JPH10119182A - 熱可塑性ポリエステル樹脂被覆表面処理鋼板およびその製造方法 - Google Patents

熱可塑性ポリエステル樹脂被覆表面処理鋼板およびその製造方法

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JPH10119182A
JPH10119182A JP29320096A JP29320096A JPH10119182A JP H10119182 A JPH10119182 A JP H10119182A JP 29320096 A JP29320096 A JP 29320096A JP 29320096 A JP29320096 A JP 29320096A JP H10119182 A JPH10119182 A JP H10119182A
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宏明 河村
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正説 石田
Nobuyoshi Shimizu
信義 清水
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 薄肉化深絞り缶用だけでなく、溶接缶用にも
適用可能な加工密着性、耐糸錆性、保香性、溶接性に優
れた熱可塑性ポリエステル樹脂被覆表面処理鋼板および
その製造方法を提供する。 【解決手段】 鋼板を公知の方法で脱脂、酸洗後、特定
濃度の光沢剤を含む酸性錫めっき浴を用い、特定の錫め
っき条件で錫めっきを施し、鋼板上に特定の析出状態の
錫めっき層を形成し、ついでTFS処理を施し、乾燥
後、二軸配向ポリエチレンテレフタレートフィルムを公
知の方法で積層する。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、熱可塑性ポリエス
テル樹脂被覆表面処理鋼板、およびその製造方法に関す
る。より詳しくは、鋼板表面に不連続な錫めっきを施
し、その上、および露出鋼板上に、下層が金属クロム
層、上層がクロム水和酸化物層からなる二層皮膜、いわ
ゆるティン・フリー・スチール皮膜(TFS皮膜)を形
成させた表面処理鋼板上に、二軸配向ポリエチレンテレ
フタレート樹脂フィルムを積層した熱可塑性ポリエステ
ル樹脂被覆表面処理鋼板、およびその製造方法に関す
る。
【0002】
【従来の技術】近年、二軸配向ポリエステル樹脂ポリエ
ステル樹脂フィルムをティン・フリー・スチール(TF
S)の両面に接着剤を介して、あるいは介さずに積層し
た材料を成形加工した缶が、環境に優しい缶として従来
の塗装缶に代わり、飲料缶、食缶に用いられるようにな
った。例えば、TFSに樹脂フィルムを積層した材料が
薄肉化深絞り缶などのような厳しい成形加工が施される
缶用に用いられている。用いられる樹脂被覆金属板に
は、厳しい成形加工後でも積層された樹脂フィルムが剥
離しない、優れた密着性が要求されるため、TFSに加
工性に優れた、少なくともエステル反復単位の75〜99モ
ル%がエチレンテレフタレート単位である二軸配向共重
合ポリエステル樹脂フィルムが積層されている。しかし
ながら、上記の共重合ポリエステル樹脂フィルムを積層
したTFSを成形加工し、得られた薄肉化深絞り缶に炭
酸飲料などを充填し、室温で長期間貯蔵した時、成形加
工時に生じた共重合ポリエステル樹脂フィルムの微小ク
ラックから孔食を起こすことがある。これはTFSに共
重合ポリエステル樹脂フィルムを積層する工程、得られ
た共重合ポリエステル樹脂被覆TFSの製缶工程等にお
けるごみの混入に起因するものであり、これらの工程を
厳重に管理しなければならないという欠点を有してい
る。この欠点を解決するため、特公平8ー5160号公
報に開示されているように、鋼板表面に、本発明の析出
状態の異なる特定の析出状態の錫めっきを施し、その上
層にTFS皮膜を形成させた表面処理鋼板に共重合ポリ
エステル樹脂フィルムを積層した材料が提案されてい
る。しかし、この材料においては、積層された共重合ポ
リエステル樹脂フィルムの加工密着性の観点から、錫め
っき量が1.0〜6.4g/m2が最適であるといわれているが、
錫めっき量も多く、連続的に生産する際にスマッジが発
生しやすく、このスマッジがロールに付着し、錫めっき
鋼板の表面を汚染するだけでなく、その上に積層される
共重合ポリエステル樹脂フィルムに欠陥を発生させるこ
とがあり、さらに経済的にも好ましい材料といいがた
い。また、上記のようにTFSに積層される共重合ポリ
エステル樹脂フィルムは厳しい成形加工を施しても剥離
しない優れた加工密着性を有しているが、保香性、経済
性の点で問題がないとはいいがたい。さらに、共重合ポ
リエステル樹脂フィルムを積層する基板がTFSであ
り、仮に溶接部を除いて共重合ポリエステル樹脂フィル
ムを積層しても、表層のクロム水和酸化物層の電気抵抗
が大であり、溶接缶用材料として適用することはできな
い。
【0003】最近では、ニッケルめっきを施し、焼鈍工
程で鋼表面に拡散させ、調質圧延した後、0.8 g/m2程度
の錫めっきを施し、溶融処理(リフロー処理)によりめ
っきされた錫を島状にし、さらに薄いTFS皮膜を形成
させた材料、あるいはニッケルめっき後、錫めっきを施
し、リフロー処理によりめっきした錫を島状にし、さら
に薄いTFS皮膜を形成した材料、いわゆる極薄錫めっ
き鋼板(Lightly tincoated steel sheet)に、溶接さ
れる部分を除いて、ポリエチレンテレフタレート樹脂フ
ィルムを積層した材料が溶接缶用材料として用いられは
じめた。しかしこの材料は熱可塑性ポリエステル樹脂フ
ィルムとの密着性が十分ではなく、溶接後、フランジ加
工、ネッキング加工程度の加工では積層されたポリエチ
レンテレフタレート樹脂フィルムは剥離することはない
が、厳しい成形加工が施される薄肉化深絞り缶の用途に
は、成形加工時に積層された樹脂フィルムが剥離するた
めに、適用することはできない。このように従来のポリ
エステル樹脂被覆表面処理鋼板は缶用材料として、経済
性、および要求される特性を考慮すると万能ではない。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】本発明が解決しようと
する技術課題は、厳しい成形加工が施される薄肉化深絞
り缶、および溶接缶として問題となる上記の諸特性を同
時に満足する、厳しい成形加工が施される薄肉化深絞り
缶用だけでなく、溶接缶用にも適用可能であり、成形加
工の形態の違いにもかかわらず品種の統合が可能であ
り、かつ安価な熱可塑性樹脂被覆表面処理鋼板、および
その製造方法を提供することにある。
【0005】
【課題を解決するための手段】請求項1記載の熱可塑性
ポリエステル樹脂被覆表面処理鋼板は、鋼板の表面に錫
めっき量として50〜1000mg/m2 が被覆されて
おり、その錫めっきの表面被覆面積割合が4〜20%で
あり、かつ前記錫めっきが被覆されている面積の30%
以上が3〜500個の錫粒子の連続析出状態であり、さ
らにその錫めっきの上層に50〜150mg/m2 の金
属クロム層と、その金属クロム上層に5〜30mg/m
2 のクロム水和酸化物層とが設けられており、さらにそ
の上層には、接着剤を介してあるいは介さずに二軸配向
ポリエチレンテレフタレートフィルムが積層されている
ことを特徴とする。このような鋼板は、二軸配向ポリエ
チレンテレフタレートフィルムが、135〜165℃の低温結
晶化温度を有するポリエチレンテレフタレート樹脂から
なる二軸配向フィルムであることが望ましい。また請求
項3の製造方法は、鋼板を脱脂、酸洗した後、2価の錫
イオン濃度が10〜100g/l、酸濃度(硫酸換算)
が6〜60g/l、光沢剤の濃度が0.01〜1g/l
である錫めっき浴を用い、前記錫めっき浴中の前記光沢
剤の濃度をX(g/l)、前記鋼板の錫析出開始電位と
前記電位よりもカソード側の錫析出電位との差をY(m
V)とした場合、前記Yの値が の範囲にあるような錫析出電位で、錫粒子が部分的に不
連続である錫めっき層を形成させ、さらにその上層に金
属クロム層と、その金属クロム上層にクロム水和酸化物
層とを設け、さらにその上層に、接着剤を介してあるい
は介さずに二軸配向ポリエチレンテレフタレートフィル
ムを積層することを特徴とする。このような方法は、光
沢剤が、エトキシ化ーαーナフトール、およびまたはエ
トキシ化ーαーナフトールスルホン酸であることが好ま
しい。
【0006】
【発明の実施の形態】本発明者らは熱可塑性ポリエステ
ル樹脂被覆表面処理鋼板の構成について種々検討した結
果、不連続に錫を析出させた錫めっき鋼板表面にTFS
皮膜を形成させた表面処理鋼板上に、二軸配向ポリエチ
レンレレフタレートフィルムを公知の方法で積層するこ
とにより、薄肉化深絞り缶用だけでなく、溶接缶用にも
適用可能な、加工密着性、耐糸錆性等に優れた熱可塑性
樹脂被覆表面処理鋼板が得られることを見出した。
【0007】
【実施例】以下、実施例にて本発明を詳細に説明する。
まず、本発明の熱可塑性樹脂被覆金属板の特徴である表
面処理鋼板について説明する。本発明において、二軸配
向ポリエチレンテレフタレート樹脂フィルムが積層され
る基板である表面処理鋼板は、鋼板表面を錫めっき量と
して、50〜1000mg/m2、前記鋼板のこの錫めっきによる
表面被覆面積率が4〜20%であり、かつ前記錫めっきに
よる前記表面被覆面積の30%以上が3〜500個の錫電析粒
子が連続して析出させた錫めっき層で被覆し、その上
層、および鋼板露出部分に、上層がクロムとして5〜30m
g/m2のクロム水和酸化物、下層が50〜150mg/m2の金属ク
ロムからなる二層皮膜、いわゆるTFS皮膜を形成させ
たことを特徴としている。
【0008】錫めっき量が50mg/m2未満では、錫による
鋼板表面の被覆面積率が4%未満となり、鋼板の腐食を
生じやすい圧延時のロール目の山部、鋼板の結晶の粒界
近傍などの部分を錫で完全に被覆することができず、耐
糸錆性が劣り、かつ溶接性が著しく低下する。一方、10
00mg/m2 を越えると耐糸錆性は向上するが、鋼板表面の
錫による被覆面積率を20%未満にすることが困難とな
り、そのため、積層される二軸配向ポリエチレンテレフ
タレートフィルムの加工密着性が劣るようになる。すな
わち、錫めっき量が50 mg/m2未満では溶接缶用に適用で
きず、錫めっき量が1000 mg/m2を越えると薄肉化深絞り
缶用に適用できず、両用途に適用可能な錫めっき量は50
〜1000 mg/m2の範囲であり、析出した錫による鋼板表面
の被覆面積率は4〜20%の範囲であることが必要であ
る。
【0009】さらに、本発明において、積層される二軸
配向ポリエチレンテレフタレートフィルムの基板として
用いられる表面処理鋼板は、上記のように錫めっき量お
よび鋼板表面の錫による被覆面積率を満足するだけでな
く、鋼板表面の被覆面積の30%以上が3〜500個の錫電析
粒子が連続的に接続して面状析出していることが必要で
ある。一般に、錫めっき鋼板の腐食しやすい箇所は少な
くとも 5μm程度の幅がある。したがって、腐食されや
すい箇所は粒径1〜2μmの錫粒子が少なくとも3個以上
連続した錫で被覆することが必要である。一方、錫粒子
が 500個を越えて連続して析出すると、耐糸錆性は改善
されるが、鋼板表面の錫による被覆面積率を20%未満に
することが困難となる。さらに、鋼板表面の特に腐食さ
れやすい圧延時のロール目の山部、および鋼板の結晶の
粒界などの箇所は、鋼板表面全面積の 5%程度の割合で
存在しており、これらの箇所は腐食の経過とともに増加
するので、錫粒子が3〜500個連続して析出した錫による
鋼板表面の被覆面積は、錫による鋼板表面の被覆面積の
30%以上とすることが必要である。
【0010】上記のような析出状態の錫めっきを鋼板表
面に施すには、鋼板を公知の方法で脱脂、酸洗した後、
2価錫イオン濃度が10〜100g/l、酸濃度(硫酸換算)が
6〜60g/l、光沢剤濃度が 0.01〜1g/lの錫めっき浴を用
い、錫めっき浴中の光沢剤の濃度をX (g/l)、鋼板の錫
析出電位と錫析出開始電位からよりカソード側の錫析出
電位の差をY(mV)とした場合、Yの値が の範囲にあるような錫析出電位で錫めっきを施すことが
必要である。
【0011】本発明の樹脂被覆表面処理鋼板は、積層さ
れる二軸配向ポリエチレンテレフタレートフィルムの加
工密着性、および耐糸錆性を同時に満足させようとする
ものであり、そのために、上記の方法で析出する錫によ
る鋼板表面の被覆面積を20%未満の可能な限り小さい面
積とすることが必要であり、錫めっき条件も重要なポイ
ントである。エトキシ化ーαーナフトール、エトキシ化
ーαーナフトールスルホン酸のような光沢剤を添加しな
い錫めっき浴を用いて錫を電析すると、電析の開始時に
は鋼板上の錫の析出しやすい部分で錫の核が生じる。錫
は鋼板上より錫上に析出しやすい性質を有するため、電
析を継続すると、鋼板上に新たな錫の核はほとんど生じ
ず、最初に析出した錫の核が成長し、大きな単一の錫粒
子となるので、錫粒子が部分的に連続した均一で平滑な
錫めっきを形成することができない。したがって、本発
明の樹脂被覆表面処理鋼板の基板として適していない。
2価錫イオン濃度が 10g/l未満では錫の析出効率が極端
に低下するので好ましくなく、また高濃度ではめっき電
流密度を高くできるので高速めっきには適しているが、
100g/lを越えると錫めっき浴中に錫の沈澱が増加し、か
つ排水中へのロスが増加するので好ましくない。酸濃度
は錫イオン濃度によって適正な濃度が定まり、本発明の
場合、2価錫イオン濃度の60%が基準となる。一般に、
鋼板上への錫めっきにおいては、電流密度を制御して適
正な錫めっきを得ているので、浴温、ラインスピードな
ど上記の浴組成以外の電流密度に影響を与える因子につ
いても適正範囲に制御した上で、電圧を変動させて一定
の適正な錫めっき電流密度を得るようにしている。本発
明の場合、電流密度ではなく、錫の析出電位が適正範囲
に固定されるため、設定された一定範囲のめっき電圧に
対して適正なめっきが得られるめっき電流密度を設定す
るためには、2価錫イオン濃度、浴温などを変化させる
必要がある。例えば、一般のぶりき製造ラインのよう
に、めっきタンク数の多い設備を用いて、鋼板上に本発
明で必要とする析出状態の錫めっきを施す場合、1タン
ク当りのめっき電流は極端に下がり、錫の析出開始電位
からの分極幅も小さくなるので、錫めっき浴中の光沢剤
の濃度を増加させ、2価錫イオン濃度、浴温を低下させ
ることが必要である。錫めっきを1タンクのみで行う場
合は、これとは反対に、錫めっき浴中の光沢剤の濃度を
低下させ、2価錫イオン濃度、および浴温を上昇させる
ことが必要である。なお、基板である鋼板は、目的とす
る用途に適用可能な成形加工性を有する鋼板であれば、
特に鋼中の成分等を限定することはないが、一般に缶用
に用いられている板厚0.13〜0.30mmの低炭素冷延鋼板が
好ましい。
【0012】本発明において必要とされる析出状態の錫
めっきを施すには、錫の析出電位を制御することが重要
であるが、錫の析出電位に最も影響する因子は錫めっき
浴中の光沢剤の濃度である。光沢剤の濃度が 0.01g/l未
満の場合、上記に記した理由で、錫を選択的に連続析出
させることができない。一方、光沢剤の濃度が1g/lを越
えた場合は、錫の析出開始電位により近い電位でめっき
する必要があり、電流密度を極端に低下させなければな
らず、必要とする錫めっきタンク数が多くなるので好ま
しくない。本発明の実験結果を図5に示した。図5は、
鋼板上における錫の析出開始電位と、その電位よりもカ
ソード側の析出電位との差(ΔE)をY軸に、添加剤の
濃度をX軸で示した場合の、本発明の表面処理鋼板の製
造条件範囲を○印で示したものである。この実験結果に
基づいて、錫の析出電位と光沢剤の濃度の関係を実験式
化すると次のようになる。光沢剤の濃度をX(g/l)、 鋼
板上における錫の析出開始電位とその電位よりもカソー
ド側の析出電位置との差(ΔE)をY(mV)とした場合、
Yの値が の範囲で表される錫の析出電位でめっきすることによ
り、錫による鋼板表面の被覆面積率が 4〜20%で、かつ
鋼板の腐食を生じやすい箇所に選択的に錫が連続的に析
出した表面処理鋼板が得られる。この時、Yの値が1/
Xより小さくなれば粒状の錫が析出し、Yの値が20/
(X+0.03)以上の領域では、錫の析出面積が鋼板
表面積の20%を越えるようになる。また、錫の析出電
位を適正な範囲にするには、光沢剤の濃度に見合った錫
の適正析出電位範囲をポテンショスタットを用いて管理
すればよく、光沢剤の濃度が一定値に管理されていれ
ば、適正なめっきが得られる電流値からその時の電位を
換算することもできる。
【0013】ここで、用いる錫めっき浴中の光沢剤の濃
度、および錫めっき条件が重要であることを明確にする
ため、酸性フェロスタン浴を用いて、鋼板に錫を電気め
っきした場合の錫の析出電位と電流の関係を、錫めっき
浴に添加される光沢剤の量をパラメーターとして実験し
た一例を図1に示す。図1は、2価錫イオン30 g/l、フ
ェノールスルホン酸18 g/lからなる、光沢剤の濃度が異
なる酸性フェロスタン浴を用い、鋼板を陰極として分極
させた場合の電位と電流の関係を示す。aは光沢剤を添
加しない上記組成の錫めっき浴を用い、鋼板を陰極とし
て外部分極させた場合の電位と電流の関係を示す分極曲
線である。この場合、錫の析出電位をよりカソード側に
移動させても、電位と電流の関係は、錫の電着により見
かけ上、若干面積が増大し、電流が多くなる傾向が認め
られるが、オームの法則にしたがって、錫の析出電位と
析出時に流れる電流の間には正の相関性が求められる。
【0014】bは光沢剤としてエトキシ化ーαーナフト
ール(EN10)を 0.02g/l添加した上記組成の錫めっき浴
中で、aの場合と同一の条件で測定した分極曲線であ
る。光沢剤の添加量が少ないので分極初期(P1)までは
外部分極も過電圧も小さいが、錫の析出電位をよりカソ
ード側に外部分極すると、若干の過電圧の上昇が認めら
れる。cは光沢剤としてEN10を1.0g/l添加した上記組成
の錫めっき浴中で、aの場合と同一の条件で測定した分
極曲線である。光沢剤の添加量が多くなると、分極初期
から大きな過電圧が生じ、さらに、錫の析出電位をより
カソード側に分極すると、錫の析出電位(P2)までは過
電圧の大きな変化は認められないが、錫の析出電位(P
3)で大きな過電圧の上昇が認められ、電流上昇は認め
られなくなる。さらにカソード側に分極すると、錫の析
出電位(P4)で電流が減少し、さらに大きな過電圧の上
昇が認められるようになる。
【0015】図1のa〜cに示した分極曲線を基にし
て、各分極曲線のめっき条件で得られる錫めっきにおけ
る錫の析出形態を走査型レーザー顕微鏡を用いて観察し
た結果を図2〜図4に示す。図2は分極曲線aのめっき
条件により、錫析出開始電位よりカソード側に 300mV外
部分極した場合の錫の析出状態を示すが、単一の粒状錫
が分散して析出しているのが認められる。図3は分極曲
線bのめっき条件において、(P1)の錫の析出電位から
水素が発生する過電圧までの間の電位において錫めっき
を行った場合の錫の析出形態を示すが、鋼板の腐食しや
すい圧延時のロール目の山部、鋼板の結晶の粒界近傍な
どに粒状の錫が選択的に連続析出しているのが認められ
る。この場合、粒状の錫が連続的に析出する量の割合は
錫の析出電位(P1)に近いほど少なく、水素発生過電圧
に近いほど多くなる。図4は分極曲線cのめっき条件に
おいて、錫の析出電位(P3)を越えて、さらに分極させ
た条件で錫めっきを行った場合の錫の析出形態を示す
が、粒状の錫が鋼板上に連続析出し、部分的に鋼板表面
が露出した状態であるのが認められる。さらに分極し、
P4以上の電位になると通常のぶりきの製造に用いられる
錫めっき条件と同一となるので、錫が鋼板の全面に析出
する状態となる。
【0016】次いで、上記の特定の不連続析出状態を有
する錫めっき鋼板上に形成されるTFS皮膜について説
明する。TFS皮膜の形成方法は特に限定されるもので
はなく、公知の方法により、下層が金属クロム、上層が
クロム水和酸化物からなる皮膜を形成させることができ
る。この場合、鋼板表面の多くても20%の部分は錫によ
り被覆されており、この部分に積層される二軸配向ポリ
エチレンテレフタレートフィルムの加工密着性の向上は
期待できないが、鋼板表面の少なくとも80%がTFSと
全く同一の皮膜構造を有しているため、得られた表面処
理鋼板全面にわたってほぼTFSと同様に、積層された
樹脂フィルムに対して優れた加工密着性が確保される。
金属クロム量は50〜150mg/m2、クロム水和酸化物量はク
ロムとして、5〜30 mg/m2の範囲が好ましい。金属クロ
ム量が50mg/m2未満では鋼板表面の80%以上を直接被覆
している部分の耐食性が劣り、また、150mg/m2を越える
と、積層される樹脂フィルムの加工密着性、および得ら
れた樹脂被覆表面処理鋼板の耐食性に対する効果も飽和
し、また経済的にも好ましくない。クロム水和酸化物の
量がクロムとして5mg/m2未満では積層される樹脂フィル
ムの優れた加工密着性が得られず、またクロムとして 3
0mg/m2を越えると、優れた溶接性が確保できない。
【0017】次に、上記に記した表面処理鋼板に積層さ
れる熱可塑性ポリエステル樹脂フィルム、およびその積
層法について説明する。積層される熱可塑性ポリエステ
ル樹脂フィルムとしては、種々の種類のポリエステル樹
脂フィルムが考えられるが、本発明の目的とする薄肉化
深絞り缶用にも適用可能な成形加工性を有し、樹脂フィ
ルムの生産性、保香性、経済性などを考慮すると、二軸
配向ポリエチレンテレフタレートフィルムが最も適して
いる。特に、135〜165℃の低温結晶化温度を有するポリ
エチレンテレフタレート樹脂からなる二軸配向フィルム
が、基板である表面処理鋼板との加工密着性、耐透過
性、耐衝撃加工性も考慮すると、より好ましい。
【0018】ここで、低温結晶化温度について説明す
る。ポリエチレンテレフタレートなどのポリエステル樹
脂を、その融点以上に加熱した後、急冷して非結晶状態
にしたものを、示差走査熱量計(DSC)を用いて徐々
に加熱すると、樹脂によって異なるが、100〜200℃に発
熱ピークが認められる。そして、この発熱ピークが高温
側に現れる樹脂ほど結晶化速度が小さく、低温側に現れ
る樹脂ほど結晶化速度が大きい傾向を示す。例えば、結
晶化速度が極めて大きい市販のポリブチレンテレフタレ
ートフィルムを加熱溶融した後、急冷したものは約50℃
の発熱ピークを示し、また市販のポリエチレンテレフタ
レートフィルムを加熱溶融した後、急冷したものは約 1
28℃の発熱ピークを示す。一方、市販のポリエステル樹
脂フィルム被覆金属板から成形された2ピース缶(缶胴
部と缶底部が一体で成形された缶)に使用されている、
結晶化速度の小さいポリエチレンテレフタレート/エチ
レンイソフタレート共重合ポリエステル樹脂は約 177℃
の発熱ピークを示す。
【0019】本発明において、積層される樹脂フィルム
として、135〜165℃の低温結晶化温度を有するポリエチ
レンテレフタレート樹脂からなる二軸配向フィルムがよ
り好ましいことを記したが、低温結晶化温度が 135℃未
満のポリエチレンテレフタレート樹脂からなる二軸配向
フィルムを用いた場合、結晶化速度が大きいため、該樹
脂フィルムの積層工程において、加熱された表面処理鋼
板の温度のわずかな変動により、該樹脂フィルムの二軸
配向が大きく変化し、積層後の該樹脂フィルムの配向構
造のバラツキが大となり、基板である表面処理鋼板に近
い部分の二軸配向度が十分消失せず、得られたポリエチ
レンテレフタレート樹脂被覆表面処理鋼板に厳しい成形
加工を施した際に、該樹脂フィルムが剥離したり、該樹
脂フィルムにクラックが入るおそれがある。一方、該樹
脂フィルムの二軸配向がほとんど消失すると、成形加工
は可能であるが、得られた缶体に内容物を充填し、経時
させると、内容物の成分が該樹脂フィルムを透過し表面
処理鋼板が腐食されたり、わずかな衝撃で該樹脂フィル
ムにクラックが入るおそれがある。すなわち、好適なフ
ィルム配向構造を有するポリエチレンテレフタレート被
覆表面処理鋼板を得るために、加熱される表面処理鋼板
の温度範囲が狭くなり、作業性が低下するおそれがあ
る。
【0020】また、低温結晶化温度が 165℃を越えたポ
リエチレンテレフタレートのみからなるホモポリマーの
フィルムを工業的に製造することはむずかしく、低温結
晶化温度を 165℃以上にするには、ポリエチレンイソフ
タレートなどの共重合成分を添加することが必要であ
り、厳しい成形加工性、耐透過性、保香性、耐衝撃性な
どの缶体に要求される特性を得ることができない。
【0021】また、表面処理鋼板に積層される二軸配向
ポリエチレンテレフタレートフィルムの厚さは 5〜50μ
mの範囲のものが好ましく、10〜30μmのものがより好
ましい。厚さが 5μm未満では上記の表面処理鋼板上に
連続的に高速で積層することがむずかしく、作業性を著
しく阻害する。さらに厳しい成形加工を施した時、剥離
したり、無数のクラックが入り、優れた耐食性が得られ
ない。また、厚さが50μmを越えると、製缶分野で広く
使用されているエポキシ系樹脂塗料などと比較し、経済
的でない。なお、該樹脂フィルムを製膜する際に、溶融
した該樹脂に必要に応じ、適量の安定剤、酸化防止剤、
帯電防止剤、顔料、滑剤、腐食防止剤などの添加剤を加
えても支障をきたすことはない。特に缶外面となる面に
積層される該樹脂フィルムには酸化チタン系の白色顔料
を添加することが印刷デザインの鮮明性を考慮すると好
ましい。
【0022】この二軸配向ポリエチレンテレフタレート
フィルムを上記の表面処理鋼板に積層する方法は、公知
の方法、すなわち該樹脂フィルムの融点以上に加熱した
表面処理鋼板に該樹脂フィルムを直接接触させて溶融接
着させる方法、エポキシ・フェノール系の熱硬化型接着
剤などの接着剤を介して積層する方法が適用できる。該
樹脂フィルムを表面処理鋼板に直接溶融接着させる方法
において、表面処理鋼板は、当然該樹脂フィルムの融点
以上の温度、すなわち 265℃以上に加熱することが必要
である。この温度は錫の融点以上の温度であり、鉄ー錫
合金の生成により金属錫量の減少が懸念されるが、本発
明において基板として用いられる表面処理鋼板におい
て、鋼板上に析出した錫は特殊な形態であり、かつ、加
熱時間も極めて短時間であり、溶接性に悪影響を与える
ほど金属錫量の低下はない。しかし、300℃以上で、よ
り長い時間加熱することは好ましくない。
【0023】また、二軸配向ポリエチレンテレフタレー
トフィルムを熱硬化型接着剤などの接着剤を介して表面
処理鋼板に積層する方法においては、該接着剤を表面処
理鋼板の表面に塗布、乾燥後、該樹脂フィルムを積層す
るか、あるいは積層される該樹脂フィルムの接着面に該
接着剤を予め塗布、乾燥するなどいずれの方法も可能で
ある。しかし、この接着剤を介在させる方法はコストア
ップにもなり、また用いる接着剤中の有機溶剤による環
境汚染に対する対策も必要となり、やむを得ない場合を
除き適用することは好ましくない。
【0024】本発明の熱可塑性ポリエステル樹脂被覆表
面処理鋼板の樹脂フィルムの積層方法に関しては、適用
される用途に応じて積層方法を選択すべきである。溶接
缶用材料の場合は、溶接部が非積層部となるように樹脂
フィルムを積層することは当然である。数缶分に相当す
る広幅、あるいは1缶分の狭幅の帯状の表面処理鋼板
の、溶接部を除いて連続的に樹脂フィルムを積層する方
法、数缶分に相当するサイズの短冊状に切断したカット
シートに、溶接部を除いて樹脂フィルムを連続的に積層
する方法の、いずれの方法も適用可能である。なお、薄
肉化深絞り缶用材料の場合は、表面処理鋼板の全面に樹
脂フィルムを積層することはいうまでもない。また、表
面処理鋼板の片面のみに樹脂フィルムを積層し、他の片
面には塗装あるいは印刷が施される用途もあるが、この
ような場合、表面処理鋼板の片面に樹脂フィルムを積層
するか、あるいは先に塗装または印刷を施すかは、適用
される用途、要求される特性などを考慮し、決定すべき
である。
【0025】以下、本発明について、実施例と比較例に
より具体的に説明する。 (実施例1〜8)冷間圧延後、連続焼鈍し、調質圧延を
施した板厚0.21mmの鋼板を、公知の方法により脱脂、酸
洗し、水洗後、表1に示す条件で錫めっきを施し、つい
で無水クロム酸80 g/l、硫酸0.50 g/l、ホウフッ化水素
酸0.5g/lからなるクロム酸浴を用い、浴温55℃、陰極電
流密度30 A/dm2で処理時間を変えてTFS処理を施し、
ついで水洗、乾燥した。得られた表面処理鋼板の錫めっ
き量、金属クロム量、クロム水和酸化物量等も表1に示
した。さらに、得られた表面処理鋼板を加熱し、表3に
示す種々の低温結晶化温度を有する厚さ20μmの二軸配
向ポリエチレンテレフタレートフィルム(表3におい
て、PET で表示)を積層した。なお、表面処理鋼板を実
施例1〜3では 270℃に、実施例4および実施例5では
280℃に、実施例6および7では 290℃に加熱した。実
施例8は実施例1と同一の表面処理鋼板に、片面にエポ
キシ・フェノール系熱硬化性接着剤を 3g/m2塗布した実
施例1と同一の二軸配向ポリエチレンテレフタレートフ
ィルムを、接着剤塗布面が表面処理鋼板と接するように
して実施例1と同一条件で積層した。また、表1におい
てPSAはフェノールスルホン酸を示し、濃度は硫酸換算
で示した。
【0026】(比較例1〜4)実施例1〜8と同様な鋼
板に、実施例1〜8と同様な前処理を施した後、表2に
示す条件で錫めっきを施し、ついで実施例1〜8と同様
な浴組成を用いてTFS処理を施し、水洗、乾燥した。
得られた表面処理鋼板の錫めっき量、金属クロム量、ク
ロム水和酸化物量等も表2に示した。得られた表面処理
鋼板を加熱し、表4に示す種々の低温結晶化温度を有す
る厚さ20μmの二軸配向ポリエステル樹脂フィルムを積
層した。比較例1では表面処理鋼板を 270℃に加熱し、
低温結晶化温度 135℃の二軸配向ポリエチレンテレフタ
レートフィルムを、比較例2では表面処理鋼板を 270℃
に加熱し、低温結晶化温度 128℃の二軸配向ポリエチレ
ンテレフタレートフィルムを、比較例3では表面処理鋼
板を 245℃に加熱し、エチレンテレフタレート88モル
%、エチレンイソフタレート12モル%からなる低温結晶
化温度 177℃、厚さ20μmの二軸配向共重合ポリエステ
ル樹脂フィルム(表4において、PETIで表示)を、比較
例4では表面処理鋼板を 280℃に加熱し、低温結晶化温
度143℃の二軸配向ポリエチレンテレフタレートフィル
ムを積層した。
【0027】得られた表面処理鋼板、およびこの表面処
理鋼板に上記のポリエステル樹脂フィルムを積層した熱
可塑性ポリエステル樹脂被覆表面処理鋼板の特性を下記
に示す方法で評価した。 (1)耐スマッジ性 定盤上に得られた表面処理鋼板の測定面が上になるよう
に置き、その上に濾紙(5A)を置き、さらにその上に直
径 2cm、重量200gの荷重を加え、濾紙を測定面に沿って
20cm移動させ、濾紙に付着する錫などの付着程度を肉眼
で観察し、つぎに基準で評価した。 ◎:表面に擦り傷が認められるが、濾紙上に錫などの付
着は認められない ○:濾紙上に錫などの付着は多少認められるが、実用上
問題なし △:濾紙上にかなりの程度の錫などの付着が認められる ×:濾紙上に多量の錫などの付着が認められる (2)積層された樹脂フィルムの加工密着性 得られた樹脂被覆表面処理鋼板を直径160 mmのブランク
に打ち抜いた後、缶径が100mmの絞り缶とした。ついで
再絞り加工により缶径 80mmの再絞り缶とした。この再
絞り缶をストレッチ加工と同時にしごき加工を施し、缶
径66mmの薄肉化絞りしごき缶とした。この成形加工にお
いて、缶の上端部となる再絞り加工部としごき加工部間
の間隔は20mm、再絞りダイスの肩アールは樹脂被覆表面
処理鋼板の厚さの10倍、しごき加工部のクリアランスは
樹脂被覆表面処理鋼板の厚さの50%となる条件で行っ
た。ついで公知の方法で缶上端をトリミングし、ネック
イン加工、フランジ加工を施し、得られた缶体の缶壁に
おける樹脂層の剥離の有無を肉眼で観察し、つぎの基準
で評価した。 ◎:まったく剥離なし ○:わずかに剥離するが、実用上問題なし △:かなり剥離 ×:缶上部全体が剥離 (3)耐糸錆性 得られた樹脂被覆表面処理鋼板を10cm×10cmの大きさに
切断し、カッターで中央部で交差するように十文字状に
スクラッチを入れた後、スクラッチの交差部を中心とし
て、5mmのエリキセン張り出し加工を施し、ついでこの
試料を1%の食塩水中で30 分煮沸後、湿度85%、温度35℃
の恒温室中で27日間放置し、発生した糸錆の状態を肉眼
で観察し、つぎの基準で評価した。 ◎:糸錆の発生なし ○:スクラッチ部にわずかに糸錆が発生 △:糸錆がスクラッチ交差部の周辺、およびスクラッチ
部の周辺に発生 ×:糸錆がスクラッチ交差部の周辺、およびスクラッチ
部の周辺以外にも発生 (4)保香性 得られた缶体にウーロン茶を充填し、37℃で、3ケ月貯
蔵した後、開缶し、香り、味の変化を官能検査し、つぎ
の基準で評価した。 ◎:香り、味の変化がない ○:香り、味が微妙に変化 △:香り、味が多少変化 ×:香り、味が明らかに変化 (5)溶接性 溶接部を除いて樹脂フィルムを積層した樹脂被覆表面処
理鋼板を250g飲料缶用の缶胴となる大きさに切断し、溶
接機(スードロニック社製、FBB 5600)を用いて溶接し
た。溶接性の良否は溶接可能な溶接電流範囲(ACR)
を、電流設定ポイント数(大であるほど溶接性が良好)
で評価した。上記の評価結果を表3および4に示した。
【0028】
【表1】 (注) PSA:フェノールスルホン酸、CrO:金属クロム、CrOX:クロム水和酸化物中のクロム A:エトキシ化-α-ナフトール、B:エトキシ化-α-ナフトールスルホン酸
【0029】
【表2】 (注) PSA:フェノールスルホン酸、CrO:金属クロム、CrOX:クロム水和酸化物中のクロム A:エトキシ化-α-ナフトール、B:エトキシ化-α-ナフトールスルホン酸
【0030】
【表3】 (注) ( )内の数値:低温結晶化温度(℃)
【0031】
【表4】 (注) ( )内の数値:低温結晶化温度(℃)
【0032】得られた熱可塑性ポリエステル樹脂被覆表
面処理鋼板の種々の特性を表3および4に示したが、実
施例1〜実施例7に示すように、本発明において、特定
された範囲内の条件で錫めっきを施し、さらにTFS処
理によって得られた表面処理鋼板に特定の低温結晶化温
度を有する二軸配向ポリエチレンテレフタレートフィル
ムを積層した熱可塑性ポリエステル樹脂被覆表面処理鋼
板は、種々の特性に優れ、厳しい成形加工が施される薄
肉化深絞り缶用だけでなく、溶接缶用にも適用可能であ
ることがわかる。一方、比較例1は本発明において用い
られる表面処理鋼板とはの析出形態が異なり錫の被覆面
積が大きく、かつ金属クロム量、およびクロム水和酸化
物量が少ない表面処理鋼板に二軸配向共重合ポリエステ
ルフィルムを積層した例であり、加工密着性と耐糸錆性
が劣っている。比較例2は用いる錫めっき浴に光沢剤を
添加しない例であり、得られる表面処理鋼板における錫
の析出形態も本発明において用いられる表面処理鋼板の
錫の析出形態と異なり、錫めっき量が少ないにもかかわ
らず、耐スマッジ性が悪い。比較例3は低温結晶化温度
が低い二軸配向ポリエチレンテレフタレートフィルム
を、錫めっき量の多い表面処理鋼板に積層した例であ
り、加工密着性が劣るのは、錫めっきによる鋼板の被覆
率が高いためと思われる。さらに、比較例4は、本発明
において用いられる表面処理鋼板と錫の析出形態と同様
であるが、クロム水和酸化物量が多い表面処理鋼板に二
軸配向共重合ポリエステルフィルムを積層した例であ
り、保香性がやや悪いのは積層された樹脂フィルムによ
るものであり、溶接性が多少劣るのはクロム水和酸化物
量が多いことによるものである。また、比較例5は本発
明に用いられる錫めっき浴と同様であるが、錫めっき条
件が異なり、さらに、錫めっき量およびクロム水和酸化
物量の少ない表面処理鋼板に二軸配向ポリエチレンテレ
フタレートフィルムを積層した例であり、耐スマッジ性
が劣るのは錫の粒状析出によるもので、耐糸錆性、溶接
性が劣るのは錫めっき量が少ないことによるものであ
る。
【0033】
【発明の効果】本発明の熱可塑性ポリエステル樹脂被覆
表面処理鋼板は、厳しい成形加工を施した場合でも、積
層された樹脂フィルムが剥離することもない優れた加工
密着性を有し、その上、保香性にも優れ、錫めっき量が
少ないにもかかわらず、耐糸錆性および溶接性に優れた
薄肉化深絞り缶用に適用可能であるだけでなく、溶接缶
用にも適用可能であり、製造方法の統合が可能な適用範
囲が広い、安価な缶用材料である。また、積層される樹
脂フィルムの基板として用いられる表面処理鋼板は、錫
めっき浴中の光沢剤の濃度および錫めっき条件を管理す
るという安易な方法で製造可能であり、工業的な価値は
極めて大きい。本発明は、鋼板の表面に錫めっき量とし
て 50〜1000mg/m2、前記鋼板の前記錫めっきによる表面
被覆面積率が 4〜20%であり、かつ前記錫めっきによる
前記表面被覆面積の30%以上が3〜500個の錫電析粒子が
連続的に析出した錫めっき層が形成され、その上層、お
よび露出鋼板上に50〜150mg/m2の金属クロム層、さらに
その上層にクロムとして5〜30mg/m2のクロム水和酸化物
が形成されてなる表面処理鋼板上に、接着剤を介して、
あるいは介さずに二軸配向ポリエチレンテレフタレート
フィルムを積層してなる熱可塑性ポリエステル樹脂被覆
表面処理鋼板であり、二軸配向ポリエチレンテレフタレ
ートフィルムが、135〜165℃の低温結晶化温度を有する
ポリエチレンテレフタレート樹脂からなる二軸配向フィ
ルムであることを特徴としており、厳しい成形加工を施
した場合でも、積層された樹脂フィルムが剥離すること
もない優れた加工密着性を有し、その上、保香性にも優
れ、錫めっき量が少ないにもかかわらず、耐糸錆性およ
び溶接性に優れた薄肉化深絞り缶用に適用可能であるだ
けでなく、溶接缶用にも適用可能であり、製造方法の統
合が可能な適用範囲が広い、安価な缶用材料である。ま
た本発明は、鋼板を公知の方法で脱脂、酸洗した後、2
価錫イオン濃度が10〜100g/l、酸濃度(硫酸換算)が6
〜60g/l、光沢剤の濃度が0.01〜1g/lである錫めっき浴
を用い、前記錫めっき浴中の前記光沢剤の濃度をX (g/
l)、前記鋼板の錫析出開始電位と前記錫析出開始電位か
らよりカソード側の錫析出電位との差をY(mV)とした
場合、前記Yの値が の範囲にあるような析出電位で不連続錫めっき層を形成
させ、さらに前記不連続錫めっき層上、および錫めっき
層が形成されていない鋼板露出部上に、公知の方法によ
り金属クロム層、さらにその上にクロム水和酸化物を形
成させた後、公知の加熱接着法を用いて接着剤を介し
て、あるいは介さずに二軸配向ポリエチレンテレフタレ
ートフィルムを積層することを特徴とする熱可塑性ポリ
エステル樹脂被覆鋼板の製造方法であり、前記光沢剤が
エトキシ化−α−ナフトール、およびまたはエトキシ化
−α−ナフトールスルホン酸であることを特徴としてお
り、積層される樹脂フィルムの基板として用いられる表
面処理鋼板を、錫めっき浴中の光沢剤の濃度、および錫
めっき条件を管理するという安易な方法で製造可能であ
り、工業的な価値は極めて大きい。
【図面の簡単な説明】
【図1】錫の析出電位と電流の関係を示す図である。
【図2】分極曲線aのめっき条件で錫めっきした場合
に、析出した錫の状態を示す図である。
【図3】分極曲線bのめっき条件で錫めっきした場合
に、析出した錫の状態を示す図である。
【図4】分極曲線cのめっき条件で錫めっきした場合
に、析出した錫の状態を示す図である。
【図5】本発明の目的とする錫の析出形態、および好適
な鋼板被覆率が得られる範囲を示した図である。
【符号の説明】
a:光沢剤を添加しない酸性フェロスタン浴を用いて、
鋼板上に錫を電気めっきした場合の分極曲線 b:光沢剤を 0.02g/l添加した酸性フェロスタン浴を用
いて、鋼板上に錫を電気めっきした場合の分極曲線 c:光沢剤1.0g/l添加した酸性フェロスタン浴を用い
て、鋼板上に錫を電気めっきした場合の分極曲線 P1:過電圧が大きくなる電位 P2:過電圧が大きくなる電位 P3:過電圧が大きくなる電位 P4:過電圧が大きくなる電位 1:鋼板表面に形成された圧延時のロール目の山の部分 2:分散析出した粒状の錫 3:圧延時のロール目の山の部分に選択的、かつ連続的
に析出した粒状錫 4:錫めっき後、鋼板表面の露出した部分 5:面状に析出した粒状の錫 ○:本発明の目的とする錫の析出形態、および鋼板被覆
率が得られる部分 ×:本発明の目的とする以外の錫の析出形態、および鋼
板被覆率が得られる部分

Claims (4)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 鋼板の表面に錫めっき量として50〜1
    000mg/m2 が被覆されており、その錫めっきの表
    面被覆面積割合が4〜20%であり、かつ前記錫めっき
    が被覆されている面積の30%以上が3〜500個の錫
    粒子の連続析出状態であり、さらにその錫めっきの上層
    に50〜150mg/m2 の金属クロム層と、その金属
    クロム上層に5〜30mg/m2 のクロム水和酸化物層
    とが設けられており、さらにその上層には、接着剤を介
    してあるいは介さずに二軸配向ポリエチレンテレフタレ
    ートフィルムが積層されている熱可塑性ポリエステル樹
    脂被覆表面処理鋼板。
  2. 【請求項2】 前記二軸配向ポリエチレンテレフタレー
    トフィルムが、135〜165℃の低温結晶化温度を有するポ
    リエチレンテレフタレート樹脂からなる二軸配向フィル
    ムであることを特徴とする請求項1に記載の熱可塑性ポ
    リエステル樹脂被覆表面処理鋼板。
  3. 【請求項3】 前記鋼板を脱脂、酸洗した後、2価の錫
    イオン濃度が10〜100g/l、酸濃度(硫酸換算)
    が6〜60g/l、光沢剤の濃度が0.01〜1g/l
    である錫めっき浴を用い、前記錫めっき浴中の前記光沢
    剤の濃度をX(g/l)、前記鋼板の錫析出開始電位と
    前記電位よりもカソード側の錫析出電位との差をY(m
    V)とした場合、前記Yの値が の範囲にあるような錫析出電位で、錫粒子が部分的に不
    連続である錫めっき層を形成させ、さらにその上層に金
    属クロム層と、その金属クロム上層にクロム水和酸化物
    層とを設け、さらにその上層に、接着剤を介してあるい
    は介さずに二軸配向ポリエチレンテレフタレートフィル
    ムを積層する熱可塑性ポリエステル樹脂被覆表面処理鋼
    板の製造方法。
  4. 【請求項4】 前記光沢剤が、エトキシ化ーαーナフト
    ール、およびまたはエトキシ化ーαーナフトールスルホ
    ン酸であることを特徴とする、請求項3に記載の熱可塑
    性ポリエステル樹脂被覆表面処理鋼板の製造方法。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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KR100624665B1 (ko) 2005-01-20 2006-09-19 한국기계연구원 자기이력 손실이 적은 이축 배향성 금속 테이프 및 그제조방법
JP2010269847A (ja) * 2009-04-20 2010-12-02 Nippon Steel Corp 耐糸錆性に優れたスチール缶体

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