値から期待される値まで輝度が
到達しないのである。本発明の目的は、発光層に注入さ
れた電子の陽極での酸化又はホールの陰極での還元を減
少させて、発光効率の高いECL素子を提供することに
ある。
【0008】
【課題を解決するための手段】本発明は、一対の電極
と、前記一対の電極の間に設けられ、発光性物質及び電
解質を含む第1の発光層とを具備し、前記電解質の陰イ
オンが、前記第1の発光層中で位置が固定されたイオン
を含み、前記第1の発光層中の全陰イオン基数に対する
前記第1の発光層中で位置が固定されたイオンの陰イオ
ン基数の比が、0.0001〜0.99であることを特
徴とする発光素子を提供する。
【0009】本発明は、一対の電極と、前記一対の電極
の間に設けられ、発光性物質及び電解質を含む第1の発
光層とを具備し、前記電解質の陽イオンが、前記第1の
発光層中で位置が固定されたイオンを含むことを特徴と
する発光素子を提供する。
【0010】本発明は、一対の電極と、前記一対の電極
の間に設けられ、発光性物質及び電解質を含む第1の発
光層とを具備し、前記電解質の陰イオンが、前記第1の
発光層中で位置が固定されたイオンを含み、前記一対の
電極のうち前記第1の発光層中で位置が固定されたイオ
ンの荷電と逆の符号の電荷を与える電極と、前記第1の
発光層との間に設けられ、発光性物質及び電解質を含
み、発光層中の全イオン基数に対する発光層中で位置が
固定されたイオンのイオン基数の比が、前記第1の発光
層よりも、小さい第2の発光層を具備することを特徴と
する発光素子を提供する。
【0011】本発明は、上記発光素子において、前記一
対の電極のうち前記第1の発光層中で位置が固定された
イオンの荷電と逆の符号の電荷を与える電極と、前記第
1の発光層との間に設けられ、発光性物質及び電解質を
含み、発光層中の全イオン基数に対する発光層中で位置
が固定されたイオンのイオン基数の比が、前記第1の発
光層よりも、小さい第2の発光層を具備することを特徴
とする。
【0012】本発明は、上記発光素子において、前記一
対の電極の間に、前記固定されたイオンの荷電と逆の符
号の電荷を与える電極と対をなす電極に接して設けら
れ、発光性物質を含み、発光層中の全イオン基数に対す
る発光層中で位置が固定されたイオンのイオン基数の比
が、前記第1の発光層よりも、小さい第3の発光層を具
備することを特徴とする。
【0013】以下、本発明についてより詳細に説明す
る。本発明で用いられる電極は平行平板電極であって、
対向する一対の電極の間隙に発光層が挟持される。
【0014】電極材料としては、カーボンや、Pt、A
u、Pd、Ag、Cu、Pb、Sn、Ni、Co、T
i、In、Cd、Fe、Ga、Zn、V、Mn、Ce、
Al、Nd、Mg、Na、Ca、Sr、Ba、K、R
b、Cs、Li、W等の金属またはこれらの金属を含有
する合金が用いられる。また、シリコン、ゲルマニウ
ム、砒化ガリウム、窒化ガリウム等の無機半導体やこれ
らに不純物をドープしたもの、又は、ポリアニリン、ポ
リピロール、ポリチオフェン等の導電性ポリマー等も用
いることができる。
【0015】電極として、ガラスや樹脂等の表面に導電
層が形成された透明電極又は半透明電極を用いると、発
光光を電極を透過させて電極面から取り出すことができ
るので好ましい。電極表面を白金黒のような電気伝導性
の多孔質物質で覆うと、基板の実質的な表面積を増大で
きるため、発光層への電荷の注入が容易になり好まし
い。
【0016】本発明で用いられる発光性物質は、可視光
領域及び紫外光領域に蛍光を発する有機発光材料であれ
ば特に制限されないが、成膜性が高いこと、ラジカルア
ニオン及びラジカルカチオンの双方の状態で安定である
こと、及び耐久性が高いこと等から、ポリパラフェニレ
ン等の芳香族系共役系高分子、ポリアセチレン等の脂肪
族系共役高分子、ポリピロールやポリチオフェン等の複
素環式共役系高分子、ポリアニリン等の含ヘテロ原子共
役系高分子、ポリ(フェニレンビニレン)やポリ(アリ
ーレンビニレン)等の上記共役系高分子の構成単位が交
互に結合した構造を有する複合型共役系高分子等が好適
に用いられる。
【0017】本発明でいう電解質は、陽イオン及び陰イ
オンを含むものであり、ラジカルは含まない。本発明で
用いられる電解質の陽イオンとしては、Li+ 、Na
+ 、K+ 、Rb+ 、Cs+ 等のアルカリ金属イオン、M
2+、Ca2+、Sr2+、Ba2+等のアルカリ土類金属イ
オン、Eu2+等のランタノイドイオン、R4+ 、R4
+ 、R4 As+ 、R3+ 、アセチルコリン等の含有
機イオン(Rはアルキル基)、Ag+ 等の貴金属イオ
ン、さらに、Al3+、Co2+、Cr2+、Zn2+等のイオ
ン、アンモニウムイオン、テトラメチルアンモニウムイ
オン、テトラエチルアンモニウムイオン、テトラプロピ
ルアンモニウムイオン、テトラブチルアンモニウムイオ
ン、テトラデシルアンモニウムイオン、トリベンジルア
ンモニウムイオン、フェニルアンモニウムイオン等を用
いることができる。
【0018】本発明で用いられる電解質の陰イオンとし
ては、F- 、Cl- 、Br- 、I-、過塩素酸イオン、
臭素酸イオン、硝酸イオン、硫酸イオン、燐酸イオン、
四フッ化硼酸イオン、六フッ化燐酸イオン、四塩化アル
ミニウムイオン、(ノルマルブチレート)、三フッ化メ
タンスルホン酸イオン、三フッ化メタンスルホンアミド
イオン、酢酸イオン、三フッ化酢酸イオン、テトラフェ
ニル硼酸イオン、トルエンスルホン酸イオン、ドデシル
ベンゼンスルホン酸イオン、樟脳スルホン酸イオン(カ
ムフォアサルホネート)、ピクリン酸イオン、サリチル
酸イオン(サリシネート)、チオシアン酸イオン、安息
香酸イオン等を用いることができる。
【0019】これらのイオンは、発光性物質が高分子で
ある場合には、この発光性物質の主鎖または側鎖にイオ
ン基として存在することによって、発光層中に固定する
ことができる。この場合、発光性物質1分子当たりに固
定されるイオン基の数は、発光性物質ポリマー1分子を
構成するモノマーの数の0.001〜50%であること
が好ましい。固定されるイオン基の数が50%を超える
と、電荷の移動が過剰に抑制されるため、再結合が生じ
にくくなり、0.001%未満の場合は、電荷の移動速
度を遅くすることができない。
【0020】また、イオンの固定は、高分子の発光性物
質の主鎖又は側鎖に存在することによってのみなされる
のではなく、主鎖又は側鎖にイオン基を有する発光性物
質ではない高分子化合物を発光層に添加することによっ
てなされても良い。この場合、高分子としては、下記化
学式1及び2等で示されるポリエチレンオキシド、ポリ
プロピレンオキシド等のポリエーテル骨格を有する化合
物、下記化学式3及び4等で示されるポリエチレンサク
シネート、ポリ−β−プロピオラクトン等のポリエステ
ル骨格を有する化合物、下記化学式5及び6等で示され
るポリエチレンイミン等のポリアミン骨格を有する化合
物、下記化学式7等で示されるポリアルキレンスルフィ
ド等のポリスルフィド骨格を有する化合物等から構成さ
れることが好ましい。
【0021】
【化1】 また、上記ポリエーテルは、下記化学式8〜20で示さ
れる無定型高分子であってもよい。
【0022】
【化2】
【0023】
【化3】
【0024】また、上記ポリエーテルは、以下の化学反
応式1〜5の反応生成物及び化学式21〜23で示され
るような、力学的強度を保持したまま無定型化したポリ
エーテル架橋体であってもよい。
【0025】
【化4】
【0026】
【化5】
【0027】また、本発明で、発光層中に位置が固定さ
れるイオンが陽イオン基である場合は、クラウンエーテ
ル誘導体等、陽イオン基で構成される錯体を発光層中に
存在させることにより、発光層中に固定されるものであ
ってもよい。このような陽イオンとして、Li+ 、Na
+ 、K+ 及びテトラメチルアンモニウムイオン等を用い
ることができる。
【0028】陽イオン基を固定するのに用いられるクラ
ウンエ−テル誘導体としては、12−クラウン−4、1
5−クラウン−5、18−クラウン−6等のクラウンエ
ーテル類、ジアゾ−12−クラウン−4、ジアゾ−15
−クラウン5、ジアゾ−18−クラウン−6等のジアゾ
クラウンエーテル類、及び以下の化学式24で示される
ようなクリプタント類等が挙げられる。クラウンエーテ
ル誘導体は、高分子の主鎖又は側鎖に直接結合されても
よいし、−(CH2 )−、−(CF2 )−、−O−等を
介して結合されてもよい。
【0029】
【化6】
【0030】また、本発明で発光層中で位置が固定され
る陰イオンの陰イオン基は、−SO3 - 基、−COO-
基、−CF2 SO3 - 基、−PO32 - 基、−O-
等の、陽イオン交換樹脂で用いられる陰イオン基である
ことが好ましい。
【0031】本発明で発光層中で位置が固定される陽イ
オンの陽イオン基は、−CH2+(CH33 基、−
CH2+ (CH32 CH2 CH2 OH基等の、陰イ
オン交換樹脂で用いられる陽イオン基であることが好ま
しい。
【0032】これらのイオン基は、高分子の主鎖または
側鎖に直接結合されてもよいし、−(CH2n −、−
(CF2n −、−O−等を介して結合されてもよい。
本発明の発光素子は、その発光層中に溶媒を含むことが
できる。用いる溶媒は、発光性物質の酸化および還元電
位よりも広い電位窓を有している必要がある。電位窓が
発光性物質の酸化および還元電位よりも狭い場合、電圧
の印加により溶媒の酸化又は還元が優先的に生じてしま
うため、発光が観測されなくなってしまうため好ましく
ない。また、溶媒の比誘電率εr は、電解質をイオンに
電離させることが必要であるので、高い値であることが
好ましく、20以上であることが好ましい。
【0033】用いられる溶媒としては、メタノール、エ
タノール、1−プロパノール、2−プロパノール、テト
ラヒドロフラン、1,4−ジオキサン、モノグリム
(1,2−ジメトキシエタン)、アセトン、4−メチル
−2−ペンタノン、アセチルアセトン、アセトニトリ
ル、プロピオニトリル、アンモニア、エチレンジアミ
ン、ピリジン、ホルムアミド、N−メチルピロリドン、
ジメチルスルホキシド、スルホラン、ニトロメタン、ニ
トロベンゼン、ジクロロメタン、プロピレンカーボネー
ト、エチレンカーボネート、酢酸、無水酢酸、1,2−
ジクロロエタン、およびベンゾニトリル等を挙げること
ができる。
【0034】このような溶媒を用いた場合、電極上に多
孔質高分子薄膜を設けてもよい。このような多孔質高分
子薄膜を用いると、溶液を含有させてゲル状にすること
ができるので、好適に素子を封止することができる。多
孔質高分子薄膜として、Li二次電池等でセパレータと
して用いられるポリエチレンやポリプロピレン等を用い
ると、電解質イオンの移動を妨げることがないため好ま
しい。
【0035】本発明の発光素子において、発光層に対し
て発光性物質を5〜95重量%含有することが好まし
く、より好ましくは10〜90重量%である。発光性物
質が5重量%未満の場合、発光層に注入された電子やホ
ールのホッピング距離が大きくなるため、発光素子の電
圧印加に対する応答速度が低下してしまう。発光性物質
が95重量%を超える場合、電極界面での電気二重層の
形成が、電解質イオンの濃度が低いために妨げられ、電
荷の注入が起こりにくくなる。
【0036】発光性物質に対して電解質は、第1の発光
層では、5〜95重量%、第2の発光層では5〜95重
量%、第3の発光層では5〜95重量%であることが好
ましい。
【0037】本発明の発光素子の発光層は、電解質とし
て上記高分子と塩との複合体である固体電解質を用いる
場合は、固体電解質と発光材料との混合物を溶媒に溶解
し、スピンコーティング、キャスティング、ディッピン
グ、バーコート、ロールコート等の方法により、基板上
に形成される。この溶媒は、任意に除去することができ
る。また、形成された発光層に溶媒を含浸させて、ゲル
状にしてもよい。
【0038】電解質として溶液状の電解質を用いる場合
は、キャスティングやディッピング等の方法により形成
される。これら発光層は、陰極上に積層して形成しても
よく、陽極上に積層して形成してもよい。陰極又は陽極
上に積層された発光層上への、陽極又は陰極の設置は、
蒸着法やスパッタ法等の薄膜形成法により、又は導電性
膜が設けられた基板を発光層に接触させることにより行
われる。
【0039】本発明の発光素子は、防湿シートで被覆さ
れてもよい。この防湿シートとしては、アルミニウム等
の金属箔、またはアルミニウムとポリエチレンからなる
金属ラミネートフィルム等を用いることができる。防湿
シートを用いて素子を封止する際、ホットメルト型シー
ル材を用いることが好ましい。このホットメルトシール
材に、シリカ粉末、メレキュラーシーブ、ナイロン6、
ナイロン6,6などの高吸水性樹脂粉末等の吸湿剤を含
有させるとさらに好ましい。
【0040】このようにして得られる本発明の発光素子
は、通常0.5〜10V程度の直流電圧で駆動され、
0.1〜1,000mA/cm2 の電流値を示し、0.
0005〜10、000cd/m2 程度の発光輝度を得
ることができる。また、発光材料を適当に選択すること
により、発光色を任意に変えることができる。
【0041】以下、本発明の原理について説明する。E
CL素子において、発光層に電子またはホールが電気化
学的に注入されると、それぞれの電荷は、発光層中に含
まれるカウンターイオンによって安定化される。安定化
されたそれぞれの電荷は、拡散とドリフトにより移動
し、発光性物質の分子内では主鎖中をスライディングし
て移動し、発光性物質分子間はホッピング過程によって
移動する。そして、これら電荷のスライディングやホッ
ピングによる移動の際には、カウンターイオンの移動を
伴うことが知られている。
【0042】本発明者らは、この発光層中の電荷とカウ
ンターイオンとの関係について研究したところ、発光層
中における電子やホールの移動速度は、それぞれのカウ
ンターイオンの発光層中での移動速度と相関があること
を見出した。すなわち、発光層中での、カウンターイオ
ンの移動速度を制御することにより、電子やホールの移
動速度を制御することができるのである。
【0043】この知見に基づくと、カウンターイオンの
移動速度を遅くすることにより、一方の電極から発光層
に注入された電子又はホールが再結合することなく対向
する電極へ到達してしまうのを防ぐことができる。した
がって、イオンとして、発光層中に位置が固定されたも
のを多く用いることにより、イオンの移動速度を遅くさ
せ、発光効率を高めることが可能となる。
【0044】イオンの位置を固定する方法としては、イ
オン基が結合した高分子(高分子イオン)、あるいはク
ラウンエーテル誘導体と陽イオンとの錯体を発光層中に
存在させる方法などがある。どちらの方法も、イオンを
大きくすることにより、発光層中での移動を抑制するも
のである。
【0045】高分子イオンを用いる場合は、電解質イオ
ンの全てを高分子イオンにしてしまうと、用いる材料に
よっては、電荷の移動が極端に妨げられてしまうおそれ
がある。したがって、用いる材料に応じて、適当な量の
低分子のイオンを含有させることが好ましい。発光層中
の全陰イオン基数に対する高分子に固定された陰イオン
基数の比は、0.0001〜0.99であることが好ま
しく、より好ましくは0.01〜0.9である。この比
が0.99よりも高い場合は、ホールの移動が極端に妨
げられてしまい、また、0.0001より低い場合は、
ホールの移動速度を遅くする効果が得られない。また、
発光層中の全陽イオン基数に対する高分子に固定された
陽イオン基数の比は、0.0001〜0.99であるこ
とが好ましく、より好ましくは0.01〜0.9であ
る。この比が0.99よりも高い場合は、電子の移動が
極端に妨げられてしまうおそれがあり、0.0001よ
り低い場合は、電子の移動速度を遅くする効果が得られ
ないことがある。
【0046】この固定させるイオンとしては、陰イオン
又は陽イオンのどちらか一方を、又はこれらの両方を用
いることができる。陰イオンのみを用いる場合は、ホー
ルの移動速度を選択的に遅くすることができ、陽イオン
のみを用いる場合は、電子の移動速度を選択的に遅くす
ることができる。多くのECL素子において、ホールの
移動速度は、電子の移動速度に比べて速いことが本発明
者らにより確認されており、このようなECL素子で
は、特に、ホールの移動速度を遅くすることが発光効率
を高めるのに効果的であると考えられる。
【0047】以上、発光層が単一の層からなる発光素子
について説明したが、発光層を多層構造にしてもよい。
上記発光層と、この発光層よりも発光層中に位置が固定
されたイオンの比率が低い発光層とを組合せても、再結
合して励起子を形成することなく電極間を移動する電荷
を減らすことができる。ここで、発光層中に位置が固定
されたイオンの比率が低い発光層とは、上記発光層に対
して相対的に、高分子イオン又はクラウンエーテル誘導
体と陽イオンとの錯体の比率が低い発光層のことであ
り、この発光層は高分子イオン又はクラウンエーテル誘
導体と陽イオンとの錯体を含まなくてもよい。
【0048】陽極側に固定された陰イオンの比率が低い
発光層を設け、陰極側に固定された陰イオンの比率が高
い発光層を設けた場合、陽極側では、陰イオンの移動が
比較的自由に行われる。したがって、電圧の印加によ
り、上記発光層が単一の層からなる場合に比べて、陽極
近傍に電気二重層が良好に形成され、ホールの注入効率
を高めることができる。
【0049】また、このホールの発光層中での移動は、
前述のように、陰イオンの移動を伴う。そのため、ホー
ルが、固定された陰イオンの比率が高い発光層に注入さ
れるには、同時に、固定されていない陰イオンも高分子
陰イオンの比率が高い発光層へと移動する必要がある。
しかし、この固定された陰イオンの比率が高い発光層で
は既に陰イオン濃度が高いため、固定されていない陰イ
オンの侵入が妨げられてしまう。したがって、固定され
た陰イオンの比率が高い発光層へのホールの注入は生じ
にくくなる。
【0050】さらに、例え、ホールが固定された陰イオ
ンの比率が高い発光層に注入されたとしても、そのほと
んどが固定された陰イオンによりトラップされる。ま
た、電子は固定されていない陽イオンを伴って移動する
ため、この高い陰イオン濃度により移動を妨げられるこ
とはない。したがって、固定された陰イオンの比率が高
い発光層にトラップされたホールは、容易に電子と再結
合して励起子を形成することができるため、ホールの陰
極での還元が生じにくくなり、発光効率が向上する。
【0051】電子の電極間の移動を減らす場合も同様
に、陰極側に固定された陽イオンの比率が低い発光層を
設け、陽極側に固定された陽イオンの比率が高い発光層
を設けることが好ましい。
【0052】また、陰極側に固定された陰イオンの比率
が高い発光層を設け、さらに、陽極側に固定された陽イ
オンの比率が高い発光層を設けてもよい。このように発
光層を形成すると、発光層に注入された電荷の対向する
電極への移動が、ホールと電子の両方について減少され
るため好ましい。
【0053】以上のように、発光層を、固定されたイオ
ンの比率が低い発光層と固定されたイオンの比率が高い
発光層とで構成することにより、電荷の電極間の移動を
減少させることができるが、同時に、電荷の注入効率の
低下をもたらすことがある。例えば、陰極側に固定され
た陰イオンの比率が高い発光層が設けられている場合
は、陽イオンが陰極近傍へ移動しても、陰イオンが多数
存在するため、電気的に中和されてしまい、陰極近傍に
電気二重層が形成されにくくなる。そのため、陰極での
電子の注入効率が低下してしまうのである。
【0054】このような場合、陰極と、固定された陰イ
オンの比率が高い発光層との間に、さらに固定された陰
イオンの比率が低い発光層を設けることが好ましい。こ
の陰極に接した発光層では、固定された陰イオンの比率
が低いため、陰極近傍に電気二重層が良好に形成され、
電子の注入効率の低下が生じにくくなる。
【0055】以上、陰極での電子の注入効率について述
べたが、陽極でのホールの注入についても同様に、陽極
と、固定された陽イオンの比率が高い発光層との間に、
さらに固定された陽イオンの比率が低い発光層を設ける
ことにより、ホールの注入効率の低下が生じない。
【0056】これらの発光層を組合せて素子を構成する
と、電子およびホールの発光層への高い注入効率を実現
することができ、さらに、これら電荷が対向する電極へ
移動することを防いで、高い発光効率を実現することが
できる。
【0057】この電極に接し、固定されたイオンの比率
が低い発光層は、イオンを含まなくてもよい。この場
合、発光素子作製時には上記発光層には電解質が含まれ
ない。しかし、素子を駆動することにより、例えば、陰
極側に設けられた上記発光層には、電圧印加及び陰極か
ら供給される電子のために、隣接する発光層から陽イオ
ンが供給され、陰イオンに比べて陽イオンの濃度が高く
なる。このように、陰極側に設けられた上記発光層中の
陽イオンの濃度を高くすると、陽イオンにより電子が安
定化されるため、電子の密度が高くなり、ホールとの再
結合確率が増大し、高い発光効率となる。
【0058】さらに、陽極側に設けられた上記発光層中
ではホールに比べて電子の密度が高くなるため、陽極か
ら注入され再結合せずにこの発光層まで到達したホール
の再結合の確率を増加させ、陰極での還元を減少させる
ことができる。したがって、発光効率を向上させること
ができるのである。
【0059】これは、陽極側に設けられる固定されたイ
オンの比率が低い発光層においても同様であり、発光層
中に電解質を含ませずに素子を作製することにより、ホ
ールの注入が容易になり、陽極での電子の還元を減少さ
せ、発光効率を向上させることができる。
【0060】
【発明の実施の形態】以下、本発明の実施例について説
明する。 (実施例1)図1に示す発光素子を、以下の方法で作製
した。
【0061】まず、ガラス基板11の一表面に、陽極と
して、面積抵抗率が15Ω/sqで、10mm×10m
mのITO電極12を形成した。次に、以下の化学式2
5で示される発光性物質1g、ポリエチレンオキシド1
g、及びポリエチレンオキシドのエチレンオキシド基数
とリチウム原子数との比が1:0.05となるように計
量したLiCF3 SO3 とポリスチレンスルホン酸リチ
ウムとの混合物の塩化メチレン−メタノール混合溶液を
調製した。なお、LiCF3 SO3 とポリスチレンスル
ホン酸リチウムとは、それぞれのリチウム原子の比が
4:1になるように混合した。すなわち、発光層中の全
陰イオン基数に対する固定された陰イオンの陰イオン基
数の比は0.2である。また、塩化メチレンとメタノー
ルとは、それぞれの体積が10:1となるように混合し
た。
【0062】
【化7】
【0063】上記溶液を、アルゴンガス中で、ITO電
極12及びガラス基板11上に塗布し、200℃で0.
5時間真空中で乾燥することにより、厚さ400nmの
発光層13を形成した。
【0064】この発光層13上に、1×10-6torr
の減圧雰囲気下でアルミニウムを蒸着して、陰極とし
て、厚さが50nm、面積が8×8mmのアルミニウム
電極16を設けることにより発光素子を作製した。
【0065】(比較例1)LiCF3 SO3 とポリスチ
レンスルホン酸リチウムとの混合物のかわりに、LiC
3 SO3 のみを用いたこと以外は、実施例1と同様に
して、発光層の厚さが400nmの発光素子を作製し
た。すなわち、発光層中の全陰イオン基数に対する固定
された陰イオンの陰イオン基数の比は0である。
【0066】(実施例2)図2に示す発光素子を、以下
の方法で作製した。まず、比較例1と同様にして、IT
O電極22及びガラス基板21上に、厚さ400nmの
発光層23を形成した。
【0067】次に、この発光層23上に、LiCF3
3 とポリスチレンスルホン酸リチウムとの混合物のか
わりに、ポリスチレンスルホン酸リチウムのみを用いた
こと以外は実施例1と同様にして、さらに厚さ100n
mの発光層24を形成し、アルミニウム電極26を設け
て発光素子を作製した。すなわち、発光層中の全陰イオ
ン基数に対する固定された陰イオンの陰イオン基数の比
は1である。
【0068】(実施例3)図3に示す発光素子を以下の
方法で作製した。まず、実施例2と同様にして、ITO
電極32及びガラス基板31上に、厚さ400nmの発
光層33及び厚さ100nmの発光層34を形成した。
【0069】次に、この発光層34上に、比較例1と同
様にして厚さ50nmの発光層35を形成し、アルミニ
ウム電極36を設けて発光素子を作製した。以上のよう
にして作製されたそれぞれの発光素子について、3V及
び4Vの直流電圧を印加して、定電圧駆動した際の電流
値I(mA/cm2 )、及び素子外部で検出されるフォ
トン数を素子を流れたキャリア数で割ることにより得ら
れる外部量子収率Ψを測定した。なお、それぞれの測定
は、電圧印加から3分間フォーミングを行った後に実施
した。その結果を以下の表1に示す。
【0070】
【表1】
【0071】実施例1〜3及び比較例1の発光素子を比
較すると、実施例1〜3の発光素子は全て外部量子収率
Ψが高くなっている。これは、陽極から発光層に注入さ
れたホールが、発光層中で高分子に固定されている陰イ
オンにより動きが拘束されるために、電子と再結合して
励起子形成せずに陰極に到達する比率が減少したためで
ある。
【0072】また、実施例1と比較例1の発光素子を比
較すると、比較例1の発光素子では、印加電圧を3Vか
ら4Vに高くすると、外部量子収率が約3割減少する
が、実施例1の発光素子では、この減少率は約2割程度
と少なくなっている。したがって、実施例1の発光層が
単層である発光素子では、外部量子収率が改善され、特
に高電圧領域において、その傾向が顕著になる。
【0073】実施例1と比較例1の発光素子とでは、実
施例2の発光素子が、発光層と陰極との間に、高分子に
固定された陰イオンの濃度が高い層をさらに含む点で異
なっている。この層を設けることにより、電子と再結合
して励起子を形成せずに陰極に到達するホールの比率が
さらに減少したため、比較例1の発光素子に比べて外部
量子収率が向上している。しかし、その一方で、この層
を設けることにより、電子の注入効率が低下したため、
電流値が低下した。
【0074】実施例2と実施例3の発光素子とでは、実
施例3の発光素子が、実施例2の発光層と陰極との間
に、高分子に固定された陰イオンの濃度が低い層をさら
に含む点で異なっている。この層を設けることにより、
実施例2の発光素子に比べて電子の注入効率が向上した
ため、電流値が大きく向上した。また、この層を設ける
ことによる、外部量子収率の変動はごく僅かであった。
【0075】(実施例4)以下に示すようにして、4種
類の溶液を調製した。まず、溶液Aは、以下の化学式2
6で示される発光性物質前駆体780mg、ポリエチレ
ンオキシド350mg、及びポリエチレンオキシドのエ
チレンオキシド基数に対するリチウム原子数の比が0.
1となるように計算されたLiCF3SO3 の混合物を
メタノールに溶解して調製した。
【0076】次に、溶液Bは、ポリエチレンオキシド3
00mg、及びポリエチレンオキシドのエチレンオキシ
ド基数に対するリチウム原子数の比が0.1となるよう
に計量されたポリスチレンスルホン酸リチウムの混合物
をメタノールに溶解して調製した。
【0077】溶液Cは、以下の化学式26で示される発
光性物質前駆体780mgとポリエチレンオキシド35
0mgとをメタノールに溶解して調製した。また、溶液
Dは、以下の化学式26で示される発光性物質前駆体7
80mg、ポリエチレンオキシド350mg、ポリエチ
レンオキシドのエチレンオキシド基数に対するリチウム
原子数の比が0.1となるように計量されたLiCF3
SO3 、及びLiCF3 SO3 と等モルの12−クラウ
ン−4の混合物をメタノールに溶解して調製した。な
お、以下の化学式26で示される発光性物質前駆体は、
素子作製の際に化学反応を起こし、以下の化学式27で
示される発光性物質に変化する。
【0078】
【化8】
【0079】実施例1で用いたのと同様のITO電極が
設けられたガラス基板上に、これらの溶液を用いて、ス
ピンコートにより複数の発光層を積層し、実施例1と同
様にして電極を設けて発光素子を作製した。用いる溶液
の種類、積層順序、及び積層数等を変更して、7つの発
光素子を作製し、それぞれの発光素子について3分間の
フォーミングの後、4Vの定電圧駆動下での電流値と外
部量子収率Ψを測定したところ、以下の表2に示す結果
を得た。
【0080】
【表2】
【0081】なお、表中でスピンコート順序とは、スピ
ンコートに用いた溶液の種類及び陽極側からの積層順序
を示している。また、溶液A、C及びDを用いた場合、
スピンコート1回当たりで形成される発光層の膜厚は、
50nmであり、溶液Dを用いた場合は10nmであっ
た。
【0082】表2において、素子1、2は参考例であ
り、素子3〜6は本発明の実施例であり、比較用素子は
従来の素子である。素子1〜6と、比較用素子とを比較
すると、素子1〜6の外部量子収率は、比較用素子の外
部量子収率に比べて全て高くなっている。
【0083】素子1と比較用素子とでは、陽極に接した
層が素子1ではC溶液から形成され、比較用素子ではA
溶液から形成されている点で異なっている。素子1のC
溶液からなる層は、素子作製当初はイオンを含んでいな
い。この素子に電圧を印加すると、陽極近傍には、電場
及び陽極から注入されるホールにより、Li+ イオンに
比べてCF3 SO3 - イオンの方が速く拡散され、陰イ
オン濃度が高くなる。そのため、陽極近傍には電子に比
べてホールの濃度が高くなり、電子の陽極での酸化が減
少され、外部量子収率が向上している。また、A溶液か
らなる層のかわりにC溶液からなる層を用いることによ
る電流値の変動は僅かであった。
【0084】素子1と素子2とを比較すると、素子1で
は、C溶液からなる層が陽極側に設けられ、素子2で
は、陰極側に設けられている点で異なっている。両者を
比較すると外部量子収率はほとんど変わらないが、素子
2では電流値が大きく減少している。これは、C溶液か
らなる層を陰極側に設けることにより、陰極から発光層
に導入された電子の陽極での酸化が減少されるが、この
層のために陰極近傍に電気二重層が形成されにくくな
り、電子の注入効率が低下したからである。
【0085】素子3は、比較用素子の陰極から1番目の
層と2番目の層との間に、B溶液からなる層が設けられ
たものである。素子3において、B溶液中のポリスチレ
ンスルホン酸リチウムは、A溶液中の上記化学式26に
示す化合物とポリイオンコンプレックスをA層との界面
にて形成する。この界面では、陰イオンのほとんどがポ
リマーであり、移動可能な陰イオンは僅かである。その
ため、この層に導入されたホールの移動速度は極端に遅
くなる。また、このB溶液からなる層には、ポリイオン
コンプレックスを形成していたPPV前駆体が真空加熱
処理によりポリパラフェニレンとなるため、電子の移動
が妨げられることはない。
【0086】素子4と素子3とでは、素子4の陽極に接
している層がC溶液で形成されている点、また、素子4
と素子1とでは、素子4では陰極に接した層に隣接して
B溶液からなる層が形成されている点で異なっている。
このように、素子1と素子3とを組合せた構造の素子4
は、素子1及び素子3に比べて外部量子収率が高くなっ
ている。これは、B溶液からなる層とC溶液からなる層
の発光層への導入が、それぞれ独立に発光効率の向上に
寄与しているためである。
【0087】素子4では、発光層中にはB溶液からなる
層は1層しか存在していないが、素子5では、B溶液か
らなる層がさらに2層加えられている。これにより、ホ
ールの電極間の移動がさらに抑制され、発光効率が向上
している。
【0088】素子6と素子5とでは、陽極から数えて2
層目及び3層目が、素子6ではD溶液からなる点で異な
っている。このD溶液からなる層で、12−クラウン−
4に対して等モル導入されたリチウムイオンは、12−
クラウン−4と錯体を形成して固定される。したがっ
て、この層では、陽イオンの移動が抑制されているた
め、電子の移動度も抑制される。その結果、電子の陽極
での還元が減少され、素子5に比べて発光効率が高くな
っている。
【0089】(実施例5)上記化学式26で示される発
光性物質前駆体780mg、ポリエチレンオキシド35
0mg、ポリエチレンオキシドのエチレンオキシド基に
対するリチウム原子数の比が0.1となるように計算さ
れたLiCF3 SO3 、及びLiCF3 SO3 に対して
0.9倍のモル数の12−クラウン−4の混合物をメタ
ノールに溶解した。
【0090】この溶液を発光層の形成に用いたこと以外
は実施例1と同様にして、発光層の厚さが400nmの
発光素子を作製した。 (比較例3)発光層の形成に用いる溶液に、12−クラ
ウン−4を用いなかったこと以外は実施例5と同様にし
て、発光層の厚さが400nmの発光素子を作製した。
すなわち、実施例4の比較用素子と同様の発光素子を作
製した。
【0091】実施例5及び比較例3の発光素子を、65
℃に保たれたAr雰囲気の恒温槽に入れ、3分間のフォ
ーミングの後、4Vの低電圧駆動下での電流値及び外部
量子収率Ψの測定を行った。表3に、その結果を示す。
【0092】
【表3】
【0093】この表に示される比較例3の素子の測定結
果と、表2に示される実施例4の比較用素子の測定結果
とを比較すると、比較例3の素子の方が、電流値と外部
量子収率の両方で高い値が得られている。これは、測定
温度を室温(25℃)から、ポリエチレンオキシドの融
点よりも高い65℃に上昇させたため、イオンの移動が
容易になったことに起因している。
【0094】すなわち、イオンの移動が容易になったた
め、電荷の移動も促進され、その結果、電流値と外部量
子収率が高くなったのである。実施例5と比較例3の発
光素子の測定結果を比較すると、実施例5の素子では電
流値が僅かに減少しているが、外部量子収率が大幅に改
善されている。これは、以下の理由によると考えられ
る。
【0095】このような高温条件下では、CF3 SO3
- イオンよりもLi+ イオンの方が動きが活発になるた
め、再結合せずに電極間を移動する電荷が、室温ではホ
ールの方が多かったのに対し、65℃では電子の方が多
くなる。実施例5の素子では、発光層中に12−クラウ
ン−4が導入されているため、Li+ イオンがこれに捕
獲されて、発光層中での移動速度が減少する。そのた
め、電子の動きが抑制されて、ホールと電子の移動速度
のバランスが良好になったため、外部量子収率が向上し
たのである。
【0096】
【発明の効果】以上示したように、本発明によると、位
置が固定された陽イオン又は陰イオンを含む発光層を用
いることにより、再結合による励起子を形成せずに電極
間を移動する電子又はホールを減少させ、発光素子の発
光効率を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施例に係る発光素子の一断面図。
【図2】本発明の他の実施例に係る発光素子の一断面
図。
【図3】本発明の他の実施例に係る発光素子の一断面
図。
【符号の説明】
11…ガラス基板 12…ITO電極 13…発光層 16…アルミニウム電極 21…ガラス電極 22…ITO電極 23…発光層 24…発光層 26…アルミニウム電極 31…ガラス電極 32…ITO電極 33…発光層 34…発光層 35…発光層 36…アルミニウム電極
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 高見 則雄 神奈川県川崎市幸区堀川町72番地 株式会 社東芝川崎事業所内

Claims (5)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 一対の電極と、前記一対の電極の間に設
    けられ、発光性物質及び電解質を含む第1の発光層とを
    具備し、 前記電解質の陰イオンが、前記第1の発光層中で位置が
    固定されたイオンを含み、 前記第1の発光層中の全陰イオン基数に対する前記第1
    の発光層中で位置が固定されたイオンの陰イオン基数の
    比が、0.0001〜0.99であることを特徴とする
    発光素子。
  2. 【請求項2】 一対の電極と、前記一対の電極の間に設
    けられ、発光性物質及び電解質を含む第1の発光層とを
    具備し、 前記電解質の陽イオンが、前記第1の発光層中で位置が
    固定されたイオンを含むことを特徴とする発光素子。
  3. 【請求項3】 一対の電極と、前記一対の電極の間に設
    けられ、発光性物質及び電解質を含む第1の発光層とを
    具備し、 前記電解質の陰イオンが、前記第1の発光層中で位置が
    固定されたイオンを含み、前記一対の電極のうち前記第
    1の発光層中で位置が固定されたイオンの荷電と逆の符
    号の電荷を与える電極と、前記第1の発光層との間に設
    けられ、 発光性物質及び電解質を含み、 発光層中の全イオン基数に対する発光層中で位置が固定
    されたイオンのイオン基数の比が、前記第1の発光層よ
    りも、小さい第2の発光層を具備することを特徴とする
    発光素子。
  4. 【請求項4】 前記一対の電極のうち前記第1の発光層
    中で位置が固定されたイオンの荷電と逆の符号の電荷を
    与える電極と、前記第1の発光層との間に設けられ、 発光性物質及び電解質を含み、 発光層中の全イオン基数に対する発光層中で位置が固定
    されたイオンのイオン基数の比が、前記第1の発光層よ
    りも、小さい第2の発光層を具備することを特徴とする
    請求項2に記載の発光素子。
  5. 【請求項5】 前記一対の電極の間に、前記固定された
    イオンの荷電と逆の符号の電荷を与える電極と対をなす
    電極に接して設けられ、 発光性物質を含み、 発光層中の全イオン基数に対する発光層中で位置が固定
    されたイオンのイオン基数の比が、前記第1の発光層よ
    りも、小さい第3の発光層を具備することを特徴とする
    請求項3又は4のいずれかに記載の発光素子。
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