JP2000001789A - 熱可塑性樹脂被覆鋼板およびその製造方法 - Google Patents

熱可塑性樹脂被覆鋼板およびその製造方法

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JP2000001789A
JP2000001789A JP18328498A JP18328498A JP2000001789A JP 2000001789 A JP2000001789 A JP 2000001789A JP 18328498 A JP18328498 A JP 18328498A JP 18328498 A JP18328498 A JP 18328498A JP 2000001789 A JP2000001789 A JP 2000001789A
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steel sheet
layer
thermoplastic resin
oxide layer
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Hiroki Nakamaru
裕樹 中丸
Naomasa Nakakoji
尚匡 中小路
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 製缶工程の加工による密着性および耐食性の
劣化を抑制することのできる熱可塑性樹脂被覆鋼板を提
供する。 【解決手段】 鋼板の表面に、該鋼板素地側から順に、
主に非晶質組織による金属クロム層、クロム水和酸化物
層および熱可塑性樹脂層を積層する。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】この発明は、熱可塑性樹脂被
覆鋼板、特に食缶、飲料缶および18リットル缶及び一般
缶等の材料として供される熱可塑性樹脂被覆鋼板および
その製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】近年、新たな製缶方法として、予め、鋼
板メーカーにてティンフリースチールの表面に二軸配向
ポリエチレンテレフタレートを熱融着し、この表面処理
後の鋼板を、製缶メーカーにて2ピース缶胴に成型す
る、手順が提案、そして実用化されている(例えば、志
水慶一、第167 回西山記念技術講座、127 頁 (1998年)
参照)。なお、ティンフリースチール(以下、TFSと
示す)とは、元来、高価なSnを使わないぶりきにかわ
る鋼板として開発されたものであり、語源からはSnを
使用しない鋼板一般(たとえばNiめっき鋼板など)に
適用されるべき用語であるが、乾、西山記念技術講座
(日本鉄鋼協会編)「容器用材料の最近の進歩と動向」
(1985)や、JIS G3315 「ティンフリースチール」など
に記載されているように、現在では付着量が約100 mg/
2 の金属クロム層とCr換算で10〜25mg/m2 程度の
クロム水和酸化物層による被膜を有する薄鋼板を指すの
が一般的である。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】上記製缶技術は、製造
工程で有機溶剤を使用しないで済むことから、環境保護
の観点から優れた技術であると考えられている。しかし
ながら、予め樹脂被覆された鋼板を加工することから、
製缶の加工工程で樹脂層が損傷される結果、熱可塑性樹
脂被覆とクロム水和酸化物との間の密着性、金属クロム
層とクロム水和酸化物との密着性又はクロム層と素地鋼
との密着性(以下被膜密着性という)の低下や缶内容物
を充填した後の耐食性の劣化が問題になる。
【0004】これらの問題を解決するために、例えば特
開平1−249331号公報には、軟化開始温度が 170〜235
℃、結晶融解温度が 210〜250 ℃、そして破断伸びが 1
50〜400 %を示し、少なくともエステル反復単位の75〜
99%がエチレンテレフタレート単位である、ポリエステ
ルフィルムの片面に、エポキシ基、水酸基、アミド基、
エステル基、カルボキシル基、ウレタン基、アクリル
基、アミノ基の一種以上を分子内に有する重合組成物の
単体あるいは混和体を、乾燥重量で 0.1〜5.0 g/m2
塗布したポリエステルフィルムを、(ポリエステルフィ
ルムの結晶融解温度+50)℃〜(同結晶融解温度−50)
℃の範囲内に加熱された金属板にラミネートする方法
が、提案されている。
【0005】この提案は、ポリエステルフィルムの加工
性や密着性等を樹脂そのものの物性と接着層とによって
確保しようとするものであり、有機樹脂被覆鋼板の加工
による被膜密着性の低下と耐久性の劣化をある程度は改
善できるものの、十分ではなかった。
【0006】従って、この発明は、製缶工程の加工によ
る被膜密着性および耐食性の劣化を抑制することのでき
る熱可塑性樹脂被覆鋼板およびその製造方法について、
提案することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】上記の問題点を解決する
ために、発明者らは、被覆樹脂層ばかりではなく、被覆
される側のTFSの表面状態について、樹脂被覆後の加
工による樹脂被覆の密着性と耐久性への影響を鋭意検討
したところ、この発明を見出すに到った。
【0008】すなわち、この発明の要旨構成は、次のと
おりである。 (1) 鋼板の表面に、該鋼板素地側から順に、主に非晶質
組織による金属クロム層、クロム水和酸化物層および熱
可塑性樹脂層を有する熱可塑性樹脂被覆鋼板。
【0009】(2) 鋼板の表面に、主に非晶質組織による
金属クロム層、次いでクロム水和酸化物層を順次形成し
たのち、該クロム水和酸化物層を熱可塑性樹脂層で被覆
することを特徴とする熱可塑性樹脂被覆鋼板の製造方
法。
【0010】(3) 上記(2) において、金属クロム層の形
成を、3価クロムイオンおよび蟻酸アニオンを含有する
浴中での電解処理により行うことを特徴とする熱可塑性
樹脂被覆鋼板の製造方法。
【0011】
【発明の実施の形態】さて、製缶用として実用化されて
いる、在来の熱可塑性樹脂被覆鋼板は、その樹脂被膜の
下地に、通常のTFSが用いられている。このTFSの
製造法には、金属クロム層およびクロム水和酸化物層を
同時に形成する1ステップ法と、金属クロム層およびク
ロム水和酸化物層を異なる溶液中での電解により順次形
成する2ステップ法と、がある。いずれの方法も、無水
クロム酸を主体として微量のアニオンを助剤とした水溶
液中で鋼板を陰極電解処理することによって、金属クロ
ム層を析出させる。この鋼板上に電析する金属クロム層
は結晶質であり、素地鋼板の結晶方位と整合してエピタ
キシャルに成長することが良く知られている。
【0012】そして、このようにして析出した結晶性の
金属クロム層上にクロム水和酸化物層を有する、在来の
TFSにおいて、製缶加工後に有機被覆層の密着性が低
下し、また耐食性が劣化することが問題となっていたこ
とから、金属クロム層を非晶質としたところ、加工後の
被膜密着性および耐食性が改善されることが、新たに判
明した。
【0013】従って、この発明においては、鋼板表面
に、まず非晶質の金属クロム層を有することが必須であ
る。なお、金属クロム層は、全てが非晶質組織であるこ
とが好ましいが、非晶質組織が主体、例えば表面積の割
合として50%以上となる組織とし、残部に結晶質の金属
クロム層が含まれていてもよい。この金属クロム層の付
着量は、30〜200 mg/m2 、より好ましくは60〜120 mg
/m2 が推奨される。なぜなら、金属クロム層が30mg/
2 未満では十分な耐食性が得られず、一方200mg/m
2 をこえて付着させても上記効果は飽和して経済的に不
利となる。なお、金属クロム層は連続であっても不連続
であってもよい。
【0014】また、非晶質組織を主体とする金属クロム
層の上には、最外層の熱可塑性樹脂層を密着させるため
に、クロム水和酸化物層を有することが、肝要である。
ここで、「該金属クロム層の上に」とは、「金属クロム
層の鋼板素地側とは反対側に」という意味である。この
クロム水和酸化物層の付着量は、Cr換算で3〜25mg/
2 、より好ましくは6〜15mg/m2 が推奨される。な
ぜなら、クロム水和酸化物層がCr換算で3mg/m2
満では十分な被膜密着性が得られず、一方25mg/m2
こえて付着させても上記効果は飽和して経済的に不利と
なる。クロム水和酸化物層は熱可塑性樹脂層との密着性
のために連続し、熱可塑性樹脂層との界面に全面的に形
成されていることが好ましい。
【0015】さらに、クロム水和酸化物層の上に、製缶
用途として必要となる、熱可塑性樹脂層を有することが
必要である。ここで、「クロム水和酸化物層の上に」と
は、「クロム水和酸化物層の金属クロム層側とは反対側
に」という意味である。なお、熱可塑性樹脂層を構成す
る樹脂は、特に限定する必要はないが、食缶や飲料缶の
用途に供する場合には、例えば一定量のイソフタル酸を
共重合した二軸延伸ポリエチレンテレフタレート等のポ
リエステルフィルムが望ましい。この熱可塑性樹脂層の
膜厚は、10〜50μm 、好ましくは15〜40μm である。な
ぜなら10μm 未満では耐食性が不十分であり、50μm を
こえると効果が飽和し、経済的に不利にあるからであ
る。
【0016】次に、上述の熱可塑性樹脂被覆鋼板の製造
方法について、詳しく説明する。すなわち、熱可塑性樹
脂被覆鋼板は、鋼板の表面に、主に非晶質組織による金
属クロム層を形成し、この金属クロム層の上にクロム水
和酸化物層を形成し、さらにクロム水和酸化物層の上に
熱可塑性樹脂層を形成する、手順に従って得られる。
【0017】ここで、主に非晶質組織による金属クロム
層を形成するには、3価のクロムイオンおよび蟻酸アニ
オンを含有するめっき浴中において、鋼板を陰極として
電解処理を行うことが好ましい。すなわち、3価のクロ
ムイオンはクロム源として、蟻酸アニオンは錯化剤とし
て含有させた、めっき浴中で電解処理を行うことによっ
て、主に非晶質組織の金属クロム層を、所定の付着量で
電解析出させることが可能となる。なお、上記めっき浴
中には、KCl のような電導助剤を含有させてもよい。
【0018】ところで、装飾用のクロムめっきの分野に
おいて、クロム源としての3価のクロムイオン、錯化剤
としての蟻酸アニオンおよび電導助剤等を含有する、め
っき浴を用いることが、例えば特開昭61−179890号公報
に記載されている。この装飾用のクロムめっきと、TF
Sの製造における金属クロム層を析出させる工程とは、
鋼材の表面に水溶液(めっき浴)中から金属クロムを電
解析出させるという点において、一見類似した技術であ
る。
【0019】しかしながら、両者は、金属クロム層に要
求される特性や製造条件などの点において、本質的に相
違するものである。すなわち、装飾用のクロムめっきは
様々な形状の製品の外観に金属光沢を与えることを主目
的とし、めっき膜厚は数μm程度である。これに対し
て、TFSは耐食性を最も重視するものであり、その金
属クロム層の膜厚は10〜20nm程度であり、両者の膜厚
(付着量)は大きく異なる。
【0020】また、装飾用のクロムめっきを施す製品
は、一般に形状が複雑であり、この複雑な形状の製品の
各部位で均一な膜厚および外観を得ることが特に重要で
ある。そして、製品の形状が複雑であることは、電流が
集中して流れやすい部位と、逆に電流が流れにくい部位
とが共存していることであるため、均一電着性やめっき
の付き廻り性などが重要になり、かつ光沢めっきを得る
ための電流密度範囲も広いことが重要である。これらの
特性を満足させるために、装飾用のクロムめっきでは、
通常被めっき材が浴中で静止した状態で、10A/dm2
下の低い平均電流密度で電解析出させている。
【0021】これに対して、TFSのめっきラインにお
いては、被めっき材である鋼帯の形状が平坦であり、極
間距離を常に一定に保つことができることから、鋼板面
に対する電流密度分布の均一性は、装飾用のクロムめっ
きの場合とは比較にならないほど良好である。そのた
め、TFSのめっきラインでは、より速い速度で操業し
て生産性を上げるために、浴中を200 〜400 m/min 程
度の速度で移動して浴を強攪拌している鋼板に、50A/
dm2 以上の高電流密度で電解することになり、この点に
おいても、装飾用のクロムめっき処理との区別は明らか
である。
【0022】すなわち、TFSの金属クロム層の析出過
程においては、可能な限り高い電流密度領域にて、高電
流効率の下で良好なめっきを得ることが好ましく、その
とき最大電流効率が得られる電流密度範囲の広いことが
有利である。
【0023】そこで、まず、ポリエチレングリコール
(以下、単にPEG という) を添加しない浴にて、攪拌下
でクロムを電解析出させたときの電流効率と電流密度と
の関係を調査したところ、めっき浴のpHが大きく影響す
ることが判明した。これらの調査の詳細を以下に述べ
る。
【0024】冷延鋼板を原板とし、常法により脱脂・酸
洗を行ったのちに、10mmの間隔で平行に設置した鋼板と
対極(PtめっきTi板) との間に、表1に示す組成の浴
を、約1m/sの流速で流しながらクロムを電解析出さ
せたときの、代表的な電流効率と電流密度との関係を、
図1に示す。
【0025】
【表1】
【0026】なお、電流効率は下記式(1)に従って算
出したものであり、クロム析出量の測定はJIS G3315付
属書1に示されているTFSの金属クロム量の測定法の
うちの電解剥離法に準拠して行ったものである。
【数1】 ここで、 η:電流効率 Crmea :電解析出したCr量の分析値(g/m2) Q:投入電気量密度(C/m2) F:ファラデー定数(C) M:Crの原子量
【0027】また、図1のデータは、投入電気量密度を
3000C/m2と一定にした場合の結果であり、投入電気量密
度は、(電流密度)×(めっき時間)で決定される。
【0028】図1より、pH:2.8 では、最大の電流効率
を与える電流密度が30A/dm2 付近にあり、さらに電流密
度を増加すると電流効率は急激に低下するため、生産性
の向上は期待できないことがわかる。これに対して、p
H:1.8 では、最大の電流効率を与える電流密度が高電
流密度側にシフトし、かつ最大の電流効率を与える電流
密度範囲がより広くなっている。さらにpHを低下したp
H:1.0 では、最大の電流効率を与える電流密度がより
高電流密度側にシフトしているが、最大電流効率そのも
のはやや低下している。
【0029】図1に示した結果に基づいて、さらに種々
のpHについて調査、検討を行ったところ、高電流密度領
域で高電流効率を得るためには、浴のpHを1.0 〜2.0 の
範囲、より好ましくは1.5 〜1.8 の範囲に調整するのが
有利であることが判明した。
【0030】この浴のpHを最適化することで生産性が向
上することは明らかになったが、これら一連の検討の中
で残る問題点も明らかになった。すなわち、めっき外観
がやや不均一になることである。
【0031】そこで、上記のPEG を添加しない浴から電
解析出させた金属クロム層の構造を、鋼板表面から剥離
した金属クロム薄膜を透過電子顕微鏡で観察し、電子線
回折を行ったところ、大部分非晶質になっているが、一
部結晶質の部分が混入していることがわかった。
【0032】すなわち、図2に、PEG 無添加でpH:1.8
の浴を用いて電流密度:60A/dm2 で電解析出させた金属
クロム層の透過電子顕微鏡写真(明視野像)を示すよう
に、一部に直径:10〜30nmの強いコントラストを示す部
分が観察される。一方、図2の視野における制限視野電
子線回折像写真である、図3には、ハローパターンと何
点かの強いスポットが見られ、アモルファスのマトリッ
クス中に一部結晶質の領域が混在していることが推定さ
れる。そこで、電子線ビームを絞って、図2の矢印で示
す中央の強いコントラストを示す領域からの回折パター
ンを観察した。図4は、その回折パターンでのナノビー
ムによる電子線回折像写真である。この図4は間違いな
くクロムの回折パターンを示しており、この部分が結晶
質であることがわかる。
【0033】発明者らは、このようにアモルファスのマ
トリックス中に一部結晶質の領域の混在していること
が、PEG 無添加の浴を用いてめっきした場合に、めっき
外観の不均一性に関連しているのではないかと推定し、
これらの検討結果を基に、めっき表面の外観を改善する
ための方途について究明したところ、浴中に微量のPEG
を添加することで表面外観が著しく改善されることが判
明した。
【0034】具体的には、PEG を0.05〜5g/lの範
囲、より好ましくは1〜3g/lの範囲で添加すること
が有利である。なぜなら、PEG の添加量が0.05g/l未
満では効果が得られず、一方5g/lをこえると、効果
が飽和するからである。
【0035】さらに、PEG を添加すると、電流効率の点
からもさらに望ましい結果が得られることが判明した。
すなわち、pH:1.8 の浴にPEG を添加した場合と添加し
なかった場合の電流効率と電流密度との関係を、図5に
示すように、PEG の添加により、最大の電流効率を与え
る電流密度がより高電流密度側にシフトするとともに、
最大の電流効率そのものも増加している。このことは、
PEG の添加によって、さらに高電流密度の領域での操業
が可能になることを意味しており、生産性の向上に大き
く寄与できることを示している。
【0036】また、図6は、PEG を1g/l添加したp
H:1.8 の浴を用いて電流密度:80A/dm2 で電解析出
させた金属クロム層の透過電子顕微鏡写真(明視野像)
であり、図7は図6の視野における図面代用の制限視野
電子線回折像写真である。これらの図から、PEG の添加
によって均一な非晶質の金属クロム層が得られているこ
とが分る。
【0037】次に、クロム水和酸化物層は、6価クロム
イオン、硫酸イオン、ケイフッカ物イオンを含有する浴
にて、鋼板を陰極として電解処理することにより、形成
する。この条件において、熱可塑性樹脂層との密着性に
優れたクロム水和酸化物層が得られるからである。
【0038】さらに、クロム水和酸化物層の上に熱可塑
性樹脂層を形成する。これは前述した一定量のイソフタ
ル酸を共重合した二軸延伸ポリエチレンテレフタレート
等のポリエステルフィルムを、 200℃以上に予備加熱し
た金属クロム層およびクロム水和酸化物層を有する鋼板
に、融着させるなどの方法が好適である。
【0039】
【実施例】冷延鋼板に常法により電解脱脂および酸洗の
前処理を行った後に、表2に示す条件に従って、Pt被
覆Ti板を陽極にかつ鋼板を陰極として、強攪拌下で電
解処理を施して、非晶質を主組織とする金属クロム層を
析出させた。引き続き、表3に示す条件で陰極電解処理
を施してクロム水和酸化物層を析出させた。その後、23
5 ℃に予備加熱した鋼板に、膜厚20μmの二軸延伸−イ
ソフタル酸12%含有共重合PETフィルムを、熱融着に
よりラミネートした。
【0040】また、比較のために、冷延鋼板に常法によ
り電解脱脂および酸洗の前処理を行った後に、表4に示
す条件にて陰極電解処理を施し、結晶質が100 重量%の
金属クロム層を析出させ、その後直ちに、表3に示す条
件で陰極電解処理を施してクロム水和酸化物層を析出さ
せた試料に対しても、同じフィルムを同じ条件でラミネ
ートして作製した。
【0041】
【表2】
【0042】
【表3】
【0043】
【表4】
【0044】かくして得られた熱可塑性樹脂被覆鋼板に
ついて、金属クロム層の構造および付着量とクロム水和
酸化物層の付着量とを調査するとともに、耐食性および
被膜密着性を評価した。
【0045】すなわち、金属クロム層の構造、具体的に
は金属クロム層が非晶質であるか結晶質であるかの判定
は、鋼板表面から剥離した金属クロム薄膜を透過電子顕
微鏡で観察し、電子線回析を行うことで判定した。な
お、金属クロム薄膜の作成は、 (1) 実施例及び比較例のTFSから7.5 (N)NaOH 中で95
℃×10分間のアルカリ溶解処理によりクロム水和酸化物
層を溶解除去し、十分に水洗してから乾燥。 (2) 表面にカーボン蒸着後、碁盤目けがき。 (3) ナイタールに1晩浸漬。 (4) 剥離した薄膜をCuメッシュにすくう。 の手順で行った。
【0046】また、非晶質組織の比率は、上記の金属ク
ロム薄膜の透過電子顕微鏡による明視野像において、非
晶質部と強いコントラストを与える結晶性部分との面積
比を、算出することで求めた。
【0047】さらに、金属クロム層の付着量は、JIS G3
315 付属書1に示されているTFSの金属クロム量の規
定法のうちの電解剥離法に準拠して行った。
【0048】クロム水和酸化物層の付着量は、JIS G331
5 付属書2に示されているTFSのクロム水和酸化物量
の測定法のうちの蛍光X線法に準拠して行った。
【0049】次に、耐食性は、上記の供試材を、直径14
0mm の円板に打ち抜き、評価面が内面側になるように、
絞り比2.55で円筒状カップに絞り加工を施し、その内部
に(1.5%NaCl+1.5 %クエン酸) 溶液を入れてからラッ
プし、55℃×4日間の腐食試験を行った際の腐食状況
を、表5に従って評価した。
【0050】
【表5】
【0051】被膜密着性は、1mm間隔で素地鋼に達する
碁盤目けがき傷を入れ、dnpont衝撃試験により、樹脂被
覆面が凸になるように張り出させ、ここにセロテープ剥
離を行った後、表6に示す判定基準に従って評価した。
【0052】
【表6】
【0053】表7に、各供試鋼板の耐食性および被膜密
着性に関する評価結果を示すように、実施例1〜実施例
11は、全て金属クロム層の構造が主に非晶質であるため
に、耐食性および被膜密着性に優れている。一方、比較
例は金属クロム層の構造が結晶質であるために、耐食性
および被膜密着性ともに不十分であった。
【0054】
【表7】
【0055】
【発明の効果】この発明によれば、熱可塑性樹脂被覆鋼
板の耐食性および被膜密着性を著しく向上することがで
きる。
【図面の簡単な説明】
【図1】クロムを電解析出させたときの電流効率と電流
密度との関係を示すグラフである。
【図2】PEG 無添加の浴を用いて電解析出させた金属ク
ロム層の図面代用の透過電子顕微鏡写真(明視野像)で
ある。
【図3】図2の視野における図面代用の制限視野電子線
回折像写真である。
【図4】図2の矢印で示す中央の強いコントラストを示
す領域のナノビームによる図面代用の電子線回折像写真
である。
【図5】pH:1.8 の浴にPEG を添加した場合と添加しな
かった場合の電流効率と電流密度との関係を示すグラフ
である。
【図6】PEG を1g/l添加したpH:1.8 の浴を用いて
電流密度:80A/dm2 で電解析出させた金属クロム層の
図面代用の透過電子顕微鏡写真(明視野像)である。
【図7】図6の視野における図面代用の制限視野電子線
回折像写真である。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き Fターム(参考) 4F100 AA22C AB03A AB13B AK01D AK41D AL01D BA04 BA07 BA10A BA10D EH112 EJ612 GB16 GB23 JA12B JB02 JB16D JK06 4K023 AA11 BA03 BA06 CA03 CB05 DA02 DA06 DA07 DA08 4K024 AA02 AB01 AB11 BA03 BB22 BC01 CA01 DA03 DA04 EA01 GA01 GA04 GA07 4K044 AA02 AB02 BA02 BA12 BA21 BB02 BB04 BB17 BC02 BC05 BC09 CA04 CA17 CA31 CA53

Claims (3)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 鋼板の表面に、該鋼板素地側から順に、
    主に非晶質組織による金属クロム層、クロム水和酸化物
    層および熱可塑性樹脂層を有する熱可塑性樹脂被覆鋼
    板。
  2. 【請求項2】 鋼板の表面に、主に非晶質組織による金
    属クロム層、次いでクロム水和酸化物層を順次形成した
    のち、該クロム水和酸化物層を熱可塑性樹脂層で被覆す
    ることを特徴とする熱可塑性樹脂被覆鋼板の製造方法。
  3. 【請求項3】 請求項2において、金属クロム層の形成
    を、3価クロムイオンおよび蟻酸アニオンを含有する浴
    中での電解処理により行うことを特徴とする熱可塑性樹
    脂被覆鋼板の製造方法。
JP18328498A 1998-06-16 1998-06-16 熱可塑性樹脂被覆鋼板およびその製造方法 Withdrawn JP2000001789A (ja)

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* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
CN102152540A (zh) * 2010-11-16 2011-08-17 胡军辉 一种非晶金属与塑料的复合材料、复合壳件及其制备方法
JP6447796B1 (ja) * 2017-02-24 2019-01-09 株式会社タダノ 作業車
JP2020172700A (ja) * 2019-04-09 2020-10-22 ティッセンクルップ ラッセルシュタイン ゲー エム ベー ハー 三価クロム化合物を含む電解液を使用するクロムおよび酸化クロムのコーティングで被覆された金属ストリップの製造方法およびこの方法を実施するための電解システム
WO2022044451A1 (ja) * 2020-08-27 2022-03-03 日立Astemo株式会社 緩衝器および緩衝器の製造方法

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