JPH10106481A - 光電子増倍管 - Google Patents

光電子増倍管

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JPH10106481A
JPH10106481A JP25507496A JP25507496A JPH10106481A JP H10106481 A JPH10106481 A JP H10106481A JP 25507496 A JP25507496 A JP 25507496A JP 25507496 A JP25507496 A JP 25507496A JP H10106481 A JPH10106481 A JP H10106481A
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 本発明は、電子増倍部の変形を防止すると同
時に、陽極でのユニフォミティを良好にすることができ
る光電子増倍管を提供することを目的する。 【解決手段】 本発明による光電子増倍管は、密封容器
2内で複数段に積層された電子増倍部7のダイノード8
により増倍させた電子を、最終段ダイノード9で反射さ
せた後、出力信号として陽極10で収集する光電子増倍
管1において、各段のダイノード8は、収束メッシュ電
極11と、数本の第1の補強バー12dを有するコース
メッシュ電極12と、第1の補強バー12dと重なり合
う第2の補強バー13dを有すると共に収束メッシュ電
極11とコースメッシュ電極12との間で所定のスペー
スを確保するためのスペーサ電極13との組からなり、
収束メッシュ電極11には、ダイノード補強バー15に
より形成される不感領域Sに対応させて、2次電子放出
部20が設けられている。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、光電子増倍管に係
り、特に、電子増倍部に入射した電子を多段に積層させ
たダイノードで増倍させる大型の光電子増倍管に関する
ものである。
【0002】
【従来の技術】従来、この種の光電子増倍管として、特
開昭59−151741号公報に記載したものが知られ
ている。この光電子増倍管は、有底円筒状の真空容器の
一端に形成された光電面と、入射した光電子を増倍させ
て複数のダイノードを積層した電子増倍部と、電子増倍
部で増倍された電子を出力信号として収集する網状のア
ノード(陽極)と、平板状の最終段ダイノード(反転型
ダイノード)とを備えている。従って、光電面から放出
された光電子は、電子増倍部で増倍し、最終段ダイノー
ドで反射した後、出力信号としてアノードで収集され
る。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、従来の
光電子増倍管は、上述したように構成されているため、
次のような課題が存在していた。
【0004】すなわち、光電子増倍管の電子増倍部は多
段のダイノードからなるため、光電子増倍管のサイズが
小さい場合、例えば密封容器の直径が2インチ以下の場
合には、各ダイノード自体の直径もあまり大きくなら
ず、それ自体で所望の剛性を持たせることができ、各ダ
イノードを組み上げて電子増倍部にした場合でも、所望
の剛性が得られる。しかし、密封容器の直径が3インチ
以上になると、各ダイノードが大型化すると、各ダイノ
ード自体が捩れたり撓んだり変形し易く、しかも、各ダ
イノードを組み上げて電子増倍部にした場合でも、所望
の剛性が得られ難い。従って、この状態のままでは、光
電子増倍管を製造する際の熱に対して変形が起こり易
く、一定の特性を確保し難いといった問題点があった。
【0005】本発明は、以上のような課題を解決するた
めになされたもので、電子増倍部の変形を防止すると同
時に、陽極でのユニフォミティを良好にすることができ
る光電子増倍管を提供することをその目的としている。
【0006】
【課題を解決するための手段】請求項1に係る本発明の
光電子増倍管は、密封容器内で複数段に積層された電子
増倍部のダイノードにより増倍させた電子を、最終段ダ
イノードで反射させた後、出力信号として陽極で収集す
る光電子増倍管において、各段のダイノードは、電子を
収束させるメッシュ状の収束メッシュ電極と、2次電子
面を有すると共に各ダイノードの最外郭に形成した縁部
に架け渡した第1の補強バーを有するコースメッシュ電
極と、収束メッシュ電極とコースメッシュ電極との間に
配置されると共にコースメッシュ電極の第1の補強バー
と重なり合う第2の補強バーを有するスペーサ電極との
組からなり、収束メッシュ電極には、第1の補強バーと
第2の補強バーとからなるダイノード補強バーにより形
成される不感領域に対応させて、2次電子放出部が設け
られていることを特徴とする。
【0007】この光電子増倍管においては、収束メッシ
ュ電極とコースメッシュ電極とスペーサ電極とで一組を
なすダイノードを、第1の補強バーと第2の補強バーと
からなるダイノード補強バーにより補強することで、熱
によるダイノードの捩れや撓み変形に強く耐震性の良い
構造が確保される。また、ダイノード補強バーを各ダイ
ノードに設けることで、このダイノード補強バー近傍で
2次電子が発生せず、不感領域となってしまい、これが
原因で陽極でのユニフォミティが悪くなり、陽極での出
力の落ち込みを生じさせる。そこで、ダイノード補強バ
ーによる不感領域に対応して、収束メッシュ電極に2次
電子放出部を設ける。その結果、収束メッシュ電極でも
2次電極を発生させることができ、陽極での出力の落ち
込みを補うだけの増倍電子を発生させることが可能にな
る。
【0008】この場合、スペーサ電極の第2の補強バー
に2次電子面が形成されると好ましい。このような構成
を採用した場合、スペーサ電極の第2の補強バーで2次
電極が消失することがなく、効率よく電子を増倍させる
ことができる。
【0009】
【発明の実施の形態】以下、図面と共に本発明による光
電子増倍管の好適な一実施形態について詳細に説明す
る。
【0010】図1は、本実施形態に係る光電子増倍管を
示す断面図である。同図に示す光電子増倍管1は密封容
器2を有し、この密封容器2は、コバール金属からなる
円筒状の側管3を有している。この側管3の頂部には、
側管3の上側開放端を塞ぐように、略8インチの直径を
もつ大型のガラス製受光面板4が高周波溶接により固定
されている。更に、側管3の下部には、側管3の下側開
放端を塞ぐように、ガラス製のステム5が高周波溶接に
より固定されている。そして、受光面板4の内面には、
入射光により光電子を発生させるための光電面4aが形
成され、ステム5の中央には、密封容器2内にアルカリ
金属蒸気を注入するためのガラス製チューブ6がステム
5と一体に形成されている。
【0011】この密封容器2内には、光電面4aからの
電子を多段増倍させるための電子増倍部7が配置され、
電子増倍部7は、11段に積層された11枚の円板状の
ダイノード8と、11段目のダイノード8の下方に設け
らた最終段ダイノード(反転型ダイノード)9とからな
る。そして、各段のダイノード8及び最終段ダイノード
9は、ステム5を貫通して環状に配列された複数のピン
33aにより所定の電圧が印加される。最終段ダイノー
ド9と11段目のダイノード8との間には、マトリック
ス状に配列された複数本のXアノード10aと複数本の
Yアノード10bとからなるクロスワイヤ型アノード
(陽極)10が配置されている。各Xアノード10a及
び各Yアノード10bは、ステム5を貫通して環状に配
列された複数のピン33bに接続され、各ピン33bを
利用することで、アノード出力が外部に送出される。な
お、符号34は、光電面4aからの光電子を収束させる
ためのリング状収束電極である。
【0012】図2に示すように、各段のダイノード8
は、電子を収束させるメッシュ状の収束メッシュ電極1
1と、2次電子面を有するコースメッシュ電極12と、
収束メッシュ電極11とコースメッシュ電極12との間
に配置されて、これらの間隔を保持するためのスペーサ
電極13との組からなる。図3に示すように、収束メッ
シュ電極11は、最外郭に直径約200mmで厚み0.
15mm程度のリング状縁部11aを有し、この縁部1
1aには、8個の位置決め用耳部11bが等間隔に形成
されている。更に、縁部11a内はハニカム状のメッシ
ュ11cとなっている。図4に示すように、コースメッ
シュ電極12は、収束メッシュ電極11と同じ大きさの
直径で厚み0.2mm程度のリング状縁部12aを有
し、この縁部12aには、8個の位置決め用耳部12b
が等間隔に形成されている。更に、縁部12a内には等
間隔に配列された平行メッシュ12cが張られている。
【0013】図5に示すように、スペーサ電極13は、
収束メッシュ電極11及びコースメッシュ電極12と同
じ大きさの直径で厚み0.6mm程度のリング状縁部1
3aを有し、この縁部13aには、8個の位置決め用耳
部13bが等間隔に形成されている。なお、厚み0.3
mmのスペーサ電極13を2枚重ねる場合もある。
【0014】そして、収束メッシュ電極11とコースメ
ッシュ電極12とでスペーサ電極13を挟み込み、これ
ら電極11,12及び13を導電状態にすることで、同
電位を可能にした一組のダイノード8が作り出される。
このとき、ダイノード8は薄くて大きなリング体をなし
ているので、捩れや撓みに弱く、変形を起こし易い構造
になる。そこで、コースメッシュ電極12に4本の第1
補強バー12dを設け、各第1補強バー12dは、縁部
12aの内側において、平行メッシュ12cに対して直
交する方向に等間隔で張られている。更に、ダイノード
8の強度をアップさせるために、スペーサ電極13にも
4本の第2補強バー13dが設けられ、各第2補強バー
13dは、コースメッシュ電極12の各第1補強バー1
2dに重なるように配列されると共に、ダイノード8の
組立てに際して、各第1補強バー12dに溶接される。
【0015】このように、収束メッシュ電極11とコー
スメッシュ電極12とスペーサ電極13とからなる3枚
一組のダイノード8は、図6に示すように、それぞれの
耳部11b,12b,13bを揃えるようにして組付け
られ、各ダイノード8は、図1に示すように、アノード
10の上方で11段に重ねられている。この場合、図示
しない連結ピンを、各ダイノード8のそれぞれの耳部1
1b,12b,13bに通すことで、各ダイノード8は
位置決めされつつ多段に積層される。そして、各ダイノ
ード8間にセラミック製の円筒形スペーサ14を介在さ
せることで、各ダイノード8間を電気的に絶縁する。
【0016】更に、各ダイノード8を11段に積層させ
る場合、各ダイノード8は、コスト低減のため、同じ形
状のものが利用されるが、90度ずつ位相させるように
積み上げられる。その結果、第1補強バー12dと第2
補強バー13dとからなる4本のダイノード補強バー1
5は、隣接する段同士において、90度の位相角をもっ
て配列され、電子増倍部7において、各ダイノード補強
バー15は、上方(受光面板4側)から見てマトリック
ス状に配列されることになる。また、ダイノード補強バ
ー15は、図4及び図5に示すように、同一間隔で配置
されているが全体的に片側に僅かに寄せられている。従
って、電子増倍部7において、各ダイノード8の90度
位相配列を行った場合、各ダイノード補強バー15は、
隣接する上下の段同士の関係においては直交するが、一
段飛ばして比較すると平行になっており、しかも、一段
飛ばしの関係においては、上方(受光面板4側)から見
て所定の間隔で離間している。
【0017】ここで、前述したダイノード補強バー15
は、各ダイノード8が薄くて大型になることで付加され
たものであり、この部分で2次電子が消失すると、ダイ
ノード補強バー15の周辺で、図7に示すように、アノ
ード10の出力が落ち込み、この不感領域Sによりユニ
フォミティが悪くなる。そこで、ダイノード補強バー1
5によるアノード出力の低下を阻止するために、ダイノ
ード補強バー15の長手方向に沿った周辺部分に形成さ
れる4つの不感領域S(図5参照)に対応させて、収束
メッシュ電極11に2次電子放出部20を設ける(図3
参照)。この2次電子放出部20を作り出す方法として
は、先ず、図6に示すように、2次電子放出部20に対
応する部分を幅5mmで切り欠かいた開口部21を有す
るマスク体22を利用し、このマスク体22を、一組の
ダイノード8の収束メッシュ電極11上に位置決めする
ように載せ、開口部21を通して、ダイノード8にアン
チモンを外部蒸着する。これにより、収束メッシュ電極
11の2次電子放出部20及びダイノード補強バー15
にアンチモンが蒸着される。このようにして蒸着された
アンチモンは、光電子増倍管1の組立て後にチューブ6
から導入されるアルカリ金属蒸気と反応して2次電子面
を作り出す。
【0018】なお、第1段のダイノード8の真上におい
て、2次電子放出部20に対応する領域にアンチモンが
予め蒸着させられている補助電極(図示せず)を配置さ
せてもよい。この場合、光電子増倍管1の組立て後の通
電により、補助電極のアンチモンを飛散させ、第1段目
の収束メッシュ電極11の2次電子放出部20にアンチ
モンを付着させるようなアンチモン内部蒸着も可能であ
る。
【0019】また、2次電子放出部20をもった収束メ
ッシュ電極11は、ダイノード8のどの段に適用しても
よく、例えば、受光面板4に最も近い第1段目と第2段
目に適用させ、第1段目と第2段目とで2次電子放出部
20をクロスさせるように配置させてもよく、また、第
1〜第3段目に2次電子放出部20を適用させてもよ
い。このように、何段目の収束メッシュ電極11に2次
電子放出部20を設けるかは、光電子増倍部1の特性に
応じて適宜選択されるものであるが、図8に示すよう
に、アノード10の出力にユニフォミティが確保される
ことが肝要である。すなわち、アノード10での出力の
落ち込みを補うだけの2次電子を、2次電子放出部20
で発生させることが必要となる。
【0020】図1及び図9に示すように、密封容器2の
内部には、直径約200mmで厚み0.7mm程度の円
板からなる熱シールド性の補強板23が設けられてい
る。この補強板23は、最終段ダイノード9とステム5
との間に配置されると共に、8個の位置決め用耳部23
aにより、図示しない連結ピン及びセラミック製の円筒
形スペーサ14を介して電子増倍部7に固定される。そ
して、補強板23は、ステム5から立ち上がる複数のリ
ードピン33cと、補強板23に一端が固定されたステ
ンレス製支柱パイプ25とを溶接することで、密封容器
2に固定される。従って、支柱パイプ25で支えられた
補強板23により電子増倍部7を確実に補強することが
でき、熱による電子増倍部7の捩れや撓み変形に強く耐
震性の良い構造が確保される。
【0021】更に、図9及び図10に示すように、補強
板23には、ステム5の中央に設けられたアルカリ金属
蒸気注入用チューブ6のアルカリ金属蒸気出口6aに対
峙する円板状のアルカリ金属蒸気衝突部23bが形成さ
れている。このアルカリ金属蒸気衝突部23bは、アル
カリ金属蒸気出口6aの開口面積にほぼ相応した大きさ
をもっている。また、アルカリ金属蒸気衝突部23bの
周囲には、電子増倍部7に向けてアルカリ金属蒸気を均
一に流出させるアルカリ金属蒸気分散孔24が形成され
ている。アルカリ金属蒸気分散孔24は、アルカリ金属
蒸気衝突部23bを取り囲むようにして配列された第1
のアルカリ金属蒸気分散孔24aと、第1のアルカリ金
属蒸気分散孔24aの外方で放射状に配列された第2の
アルカリ金属蒸気分散孔24bとからなる。
【0022】また、第1のアルカリ金属蒸気分散孔24
aは、6等分割されてそれぞれが扇形に形成され、第2
のアルカリ金属蒸気分散孔24bは、それぞれが同じ大
きさの円孔をなしている。そして、各第2のアルカリ金
属蒸気分散孔24bに対して各第1のアルカリ金属蒸気
分散孔24aは大きな開口面積を有する。これは、密封
容器2内において、側管3と補強板23及び電子増倍部
7との間に環状の隙間Bが形成されていることに起因す
る。すなわち、補強板23のアルカリ金属蒸気分散孔2
4から均一なアルカリ金属蒸気を噴出させるために、真
空の密封容器2内に注入されたアルカリ金属蒸気が、環
状の隙間Bを通過することを考慮した結果である。
【0023】そこで、電子増倍部7に2次電子面を形成
する際、アルカリ金属蒸気がチューブ6を介して、真空
の密封容器2内に矢印方向Cに注入されるが、このと
き、チューブ6を介して注入されたアルカリ金属蒸気の
直進性に起因して、アルカリ金属蒸気は、補強板23の
アルカリ金属蒸気衝突部23bに一旦当ることで、補強
板23の面に沿って外側に分散するように広がってい
く。そして、アルカリ金属蒸気が、補強板23の面に沿
って広がって行くうちに、第1及び第2のアルカリ金属
蒸気分散孔24a,24bから電子増倍部7に向けてア
ルカリ金属蒸気が分散するように均一に噴出し、後述す
る最終段ダイノード9のアルカリ金属蒸気通過孔30
b,31b(図11参照)との協働により、電子増倍部
7内にアルカリ金属蒸気が均一に回る。その結果、電子
増倍部7に予め蒸着されたアンチモンとアルカリ金属蒸
気とが反応することで、電子増倍部7に、均一な2次電
子面が形成され、受光面板4に均一な光電面4aが形成
されることになる。
【0024】すなわち、このような補強板23は、チュ
ーブ6を利用して密封容器2内にアルカリ金属蒸気を注
入する際の邪魔板となっているが、この補強板23にア
ルカリ金属蒸気分散孔24a,24bを設けることで、
アルカリ金属蒸気の均一分散を達成している。このよう
な構造の光電子増倍管1は、5インチや8インチといっ
た大型の光電子増倍管に最適であり、大型の光電子増倍
管1を、医療用のガンマカメラに利用することで、小さ
な光電子増倍管を多数並べることなく、一個の大型光電
子増倍管1で心臓等の臓器を一度に撮像することがで
き。
【0025】また、補強板23を、金属製側管3との組
み合わせて利用する場合、密封容器2を組み立てるに際
し、金属製側管3とステム5との接合を高周波溶接で達
成することができ、溶接作業中に高熱が発生することが
なく、ステム5と補強板23とを近づけても、密封容器
2内の電子増倍部7に悪影響を与えることがない。従っ
て、ステム5と補強板23とを近づけることができる分
だけ、側管3を短くすることができ、光電子増倍管1の
コンパクト化を促進させることができる。更に、補強板
23に熱シールド性をもたせることで、金属製側管3と
ステム5との接合時に発生する熱を、補強板23で遮断
することができ、電子増倍部7に伝わる熱を効率良く遮
断することができる。
【0026】次に、最終段ダイノード9について説明す
る。
【0027】図11及び図12に示すように、最終段ダ
イノード9は、上層(第1層)の最終段ダイノード9A
と下層(第2層)の最終段ダイノード9Bとの2層から
なり、セラミック製の円筒形スペーサ14により離間さ
せられている(図1参照)。上層の最終段ダイノード9
Aは、図13に示すように、収束メッシュ電極11とほ
ぼ同じ大きさの直径で厚み0.3mm程度のリング状縁
部9Aaを有し、この縁部9Aaには、8個の位置決め
用耳部9Abが等間隔に形成されている。更に、縁部9
Aa内には、断面矩形で棒状の平行メッシュ30が等間
隔に張られている。また、上層の最終段ダイノード9A
は薄くて大きなリング体をなしているので、捩れや撓み
に弱く、変形を起こし易い構造になっている。そこで、
最終段ダイノード9Aに4本の補強バー9Adを設け、
各補強バー9Adは、縁部9Aaの内側において、平行
メッシュ30に対して直交する方向に等間隔で張られて
いる。
【0028】同様に、下層の最終段ダイノード9Bは、
上層の最終段ダイノード9Aと同じ形状を有すると共
に、縁部9Ba,位置決め用耳部9Bb,平行メッシュ
31及び補強バー9Bdを有している。
【0029】そこで、図11及び図12に示すように、
上側に位置する平行メッシュ30の上面には、アノード
10に向けて2次電子を反射させる電子反射面30aが
形成され、平行メッシュ30間には2次電子及びアルカ
リ金属蒸気を通過させるためのアルカリ金属蒸気通過孔
30bが形成されている。同様に、下側に位置する平行
メッシュ31の上面には、アノード10に向けて2次電
子を反射させる電子反射面31aが形成され、平行メッ
シュ31間にはアルカリ金属蒸気を通過させるためのア
ルカリ金属蒸気通過孔31bが形成されている。そし
て、上層の最終段ダイノード9Aのアルカリ金属蒸気通
過孔30bと、下層の最終段ダイノード9Bの電子反射
面31aとを対峙させる。
【0030】また、上層の最終段ダイノード9Aに形成
された隣接する電子反射面30a間のピッチと、下層の
最終段ダイノード9Bに形成された隣接する電子反射面
31a間のピッチとは同一になっており、しかも、電子
反射面30a,31aの幅Wに対して、アルカリ金属蒸
気通過孔30b,31bの幅Zを僅かに小さくしてい
る。従って、上層の最終段ダイノード9Aに対して下層
の最終段ダイノード9Bを半ピッチ分ずらすことで、電
子増倍部7のダイノード8で増倍された2次電子を漏ら
すことなく、アノード10に向けて反射させることがで
きる。
【0031】更に、上層の最終段ダイノード9Aと下層
の最終段ダイノード9Bとをスペーサ14で離間させる
ことで、アルカリ金属蒸気通過孔30bと31bとが塞
がれることがなく連通し、均一なアルカリ金属蒸気流通
孔が形成されることになる。その結果、補強板23の第
1及び第2のアルカリ金属蒸気分散孔24a,24bか
ら噴出するアルカリ金属蒸気を11段のダイノード8に
向けて均一に送り込むことができる。
【0032】なお、下層の最終段ダイノード9Bの電子
反射面31aは、上層の最終段ダイノード9Aのアルカ
リ金属蒸気通過孔30bを通過する電子を捕捉する幅Z
を少なくとも有していればよく、上層の最終段ダイノー
ド9Aに形成された隣接する電子反射面30a間のピッ
チと、下層の最終段ダイノード9Bに形成された隣接す
る電子反射面31a間のピッチとは必ずしも一致する必
要はない。更に、平行メッシュ30及び31の断面形状
は、台形でも三角形でもよいが、電子反射面30a,3
1aがアノード10に対して平行になるように配置され
ることが必要である。
【0033】
【発明の効果】本発明による光電子増倍管は、以上のよ
うに構成されているため、次のような効果を得る。すな
わち、各段のダイノードは、電子を収束させるメッシュ
状の収束メッシュ電極と、2次電子面を有すると共に各
ダイノードの最外郭に形成した縁部に架け渡した第1の
補強バーを有するコースメッシュ電極と、収束メッシュ
電極とコースメッシュ電極との間に配置されると共にコ
ースメッシュ電極の第1の補強バーと重なり合う第2の
補強バーを有するスペーサ電極との組からなり、収束メ
ッシュ電極には、第1の補強バーと第2の補強バーとか
らなるダイノード補強バーにより形成される不感領域に
対応させて、2次電子放出部が設けられることにより、
電子増倍部の変形を防止すると同時に、陽極でのユニフ
ォミティを良好にすることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る光電子増倍管の一実施例を示す断
面図である。
【図2】3枚一組のダイノードを示す斜視図である。
【図3】収束メッシュ電極を示す平面図である。
【図4】コースメッシュ電極を示す平面図である。
【図5】スペーサ電極を示す平面図である。
【図6】収束メッシュ電極に2次電子放出部を形成する
ためのマスク体を示す斜視図である。
【図7】収束メッシュ電極に2次電子放出部を形成して
ない状態で実験した際のアノード出力図である。
【図8】収束メッシュ電極に2次電子放出部を形成した
状態で実験した際のアノード出力図である。
【図9】補強板を示す斜視図である。
【図10】補強板を示す平面図である。
【図11】2層からなる最終段ダイノードを示す斜視図
である。
【図12】2層からなる最終段ダイノードを示す断面図
である。
【図13】最終段ダイノードの平面図である。
【符号の説明】
S…不感領域、1…光電子増倍管、2…密封容器、7…
電子増倍部、8…ダイノード、9…最終段ダイノード、
10…アノード(陽極)11a,12a,13a…縁
部、11…収束メッシュ電極、12…コースメッシュ電
極、12d…第1の補強バー、13…スペーサ電極、1
3d…第2の補強バー、15…ダイノード補強バー、2
0…2次電子放出部。

Claims (2)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 密封容器内で複数段に積層された電子増
    倍部のダイノードにより増倍させた電子を、最終段ダイ
    ノードで反射させた後、出力信号として陽極で収集する
    光電子増倍管において、 各段の前記ダイノードは、電子を収束させるメッシュ状
    の収束メッシュ電極と、2次電子面を有すると共に前記
    各ダイノードの最外郭に形成した縁部に架け渡した第1
    の補強バーを有するコースメッシュ電極と、前記収束メ
    ッシュ電極と前記コースメッシュ電極との間に配置され
    ると共に前記コースメッシュ電極の前記第1の補強バー
    と重なり合う第2の補強バーを有するスペーサ電極との
    組からなり、前記収束メッシュ電極には、前記第1の補
    強バーと第2の補強バーとからなるダイノード補強バー
    により形成される不感領域に対応させて、2次電子放出
    部が設けられていることを特徴とする光電子増倍管。
  2. 【請求項2】 前記スペーサ電極の前記第2の補強バー
    に2次電子面が形成されていることを特徴とする請求項
    1記載の光電子増倍管。
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