JPH10121126A - 金属材料の熱間処理方法 - Google Patents

金属材料の熱間処理方法

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JPH10121126A JP29316396A JP29316396A JPH10121126A JP H10121126 A JPH10121126 A JP H10121126A JP 29316396 A JP29316396 A JP 29316396A JP 29316396 A JP29316396 A JP 29316396A JP H10121126 A JPH10121126 A JP H10121126A
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Abstract

(57)【要約】 【課 題】 金属材料の表面にホウ酸系の酸化防止剤
を塗布して行う熱間処理において、塗布剤の酸化防止機
能が、金属光沢を保持するレベルで発現されるようにす
る手段の提供。 【解決手段】 融点が200〜600℃のホウ酸系酸化防止剤
を塗布し、少なくとも上記融点迄の昇温速度を10〜100
℃/sとする加熱により所定の熱間処理温度に到達させ
て熱間処理を施すことを特徴とする熱間処理方法。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、鋼材や合金材料
を、スケ−ル生成が伴う温度に加熱して行う各種の熱間
処理を、酸化による表面品質の劣化を僅少に留めて行う
方法に関する。
【0002】
【従来の技術】上記熱間処理の代表的なものとして、鋼
材などの熱処理とNi基自溶性合金などの溶射層の再溶
融処理を例示できる。しかして、後者については、表面
改質手段である溶射の最終工程に当るものであることか
ら、スケ−ル,粒界酸化,クラック,表層部の変質,表
面硬度と云った溶射層の品質に及ぼす影響が大である。
ついては、以下の説明を、溶射層の再溶融処理を例にと
って行うこととするが、本発明方法は上記処理に限定さ
れるものではない。
【0003】再溶融処理の対象となる溶射層の代表的な
ものは、Cr,Mo等を配合したNi基あるいはCo基
の合金材料であり、通常は、再溶融処理のためのフラッ
クス形成成分となるB及びSiを添加した自溶性合金材
料が用いられる。
【0004】これらの合金の再溶融処理の温度は、多く
は1000〜1100℃の範囲にあり、この加熱によってCr等
の酸化が激しく進む。前記自溶性合金にあっては、フラ
ックス形成により、上記酸化は大巾に軽減されるが、金
属光沢を保持するという高度の要請迄を満たすには至ら
ない。よって、このような高度の要請に対しては雰囲気
炉の利用あるいは、研摩精整を前提としたマ−ジンの設
定を要することになる。
【0005】一方、熱間処理の際の酸化を軽減するため
に酸化防止剤を塗布する方法が知られており、酸化防止
剤として、ホウ酸系,水ガラス系など各種のものが提唱
されている。本願の発明者らも自溶性合金材料の再溶融
処理を、処理後の除去の問題が少ないホウ酸系酸化防止
剤であるホウ砂を塗布して行ってみたが顕著には改善さ
れなかった。しかして、塗布した酸化防止剤は、溶融し
た形跡が認められるものの、その下に緑色のスケ−ルが
薄く生成していた。
【0006】この原因としては次のような事情が考えら
れた。即ち、ホウ酸系酸化防止剤は基本成分として水和
酸化ホウ素(ホウ酸)あるいはその塩類を含んでおり、
これが溶融してガラス状の膜を形成し、酸素等を遮断し
て酸化防止機能を発現するものであるが、加熱途上の脱
水反応によって融点が上昇して行くという性質がある。
たとえば酸化ホウ素と水とが1:1のモル比で結合した
水和酸化ホウ素であるメタホウ酸の融点は200℃強であ
るが、無水状態迄脱水された酸化ホウ素の融点は450℃
強である。又、四ホウ酸ナトリウムの10モル水和物であ
るホウ砂の融点は75℃であるが、350℃以上の温度で無
水物迄脱水されて、800℃前後の融点に落着く。
【0007】即ち、ホウ酸系の酸化防止剤を塗布した金
属材料を加熱する場合に、ゆっくり昇温させると、系の
温度が塗布剤の融点に到達して塗布剤が溶融するよりも
先に、塗布剤の脱水反応が進んで融点の方が上昇して行
き、この間、塗布剤の溶融は起りえない。しかして、こ
のあと、無水物迄脱水されて融点が一定値に落着き、且
つ、系がこの温度に到達してはじめて溶融が始まり、膜
を形成できることになる。即ち、昇温速度が小である
と、酸化防止機能が発現されない温度域が生じうる。し
かるに、相当量のCrが配合されている自溶性合金材料
は600℃前後から酸化が大となってスケ−ルが生成し始
めるため、前述のように顕著な改善につながらなかった
という事情である。このような事情は、200℃台でスケ
−ルが生じ始める炭素鋼のような金属材料では、更に生
じやすいことになる。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、金属材料の
表面にホウ酸系の酸化防止剤を塗布して行う熱間処理を
塗布剤の酸化防止機能が、金属光沢を保持するレベルで
発現されるようにする手段の提供を課題として研究を進
めた結果、上記事情が生じうるとの推定の下に、塗布し
た酸化防止剤を短時間の内に溶融状態に到達させるべき
ことを知得してなされたものである。
【0009】
【課題を解決するための手段】上記課題は、金属材料の
表面にホウ酸系の酸化防止剤を塗布して行う、金属材料
の熱間処理方法において、酸化防止剤として融点が200
℃〜600℃のものを用いるとともに、少なくとも上記融
点迄の昇温速度を10〜100℃/sとする加熱により所定の
熱間処理温度に到達させて熱間処理を施すことを特徴と
する本発明熱間処理方法によって解決される。
【0010】即ち、10℃/s以上の昇温速度により、系の
温度は1min未満の短時間で600℃以上に達し、この間、
酸化防止剤の融点を上昇させる前記脱水反応が生起する
いとまがないことから、酸化防止剤が本来の融点である
600℃以下の温度で溶融して、該融点以上の温度で酸化
防止機能を発現する。しかして、汎用金属材料の金属光
沢が損われるような酸化が始まる温度が、前記自溶性合
金材料等も含めて600℃以下に分布するため、融点が600
℃以下の酸化防止剤を用いることが要件となるものであ
る。なお、上記融点を超える温度域での昇温速度につい
ては、限定を要しないが、同様の急速加熱を続けて所定
の熱間処理温度に到達させるのが、作業が複雑化せず、
又、作業時間も短かくて済むことから得策である。
【0011】酸化防止剤の融点は、低い方が酸化防止機
能が発現する温度も低くなるが、融点を低くするにはホ
ウ酸類の水和率を大とする必要があり、これは熱的に不
経済な要因となる。しかして、通常用いられる金属材料
について云えば、200℃未満では実質的にスケ−ルが生
成しないので上記下限を設けたものである。
【0012】又、昇温速度は大なるほど酸化防止剤の溶
融がより早期に起ることになるが、設備費が嵩んだ分だ
けの効果には通じないので、100℃/s以下の昇温速度に
留めるのが得策となるものである。
【0013】
【発明の実施の形態】上述のような急速加熱を行うため
の好適手段は、対象物を取り囲むなどの形で配した誘導
コイルに交流を通電して行う誘導加熱法である。就中、
コイルを移動させながら一部分ずつ順次加熱して行く移
動加熱方式が、加熱の均一性に優れ、又、設備コストも
小さくて済むので特に推奨される。但し、急速加熱の手
段が限定されるものではなく、たとえば、直接通電加
熱、あるいはレ−ザ−や赤外線による照射も状況に応じ
て有利な手段となる。
【0014】上記酸化防止剤の溶融相形成に与る基本成
分として水和酸化ホウ素あるいはその塩類を用いてよい
が、1価アルコ−ルのホウ酸エステルやその塩類のよう
な、早々に熱分解して水和酸化ホウ素やその塩類を生成
する物質を用いてもよい。上記ホウ酸エステル等を用い
れば、アルコ−ルベ−スの高濃度の塗布液が容易に調製
できる。水和酸化ホウ素としては、水和度が3モル水和
物(オルトホウ酸)以下のものが前記融点範囲の実現に
適しており、又、ホウ砂等のホウ酸塩の配合により融点
やPHの調整を行うことができる。又、1価アルコ−ル
のホウ酸エステルでは、酸化ホウ素と1価アルコ−ル
(メタノ−ル等)の1:1〜1:2モル比反応生成物
が、熱分解による水分の生成が少なく、適正融点範囲の
溶融相を形成させるための基本成分として特に推奨され
る。ケイ酸やその塩類など、他系統の成分の配合も、上
記基本成分の溶融特性を損わない範囲で許容される。
【0015】本発明方法に用いる酸化防止剤としては、
上記溶融相形成成分のみを、たとえばアルコ−ルベ−ス
の塗布液の形で使用してもよいが、高温での酸化防止に
必要と見なされる100g/m2以上の膜厚を上記成分のみに
よって実現するためには複数回の塗布が必要になるなど
の問題が生じる。よって、1回での塗布量を増すための
展着成分として、樹脂を1〜10%程度配合するとよい。
但し、これらの配合によって熱間処理後の外観を損う残
渣が生じないよう燃焼ないし熱分解して消失しやすいニ
トロセルロ−ズ,ポリビニルピロリドンのような樹脂を
用いるのがよい。
【0016】更には、前記溶融相に顔料ないしは骨材が
混和されていても酸化防止機能は損われないので、カオ
リン,シャモット,タルク等を増量剤として50%程度迄
の範囲で配合してもよい。
【0017】[実施例]鋼管(JIS STBA 22,外径42.7m
m×肉厚6.0mm)の外周面にガス粉末溶射法によりNi基
自溶性合金材料(JIS SFNi 4)を溶射して、1.8mm厚さ
の溶射層を形成させた。次いで、上記溶射層の表面に下
記組成の酸化防止剤(A)を塗布し、乾燥させて約150g/m2
の塗布層を形成させた後、溶射層を緻密化させ且つ母材
との密着性を生じさせるための再溶融処理に供した。
【0018】 <酸化防止剤(A)の組成> B2O3とメタノ−ルの1:1.5モル比の反応生成物 100部 Na2B4O7-10H2O 25部 H3BO3 3部 ニトロセルロ−ス 3部 上記〜の成分を150mlのメタノ−ルで稀釈した。こ
の酸化防止剤(A)の不揮発分からの脱水が進む前の融点
は300℃である。
【0019】<再溶融処理条件> ・移動式誘導加熱(2mm/s) ・2kHz,20〜25kWの通電による ・再溶融処理温度:1060℃ ・昇温速度:5℃/sを比較例1とし、10℃/s,30℃/s,
100℃/sの各昇温速度を、本発明例1〜3とした。 この他に融点が700℃の市販のホウ酸系酸化防止剤(B)を
塗布して、昇温速度を5℃/s,10℃/sで再溶融処理した
比較例2,3も併せて評価に供した。
【0020】再溶融処理後の溶射層の性状は表1の通り
であった。即ち、本発明方法によって再溶融処理を施し
たものにあっては、金属光沢が保持されるレベルで酸化
防止が奏効しており、又、副次的な問題も発生しないこ
とが確認された。
【0021】
【表1】
【0022】
【発明の効果】本発明熱間処理方法は、上述の通り、ホ
ウ酸系の酸化防止剤を塗布して行う熱間処理を、酸化防
止剤として融点が200〜600℃のものを用いるとともに、
少なくとも上記融点迄の昇温速度を10〜100℃/sとする
加熱によって所定の熱間処理温度に到達させて熱間処理
を施す構成により、酸化防止剤が溶融する前の温度域で
スケ−ルが生成するという従来の問題点を解消した。
【0023】即ち、Ni基等の合金溶射層の再溶融処理
のような高度の表面品質要請を伴う熱間処理において
も、雰囲気炉等の高価な設備を用いた非能率な作業によ
らずに、金属光沢を保持したレベルの製品が得られると
いう品質と生産性を共に改善する効果がもたらされたも
のである。

Claims (3)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 金属材料の表面にホウ酸系の酸化防止剤
    を塗布して行う、金属材料の熱間処理方法において、酸
    化防止剤として融点が200℃〜600℃のものを用いるとと
    もに、少なくとも上記融点迄の昇温速度を10〜100℃/s
    とする加熱により所定の熱間処理温度に到達させて熱間
    処理を施すことを特徴とする金属材料の熱間処理方法。
  2. 【請求項2】 前記酸化防止剤が、酸化ホウ素と1価ア
    ルコ−ルの1:1〜1:2モル比反応生成物を主成分と
    する組成物である請求項1に記載の金属材料の熱間処理
    方法。
  3. 【請求項3】 前記金属材料がNi基又はCo基の自溶
    性合金材料であって、前記熱間処理が該合金材料の溶射
    層の再溶融処理である請求項1又は2に記載の金属材料
    の熱間処理方法。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
WO1999039020A1 (fr) * 1998-01-29 1999-08-05 Tocalo Co. Ltd. Procede servant a fabriquer un element de revetement par pulverisation d'alliage a fusion automatique
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EP2594661A4 (en) * 2010-07-16 2016-05-11 Nippon Steel & Sumitomo Metal Corp ANTIOXIDANT AGENT, PROCESS FOR THE PRODUCTION OF ANTIOXIDANT AGENT AND PROCESS FOR THE PRODUCTION OF METALLIC MATERIAL

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