JPH0994814A - 希土類永久磁石の湿式成形用原料供給装置 - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 【目的】 希土類永久磁石の湿式成形において精度良く
原料を供給する。 【構成】 希土類永久磁石用微粉を溶媒に分散させた原
料をダイの金型キャビティー内に供給する希土類永久磁
石の湿式成型用原料供給装置において、原料の定量供給
手段と、金型キャビィティーを形成するダイ上を摺動自
在に配置され、前記定量供給手段と連結された供給ヘッ
ドと、前記供給ヘッドを摺動させる摺動手段を有すると
共に前記供給ヘッドには原料供給ノズルを設け、前記原
料供給ノズルが金型キャビィティーの開口部中央位置に
ある時に定量供給手段により原料を供給し、供給が終了
したら前記原料供給ノズルが金型キャビィティーの開口
部からはずれる位置まで供給ヘッドを摺動させることを
特徴とするものである。

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【産業上の利用分野】本発明は、希土類永久磁石用微粉
を鉱物油等の溶媒に分散させた混合物を原料として金型
キャビテイー内に供給した後、加圧成形して成形体を形
成する希土類永久磁石の湿式成形用の原料供給装置に関
するものである。

【０００２】

【従来の技術】希土類永久磁石の成形方法のひとつとし
て、希土類永久磁石用微粉を鉱物油等の溶媒に分散させ
た混合物を原料として磁場中で加圧成形する、いわゆる
湿式成形が知られている。従来の湿式成形装置として
は、特開昭６０−７０１０１号公報、特開昭６２−１１
９９０５号公報等に種々示されているが、一般的には、
図２の様な構成となる。まず希土類永久磁石用微粉と溶
媒を混合し、原料とする。金型キャビティー５は、原料
の溶媒を吸引瀘過する瀘過フィルタ１９、瀘過フィルタ
１９との接触面に溶媒を排出するための脱液口１８を設
けた上パンチ１６、原料を注入充填するための注入口１
５を設けたダイ１、下パンチ４で構成し、金型キャビテ
ィー５の上下に配向磁場コイル１７を設ける。さらにダ
イ１の注入口１５には原料を圧送する原料供給装置２８
が逆流防止バルブ２３を有する配管１１を介して接続さ
れる。

【０００３】上記構成による成形動作は次の通りであ
る。ダイ１を必要な充填深さまで上昇し、瀘過フィルタ
１９付き上パンチ１６をダイ１上面まで下降、密着さ
せ、金型キャビティー５を形成し、配向磁場コイル１７
に通電することで得られる磁場を印加した状態で、原料
を原料供給装置２８を用いて注入口１５から金型キャビ
ティ５内に注入充填後、上パンチ１６をダイ１と共に下
降させ加圧成形する。この時、原料に含まれる溶媒は瀘
過フィルタ１９から脱液口１８を通り吸引装置２０によ
り回収される。次に、上パンチ１６を上昇、ダイ１を下
降させ成形体を取り出す。

【０００４】また、従来の原料供給装置２８の作動は以
下の通りである。逆流防止バルブ２３を閉じ逆圧防止バ
ルブ２４を開けた状態で原料補給ポンプ２２を用いて原
料タンク１４内の原料を加圧シリンダ２１に満たす。次
に逆圧防止バルブ２４を閉じ、逆流防止バルブ２３を開
くとともに油圧シリンダ２６とスペーサ２５を介して連
結される加圧シリンダ２１にプランジャ２７を圧入する
ことで原料は配管１１を通り金型キャビティー５に充填
される。

【０００５】金型キャビティー５内に圧送された原料に
含まれる溶媒は注入圧力によって瀘過フィルター１９を
透過して外部に排出される。充填が進行するに伴って脱
液された原料が抵抗となり脱液量は減少してゆく。やが
て注入圧力と脱液抵抗がバランスした時点で注入が完了
する。

【０００６】

【発明が解決しようとする課題】先に述べたように従来
の原料供給装置を使用した場合、原料供給量は注入圧力
と脱液抵抗のバランスにより決定される。しかしなが
ら、この方法では必然的に金型キャビティーの内部に原
料密度の差が生じる。瀘過フィルター近傍で最も密度が
高く、注入口付近で最も密度が低くなる。これは成形体
の均一性を疎害し、製品の変形や割れ、磁気特性分布の
不均一の原因となる。さらに従来の供給方法ではダイの
側面に注入口を設ける必要がある。注入口は加圧成形の
初期にダイが下降することで下パンチにより閉塞される
が、閉塞に至る過程で金型キャビティーから少量の原料
が注入口に逆流し、やはり製品の変形や割れの原因とな
っている。従って本発明は、注入圧力と脱液抵抗のバラ
ンスで決められた量の原料を加圧成形するのではなく、
開放状態の金型キャビティ内に予め所定量の原料を供給
した後、脱液、加圧成形しようとするもので、上パンチ
および瀘過フィルターをダイ上面に密着させない状態
で、原料をダイ開口部から金型キャビティ内に、精度良
く定量供給することが可能な希土類永久磁石の湿式成形
用原料供給装置を提供することを目的としている。

【０００７】

【課題を解決するための手段】本発明は、希土類永久磁
石用微粉を溶媒に分散させた原料とダイの金型キャビテ
ィー内に供給する希土類永久磁石の湿式成形用原料供給
装置において、原料の定量供給手段と、金型キャビィテ
ィーを形成するダイ上を摺動自在に配置され、前記定量
供給手段と連結された供給ヘッドと、前記供給ヘッドを
摺動させる摺動手段を有すると共に前記供給ヘッドには
原料供給ノズルを設け、前記原料供給ノズルが金型キャ
ビティーの開口部中央位置にある時に定量供給手段によ
り原料を供給し、供給が終了したら前記原料供給ノズル
が金型キャビィティーの開口部からはずれる位置まで供
給ヘッドを摺動させることを特徴とするものである。

【０００８】

【作用】図１に基づき本装置の作用について説明する。
先に述べた希土類永久磁石用微粉を溶剤に分散、混合し
たスラリー状の原料（以下スラリーと呼ぶ）を原料タン
ク１４に投入し容積式ポンプ１２で配管１１に送り出
す。ここで容積式ポンプ１２とは原動機の作動量に比例
する体積の流体を吐出するもので例えばネジポンプ、プ
ランジャポンプ、ベーンポンプ、ギヤポンプ等が挙げら
れる。ポンプ原動機は、通常の電動機、サーボモータ
ー、油圧モーター等種々の使用が可能であるが制御装置
１３によって作動量の制御ができることが必要である。
実際には種々のポンプ形式、原動機形式の組み合わせが
あるため原動機を含め、容積式ポンプ１２と記述する。
上記の容積式ポンプ１２、制御装置１３の組み合わせに
よって、容積式ポンプ１２の吐出口からは、所望の体積
の原料が精度良く送り出される。本発明が適用される希
土類永久磁石の湿式成形用原料はガス等の弾性体を含ま
ないため加圧による体積変化がない。また、配管１１に
は加圧による膨脹のないものを採用し、あらかじめ配管
１１内に上記原料を満たしておけば原料供給ノズル６か
らは、容積式ポンプ１２の吐出量と全く同じ体積の原料
が送り出される。この時の原料の吐出量は、金型キャビ
ティー５の容積と同一またはそれ以下とすることが望ま
しい。特に、金型キャビティー容積の５０から１００％
の供給量が好ましい。

【０００９】上記で述べたように、精度良く一定量送り
出すという方法ではなく、金型キャビティー５の容積を
超える量を供給して、金型キャビティー５自体を定量升
として作用させることも考えられる。しかし、供給ヘッ
ド１０に設けてあるノズル６からスラリーを送出した場
合、金型キャビティー５の角部にエア溜まりができるの
を避けられず、必ずしも金型キャビティ容積に等しい量
は入らない。特にスラリーの粘度が高い場合この傾向は
顕著となる。さらに金型キャビティー５から溢れ出たス
ラリーは周囲に飛散し作業環境を著しく悪化させる、と
いう問題もあり好ましい方法ではない。

【００１０】さらに、精度良く一定量送り出された原料
を金型キャビティー５内に供給するためには以下の条件
が必要となる。スラリーをノズル６からキャビティー５
に吐出す時、スラリーの粘度が高いとスラリーはノズル
６先端からヒモ状になって押し出される。このヒモ状の
スラリーが金型キャビティー５内に落下するかどうかで
供給量が変動する。このいわゆる「ボタ落ち」量を確実
に金型キャビティー内に落下させることが、供給精度向
上には欠かせない。本発明では、供給ヘッド１０を、ダ
イ１及びプレート３にまたがる摺動面２上で摺動させる
ことによってこの問題を解消した。ノズル６が摺動面２
上にあるときは、ノズル６は摺動面２によって閉塞され
る。位置決め装置９によってノズル６がダイ１の金型開
口部にあるときノズル６は解放される。さらにノズル６
先端にヒモ状のスラリーが生成されても、ノズル６が摺
動面２部分に移動する際金型開口部のエッジにて金型キ
ャビティー５内に掻き落とされる。

【００１１】

【実施例】本発明の実施例について、図１に基づいて説
明する。原料タンク１４には鉱物油と希土類永久磁石用
微粉を重量比で２５：７５の割合で混合、分散させた原
料（スラリー）が満たされる。容積式ポンプ１２として
はネジポンプ（兵神装備製、製品名モーノポンプ）を採
用した。ポンプ原動機はインバーターで制御される三相
誘導電動機と遊星減速機を組み合わせた。近年のインバ
ーターは起動トルクが大きくスリップが殆どないため電
動機運転時間をデジタルタイマーで設定することでポン
プ作動量を一定とする制御装置１３を製作した。供給ヘ
ッド１０と容積式ポンプ１２を接続する配管１１には圧
力による膨脹の小さい油圧用のフレキシブルホースを採
用した。供給ヘッド本体８はステンレスとして、配管１
１とノズル６を連結する貫通部をほぼ中央部に設け、そ
の穴径は１０ｍｍとした。摺動板７は摺動面２との密着
性（シール性）および耐摩耗性、移動時の摩擦抵抗を考
慮しナイロン樹脂に穴径５ｍｍのノズル６を設けたもの
とした。これを供給ヘッド本体８に結合して供給ヘッド
１０を構成した。位置決め装置９は片持のガイドシャフ
トとストッパー付のエアシリンダを組み合わせ、シリン
ダ前進端でノズル６がダイ１の開口部中央に位置するよ
うエアシリンダのストッパーを調整した。ダイ１の開口
部寸法は供給ヘッド１０の移動方向が５０ｍｍ，その直
交方向が２０ｍｍである。金型キャビティー５の深さを
６０ｍｍに調整したので金型キャビティー容積は６０ｃ
ｃである。摺動板７の寸法は移動方向が８０ｍｍ、その
直交方向を５０ｍｍとしてノズル６が開口部中央にある
とき開口部が露出しないようにした。容積式ポンプ１２
の容積効率を１００％とした理論吐出量が３０ｃｃとな
るようインバーター周波数を調整し、実際の吐出量が５
０ｃｃとなるよう制御装置１３のデジタルタイマー設定
値を調整した。

【００１２】以下に本装置の作動を説明する。まずダイ
１を上昇させ金型キャビティー５を形成し、位置決め装
置９のエアシリンダにより供給ヘッド１０をダイ１中央
部に移動させる。ノズル６が開口部中央に到達したとこ
ろで容積式ポンプ１２の運転を開始する。制御装置１３
のデジタルタイマーはポンプの運転と同時にスタートし
設定時間が経過するとポンプの運転を停止させる。ポン
プ停止と同時にエアシリンダを後退させることでノズル
６先端に付着したスラリーを金型キャビティー５内に掻
き落とすとともにノズル６を閉塞する。この時、供給ヘ
ッド１０は完全にダイ１上から離脱している。その後、
図１に示していないが脱液口と瀘過フィルターを備えた
上パンチが下降し、磁場中で加圧することによって成形
体を得る。加圧成形する際に印加する磁場の向きは、磁
場コイルを図２に示すように、金型での加圧方向と同軸
に配置する「縦磁場成形」と、磁場コイルを加圧方向と
直交する方向に配置する「横磁場成形」が知られている
が、本実施例では横磁場成形となるよう磁場コイルを配
置した。本発明はどちらの磁場方向にも対応可能であ
り、基本構造を変える必要はない。

【００１３】得られた成形体の重量は、供給したスラリ
ー重量よりも加圧成形時に脱液される溶媒の重量分だけ
減少するが、スラリーの供給精度を簡便に評価できるの
で成形体重量をもって評価した。従来おこなっていた圧
力バランスによる定量での成形体重量精度が±１．５か
ら２．０％であるのに対し、本実施例の成形体重量精度
は±１．０％と大幅に改善され、当然のことながら注入
口付近の微小な欠陥も全く観察されなかった。

【００１４】

【発明の効果】以上述べたように、本発明によれば希土
類永久磁石の湿式成形用原料を精度良く一定量金型キャ
ビティー内に供給することが可能となる。

【図面の簡単な説明】

【図１】本発明の希土類磁石の湿式成形用原料供給装置
の全体図

【図２】従来の希土類磁石の湿式成形装置の全体図

【符号の説明】 １ ダイ ２ 摺動面 ３ プレート ４ 下パンチ ５ 金型キャビティー ６ ノズル ７ 摺動板 ８ 供給ヘッド本体 １０ 供給ヘッド １２ 容積式ポンプ １４ 原料タンク １５ 注入口 １６ 上パンチ １８ 脱液口 １９ 瀘過フィルター ２０ 吸引装置 ２１ 加圧シリンダ ２２ 原料補給ポンプ ２６ 油圧シリンダ ２７ プランジャ

Claims (1)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】 希土類永久磁石用微粉を溶媒に分散させ
   た原料をダイの金型キャビティー内に供給する希土類永
   久磁石の湿式成形用原料供給装置において、 原料の定量供給手段と、金型キャビィティーを形成する
   ダイ上を摺動自在に、配置され、前記定量供給手段と連
   結された供給ヘッドと、前記供給ヘッドを摺動させる摺
   動手段を有すると共に前記供給ヘッドには原料供給ノズ
   ルを設け、 前記原料供給ノズルが金型キャビィティーの開口部中央
   位置にある時に定量供給手段により原料を供給し、供給
   が終了したら前記原料供給ノズルが金型キャビィティー
   の開口部からはずれる位置まで供給ヘッドを摺動させる
   ことを特徴とする湿式成形用原料供給装置。