JPH10107501A - 偏分波器 - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 【課題】プリント基板上に垂直偏波入力パッチと水平偏
波入力パッチとを形成するようにしても、偏分波出力の
ＮＦの劣化を防止できる。 【解決手段】円形導波管に入力された直交偏波のうち垂
直偏波成分は垂直偏波入力パッチ１１により受信され、
水平偏波成分はスリット４を通過して矩形導波管５内の
水平偏波入力パッチ１３により受信される。この際、水
平偏波成分はプリント基板７に形成されている基板切欠
部１５を伝播するようになるので、プリント基板７によ
る伝播損失を受けることがなく、そのＮＦは劣化しな
い。

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【発明の属する技術分野】本発明は、それぞれ異なる信
号で変調された直線偏波を直交多重した直交偏波を、水
平偏波と垂直偏波とに分離して受信するようにした偏分
波器に関するものであり、特にＣＳアンテナの一次放射
器に適用して好適なものである。

【０００２】

【従来の技術】現在日本における衛星放送としては、Ｂ
Ｓ放送とＣＳ放送とが行われているが、ＢＳ放送の電波
は右旋円偏波であるのに対し、ＣＳ放送の電波はそれぞ
れ異なる信号で変調された垂直偏波と水平偏波からなる
直交多重された直交偏波とされている。このため、ＣＳ
放送では多くのチャンネル数を有することができる。こ
のＣＳ放送のように互いに直交する直線偏波からなる直
交偏波を受信するためには、直交偏波を垂直偏波と水平
偏波とに分離して受信する偏分波器を一次放射器に備え
る必要がある。

【０００３】この種の偏分波器として図５に示すような
構成の偏分波器が提案されている。図５において、１は
垂直偏波と水平偏波からなる直交偏波が円錐ホーン２を
介して入力される円形導波管、５は円形導波管１の下部
にスリットを介して連結されていると共に、一体に形成
された矩形導波管、２０は円形導波管１および矩形導波
管５の中途に挿入されているプリント基板である。な
お、スリットは円形導波管の管壁に、その管軸方向に細
長く形成されている。このプリント基板２０の詳細構成
を図６に示す。プリント基板２０には、図示するように
円形導波管１内に位置する垂直偏波入力パッチ１１と、
この垂直偏波入力パッチ１１で受信された垂直偏波成分
を伝送する垂直偏波伝送用ストリップライン１０と、矩
形導波管５内に位置する水平偏波入力パッチ１３と、こ
の水平偏波入力パッチ１３で受信された水平偏波成分を
伝送する水平偏波伝送用ストリップライン１２と、円形
導波管１と矩形導波管５の断面形状と同形とされ、その
管壁に電気的に接触するアースライン１４が形成されて
いる。

【０００４】このように構成されている偏分波器におい
て、水平偏波と垂直偏波からなる直交偏波が円錐ホーン
２を介して円形導波管１に入力されると、直交偏波は円
形導波管１内を伝播していく。そして、プリント基板２
０に形成された垂直偏波入力パッチ１１が円形導波管１
に垂直に立設されていると共に、垂直偏波成分の電界方
向が垂直偏波入力パッチ１１に平行とされるため、垂直
偏波成分は垂直偏波入力パッチ１１により受信されるよ
うになる。一方、水平偏波成分は、その電界方向が垂直
偏波入力パッチ１１と直交しているため受信されず、円
形導波管１の管壁に管軸方向に細長く設けられているス
リット４を通過して矩形導波管５内に伝播していく。そ
して、垂直偏波入力パッチ１１に対し直交して矩形導波
管５に立設されている水平偏波入力パッチ１３に、水平
偏波成分の電界方向は平行とされるため、水平偏波入力
パッチ１３により水平偏波成分は受信されるようにな
る。このスリット４は円形導波管１の管壁に形成されて
おり、その長軸方向はプリント基板２０の面に垂直な方
向とされている。

【０００５】なお、垂直偏波成分の電界方向はスリット
４の長軸と平行になるため、スリット４を通過すること
ができずスリット４で反射され、矩形導波管５には水平
偏波成分だけが伝播される。また、スリット４の管軸方
向の長さは略λｇ／２とされている。ただし、λｇは導
波管を伝播する受信された電磁波の管内波長である。こ
のように、矩形導波管５には水平偏波成分だけを導波す
ることができるため、垂直偏波入力パッチ１１と水平偏
波入力パッチ１３とで受信される信号の交差偏波識別度
の優れた偏分波器とすることができる。

【０００６】

【発明が解決しようとする課題】ところで、前記した偏
分波器は小型化することができるが、スリット４を通過
した水平偏波成分は、プリント基板２０の面に平行に進
行していくため、誘電体であるプリント基板２０により
伝播損失を受けて減衰されるようになる。このときの伝
播損失αは次式で示される。 α＝ｋ・ｆ・√ε・ｔａｎδ ・・・（１） ただし、ｋ：比例定数 ｆ：周波数 ε：比誘電率 ｔａｎδ：誘電正接

【０００７】この場合、プリント基板２０をテフロン基
板等の高周波特性の優れた材料で作製したとしても、誘
電正接ｔａｎδはゼロにならないと共に、比誘電率εは
１にならない。従って、空気中を伝播する場合に比べて
水平偏波成分は減衰を受けることになり、ＮＦ（Noise
Figure）が劣化する。ＮＦが劣化すると、劣化した分だ
けＬＮＢ（Low Noise Block Down Converter）のＮＦを
向上しなければ所定のＮＦを得ることができないことに
なる。しかしながら、ＬＮＢのＮＦは元々良好な値とさ
れているため、それ以上ＮＦを向上することはきわめて
困難であった。

【０００８】そこで、本発明はプリント基板に垂直偏波
入力パッチと水平偏波入力パッチとを設けていても、Ｎ
Ｆが減衰することのない偏分波器を提供することを目的
としている。

【０００９】

【課題を解決するための手段】前記目的を達成するため
に本発明の偏分波器は、円形導波管と、該円形導波管の
管軸方向に設けられたスリットを介して連結されている
と共に、前記円形導波管と直交するよう一体に設けられ
た矩形導波管と、前記円形導波管内に、先端が臨むよう
に前記円形導波管に立設されると共に、前記円形導波管
の管軸方向に直交、かつ、前記スリットに対し鉛直に設
けられた第１偏波入力パッチと、前記矩形導波管内に、
前記第１偏波入力パッチに直交するよう設けられた第２
偏波入力パッチとが形成されたプリント基板とを備え、
前記スリットから前記第２偏波入力パッチまでの前記プ
リント基板の部分を切り欠くようにしている。

【００１０】このような本発明によれば、水平偏波成分
が通過するスリットから水平偏波入力パッチまでのプリ
ント基板を切り欠くようにしたので、スリットを通過し
た水平偏波成分は空気中を伝播することになり、プリン
ト基板による伝播損失を受けないようになる。従って、
プリント基板に垂直偏波入力パッチと水平偏波入力パッ
チとを設けるようにして、偏分波器を小型化してもＮＦ
を劣化させることなく良好なＮＦ特性の偏分波器とする
ことができる。

【００１１】

【発明の実施の形態】本発明の偏分波器の実施の形態の
構成例を図１ないし図３に示す。図１は図３（ａ）に示
す本発明の偏分波器の正面図においてＡ−Ａ線で切断し
た断面図であり、図２は該偏分波器が備えるプリント基
板の構成を示している。また、図３（ａ）は本発明の偏
分波器の正面図であり、図３（ｂ）はその背面図であ
る。なお、本発明の偏分波器の外観は前記図５に示す偏
分波器と同様になる。図１および図３において、１は垂
直偏波と水平偏波からなる直交偏波が入力される円形導
波管、２は円形導波管１の先端に装着されている円錐ホ
ーン、３は円形導波管１の終端部である垂直偏波短絡面
であり、垂直偏波短絡面３とプリント基板７に形成され
ている後述する垂直偏波入力パッチ１１との間隔が略λ
ｇ／４（λｇは管内波長）とされている。

【００１２】また、４は円形導波管１と矩形導波管５と
を連結している円形導波管１の管軸方向に細長く形成さ
れているスリット、５はその管軸方向が円形導波管１の
管軸方向と直交する方向とされていると共に、円形導波
管１に一体に形成されている矩形導波管、６は矩形導波
管５の終端部である水平偏波短絡面であり、水平偏波短
絡面６とプリント基板７に形成されている後述する水平
偏波入力パッチ１３との間隔が略λｇ／４（λｇは管内
波長）とされている。７は円形導波管１と矩形導波管５
とを中途で裁断してその間に挿入配置されたプリント基
板であり、プリント基板７には後述する垂直偏波入力パ
ッチ１１と水平偏波入力パッチ１３とが少なくとも形成
されている。

【００１３】次に、プリント基板７の構成を図２に示す
が、図２は図１に示すＢ−Ｂ線で切断したときの断面図
である。図２において、プリント基板７には、円形導波
管１内に位置する垂直偏波入力パッチ１１と、この垂直
偏波入力パッチ１１で受信された垂直偏波成分をプリン
ト基板７上に組み込まれた図示しないコンバータ回路に
伝送する垂直偏波伝送用ストリップライン１０と、矩形
導波管５内に位置する水平偏波入力パッチ１３と、この
水平偏波入力パッチ１３で受信された水平偏波成分をプ
リント基板７上に組み込まれた図示しないコンバータ回
路に伝送する水平偏波伝送用ストリップライン１２と、
円形導波管１の断面形状に一致するリング状部と、矩形
導波管５の断面形状に一致する矩形ライン部とからな
り、円形導波管１と矩形導波管５との管壁に電気的に接
触するアースライン１４が形成されている。なお、図示
していないが、プリント基板７には受信された信号を中
間周波数信号に変換するコンバータ回路が組み込まれて
いる。

【００１４】このように構成されている偏分波器におい
て、水平偏波と垂直偏波からなる直交偏波が円錐ホーン
２を介して円形導波管１に入力されると、直交偏波は円
形導波管１内を伝播していく。この場合、プリント基板
７に形成された垂直偏波入力パッチ１１が円形導波管１
内に垂直に立設されているため、垂直偏波成分の電界方
向と垂直偏波入力パッチ１１の延伸方向とが一致し、垂
直偏波成分は垂直偏波入力パッチ１１により受信される
ようになる。一方、水平偏波成分は、その電界方向が垂
直偏波入力パッチ１１と直交しているため垂直偏波入力
パッチ１１では受信されず、円形導波管１の管壁にその
管軸方向に細長く設けられているスリット４を通過する
ようになる。そして、円形導波管１に連結されている矩
形導波管５内に伝播していく。そして、垂直偏波入力パ
ッチ１１に対し直交するよう矩形導波管７に立設されて
いる水平偏波入力パッチ１３の延伸方向と、水平偏波成
分の電界方向が一致するため、水平偏波入力パッチ１３
により水平偏波成分は受信されるようになる。

【００１５】なお、垂直偏波成分の電界方向はスリット
４の長軸方向と一致するため、スリット４を通過するこ
とができずスリット４で反射され、矩形導波管５には水
平偏波成分だけが伝播される。また、スリット４の管軸
方向の長さは略λｇ／２とされている。ただし、λｇは
管内波長である。このように、矩形導波管５には水平偏
波成分だけを導波することができるため、垂直偏波入力
パッチ１１と水平偏波入力パッチ１３とで受信される信
号の交差偏波識別度の優れた偏分波器とすることができ
る。

【００１６】また、円形導波管１を終端する短絡面８と
垂直偏波入力パッチ１１との距離が、管内波長をλｇと
すると、略λｇ／４とされているため、この短絡面８に
より、円形導波管１内の垂直偏波の位相を合わせられる
ようになり、垂直偏波の電界成分の山が垂直偏波入力パ
ッチ１１の位置になる。したがって、十分な垂直偏波受
信電界を得ることができるようになる。さらに、矩形導
波管７を終端する短絡面９と水平偏波入力パッチ１３と
の距離も、略λｇ／４とされている。したがって、短絡
面９により、矩形導波管７内の水平偏波の位相が合わせ
られて、水平偏波の電界成分の山が水平偏波入力パッチ
１３の位置になる。これにより、十分な水平偏波受信電
界が得られる。

【００１７】次に、本発明の偏分波器の特徴点を説明す
るが、本発明においては、図１および図２に示すように
基板切欠部１５がプリント基板７に形成されている。こ
の基板切欠部１５はスリット４から水平偏波入力パッチ
１３までの矩形導波管５内に位置するプリント基板７を
切り欠くことにより形成されている。従って、スリット
４を通過して矩形導波管５内を伝播し、水平偏波入力パ
ッチ１３で受信される水平偏波成分は受信されるまで空
気中を伝播するようになるため、伝播損失を受けること
なく受信できるようになる。これにより、受信された水
平偏波成分の信号のＮＦ特性が劣化することを防止する
ことができる。

【００１８】プリント基板７に基板切欠部１５を形成し
た場合と形成しない場合との周波数に対する水平偏波入
力パッチ１３により受信された水平偏波成分のＮＦ特性
を図４に示す。この図に示すように周波数が950MHzない
し1600MHz とされたときに従来の偏分波器ではＢとして
示すように水平偏波成分のＮＦが、約０．９５ｄＢから
約１．２５ｄＢに向かって変化していくのに対し、本発
明の偏分波器の水平偏波成分のＮＦはＡとして示すよう
に０．８５ｄＢから約０．９５ｄＢに向かって変化して
いくようになる。すなわち、本発明は約０．１〜０．３
ｄＢ水平偏波成分のＮＦを改善することができる。な
お、ＮＦの改善量をパラボラアンテナの径に換算してみ
ると、約０．２ｄＢ改善されたＮＦを得るためには、パ
ラボラアンテナの設置条件を同じとしたときにパラボラ
アンテナの径を約３ｃｍ大きくする必要がある。このよ
うに、本発明のＮＦの改善度は大きな効果なのである。

【００１９】なお、円形導波管１内および矩形導波管５
内に位置するプリント基板７の部分を垂直偏波入力パッ
チ１１および水平偏波入力パッチ１３を除いてすべて切
り欠くことが考えられるが、このようにすると、切欠形
状が複雑となり、特殊な切欠工具が必要になると共に、
その作業工程も煩雑となる。しかも、実際に円形導波管
１内および矩形導波管５内に位置するプリント基板７の
部分を垂直偏波入力パッチ１１および水平偏波入力パッ
チ１３を除いてすべて切り欠いて、ＮＦ特性を測定した
ところ、垂直偏波成分のＮＦが改善されないばかりか、
水平偏波成分のＮＦは前記図４にＡとして示したＮＦ特
性と大差ないことがわかった。

【００２０】このように、本発明では図２に示すように
スリット４から水平偏波入力パッチ１３までの矩形導波
管５内に位置するプリント基板７に基板切欠部１５を形
成することにより、円形導波管１内および矩形導波管５
内に位置するプリント基板７の部分を垂直偏波入力パッ
チ１１および水平偏波入力パッチ１３を除いてすべて切
り欠いたのと同等の作用効果を得ることができるのであ
る。なお、プリント基板７は図１ないし図３では露出し
ているように示されているが、実際には防水性の金属ケ
ースで覆われてシールドされている。また、この金属ケ
ースの端部には同軸コネクタが設けられて、内蔵された
コンバータ回路により中間周波数に変換された受信信号
が出力される。さらに、プリント基板７の基板材として
はガラスエポキシ基板やテフロン基板等を用いることが
できる。

【００２１】

【発明の効果】本発明は、以上のように、水平偏波成分
が通過するスリットから水平偏波入力パッチまでのプリ
ント基板を切り欠くようにしたので、スリットを通過し
た水平偏波成分は誘電体であるプリント基板に代わり空
気中を伝播することになり、プリント基板による伝播損
失を受けないようになる。従って、プリント基板に垂直
偏波入力パッチと水平偏波入力パッチとを設けるように
して、偏分波器を小型化してもＮＦを劣化させることな
く良好なＮＦ特性の偏分波器とすることができる。

【図面の簡単な説明】

【図１】本発明の偏分波器の実施の形態の構成を示す断
面図である。

【図２】本発明の偏分波器が備えるプリント基板の構成
を示す図である。

【図３】本発明の偏分波器の実施の形態の構成を示す正
面図、および背面図である。

【図４】本発明の偏分波器の周波数に対するＮＦ特性を
示す図である。

【図５】従来の偏分波器の外観構成を示す図である。

【図６】従来の偏分波器が備えるプリント基板の構成を
示す図である。

【符号の説明】

１ 円形導波管 ２ 円錐ホーン ３ 垂直偏波短絡面 ４ スリット ５ 矩形導波管 ６ 水平偏波短絡面 ７ プリント基板 １０ 垂直偏波伝送用ストリップライン １１ 垂直偏波入力パッチ １２ 水平偏波伝送用ストリップライン １３ 水平偏波入力パッチ １４ アースライン １５ 基板切欠部

Claims (1)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】 円形導波管と、 該円形導波管の管軸方向に設けられたスリットを介して
   連結されていると共に、前記円形導波管と直交するよう
   一体に設けられた矩形導波管と、 前記円形導波管内に、先端が臨むように前記円形導波管
   に立設されると共に、前記円形導波管の管軸方向に直
   交、かつ、前記スリットに対し鉛直に設けられた第１偏
   波入力パッチと、前記矩形導波管内に、前記第１偏波入
   力パッチに直交するよう設けられた第２偏波入力パッチ
   とが形成されたプリント基板とを備え、 前記スリットから前記第２偏波入力パッチまでの前記プ
   リント基板の部分が切り欠かれていることを特徴とする
   偏分波器。