JPH0987067A - 耐酸化性カーボン材料およびその製造方法 - Google Patents

耐酸化性カーボン材料およびその製造方法

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JPH0987067A
JPH0987067A JP7239869A JP23986995A JPH0987067A JP H0987067 A JPH0987067 A JP H0987067A JP 7239869 A JP7239869 A JP 7239869A JP 23986995 A JP23986995 A JP 23986995A JP H0987067 A JPH0987067 A JP H0987067A
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 500℃以上の高温酸化雰囲気において、酸
化することなく安定して使用できるようにする。 【解決手段】 気孔部を有するカーボン材料に、リチウ
ム化合物とリチウム以外のリン酸化合物との混合液を含
浸し、所定の温度で熱処理することにより、少なくとも
気孔部の表面に、リチウム化合物とリチウム以外のリン
酸化合物との混合化合物被膜を形成する。この混合化合
物被膜により、500℃以上の高温酸化雰囲気におい
て、酸化が生じることなく安定して使用することが可能
となる。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】この発明はカーボン材料に関
するものである。詳しくは、潤滑性、加工性等の特性を
犠牲にすることなく、耐酸化性を向上させたカーボン材
料およびその製造方法に関するものである。
【0002】
【従来技術およびその問題点】一般に、カーボン材料は
500℃以上の高温酸化雰囲気で酸化が生じる。このた
め、何の処理も施さない状態では長期間使用することが
できない。すなわち、カーボン材料は製造過程で多くの
気孔が生じる。この気孔は酸化反応における酸化剤・反
応生成物の移動経路となる。このため、500℃以上の
高温酸化雰囲気で内部の気孔表面に酸化消耗を生じる。
したがって、500℃以上の高温酸化雰囲気において安
定して使用するためには、各種の耐酸化性の処理を施し
たカーボン材料が必要となる。
【0003】耐酸化性の処理を施したカーボン材料とし
ては、気孔に各種の無機塩類を充填したもの、気孔の表
面に各種の無機塩類をコーティングしたもの、セラミッ
クスと炭素を原料段階で混合したもの等が知られてい
る。
【0004】これらは、一般的なカーボン材料に比較し
て耐酸化性の向上は認められる。しかし、カーボン材料
の有する潤滑性、加工性等の特性が犠牲となるため、用
途によっては不十分な場合がある。
【0005】一方、カーボン材料の有する潤滑性、加工
性等の特性を犠牲にせず、耐酸化性を向上させたカーボ
ン材料として、リン酸化合物を含浸させたものが知られ
ている。
【0006】このようなカーボン材料にあっては、潤滑
性等の特性を犠牲にすることなく耐酸化性を高めること
ができる。しかし、耐酸化性をより向上させるためには
繰り返し含浸して含浸深さを大きくする必要がある。ま
た、含浸後の熱処理時にカーボン材料表面への含浸物の
吹き出しがあるため、含浸深さを容易に大きくすること
ができない。
【0007】また、上記のようなリン酸化合物を含浸さ
せたカーボン材料の他に、ガラス質成分を含浸させたカ
ーボン材料や、前述したようなセラミックスと炭素を原
料段階で混合したカーボン材料等も知られている。
【0008】これらは、カーボン材料の表面や気孔部の
表面にB2 3 やSiO2 −B2 3 系の酸化防止被膜
を作り、カーボン材料の酸化を防止するようにしたもの
である。しかし、SiO2 −B2 3 系の酸化防止被膜
(ガラス膜)が壊れやすいため、ごく一部が損傷した場
合であっても酸化が急激に進行する。これは、B2 3
系ガラス被膜が約800℃以上においては再成するもの
の、500℃〜700℃ではガラス被膜が再成せず、十
分な耐酸化性が得られにくい問題点があるからである。
したがって、500℃以上の高温酸化雰囲気においては
十分な耐酸化性を得ることができない。
【0009】本発明は、上記のような従来のもののもつ
問題点を解決したものであって、500℃以上の高温雰
囲気において、十分な耐酸化性が得られるとともに、耐
酸化性の処理を簡単に施すことができる耐酸化性カーボ
ン材料およびその製造方法を提供することを目的とする
ものである。
【0010】
【問題点を解決するための手段】上記の問題点を解決す
るためにこの発明は、気孔部を有するカーボン材料の少
なくとも前記気孔部の表面に、リチウム化合物とリチウ
ム以外のリン酸化合物との混合化合物被膜を形成した手
段を採用したものである。また、気孔部を有するカーボ
ン材料に、リチウム化合物とリチウム以外のリン酸化合
物との混合液を含浸し、この後、所定の温度で熱処理す
ることにより、少なくとも前記気孔部の表面にリチウム
化合物とリチウム以外のリン酸化合物との混合化合物被
膜を形成する手段を採用したものである。
【0011】
【作用】この発明は上記のような手段を採用したことに
より、気孔部を有するカーボン材料に、リチウム化合物
とリチウム以外のリン酸化合物との混合液を含浸し、所
定の温度で熱処理することにより、少なくとも気孔部の
表面にリチウム化合物とリチウム以外のリン酸化合物と
の混合化合物被膜が形成されることになる。したがっ
て、500℃以上の高温酸化雰囲気においても酸化が生
じることがなく、安定して使用することができることに
なる。
【0012】
【発明の実施の形態】以下、本発明の実施の形態につい
て説明する。本発明は、気孔部を有するカーボン材料
に、リチウム化合物とリチウム以外のリン酸化合物を含
浸し、所定の温度で熱処理することにより、少なくとも
気孔部の表面にリチウム化合物とリチウム以外のリン酸
化合物との混合化合物被膜を形成したものであって、こ
の混合化合物被膜により耐酸化性を向上させるようにし
たものである。
【0013】リチウム化合物と共に含浸するリン酸化合
物としては、リン酸亜鉛、第一リン酸アルミニウムなど
の一般的なリン酸化合物でよい。また、このリチウム以
外のリン酸化合物の含浸液としては、リン酸亜鉛、第一
リン酸アルミニウムなどを主成分とする現在工業用とし
て広く用いられている含浸剤をそのまま使用することが
できる。
【0014】本発明を適用できるカーボン材料として
は、炭素質カーボン材料、黒鉛質カーボン材料等のカー
ボン全般にわたるものであり、目的に応じて、炭素質カ
ーボン材料、黒鉛質カーボン材料等の本来の特性を生か
したまま、それらに耐酸化性の処理を施すことが可能と
なるものである。
【0015】これらのカーボン材料は、天然黒鉛、人造
黒鉛、メソフェーズ、カーボンブラック等の骨材と、コ
ールタールピッチ、合成樹脂などの結合材を主成分と
し、混合、混練り、成型工程を経て1000℃〜300
0℃で焼成したものである。本発明は、これらのカーボ
ン材料の製造工程中や焼成後でも適用することができ
る。また、ハロゲンガス等を用いた高純度化処理後でも
適用することができる。含浸の効果はいずれの場合でも
得られる。
【0016】カーボン材料にリチウム化合物とリチウム
以外のリン酸化合物との混合液を含浸させるには以下の
ような方法による。
【0017】含浸液は、第一リン酸アルミニウム(Al
2 3 ・3P2 5 ・6H2 O)やリン酸亜鉛(Zn3
(PO4 2 )などの酸性水溶液を使用し、これらの濃
度や成分は用途に応じて任意に変えることができる。そ
して、これらを攪拌しながら水溶液にリチウム化合物を
少しずつ加え、所定の濃度の混合液を作り、これを含浸
液とする。
【0018】ここで、リチウム化合物は、リチウム以外
のリン酸化合物溶液に可溶なものであれば使用でき、そ
の化合物形態は問わない。リチウム化合物の添加量は、
僅か(たとえばリチウムとして0.1〜5wt%)であ
っても効果は十分に得られる。
【0019】そして、真空加圧が可能な容器を持つ含浸
装置を用い、含浸処理前のカーボン材料を含浸容器中に
入れ、十分に真空引きを行い、前述した含浸液を注入す
る(真空含浸)。この後、N2 ガス等を用いて加圧した
状態で一定時間保持する(加圧含浸)。そして、大気圧
に開放し、カーボン材料を取り出し、カーボン材料の表
面を洗浄・乾燥し、この後、600℃以上で熱処理を行
う。
【0020】このようにして、カーボン材料の表面およ
び気孔部の表面に、リチウム化合物とリチウム以外のリ
ン酸化合物の混合化合物被膜が形成されるものである。
【0021】リチウム化合物のカーボン材料への含浸、
配合による効果については未知の分野であり、本発明の
ように、他のリン酸化合物と共に含浸することにより、
カーボン材料の耐酸化性を飛躍的に向上させることは全
く知られていなかった。
【0022】本発明は、既存のカーボン材料にそのまま
適用できるから、カーボン材料の有する潤滑性等の特性
を犠牲とすることなく、耐酸化性の処理を施すことがで
きるものである。また、一般に使用されているリチウム
化合物を含まない含浸液では、熱処理により、カーボン
材料の表面に含浸物の吹き出しが多量に生じるが、本発
明のリチウム化合物とリチウム以外のリン酸化合物を含
浸したものは、熱処理による含浸物の吹き出しは微少で
あるため、繰り返し含浸することなく含浸深さを大きく
することができる。また、繰り返し含浸する際の吹き出
しに伴う除去作業を必要とすることもない。
【0023】本発明の耐酸化性カーボン材料は、耐酸化
性を必要とする各種用途に使用可能である。例えば、5
00℃以上の高温酸化雰囲気中で用いられる摺動材等に
用いることができ、このような高温酸化雰囲気中でも物
性が変化することなく安定して使用できるものである。
【0024】次に、本発明の実施の形態に基づく具体的
な実施例について説明する。 <実施例1>人造黒鉛(平均粒度10μm)50wt%
とコールタールピッチ45wt%及びフェノール樹脂5
wt%を均一に混合後、加圧ニーダーを用いて160℃
−60分間の混練りを行い、冷却後、自由ミルを用いて
100メッシュ以下に微粉砕を行い、成形粉を得た。
【0025】成型圧力1.3ton/cm2 −5分の条
件で金型プレス成形を行い、φ100×φ40×L50
mmの成形体を得た。このカーボンを2500℃まで熱
処理して、ショア硬度74、比重1.78、気孔率15
%の黒鉛化カーボン素材を得た。
【0026】このカーボン素材より10×5×40mm
のブロックを作り、含浸評価用の基材とした。また、こ
のカーボン素材より、φ23×φ29×10mmのリン
グを作り、摺動特性評価用の基材とした。
【0027】含浸は、真空・加圧状態に耐えられる容器
を具えた含浸装置で行う。含浸評価用及び摺動特性評価
用の基材を含浸容器中に入れ、0.1mmHgまで真空
引き後、第一リン酸アルミニウム38wt%水溶液10
00ccにリチウム化合物として、リン酸リチウム(L
3 PO4 )を3wt%添加した水溶液を注入した。
【0028】約20分間保持の後、N2 ガスを用いて9
kg/cm2 −60分間の加圧含浸を行った。終了後、
大気圧に戻し、試験片を取り出した。洗浄・乾燥後、N
2 ガス雰囲気炉で700℃−120分の熱処理を行っ
た。熱処理後の含浸物の吹き出しは微少であった。1回
含浸で得られた試験片の含浸率はいずれも5.1wt%
であった。
【0029】<実施例2>実施例1で用いたのと同様の
含浸評価用の基材を用いて、第一リン酸アルミニウム3
8wt%水溶液1000ccにリチウム化合物としてリ
ン酸リチウム(Li3 PO4 )を1wt%添加した水溶
液を実施例1の方法で真空・加圧含浸し、実施例1と同
様方法で熱処理して試験片を作った。実施例1と同様に
熱処理後の含浸物の吹き出しは微少であった。1回含浸
で得られた試験片の含浸率は5.0wt%であった。
【0030】<実施例3>実施例1で用いたのと同様の
含浸評価用の基材を用いて、リン酸亜鉛42wt%水溶
液1000ccにリチウム化合物としてリン酸リチウム
(Li3 PO4 )を3wt%添加した水溶液を作り、実
施例1の方法で真空加圧含浸を行った。洗浄・乾燥後、
2 ガス雰囲気炉で650℃−120分間の熱処理を行
った。熱処理後の含浸物の吹き出しは微少であった。1
回含浸で得られた試験片の含浸率は5.5wt%であっ
た。
【0031】<比較例1>実施例1で用いたのと同様の
含浸評価用及び摺動特性評価用の基材を用いて、第一リ
ン酸アルミニウム38wt%水溶液を実施例1の方法で
真空・加圧含浸を行った。その後、実施例1と同様方法
で熱処理して試験片を作った。熱処理により基材表面に
多量の含浸物の吹き出しを生じた。1回含浸で得られた
試験片の含浸率はいずれも2.6wt%であった。
【0032】<比較例2>比較例1で作った試験片と同
様方法で含浸評価用の試験片に第一リン酸アルミニウム
38wt%水溶液の含浸を3回繰り返し行い、含浸率
5.6wt%の試験片を得た。2回目以降の含浸では、
熱処理後カーボン表面に吹き出した含浸物の除去を行っ
ている。
【0033】<比較例3>実施例1で用いたのと同様の
含浸評価用の試験片を用いて、リン酸亜鉛42wt%水
溶液の含浸を実施例3と同様方法で熱処理して試験片を
作った。熱処理により基材表面に多量の含浸物の吹き出
しを生じた。1回含浸で得られた試験片の含浸率は2.
4wt%であった。
【0034】<比較例4>比較例3で作った試験片と同
様方法で含浸評価用の試験片にリン酸亜鉛42wt%水
溶液の含浸を3回繰り返し行い、含浸率5.5wt%の
試験片を得た。比較例2と同様に、2回目以降の含浸で
は、熱処理後カーボン表面に吹き出した含浸物の除去を
行っている。
【0035】<比較例5>リチウム化合物としてリン酸
リチウムのみを用い、実施例1で作ったのと同様の含浸
評価用の試験片を用いて、実施例1と同様方法で含浸評
価用の試験片にリン酸リチウム14wt%水溶液の含浸
を6回繰り返し行い、含浸率5.0wt%の試験片を得
た。熱処理後の含浸物の吹き出しは微少であった。
【0036】<評価試験(1)>各実施例及び比較例で
作製した含浸評価用の試験片について酸化減量試験を行
った。参考として、無含浸試験片についても同様の試験
を行った。試験は電気炉を用いて600℃−大気雰囲気
中に試験片を挿入し、40時間の保持の後、試験片を取
り出し、試験片の重量を測定し、重量減少率を算出し
た。
【0037】表1に各種試験片の重量減少率・含浸率・
硬度の変化の一覧表を示す。リン酸リチウムを配合した
リン酸化合物の含浸品は、リン酸化合物のみの含浸品な
らびにリン酸リチウムのみの含浸品に比べ重量減少率は
少なく、明らかなリチウム化合物配合の有効性が確認で
きた。さらに、試験前後のショア硬度の測定結果によ
り、実施例品では酸化による硬度の低下が確認されず、
物性的にも変化していないことが確認できた。
【0038】含浸後の熱処理において、リチウム化合物
を配合したものは、含浸物の吹き出しが微少である。ま
た、リチウム化合物を配合したものは、1回含浸で、従
来法3回含浸に相当する含浸率を得ることができた。そ
のため、本発明は、作業性及び経済的に有効であること
が確認できた。
【0039】
【表1】
【0040】<評価試験(2)>実施例1および比較例
1で作った摺動特性評価用の試験片を用いて摩擦摩耗試
験を行った。試験片はRing on Ringタイプ
を用い、相手材は炭化クロムコーティング材とした。試
験条件は500℃−大気雰囲気中、面圧0.6kgf/
cm2 、3時間とし、摩擦係数と比摩耗量を測定した。
【0041】表2に摺動試験結果を示す。従来より知ら
れている第一リン酸アルミニウム含浸品も比較的良好な
結果であるが、リチウム化合物としてリン酸リチウムを
第一リン酸アルミニウムに添加した含浸品は、摩擦係数
・比摩耗量のいずれにおいてもより優れた値を示した。
そのため、摺動特性においてもリン酸リチウム化合物と
リン酸リチウム以外のリン酸化合物を含浸したカーボン
材料は、高温酸化雰囲気における摺動特性向上に有効で
あることが確認できた。
【0042】
【表2】
【0043】
【発明の効果】この発明は前記のように構成したことに
より、カーボン材料の少なくとも気孔部の表面に、リチ
ウム化合物とリチウム以外のリン酸化合物との混合化合
物被膜を形成することができることになる。したがっ
て、500℃以上の高温酸化雰囲気においても、酸化が
生じることなく安定して使用することができることにな
る。
【0044】また、リチウム化合物とリチウム以外のリ
ン酸化合物との混合化合物被膜を気孔部の表面に形成す
るには、既存のカーボン材料に、リチウム化合物とリチ
ウム以外のリン酸化合物との混合液を含浸させ、所定の
温度で熱処理すれば足りることになる。この場合、繰り
返し含浸させなくても所望の含浸深さが得られるととも
に、熱処理時に含浸物が気孔の表面に吹き出すこともな
いので、気孔部の表面に混合化合物被膜を容易に形成す
ることができ、作業性、経済性に優れたものを提供する
ことができることになる等の優れた効果を奏するもので
ある。

Claims (2)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 気孔部を有するカーボン材料の少なくと
    も前記気孔部の表面に、リチウム化合物とリチウム以外
    のリン酸化合物との混合化合物被膜を形成したことを特
    徴とする耐酸化性カーボン材料。
  2. 【請求項2】 気孔部を有するカーボン材料に、リチウ
    ム化合物とリチウム以外のリン酸化合物との混合液を含
    浸し、この後、所定の温度で熱処理することにより、少
    なくとも前記気孔部の表面にリチウム化合物とリチウム
    以外のリン酸化合物との混合化合物被膜を形成すること
    を特徴とする耐酸化性カーボン材料の製造方法。
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