JPH10107256A - 化合物半導体電界効果トランジスタ - Google Patents

化合物半導体電界効果トランジスタ

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JPH10107256A JP8259018A JP25901896A JPH10107256A JP H10107256 A JPH10107256 A JP H10107256A JP 8259018 A JP8259018 A JP 8259018A JP 25901896 A JP25901896 A JP 25901896A JP H10107256 A JPH10107256 A JP H10107256A
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Abstract

(57)【要約】 【目的】 ドレイン寄生容量の増加を抑えつつ基板トラ
ップや界面トラップなどのトラップをしゃへいし、か
つ、短チャネル効果を防いだ化合物半導体電界効果トラ
ンジスタを提供する。 【解決手段】 チャネル層8aから、ゲート電極3下面
とチャネル層8aとの距離の3倍以内の深さに空乏化し
ていないp型層9を挿入し、電子が速度飽和を起こすド
レイン電圧よりp型層9が空乏化するドレイン電圧を高
くすることにより、ドレイン寄生容量の発生と短チャネ
ル効果を抑えつつトラップをしゃへいする。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、化合物半導体電界
効果トランジスタに関する。
【0002】
【従来の技術】ヘテロ接合を用いた化合物半導体電界効
果トランジスタである高電子移動度トランジスタ(HE
MT:High Electron Mobility
Transistor)は電子移動度が高く動作速度
が速いため、高周波マイクロ波デバイスとして広く使わ
れている。また、その高速性からデジタルICへの応用
が期待されている。
【0003】しかし、従来の化合物半導体電界効果トラ
ンジスタでは、半絶縁性基板に存在する基板トラップ
や、半絶縁性基板とエピタキシャル成長層界面に多数存
在する界面トラップなどのトラップ(不純物原子や結晶
欠陥による深い準位)があるため、トランジスタ電流が
変動してしまい、応用上深刻な問題となっていた。これ
を解決するには半絶縁性基板の代りにp型基板を使用す
る方法や、チャネル層下にp型層を挿入してチャネル層
とトラップとの間を電気的にしゃへいする方法が有効で
あるが、このような方法においてp型層を浅い位置に挿
入したり、高い濃度のp型基板を使用したりすると、ド
レイン電極とp型層との間の寄生容量であるドレイン寄
生容量が大きくなったり、挿入されたp型層の基板効果
によりドレイン飽和電流が大幅に低下したりすることに
よりトランジスタ動作の高速性が失われてしまうため採
用できなかった。一方、p型層を深い位置に挿入した
り、低濃度のp型基板を用いると、電子濃度が薄い部位
ではp型層によるしゃへい効果が低下し、トラップの電
荷変化でチャネルの電子濃度も変化するため、ドレイン
電流が変動してしまうという問題や、チャネル長が短く
なった場合などに起こる、ドレインコンダクタンスが増
大する短チャネル効果を抑制できないという問題が生じ
ていた。
【0004】そこで従来の電界効果トランジスタ、例え
ばシリコンMOSFETではトランジスタの動作速度を
遅くしないために短チャネル効果抑制の効果は低下して
も、酸化膜厚の3倍程度の深さの比較的深い所にp型層
を挿入している。この深さは、化合物半導体と酸化膜の
誘電率の比約3:1を考慮すると、化合物半導体HEM
Tの場合では電子供給層AlGaAsの約9倍程度の深
さに相当する。通常、AlGaAs膜は30nm程度で
あるのでシリコンMOSFET技術から類推される化合
物半導体HEMTでの最適なp型層の深さは270nm
程度である。
【0005】このp型層が比較的深い位置に挿入された
化合物半導体の例が次の文献に記載されている(199
6年電子情報通信学会総合大会講演論文集、エレクトロ
ニクス2、p.101、能米、大野、”p型層バッファ
によるドレインラグ現象のシールド効果”)。この文献
に記載されている方法では、p型層をチャネル層から2
00nm程度の深さに設置し、p型層の一端にp型オー
ミック電極を設け、電位の固定を計り、トラップをしゃ
へいしその影響を抑えている。しかし、200nm程度
の深さにp型層が挿入された化合物半導体では前記文献
に示すように、トラップのしゃへい効果と寄生容量の増
加の間のトレードオフが厳しく、必ずしも良好な特性の
デバイスが得られなかった。
【0006】図9に従来の化合物半導体電界効果トラン
ジスタの断面模式図を示す。
【0007】従来の化合物半導体電界効果トランジスタ
は、半絶縁性基板1と、半絶縁性基板1の上に形成され
たバッファ層10と、バッファ層10の上に形成された
p型層9と、p型層の上に形成され、電圧印加時にはそ
の上部が電子が通過するチャネル層8aとなるノンドー
プGaAs層8と、ノンドープGaAs層8の上に形成
され、チャネル層8aを通過する電子を供給するための
電子供給層7と、電子供給層7の上に形成されれ選択エ
ッチングに使用される2つのエッチング停止用n型層6
と、エッチング停止用n型層6の上にそれぞれ形成され
た2つのオーミック電極用キャップn型層5と、ソース
電極2と、ゲート電極3と、ドレイン電極4とで構成さ
れている。チャネル層8aは、電子が通過するノンドー
プGaAs層8の表面上部の名称であり他の層に比較し
てほとんど厚みを有しない。また、半絶縁性基板1とバ
ッファ層10の間には界面トラップ11が発生してい
る。
【0008】この従来の化合物半導体電界効果トランジ
スタでは、基板効果とドレイン寄生容量の発生を抑える
ため、p型層9をチャネル層8aから、ゲート電極3と
チャネル層8aとの距離の3倍よりも深い位置に挿入し
ている。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】上述した従来の化合物
半導体電界効果トランジスタでは、基板トラップや界面
トラップなどのトラップの影響を防ぐたのめのp型層
を、基板効果とドレイン寄生容量の発生をを防ぐため深
い位置に挿入していたため、下記のような問題点があっ
た。 (1)短チャネル効果によりドレインコンダクタンスが
増加する。 (2)チャネル層とトラップ間の電気的しゃへい効果が
低下し、ドレイン電流が変動する。
【0010】本発明の目的は、基板効果とドレイン寄生
容量の発生を抑えつつ基板トラップや界面トラップの影
響をしゃへいし、かつ、短チャネル効果を抑制した化合
物半導体電界効果トランジスタを提供することである。
【0011】
【課題を解決するための手段】本発明の化合物半導体電
界効果トランジスタは、チャネル層から第1導電型層上
面までの距離が、チャネル層からゲート電極下面までの
距離の3倍以内であり、第1導電型層が空乏化するドレ
イン電圧がキャリアが速度飽和を起こすドレイン電圧以
上である。
【0012】本発明は、短チャネルの化合物半導体電界
効果トランジスタにおいて、トラップを電気的にしゃへ
いするための第1導電型層をチャネル層からその上面ま
での距離が、ゲート電極下面とチャネル層との距離の3
倍以内という浅い位置に設けることにより短チャネル効
果を抑制し、キャリアが速度飽和を起こすドレイン電圧
を第1導電型層が空乏化するドレイン電圧より高くなる
ように設定することにより、ドレイン寄生容量の発生を
抑え化合物半導体電界効果トランジスタの動作速度の高
速性を損なわなずにトラップの影響によるドレイン電流
の変動を抑えるようにしたものである。
【0013】また、本発明の実施態様によれば、第1導
電型層が空乏化するドレイン電圧とキャリアが速度飽和
を起こすドレイン電圧がほぼ同一である。
【0014】本発明は、第1導電型層が空乏化するドレ
イン電圧をキャリアが速度飽和を起こすドレイン電圧ま
で下げほぼ同一とすることにより、化合物半導体電界効
果トランジスタの動作電圧を下げ消費電力を抑えるもの
である。
【0015】また、本発明の他の実施態様によれば、ノ
ンドープGaAs層と第1導電型層との間に、第2導電
型層が設けられている。
【0016】本発明は、第2導電型層をチャネル層と第
1導電型層の間に挿入することによりキャリアを排除す
る電界の発生を抑え、しきい値電圧のずれを抑制するも
のである。
【0017】また、本発明の他の実施態様によれば、ノ
ンドープGaAs層と電子供給層との間に、第2導電型
層が設けられ、第2導電型層と電子供給層との間にノン
ドープInGaAs層がさらに設けられている。
【0018】本発明は、キャリアが移動するチャネル層
をInGaAs層の表面上部に形成することにより、よ
りキャリアの移動度を高めトランジスタの高速性を上げ
るものである。
【0019】また、本発明の他の実施態様によれば、第
2導電型層とノンドープInGaAs層が設けられた後
にノンドープGaAs層を削除したものである。
【0020】本発明は、第1導電型層をできるだけ薄く
することによりトラップのしゃへい、短チャネル効果抑
制などの効果を上げるものである。
【0021】また、本発明の他の実施態様によれば、第
1導電型層と第2導電型層との間にヘテロバリア層が設
けられている。
【0022】本発明は、チャネル電子の閉じこめやアバ
ランシェ破壊によるホールの第1導電型層への流入を防
ぐものである。
【0023】
【発明の実施の形態】次に、本発明の実施形態について
図面を参照して説明する。
【0024】(第1の実施形態)図1は本発明の第1の
実施形態の化合物半導体電界効果トランジスタの断面模
式図である。図9中と同番号は同じ構成要素を示す。
【0025】本実施形態の化合物半導体電界効果トラン
ジスタは、図9の従来の化合物半導体電界効果トランジ
スタに対してp型層9がチャネル層8aからの距離が、
ゲート電極3とチャネル層8aとの距離の3倍以内に挿
入されたものである。
【0026】本実施形態のようなな浅い位置にp型層9
を設置すると、前述したように従来は基板効果によりド
レイン飽和電流が大幅に低下し、化合物半導体電界効果
トランジスタの最大のメリットである動作速度の高速性
が失われると考えられていた。長いチャネルの電界効果
トランジスタではそのような現象が実際に発生する。し
かし、短チャネル化された電界効果トランジスタにおい
ては、電子走行の速度飽和が発生するため、基板効果に
より電子濃度が低下し電流が飽和する前に、速度飽和に
よる電流飽和が発生する。そのため、基板効果による電
流飽和に起因する電流低下はほとんど発生しない。その
ため、短チャネルの電界効果トランジスタにおいては、
P型層9の挿入により動作速度は損なわれない。
【0027】また、トラップをしゃへいするためにp型
層9が挿入された化合物半導体においては、ドレイン寄
生容量の発生が問題となる。
【0028】p型層9が空乏化されずにいれば、基板ト
ラップや界面トラップ11のの影響はしゃへいされる。
また、寄生容量を減らすためにドレイン電圧によりp型
層9を空乏化させる場合でも、ホールの存在するp型層
9はトラップ電荷が変化しても電位は変動しないため、
トラップ電荷の変化による影響をチャネル側に伝搬させ
ないが、ドレイン電極4の端の下部のp型層9では、空
乏化したp型層9からチャネル層8aへ、自由電荷の無
い領域を通して電気力線が基板トラップや界面トラップ
11からチャネル電荷へ達し、ドレイン電流を変動させ
る。しかもその大きさはすき間の広さすなわちp型層9
とチャネル層8aの距離に比例して大きくなる。そのた
め、p型層9を浅い位置に置けば、そのすき間は小さく
なり影響は大幅に減少するが今度は逆にドレイン寄生容
量が増加してしまう。
【0029】このように、p型層9が挿入された従来の
化合物半導体においては、トラップのしゃへい効果とド
レイン寄生容量の発生との間で調和を図ることが難し
く、必ずしも良好な特性を得ることができなかった。
【0030】しかし、短チャネルの化合物半導体電界効
果トランジスタにおいてはその構造を工夫することによ
り良好な特性の化合物半導体電界効果トランジスタが実
現可能となる。以下にその方法を説明する。
【0031】ここで、p型層9が空乏化するチャネル電
位をVdepとする。また、p型層9のドーパント濃度や
厚さを決める際には飽和ドレイン電流値、しきい値電
圧、トラップのしゃへい効果、寄生容量値を考慮する
が、最も考慮しなければならない重要な値はチャネル電
位Vdepである。一般に回路動作中での電界効果トラン
ジスタのドレイン電圧の変動範囲は回路構成によって決
まる。例えば、その値がV 1からV2であったとする。但
し、0<V1<V2とする。p型層9は、空乏化している
場合、空乏化していない場合に比べて、寄生容量は小さ
くなり、しゃへい効果が減少する。つまり、寄生容量の
影響を抑制するためにはドレイン電圧がV1以下でp型
層9が空乏化すれば良いし、トラップのしゃへい効果を
確保するためにはドレイン電圧がV2まで空乏化しない
ことが望ましい。ドレイン電圧がV2以下でp型層9が
空乏化する場合には、チャネル電位がVdepとなる部位
からドレイン電極4下方までの領域においては、p型層
9は空乏化ししゃへい効果が減少する。この領域ではト
ラップの電荷変化によりチャネル8aの電子濃度も変化
しドレイン電流の変動が発生する。しかし、短チャネル
の化合物半導体電界効果トランジスタ、特にnチャネル
の電界効果トランジスタの場合はキャリアが電子のた
め、キャリアの移動度が高いが、キャリアの飽和速度は
通常の電界効果トランジスタと同程度のためキャリアの
速度飽和が低い電界で起こる。キャリアの速度飽和が起
きている領域では、ドレイン電流はソース電極2から供
給される電子の量により規定され、また電子濃度は電流
方向の電位分布で決めらるので、ドレイン電流に対する
トラップの影響は非常に少ない。つまり、速度飽和に達
するドレイン電圧をVsvとすると、Vsv≦Vdepとなる
ように設定するとトラップのしゃへい性の問題は考慮し
なくてよいことになる。また、Vsv≦Vdep<V1となる
ように設定すると使用しているドレイン電圧の範囲にお
いてはp型層9は空乏化するため、p型層9による寄生
容量の影響も考慮する必要がなくなる。但し、短チャネ
ル化合物電界効果トランジスタの場合には、速度飽和が
起きているドレイン電極4側の空乏領域とトラップの影
響を受けるソース電極2側領域は隣接しているため、p
型層9をかなり浅く挿入しないとしゃへい効果は十分に
得られない。
【0032】また、ドレイン電圧がVsvからVdepの間
は、トラップのしゃへい効果は十分であるが、発生する
寄生容量は大きくなるため通常は使用できない電圧であ
る。そこでVsv=Vdep<V1となるようにVdepを設定
すると、V1を低くすることができるためトランジスタ
の動作電圧を下げ消費電力を抑えることができる。
【0033】また、短チャネル効果の抑止効果はしきい
値電圧VTのドレイン電圧VDの依存性dVT/dVDが小
さいほど効果大と評価されるが、この値はp型層9の深
さが深いほど大きくなる。そのため、p型層9が浅い位
置に挿入されている本実施形態においては、短チャネル
効果は大幅に抑制される。
【0034】次に、基板効果と速度飽和を考慮した解析
的なモデルでトランジスタの電流電圧特性を計算した結
果を図2、図3、図4に示す。
【0035】図2は化合物半導体であるGaAs系HE
MTの電流電圧特性を計算した結果、図3はシリコンM
OSFETの電流電圧特性を計算した結果である。ここ
で、VDはドレイン電圧、IDはドレイン電流、TXはp
型層9の深さ、つまりp型層9上面とチャネル層8a
の距離である。図4はチャネル長Lを変えたときのドレ
イン電流IDの低減率を示したもので、一定のチャネル
長の時にトランジスタを仮想的に基板効果がないとして
電流値を求め(ID(TX=∞))、その電流値に対する
ドレイン電流(ID(TX))の実測値の比を示してい
る。
【0036】ここで図2、図3、図4において、低電界
時の電子の移動度である低電界移動度は、シリコンMO
SFETの場合では300cm2/V・sec、GaA
sHEMTの場合では8000cm2/V・sec、ま
たキャリアの飽和速度はそれぞれ1×107cm/se
c、2×107cm/secを用いて計算している。ま
た、両方ともチャネル長を0.5μmと仮定している。
また、GaAsHEMTでの電子供給層7の厚さは40
nm、シリコンMOSFETでのゲート酸化膜厚は12
0nmとしている。GaAsHEMTではしきい値を−
0.5V、ゲート電圧を0Vに、シリコンMOSFET
ではしきい値を0.5V、ゲート電圧を1.0Vにして
同等の条件となるようにしている。
【0037】図2、3を比較することにより判るよう
に、同じようにp型層9の挿入位置を浅くしても、Ga
AsHEMTではドレイン電流IDの低下する率がシリ
コンMOSFETより小さいことが判る。GaAsHE
MTの場合、TXが電子供給層7の厚さ40nmの3倍
の120nmの場合の電流値は、TX=∞のときの電流
値の10%程度の低下で済んでいる。一方シリコンMO
SFETでは、TX=120nmの場合のドレイン電流
Dの電流値は、TX=∞の場合の電流値より21%低下
している。
【0038】また、図4より化合物半導体であるGaA
sHEMTではチャネル長が1μm付近以下の短チャネ
ル長ではp型層9の深さTXを浅くしても電流の変化は
小さいことが判る。それに比べて、シリコンMOSFE
Tではチャネル長がGaAsHEMTより約1桁以上短
い0.1μm付近以下にならないとこのような状態にな
らない。
【0039】本実施形態の具体的なエピタキシャル成長
層の構造を表1、表2、表3に示す。
【0040】表1はしきい値電圧は−0.5V、チャネ
ル長は0.5μmとして想定した場合の例である。ここ
で速度飽和に達するドレイン電圧Vsvを簡易的に計算す
ると、チャネル長をL、キャリアの飽和速度を
(sat)、低電界移動度をμoとすると、Vsv=L・V
(sat)/μo=0.125Vとなるが、チャネル層8aの全
域において電荷が飽和速度で走るわけではないので実際
にはその2倍程度の電圧が必要である。そこで、ここで
はVdepを0.3Vとしている。
【0041】表2はチャネル長を0.3μmとして想定
した場合の例であり、この時速度飽和に達するドレイン
電圧は0.15V程度なのでVdepを0.2Vとしてい
る。
【0042】表3は差動増幅回路のようにドレイン電圧
の変動範囲が比較的大きい場合のための構造で、ピンチ
オフ電圧は1Vを想定している。こうすると、速度飽和
の起きている領域においてもp型層9によるしゃへい性
が向上し、電流変動はさらに抑制される。
【0043】
【表1】
【0044】
【表2】
【0045】
【表3】 (第2の実施形態)次に、図5を用いて本発明の第2の
実施形態について説明する。
【0046】本実施形態は図1の第1の実施形態に対
し、n型層12がノンドープGaAs層8とp型層9と
の間に設けられたものである。
【0047】一般にp型層9をチャネル層8aに近づけ
ると、チャネル層8aとp型層9の間の電界が大きくな
るため、トランジスタのしきい値電圧が正方向にシフト
する。ヘテロ接合化合物半導体電界効果トランジスタで
はゲート電極3の正方向耐圧が低いので、通常負または
+0.2V程度までの低いしきい値電圧が用いられる。
p型層9を浅く挿入することによりしきい値電圧がずれ
る問題は、電子供給層7の表面側の厚さ、ドナー濃度を
大きくすることによっても対応が可能であるが、電子供
給層7中へ電子が流れ込み移動度が大幅に低下すること
を防ぐためには、チャネル層8aとp型層9の間にn型
層12を挿入すればよい。このn型層12を流れる電子
はドレイン電流の一部を構成しているため、n型層12
の濃度、位置、厚さの設定はしきい値の設計に含まれ
る。従来のトランジスタと同様な特性にするには、この
n型層12は常に空乏化し、電子は表面側を流れるよう
にする。以上のような設定は、すべてエピタキシャル結
晶成長方において適切なドーピング不純物、濃度、厚さ
を制御することにより可能である。
【0048】本実施形態の具体的なエピタキシャル成長
層の構造を表4に示す。
【0049】表4は0.3μmのチャネル長に対して、
しきい値を−1Vと深くした場合の構造である。
【0050】
【表4】 (第3の実施形態)次に、図6を用いて本発明の第3の
実施形態について説明する。
【0051】本実施形態は、図1の第1の実施形態に対
し、ノンドープGaAs層8と電子供給層7との間にn
型層12が設けられ、n型層12と電子供給層7との間
にノンドープInGaAs層13がさらに設けられたも
のである。本実施形態ではノンドープInGaAs層1
3の表面上部にチャネル層13aが形成される。本実施
形態は、電子が移動するチャネル層13aをノンドープ
InGaAs層13に形成することにより、より電子の
移動度を高めトランジスタの高速性を上げるものであ
る。
【0052】本実施形態の具体的なエピタキシャル成長
層の構造を表5に示す。
【0053】
【表5】 (第4の実施形態)次に、図7を用いて本発明の第4の
実施形態について説明する。
【0054】本実施形態はトラップのしゃへい、短チャ
ネル効果抑制などの効果を上げるために現状のエピタキ
シャル技術で考えられる最も浅いp型層9の例で、図6
の第3の実施形態からノンドープGaAs層8を削除し
て、しきい値電圧を保つためにn型層12のドーパント
濃度をより高くしたものである。
【0055】本実施形態の具体的なエピタキシャル成長
層の構造を表6に示す。
【0056】
【表6】 (第5の実施形態)次に、図8を用いて本発明の第5の
実施形態について説明する。
【0057】本実施形態は図7の第4の実施形態に対
し、n型層12とp型層9との間にAlGaAsのヘテ
ロバリア層14が挿入された構造である。ヘテロバリア
層14の挿入は、本実施形態の動作に影響を与えずに、
チャネル電子の閉じこめやアバランシェ破壊によるホー
ルのp型層9への流入を防ぐ効果がある。図1の第1の
実施形態ではソース電極2からp型層9に流れるリーク
電流によりp型層9をソース電極2に電気的に接続する
ことによりp型層9の電位固定を行っているため、p型
層9とチャネル層8aとの間にヘテロ構造を挿入するこ
とはp型層9の電位固定の点からは良くないが、イオン
注入p型層9で直接電極を取る場合にはそのような問題
は発生しないため有効な方法である。
【0058】本実施形態の具体的なエピタキシャル成長
層の構造を表7に示す。
【0059】
【表7】 上記第1から第5の実施形態の構造は単にエピタキシャ
ル成長層を改良するのみで、マスク設計や製造プロセス
を何ら変更する必要は無い。エピタキシャル成長におい
ては、新たにp型層9を導入し、トラップのしゃへい性
を維持しつつ寄生容量を増やさないためには比較的高精
度のp型層9の形成が必要である。しかし、この程度の
精度はMBE(分子線ビーム結晶成長)法では十分可能
である。
【0060】また、上記第1から第5の実施形態では、
nチャネルFETを用いて説明したが、電荷や不純物を
反転すればpチャネルFETにおいても同様の効果が得
られる。
【0061】
【発明の効果】以上述べたように本発明によれば、化合
物半導体電界効果トランジスタにおいて、ドレイン電流
の低下や、ドレイン寄生容量の増加を伴わずに短チャネ
ル効果を抑えつつトラップをしゃへいしドレイン電流の
変動を抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1の実施形態の化合物半導体電界効
果トランジスタの断面模式図である。
【図2】GaAs系HEMTの電流電圧特性を計算した
結果である。
【図3】シリコンMOSFETの電流電圧特性を計算し
た結果である。
【図4】チャネル長を変えたときのドレイン電流ID
低減率を示したものである。
【図5】本発明の第2の実施形態の化合物半導体電界効
果トランジスタの断面模式図である。
【図6】本発明の第3の実施形態の化合物半導体電界効
果トランジスタの断面模式図である。
【図7】本発明の第4の実施形態の化合物半導体電界効
果トランジスタの断面模式図である。
【図8】本発明の第5の実施形態の化合物半導体電界効
果トランジスタの断面模式図である。
【図9】従来の化合物半導体電界効果トランジスタの断
面模式図である。
【符号の説明】
1 半絶縁性基板 2 ソース電極 3 ゲート電極 4 ドレイン電極 5 オーミック電極用キャップn型層 6 エッチング停止用n型層 7 電子供給層 8 ノンドープGaAs層 8a チャネル層 9 p型層 10 バッファ層 11 界面トラップ 12 n型層 13 ノンドープInGaAs層 13a チャネル層 14 ヘテロバリア層

Claims (6)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 半絶縁性基板と、 前記半絶縁性基板の上に形成されたバッファ層と、 前記バッファ層の上に形成された第1導電型層と、 前記第1導電型層の上に形成され、ドレイン電圧印加時
    にはその表面上部がキャリアが通過するチャネル層とな
    るノンドープGaAs層と、 前記ノンドープGaAs層の上に形成され、前記チャネ
    ル層を通過するキャリアを供給する電子供給層と、 前記電子供給層の上に形成されたゲート電極とを有する
    化合物半導体電界効果トランジスタにおいて、 前記チャネル層から前記第1導電型層上面までの距離
    が、前記チャネル層から前記ゲート電極下面までの距離
    の3倍以内であり、前記第1導電型層が空乏化するドレ
    イン電圧が前記キャリアが速度飽和を起こすドレイン電
    圧以上であることを特徴とする化合物半導体電界効果ト
    ランジスタ。
  2. 【請求項2】 前記第1導電型層が空乏化するドレイン
    電圧と前記キャリアが速度飽和を起こすドレイン電圧が
    ほぼ同一である請求項1記載の化合物半導体電界効果ト
    ランジスタ。
  3. 【請求項3】 前記ノンドープGaAs層と前記第1導
    電型層との間に、第2導電型層が設けられた請求項1記
    載の化合物半導体電界効果トランジスタ。
  4. 【請求項4】 前記ノンドープGaAs層と前記電子供
    給層との間に、第2導電型層が設けられ、前記第2導電
    型層と前記電子供給層との間にノンドープInGaAs
    層がさらに設けられた請求項1記載の化合物半導体電界
    効果トランジスタ。
  5. 【請求項5】 前記ノンドープGaAs層を削除した請
    求項4記載の化合物半導体電界効果トランジスタ。
  6. 【請求項6】 前記第1導電型層と前記第2導電型層と
    の間にヘテロバリア層が設けられた請求項5記載の化合
    物半導体電界効果トランジスタ。
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