JPH10102210A - 抗菌性とプレス成形性に優れるオーステナイト系ステンレス鋼 - Google Patents

抗菌性とプレス成形性に優れるオーステナイト系ステンレス鋼

Info

Publication number
JPH10102210A
JPH10102210A JP25633396A JP25633396A JPH10102210A JP H10102210 A JPH10102210 A JP H10102210A JP 25633396 A JP25633396 A JP 25633396A JP 25633396 A JP25633396 A JP 25633396A JP H10102210 A JPH10102210 A JP H10102210A
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
less
stainless steel
austenitic stainless
equivalent
antibacterial properties
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Pending
Application number
JP25633396A
Other languages
English (en)
Inventor
Toshihiko Yanai
俊彦 谷内
Hiroyuki Fujii
宏之 藤井
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Nippon Yakin Kogyo Co Ltd
Original Assignee
Nippon Yakin Kogyo Co Ltd
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Nippon Yakin Kogyo Co Ltd filed Critical Nippon Yakin Kogyo Co Ltd
Priority to JP25633396A priority Critical patent/JPH10102210A/ja
Priority to PCT/JP1997/003439 priority patent/WO1998013530A1/ja
Priority to DE19781031T priority patent/DE19781031T1/de
Priority to KR1019980703896A priority patent/KR19990071620A/ko
Priority to TW086114138A priority patent/TW383340B/zh
Publication of JPH10102210A publication Critical patent/JPH10102210A/ja
Priority to SE9801735A priority patent/SE519722C2/sv
Pending legal-status Critical Current

Links

Landscapes

  • Shaping Metal By Deep-Drawing, Or The Like (AREA)
  • Agricultural Chemicals And Associated Chemicals (AREA)

Abstract

(57)【要約】 【課題】抗菌性とともにプレス加工時の深絞り性に優れ
るオーステナイト系ステンレス鋼を提供すること。 【解決手段】Cu:0.5 〜5.0 wt%、Al:0.1 〜5.0 wt%
を含有したオーステナイト系ステンレス鋼とする。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、抗菌性を有すると
共にプレス成形性にも優れるオーステナイト系ステンレ
ス鋼に関するものである。最近、建材, 家電機器, 流し
台等の衛生器具用材料に、CuやAgを含有する抗菌性ステ
ンレス鋼と呼ばれるものが使われ脚光を浴びているが、
この種の鋼にもとめられている品質特性は、抗菌性を有
することの他にプレス成形性が良好なことが挙げられ
る。
【0002】
【従来の技術】建材, 家電機器や流し台等として用いら
れているオーステナイト系ステンレス鋼としては、Cuを
含有すると共に、その鋼の表面を熱処理により表層部に
Cu濃化させて抗菌性を付与したもの (特開平8− 60302
号公報、特開平5− 53738号公報、特開平8−104953号
公報) などが知られている。一方、この種のオーステナ
イト系ステンレス鋼においてそれのプレス成形性をよく
するためには、例えば、特公平1− 40102号公報に開示
されているように、AlとCuを複合添加する方法が既知で
ある。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】家電機器や流し台等に
用いられるオーステナイト系ステンレス鋼のように、プ
レス加工後に抗菌性を必要とする材料にあっては、単に
抗菌性を向上させるだけでは足りず、このとき (抗菌性
の付与時) に、プレス加工時の深絞り性や張り出し性を
劣化させないように合金設計をする工夫が必要である。
即ち本発明の目的は、抗菌性を有すると共に、プレス加
工時の深絞り性、張り出し性も優れる抗菌性オーステナ
イト系ステンレス鋼を提供することにある。さらに、本
発明の他の目的は、従来から知られているオーステナイ
ト系ステンレス鋼、なかでも特公平1− 40102号公報に
開示のステンレス鋼の深絞り性と張り出し性とを格段に
向上させたプレス成形用オーステナイト系ステンレス鋼
を提供することにある。したがって本願発明で提供され
る鋼は衛生器具用材料として最適である。
【0004】
【課題を解決するための手段】発明者らは、上掲の目的
を実現すべく、オーステナイト系ステンレス鋼につい
て、この鋼の表面に電解などの抗菌処理を施すことな
く、素材自身が十分に安定した抗菌特性を示し、かつプ
レス成形性を犠牲にしないでも済む条件について検討を
した。その結果、下記の要旨構成にかかるオーステナイ
ト系ステンレス鋼に想到した。そこで、本発明にかかる
オーステナイト系ステンレス鋼を開発するに当たって検
討した内容について、以下に説明する。
【0005】まず、発明者らは、オーステナイト系ステ
ンレス鋼の抗菌性については、AlとCuの複合添加が有効
であるとの知見を得て、このことを前提にして合金設計
を行った。しかし、単に抗菌作用だけに着目したとして
も、AlとCuを単に複合添加するだけではなお検討の余地
があり、成分組成によってはその効果に著しい差が出る
ことがわかった。
【0006】そこで本発明では、Al, Cu複合添加におけ
る、抗菌作用に関する「有効Al量」について検討し、し
かも、他の成分との関係についても検討を加えた。その
結果、ステンレス鋼の抗菌性に関する有効Al量を確保す
る上で重要なことは、Nとの関係であることがわかっ
た。即ち、発明者らの知見によれば、このAlとNとの関
係は、Al/N≧5、好ましくはAl/N≧10の条件を満た
すように合金設計することが、抗菌性有効Al量を確保す
る上で有効なことがわかった。
【0007】さらに、オーステナイト系ステンレス鋼の
プレス成形性を改善するために鋭意研究した結果、発明
者らは、オーステナイト系ステンレス鋼のプレス成形性
は、抗菌性と同じくAlとCuの複合添加が有効である他、
さらには適当なC量とNi当量の微妙なバランスをとるこ
とにより、互いに他方を犠牲にすることなく、抗菌性と
プレス成形性という2つの特性を同時に満足させ得るこ
とを突きとめた。さらに本発明のオーステナイト系ステ
ンレス鋼については、この鋼にMoを添加することにより
耐食性を向上させることができる他、Bを添加すること
により熱間加工性をも向上させ得ることがわかった。ま
た、本発明のオーステナイト系ステンレス鋼について
は、Nb, Ti, Zr, VおよびTa等を添加することにより、
溶接性を向上させることができる。本願発明において、
衛生器具とは、流し台、食器具類、飲食類等の貯蔵用器
具、医療用器具、トイレ、バス等のサニタリー器具、洗
濯機の槽、調理用器具等の抗菌性を必要とする器具類を
いう。
【0008】このような着想の下に構成した本発明の要
旨構成を以下に列挙する。 (1) 本発明は、Cu: 0.5〜 5.0wt%、Al: 0.1〜 5.0wt
%を含むことを特徴とする抗菌性とプレス成形性に優れ
るオーステナイト系ステンレス鋼である。
【0009】(2) 本発明は、C:0.20wt%以下、Si:
2.0wt%以下、Mn:10wt%以下、Ni: 4.0〜28wt%、C
r:12〜25wt%、Cu: 0.5〜 5.0wt%、Al: 0.1〜 5.0w
t%を含み、かつ下記Ni当量が20以上に調整され、 Ni当量(wt%)=12.6(C+N)+0.35Si+1.05Mn+Ni+0.
65Cr+ 0.6Cu− 0.4Al 残部鉄および不可避的不純物よりなる、抗菌性とプレス
成形性に優れるオーステナイト系ステンレス鋼である。
【0010】(3) 本発明はまた、C:0.20wt%以下、S
i: 2.0wt%以下、Mn:10wt%以下、Ni: 4.0〜28wt
%,Cr:15〜24wt%、Cu: 0.5〜 5.0wt%、Al: 0.1〜
5.0wt%、Mo: 8.0wt%以下を含み、かつ下記Ni当量が
20以上に調整され、 Ni当量(wt%)=12.6(C+N)+0.35Si+1.05Mn+Ni+0.
65Cr+0.98Mo+ 0.6Cu− 0.4Al 残部鉄および不可避的不純物よりなる、抗菌性とプレス
成形性に優れるオーステナイト系ステンレス鋼である。
【0011】(4) 上記(1) 〜(3) のいずれか1に記載の
ステンレス鋼は、N: 0.9wt%以下を含有することを特
徴とする抗菌性とプレス成形性に優れるオーステナイト
系ステンレス鋼である。
【0012】(5) 本発明はまた、C:0.01〜0.10wt%、
Si: 2.0wt%以下、Mn: 3.0wt%以下、Ni: 6.0〜12.0
wt%、Cr:15.0〜19.0wt%、Cu: 1.0〜 4.0wt%、Al:
0.2〜2.5wt%およびN:0.08wt%以下を含み、かつ下
記Ni当量が21.0〜22.5の範囲内に収まるように調整さ
れ、 Ni当量(wt%)= 12.6(C+N)+0.35Si+1.05Mn+Ni+0.
65Cr+ 0.6Cu− 0.4Al 残部鉄および不可避的不純物よりなる成分組成を有する
ことを特徴とする抗菌性とプレス成形性に優れるオース
テナイト系ステンレス鋼である。
【0013】(6) 本発明はまた、C:0.01〜0.10wt%、
Si: 2.0wt%以下、Mn: 3.0wt%以下、Ni: 6.0〜12.0
wt%、Cr:15.0〜19.0wt%、Mo: 8.0wt%以下、Cu:
1.0〜 4.0wt%、Al: 0.2〜 2.5wt%、およびN:0.08w
t%以下を含み、かつ下記Ni当量が21.0〜22.5の範囲内
に収まるように調整され、 Ni当量(wt%)= 12.6(C+N)+0.35Si+1.05Mn+Ni+0.
65Cr+0.98Mo+ 0.6Cu− 0.4Al 残部鉄および不可避的不純物よりなる成分組成を有する
ことを特徴とする抗菌性とプレス成形性に優れるオース
テナイト系ステンレス鋼である。
【0014】(7) また本発明においては、上記 (1)〜
(6)の各成分組成のものにさらに、B:0.020wt%以下を
含有させることにより、抗菌性の他、熱間加工性を向上
させることが望ましい。
【0015】(8) また本発明においては、上記 (1)〜
(7)の各成分組成のものにさらに、Nb,Ti, Zr, Vおよび
Taのなかから選ばれるいずれか1種または2種以上の溶
接性改善元素を 1.0wt%以下を含有せしめることが望ま
しい。
【0016】(9) また本発明においては、上記 (1)〜
(8)の各成分組成の鋼において、AlとNとは、Al/N≧
5の条件を満足するように含むことが望ましい。
【0017】(10)なお、本発明は、上記 (1)〜 (9)の各
成分組成の鋼において、上記のMn含有量を、 1.0超〜
3.0wt%の範囲内に調整することがより好ましい。ま
た、本発明は、上記(1) 〜(10)の各成分の鋼を衛生器具
用材料として用いることができる。
【0018】
【発明の実施の形態】上述したように本発明は、プレス
成形性の良好なオーステナイト系ステンレス鋼に抗菌性
を付与した点に特徴がある。この点、従来の抗菌性ステ
ンレス鋼は、マルテンサイト系ステンレス鋼に多く見ら
れる。これは、Cuの固溶限界の小さいマルテンサイト系
ステンレス鋼の場合、Cuの添加量が 0.3wt%を超える
と、Cuの一部が結晶中に固溶されず、鋼表面に偏析しや
すくなり、その結果として鋼表面のCu濃度が高くなるこ
とで、抗菌効果を示すものと理解されているからであ
る。即ち、ステンレス鋼表面のCu濃度が高くなり、最近
が繁殖し易い湿潤環境下では、ステンレス鋼表面にある
僅かな水分によっても極微量のCuがイオン化する。Cu
は、抗菌効果が高いことから、極微量であっても鋼表面
の近傍に存在する細菌細胞の呼吸や代謝酵素と効率よく
反応し、不活化する。その結果、細菌の繁殖を抑えて殺
菌するのである。この意味において、抗菌性ステンレス
鋼は、表面析出Cuの存在が顕著なマルテンサイト系のも
のが有効である。
【0019】これに対し、本発明のようなオーステナイ
ト系ステンレス鋼の場合、一般に、3.0wt%まで均一に
固溶する (ステンレス鋼便覧−昭和55年版第8刷 p356)
ことから、マルテンサイト系ステンレス鋼のような析出
Cuを利用することができず、抗菌性を付与するには不利
である。このことは、後述する表2に示す発明者らが行
った実験結果ともよく一致している。
【0020】そこで本発明では、オーステナイト地に固
溶したCuを抗菌性に作用させるべく種々の実験を行った
結果、Cu入りオーステナイト系ステンレス鋼中に多量の
Alを添加し、このAlとCuとの複合添加によるCuの抗菌作
用の活用を図ることおよびAlを添加することによりCr系
不働態皮膜を改質し、Cuの抗菌性を利用することが有効
であるとの知見を得た。しかも、このAl−Cuの複合添加
は、一方でプレス成形性をも改善するが、さらにAl−N
の制御も併せて行えば、本発明の作用効果は一層顕著な
ものになる。
【0021】次に、本発明にかかるオーステナイト系ス
テンレス鋼について、抗菌性とプレス成形性の両方の特
性を付与するために設計した各化学成分限定の理由につ
いて説明する。 C:0.20wt%以下、0.01〜 0.1wt% Cは、耐食性を劣化させる成分である。従って、0.20wt
%以下に限定する。さらに、深絞り性を確保するために
は、Cは、0.01〜0.10wt%に限定される。その理由は、
Cは、強力なオーステナイト生成元素であると同時に、
オーステナイト相および加工誘起マルテンサイト相の強
化に非常に有効であって、深絞り性および張り出し性の
向上には必須の成分であり、少なくとも0.01wt%、好ま
しくは0.03wt%以上が必要である。しかし、0.10wt%を
こえると、時期割れ感受性および粒界腐食感受性がとも
に高まるため、上限は0.10wt%、好ましくは0.08wt%と
する。ただし、深絞り性を必要としない用途では、この
CはC≦0.01wt%でもよい。
【0022】Si: 2.0wt%以下 Siは、有効な脱酸剤で製鋼工程には不可欠な成分である
が、 2.0wt%をこえると、時期割れが発生し易くなるた
め、 2.0wt%以下とする。好ましくは 1.0wt%以下であ
る。なお、下限は、製鋼作業時の脱酸を保障するため
に、0.05wt%以上とすることが好ましい。
【0023】Mn:10wt%以下 Mnは、脱酸並びに脱硫剤として作用する。しかし、10wt
%以上になると、脱酸効果が落ちるので10wt%を上限と
する。好ましくは、 8.0wt%以下、より好ましくは、
6.0wt%以下である。また、Mnは、オーステナイト相の
安定化に寄与する成分であり、 0.1wt%以上は有効であ
るが、3.0 wt%をこえると、オーステナイト相が安定に
なりすぎて深絞り性が劣化するため、深絞りを考慮する
場合は、 3.0wt%以下、好ましくは 1.0wt%超〜3.0 wt
%とする。
【0024】Ni: 4.0〜28.0wt% Niは、オーステナイト相の安定化のためには 4.0wt%必
要である。28wt%以上では、高温強度が高くなり、熱間
加工性が劣化する。好ましくは、 4.0〜16.0wt%であ
る。但し、深絞り性を考慮する場合は、 6.0〜12.0wt%
に限定する。その理由は、Niは、6.0 wt%より少ない
と、δフェライトが生成し熱間加工性が低下し、一方1
2.0wt%をこえると、プレス加工時にマルテンサイト相
が生成し難くなるため、6.0 〜12.0wt%の範囲とした。
好ましくは 6.0〜10.0wt%とする。
【0025】Cr:12.0〜19.0wt% Crは、12.0wt%より少ないと耐食性が不十分となり、一
方25.0wt%をこえるとδフェライトが生成し熱間加工性
が低下するため、12.0〜25.0wt%の範囲に限定する。好
ましくは13.0〜20.0wt%、より好ましくは15.0〜19.0wt
%である。
【0026】Cu: 0.5〜 5.0wt% Cuは、Alと共働してオーステナイト系ステンレス鋼の抗
菌性と深絞り性の両方に有効に作用する元素である。即
ち、その量が 0.5wt%未満では、これらの効果を得るこ
とが難しく、一方 5.0wt%をこえると、熱間加工性を阻
害するため、 0.5〜 5.0wt%の範囲に限定する。好まし
くは 1.0〜 4.0wt%、より好ましくは 1.5〜 3.0wt%の
範囲とする。
【0027】Mo: 8.0wt%以下 Moは、一般に、ステンレス鋼の耐食性を向上させる元素
として良く知られている。従って、本発明においては、
適正なMoを使うことによって耐食性の向上を図ることと
した。この耐食性の向上のためには、少なくとも0.03wt
%以上を添加することが有効である。しかし、 3.0wt%
をこえると、δフェライトが多量に生成して熱間加工性
および深絞り性が劣化するようになる。従って、Moは
8.0wt%以下に限定する。好ましくは、 5.0wt%以下、
より好ましくは 3.0wt%以下、さらに好ましくは0.03〜
3.0wt%、よりさらに好ましくは 0.1〜 1.0wt%の範囲
とする。
【0028】B: 0.020wt%以下 Bは、CuおよびAlを含有する鋼において、その熱間加工
性を向上するのに極めて有効な成分であり、0.0010wt%
未満では、その効果に乏しく、一方 0.020wt%をこえる
と、耐食性が劣化するため、 0.020以下、好ましくは0.
0010〜 0.020wt%の範囲に限定する。
【0029】Nb, Ti, Zr, V, Ta: 1.0wt%以下 これらの元素は、溶接性を改善するために有効な元素で
あり、その改善のために 1.0wt%以下添加する。より好
ましくは 0.2〜 1.0wt%の範囲が有効である。
【0030】次に、本発明においては、オーステナイト
組織にすると同時に深絞り性と張り出し性などのプレス
成形性を改善する手段として、下記式で示されるNi当量
を制御する。このNi当量は、加工誘起マルテンサイト変
態の起こりにくさという指標であり、このNi当量が高い
とオーステナイト相が安定になる。従って、オーステナ
イト組織を得るために20wt%以上にすることが必要であ
る。しかし、このNi当量が21.0wt%未満では、固溶化熱
処理の状態で既にマルテンサイト相が生成するようにな
り、深絞り性、張り出し性がともに劣化する。一方、こ
のNi当量が22.5wt%を超えると加工誘起マルテンサイト
の生成量が少なくなる。
【0031】図2は、このNi当量と成形高さ(mm)の関係
を示すものであるが、Ni当量が21.0〜22.5wt%の範囲内
で高い成形高さを示している。従って、このNi当量は、
21.0〜22.5wt%の範囲内とする。 Ni当量(wt%)= 12.6(C+N)+0.35Si+1.05Mn+Ni+0.
65Cr+0.98Mo+ 0.6Cu−0.4 Al 本発明における上記のNi当量式は、引張試験で30%の伸
びを付与した試験片のマルテンサイト量をフェライトス
コープにてその相対量を求め、オーステナイト安定度の
指標である平山のNi当量式にCuとAlの項を追加し、整理
した修正式である。なお、このNi当量は、組織を単にオ
ーステナイト地にするという要請に応えるためだけに制
御するとすれば、下限は20.0wt%としてもよい。
【0032】Al: 0.1〜 5.0wt% Alは、本発明において、Cuの抗菌性の作用を助勢する重
要元素である。従って、抗菌性を発揮させるためには、
0.1wt%以上必要である。好ましくは、 0.2wt%以上、
より好ましくは、 0.3wt%以上、さらに好ましくは、
0.4wt%以上、もしくは、 0.5wt%以上である。熱間加
工性を考慮し、 5.0wt%以下とする必要があり、好まし
くは 4.0wt%以下、より好ましくは 3.0wt%以下であ
る。また、このAlは、オーステナイト粒の微細化に有効
であるばかりでなく、Cuと共働して深絞り性と抗菌性の
向上に寄与する成分である。 0.2wt%より少ないと深絞
り特性の向上は認められず、さらに時期割れ感受性が高
まる。一方、 2.5wt%をこえると、δフェライトが生成
して熱間加工性および深絞り性が劣化するため、深絞り
性を考慮する場合は、 0.2〜 2.5wt%に限定する。な
お、深絞り性および耐時期割れ性がともに最も向上する
のは、Al: 0.5〜 1.0wt%の範囲である。
【0033】N: 0.9wt%以下 Nは、 0.9wt%以上では、熱間加工性を阻害するので、
0.9wt%以下とする。なお、好ましくは、 0.7wt%以
下、より好ましくは 0.5wt%以下であり、さらに0.3wt
%以下、 0.2wt%以下、 0.1wt%以下と順次低減するこ
とにより、熱間加工性は一層改善される。また、Nは、
オーステナイト生成元素であり、耐食性の向上に有効で
あるが、Alを含有する成分系では、Nが0.08wt%をこえ
ると耐時期割れ性および深絞り性が劣化するため、深絞
り性を考慮するときは、0.08wt%以下とする。好ましく
は、0.05wt%以下である。
【0034】本発明においては、上記のAlとCuとは所定
量を複合添加することが必須である。以下に、AlとCuを
複合添加することが必要な理由を、実験結果とともに説
明する。表1は、この試験に供試した材料の化学成分を
示す。また、表2は、抗菌試験を行った結果を示すもの
である。この表2に示すとおり、AlとCuを複合添加した
本発明鋼は、従来の SUS304 や3%Cu入りステンレスに
比べると、優れた抗菌性を有することがわかる。また、
Al: 0.1〜 5.0wt%、Cu: 0.5〜 5.0wt%を複合添加す
ることが必要な理由を図1に示す。なお、抗菌試験は、
次に示す条件で行った。
【0035】1.試験項目:抗菌試験 (フィルムカバー
法) 2.試験品 :表1に供試鋼の化学成分を示す。 3.試験菌 :スタフィロコッカス アウレウス (Stap
hylococcus aureus IFO 12732)エセリシア コリ (Esch
erichia coli IFO 3301) 4.試験菌は、トリプティケース ソイ アガー (BB
L)の寒天平板培地で35℃、18〜24時間培養し、発育集
落を1/500 濃度の普通ブイヨン培地 (栄研) に懸濁し
て約106CFU/mlになるように調整する。試験品5×5cm
に試験菌懸濁液 0.5mlを均一に接触させる。その上に試
験品と同じ大きさのポリエチレンフィルム(滅菌) を載
せ、湿度95%・温度27℃で24時間作用させる。所定の時
間作用後に、滅菌ブースで拭き取り、蒸留水10mlを加え
て付着菌を振り出す。振り出し液を原液として希釈液を
作製して、寒天培地との混平板とし、培養後の発生集落
数を測定する。滅菌シャーレを用いて同様に操作し、試
験対象とする。 5.試験結果 試験品に接触作用させた付着菌の菌数を測定する。
【0036】
【表1】
【0037】
【表2】
【0038】次に、本発明において上記Alは、さらにN
との関係において、以下に説明するように制御すること
が有効である。 Al/N≧5 (Al≧5N) Alは、Cuとの複合添加により抗菌性を発揮することは上
述したとおりである。しかも、このAlは、Nとの関係に
おいてこの両者の含有量を適当な比率に制御したときに
は抗菌性に対して有効に作用することがわかった。すな
わち、発明者らは、抗菌性に関する有効Al量についての
知見を得たのである。図3は、AlとNとの比に及ぼす抗
菌特性, 即ち、付着菌の数との関係を示すものである。
この図における、付着菌の数と抗菌特性との関係は表3
に示す基準による。
【0039】
【表3】
【0040】表3および図3に示すところから明らかな
ように、必要な抗菌性はAl/Nが5以上、より好ましく
は10以上、さらに好ましくは15以上、さらにより好まし
くは20以上もしくは30以上となることがわかった。この
ことは、合金中に固溶する有効Alをある程度確保するこ
とが必要になることを意味しており、できればAlN等を
形成させるような合金設計を極力避けることが、抗菌性
におけるAlとCuの複合添加の効果を発揮させる上で有効
な手段であることがわかる。
【0041】
【実施例】 実施例1 表4に示す成分組成のオーステナイト系ステンレス鋼を
溶製し、常法に従う方法にて熱間圧延と冷間圧延を行っ
て、1.0 mm厚の薄板に仕上げた。このようにして得られ
た板から、40mmφ平底ポンチによる円筒深絞り試験を行
った。なお、深絞り性は、限界絞り比(LDR)が2.20
以上か、それ未満かで優劣を評価した。また、抗菌性に
ついては、上述したと同じ方法で行い、その評価基準は
表3に示すものに従った。
【0042】
【表4】
【0043】図4は、Ni当量を22%一定としたCu, Al含
有鋼の限界絞り比 (LDR)とC量の関係を示す図であ
る。C量が0.03wt%以上でLDR≧2.20となり、さら
に、C量が0.05wt%を超えるとLDR=2.30と非常に高
いLDRを示した。しかしながら、C=0.13wt%では時
期割れが発生した。この図4から、LDR≧2.20を有す
る鋼を得るためには、C≧0.03wt%が必要であり、さら
に、より高いLDRを得るためには、Cは0.05超え0.10
wt%の範囲にすることが望ましいことがわかった。
【0044】その結果を表5に示すが、本発明に適合す
る成分組成の鋼(A〜H,L,M)を用いたものは、抗
菌性はもちろんのこと、深絞り性やプレス成形性に優れ
たものが得られている。これに対し、Ni当量外れの鋼
G,Hを用いたもの、Cu, Alの含有量が本発明の範囲を
外れたI,J,Kを用いたものは、いずれも深絞り性が
悪いという結果となった。また、Cの含有量が本発明の
範囲を外れたLを用いたものは、LDR≧2.20は時期割
れを発生した。
【0045】
【表5】
【0046】
【発明の効果】以上説明したように本発明によれば、オ
ーステナイト系ステンレス鋼のNi当量, AlとCuの複合添
加およびAl/N比の制御に加え、成分組成の細かいコン
トロールをしたことから、抗菌性とプレス成形性の両方
の特性に優れた建材, 家電機器, 流し台などとして有用
なオーステナイト系ステンレス鋼を提供することができ
る。
【図面の簡単な説明】
【図1】抗菌性に及ぼすAlとCuの関係を示すグラフ。
【図2】成形高さに及ぼすNi当量の影響を示すグラフ。
【図3】抗菌性に及ぼすNとAlとの関係を示すグラフ。
【図4】限界絞り比とCとの関係を示すグラフ。

Claims (9)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】Cu: 0.5〜 5.0wt%、Al: 0.1〜 5.0wt%
    を含むことを特徴とする抗菌性とプレス成形性に優れる
    オーステナイト系ステンレス鋼。
  2. 【請求項2】C:0.20wt%以下、 Si: 2.0wt%以下、 Mn:10wt%以下、 Ni: 4.0〜28wt%、 Cr:12〜25wt%、 Cu: 0.5〜 5.0wt%、 Al: 0.1〜 5.0wt% を含み、かつ下記Ni当量が20以上に調整され、Ni当量
    (wt%)=12.6(C+N)+0.35Si+1.05Mn+Ni+0.65Cr+
    0.6Cu− 0.4Al残部鉄および不可避的不純物よりなる、
    抗菌性とプレス成形性に優れるオーステナイト系ステン
    レス鋼。
  3. 【請求項3】C:0.20wt%以下、 Si: 2.0wt%以下、 Mn:10wt%以下、 Ni: 4.0〜28wt%、 Cr:15〜24wt%、 Cu: 0.5〜 5.0wt%、 Al: 0.1〜 5.0wt%、 Mo: 8.0wt%以下 を含み、かつ下記Ni当量が20以上に調整され、 Ni当量(wt%)=12.6(C+N)+0.35Si+1.05Mn+Ni+0.
    65Cr+0.98Mo+ 0.6Cu− 0.4Al 残部鉄および不可避的不純物よりなる、抗菌性とプレス
    成形性に優れるオーステナイト系ステンレス鋼。
  4. 【請求項4】請求項1〜3のいずれか1項に記載のステ
    ンレス鋼は、N: 0.9wt%以下を含有することを特徴と
    する抗菌性とプレス成形性に優れるオーステナイト系ス
    テンレス鋼。
  5. 【請求項5】C:0.01〜0.10wt%、 Si: 2.0wt%以下、 Mn: 3.0wt%以下、 Ni: 6.0〜12.0wt%、 Cr:15.0〜19.0wt%、 Cu: 1.0〜 4.0wt%、 Al: 0.2〜 2.5wt% およびN:0.08wt%以下 を含み、かつ下記Ni当量が21.0〜22.5の範囲内に収まる
    ように調整され、 Ni当量(wt%)= 12.6(C+N)+0.35Si+1.05Mn+Ni+0.
    65Cr+ 0.6Cu− 0.4Al 残部鉄および不可避的不純物よりなる成分組成を有する
    ことを特徴とする抗菌性とプレス成形性に優れるオース
    テナイト系ステンレス鋼。
  6. 【請求項6】C:0.01〜0.10wt%、 Si: 2.0wt%以下、 Mn: 3.0wt%以下、 Ni: 6.0〜12.0wt%、 Cr:15.0〜19.0wt%、 Mo: 8.0wt%以下、 Cu: 1.0〜 4.0wt%、 Al: 0.2〜 2.5wt%、 およびN:0.08wt%以下 を含み、かつ下記Ni当量が21.0〜22.5の範囲内に収まる
    ように調整され、 Ni当量(wt%)= 12.6(C+N)+0.35Si+1.05Mn+Ni+0.
    65Cr+0.98Mo+ 0.6Cu− 0.4Al 残部鉄および不可避的不純物よりなる成分組成を有する
    ことを特徴とする抗菌性とプレス成形性に優れるオース
    テナイト系ステンレス鋼。
  7. 【請求項7】請求項1〜6のいずれか1項に記載の成分
    組成の鋼にさらに、B: 0.020wt%以下を含有せしめた
    ことを特徴とする抗菌性とプレス成形性に優れるオース
    テナイト系ステンレス鋼。
  8. 【請求項8】請求項1〜7のいずれか1項に記載の成分
    組成の鋼にさらに、Nb, Ti, Zr, VおよびTaのなかから
    選ばれるいずれか1種または2種以上の溶接性改善元素
    を 1.0wt%以下含有せしめたことを特徴とする抗菌性と
    プレス成形性に優れるオースナイト系ステンレス鋼。
  9. 【請求項9】請求項1〜8のいずれか1項に記載の成分
    組成の鋼において、AlとNとは、Al/N≧5の条件を満
    足するように含むことを特徴とする抗菌性とプレス成形
    性に優れるオーステナイト系ステンレス鋼。
JP25633396A 1996-09-27 1996-09-27 抗菌性とプレス成形性に優れるオーステナイト系ステンレス鋼 Pending JPH10102210A (ja)

Priority Applications (6)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP25633396A JPH10102210A (ja) 1996-09-27 1996-09-27 抗菌性とプレス成形性に優れるオーステナイト系ステンレス鋼
PCT/JP1997/003439 WO1998013530A1 (fr) 1996-09-27 1997-09-26 Acier inoxydable austenitique antimicrobien et son procede de preparation
DE19781031T DE19781031T1 (de) 1996-09-27 1997-09-26 Austenitischer rostfreier Stahl mit antimikrobiellen Eigenschaften und Verfahren zu seiner Herstellung
KR1019980703896A KR19990071620A (ko) 1996-09-27 1997-09-26 항균성을갖는오스테나이트계스테인레스강및그제조방법
TW086114138A TW383340B (en) 1996-09-27 1997-09-27 Austenitic stainless steel having antimicrobial property
SE9801735A SE519722C2 (sv) 1996-09-27 1998-05-18 Austenitiskt rostfritt stål med antimikrobiella egenskaper och förfarande för dess framställning

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP25633396A JPH10102210A (ja) 1996-09-27 1996-09-27 抗菌性とプレス成形性に優れるオーステナイト系ステンレス鋼

Publications (1)

Publication Number Publication Date
JPH10102210A true JPH10102210A (ja) 1998-04-21

Family

ID=17291223

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP25633396A Pending JPH10102210A (ja) 1996-09-27 1996-09-27 抗菌性とプレス成形性に優れるオーステナイト系ステンレス鋼

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JPH10102210A (ja)

Cited By (2)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JPH10259457A (ja) * 1997-03-19 1998-09-29 Nisshin Steel Co Ltd Ag及びCuを含有するオーステナイト系抗菌ステンレス鋼
CN112831631A (zh) * 2020-12-23 2021-05-25 华北电力大学 一种具有双峰析出的430铁素体抗菌不锈钢及制备方法

Cited By (2)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JPH10259457A (ja) * 1997-03-19 1998-09-29 Nisshin Steel Co Ltd Ag及びCuを含有するオーステナイト系抗菌ステンレス鋼
CN112831631A (zh) * 2020-12-23 2021-05-25 华北电力大学 一种具有双峰析出的430铁素体抗菌不锈钢及制备方法

Similar Documents

Publication Publication Date Title
KR100313171B1 (ko) 향균성이향상된스테인레스강의사용방법
CN100580122C (zh) 一种马氏体抗菌不锈钢及其热处理方法
US6306341B1 (en) Stainless steel product having excellent antimicrobial activity and method for production thereof
JPH11264057A (ja) 抗菌性に優れたステンレス鋼材およびその製造方法
JP3223418B2 (ja) 抗菌性に優れたフェライト系ステンレス鋼及びその製造方法
JPH10102210A (ja) 抗菌性とプレス成形性に優れるオーステナイト系ステンレス鋼
CN110093566A (zh) 直饮水用耐蚀抗菌铁素体不锈钢及其制备方法
CN109207868A (zh) 一种超高抗菌性能的双相不锈钢及其制备方法
JP3219128B2 (ja) 抗菌性に優れた高強度マルテンサイト系ステンレス鋼
JP3227405B2 (ja) 抗菌性に優れたフェライト系ステンレス鋼
JPH11343540A (ja) 抗菌性に優れたマルテンサイト系ステンレス鋼
JP3224210B2 (ja) 抗菌性とプレス成形性に優れるオーステナイト系ステンレス鋼
CN100537820C (zh) 一种纳米析出相奥氏体抗菌不锈钢
JP3152631B2 (ja) 抗菌ステンレス鋼およびその製造方法
JP3706219B2 (ja) Ag及びCuを含有するオーステナイト系抗菌ステンレス鋼
JPH10237597A (ja) 抗菌性に優れた高強度高延性複相組織ステンレス鋼及びその製造方法
JPH08104953A (ja) 抗菌性を有するオーステナイト系ステンレス鋼
KR100328036B1 (ko) 페라이트계향균스테인레스강및그제조방법
CN100354447C (zh) 兼具耐蚀性和抗菌性的低镍奥氏体不锈钢
JP2000303152A (ja) 抗菌性に優れ、2次加工での穴拡げ加工性に優れたオーステナイト系ステンレス鋼およびその製造方法
JPH11350089A (ja) 抗菌性に優れ高加工性を具備したオーステナイト系ステンレス鋼およびその製造方法
JP4064554B2 (ja) 安価な抗菌性冷延鋼板
JPH09195016A (ja) 抗菌性に優れたマルテンサイト系ステンレス鋼及びその製造方法
JP3398620B2 (ja) 抗菌性に優れたステンレス鋼材およびその製造方法
CN108728773A (zh) 一种应用于化工生产的超高抗菌性能奥氏体不锈钢