JPH10130759A - 機械的強度の高い電解コンデンサ用アルミニウム合金箔 - Google Patents

機械的強度の高い電解コンデンサ用アルミニウム合金箔

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JPH10130759A
JPH10130759A JP30418096A JP30418096A JPH10130759A JP H10130759 A JPH10130759 A JP H10130759A JP 30418096 A JP30418096 A JP 30418096A JP 30418096 A JP30418096 A JP 30418096A JP H10130759 A JPH10130759 A JP H10130759A
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遵 清水
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雅彦 片野
Hidehiko Ishii
秀彦 石井
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富美雄 大竹
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Abstract

(57)【要約】 【目的】 電解エッチング後の軟化処理工程における急
速加熱で機械的強度を低下させるような粗大晶が発生せ
ず、しかも高い静電容量が得られる電解コンデンサ用ア
ルミニウム合金箔を提供する。 【構成】 Al純度が99.97%以上であって、Siを20
〜70ppm 、Feを20〜70ppm 、Cuを5〜30ppm 、
CrおよびZrの各元素上限値を10ppm とし少くとも何れ
か1種を1〜10ppm 含有し、更にCo,Nb,Moの各元素
の上限を1ppm として少くとも何れか1種を0.1〜1pp
m 含有し、しかもVが5ppm 以下、Niが1ppm 以下に規
制する。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は電解コンデンサ用ア
ルミニウム合金箔に係り、電解エッチング後の軟化処理
工程における急速加熱で機械的強度を低下させるような
粗大晶が発生せず、しかも高い静電容量が得られる合金
箔に関するものである。
【0002】
【従来の技術】アルミニウムは、陽極酸化により表面に
耐電圧性の緻密な酸化皮膜が形成され誘電体として利用
できること、そしてさらに電気化学的にエッチングする
ことにより表面積を拡大できることを活かしてコンデン
サとして利用されている。このコンデンサに利用される
アルミニウムは陽極用箔においては、高い静電容量が得
られるために純度99.97%以上、好ましくは99.98
%以上のアルミニウムをベースに、その他の有意または
不純物元素を必要範囲に配合調整され、厚さ約0.1mmの
電解コンデンサ用薄板として使用されている。この厚さ
約0.1mmの薄板は一般的には酸系電解液を用いたエッチ
ング工程で電気化学的に両面から穿孔されピットを多数
形成して表面積を拡大し、また芯部を残すことによって
薄板としての強度を付与している。さらに次の化成行程
で処理液、条件を変えて、誘電体酸化皮膜を電気化学的
に形成させ、次いで製品幅に切断し、リードを取り付
け、セパレート紙を挟み、巻き取って電解液を含浸して
ケースに入れ、封口材で封口する。その後電圧を印加
し、加工中に付けた誘電体酸化皮膜の傷を修復して完成
品とされる。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】上記したような電解コ
ンデンサ用箔の中で、特に中・低圧用として用いられる
硬質箔は、拡面処理として交流で電気化学的にエッチン
グされた後、箔割れを防止するために300℃以上の高
温で連続的に軟化されてコイル状に巻取られるが、巻取
り時に箔切れが発生することがある。即ち加熱ゾーンを
通過するときの昇温速度は、箔の厚さが110μm 以下
と薄いために通常約1℃/秒以上の比較的速い昇温速度
となる。この時、数cmを超える一次再結晶粒の異常成長
が発生することがあり、このような数cm以上にも及ぶ著
しい粗大晶の発生した箔はその部分の機械的強度が低下
する。従って巻取時の箔切れは、コイル状に巻取られる
ときにそうした粗大晶発生部分が切れ易くなることによ
るものと推定され、硬質箔としてはエッチング後に施さ
れる急速高温加熱によっても粗大晶の発生することのな
いような合金箔が求められている。
【0004】
【課題を解決するための手段】本発明者等は上記のよう
なエッチング後の高速加熱による軟化処理に際して発生
する粗大晶の発生防止について種々検討した結果、Cr、
Zrの群の元素とCo、Nb、Moの群の元素を組合せて含有さ
せた合金箔は上記の軟化処理において粗大晶の発生を有
効に防止できることを見出し、第1の本発明を完成した
ものであって、Al純度が99.97%以上であって、Siを
20〜70ppm 、Feを20〜70ppm 、Cuを5〜30pp
m 、CrおよびZrの各元素上限値を10ppm とし少くとも
何れか1種を1〜10ppm 含有し、更にCo,Nb,Moの各
元素の上限を1ppm として少くとも何れか1種を0.1〜
1ppm 含有し、しかもVが5ppm 以下、Niが1ppm 以下
であることを特徴とする機械的強度の高い電解コンデン
サ用アルミニウム合金箔である。
【0005】また、本発明者等は更に検討した結果、上
記したような軟化処理において粗大晶が発生するのは該
軟化処理における再結晶直前の回復状態が不均一である
からであって、この軟化処理における再結晶直前の合金
箔に関し再結晶活性化エネルギーを充分に高いものとし
ておくと上記軟化処理において粗大晶の発生を有効に防
止できることを見出し第2の発明を完成したものであっ
て、この第2発明は、下記の式で定義されるQが42kc
al/モル以上であることを特徴とする請求項1に記載の
機械的強度の高い電解コンデンサ用アルミニウム合金箔
である。 In(1/t1/2 )=A−Q/(R・T) ここで、t1/2 は箔の初期抗張力をHO 、極軟質状態の
抗張力をHF としたときに(HO >HF )箔が(HO
F )/2の硬さになるまでの時間、Aは定数、Rは気
体定数、Tは箔の焼鈍温度(K)である。
【0006】
【発明の実施の形態】上記したような本発明によるもの
について更に説明すると、先ず粗大結晶については本発
明の用途に使用されるアルミニウム合金箔は高純度であ
ることから粒界移動阻止作用をもつ微細な金属間化合物
の分布が疎かつ不均一であり、従って、熱間ないし冷間
圧延工程中に起こる組織の回復の状態は不均一であると
考えられる。そして、不均一な回復組織を有するまま加
熱による軟質化処理に供された合金箔は徐々に昇温され
る場合には回復が全体で均一に起るために優先的に再結
晶しそれが成長してしまう再結晶粒はなく、比較的均一
・微細な再結晶組織となるが、速い昇温速度のときに
は、既に回復している部分は再結晶開始が遅れ、転位密
度の高い部分で核生成した再結晶粒は優先的に、かつ、
速く成長する。そして、これらの再結晶粒は不純物によ
って成長が阻止されることがないため著しく粗大化する
ことになると考えられる。
【0007】また本発明におけるSi、FeおよびCu量につ
いて言うならば、先ずSi含有量は、20〜70ppm 、Fe
含有量は、20〜70ppm であり、Cuの含有量は5〜3
0ppm とする。これらが下限値未満であると、金属間化
合物量が少なすぎるためそれらの分布は疎、かつ、不均
一になり、疎で不均一な化合物分布を有する箔は不均一
なサブグレイン組織を有するため、急速加熱時に粗大晶
を発生する。また更に、化合物分布が少ないと、エッチ
ング開始点が少ないためコンデンサとして重要な特性の
一つである静電容量が低下する傾向も見られる。また、
上限値を超えると、晶・析出物の分布状態の制御が困難
となり、エッチング開始点が増えすぎるために表面でエ
ッチピット崩れが発生して静電容量が低下する。
【0008】次にアルミ純度については、主要元素以外
の例えば、Ga、Zn、Mn等の元素量が多すぎる場合にもや
はり晶・析出物の分布状態を制御することが困難とな
り、エッチング開始点が増えすぎて静電容量が低下す
る。Al純度は99.97wt%以上、好ましくは99.98wt
%以上がよい。
【0009】また、Cr、Zr、およびCo、Nb、Moについて
は、先ずCr、Zrの各元素についての上限値を10ppm と
し、少くとも1種を0.1〜10ppm 含有させ、またCo、
Nb、Moの各元素について上限値を1ppm とし、少くとも
1種を0.1〜1ppm 含ませることによって、合金箔に微
細なAl−Fe−(Cr,Zr)−(Co,Nb,Mo)系化合物を形
成させ、軟化処理において粗大晶の発生を防止するため
のものである。即ち微量添加されたこれらの元素は、A
l,Feと化合物を形成し、鋳塊の均質化処理ないし熱間
圧延工程中にマトリックス中に微細・均一に分散、析出
する。これら均一に分布した化合物は、その後の冷間圧
延中に形成されるサブ粒界を安定化させるものと思われ
る。このような安定なサブグレンを有する硬質箔は軟化
処理における急速加熱時に粗大晶が発生し難くなるもの
と推定され、これらの元素が共に下限値未満であると粗
大晶抑制の効果がなく、また何れか1種の元素が上限値
を超えると電位的に貴である化合物が増えすぎてエッチ
ング開始点が多くなりすぎ表面崩れを起こして静電容量
が低下する。V、Niについては、Vを5ppm 以下、Niを
1ppm 以下に規制することによって、エッチング開始点
過多による表面崩れ、静電容量低下を好ましく防止する
ことができる。
【0010】再結晶化エネルギーQについては、本発明
者等は不純物の存在状態および加工組織の状態を定量的
に表現するために、再結晶の活性化エネルギーなる考え
方を導入し、種々の実験を重ねた結果、このエネルギー
値が42kcal/モル以上である箔は軟化処理における再
結晶直前の合金箔における回復状態が不均一であっても
粗大晶を発生しないことを知見した。即ち再結晶活性化
エネルギーとは、In(1/t1/2 )=A−Q/(R・
T)で定義されるQであり、換言すれば材料における再
結晶の起りやすさの目安であって、このQの大きい材料
では再結晶が起こりがたく、小さい材料では起こり易い
ことを意味する。本願の純度においてQの大きい材料と
は、サブグレインの分布状態、即ち、転位の分布状態に
依存した再結晶駆動力である歪エネルギー分布に優劣が
少ない。即ち、加工組織の状態がより均一であることを
意味していると考えられる。なおここで、t1/2 は、箔
の初期の抗張力をHO 、極軟質状態の抗張力をHF とし
たときに(HO >HF )、箔が(HO +HF )/2の硬
さになるまでの時間。Aは定数、Rは気体定数、Tは箔
の焼鈍温度(K)であるが、このようにして定義された
Qが42kcal/モル以上である電解コンデンサ用アルミ
ニウム合金箔は、エッチング後の急速加熱軟化処理にお
いて回復状態の不均一性が均一化し、粗大晶の発生が無
い。
【0011】なお上記のような、再結晶の活性化エネル
ギーのコントロールは、合金箔の製造工程で微量元素に
よる金属間化合物の大きさを大きくなるような処理をす
ると小さくなり、微細になるような処理をすると大きく
なる。たとえば圧延前の鋳塊の均質化処理を高温長時間
の保持ないし熱間圧延を高温で長時間行うと金属間化合
物が大きく析出し上記活性化エネルギーが小さくなり、
鋳塊の均質化処理を低温処理ないし熱間圧延を低温で行
なうと金属間化合物を微細均一に析出させることがで
き、上記活性化エネルギーを大きくできる。
【0012】
【実施例】上記したような本発明によるものの具体的な
実施例について説明する。即ち本発明はこのような実施
例に限られるものでないことは当然であるが、本発明者
等は次の表1に示すような組成を有する鋳塊を半連続鋳
造機によって鋳造し、500±10℃の温度で4時間の
均質化処理を施した後、これらを常法に従った熱間、冷
間圧延によって厚さ0.1mmの硬質箔とした。
【0013】
【表1】
【0014】上記のようにして得られた硬質箔は次のよ
うな電解エッチング性、再結晶活性化エネルギーを測定
し、また粗大晶を評価した。 電解エッチング性 電解エッチング条件 エッチング液 :8wt%塩酸+0.8wt%硫酸 エッチング温度:50℃ 電解波形 :正弦波交流、周波数20Hz 電流密度 :180mA/cm2 電解時間 :270秒 静電容量測定 化成溶液 :60℃の100g/アジピン酸二水素
アンモニウム水溶液 化成電圧 :20V 容量測定 :30℃の同溶液中、キャパシタンスメ
ータ使用 再結晶活性化エネルギー それぞれの硬質箔から所定の大きさに切り出した試料に
対し、焼鈍無し、225℃×30分〜12時間、250
℃×30分〜7時間、275℃×10分〜5時間、30
0℃×10分〜3時間、500℃×3時間の焼鈍を行
い、初めに引張試験によって抗張力を求めて各試料毎の
等温軟化曲線を作成した。次に、この軟化曲線から各試
料が(HO +HF )/2の硬さになるまでの時間〔=t
1/2 (分)〕を求め、焼鈍温度の逆数1/Tに対し、ln
1/2 をプロットし近似直線の傾き(即ち、Q/R)を
求めた。そして、ガス定数Rを1.98 cal/(モル・
K)として再結晶の活性化エネルギーQを計算した。 粗大晶評価 予め350℃に加熱した小型空気炉中に、所定の大きさ
に切り出したエッチング前の前記硬質箔試料を挿入し、
10分間保持した。おな、未エッチング試料を用いたの
は、エッチング前後で粗大晶の発生傾向に全く差が無い
こと、および、観察が容易であることによる。この時の
昇温速度は約1℃/秒であった。これら試料を塩酸/硝
酸/フッ酸の混合液でエッチングし、マクロ組織を現出
させて粗大晶を目視にて評価した。
【0015】上記したような測定および評価の結果をま
とめて示すと、次の表2の如くであるが、合金番号10
〜12の試料は静電容量が低いので活性化エネルギーは
測定しなかった。
【0016】
【表2】
【0017】即ち、上述したような表2の結果によるな
らば、本発明による合金番号1〜5の試料は静電容量が
高く、しかも粗大晶の発生がないから軟化処理後にコイ
ル状に巻取っても箔切れの生じないことが理解される。
これに対し本発明の条件から外れる合金番号6、7およ
び8の試料は粗大晶が発生し、また合金番号6、9およ
び10は静電容量が低く、更に合金番号11の試料はア
ルミニウムの純度が低く、また、合金番号12の試料は
Si、Fe、Cuが外れ、ともに静電容量が低くて好ましいも
のでないことが明かである。
【0018】なお、上記のように約0.1mm厚さとされた
硬質合金箔は前述したようにエッチング処理されること
により多数のピットが形成されてから約300〜350
℃に加熱し、軟化処理された後、陽極酸化処理して酸化
皮膜を形成し、耐圧性を付与して中低圧用の電解コンデ
ンサー箔とされるものである。
【0019】
【発明の効果】上述したような本発明によるものは微量
元素を規制したことにより硬質合金箔の静電容量が高め
られ、しかも軟化処理において粗大晶が発生しないこと
から軟化処理後においてコイル状に巻取る際の箔切れを
おこすことがなくなり製造工程を中断することなく、従
って製造工程を中断するようなことなしに生産性の優れ
た電解コンデンサー用の合金箔を得しめるなどの効果を
有しており、工業的に優れた効果を有している。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 目秦 将志 大阪府大阪市中央区久太郎町三丁目6番8 号 東洋アルミニウム株式会社内 (72)発明者 片野 雅彦 静岡県庵原郡蒲原町蒲原1丁目34番1号 日本軽金属株式会社グループ技術センター 内 (72)発明者 石井 秀彦 愛知県稲沢市小池1丁目11番1号 日本軽 金属株式会社名古屋工場内 (72)発明者 大竹 富美雄 愛知県稲沢市小池1丁目11番1号 日本軽 金属株式会社名古屋工場内

Claims (2)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 Al純度が99.97%以上であって、Siを
    20〜70ppm 、Feを20〜70ppm 、Cuを5〜30pp
    m 、CrおよびZrの各元素上限値を10ppm とし少くとも
    何れか1種を1〜10ppm 含有し、更にCo,Nb,Moの各
    元素の上限を1ppm として少くとも何れか1種を0.1〜
    1ppm 含有し、しかもVが5ppm 以下、Niが1ppm 以下
    であることを特徴とする機械的強度の高い電解コンデン
    サ用アルミニウム合金箔。
  2. 【請求項2】 下記の式で定義されるQが42kcal/モ
    ル以上であることを特徴とする請求項1に記載の機械的
    強度の高い電解コンデンサ用アルミニウム合金箔。 In(1/t1/2 )=A−Q/(R・T) ここで、t1/2 は箔の初期抗張力をHO 、極軟質状態の
    抗張力をHF としたときに(HO >HF )箔が(HO
    F )/2の硬さになるまでの時間、Aは定数、Rは気
    体定数、Tは箔の焼鈍温度(K)である。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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US7142409B2 (en) * 2003-07-28 2006-11-28 Cabot Corporation Nitrided valve metal material and method of making same
JP2008108755A (ja) * 2006-09-30 2008-05-08 Nippon Chemicon Corp 電解コンデンサ用電極材
JP2010163649A (ja) * 2009-01-15 2010-07-29 Sumitomo Light Metal Ind Ltd 電解コンデンサ中高圧陽極用アルミニウム箔

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