JPH10121205A - 面内異方性が小さく耐リジング性に優れるフェライト系ステンレス鋼板およびその製造方法 - Google Patents
面内異方性が小さく耐リジング性に優れるフェライト系ステンレス鋼板およびその製造方法Info
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- JPH10121205A JPH10121205A JP8254442A JP25444296A JPH10121205A JP H10121205 A JPH10121205 A JP H10121205A JP 8254442 A JP8254442 A JP 8254442A JP 25444296 A JP25444296 A JP 25444296A JP H10121205 A JPH10121205 A JP H10121205A
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Abstract
ジング性に優れるフェライト系ステンレス鋼板とその製
造方法を提供する。 【解決手段】C:0.02wt%以下、 Si:1.0 wt%以下、 Mn:1.0 wt%以下、 P:0.08wt%以下、 S:0.01wt%以下、 Al:0.30wt%以下、 Cr:11〜50wt%、 Mo:5.0 wt%以下 N:0.03wt%以下を含み、 さらに、CおよびNは、0.005 ≦(C+N)≦0.03wt%
と(C/N)<0.6 の関係を満たし、C、NおよびTi
は、5≦Ti/(C+N)≦30の関係を満たして含有し、
残部がFeおよび不可避的不純物からなる鋼素材を、最終
パスの圧下率を40%以上にして熱間粗圧延し、引き続き
終了温度を750 ℃以下にして熱間仕上げ圧延し、次い
で、熱延板焼鈍し、冷間圧延し、仕上げ焼鈍することに
より、板厚の1/4厚位置におけるX線積分強度比(22
2)/(310) を35以上とする。
Description
厨房器具、化学プラント、貯水槽等の使途に好適なフェ
ライト系ステンレス鋼板に関し、とくに、機械的性質の
面内異方性が小さく、耐リジング性に優れるフェライト
系ステンレス鋼板(以下、鋼帯も含む。)およびその製
造方法に関するものである。
性が優れているため、建築物の外装材、厨房器具、化学
プラント、貯水槽等の使途に幅広く使用されている。特
に、オーステナイト系ステンレス鋼は、プレス成形性や
延性さらには耐リジング性といった各種特性が、フェラ
イト系ステンレス鋼に比べ優れているため、上記のごと
き広範囲な用途で用いられてきた。その一方、近年の高
純度化技術の発展により成形特性が改善され、従来SU
S304、SUS316などのオーステナイト系ステン
レス鋼が使用されてきたこれらの用途にも、高純度高耐
食性フェライト系ステンレス鋼を適用することが検討さ
れている。これはフェライト系ステンレス鋼が有する特
徴、例えば応力腐食割れ感受性が小さく、しかも高価な
Niを合まないため安価であるといった長所が広く知られ
るようになってきたからといえる。しかし、フェライト
系ステンレス鋼は、未だ、オーステナイト系ステンレス
鋼に比べて、成形性、特に延性に乏しいため、耐食性が
重視される耐久消費材としての用途が主であった。この
ため、フェライト系ステンレス鋼の一層の用途拡大に
は、機械的性質の異方性を改善し、加工性をさらに向上
させることが必要であった。
形性を改善するための従来の試みとしては、(C+N)
の低減の他に、特開昭56-123327 号公報には、Nb等の炭
窒化物安定化元素を添加した鋼に圧下率配分や焼鈍条件
を最適化する技術が開示されている。また、特開平3-26
4652号公報には、Ti、Nb等の炭窒化物形成元素を添加す
ることにより、集合組織を制御してX線積分強度比(2
22)/(200)を高めて、伸び、r値(ランクフオ
ード値)等の成形性を向上する技術が開示されている。
さらに、特公昭54-11770号公報には、C、Nの低下とTi
の添加により、冷間加工性を改善する技術が開示されて
いる。
の従来の既知技術は、主としてr値と延性の向上を目指
したものであり、これらの特性改善については効果が見
られるものの、機械的性質の異方性は大きく、また耐リ
ジング性も十分ではないという問題があった。このた
め、プレス加工等深絞りをほどこす用途においては、美
観, 研磨負荷軽減などの観点から強く改善が望まれてい
た。
抱えていた問題を解決し、機械的性質の面内異方性が小
さく、また耐リジング性に優れるフェライト系ステンレ
ス鋼板とその製造方法を提供することにある。また、本
発明の他の目的は、r値が1.4 以上、伸びが30%以上
のほか、r値の面内異方性Δrが 0.2以下、伸びの面内
異方性ΔElが 2.0%以下、うねり高さで10μm以下の
耐リジング性を有するフェライト系ステンレス鋼板とそ
の製造方法を提供することにある。
の目的の実現に向けて鋭意研究した結果、フェライト系
ステンレス鋼板の化学組成、圧延条件、焼鈍条件を適正
化して、特有の集合組織になるよう制御することによっ
て、上記目的を達成できることを見いだし、本発明を完
成するに至った。
である。 (1) C:0.02wt%以下、 Si:1.0 wt%以下、 Mn:1.0 wt%以下、 P:0.08wt%以下、 S:0.01wt%以下、 Al:0.30wt%以下、 Cr:11〜50wt%、 Mo:5.0 wt%以下、 N:0.03wt%以下 かつ、CおよびNは、0.005 ≦(C+N)≦0.03wt%
と、(C/N)<0.6 の関係を満たして含み、さらに5
≦Ti/(C+N)≦30の関係を満たすTiを含有し、残
部はFeおよび不可避的不純物からなり、板面に平行な面
のX線積分強度比(222)/(310) が板厚の1/4厚位置で
35以上であることを特徴とする機械的性質の面内異方
性が小さく耐リジング性に優れるフェライト系ステンレ
ス鋼板。
と、(C/N)<0.6 の関係を満たして含み、さらに5
≦Ti/(C+N)≦30の関係を満たすTiを含有し、さ
らにまた、 Ca:0.0050wt%以下 Nb:0.0100wt%以下、B:0.0020wt%以下 Cu:2.0wt %以下、 Ni:2.0wt %以下 のグループから選ばれるいずれか1種または2種以上の
成分を含有し、残部はFeおよび不可避的不純物からな
り、板面に平行な面のX線積分強度比(222)/(310)が板
厚の1/4厚位置で35以上であることを特徴とする機
械的性質の面内異方性が小さく耐リジング性に優れるフ
ェライト系ステンレス鋼板。
と、(C/N)<0.6 の関係を満たして含み、さらに5
≦Ti/(C+N)≦30の関係を満たすTiを含有し、残
部はFeおよび不可避的不純物からなり、板面に平行な面
におけるX線積分強度比(222)/(310) が板厚の1/4厚
位置で35以上であり、前記X線積分強度比(222)/(31
0) の板厚方向平均値の±40%以内にある領域の板厚
方向長さが板厚の80%以上存在することを特徴とする
機械的性質の面内異方性が小さく耐リジング性に優れる
フェライト系ステンレス鋼板。
と、(C/N)<0.6 の関係を満たして含み、さらに5
≦Ti/(C+N)≦30の関係を満たすTiを含有し、さ
らにまた、 Ca:0.0050wt%以下 Nb:0.0100wt%以下、B:0.0020wt%以下 Cu:2.0wt %以下、 Ni:2.0wt %以下 のグループから選ばれるいずれか1種または2種以上の
成分を含有し、残部はFeおよび不可避的不純物からな
り、板面に平行な面におけるX線積分強度比(222)/(31
0) が板厚の1/4厚位置で35以上であり、前記X線
積分強度比(222)/(310) の板厚方向平均値の±40%以
内にある領域の板厚方向長さが板厚の80%以上存在す
ることを特徴とする機械的性質の面内異方性が小さく耐
リジング性に優れるフェライト系ステンレス鋼板。
と、(C/N)<0.6 の関係を満たして含み、さらに5
≦Ti/(C+N)≦30の関係を満たすTiを含有する鋼
素材を、粗圧延の最終パス圧下率40%以上、かつ仕上げ
圧延の終了温度750℃以下にて熱間圧延し、得られた熱
延板を熱延板焼鈍し、冷間圧延し、仕上げ焼鈍すること
を特徴とする上記(1) 〜(4) のいずれか1つに記載のフ
ェライト系ステンレス鋼板の製造方法。
と、(C/N)<0.6 の関係を満たして含み、さらに5
≦Ti/(C+N)≦30の関係を満たすTiを含有する鋼
素材を、粗圧延の最終パス圧下率40%以上、かつ仕上げ
圧延の終了温度750℃以下にて熱間圧延して、板厚の1
/4厚位置で、板面に平行な面におけるX線積分強度比
(222)/(310) が30以上である熱延板とし、次いで、こ
の熱延板を熱延板焼鈍し、冷間圧延し、仕上げ焼鈍する
ことを特徴とする上記(1) 〜(4) のいずれか1つに記載
のフェライト系ステンレス鋼板の製造方法。
で、冷間圧延を60%〜95%の圧下率で、仕上げ焼鈍を 8
30〜950 ℃の温度範囲で行う、上記(5) または(6) に記
載のフェライト系ステンレス鋼板の製造方法。
を含めて詳細に説明する。 C:0.02wt%以下 Cは、r値および伸びを低下させるとともに、耐食性に
も有害な元素である。0.02wt%を超えると、特にその悪
影響が顕著になるので、0.02wt%以下とする。なお、C
の含有量は0.005 wt%以下の範囲とするのが好ましい。
冷間加工性の低下や延性の低下を招くので、その添加範
囲は1.0 wt%以下とする。なお、好ましい含有量は0.03
〜0.5 wt%である。
つために有用な元素であるが、過剰の添加は冷間加工性
の低下や耐食性の低下を招くので、1.0 wt%以下、好ま
しくは0.5 wt%以下とする。
劣化させる有害な元素である。含有量が0.08wt%を超え
ると、特にその影響が顕著になるので0.08wt%以下、好
ましくは0.04wt%以下とする。
とともに、結晶粒界に偏析し、粒界脆化を促進する有害
な元素である。S含有量が、0.01wt%を超えるとその影
響が顕著になるので、0.01wt%以下、好ましくは0.006
wt%以下とする。
ると、Al系介在物の増加により表面きずを招く原因とな
るので、0.30wt%以下、好ましくは0.10wt%以下の範囲
で添加する。
の量が11wt%未満では十分な耐食性が得られず、一方50
wt%を超えて添加すると熱間および冷間における加工性
を低下させるので、添加範囲は11〜50wt%、好ましくは
11〜35wt%とする。
が、5.0 wt%を超えて添加すると、これらの効果が飽和
するのみではなく、σ相やχ相の析出を助長し、耐食性
や加工性を低下させるので、5.0 wt%以下の範囲で添加
する。なお、Moの添加効果を得るには、少なくとも0.1
wt%添加することが好ましい。
Cr窒化物の形成にともない脱Cr層を生じて耐食性に有害
な元素である。とくに、0.03wt%を超えるとその影響が
顕著になるので、0.03wt%以下、好ましくは0.01wt%以
下とする。
よび耐食性に悪影響を及ぼし、これらの合計量が0.03wt
%を超えると、その影響も顕著になる。一方C、Nを極
度に低減し、合計量で0.005 wt%未満にすると、結晶粒
の優先成長が促進されて、集合組織制御が難しくなり、
耐リジング性が低下する。したがって、CおよびN含有
量は、0.005 ≦(C+N)≦0.03wt%を満足する必要が
ある。
/N)が集合組織に大きな影響を及ぼすことを知見し
た。(C/N)が0.6 未満になると、(222) と(310) の
X線積分強度比 (222)/(310) の値が増加し、r値およ
び伸びが改善されるとともに、これらの面内異方性が小
さくなる。したがって、CおよびNの含有量は、(C/
N)<0.6 の関係をも満足する必要がある。図1は、C
+Nが0.0080〜0.0200wt%、Ti/(C+N)が10〜19
で、他の元素が本発明の範囲にある種々の鋼板につい
て、機械的性質の異方性(測定方法は後述の方法と同
じ。)とC/Nとの関係を示したものである。図1か
ら、異方性を小さくするためには、C/Nを0.6 未満に
する必要があることがわかる。
けるCr炭窒化物の粒界析出を抑制して、耐食性を改善す
るために有用な元素である。また、鋼中の固溶C,Nを
炭窒化物として固定して、集合組織を制御し、延性、加
工性を向上させるのに有用な元素である。これらの効果
は、(C+N)との重量比、Ti/(C+N)にして5未
満では得られず、一方この値で30を超えて添加すると、
これらの特性を低下させる。したがって、TiとC,Nと
の間には、5≦Ti/(C+N)≦30の関係が満たされて
いることが必要である。
Ca:0.0050wt%以下(鋳造時のノズル詰まり防止のた
め)、Nb:0.0100wt%以下、B:0.0020wt%以下(い
ずれも機械的性質の改善のため)、Cu:2.0 wt%以
下、Ni:2.0 wt%以下(いずれも耐食性の改善のため)
の3グループから選ばれる1種または2種以上の元素を
添加することができる。 Ca:0.0050wt%以下 Caは、製鋼鋳造時におけるTi系介在物によるノズル詰ま
りを抑制するのに有効な元素である。しかしながら、過
剰に添加すると、Ca系介在物を起点とする発錆や脆化破
壊引き起こす恐れがあるので、0.0050wt%以下の範囲で
添加する。
上、とくに機械的性質の異方性改善に有効な元素であ
る。しかし、0.0100wt%を超えて添加すると、それらの
効果は飽和するばかりか、むしろ加工性は低下し、ま
た、再結晶温度が上昇するので、添加量の上限を0.0100
wt%とした。なお、鋼中に微小な炭化物を生じて、結晶
粒の微細化、機械的性質の異方性向上の効果を得るに
は、0.003 wt%以上の添加が望ましい。
の2次加工脆性の改善に有用な元素である。しかしなが
ら、添加量が過多になると加工性が低下するので、0.00
20wt%以下の範囲で添加する。なお、好ましい範囲は0.
0003〜0.0010wt%である。
な元素である。また、発錆起点となる食孔の成長を抑制
して耐錆性を改善する効果を有し、建材や厨房器具の用
途における耐食性向上に有用な元素である。しかし、過
剰に添加すると、高温割れなどの悪影響が現れるので、
その添加範囲は2.0 wt%以下とする。なお、耐食性向上
のためには、Cu+Niの量にして、0.01wt%以上とするの
が望ましい。
な元素である。また、発錆起点となる食孔の成長を抑制
して耐錆性を改善する効果を有し、建材や厨房器具の用
途における耐食性向上に有用な元素である。しかし、過
剰に添加すると、高温割れなどの悪影響が現れるので、
その添加範囲は2.0 wt%以下とする。なお、耐食性向上
のためには、Cu+Niの量にして、0.01wt%以上とするの
が望ましい。
の増加は、r値や伸びを損なうことなく、ΔrやΔElと
いった、機械的性質の面内異方性を低下させる指標とな
る。これらの効果を得るためには、先ず、熱延板状態に
おいて、その板厚方向1/4厚の位置における (222)/
(310) の値を30以上に制御しておくのが望ましい。この
ように集合組織整えた熱延板に、熱延板焼鈍、冷間圧延
および冷延板焼鈍を施すことによって、最終的に、板厚
方向1/4厚の位置における (222)/(310) の値を35以
上に制御したフェライト系ステンレス鋼板を製造するこ
とができる。図2は、C+Nが0.0080〜0.0200wt%、C
/Nが 0.1〜3.0 、Ti/(C+N)が10〜19で、他の元
素が本発明の範囲にある鋼を、熱延・焼鈍・冷延の条件
を変えて製造した冷延鋼板の機械的性質の異方性(測定
方法は後述の方法と同じ。)と冷延板の1/4厚の位置
における (222)/(310) との関係である。図2から、機
械的性質の異方性を低下させるためには、冷延板の (22
2)/(310) が35以上、好ましくは75以上になるように
制御する必要があることがわかる。なお、上記X線積分
強度比 (222)/(310) の測定位置を、板厚方向1/4厚
の位置としたのは、面内異方性との関係が良く、鋼板全
体の (222)/(310) の値を代表させるのに最も適切であ
るからである。
て、さらに板面に平行な面における積分強度比 (222)/
(310) の板厚方向分布に大きな差がなく均一であるほ
ど、一層、機械的性質の異方性が小さく保たれる傾向に
あることがわかった。図3は、冷延板の1/4厚の位置
における (222)/(310) の値が50〜130にある鋼板
について、 (222)/(310) を板厚方向に測定して、各板
厚位置における (222)/(310) の値を求め、この値が
(222)/(310) の板厚方向平均値の±40%以内に存在
する、領域の板厚方向長さ(厚み)の板厚に対する割合
を求め、これと機械的性質の面内異方性との関係を示し
たものである。この割合の具体的な算出方法を、図4に
摸式的に示す。先ず、板厚方向に、例えば測定間隔100
μm以下あるいは測定点30以上で、各位置の (222)/
(310)を測定して、板厚方向の分布曲線を求め、これを
板厚方向に積分し、この積分値を板厚Bで除してX線積
分強度比(222)/(310) の板厚方向平均値を求める。次
に、この平均値の±40%以内に存在する領域の板厚方
向長さ(図中の線分の合計長さ:A1+A2)を求め、
板厚との比{(A1+A2)/B}×100(%)によ
り求めればよい。図3から、このようにして求めたX線
積分強度比(222)/(310) の板厚方向平均値の±40%以
内にある領域の板厚方向長さを、板厚の80%以上存在
させることにより、機械的性質の異方性が小さくなるこ
とが分かる。
からなる鋼を転炉、電気炉等で溶製し、連続鋳造法また
は造塊法で鋼片とした後、熱間圧延−熱延板焼鈍−酸洗
−冷間圧延−仕上げ焼鈍−(酸洗)の方法によればよ
い。以下に、これらの工程の詳細について説明する。
れる、フェライトバンドの分断と密接な関係がある。特
に、粗圧延の最終パスの圧下率を40%以上に高めると、
フェライトバンドが分断され、板厚方向歪みの均一導入
や静的再結晶による結晶粒の微細化が効果的に達成され
る。また、仕上げ圧延の終了温度が低いほど、上述した
粗圧延の圧下率と同様に、圧延歪みの残留により、板厚
方向の結晶粒の均一化、微細化、等軸化に有利となる。
特に、この終了温度を750 ℃以下とすることにより、上
記効果が大きくなるので750 ℃以下とする。なお、終了
温度が600 ℃未満になると、表面欠陥が生じやすくな
り、製造性を劣化させるので、下限の温度は600 ℃とす
るのが好ましい。また、上記した低温域での熱間圧延時
に、潤滑を施すことにより板厚方向に均一な歪みを与え
ることは、歪み蓄積による静的再結晶の促進をはかる上
で好ましい。
の焼鈍温度が低過ぎるとバンド状のリジングが発生し、
一方この温度が高すぎると肌あれが生じて表面の美観を
損ねる。したがって、焼鈍温度は900 〜1100℃、好まし
くは 975〜1050℃の範囲とする。なお、焼鈍時間は5秒
〜4分の範囲にするのが望ましい。
の異方性に影響を及ぼす。冷間圧延の圧下率が増加する
と、r値と耐リジング性が向上し、異方性が減少する。
これらの点から、圧下率は60%以上必要であるが、95%
を超えるとこれらの特性が低下するので、冷間圧延の圧
下率は60〜95%の範囲がよい。
機械的性質の確保には不可欠である。仕上げ焼鈍の温度
範囲は830 〜950 ℃がよく、保持時間は3秒〜1分の範
囲にするのが好ましい。
る。表1および表2に示す化学組成の鋼を転炉、二次精
錬にて溶製し、スラブとした後、1250℃に加熱後、表3
に示す製造条件No. 1で、4パスの粗圧延と7パスの仕
上げ圧延により熱間圧延し、この熱延板を、熱延板焼鈍
(保持時間:1分)し、酸洗したのち、冷延して、仕上
げ焼鈍(保持時間:30秒)し、板厚0.6 mmの冷延鋼板
とした。上記方法により得られた冷延鋼板を供試材とし
て、板厚1/4位置について、X線回折によりX線積分
強度比(222)/(310) を求めるとともに、伸び(El)、深
絞り成形性(r値)、それらの異方性ΔEl、Δr、耐リ
ジング性および張出し成形性(エリクセン値)を測定し
た。また、前述した方法により、 (222)/(310)の板厚
方向平均値の±40%以内に含まれる領域の板厚方向長
さの、板厚に占める割合を求めた。さらに、熱延板の集
合組織を調査するため、板厚1/4位置における(222)/
(310) も測定した。その結果を、表4に示す。さらに、
表1、表2中のうちの一部の鋼については、表3に示す
製造条件を表5のように組み合わせて、上記方法と同様
にして、板厚0.6 mmの冷延鋼板を製造した。これらの鋼
板についての試験結果を表5に合わせて示す。
従い行った。 ・El、ΔEl、r値、Δr 鋼板の圧延方向、圧延方向に対して45°の方向、圧延方
向に対して90°の各方向から、JIS13号B試験片を
採取し、それぞれの引張試験から破断伸びを測定して、
次式により、ElおよびΔElを求めた。 El=(ElL +2ElD +ElT )/4 ΔEl=(ElL −2ElD + ElT )/2 ただし、ElL 、ElD およびElT は、それぞれ圧延方向、
圧延方向に対して45°の方向、圧延方向に対して90°の
方向の破断伸びを表す。同様にして、各方向から採取し
たJIS13号B試験片に、5〜15%の単軸引張予歪を
与えた時の横ひずみと板厚ひずみの比から各方向のラン
クフォード値を測定し、次式により、r値、Δrを求め
た。 r=(rL +2rD +rT )/4 Δr=(rL −2rD + rT )/2 ただし、rL 、rD およびrT は、それぞれ圧延方向、
圧延方向に対して45°の方向、圧延方向に対して90°の
方向のランクフォード値を表す。 ・エリクセン値 JISZ2247に準拠し、グラファイトグリースを塗
布して測定した。 ・リジングのうねり高さ リジングのうねり高さは、引張荷重により発生させた、
リジングのうねり高さを引張方向に対して垂直の方向に
測定して求めた。具体的には、圧延方向からJIS5号
引張試験片を採取し、この試験片の片面を湿式#600
で仕上げ研磨し、20%の単軸予歪を与えたのち、発生し
たリジングのうねり高さ (リジングの凹凸)を、試験片
中央部で、引張方向(圧延方向)に対して90°の方向
に、粗度計を用いて測定し、その平均値から求めた。
適正化して、冷延板の(222)/(310)値を制御することに
よって、Elが30%以上、ΔElが2.0 %以下、r値が1.4
以上、Δrが0.2 以下、エリクセン値が10以上で、うね
り高さで10μm以下の、良好な成形加工性を有するほ
か、機械的性質の異方性が少なく、耐リジング性にも優
れたフェライト系ステンレス鋼板を製造できることがわ
かる。
良好な成形加工性を有すとともに、機械的性質の面内異
方性が小さく耐リジング性に優れるフェライト系ステン
レス鋼板の製造が可能となる。また、本発明によれば、
伸びが30%以上、r値が 1.4以上、伸びの面内異方性が
2.0 %以下、r値の面内異方性が 0.2以下、しかもうね
り高さで10μm以下の耐リジング性、を有するフェラ
イト系ステンレス鋼板の製造が可能となる。したがっ
て、本発明によれば、従来オーステナイト系ステンレス
鋼板が用いられていた部材にフェライト系ステンレス鋼
板を使用することが可能になるのでその工業的価値は極
めて大きい。
すグラフである。
係を示すグラフである。
に存在する領域の板厚方向長さが板厚に占める割合と機
械的性質の面内異方性との関係を示すグラフである。
に存在する領域の板厚方向長さが板厚に占める割合を求
める方法を説明する図である。
Claims (7)
- 【請求項1】C:0.02wt%以下、 Si:1.0 wt%以下、 Mn:1.0 wt%以下、 P:0.08wt%以下、 S:0.01wt%以下、 Al:0.30wt%以下、 Cr:11〜50wt%、 Mo:5.0 wt%以下、 N:0.03wt%以下 かつ、CおよびNは、0.005 ≦(C+N)≦0.03wt%
と、(C/N)<0.6 の関係を満たして含み、さらに5
≦Ti/(C+N)≦30の関係を満たすTiを含有し、残
部はFeおよび不可避的不純物からなり、板面に平行な面
のX線積分強度比(222)/(310) が板厚の1/4厚位置で
35以上であることを特徴とする機械的性質の面内異方
性が小さく耐リジング性に優れるフェライト系ステンレ
ス鋼板。 - 【請求項2】C:0.02wt%以下、 Si:1.0 wt%以下、 Mn:1.0 wt%以下、 P:0.08wt%以下、 S:0.01wt%以下、 Al:0.30wt%以下、 Cr:11〜50wt%、 Mo:5.0 wt%以下、 N:0.03wt%以下 かつ、CおよびNは、0.005 ≦(C+N)≦0.03wt%
と、(C/N)<0.6 の関係を満たして含み、さらに5
≦Ti/(C+N)≦30の関係を満たすTiを含有し、さ
らにまた、 Ca:0.0050wt%以下、 Nb:0.0100wt%以下、 B:0.0020wt%以下、 Cu:2.0wt %以下および Ni:2.0wt %以下 のうちから選ばれる1種または2種以上を含有し、残部
はFeおよび不可避的不純物からなり、板面に平行な面の
X線積分強度比(222)/(310) が板厚の1/4厚位置で3
5以上であることを特徴とする機械的性質の面内異方性
が小さく耐リジング性に優れるフェライト系ステンレス
鋼板。 - 【請求項3】C:0.02wt%以下、 Si:1.0 wt%以下、 Mn:1.0 wt%以下、 P:0.08wt%以下、 S:0.01wt%以下、 Al:0.30wt%以下、 Cr:11〜50wt%、 Mo:5.0 wt%以下、 N:0.03wt%以下 かつ、CおよびNは、0.005 ≦(C+N)≦0.03wt%
と、(C/N)<0.6 の関係を満たして含み、さらに5
≦Ti/(C+N)≦30の関係を満たすTiを含有し、残
部はFeおよび不可避的不純物からなり、板面に平行な面
におけるX線積分強度比(222)/(310) が板厚の1/4厚
位置で35以上であり、前記X線積分強度比(222)/(31
0) の板厚方向平均値の±40%以内にある領域の板厚
方向長さが板厚の80%以上存在することを特徴とする
機械的性質の面内異方性が小さく耐リジング性に優れる
フェライト系ステンレス鋼板。 - 【請求項4】C:0.02wt%以下、 Si:1.0 wt%以下、 Mn:1.0 wt%以下、 P:0.08wt%以下、 S:0.01wt%以下、 Al:0.30wt%以下、 Cr:11〜50wt%、 Mo:5.0 wt%以下、 N:0.03wt%以下 かつ、CおよびNは、0.005 ≦(C+N)≦0.03wt%
と、(C/N)<0.6 の関係を満たして含み、さらに5
≦Ti/(C+N)≦30の関係を満たすTiを含有し、さ
らにまた、 Ca:0.0050wt%以下、 Nb:0.0100wt%以下、 B:0.0020wt%以下、 Cu:2.0wt %以下および Ni:2.0wt %以下 のうちから選ばれる1種または2種以上を含有し、残部
はFeおよび不可避的不純物からなり、板面に平行な面に
おけるX線積分強度比(222)/(310) が板厚の1/4厚位
置で35以上であり、前記X線積分強度比(222)/(310)
の板厚方向平均値の±40%以内にある領域の板厚方向
長さが板厚の80%以上存在することを特徴とする機械
的性質の面内異方性が小さく耐リジング性に優れるフェ
ライト系ステンレス鋼板。 - 【請求項5】C:0.02wt%以下、 Si:1.0 wt%以下、 Mn:1.0 wt%以下、 P:0.08wt%以下、 S:0.01wt%以下、 Al:0.30wt%以下、 Cr:11〜50wt%、 Mo:5.0 wt%以下、 N:0.03wt%以下 かつ、CおよびNは、0.005 ≦(C+N)≦0.03wt%
と、(C/N)<0.6 の関係を満たして含み、さらに5
≦Ti/(C+N)≦30の関係を満たすTiを含有する鋼
素材を、粗圧延の最終パス圧下率40%以上、かつ仕上げ
圧延の終了温度750℃以下にて熱間圧延し、得られた熱
延板を熱延板焼鈍し、冷間圧延し、仕上げ焼鈍すること
を特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載のフェ
ライト系ステンレス鋼板の製造方法。 - 【請求項6】C:0.02wt%以下、 Si:1.0 wt%以下、 Mn:1.0 wt%以下、 P:0.08wt%以下、 S:0.01wt%以下、 Al:0.30wt%以下、 Cr:11〜50wt%、 Mo:5.0 wt%以下、 N:0.03wt%以下 かつ、CおよびNは、0.005 ≦(C+N)≦0.03wt%
と、(C/N)<0.6 の関係を満たして含み、さらに5
≦Ti/(C+N)≦30の関係を満たすTiを含有する鋼
素材を、粗圧延の最終パス圧下率40%以上、かつ仕上げ
圧延の終了温度750℃以下にて熱間圧延して、板厚の1
/4厚位置で、板面に平行な面におけるX線積分強度比
(222)/(310) が30以上である熱延板とし、次いで、こ
の熱延板を熱延板焼鈍し、冷間圧延し、仕上げ焼鈍する
ことを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の
フェライト系ステンレス鋼板の製造方法。 - 【請求項7】熱延板焼鈍を 900〜1100℃の温度範囲で、
冷間圧延を60%〜95%の圧下率で、仕上げ焼鈍を 830〜
950 ℃の温度範囲で行う、請求項5または6に記載のフ
ェライト系ステンレス鋼板の製造方法。
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