JPH10102219A - 磁気特性に優れた無方向性電磁鋼板とその製造方法 - Google Patents

磁気特性に優れた無方向性電磁鋼板とその製造方法

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JPH10102219A
JPH10102219A JP25636496A JP25636496A JPH10102219A JP H10102219 A JPH10102219 A JP H10102219A JP 25636496 A JP25636496 A JP 25636496A JP 25636496 A JP25636496 A JP 25636496A JP H10102219 A JPH10102219 A JP H10102219A
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steel
steel sheet
sio
mno
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JP25636496A
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Mitsuyo Maeda
光代 前田
Takayuki Nishi
隆之 西
Hiroyoshi Yashiki
裕義 屋鋪
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Nippon Steel Corp
Original Assignee
Sumitomo Metal Industries Ltd
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Abstract

(57)【要約】 【課題】磁気特性にすぐれ、打ち抜き加工性と経済性も
良好な、低Si の無方向性電磁鋼板およびその製造方法
を提供する。 【解決手段】C:0.01%以下、Si :0.01〜1%、Mn
:0.05〜0.5 %、P:0.15%以下、全酸素:0.006 〜
0.02%、sol.Al :0.002 %以下、を含む鋼の酸化物系
介在物の構成が、MnO /SiO2:0.25以下、Al23
/SiO2:0.1 以上1以下、SiO2/(SiO2+MnO
+Al23 ):0.75未満の関係を満たす無方向性電磁鋼
板、および、真空処理槽内の溶鋼にMn を添加し、真空
処理を施して、溶鋼中のCを重量%で0.0005〜0.01%、
フリー酸素を0.01〜0.04%に調整し、Al およびSi を
添加する上記鋼板の製造方法。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、電気機器の鉄心と
して広く用いられる磁気特性に優れた無方向性電磁鋼板
およびその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】無方向性電磁鋼板はモーターや変圧器な
ど、各種のエネルギー変換機器の鉄心に用いられる。エ
ネルギー変換時の損失を低減するため、低鉄損で高磁束
密度の無方向性電磁鋼板が求められている。また、無方
向性電磁鋼板は一般家電用途などにも大量に使用される
ので、安価で加工しやすい材料であることも重要であ
る。
【0003】電磁鋼板の鉄損は渦電流損とヒステリシス
損で構成される。渦電流損は電気抵抗を高めれば低下す
る。無方向性電磁鋼板の鉄損を減らすために、通常、電
気抵抗を高める効果があるSi を含有させる。しかしな
がら、Si 含有量を増すと磁束密度が低下し、鋼が硬化
して圧延時の変形抵抗が増大するなどの問題がある。
【0004】電磁鋼板の鉄損はある範囲の結晶粒径で最
小値を示す。結晶粒が大きくなると、ヒステリシス損は
減少するが渦電流損が増加するためである。最適な結晶
粒径は通常の冷延鋼板を冷間圧延、焼鈍して得られる再
結晶粒径よりもかなり大きい。このため、焼鈍後の結晶
粒径を大きくすべく種々の工夫がなされている。
【0005】MnS のような硫化物系の介在物は粒成長
を阻害するので、従来からS含有量を低減する努力が続
けられている。微細なAlN 析出物も粒成長性を阻害す
る。この悪影響を除く方法として、特開昭61-119652 号
公報には鋼のAl 含有量を高めてAlN 析出物を粗大化
させる方法が、特開昭63-195217 号公報には、逆に、鋼
のsol.Al を低めてAlN の析出量を減少させる方法が
提示されている。
【0006】酸化物系介在物も結晶粒成長を損なう。上
述の特開昭63-195217 号公報では、鋼中の酸化物系介在
物の重量に対するMnO の重量の割合を15%以下として
磁気特性を向上させる発明を提示している。さらに、上
記のMnO の制限に加えて、SiO2の重量の割合を75%
以上に規制して粒成長性を改善させた電磁鋼板も特開平
7-150248号公報に提示されている。
【0007】この発明では、MnO やSiO2の重量の割
合が上記の範囲を外れると介在物の軟化点が低下して圧
延中に延ばされ、これが焼鈍時の結晶粒成長を妨げるの
で磁気特性が損なわれる、としている。しかしながら、
これらの方法でも磁気特性が不十分なうえ、経済性にも
改善すべき点がある。
【0008】特開昭63-195217 号公報ではMnO の重量
の割合を低下させる方法として、転炉出鋼時に従来より
も多量のFe −Mn 合金を添加し、Mn による溶鋼の脱
酸を強化している。転炉出鋼時は溶鉄中の酸素含有量が
高く、かつ、スラグと鋼とが撹拌されている状態なので
Mn が酸化しやすく、また、スラグに移行しやすい。こ
のため、Mn の歩留まりが悪く、成分調整も十分には行
なえない。この方法ではAl で脱酸した後に再度Mn 成
分の調整が必要になり、経済性に欠けるうえ精錬末期で
のMn 添加によってMnOが生じる問題もある。
【0009】また、SiO2の比率が高くなると、連続鋳
造時にノズルが閉塞しやすくなると共に、鉄心に加工す
るときの鋼板の打ち抜き性を劣化させ、さらに製品のき
ずの原因にもなる。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】本発明の課題は、磁気
特性に優れ、打ち抜き加工性や経済性も改善した低Si
の無方向性電磁鋼板、およびその製造方法を提供するこ
とである。
【0011】
【課題を解決するための手段】本発明の要旨は下記の磁
気特性に優れた無方向性電磁鋼板およびその製造方法に
ある。
【0012】(1)化学組成が、重量%で、C:0.01%
以下、Si :0.01〜1%、Mn :0.05〜0.5 %、P:0.
15%以下、全酸素:0.006 〜0.02%、sol.Al :0.002
%以下、残部はFe および不可避的不純物からなる鋼に
おいて、鋼中の酸化物系介在物を構成するMnO 、Al2
3 およびSiO2の重量割合が、MnO /SiO2:0.25
以下、Al23 /SiO2:0.1 以上1以下、SiO2
(SiO2+MnO +Al23 ):0.75未満である関係を
満たすことを特徴とする磁気特性に優れた無方向性電磁
鋼板。
【0013】(2)真空処理槽内の溶鋼にMn を添加
し、その後真空処理を施して、溶鋼中のCを重量%で0.
0005〜0.01%、フリー酸素を0.01〜0.04%に調整し、A
l およびSi を添加して鋼の化学組成および介在物組成
を制御することを特徴とする、上記(1)に記載の無方
向性電磁鋼板の製造方法。
【0014】本発明の鋼板では、酸化物系介在物の組成
を特定の範囲に制限しているので、経済性を損なうこと
なく、磁気特性を左右する鋼板の結晶組織に対する介在
物の悪影響を低減できる。
【0015】溶鋼を真空処理法で極低炭素化して製造さ
れる無方向性電磁鋼板において、特定の組成範囲の低融
点の酸化物系介在物は、熱間圧延時に展伸し、冷間圧延
時に破砕されて点列状に分散して焼鈍時の結晶粒の成長
を阻害する。
【0016】図1は、後述する実施例を含む各種の電磁
鋼板の内に存在する酸化物系介在物中の、SiO2に対す
るMnO の重量比率と鋼板の鉄損との関係を示す図であ
る。図1に示されるように、酸化物系介在物中のSiO2
に対するMnO の比率を下げれば粒成長性が改善される
ので、鉄損が低下し磁気特性が向上する。
【0017】Al23 の比率を適正な範囲に管理するこ
とによって粒成長性が改善される。また、SiO2系の介
在物が過剰にならないように管理することにより、電磁
鋼板製造過程で溶鋼の鋳造に用いられるノズルの閉塞や
製品の表面欠陥が防止され、打ち抜き性も優れた電磁鋼
板が得られる。SiO2系の介在物が過剰になるのは磁気
特性改善の観点からも好ましくない。
【0018】さらに、本発明の製造方法では、製鋼作
業、特に、脱炭を主目的として行なう溶鋼の真空処理や
脱酸剤を添加する方法を特定の条件で行なう。これによ
り、本発明に規定する化学組成および介在物組成の鋼板
を経済的に、かつ、容易に製造することができる。
【0019】
【本発明の実施の形態】本発明の実施に際し、各要因や
条件を限定した理由を以下に述べる。なお、以下に記す
%表示は重量%を意味する。
【0020】(1)鋼板の化学組成 C:磁気特性を劣化させるので少ないほどよい。磁気特
性に対する悪影響を避けるために、その上限を0.01%と
する。C含有量の下限は規定しない。ただ、後述するよ
うに、溶鋼の真空処理時には溶鋼中のCが0.0005%を下
回らないようにする必要があるので、鋼板中に0.0005%
程度のCは含有されることがある。
【0021】Si :鋼を脱酸するためと、鋼の電気抵抗
を高めて鉄損を低減するために用いる。脱酸効果を確保
するためにSi 含有量の下限を0.01%とする。他方、S
i 含有量が増すにつれて磁束密度が低下するので、その
上限を1%とする。
【0022】Mn :不可避的不純物として含有されるS
を硫化物として固定し、Sによる熱間脆性を防止するた
めにMn を0.05%以上含有させる。Mn はSi と同様
に、鋼の電気抵抗を高め渦電流損を低減するのに有効で
ある。しかし、Mn を多量に含有させるとMnO が増加
するおそれがある。本発明では、介在物組成を望ましい
範囲にするために、Mn 含有量の上限を0.5 %、望まし
くは0.35%、更に望ましくは0.25%とする。
【0023】Mn 含有量の制限と後ほど述べるMn 添加
方法の改善によって、鋼板の内に存在する酸化物系介在
物中のSiO2に対するMnO の重量比率を制御する。こ
れにより介在物の融点が上昇し、圧延後の鋼板中の介在
物の分散状態が粒成長に好ましい形態となる。
【0024】P:電気抵抗を高めて鉄損を改善し、鋼を
硬くして打ち抜き性を向上させる効果がある。このた
め、必要に応じて用いる。しかし、過度に含有させると
鋼を脆化させるので、その上限は0.15%とする。
【0025】sol.Al :本発明でのAl は、健全な鋳片
を得るための溶鋼の脱酸剤としての役割と、介在物中の
Al23 含有量を制御する役割とを持っている。Al 添
加により生じる脱酸生成物の一部は浮上するが、残余は
鋼中で酸化物系介在物を形成し、さらに過剰のAl はso
l.Al として鋼中に残存する。sol.Al は、主に微細な
析出物であるAlN として存在する。AlNの量が増す
と結晶粒成長や磁壁移動の障害となる。このため、sol.
Al は少ないほど好ましく、その含有量の上限を0.002
%とする。
【0026】なお、sol.Al を低減してもSi-Mn-N系
の微細析出物が発生することもあるので、N含有量はで
きるだけ少なく、0.005 %以下とするのが望ましい。
【0027】全酸素:全酸素はフリー酸素と介在物中の
酸素からなっており、化学分析で求められる。フリー酸
素は、鋼中に溶けている酸素を意味する。鋼板中ではフ
リー酸素は少なく、大部分は介在物中の酸素として存在
する。このため、鋼板中の全酸素と介在物中の酸素との
間には相関関係があり、鋼の全酸素量が増加することは
介在物が増すことを意味している。
【0028】酸化物系の介在物の総量を抑制するため
に、鋼板中の全酸素の含有量の上限を0.02%とする。他
方、溶鋼を真空脱炭処理する時に溶鋼中の酸素を低くし
すぎるとC含有量が増加する。鋼板のC含有量を本発明
の範囲内に制御するために、鋼板中の全酸素の含有量の
下限は0.006%とする。
【0029】(2)介在物の組成 Sを不可避的不純物として低減して製造する電磁鋼板で
観察される介在物は、SiO2、MnO、Al23を主成分
とする酸化物系介在物が主体である。介在物の存在形態
は、鋼板の再結晶粒の成長挙動を通じて鋼板の磁気特性
に大きく影響する。このため、介在物の総量を削減する
と共に、不可避的に混入してくる介在物を無害化しなけ
ればならない。本発明では、酸化物系介在物の組成を以
下のように制御することで介在物の悪影響を軽減する。
【0030】(a)SiO2に対するMnO の重量組成比
(MnO /SiO2、以下、Mn O比と記す)を低下させ
ると介在物の軟化点が上昇する。これにより、熱間圧延
による介在物の展伸、および冷間圧延による破砕が抑制
されて、結晶粒成長性に対する悪影響が減少する。この
ため、MnO 比を0.25以下とする。
【0031】(b)介在物中のSiO2に対するAl23
の重量組成比(Al23 /Si O2、以下、Al23
と記す)が増すと、比較的微細なAl23 単体の介在物
が増加して粒成長性が損なわれる。粒成長性を確保する
ため、Al23 比は1以下とする。逆に、Al23 比が
過度に低くなりすぎると、SiO2-MnO系の酸化物及び
Si-Mn-N系の微細析出物が生成し、粒成長性や磁気特
性に悪影響を及ぼすおそれがある。このため、Al23
比の下限を0.1とする。
【0032】(C)酸化物系介在物中のSiO2の比率が
高くなりすぎると連続鋳造時にノズルが閉塞しやすくな
り、鋼板の表面疵が発生するおそれも増すので、製造時
の経済性を損なう。また、電磁鋼板を鉄心などに打ち抜
き加工する時に用いる打ち抜き工具の寿命を短くして需
要家側での経済性も損なう。このため、酸化物系介在物
に対するSiO2の比率、すなわちSiO2/(SiO2+M
nO +Al23 )を0.75未満とする。
【0033】なお、酸化物系介在物の組成は、SiO2
Al23 およびMnO について、ヨウ素―メタノール法
による抽出分離定量法により分析して求める。
【0034】(3)溶鋼の製造方法 本発明の鋼は、転炉や電気炉で溶製された溶鋼に真空処
理を施して最終的な目標成分にした後、連続鋳造法など
で鋼塊にされ、以下、常法にしたがって熱間圧延、冷間
圧延、焼鈍、コーティングなどの工程を経て製造され
る。磁気特性等に大きく影響する化学組成や介在物組成
は溶鋼の真空処理方法に大きく影響される。本発明で
は、磁気特性に優れた無方向性電磁鋼板の製造方法を以
下のように規定する。
【0035】なお、本発明での真空処理の手段には特別
な限定はない。例えばRH法やVOD法が好適である。
RH法によれば、真空処理を通じて短時間に全酸素含有
量が低減できる。VOD法によれば、Al およびSi 添
加後のスラグによるMn 調整が短時間に行なえる。しか
し両者の間に本質的な差はないので、以下に、RH法を
例にして説明する。
【0036】真空処理前の溶鋼:真空処理前の溶鋼の化
学組成は、最終的な目標成分が実現できる組成であれば
よく、特別な制限はない。通常、Si :0.05〜0.5 %、
Mn:0.01〜0.1 %、P:0.005 〜0.15%、そして、望
ましくは、鋼中のCが0.03〜0.08%の鋼が用いられる。
【0037】Mn 添加:転炉や電気炉で溶製された溶鋼
を真空処理槽に移し、最終的に鋼板の目標成分にするの
に必要な量を予測して、所要の量のMn 源を添加する。
Mn源の形態は特別に規制するものではないが、Fe-Mn
合金のような一般的な合金鉄が好適である。
【0038】Mn 源は、従来のように転炉からの出鋼時
ではなく、RH処理槽内に溶鋼を移した後に添加する。
このため、スラグと溶鋼との撹拌がほとんど生じない。
これにより、転炉出鋼時にMn 源を添加する従来の方法
に比べて、Mn が酸化してスラグに移行することが少な
く、Mn の歩留まりがよい。
【0039】Mn 源の投入が真空処理前であるので溶鋼
の酸素含有量が高く、一部のMn はMn 酸化物となって
スラグ中に移行する。しかし、後述するように、本発明
の製造方法では真空処理後にAl とSi を添加するの
で、この時にスラグ中のMnOが解離してMn として溶
鋼中に戻る。これにより、Mn 含有量は目標成分に調整
される。
【0040】スラグとの撹拌が少ない状態でMn 源が添
加されるので、スラグ中でMnO 含有量が高くなるの
は、スラグが溶鋼と接触している部分に限られる。この
ために、その後の脱酸でMn が還元しやすい。これも本
発明の製造方法でMn の調整が容易に行なえる理由の一
つである。
【0041】このような方法でMn 含有量を調整すれ
ば、Mn 含有量は低い状態から徐々に高められるので介
在物中にMnO が生成しにくい。また、介在物中でのM
nO 比率上昇の一因である真空処理とAl 脱酸後のMn
成分調整のためのMn 源投入が不要となり、目標とする
介在物組成が実現できる。
【0042】真空処理:溶鋼にMn を添加した後、減圧
下で、到達真空度及び処理時間を制御して溶鋼中のC含
有量及びフリー酸素含有量を調整する。ここでのフリー
酸素は、溶鋼中に溶存する酸素を意味し、ジルコニア固
体電解質を用いた酸素センサーで測定できる酸素含有量
を指標とする。
【0043】真空脱ガス反応は、“溶鋼中のCとOの溶
解度積は、真空度に応じて一定”の関係を基に進行す
る。溶鋼中のC含有量は0.0005〜0.01%、望ましくは0.
002 〜0.005 %の範囲に制御する。溶鋼中のC含有量が
0.01%を超えると最終的な鋼板のC含有量0.01%以下を
実現できない。また、0.0005%に満たない場合には溶鋼
中のフリー酸素が0.04%を超えてしまう。
【0044】溶鋼中のフリー酸素は0.01〜0.04%の範囲
に調整する。この量が0.04%を超えると、その後のAl
およびSi 添加に際して介在物が大量に生成し、鋼板の
清浄度が悪化すると共に介在物組成の制御も困難にな
る。そのうえ、ノズルが閉塞するなどの製造上の問題も
生じる。フリー酸素が0.01%に満たない場合には脱炭が
不十分になり、鋼板のC含有量を低減できない。
【0045】真空処理時の到達真空度を0.01気圧以下と
すれば脱ガス反応を迅速に制御できる。しかし、0.05気
圧程度であっても、処理時間を延長すれば制御は可能で
ある。このときの溶鋼処理温度及び時間に特別な制約は
ない。たとえば、溶鋼温度は1580〜1650℃、処理時間は
10〜20分程度がよい。
【0046】Al 、Si の添加:Cとフリー酸素を上記
のように調整した後、Al およびSi を添加する。全酸
素含有量を低減し、さらに、介在物の組成を制御するた
めに、Al を添加した後にSi を添加するのが望まし
い。
【0047】Al 添加の目的は、脱炭のために必要であ
ったフリー酸素のみならず全酸素含有量をも低減するこ
とである。RH等で溶鋼を適切に撹拌すれば、溶鋼の最
終のsol.Al 含有量が0.002 %以下であっても、全酸素
含有量を0.006 〜0.02%の範囲にすることができる。ま
た、Al 添加の別の目的は、介在物中のAl23 含有量
を適正化するためである。この点から、望ましくはsol.
Al は0.001 %以上残留する方がよい。
【0048】このような状態で、鋼板の目標成分を実現
するのに必要な量だけSi を添加する。この方法によれ
ば、Si のみならずMn についても容易に目標組成を得
ることができる。さらに、介在物の組成も目標組成に制
御できるので、電磁鋼板として特性、加工性、経済性に
優れたものが製造できる。
【0049】化学組成および介在物組成を調整して得ら
れた鋳片は、通常の条件の熱間圧延、冷間圧延および焼
鈍などの工程で電磁鋼板とすればよい。鋳片を最終の電
磁鋼板に仕上げるための製造工程において、良好な磁気
特性を得るために望ましい条件は次の通りである。すな
わち、熱間圧延のスラブ加熱温度は1250℃以下、仕上げ
温度は800 〜950 ℃とし、巻取温度は500 〜700 ℃とす
るのがよい。より磁気特性を向上させたい場合は必要に
応じて冷間圧延前に焼鈍を行ってもよい。しかし、本発
明は、できるだけ製造コストを低くして十分な性能の無
方向性電磁鋼板を得ることもその目標の一つであり、余
分の工程はできるだけなくす方が望ましい。
【0050】
【実施例】
〔実施例1〕表1に示す、本発明の条件を満たす6種類
の鋼と、本発明の条件を外れる鋼8種類とを、転炉―R
H―CCの工程で製造した。
【0051】
【表1】
【0052】これらの鋼は、転炉で溶解し、溶鋼をRH
脱ガス装置を用いて真空処理を行ない、溶鋼中のC量、
フリー酸素量を調整した後Al とSi を添加した。
【0053】Mn 添加時期は、鋼A〜GおよびN〜P
は、本発明の方法にしたがって、真空処理を施す前のR
H槽内の溶鋼にFe ―Mn 合金を添加した。鋼Hは転炉
からの出鋼時に、鋼I、J、KはRHでの脱ガス処理終
了後に、それぞれFe ―Mn 合金を添加し、鋼L、Mは
転炉からの出鋼時に添加した後、RHでの脱ガスが終了
した後にも添加してそのMn 含有量を調整した。
【0054】溶鋼は連続鋳造でスラブとし、これらのス
ラブを1180℃に加熱し、仕上げ温度870 〜890 ℃、巻取
温度660 〜680 ℃で板厚2.0mm に熱間圧延し、脱スケー
ル後冷間圧延して板厚0.5mm 厚に仕上げ、850 ℃にて均
熱1分の焼鈍を施した。その後、通常の無方向性電磁鋼
板と同様の有機成分と無機成分を含有した複合組成から
なる表面絶縁コーティングを施した。
【0055】得られた鋼板より、鋼の介在物組成の分
析、磁気特性の測定、および打ち抜き性評価試験を行な
った。
【0056】介在物組成は、SiO2、Al23 およびM
nO について、ヨウ素―メタノール法による抽出分離定
量法により分析して求めた。磁気特性は、JIS-C-2550に
規定のエプスタイン試験法によって鉄損(W15/50)と
磁束密度(B50)を求めた。
【0057】打ち抜き性は、高速打ち抜きを行なったと
きの打ち抜き試験片のかえり高さが所定値になるまでの
打ち抜き回数で評価した。打ち抜き試験片は、4ケ所の
コーナー部の曲率半径が各々0.50mm、0.25mm、0.12mm、
0.05mmの、一辺が20mmの角型のブランクを、クリアラン
スを5 %、8 %、10%の3条件にして一度に打ち抜い
た。打ち抜かれた試験片のいずれかのコーナーのかえり
高さが50μm に達した時を打ち抜き限界とした。潤滑は
水溶性の打ち抜き油を用い、打ち抜き速度は350回/分
とした。
【0058】表2に、鋼板中の酸化物系介在物の組成
と、これらの磁気特性および打ち抜き性評価結果を示
す。また、図2に、鋼中の酸化物系介在物の組成比率に
ついて、本発明の範囲と実施例の鋼の場合の例を示す。
なお、図2で、英字は表1、表2に記載の鋼を表す。
【0059】
【表2】
【0060】表2に示すように、本発明に定める化学組
成と介在物組成を持つ鋼A〜Gは優れた磁気特性と打ち
抜き性を示す。これに対し、転炉からの出鋼時にFe ―
Mn合金を添加した鋼Hは、MnO 比が高くなり、粒成
長性が阻害されたために磁気特性が好ましくなかった。
【0061】鋼I、J、Kはいずれも介在物組成が本発
明が規定する条件から外れたほか、鋼Iは介在物の量も
多く、鋼Kはsol.Al も高く、いずれも磁気特性が好ま
しくなかった。鋼JはSiO 比率が高いために打ち抜き
性も好ましくなかった。鋼Lは化学組成は本発明が規定
する範囲であるが、SiO 比率が高く、打ち抜き性が劣
る。また、微細なSiO2- MnO 系の酸化物およびSi-
Mn-N系の微細な析出物が粒成長を阻害して鉄損が劣化
した。
【0062】鋼MはMn 含有量とMn 添加方法が本発明
の規定の範囲から外れ、MnO 比が高くなって磁気特性
が好ましくない。鋼Nは、鉄損は好ましいレベルである
が、Si 含有量が本発明の規定の範囲から外れるため
に、磁束密度が劣った。
【0063】鋼OはP含有量が高く、鋼が硬くなり過ぎ
たために打ち抜き性が好ましくなく、気特性も劣化し
た。鋼Pは酸素含有量が高すぎて、介在物の総量が多く
て結晶組織が細粒となり、磁気特性が好ましくなかっ
た。
【0064】表2に示されているように、本発明の製造
方法によれば、MnO /SiO2比率は安定して低減でき
た。しかし、脱酸後にMn 添加を行なった鋼I、Mでは
MnO比が高めに外れた。Mn 源の歩留まりは本発明の
方法の方が良好であった。また、鋼J、Lを連続鋳造し
た時は鋳込みノズルの閉塞が激しく、ノズルの寿命は、
他の鋼を鋳込むのに比べて半減した。これらは鋼板での
表面欠陥が通常の材料に比べて30%悪かく、打ち抜き性
も好ましくなかった。
【0065】
【発明の効果】本発明の無方向性電磁鋼板は、磁気特性
のみならず、打ち抜き性も優れるので需要家での経済性
に優れる。また、本発明の製造方法によれば、合金の歩
留まりよく、安定して組成の制御が出来るので極めて経
済的に特性が優れた無方向性電磁鋼板を製造することが
出来る。
【図面の簡単な説明】
【図1】鋼板の酸化物系介在物中の、SiO2に対するM
nO の重量比率と、鋼板の鉄損との関係を示す図であ
る。
【図2】鋼中の酸化物系介在物の内の、SiO2、Al2
3 、MnO の重量総和に対する各酸化物の重量の比率に
ついて、本発明の範囲と実施例の鋼の場合の例とを示
す。

Claims (2)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】重量%で、C:0.01%以下、Si :0.01〜
    1%、Mn :0.05〜0.5 %、P:0.15%以下、全酸素:
    0.006 〜0.02%、sol.Al :0.002 %以下、残部はFe
    および不可避的不純物からなる鋼であって、鋼中の酸化
    物系介在物を構成するMnO、Al23 およびSiO2
    重量割合が、MnO /SiO2:0.25以下、Al23 /S
    iO2:0.1 以上1以下、SiO2/(SiO2+MnO +A
    l23 ):0.75未満である関係を満たすことを特徴とす
    る磁気特性に優れた無方向性電磁鋼板。
  2. 【請求項2】真空処理槽内の溶鋼にMn を添加し、その
    後真空処理を施して溶鋼中のCを重量%で0.0005〜0.01
    %、フリー酸素を0.01〜0.04%に調整し、Al およびS
    i を添加して鋼の化学組成および介在物組成を制御する
    ことを特徴とする、請求項1に記載の磁気特性に優れた
    無方向性電磁鋼板の製造方法。
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