JPH10130849A - 放電プラズマ処理方法及びその装置 - Google Patents

放電プラズマ処理方法及びその装置

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JPH10130849A
JPH10130849A JP8286602A JP28660296A JPH10130849A JP H10130849 A JPH10130849 A JP H10130849A JP 8286602 A JP8286602 A JP 8286602A JP 28660296 A JP28660296 A JP 28660296A JP H10130849 A JPH10130849 A JP H10130849A
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JP
Japan
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treatment
discharge plasma
electric field
processing
solid dielectric
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JP8286602A
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English (en)
Inventor
Motokazu Yuasa
基和 湯浅
Takuya Yara
卓也 屋良
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Sekisui Chemical Co Ltd
Original Assignee
Sekisui Chemical Co Ltd
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Publication date
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 簡単な工程かつ簡易な装置により、基材の部
分的な表面処理を可能とする放電プラズマ処理方法を提
供する。 【解決手段】 略水平方向に配設された一対の対向電極
と該対向電極の周辺部に垂設された固体誘電体壁によっ
て形成される処理空間に基材を配置し、当該処理空間を
処理用ガスで充填し、大気圧近傍の圧力下で、当該対向
電極間にパルス化された電界を印加することにより放電
プラズマを発生させる。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、放電プラズマ処理
方法及びその装置に関する。
【0002】
【従来の技術】固体表面の表面処理を行うドライプロセ
スとして、0.01〜10Torr程度の低圧でグロー
放電プラズマによる表面処理法が広く知られており、工
業的にも広く応用されている。これよりも高い圧力にな
ると放電が局所的になってアーク放電に移行し、耐熱性
の乏しいプラスチック基板への応用は困難となるため、
上記低圧下で行われている。上記の低圧を得るために、
容器は高価な真空チャンバーを必要とし、さらに真空排
気装置を設置する必要がある。また、真空中で処理する
ため大面積の基板に処理しようとすると、大きな真空容
器を使用しなければならなず、かつ、真空排気装置も大
出力のものが必要となる。その結果、設備が極めて高価
なものになってしまう。また、吸水率の高いプラスチッ
ク基板の表面処理を行なう場合、真空引きに長時間を用
し、処理品のコストが高くなるという問題点もあった。
【0003】そこで、このような問題点を克服するため
に、装置、設備の低コスト化と、大面積基板の処理が可
能な大気圧でのグロー放電プラズマによる表面処理方法
が提案され、例えば、細線型電極を用いて成膜する方法
が特公平2−48626号公報に開示されている。この
方法では、Heを主体とする不活性ガスと含フッ素ガス
やモノマーガスの混合物を、複数の開孔を有する多孔管
から基板近傍のプラズマ領域に供給する。
【0004】このような従来技術によって、基材の一部
分だけを部分的に表面処理する場合には、処理しない部
分を公知の方法によってマスクキングし、処理後にマス
キングを除去するという方法が一般的に採用されている
ため、マスキングに余分な工程を必要とするという欠点
があった。
【0005】特開平6ー108257号公報には、吹き
出し口端縁に突先部を設けた金属筒を電極とし、吹き出
し口からガスを吹き出して電圧を印加し、大気圧下で放
電プラズマを生成させるプラズマ反応装置が開示されて
いる。しかしながら、この装置では放電プラズマに接触
する基材部分のみが表面処理されるため、数cm2 以上
の領域を処理する場合には、装置の数を増やしたり、装
置を走査する必要があり、装置機構が複雑になるという
欠点があった。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、上記に鑑
み、簡単な工程かつ簡易な装置で基材の部分的な表面処
理を可能とする、放電プラズマ処理方法及びその装置を
提供する。
【0007】
【課題を解決するための手段】本発明の放電プラズマ処
理方法は、略水平方向に配設された一対の対向電極と該
対向電極の周辺部に垂設された固体誘電体壁によって形
成される処理空間に基材を配置し、当該処理空間を処理
用ガスで充填し、大気圧近傍の圧力下で、当該対向電極
間にパルス化された電界を印加することにより放電プラ
ズマを発生させることを特徴とする。
【0008】また、本発明の放電プラズマ処理装置は、
上記放電プラズマ処理方法を行うための要件を備えた処
理装置であり、略水平方向に配設された一対の対向電極
の周辺部に垂設された固体誘電体壁によって形成される
処理空間と、該処理空間に処理用ガスを導入するガス導
入管及び該処理空間の排気を行うガス排出管と、当該対
向電極間にパルス化された電界を印加する電源とを具備
することを特徴とする。
【0009】本発明において、上記大気圧近傍の圧力下
とは、100〜800Torrの圧力下を指す。圧力調
整が容易で、装置が簡便になる700〜780Torr
の範囲が好ましい。
【0010】上記基材としては、プラスチック以外に、
金属、ガラス、紙、繊維、セメント等の建築材料、不織
布等が挙げられ、これらのシート状物、成形品のいずれ
でもと使用可能であり、その表面が多孔質であってもよ
い。金属としては、ステンレス系鋼、炭素鋼、超鋼等の
合金;アルミニウム、銅、ニッケル等の単成分金属など
が挙げられる。基材のプラズマ放電処理される部分の厚
みは、用途に応じて適宜決定されるが、放電プラズマが
均一に発生し易い0.03〜30mm未満が好ましい。
【0011】以下、第1発明のプラズマ表面処理方法の
一例として図面を参照して説明する。図1は第1発明で
使用される処理装置の1例を示す模式図である。本処理
装置は、電源部1、上部電極2及び下部電極3ならびに
固体誘電体壁4a、4bから構成される。上記上部電極
2及び下部電極3は略水平方向に対向して配設され、上
部電極2と下部電極3間と囲むように上記固体誘電体壁
4a、4bが垂設されて処理空間11を形成している。
処理空間の形状は、特に制限はなく、角筒形であっても
よく円筒形であってもよい。
【0012】上記上部電極2及び下部電極3と固体誘電
体壁4a、4bによって形成された処理空間11に、基
材6を配置して、放電プラズマ処理を行う。この際に、
基材6として処理空間11より大きな面積を有するもの
を用い、処理を施したい部位が処理空間11内におさま
るように固体誘電体壁4a、4bによって挟持して放電
プラズマを発生させることによって、基材の部分的な表
面処理を行うことが出来る。
【0013】上記上部電極2と下部電極3には、絶縁具
9を介して装置を上下方向に開閉するために電極固定具
5が接続されており、電極固定具5を作動させて装置を
開け、基材6を固体誘電体壁4aと4bの間に挿入して
閉じることにより、基材6を固体誘電体壁4aと4bの
接触部で挟持することができる。このような構造を採用
して、基材を移動させながら部分的な処理を連続して行
うことにより、大きな基材でも比較的小さな装置によっ
て処理が可能となる。
【0014】対向電極の配置構造として、図1では水平
方向に上部電極2と下部電極3が対向する平行平板型を
使用したが、平行平板型以外の、同軸円筒型、円筒対向
平板型、球対向平板型、双曲面対向型でも使用可能であ
る。
【0015】上部電極2及び下部電極3間の距離は、固
体誘電体の厚みや、基材6の厚み、印加電圧の大きさ等
によって適宜決定されるが、基材6の厚み以上30mm
未満の範囲が好ましい。電極間距離が30mmを越える
と、放電プラズマがアーク放電に移行しやすくなり均一
性が損なわれるので好ましくない。
【0016】基材6として、金属等の導電性材料、多孔
質材料を使用する場合は、アーク放電が生じるのを防止
するために、電極対向面を覆うように固体誘電体(図示
しない)を装着するのが好ましい。固体誘電体は、一方
の対向面に装着すればよいが、両方の対向面に装着して
も構わない。
【0017】後述する処理用ガスを処理空間11へ連続
的に導入することによって、処理空間11は処理用ガス
で置換され大気圧近傍の圧力に保たれる。上記処理用ガ
スは、流量調整されてガス導入管7a,7bから直接処
理空間11へ導入されてもよく、電極にガス導入管を配
設してもよい。また、上記電極2及び下部電極3の対向
面を、図1に示すように多孔構造とし、この孔10より
処理用ガスを処理空間11へ供給してもよい。特に、処
理空間11が大きくなったり、複雑な形状の場合は、こ
のような孔10からの供給することにより、処理空間1
1への均一な供給が可能となる。また、上記処理用ガス
は、固体誘電体4a,4bに配設されたガス導入管から
処理空間11へ供給してもよい。
【0018】過剰に供給された処理用ガスは、固体誘電
体壁4a,4bに配設されたガス排出口8から排出され
る。排出された処理用ガスは、必要に応じて、除害器等
により除害して大気中に放出してもよく、処理空間へ供
給して再使用してもよい。なお、固体誘電体壁4a,4
bとして多孔質の材料を用いて、特に排出口を設けない
構造としたり、多数個の排出口を設けた構造にしてもよ
い。このような場合、安全性を配慮し、空気中に処理用
ガスが拡散しないように、容器内で放電プラズマ処理を
行うとよい。上記多孔質または多数の排出口を有する固
体誘電体壁4a,4bを使用する場合は、外部からの空
気混入がないように、処理空間内を僅かながら加圧状態
にするのが好ましい。
【0019】上記対向電極の材質としては、ステンレ
ス、真鍮等の多成分系金属;銅、アルミニウム等の純金
属などが挙げられる。
【0020】上記固体誘電体壁の材質としては、ポリテ
トラフルオロエチレン、ポリエチレンテレフタレート等
のプラスチック、ガラス、二酸化珪素、酸化アルミニウ
ム、二酸化ジルコニウム、二酸化チタン等の金属酸化
物、チタン酸バリウム等の複酸化物等が挙げられる。
【0021】特に、25℃環境下における比誘電率が1
0以上のものである固体誘電体を用いれば、低電圧で高
密度の放電プラズマを発生させることができ、高速連続
処理や高速表裏処理に有効である。比誘電率の上限は特
に限定されるものではないが、現実の材料では18,5
00程度のものが入手可能であり、本発明に使用可能で
ある。特に好ましくは比誘電率が10〜100の固体誘
電体である。上記比誘電率が10以上である固体誘電体
の具体例としては、二酸化ジルコニウム、二酸化チタン
等の金属酸化物、チタン酸バリウム等の複酸化物を挙げ
ることが出来る。
【0022】チタン酸化合物は強誘電体として知られて
おり、TiO2 単体の場合は、結晶構造で比誘電率が異
なり、ルチル型結晶構造では比誘電率80程度である。
又、Ba,Sr,Pb,Ca,Mg,Zr等の金属の酸
化物とTiO2 との化合物の場合は、比誘電率は約2,
000〜18,500であり、その比誘電率は純度や結
晶性によって変化させることが出来る。
【0023】一方、上記TiO2 単独の場合は、加熱環
境下では組成変化が激しいため使用環境が制限された
り、通常の皮膜形成方法で得られる皮膜は、固有抵抗が
104Ω・cm程度であるためアーク放電に移行し易く
なるという注意を要する。このためTiO2 単独よりも
Al2 3 を含有させて用いた方がよい。TiO2 とA
2 3 の混合物は、熱的にも安定であるため実用上も
好適である。好ましくは、酸化チタン5〜50重量%、
酸化アルミニウム50〜95重量%で混合された金属酸
化物被膜である。酸化アルミニウムの割合が50重量%
未満であると、アーク放電が発生し易く、95重量%を
超えると放電プラズマ発生に高い印加電圧が必要とな
る。このような皮膜は、比誘電率が10〜14程度、固
有抵抗が10 10程度となり本発明で用いる固体誘電体と
して好適である。
【0024】又、上記酸化ジルコニウムは、単独の場
合、比誘電率は約12程度であり、低い電圧で放電プラ
ズマを発生させるのに有利である。通常、酸化ジルコニ
ウムは酸化イットリウム(Y2 3 )、炭酸カルシウム
(CaCO3 )、酸化マグネシウム(MgO)等を30
重量%以内で添加して、結晶変態による膨張、収縮を防
止し安定化されるているが、このような添加物が添加さ
れてもよい。比誘電率は、添加物の種類や金属酸化物の
結晶性によって決定されるが、少なくとも70重量%は
酸化ジルコニウムであるのが好ましい。例えば、酸化イ
ットリウムが4〜20重量%添加された酸化ジルコニウ
ム被膜は比誘電率が8〜16程度となり、本発明の固体
誘電体として好適である。
【0025】本発明の放電プラズマ処理方法において
は、放電プラズマ発生時の処理空間に存在する気体(処
理用ガス)の選択により任意の処理が可能である。
【0026】上記処理用ガスとしてフッ素含有化合物ガ
スを用いることによって、基材表面にフッ素含有基を形
成させて表面エネルギーを低くし、撥水性表面を得るこ
とが出来る。上記フッ素元素含有化合物としては、4フ
ッ化炭素(CF4 )、6フッ化炭素(C2 6 )、6フ
ッ化プロピレン(CF3 CFCF2 )、8フッ化シクロ
ブタン(C4 8 )等のフッ素−炭素化合物、1塩化3
フッ化炭素(CClF 3 )等のハロゲン−炭素化合物、
6フッ化硫黄(SF6 )等のフッ素−硫黄化合物等が挙
げられる。安全上の観点から、有害ガスであるフッ化水
素を生成しない4フッ化炭素、6フッ化炭素、6フッ化
プロピレン、8フッ化シクロブタンを用いることが好ま
しい。
【0027】また、処理用ガスとして以下のような酸素
元素含有化合物、窒素元素含有化合物、硫黄元素含有化
合物を用いて、基材表面にカルボニル基、水酸基、アミ
ノ基等の親水性官能基を形成させて表面エネルギーを高
くし、親水性表面を得ることが出来る。
【0028】上記酸素元素含有化合物としては、酸素、
オゾン、水、一酸化炭素、二酸化炭素、一酸化窒素、二
酸化窒素の他、メタノール、エタノール等のアルコール
類、アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類、メタ
ナール、エタナール等のアルデヒド類等の酸素元素を含
有する有機化合物等が挙げられる。これらは単独でも2
種以上を混合して用いてもよい。さらに、上記酸素元素
含有化合物と、メタン、エタン等の炭化水素化合物のガ
スを混合して用いてもよい。また、上記酸素元素含有化
合物に50体積%以下でフッ素元素含有化合物を添加す
ることにより親水化が促進される。フッ素元素含有化合
物としては上記例示と同様のものを用いればよい。上記
窒素元素含有化合物としては、窒素、アンモニア等が挙
げられる。上記窒素元素含有化合物と水素を混合して用
いてもよい。上記硫黄元素含有化合物としては、二酸化
硫黄、三酸化硫黄等が挙げられる。また、硫酸を気化さ
せて用いることも出来る。これらは単独でも2種以上を
混合して用いてもよい。
【0029】また、分子内に親水性基と重合性不飽和結
合を有するモノマーの雰囲気下で処理を行うことによ
り、親水性の重合膜を堆積させることも出来る。上記親
水性基としては、水酸基、スルホン酸基、スルホン酸塩
基、1級若しくは2級又は3級アミノ基、アミド基、4
級アンモニウム塩基、カルボン酸基、カルボン酸塩基等
の親水性基等が挙げられる。また、ポリエチレングリコ
ール鎖を有するモノマーを用いても同様に親水性重合膜
を堆積することが出来る。上記モノマーとしては、(メ
タ)アクリル酸、(メタ)アクリルアミド、N,N−ジ
メチルアクリルアミド、(メタ)アクリル酸ナトリウ
ム、(メタ)アクリル酸カリウム、スチレンスルホン酸
ナトリウム、アリルアルコール、アリルアミン、ポリエ
チレングリコールジ(メタ)アクリル酸エステル等が挙
げられる。これらのモノマーは、単独または混合して用
いられる。
【0030】さらに、Si、Ti、Sn等の金属の金属
−水素化合物、金属−ハロゲン化合物、金属アルコラー
ト等の処理用ガスを用いて、SiO2 、TiO2 、Sn
2等の金属酸化物薄膜を形成させ、基材表面に電気
的、光学的機能を与えることが出来る。
【0031】経済性及び安全性の観点から、上記処理用
ガスが不活性ガスによって希釈された雰囲気中で処理を
行うことが好ましい。不活性ガスとしては、ヘリウム、
ネオン、アルゴン、キセノン等の希ガス、窒素気体等が
挙げられる。これらは単独でも2種以上を混合して用い
てもよい。従来、大気圧近傍の圧力下においては、ヘリ
ウムの存在下の処理が行われてきたが、本発明のパルス
化された電界を印加する方法によれば、ヘリウムに比較
して安価なアルゴン、窒素気体中における安定した処理
が可能である。
【0032】本発明においては、上記対向電極間にパル
ス化された電界を印加することにより放電プラズマを発
生させる。よって、上記電源部1はパルス化された電界
を印加することのできるものを用いる。
【0033】図2にパルス電圧波形の例を示す。波形
(a)、(b)はインパルス型、波形(c)はパルス
型、波形(d)は変調型の波形である。図2には電圧印
加が正負の繰り返しであるものを挙げたが、正又は負の
いずれかの極性側に電圧を印加するタイプのパルスを用
いてもよい。本発明におけるパルス電圧波形は、ここで
挙げた波形に限定されないが、パルスの立ち上がり時間
及び立ち下がり時間が短いほどプラズマ発生の際のガス
の電離が効率よく行われる。特に、パルスの立ち上がり
時間及び立ち下がり時間が40ns〜100μsである
ことが好ましい。40ns未満では現実的でなく、10
0μsを超えると放電状態がアークに移行しやすく不安
定なものとなる。より好ましくは50ns〜5μsであ
る。なお、ここでいう立ち上がり時間とは、電圧変化が
連続して正である時間、立ち下がり時間とは、電圧変化
が連続して負である時間を指すものとする。さらに、パ
ルス波形、立ち上がり時間、周波数の異なるパルスを用
いて変調を行ってもよい。このような変調は高速連続表
面処理を行うのに適している。
【0034】パルス電界の周波数は、1kHz〜100
kHzであることが好ましい。1kHz未満であると処
理に時間がかかりすぎ、100kHzを超えるとアーク
放電が発生しやすくなる。また、ひとつのパルス電界が
印加される時間は、1μs〜1000μsであることが
好ましい。1μs未満であると放電が不安定なものとな
り、1000μsを超えるとアーク放電に移行しやすく
なる。より好ましくは、3μs〜200μsである。上
記ひとつのパルス電界が印加される時間とは、図2中に
例を示してあるが、ON、OFFの繰り返しからなるパ
ルス電界における、ひとつのパルスの連続するON時間
を言う。
【0035】上記対向電極に印加する電圧の大きさは適
宜決められるが、電極に印加した際に電界強度が1〜1
00kV/cmとなる範囲にすることが好ましい。1k
V/cm未満であると処理に時間がかかりすぎ、100
kV/cmを超えるとアーク放電が発生しやすくなる。
また、直流が重畳されたパルス電界を印加してもよい。
【0036】図3に、このようなパルス電界を印加する
際の電源のブロック図を示す。さらに、図4に、電源の
等価回路図の一例を示す。図4にSWと記されているの
はスイッチとして機能する半導体素子である。上記スイ
ッチとして500ns以下のターンオン時間及びターン
オフ時間を有する半導体素子を用いることにより、上述
のような電界強度が1〜100kV/cmであり、か
つ、パルスの立ち上がり時間及び立ち下がり時間が40
ns〜100μsであるような高電圧かつ高速のパルス
電界を実現することが出来る。
【0037】以下、図4の等価回路図を参照して、電源
の原理を簡単に説明する。+Eは、正極性の直流電圧供
給部、−Eは、負極性の直流電圧供給部である。SW1
〜4は、上記のような高速半導体素子から構成されるス
イッチ素子である。D1〜4はダイオードを示してい
る。I1 〜I4 は電流の流れ方向を表している。
【0038】第一に、SW1がONにすると、正極性の
負荷が電流I1 の流れ方向に充電する。次に、SW1が
OFFになってから、SW2を瞬時にONにすることに
より、充電された電荷が、SW2とD4を通ってI3
方向に充電される。また次に、SW2がOFFになって
から、SW3をONにすると、負極性の負荷が電流I2
の流れ方向に充電する。次に、SW3がOFFになって
から、SW4を瞬時にONにすることにより、充電され
た電荷が、SW4とD2を通ってI4 の方向に充電され
る。上記一連の操作を繰り返し、図5の出力パルスを得
ることが出来る。表1にこの動作表を示す。
【表1】 この回路の利点は、負荷のインピーダンスが高い場合で
あっても、充電されている電荷をSW2とD4又はSW
4とD2を動作させることによって確実に放電すること
が出来る点、及び、高速ターンオンのスイッチ素子であ
るSW1、SW3を使って高速に充電を行うことが出来
る点にあり、このため、図5のように立ち上がり時間、
立ち下がり時間の非常に早いパルス信号を得ることが出
来る。
【0039】放電プラズマ処理に要する時間は、印加電
圧の大きさや、基材、混合ガス配合等によって適宜決定
されるが、例えば、フッ化炭素ガスを使用してプラスチ
ック表面を撥水処理する場合、前記印加電圧の範囲で
は、5秒程度で撥水性能の付与が可能であり、それ以上
の時間をかけて処理しても効果は著しく向上せず、短時
間の処理で十分である。
【0040】また、基材を加熱又は冷却した状態で処理
を行ったり、化学的な前処理又は後処理を組み合わせて
処理を行うことも出来る。
【0041】
【実施例】以下に実施例を掲げて本発明を更に詳しく説
明するが、本発明はこれら実施例のみに限定されるもの
ではない。なお、以下の実施例では、図4の等価回路図
による高電圧パルス電源(ハイデン研究所社製、半導体
素子:IXYS社製、型番IXBH40N160−62
7Gを使用)を用いた。
【0042】(実施例1、2)図1に示した円筒形の装
置において、1mmの孔が1cm間隔に設けられた直径
120mmの2枚のステンレス(SUS304) 製円板
を、1cmの間隔で対向するように配置して、上部電極
2及び下部電極3とし、内径90mm、外径110mm
のポリエチレンテレフタレート製円筒を固体誘電体壁4
a,4bとし、上下の固体誘電体壁間に基材6として1
50mm×150mm×50μm厚のポリエチレンテレ
フタレートフィルム(東レ社製、商品名:ルミラーT5
0、初期接触角75度)を挟持させた。次いで、処理空
間11に表2に示した組成の処理用ガスを、ガス導入管
7a,7bから連続的に供給して大気圧とし、表2に示
した所定のパルス電圧及び処理時間で放電プラズマ処理
を行い、基材6の両面に撥水化処理を施した。
【0043】撥水化処理された基材6表面に2mmの水
滴を1cm間隔で滴下し、共和界面科学社製接触角測定
装置「商品名CA−X150」を用いて基材両面の静的
接触角を測定したところ、放電プラズマが接触した直径
90mmの円形の領域のみが処理前の基材よりも大きな
接触角を示し、撥水化されていることが判明した。表2
には、静的接触角の最大値及び最小値を示した。
【0044】(実施例3)図1に示した円筒形の装置に
おいて、1mmの孔が1cm間隔に設けられたステンレ
ス(SUS304) 製の上部電極2の表面に500μm
厚のY2 3 安定化ZrO2 溶射膜を形成し、下側の固
体誘電体壁4bを使用せず、上側の固体誘電体壁4aと
してポリカーボネートを使用し、基材6として150m
m×150mm×2mm厚の表面研磨したステンレス
(SUS304) 板を下部電極3と接するように配置し
た。次いで、表2に示した処理用ガスを、ガス導入管7
aから処理空間に導入して大気圧とした後、表2に示し
た所定のパルス電圧及び処理時間で放電プラズマ処理を
行い、基材6の上側にのみ撥水化処理を施した。上記基
材の撥水化処理面につき、実施例1と同様にして静的接
触角を測定し、その結果を表2に示した。
【0045】(実施例4、5)表2に示した組成の処理
用ガス、パルス電圧及び処理時間で放電プラズマ処理を
行ったこと以外は、実施例1と同様にしてポリエチレン
テレフタレートフィルム基材の両面に親水化処理を施し
た。この親水化処理された基材の両面につき、実施例1
と同様にして静的接触角を測定し、その結果を表2に示
した。
【0046】(実施例6)表2に示したように、上部電
極2側のガス導入管7aから供給する処理用ガスと下部
電極3側のガス導入管7bから供給する処理用ガスの種
類を変えたこと以外は実施例1と同様にして、基材の上
側に撥水化処理、基材の下側に親水化処理を施した。こ
の基材の両面につき、実施例1と同様にして静的接触角
を測定し、その結果を表2に示した。静的接触角の測定
結果から、基材上面では、放電プラズマが接触した直径
90mmの円形の領域のみが撥水化処理され、基材下面
では、放電プラズマが接触した直径90mmの円形の領
域のみが親水化処理されていることが判明した。
【0047】比較例1 パルス化された電界の代わりに、周波数12.2kH
z、sin波形の電圧を印加したこと以外は実施例1と
同様にして処理を行おうとしたが、放電が発生するため
に9kV以上の電圧を必要とし、放電状態はアーク放電
であったために、被処理体であるポリエチレンテレフタ
レートフィルムが溶融してしまい、表面処理を行うこと
が出来なかった。参考のために、Arガスに代えてHe
ガスを用いてsin波形電圧により処理を行った結果を
表2に示す。
【0048】
【表2】
【0049】
【発明の効果】本発明の放電プラズマ処理方法は、上述
の構成であり、ガス雰囲気中で、基材表面に放電プラズ
マに接触させることによって、大気圧近傍の圧力下にお
いて、簡単に基材の部分的な表面処理を行うことができ
る。また、本発明の放電プラズマ処理方法は、パルス化
された電界を印加することによって放電プラズマを発生
させるものであるため、従来の方法よりも処理用ガスの
選択の幅が広く、安定した放電状態を実現可能な電圧条
件等の範囲も広い。さらに、パルス化された電界を印加
することにより、より高密度の放電プラズマを発生させ
ることが可能であり、高速連続処理に対応するものとな
っている。また、本発明の放電プラズマ処理装置は、上
述の構成であり、大気圧近傍の雰囲気下で、基材の両面
を同時に表面処理することができるので、表面処理工程
が簡単になり、容易に表面処理行程をインライン化が可
能である。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の放電プラズマ処理装置の例を示す
模式断面図。
【図2】 本発明のパルス化された電界の例を示す電
圧波形図。
【図3】 パルス化された電界を発生させる電源のブ
ロック図。
【図4】 パルス化された電界を発生させる電源の等
価回路図。
【図5】 パルス化された電界の動作表に対応する出
力パルス信号の図。
【符号の説明】
1 電源部(高電圧パルス電源) 2 上部電極 3 下部電極 4a,4b 固体誘電体壁 5 電極固定治具 6 基材 7a,7b 混合ガス導入管 8 ガス排出管 9 絶縁具 10 孔 11 処理空間

Claims (6)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 略水平方向に配設された一対の対向電極
    と該対向電極の周辺部に垂設された固体誘電体壁によっ
    て形成される処理空間に基材を配置し、当該処理空間を
    処理用ガスで充填し、大気圧近傍の圧力下で、当該対向
    電極間にパルス化された電界を印加することにより放電
    プラズマを発生させることを特徴とする放電プラズマ処
    理方法。
  2. 【請求項2】 パルス化された電界における、電圧立ち
    上がり時間及び立ち下がり時間が40ns〜100μ
    s、電界強度が1〜100kV/cmとなされているこ
    とを特徴とする請求項1に記載の放電プラズマ処理方
    法。
  3. 【請求項3】 パルス化された電界における、ひとつの
    パルス電界が印加される時間が1μs〜1000μs、
    周波数が1kHz〜100kHzとなされていることを
    特徴とする請求項1又は2に記載の放電プラズマ処理方
    法。
  4. 【請求項4】 略水平方向に配設された一対の対向電極
    の周辺部に垂設された固体誘電体壁によって形成される
    処理空間と、該処理空間に処理用ガスを導入するガス導
    入管及び該処理空間の排気を行うガス排出口と、当該対
    向電極間にパルス化された電界を印加する電源とを具備
    することを特徴とする放電プラズマ処理装置。
  5. 【請求項5】 高電圧直流を供給可能な直流電圧供給
    部、並びに、ターンオン時間及びターンオフ時間が50
    0ns以下である半導体素子により当該高電圧直流を高
    電圧パルスに変換するパルス制御部から構成される高電
    圧パルス電源が、対向電極間に接続されていることを特
    徴とする請求項4に記載の放電プラズマ処理装置。
  6. 【請求項6】 固体誘電体壁が、25℃環境下における
    比誘電率が10以上のものからなることを特徴とする請
    求項4又は5に記載の放電プラズマ処理装置。
JP8286602A 1996-10-29 1996-10-29 放電プラズマ処理方法及びその装置 Pending JPH10130849A (ja)

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Cited By (3)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
EP0957245A2 (en) 1998-05-13 1999-11-17 Niigata Engineering Co., Ltd. Engine using liquid and/or gaseous fuel and method of operating the same
JP2010061860A (ja) * 2008-09-01 2010-03-18 Chube Univ プラズマ生成装置
CN102337511A (zh) * 2010-07-20 2012-02-01 东京毅力科创株式会社 屏蔽部件、其构成零件以及具有屏蔽部件的基板载置台

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