JPH0983037A - 自己バイアス型磁歪材料 - Google Patents

自己バイアス型磁歪材料

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JPH0983037A
JPH0983037A JP7235239A JP23523995A JPH0983037A JP H0983037 A JPH0983037 A JP H0983037A JP 7235239 A JP7235239 A JP 7235239A JP 23523995 A JP23523995 A JP 23523995A JP H0983037 A JPH0983037 A JP H0983037A
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 自己バイアス型磁歪材料においては、磁気バ
イアスを効率よく付与することを可能にした上で、磁歪
特性の劣化抑制、製造工程の簡素化および製造コストの
低減、さらには機械的信頼性の向上等を図ることが求め
られている。 【解決手段】 原子比で RFex (Rは希土類元素から選ば
れる少なくとも 1種の元素、 1.5≦ x≦2.5)を基本組成
として満足する磁歪合金1と永久磁石2とを交互に積層
配置して一体化してなる自己バイアス型磁歪材料3であ
る。磁歪合金1および永久磁石2の少なくとも一方を、
樹脂や金属系バインダを結合材として用いた粉末圧縮成
形体、または加熱圧縮成形体で構成する。あるいは、磁
歪合金と永久磁石とを加熱圧縮により接合する。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、磁気−機械変位変
換デバイス等の磁歪素子に好適な自己バイアス型磁歪材
料に関する。
【0002】
【従来の技術】磁性体に外部磁場を印加した際に、磁性
体が変形する磁歪を応用した装置としては、変位制御ア
クチュエータ、磁歪振動子、磁歪センサ、磁歪フィル
タ、超音波遅延線等が知られている。これら磁歪を利用
した装置には、従来、Ni基合金、Fe-Co合金、フェライ
ト系材料等の磁歪材料が主として用いられてきた。
【0003】ところで、近年の計測工学の進歩や精密機
械分野の発展に伴って、ミクロンオーダーの微小変位制
御に不可欠の変位駆動部の開発が必要とされており、こ
のような変位駆動部の一つとして、上述したような磁歪
合金を用いた磁気−機械変位変換デバイスが有力とされ
ている。しかし、上述した従来の磁歪材料では、変位の
絶対量が不十分であり、例えばミクロンオーダーの精密
変位制御駆動部材料としては絶対駆動変位量のみなら
ず、精密制御の点からも溝足し得るものではなかった。
【0004】一方、希土類−鉄系のラーベス型金属間化
合物で、飽和磁歪(λs )が1000×10-6を超えるものが
報告されている(特公昭61-33892号公報等参照)。この
ような超磁歪材料は、磁歪の異方性が大きく、より大き
な磁歪値を有する結晶方位に制御する必要があることか
ら、浮遊帯域溶解法(Floating Zone法)(特開昭 62-10
9946号公報、USP4,609,402号等参照)や改良型ブリッジ
マン法(特開昭 63-242442号、EP 282,059号等参照)を
適用して作製した超磁歪合金ロッドを、上述したような
磁気−機械変位変換デバイスをはじめとして、磁歪を利
用した各種装置に利用することが検討されている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、上述し
た超磁歪合金を使用した応用デバイスである磁歪振動子
等においては、周波数応答性を確保する必要があるのに
対して、超磁歪合金ロッド等を単に使用しただけでは渦
電流の影響により、変位応答性が低下してしまうという
欠点があった。また、磁歪特性の観点から正負の変位特
性を得ようとした場合、永久磁石等を磁歪材料の両端あ
るいは外周に配置し、磁気バイアスを印加する方法が取
られているが、このような構造では例えばアクチュエー
タとしての外形が大型になるという問題があった。
【0006】一方、磁歪材料に磁気バイアスを印加する
方法として、磁歪合金と永久磁石とを交互に積層する方
法(特開昭 62-292099号公報参照)も知られている。し
かし、上記公報に記載されている自己バイアス型の磁歪
材料は、磁歪合金と永久磁石とを磁界印加方向に樹脂系
接着剤を介して交互に積層したものであるため、渦電流
による変位応答性の低下は抑制できるものの、まず非磁
性材料である接着剤が磁気回路としての効率を低下させ
たり、あるいは磁歪を打消すように作用することから、
磁歪材料の特性を劣化させるというような問題を有して
いた。
【0007】また、それぞれを機械加工した後に積層構
造とすることから各材料の歩留りが悪く、高い加工精度
を必要とするために高価な磁歪材料となるというような
難点を有していた。さらに、磁界印加方向、すなわち磁
歪材料の変位方向に磁歪合金と永久磁石とを積層してい
るため、磁歪材料としての機械的信頼性が使用時間の経
過と共に低下しやすいという問題を有していた。
【0008】このように、従来の自己バイアス型磁歪材
料では、磁歪特性の劣化抑制、製造工程の簡素化および
製造コストの低減、さらには機械的信頼性の向上等が課
題とされていた。
【0009】本発明は、このような課題に対処するため
になされたもので、渦電流の影響を低減して周波数応答
性を向上させると同時に、磁歪特性の劣化を抑制すると
共に、製造工程の簡素化および製造コストの低減を図っ
た小型・高効率の自己バイアス型磁歪材料を提供するこ
とを目的としており、さらには渦電流の影響を低減して
周波数応答性を向上させると同時に、機械的信頼性の向
上を図った小型・高効率の自己バイアス型磁歪材料を提
供することを目的としている。
【0010】
【課題を解決するための手段】本発明における第1の自
己バイアス型磁歪材料は、請求項1に記載したように、
原子比で RFex (ただし、 Rは希土類元素から選ばれる
少なくとも 1種の元素を示し、 xは 1.5≦ x≦2.5 を満
足する数である。以下同じ)を基本組成として満足する
磁歪合金と永久磁石とを交互に積層配置して一体化して
なる自己バイアス型磁歪材料であって、前記磁歪合金お
よび永久磁石の少なくとも一方が粉末圧縮成形体である
あることを特徴としている。
【0011】第2の自己バイアス型磁歪材料は、請求項
2に記載したように、原子比で RFex を基本組成として
満足する磁歪合金と永久磁石とを交互に積層配置して一
体化してなる自己バイアス型磁歪材料であって、前記磁
歪合金と永久磁石とは加熱圧縮により接合されているこ
とを特徴としている。
【0012】第3の自己バイアス型磁歪材料は、請求項
3に記載したように、原子比で RFex を基本組成として
満足する磁歪合金と、前記磁歪合金の外周部または内周
部に積層一体化された永久磁石とを具備することを特徴
としている。
【0013】第4の自己バイアス型磁歪材料は、請求項
4に記載したように、原子比で RFex を基本組成として
満足する磁歪合金と永久磁石とを、磁界印加方向に対し
て略平行に交互に積層配置して一体化してなることを特
徴としている。
【0014】本発明に用いられる磁歪合金は、原子比で
RFex を基本組成として満足するものである。 R元素
(希土類元素)としては、La、Ce、Pr、Nd、Pm、Sm、E
u、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、Lu等が用いられ、こ
れらから選ばれる 1種以上の元素の組合せとしては、P
r、Nd、Sm、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、 Tb-Dy、 Tb-Ho、 Tb
-Pr、 Sm-Yb、Tb-Dy-Ho、Tb-Dy-Pr、Tb-Pr-Ho等が好ま
しく適用される。
【0015】上記 R元素以外の磁歪合金の構成元素は主
としてFeであり、 R元素とFeとの比(x値)は原子比で
1.5〜 2.5の範囲とする。 x値が 1.5末満であったり、
また2.5を超えると、いずれにおいても磁歪特性の低下
を招く。 x値のより好ましい範囲は 1.7≦ x≦ 2.0であ
る。
【0016】なお、Feの−部はCoで置換することも可能
であるが、あまり置換量が多いと磁歪特性の低下を招く
ため、CoによるFeの置換量は 95at%以下とする。また、
必要に応じてFeの一部を、さらにMnで置換してもよい。
R-Fe系の超磁歪合金は、Mnを含有させることによって、
希土類原子の磁気異方性が変化し、特に低磁界において
優れた磁歪特性が得られるようになる。MnによるFeの置
換量の上限は 50at%であり、この上限値を超えるとキュ
リー温度が低下し、磁歪特性が劣化する。さらに好まし
くはR(Fe1-a Mna x と表したとき、a=0.01〜 0.3であ
る。FeはCoやMnの他に、材料強度、耐食性、飽和磁歪等
の向上を目的として、Ni、Mg、Al、Ga、Zn、 V、Zr、H
f、Ti、Nb、Cu、Ag、Sn、Mo、Si、 B等でさらに置換し
てもよいが、これら置換元素の量はMnによる置換量も含
めて、Feの 50at%程度までとする。これを超えると磁歪
量の低下等の特性劣化の要因となる。
【0017】一方、本発明で用いられる永久磁石として
は、フェライト磁石、 Sm-Co系磁石、 Nd-Fe-B系磁石等
が例示され、各種の永久磁石を使用することができる。
少量の粉末で大きな磁気バイアスを印加させるために
は、 Sm-Co系磁石、 Nd-Fe-B系磁石等を使用することが
好ましい。
【0018】本発明の第1および第2の自己バイアス型
磁歪材料においては、上述したような磁歪合金と永久磁
石とを交互に積層配置して一体化しているため、磁歪合
金に対して磁気バイアスを効率よく付与することができ
ると共に、渦電流の影響を低減して周波数応答性を向上
させることが可能となる。そして、第1の自己バイアス
型磁歪材料においては、磁歪合金および永久磁石の少な
くとも一方を粉末圧縮成形により形成しているため、製
造工程の簡素化を図ることができると共に、機械加工に
伴う歩留りの低下等を回避することができ、その結果と
して製造コストの低減を図ることが可能となる。
【0019】ここで、本発明で用いられる圧縮成形法と
しては、結合材を用いた粉体の圧縮成形、もしくは粉体
の加熱圧縮成形等が挙げられる。すなわち、本発明にお
ける粉末圧縮成形体としては、磁歪合金粉末や永久磁石
粉末に結合材を加えて圧縮成形したもの、あるいは磁歪
合金粉末や永久磁石粉末にホットプレス等の加熱圧縮成
形を施したもの等が挙げられる。結合材を含む圧縮成形
体は結合材の種類に応じた熱処理によって、熱硬化もし
くは溶融固化される。
【0020】また、第2の自己バイアス型磁歪材料にお
いては、磁歪合金と永久磁石との間に、樹脂接着剤のよ
うな非磁性材料が介在されないため、磁気回路としての
効率を低下させたり、あるいは磁歪特性を劣化させるよ
うなことがない。
【0021】本発明の第3の自己バイアス型磁歪材料に
おいては、磁歪合金の外周部または内周部に永久磁石を
配置して一体化しているため、磁気バイアスを効率よく
付与することができ、制御性のよい変位応答性を得るこ
とができる。また、磁界印加方向に対して略平行に永久
磁石が配置されるため、自己バイアス磁界を良好に付与
した上で、磁歪合金への磁界印加効率が高まり、大きな
変位量を得ることができると共に、磁歪合金の変位方向
に介在物が存在しないために、磁歪材料の機械的信頼性
を大幅に高めることが可能となる。
【0022】また、第4の自己バイアス型磁歪材料にお
いては、磁歪合金と永久磁石とを磁界印加方向に対して
略平行に交合に積層配置して一体化しているため、磁気
バイアスを効率よく付与することができると共に、渦電
流の影響を低減して周波数応答性を向上させることが可
能となる。さらに、磁歪合金への磁界印加効率が高ま
り、大きな変位量を得ることができると共に、磁歪合金
の変位方向に介在物が存在しないために、磁歪材料の機
械的信頼性を大幅に高めることが可能となる。
【0023】
【発明の実施の形態】以下、本発明を実施するための形
態について説明する。
【0024】本発明の第1の自己バイアス型磁歪材料
は、磁歪合金と永久磁石とを交互に積層配置して一体化
する際に、これらの少なくとも一方を粉末圧縮成形体で
構成したものである。図1は、第1の自己バイアス型磁
歪材料の一実施形態を示す図である。同図に示すよう
に、磁歪合金層1と永久磁石層2とは交合に積層配置さ
れており、これらが一体化されて自己バイアス型磁歪材
料3が構成されている。
【0025】上述した磁歪合金層1および永久磁石層2
はいずれも粉末圧縮成形体であり、磁歪合金粉末および
永久磁石粉末にそれぞれ結合材を添加し、これらを交互
に積層配置した後に圧縮成形、必要に応じて加熱しなが
ら圧縮成形することによって、磁歪合金層1と永久磁石
層2とが一体化されている。
【0026】ここで、磁歪合金層1を主として構成する
磁歪合金粉末は、前述した原子比でRFex を基本満足と
して組成磁歪合金の粉末であり、磁歪合金の組成につい
ては前述した通りである。このような磁歪合金粉末は例
えば、まず R元素およびFeを所定量調合し、さらに必要
に応じてCo、Mn等を加え、高周波誘導溶解炉等により溶
解、鋳造する。得られたインゴットにAr等の不活性ガス
雰囲気中または真空中にて、 1073K〜融点未満の温度で
0.1〜 500時間程度の熱処理を施す。この熱処理は磁歪
合金の均質化を図るためのものであり、以下に示す粉砕
後に施してもよし、インゴットおよび粉末それぞれに施
してもよい。次に、合金インゴットをスタンプミル、デ
ィスクミル等の粉砕機を使用して、粒径 1〜 800μm 程
度に粉砕し、また必要に応じて分級して、所望の磁歪合
金粉末を得る。この粉砕工程は、Arガス等の不活性ガス
雰囲気中で行うことによって、粉末の酸化を防止するこ
とができる。
【0027】磁歪合金粉末の粒径が 1μm 未満である
と、粉末全体としての表面積が大きくなりすぎて、酸化
により磁歪特性を劣化させるおそれがある。一方、 800
μm を超えると、機械特性が劣化したり、成形時の形状
の任意性が低下する等のおそれがある。さらに、粉末成
形時の充填率を高めるために、平均粒径が50〜 300μm
の磁歪合金粉末を用いることが好ましい。磁歪合金粉末
の平均粒径が50μm 未満では圧縮成形時に高圧力が必要
となり、一方 300μm を超えると磁歪合金粉末の成形時
の配向度が低下しやすいためである。
【0028】なお、磁歪合金粉末の作製方法としては、
上述したような機械的な粉砕方法以外に、非晶質合金の
作製で用いられる単ロール法、双ロール法、ガスアトマ
イズ法等を適用することも可能である。
【0029】一方、永久磁石層2を主として構成する永
久磁石粉末は、前述したようなフェライト磁石、 Sm-Co
系磁石、 Nd-Fe-B系磁石等の粉末であり、特に Sm-Co系
磁石粉末、 Nd-Fe-B系磁石粉末を用いることが好まし
い。このような永久磁石粉末も磁歪合金粉末と同様に、
永久磁石を粉砕、分級して作製する。永久磁石粉末の粒
径および平均粒径は、磁歪合金粉末と同程度とすること
が同様な理由から好ましい。
【0030】なお、上述した磁歪合金粉末および永久磁
石粉末の製造方法や粒径等は、以下に示す全ての実施形
態に共通するものである。
【0031】そして、上述したような磁歪合金粉末およ
び永久磁石粉末それぞれに結合材を添加する。ここで、
結合材としては樹脂や金属系バインダを用いることがで
きる。結合材としての樹脂には、エポキシ樹脂等の熱硬
化性樹脂が好ましく用いられる。また、金属系バインダ
としては、磁歪合金および永久磁石のそれぞれの融点よ
り低い融点を有する金属材料を用いることができ、およ
そ 1273K以下の融点を有する金属あるいは合金が使用さ
れる。このような金属材料としては、Al、Pb、Sn、Zn、
Mg、Bi、Sb等の金属や、銀ろう、銅ろう、はんだ等の合
金が例示される。このとき、磁歪合金や永久磁石と固溶
してそれぞれの特性を劣化させない組合せを選択するこ
とが好ましい。
【0032】磁歪合金粉末や永久磁石粉末に添加する結
合材として樹脂を用いた場合には、その添加量は各粉末
に対して 0.5〜20重量% の範囲とすることが好ましい。
樹脂の添加量が 0.5重量% 未満では、成形体としての結
合力や機械的強度を十分に高めることができないおそれ
がある。一方、20重量% を超えると磁歪特性や磁石特性
の劣化が大きくなり、変位特性および磁気バイアス量共
に不十分となるおそれがある。樹脂の添加量は 1〜10重
量% の範囲とすることがさらに好ましい。
【0033】また、結合材として金属系バインダを用い
る場合には、用途や成形法によっても異なるが、磁歪合
金粉末や永久磁石粉末に対しておよそ 3〜30重量% の範
囲で添加することが好ましい。金属系バインダの添加量
が 3重量% 未満であると、成形体としての結合力や機械
的強度を十分に高めることができないおそれがあり、一
方30重量% を超えると磁歪特性や磁石特性の劣化が大き
くなり、変位特性および磁気バイアス量共に不十分とな
るおそれがある。
【0034】そして、上述した結合材を添加した磁歪合
金粉末と永久磁石粉末とを、所望の型内に交互に積層配
置し、圧縮成形して一体化することによって、自己バイ
アス型磁歪材料3を作製する。圧縮成形は、磁歪合金粉
末および永久磁石粉末の配向性を高めるために磁場中で
行うことが好ましく、このような磁場中圧縮成形で磁気
的な異方性を付与することができる。印加磁場の強さは
800kA/m以上とすることが好ましく、さらに好ましくは
1000kA/m以上である。さらに、配向性の観点から、圧縮
成形を開始する際に、一旦振動磁場を印加した後に一定
状態として磁場を印加してもよい。また、圧縮成形は、
上記したように磁歪合金粉末および永久磁石粉末を直接
型内に充填して成形する方法以外に、予め磁歪合金粉末
や永久磁石粉末の仮成形体、あるいは両者の積層構造の
仮成形体を作製しておき、これらの仮成形体を型内に交
互に積層配置して圧縮成形を行ってもよい。この際の仮
成形は、前述した圧縮成形と同様に、磁場中で行うこと
が好ましい。
【0035】自己バイアス型磁歪材料3の一体化は、上
述した圧縮成形のみによって行ってもよいが、必要に応
じて熱処理を施して一体化を促進する。例えば、結合材
としてエポキシ樹脂等の熱硬化性樹脂を用いた場合に
は、圧縮成形後に熱硬化処理を施して一体化を促進する
ことが好ましい。また、金属系バインダを使用した場合
には、用いた金属系バインダの融点近傍の温度に加熱し
ながら圧縮成形を行うことによって、自己バイアス型磁
歪材料3の一体化を促進することができる。
【0036】磁歪合金層1および永久磁石層2の層数等
は、自己バイアス型磁歪材料3を適用するアクチュエー
タ等の仕様に合せて適宜設定され、磁気バイアス量と発
生変位量との関係等からより最適な組合せを選択すれば
よい。例えば、図2に示すように、永久磁石層2の層数
を磁歪合金層1より多く設定し、永久磁石の重量比率を
大きくすることによって、磁気バイアス量が大きく、か
つ変位量を小さい自己バイアス型磁歪材料3が得られ
る。
【0037】また、磁気バイアス量は、用いる永久磁石
の磁石特性および永久磁石粉末と結合材との混合比や積
層数、さらには磁歪合金粉末との重量比等によって設定
する。永久磁石層2の層数は、自己バイアス型磁歪材料
3の長さが長くなるほど増やすことが好ましい。また、
重量比は磁歪合金粉末重量に対して永久磁石粉末重量が
5〜50重量% の範囲となるようにすることが好ましい。
永久磁石粉末の重量比が 5重量% 未満では、十分な磁気
バイアス量が得られないおそれがあり、また50重量% を
超えると磁歪特性の劣化を招くおそれがある。永久磁石
粉末の重量比は10〜30重量% の範囲とすることがさらに
好ましい。
【0038】永久磁石層2の形状は、図1に示したよう
に単純な層状でもよいが、例えば図3に示すように、外
周部側が厚くなるような形状としてよい。このような形
状の永久磁石層2を採用することによって、磁歪合金層
1に対して有効でかつ均一な磁気バイアスを印加するこ
とができる。これは、永久磁石層2からの発生磁束が外
周部で漏れる量が多くなるため、外周部を厚くしてこれ
を補うことで、均一な磁界が得られるためである。
【0039】上述したような自己バイアス型磁歪材料
3、すなわち磁歪合金粉末と永久磁石粉末とを結合材を
用いた圧縮成形により一体化した自己バイアス型磁歪材
料3においては、磁歪合金層1と永久磁石層2とが交互
に積層配置されているため、磁歪合金層1に対して永久
磁石層2から磁気バイアスを効率よく付与することがで
きると共に、渦電流の影響を低減して周波数応答性を向
上させることが可能となる。すなわち、低周波数領域か
ら高周波数領域までの広い範囲での変位応答性に優れた
自己バイアス型磁歪材料3が得られる。
【0040】RFex を基本組成として満足する磁歪合金
中には、基本的に主相である RFe2相と R相とが存在す
る(マイナー相として RFe3 相等が存在する場合もあ
る)が、両相共に導電体であり、数 kHz以上の周波数で
例えば振動子として使用した場合、渦電流の影響により
変位応答性が低下してしまう。これに対して、渦電流損
は比表面積に依存するため、磁歪合金層1と永久磁石層
2とを交互に積層配置することによって、渦電流の影響
を低減することが可能となる。さらに、結合材として樹
脂を用いることで、磁歪合金層1の電気抵抗が樹脂量に
応じて増加するため、渦電流の影響をより一層低減する
ことができ、周波数応答性のさらなる向上を図ることが
可能となる。
【0041】そして、磁歪合金層1および永久磁石層2
を粉末圧縮成形により形成することによって、製造工程
の簡素化を図ることができると共に、機械加工に伴う歩
留りの低下等を回避することができるため、製造コスト
の低減を図ることが可能となる。さらに、樹脂や金属系
バインダ等の結合材を用いて、脆性材料である磁歪合金
を結合一体化しているため、割れ、欠け等の発生を抑制
することが可能となり、これによって自己バイアス型磁
歪材料3の機械的信頼性を著しく向上させることが可能
となる。
【0042】また、樹脂や金属系バインダ等の結合材の
添加量によって、自己バイアス型磁歪材料3のヤング率
Eを調整することができ、さらに積層する際の厚さによ
つてもヤング率Eを可変とすることができる。−般に、
棒の縦振動を考えた場合、固有振動数ωはω=(k/
M)1/2 (kはバネ定数、Mは質量)で表される。ま
た、バネ定数kはk=A×E/L(Aは断面積、Lは長
さ)であるため、断面積Aや長さLに対してヤング率E
を小さくすることで、固有振動数ωが小さくなることか
ら、磁歪材料の形状を変えることなく機械共振を低域に
シフトさせることができる。これは、自己バイアス型磁
歪材料3を振動素子等として用いた場合、機械系の共振
周波数を任意に可変させることに繋がるため、応用上周
波数の制限を受けないことから自由度の高い素子設計が
可能となる。
【0043】次に、本発明の第1の自己バイアス型磁歪
材料の他の実施形態について、図4、図5および図6を
参照して説明する。
【0044】図4は、第1の自己バイアス型磁歪材料の
他の実施形態を示す図であり、同図に示す磁歪合金層4
と永久磁石層5は、それぞれ磁歪合金粉末および永久磁
石粉末の加熱圧縮成形体からなるものであり、前述した
実施形態と同様に磁歪合金層4と永久磁石層5とが交互
に積層配置されて一体化されている。なお、各層の形状
や積層数、永久磁石層5の比率等の条件は、前述した実
施形態と同様とすることが好ましい。
【0045】加熱圧縮成形は、ホットプレスに代表され
る成形方法であり、所望の型内に磁歪合金粉末と永久磁
石粉末とを交互に積層配置し、加熱と圧縮とを同時に加
えることで一体化することができる。磁歪合金粉末およ
び永久磁石粉末はいずれも焼結反応によって一体化さ
れ、加熱圧縮成形による自己バイアス型磁歪材料6が得
られる。磁歪合金粉末および永久磁石粉末としては、前
述した実施形態と同様なものを用いることが好ましい。
【0046】上述した加熱圧縮成形は、例えば100MPa以
上の圧縮力を加えつつ、 873〜1473K の温度範囲で加熱
することによって実施することが好ましい。加熱温度が
873K未満であると、高密度化が困難となって変位量の低
下等を招くおそれがあり、一方 1473Kを超えると成形体
の機械的特性が劣化するおそれがある。また、上記加熱
圧縮成形は、酸化による特性劣化を防ぐために、不活性
雰囲気中で行うことが好ましい。なお、このような加熱
圧縮成形において、HIP等を適用することも可能であ
る。さらに、上記加熱圧縮成形の際に磁場を印加するこ
とによって、磁気的な異方性を付与することができ、磁
歪特性および磁気特性の向上が図れる。この加熱圧縮成
形による自己バイアス型磁歪材料6においては、前述し
た結合材を用いた圧縮成形体からなる自己バイアス型磁
歪材料3と同様に、磁歪合金層4と永久磁石層5とが交
互に積層配置されているため、磁歪合金層4に磁気バイ
アスを効率よく付与することができると共に、渦電流の
影響を低減して周波数応答性を向上させることができ、
さらに製造工程の簡素化、製造コストの低減を図ること
が可能となる。また、磁歪合金層4が磁歪材料のみで構
成されているため、より大きな変位量を得ることができ
る。ただし、周波数応答性に関しては、前述した樹脂を
結合材として用いたものより多少劣るものである。
【0047】上述した各実施形態では、磁歪合金層およ
び永久磁石層それぞれを粉末圧縮成形体とした例につい
て説明したが、例えば図5に示すように、磁歪合金層を
バルク状の磁歪合金板7で構成し、これら磁歪合金板7
間にそれぞれ永久磁石粉末の圧縮成形体層8を介在させ
ると共に、これら永久磁石粉末の圧縮成形体層8で全体
を一体化した自己バイアス型磁歪材料9とすることもで
きる。あるいは、図6に示すように、永久磁石層をバル
ク状の永久磁石板10で構成し、これら永久磁石板10
を介して磁歪合金粉末の圧縮成形体層11を配置すると
共に、これら磁歪合金粉末の圧縮成形体層11で全体を
一体化した自己バイアス型磁歪材料12とすることもで
きる。
【0048】上記自己バイアス型磁歪材料9に用いるバ
ルク状の磁歪合金板7には、例えば熱流制御鋳造法や一
方向凝固溶解法を適用して結晶性を揃えた材料を使用す
ることが好ましい。また、磁歪合金板7の均質化を図る
ために、Ar等の不活性ガス雰囲気中または真空中にて、
1073K〜融点未満の温度で 0.1〜 500時間程度の熱処理
を施すことが好ましい。
【0049】これら自己バイアス型磁歪材料9、12に
おける永久磁石粉末の圧縮成形体層8や磁歪合金粉末の
圧縮成形体層11は、前述した各実施形態と同様に形成
することができる。すなわち、結合材を用いた圧縮成形
やホットプレス等の加熱圧縮成形を適用することがで
き、これら各層8、11の圧縮成形による形成と同時
に、磁歪合金板7や永久磁石板10と一体化され、磁歪
合金板7と永久磁石粉末の圧縮成形体層8、あるいは磁
歪合金粉末の圧縮成形体層11と永久磁石板10とが交
互に積層配置されると共に、全体として一体化された自
己バイアス型磁歪材料9、12が得られる。
【0050】なお、各層の形状や積層数、永久磁石層の
比率等の条件、あるいは用いる磁歪合金粉末や永久磁石
粉末の製造方法や粒径、圧縮成形条件等は、前述した実
施形態と同様とすることが好ましい。
【0051】これらの自己バイアス型磁歪材料9、12
においては、前述した全体を圧縮成形体で構成した自己
バイアス型磁歪材料3、6と同様に、磁歪合金層と永久
磁石層とが交互に積層配置されているため、磁歪合金層
に磁気バイアスを効率よく付与することができると共
に、渦電流の影響を低減して周波数応答性を向上させる
ことができ、さらに一方を粉末の圧縮成形で形成してい
るため、製造工程の簡素化や製造コストの低減を図るこ
とが可能となる。また、磁歪合金層をバルク状の磁歪合
金板7で構成した自己バイアス型磁歪材料9において
は、より大きな変位量を得ることができる。一方、磁歪
合金粉末を樹脂等の結合材で一体化した磁歪合金粉末の
圧縮成形体層11を有する自己バイアス型磁歪材料12
では、磁歪合金層の電気抵抗が樹脂量に応じて増加する
ため、渦電流の影響をより一層低減することができ、周
波数応答性をさらに向上させることが可能となる。
【0052】次に、本発明の第2の自己バイアス型磁歪
材料の実施形態について、図7を参照して説明する。
【0053】図7において、13はバルク状の磁歪合金
板であり、この磁歪合金板13はバルク状の永久磁石板
14と交互に積層配置されている。そして、これら磁歪
合金板13と永久磁石板14との間は、加熱圧縮処理に
より拡散接合されており、この拡散接合によって一体化
されている。ここで、用いる磁歪合金板13には、例え
ば熱流制御鋳造法や一方向凝固溶解法を適用して結晶性
を揃えた材料を使用することが好ましい。また、磁歪合
金板13の均質化を図るために、Ar等の不活性ガス雰囲
気中または真空中にて、 1073K〜融点未満の温度で 0.1
〜 500時間程度の熱処理を施すことが好ましい。
【0054】上述した加熱圧縮処理には、ホットプレス
法等を適用することができ、所望の型内に磁歪合金板1
3と永久磁石板14とを交互に積層配置し、加熱と圧縮
とを同時に加えることで一体化することができる。この
加熱圧縮処理は、例えば 100MPa 以上の圧縮力を加えつ
つ、 873〜1473K の温度範囲で加熱することによって実
施することが好ましい。加熱温度が873K未満であると、
拡散接合が不十分となるおそれがあり、一方 1473Kを超
えると磁歪合金板13や永久磁石板14の特性が劣化す
るおそれがある。また、上記加熱圧縮処理は、酸化によ
る特性劣化を防ぐために、不活性雰囲気中で行うことが
好ましい。なお、このような加熱圧縮成形において、H
IP等を適用することも可能である。さらに、上記加熱
圧縮成形の際に磁場を印加することによって、磁気的な
異方性を付与することができ、磁歪特性および磁気特性
の向上が図れる。
【0055】なお、磁歪合金板13と永久磁石板14と
の一体化は、前述した金属系バインダを介在させて行う
こともできる。このような金属系バインダを介在させる
際にも、同様な加熱圧縮処理を施す。ただし、加熱温度
は金属系バインダの種類に応じた温度とする。
【0056】このような自己バイアス型磁歪材料15に
おいては、前述した各実施形態の自己バイアス型磁歪材
料と同様に、磁歪合金板13と永久磁石板14とが交互
に積層配置されているため、磁歪合金板13に磁気バイ
アスを効率よく付与することができると共に、渦電流の
影響を低減して周波数応答性を向上させることができ
る。さらに、磁歪合金板13と永久磁石板14との間
に、非磁性材料である樹脂系接着剤等が介在しないた
め、磁気回路としての効率を低下させたり、あるいは磁
歪特性を劣化させるようなことがない。
【0057】次に、本発明の第3および第4の自己バイ
アス型磁歪材料の実施形態について、図8ないし図12
を参照して説明する。
【0058】図8および図9は、それぞれ第3の自己バ
イアス型磁歪材料の一実施形態を示す図であり、(a)
は自己バイアス型磁歪材料16、17の上面図、(b)
は縦断面図である。図8に示す自己バイアス型磁歪材料
16は、円柱状の磁歪合金ロッド18の外周部に永久磁
石層19が積層一体化されて構成されている。また、図
9に示す自己バイアス型磁歪材料17は、円筒状の磁歪
合金ロッド20の内周部に永久磁石層21が一体化され
て構成されている。ここで、磁歪合金ロッド18、20
は、前述した実施形態と同様に、熱流制御鋳造法や一方
向凝固溶解法等を適用して結晶性を揃えた材料を使用す
ることが好ましく、また同様な条件下で均質化熱処理を
施すことが好ましい。
【0059】また、永久磁石層19、21は、前述した
各実施形態と同様な永久磁石粉末の圧縮成形体、すなわ
ち結合材を用いた圧縮成形体やホットプレス等による加
熱圧縮成形体を適用することができ、これら粉末の圧縮
成形と同時に磁歪合金ロッド18、20と一体化するこ
とができる。具体的には、所望形状の型内に磁歪合金ロ
ッド18、20を配置し、その外周部または内周部に結
合材を添加した永久磁石粉末、あるいは永久磁石粉末を
単独で充填し、前述した各実施形態と同様な条件下で圧
縮成形を行うことによって一体化する。なお、永久磁石
層の比率、永久磁石粉末の製造方法や粒径、圧縮成形条
件等は、前述した実施形態と同様とすることが好まし
い。
【0060】上述した自己バイアス型磁歪材料16、1
7においては、磁歪合金ロッド18、20の外周部や内
周部に永久磁石層19、21を配置して一体化している
ため、磁気バイアスを効率よく付与することができ、正
負の磁界印加に対応して伸び、縮みが得られ、制御性の
よい変位応答性を示す磁歪材料を得ることができる。ま
た、制御磁界の印加方向に対して略平行に自己バイアス
を付与する永久磁石層19、21を配置しているため、
自己バイアス磁界を良好に付与した上で、磁歪合金ロッ
ド18、20への制御磁界の印加効率が高まり、大きな
変位量を得ることができる。
【0061】さらに、自己バイアス型磁歪材料16、1
7をアクチュエータ等に適用した場合、制御磁界発生用
の空心コイルの内側に永久磁石層19、21が配置され
るため、永久磁石層19、21から外側に漏洩する磁界
を十分に小さくすることができる。従来の円筒型永久磁
石を用いた磁気バイアス印加方法では、内側から磁歪合
金ロッド、コイル、永久磁石の順に配置されているた
め、永久磁石からの漏洩磁界がアクチュエータ表面で大
きな値を示す欠点があった。また、外周部に永久磁石の
粉未圧縮成形体を配置した場合には、渦電流の抑制効果
も得られる。永久磁石の粉未圧縮成形体による効果は前
述した通りである。
【0062】また、上述した実施形態とは反対に、永久
磁石にバルク材を用い、かつ磁歪合金を粉末圧縮成形体
とすることも可能である。このような構成においても同
様な効果が得られる。さらに、磁歪合金粉末を樹脂等の
結合材で一体化した場合には、渦電流の抑制効果が得ら
れる。
【0063】なお、具体的な形状については、例えば図
10に示すように、磁歪合金ロッド18の長さに対して
永久磁石層19の長さを短くすることで、成形用型に配
置する際の位置決めが簡便となる他に、アクチュエータ
等に組み込み際の軸合わせ精度が向上すると共に、面荷
重に対して均一に力が発生できる等の効果を得ることが
できる。図9に示した構造においても同様である。
【0064】図11は、第4の自己バイアス型磁歪材料
の一実施形態を示す図である。図11に示す自己バイア
ス型磁歪材料22は、磁歪合金23と永久磁石24とが
磁界印加方向(図中、矢印で示す)に対して略平行に交
合に積層配置され、かつ一体化されている。磁歪合金2
3と永久磁石24との一体化には、前述した実施形態に
示される技術を全て適用することができる。すなわち、
磁歪合金23および永久磁石24を粉末圧縮成形体(結
合材を用いた圧縮成形、あるいは加熱圧縮成形)とす
る、磁歪合金23および永久磁石24の一方をバルク材
とすると共に他方を粉末圧縮成形体とする、磁歪合金2
3および永久磁石24のバルク材を加熱圧縮処理して接
合する、等のいずれの一体化方法を適用してもよい。そ
れらに用いられる材料(バルク材や粉末、結合材等)や
成形条件等に関しても、前述した実施形態と同様であ
る。また、磁歪合金23と永久磁石24とは、エポキシ
系樹脂等の接着剤を用いて一体化してもよい。
【0065】さらに、図12に示すように、磁歪合金2
3と永久磁石24とを積層した後、この積層体の外周か
ら所定形状のスリーブ25で固定することも可能であ
る。このようなスリーブ25による固定方法としては、
例えばアルミ製スリーブのような金属製スリーブを用
い、これを積層体の外側から冷しばめ等の温度差を利用
した手法で包み込む方法を挙げることができる。また、
スリーブ25の形成材料として形状記憶合金を用いるこ
とによって、より効果的に一体化することができる。形
状記憶合金としては、ニチノールで代表される Ni-Ti系
合金やCu-Zn-Al系合金等が好ましく用いられる。このよ
うな形状記憶合金を自己バイアス型磁歪材料(積層体)
の仕上り形状より僅かに小さなスリーブ形状に加工した
後、低温でスリーブを機械的に押し広げて上記自己バイ
アス型磁歪材料を挿入し、加熱することで強固に固定す
ることができる。
【0066】上記したようなスリーブ25を用いた固定
方法によれば、積層構造で課題となっている機械的強度
を容易に改善することができる。特に、磁歪材料を応用
する際には、大荷重を受けて外に広がろうとする力が発
生するが、上記したスリーブ25を用いた一体化方法に
よればこの力を有効に妨げることができる。
【0067】上述した自己バイアス型磁歪材料22にお
いては、磁歪合金23と永久磁石24とを磁界印加方向
に対して略平行に交合に積層配置して一体化しているた
め、磁気バイアスを効率よく付与することができると共
に、渦電流の影響を低減して周波数応答性を向上させる
ことができる。さらに、磁歪合金23への制御磁界の印
加効率が高まり、大きな変位量を得ることができると共
に、磁歪合金23の変位方向に介在物が存在しないため
に、磁歪材料の機械的信頼性を大幅に高めることができ
る。磁歪合金粉末や永久磁石粉未の圧縮成形体による効
果は前述した通りである。
【0068】
【実施例】以下、本発明の具体的な実施例について述べ
る。
【0069】実施例1 まず、原子比でTb0.5 Dy0.5 (Fe0.9 Mn0.1 1.93とな
るように各元素を配合し、Ar雰囲気中でアルミナるつぼ
を使用して高周波誘導溶解により合金インゴットを得た
後、真空中にて 1223Kの温度で10時間の熱処理を施し
た。この合金インゴットをArガス雰囲気中でスタンプミ
ルにより粉砕し、さらに分級して平均粒径100μm の磁
歪合金粉末を得た。
【0070】−方、平均粒径が80μm の Nd-Fe-B系永久
磁石粉末を用意し、上記磁歪合金粉末と Nd-Fe-B系永久
磁石粉末にそれぞれ一液型エポキシ樹脂を 3重量% 混合
した。この後、プレス成形用金型に上記エポキシ樹脂を
添加混合した磁歪合金粉末と永久磁石粉末とを、重量比
で 1.75:0.5:2.5:0.5:2.5:0.5:1.75の比率で層状となる
ように交互に充填し、振動磁界印加後に一定状態とした
1200kA/mの磁界中にて、150MPaの圧力で磁場中プレスを
行い、さらに393Kで 1時間の熱硬化処理を施した。得ら
れた自己バイアス型磁歪材料を直径 6mm×長さ50mmのロ
ッド状に加工し、パルス着磁により着磁を行って測定試
料とした。この試料を後述する特性評価に供した。
【0071】実施例2 原子比でTb0.35Dy0.65Fe1.93組成を有する磁歪合金粉末
を実施例1と同様に作製し、これに結合材として粉末状
エポキシ樹脂を 1重量% 添加してミキサで十分に混合し
た。一方、 Sm-Co系永久磁石粉末を用意し、これに同様
の樹脂を 5重量% 添加して十分に混合した。次いで、こ
れらエポキシ樹脂を添加混合した磁歪合金粉末と永久磁
石粉末とを、磁歪合金粉末重量に対する永久磁石粉末重
量が25重量% となるように、プレス成形用金型内に交互
に配置した。積層数は図2に示したように、磁歪合金層
1が永久磁石層2より 1層多くなるように設定した。こ
の後、実施例1と同一条件で磁場中プレスおよび熱硬化
処理を施し、さらに加工して直径20mm×長さ30mmの自己
バイアス型磁歪材料ロッドを作製した。この自己バイア
ス型磁歪材料ロッドにパルス着磁により着磁を行って、
後述する特性評価に供した。
【0072】比較例1 実施例1と同一組成の磁歪合金を用いて、同一形状の磁
歪合金ロッド(磁歪合金のみ)を作製し、下記の特性評
価に供した。
【0073】上記実施例1、2による各自己バイアス型
磁歪材料ロッド、および比較例1による磁歪合金ロッド
をそれぞれ用いて、室温下、空心コイル中で変位量を評
価した。また、周波数特性についても同様に評価した。
変位量は磁界印加手段としての空心コイルに正負の直流
を加えて求め、また正弦波交流を加えて周波数特性を求
めた。変位量は光式変位計にて非接触で計測し、周波数
特性評価は10Hz時の変位量を用いて規格化して評価し
た。この際の評価結果を図13および図14に示す。
【0074】図13から明らかなように、外部からの磁
気バイアスを印加しない状態でも、実施例1および実施
例2の磁歪材料は正負の直流磁界に対して伸び、縮みを
発生させることができる。なお、実施例2の磁歪材料
は、実施例1に比べて永久磁石の重量比率が大きいた
め、磁気バイアスが大きく、かつ変位量が小さくなって
いることが分かる。このように、自己バイアス型磁歪材
料における磁歪合金と永久磁石の比率等は、適用するア
クチュエータ等の仕様に合せて、磁気バイアスと発生変
位量との関係から最適な組合せを選択すればよい。ま
た、図14に示した周波数特性からは、実施例1および
実施例2の磁歪材料が低周波数から高周波数までの広範
囲にわたって、変位量の低下が小さくなっていることが
分かる。
【0075】−方、比較例1による磁歪合金ロッドにお
いては、磁気バイアスが印加されていないことから、正
負の磁界に対して伸びの磁歪特性しか得られず、かつ周
波数が高くなると共に変位量が低下し、その変化量も大
きく、振動子等に応用する際に問題がある。また、比較
例1では動作周波数に対して 2倍周期の変位量が生じ、
この忠実度も問題である。
【0076】また、実施例1および実施例2による自己
バイアス型磁歪材料ロッドは、機械的信頼性にも優れる
ものである。この点を評価するために、実施例1および
実施例2と同一条件で作製した直径 6mm×長さ30mmの試
験片をそれぞれ10個ずつ用いて、金属板上に1mの高さか
ら落下させた際の割れ、欠けを評価したところ、いずれ
も割れ、欠けによる不良発生率は5%であった。一方、本
発明との比較のために、実施例1および実施例2と同一
構造の積層体を、エポキシ系接着剤で張り合せて作製
し、これらの割れ、欠けを同様に評価したところ、全て
に割れや欠けが発生した。
【0077】実施例3、比較例2〜3 原子比でTb0.4 Dy0.5 Pr0.1 (Fe0.8 Mn0.1 Zr0.1
1.91組成を有する磁歪合金インゴットを、Ar雰囲気中で
高周波誘導溶解により作製した後、Ar雰囲気中で1223K
の温度で48時間の熱処理を施した。この合金インゴット
をArガス雰囲気中で粉砕および分級して平均粒径 150μ
m の磁歪合金粉末とし、再度Ar雰囲気中で1173Kの温度
で15時間の熱処理を施した。次いで、この磁歪合金粉末
に対して表1に示す金属系バインダ粉末をそれぞれ 5重
量% 添加し、ミキサで十分に混合した。
【0078】一方、 Sm-Co系永久磁石を同様に粉砕、分
級して、平均粒径 100μm の粉末とした後、同様に各種
金属系バインダを 3重量% 添加、混合した。
【0079】次に、加熱圧縮成形用金型に金属系バイン
ダを混合した磁歪合金粉末と永久磁石粉末とを、積層比
が 4:2:4の比率となるように、交互に層状となるように
充填した後、 1273K、200MPa、Ar雰囲気中の条件で加熱
圧縮成形して、直径 8mm×長さ10mmの形状になるように
一体化を図った。
【0080】このようにして得た各自己バイアス型磁歪
材料ロッドをパルス着磁にて磁化して測定用試料とし
た。特性の評価は、空心コイルを磁界発生源として用
い、圧縮荷重を 10MPa加えながら、±80kA/mの直流磁界
を印加したときの変位量を、光学式非接触変位計を使用
して測定した。また、バイアス磁界の大きさを測定し
た。さらに、得られた試料の機械的強度を確認する目安
として、1mの高さからの金属板への落下試験を10個の試
料について行い、割れ、欠けの発生率を評価した。これ
らの測定結果を表1に併せて示す。
【0081】また、本発明との比較例として、上記実施
例3と同一組成の磁歪合金を用いた同一形状の磁歪合金
ロッド(比較例2)と、磁歪合金と永久磁石とを同一形
状となるようにエポキシ系接着剤で貼り合わせのもの
(比較例3)とを作製し、上記実施例3と同様にして特
性を評価した。それらの結果も併せて表1に示す。
【0082】
【表1】 表1から明らかなように、実施例3による各自己バイア
ス型磁歪材料では、良好な自己バイアスおよび変位量が
得られており、かつ良好な機械的強度を有していること
が分かる。
【0083】実施例4 原子比でTb0.35Dy0.55Ho0.1 Fe1.93組成を有する磁歪合
金インゴットを、Ar雰囲気中でアルミナるつぼを使用し
た高周波誘導溶解により作製し、この合金インゴットに
Ar雰囲気中で 1223Kの温度で10時間の熱処理を施した。
次いで、Ar雰囲気中でボールミルにより粉砕し、さらに
分級して平均粒径 100μm の粉末とし、再度Ar雰囲気中
で1173K の温度で 5時間の熱処理を行った。
【0084】一方、平均粒径が80μm の Nd-Fe-B系永久
磁石粉末を用意し、この永久磁石粉末と上記磁歪合金粉
末とを、重量比で 3:0.5:3:0.5:3の比率となるように加
熱圧縮成形金型に交互に積層配置した後、 1173K、150M
Paの条件で加熱圧縮成形(ホットプレス)を行って一体
化を図った。なお、積層比率は磁気バイアス量との兼ね
合いで決定するもので、磁気バイアス量を大きくする場
合には永久磁石の割合を大きくすればよい。
【0085】このようにして得た直径10mm×長さ30mmの
自己バイアス型磁歪材料ロッドをパルス着磁にて磁化し
て測定用試料とした。変位量は、空心コイルを磁界発生
源として用い、圧縮荷重を 10MPa加えながら光学式非接
触変位計を使用して測定した。得られた測定結果を図1
5に示す。
【0086】実施例5 上記実施例4と同様に、プレス成形金型に交互に積層配
置した磁歪合金粉末および永久磁石粉末に対して、振動
磁界印加後に一定状態とした1200kA/mの磁界中にて、60
0MPaの圧力で磁場中プレスを行って仮成形体を作製し、
この仮成形体を1173K、150PMa条件で加熱圧縮成形し
て、直径10mm×長さ30mmの形状となるように一体化を図
った。この自己バイアス型磁歪材料の特性を実施例4と
同様に評価し、その結果を図15に併せて示した。
【0087】実施例6、比較例4 原子比でTb0.5 Dy0.5 (Fe0.9 Mn0.05Co0.051.95とな
るように各元素を配合し、Ar雰囲気中でアルミナるつぼ
を使用して高周波誘導溶解により母合金を作製した。こ
の母合金をブリッジマン溶解法にて一方向凝固を行った
後、Ar雰囲気中で 1223Kの温度で24時間の熱処理を施
し、加熱圧縮処理用金型に合わせて直径10mm×厚さ14mm
に研削加工した。
【0088】−方、 Nd-Fe-B系永久磁石を同様の加工に
より直径10mm×厚さ 2mmとし、この永久磁石と上記磁歪
合金とを金型内に交互に積層配置した。この際、磁歪合
金と永久磁石との積層条件は、磁歪合金上に永久磁石を
重ねる構成を 3層行った後、最後に磁歪合金がくるよう
にした。この後、Ar雰囲気中、 1123K、150MPaの条件で
加熱圧縮処理を行って一体化を図った。
【0089】このようにして得た自己バイアス型磁歪材
料ロッドをパルス着磁にて着磁し、接合・一体化されて
いることを確認した。この自己バイアス型磁歪材料の特
性を実施例4と同様に評価し、その結果を図15に併せ
て示した。
【0090】また、本発明との比較例として、上記実施
例6と同一組成の磁歪合金を用いて、同一形状の磁歪合
金ロッド(比較例4)を作製し、上記実施例4と同様に
して特性を評価した。その結果も併せて図15に示す。
【0091】図15から明らかなように、実施例4、
5、6による各自己バイアス型磁歪材料は、いずれも良
好な変位特性と磁気バイアスが得られており、正負の駆
動磁界に対応した伸び、縮みを確認した。なお、実施例
4、5の変位量が実施例6に比べて半分程度となってい
るが、これは磁歪材料の長さが短くなっていることによ
るもので、歪量に換算した場合にはほぼ同等の値であっ
た。また、実施例4に比べて実施例5は磁気バイアス量
が大きく、かつ変位特性が優れている。これは、予め磁
場中プレスにて磁気的な配向を行ったために、磁歪特性
および磁石特性がさらに改善されたためである。一方、
比較例4は磁気バイアスが加わっていないことから、正
負の駆動磁界に対して伸びしか得られず、かつ低磁界領
域での変位が小さいことが分かる。
【0092】実施例7、比較例5 原子比でTb0.5 Dy0.5 (Fe0.9 Mn0.05Co0.051.95とな
るように各元素を配合し、Ar雰囲気中でアルミナるつぼ
を使用して高周波誘導溶解により母合金を作製した。こ
の母合金をブリッジマン溶解法にて一方向凝固を行った
後、Ar雰囲気中で 1223Kの温度で24時間の熱処理を施
し、金型に合せて直径10mm×厚さ14mmに研削加工した。
【0093】−方、平均粒径 100μm の Nd-Fe-B系永久
磁石粉末を用意し、これに 3重量%の一液型エポキシ樹
脂を添加、混合した。このエポキシ樹脂を混合した永久
磁石粉末と上記磁歪合金とを、プレス成形用金型内に交
互に層状となるように充填し、振動磁界印加後に一定状
態とした1200kA/mの磁界中で、200MPaの圧力で磁場中プ
レスを行い、その後423Kで 1時間の熱硬化処理を行っ
た。この際、磁歪合金に対して永久磁石粉末成形体の方
が 1つ少ない層数とし、かつ 1層の厚さが 4mmとなるよ
うにし、全長で50mmになるようにした。また、磁石粉末
成形体の着磁はパルス着磁により行って測定試料とし
た。
【0094】この自己バイアス型磁歪材料ロッドの変位
量を、室温下、空心コイル中で測定した。空心コイルに
正負の直流を印加し、変位量は光式変位計にて非接触で
計測した。このときの評価結果を図16に示す。
【0095】また、本発明との比較例として、上記実施
例7と同一組成の磁歪合金を用いて、同一形状の磁歪合
金ロッド(比較例5)を作製し、上記実施例7と同様に
して特性を評価した。それらの結果も併せて図16に示
す。
【0096】実施例8、比較例6 原子比でTb0.35Dy0.55Ho0.1 Fe1.93組成を有する磁歪合
金インゴットを、Ar雰囲気中でアルミナるつぼを使用し
た高周波誘導溶解により作製した。この合金インゴット
にAr雰囲気中で 1223Kの温度で10時間の熱処理を施した
後、粉砕および分級を行って平均粒径 120μm の粉末と
し、再度Ar雰囲気中で 1173Kの温度で5時間の熱処理を
行った。ここで得られた磁歪合金粉末に対して 5重量%
の粉末状エポキシ樹脂を添加し、ミキサで十分に混合し
た。
【0097】一方、直径 6mm×厚さ 2mmの形状に加工し
た Sm-Co系永久磁石を用意し、この永久磁石と上記エポ
キシ樹脂を混合した磁歪合金粉末とを、プレス成形用金
型内に層状になるように交互に充填し、振動磁界印加後
に一定状態とした1200kA/mの磁界中で、600MPaの圧力で
磁場中プレスを行い、その後393Kで 1時間の熱硬化処理
を施した。この際、磁歪合金粉末成形体に対して永久磁
石の方が 1つ少ない層数となるように配置し、全長で25
mmとなるようにした。また、永久磁石の着磁はパルス着
磁により行って測定試料とした。
【0098】このようにして得た自己バイアス型磁歪材
料の特性を、実施例7と同様にして測定し、その結果を
図16に併せて示した。また、交流駆動による±8kA/m
の磁界中での周波数特性を評価し、その結果を図17に
示した。周波数特性評価は10Hz時の変位量を用いて規格
化して示した。図17の比較例6は、実施例8と同一形
状の磁歪合金のみのロッドである。
【0099】図16に示したように、外部からの磁気バ
イアスを印加しない状態でも、実施例7、8による各磁
歪材料は正負の直流磁界に対して伸び、縮みを発生させ
ることができる。また、比較例5の共振周波数が2kHzで
あるのに対して、実施例7の共振周波数が1kHzまで低下
していることを確認した。さらに、実施例7において、
エポキシ樹脂の混合比を 5重量% とした試料では、0.8k
Hzまで共振周波数が低下した。
【0100】また図17から、実施例8による自己バイ
アス型磁歪材料の周波数特性は、低周波数から高周波数
までの広範囲にわたり、変位量の低下が小さくなってい
ることが分かる。−方、比較例6の磁歪合金ロッドにお
いては、磁気バイアスが印加されていないことから磁歪
特性が劣化しており、かつ周波数が高くなると共に変位
量が低下し、その変化量も大きく、振動子等への応用を
考える上で問題がある。この際、比較例6では動作周波
数に対して 2倍周期の変位量が生じ、忠実度も問題であ
る。
【0101】さらに、実施例8による自己バイアス型磁
歪材料の機械的信頼性を評価するために、金属板上に1m
の高さから落下させる試験を行ったところ、割れ、欠け
の発生率が 20%以下であった。このことから機械的に優
れていることが分かる。なお、実施例8と同様の形状と
なるように、磁歪合金と永久磁石とをエポキシ系接着剤
で接着した試験片では、落下テストの結果 90%の確率で
割れ、欠けが生じることを確認した。
【0102】実施例9 原子比でTb0.5 Dy0.5 (Fe0.9 Mn0.1 1.93となるよう
に各元素を配合し、Ar雰囲気中でアルミナるつぼを使用
して高周波誘導溶解した後、熱流制御鋳造法にて磁歪合
金を作製し、真空中、 1223Kの温度で10時間の熱処理を
施した。この合金から機械加工によって、直径 8mm×長
さ50mmの円柱型磁歪ロッド、および外径10mm×内径 4mm
×長さ 500mmの円筒型磁歪ロッドをそれぞれ作製した。
【0103】これらの磁歪ロッドを、直径10mmの圧縮成
形用金型内にそれぞれ配置した後、それぞれ平均粒径が
100μm の Nd-Fe-B系永久磁石粉末を充填し、各々の形
状に合せた押し棒にてArガス中、 1073K、150MPaの条件
でそれぞれ加熱圧縮成形した。この際、磁界を印加して
永久磁石の配向度を高めることで、より磁石特性が向上
する。
【0104】上記の手法により得られた各自己バイアス
型磁歪材料ロッドをパルス着磁にて着磁・磁界調整し、
室温下、空心コイル中で変位量を評価した。磁界印加方
法は空心コイルに正負の直流を加え、この際の磁歪材料
の変位量を光式変位計にて非接触で計測した。得られた
評価結果より、磁気バイアスおよび±16kA/m(200Oe)に
おける変位量をフルスケールとして求めて表2に示し
た。
【0105】実施例10 Tb0.4 Dy0.4 Ho0.1 (Fe0.9 Mn0.05Co0.051.9 となる
ように各元素を配合し、Ar雰囲気中でアルミナるつぼを
使用して高周波誘導溶解して母合金を作製し、この母合
金をブリッジマン溶解法にて一方向凝固を行った後、真
空中、 1223Kの温度で30時間の熱処理を施した。この磁
歪合金から機械加工によって、直径 8mm×長さ50mmの円
柱型磁歪ロッド、および外径10mm×内径 4mm×長さ50mm
の円筒型磁歪ロッドをそれぞれ作製した。
【0106】これらの磁歪ロッドを、直径10mmの圧縮成
形用金型内にそれぞれ配置した後、平均粒径 100μm の
Nd-Fe-B系永久磁石粉末に一液型エポキシ樹脂を 2重量
% 混合したものを上記金型内にそれぞれ充填した。次
に、振動磁界印加後に一定状態とした1200kA/mの磁場中
で、それぞれの形状に合せた押し棒を用いて200MPaの圧
力で磁場中プレスを行った後、それぞれに393Kで 1時間
の熱硬化処理を施した。このようにして得た各自己バイ
アス型磁歪材料ロッドをパルス着磁にて着磁した後、実
施例9と同様にして特性を評価した。それらの結果をま
とめて表2に示す。
【0107】
【表2】 表2に示したように、実施例9、10による各自己バイ
アス型磁歪材料は、外部からの磁気バイアスを印加しな
い状態でも、正負の直流磁界に対して伸び、縮みを発生
させることができ、良好な変位特性を示していることが
分かる。
【0108】実施例11 原子比でTb0.5 Dy0.5 (Fe0.9 Mn0.05Co0.051.95とな
るように各元素を配合し、Ar雰囲気中でアルミナるつぼ
を使用して高周波誘導溶解により母合金を作製した。こ
の母合金をブリッジマン溶解法にて一方向凝固を行った
後、Ar雰囲気中で 1223Kの温度で24時間の熱処理を施し
た後、幅10mm×長さ50mm×厚さ 2.5mmの形状に機械加工
した。
【0109】一方、幅10mm×長さ50mm×厚さ 1.5mmの板
状 Nd-Fe-B系永久磁石を用意し、 2枚の板状永久磁石と
3枚の上記板状磁歪合金とを交互に積層した。これらを
接着固定した後、機械加工にて直径10mm×長さ50mmに仕
上げ、自己バイアス型磁歪材料を得た。
【0110】この自己バイアス型磁歪材料をパルス着磁
にて着磁処理および磁界調整した後、変位特性を評価し
た。得られた評価結果を図18に示す。図18から、良
好な変位特性と磁気バイアスが得られていることが分か
り、正負の駆動磁界に対応した伸び、縮みを確認した。
【0111】実施例12 原子比でTb0.35Dy0.55Ho0.1 (Fe0.9 Mn0.1 1.93とな
るように各元素を配合し、Ar雰囲気中でアルミナるつぼ
を使用して高周波誘導溶解により母合金を作製した後、
熱流制御鋳造法で磁歪合金を作製した。この磁歪合金に
Ar雰囲気中で1223K℃の温度で10時間の熱処理を施した
後、板状に機械加工した。
【0112】一方、平均粒径が 100μm の Nd-Fe-B系永
久磁石粉末を用意し、これに表3に示す各結合材(エポ
キシ樹脂および各種過金属系バインダ)をそれぞれ 3重
量%添加、混合した。
【0113】次に、積層構造が板状磁歪合金と結合材を
含む磁石粉末とが 3:1:3:1:3の比率となるように、圧縮
成形金型に交互に積層配置した後、磁界中にて150MPaの
条件で圧縮成形を行って−体化を図った。なお、金属系
バインダを使用したものは加熱圧縮成形を行い、温度は
773K、圧縮力は150MPaとした。
【0114】このようにして得た10mm角の自己バイアス
型磁歪材料を、それぞれ直径10mm×長さ30mmの仕上りに
機械加工し、これら自己バイアス型磁歪材料ロッドをパ
ルス着磁にて磁化した後、実施例11と同様に特性を評
価した。特性評価結果を表3に併せて示す。表3から明
らかなように、いずれも良好な結果が得られた。
【0115】
【表3】 実施例13 Ni-Ti系合金からなる形状記憶合金で内径が49.8mmのス
リーブを作製し、このスリーブを243Kで機械的に押し広
げた後、実施例11で作製した積層型磁歪材料を挿入
し、再度全体を363Kに加熱して外周から締め付けるよう
にして一体化した。変位特性は、図18に示した特性に
対して約 10%程度低下した値であり、ほぼ良好な積層型
磁歪材料が得られた。また、磁気バイアスは同等の値で
あった。ここで、変位特性が若干低下した理由として
は、外周固定により変位量が抑制されているためであ
る。ただし、このような構造では機械的な強度が向上
し、信頼性を大幅に向上させることができる。
【0116】
【発明の効果】以上説明したように、本発明における第
1および第2の自己バイアス型磁歪材料によれば、磁歪
合金に対して効率よく磁気バイアスを付与することがで
きると共に、渦電流の影響を低減して低周波数領域から
高周波数領域まで広い範囲で良好な変位応答性を得るこ
とができる。そして、第1の自己バイアス型磁歪材料に
よれば、製造工数および製造コストの低減が図れ、また
第2の自己バイアス型磁歪材料によれば、磁歪特性の劣
化等を抑制することが可能となる。また、第3および第
4の自己バイアス型磁歪材料によれば、磁歪合金に対し
て効率よく磁気バイアスを付与することができると共
に、機械的信頼性を大幅に向上させることが可能とな
る。このように、本発明によればアクチュエータや振動
子等への応用に好適な実用性に優れた磁歪材料を提供す
ることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の第1の自己バイアス型磁歪材料の一
実施形態の構成を示す断面図である。
【図2】 図1に示す自己バイアス型磁歪材料の変形例
を示す断面図である。
【図3】 図1に示す自己バイアス型磁歪材料の他の変
形例を示す断面図である。
【図4】 本発明の第1の自己バイアス型磁歪材料の他
の実施形態の構成を示す断面図である。
【図5】 本発明の第1の自己バイアス型磁歪材料のさ
らに他の実施形態の構成を示す断面図である。
【図6】 本発明の第1の自己バイアス型磁歪材料のさ
らに他の実施形態の構成を示す断面図である。
【図7】 本発明の第2の自己バイアス型磁歪材料の一
実施形態の構成を示す断面図である。
【図8】 本発明の第3の自己バイアス型磁歪材料の一
実施形態の構成を示す図である。
【図9】 本発明の第3の自己バイアス型磁歪材料の他
の実施形態の構成を示す図である。
【図10】 図8に示す自己バイアス型磁歪材料の変形
例を示す図である。
【図11】 本発明の第4の自己バイアス型磁歪材料の
一実施形態の構成を示す斜視図である。
【図12】 図11に示す自己バイアス型磁歪材料の変
形例を示す図である。
【図13】 実施例1、2による自己バイアス型磁歪材
料の変位特性を示す図である。
【図14】 実施例1、2による自己バイアス型磁歪材
料の変位量の周波数依存性を示す図である。
【図15】 実施例4、5、6による自己バイアス型磁
歪材料の変位特性を示す図である。
【図16】 実施例7、8による自己バイアス型磁歪材
料の変位特性を示す図である。
【図17】 実施例8による自己バイアス型磁歪材料の
変位量の周波数依存性を示す図である。
【図18】 実施例11による自己バイアス型磁歪材料
の変位特性を示す図である。
【符号の説明】
1、4、11……磁歪合金層(粉末圧縮成形体層) 2、5、8、19、21……永久磁石層(粉末圧縮成形
体層) 3、6、9、12、15、16、17、22……自己バ
イアス型磁歪材料 7、13……バルク状磁歪合金 10、14…バルク状永久磁石 18……円柱状磁歪合金ロッド 20……円筒状磁歪合金ロッド 23……磁歪合金 24……永久磁石

Claims (4)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 原子比で RFex (ただし、 Rは希土類元
    素から選ばれる少なくとも 1種の元素を示し、 xは 1.5
    ≦ x≦2.5 を満足する数である)を基本組成として満足
    する磁歪合金と永久磁石とを交互に積層配置して一体化
    してなる自己バイアス型磁歪材料であって、前記磁歪合
    金および永久磁石の少なくとも一方が粉末圧縮成形体で
    あることを特徴とする自己バイアス型磁歪材料。
  2. 【請求項2】 原子比で RFex (ただし、 Rは希土類元
    素から選ばれる少なくとも 1種の元素を示し、 xは 1.5
    ≦ x≦2.5 を満足する数である)を基本組成として満足
    する磁歪合金と永久磁石とを交互に積層配置して一体化
    してなる自己バイアス型磁歪材料であって、前記磁歪合
    金と永久磁石とは加熱圧縮により接合されていることを
    特徴とする自己バイアス型磁歪材料。
  3. 【請求項3】 原子比で RFex (ただし、 Rは希土類元
    素から選ばれる少なくとも 1種の元素を示し、 xは 1.5
    ≦ x≦2.5 を満足する数である)を基本組成として満足
    する磁歪合金と、前記磁歪合金の外周部または内周部に
    積層一体化された永久磁石とを具備することを特徴とす
    る自己バイアス型磁歪材料。
  4. 【請求項4】 原子比で RFex (ただし、 Rは希土類元
    素から選ばれる少なくとも 1種の元素を示し、 xは 1.5
    ≦ x≦2.5 を満足する数である)を基本組成として満足
    する磁歪合金と永久磁石とを、磁界印加方向に対して略
    平行に交互に積層配置して一体化してなることを特徴と
    する自己バイアス型磁歪材料。
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