JPH0972288A - 疲労強度に優れたスクロール部材及びスクロール型流体機械 - Google Patents
疲労強度に優れたスクロール部材及びスクロール型流体機械Info
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- JPH0972288A JPH0972288A JP22827695A JP22827695A JPH0972288A JP H0972288 A JPH0972288 A JP H0972288A JP 22827695 A JP22827695 A JP 22827695A JP 22827695 A JP22827695 A JP 22827695A JP H0972288 A JPH0972288 A JP H0972288A
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- F04C—ROTARY-PISTON, OR OSCILLATING-PISTON, POSITIVE-DISPLACEMENT MACHINES FOR LIQUIDS; ROTARY-PISTON, OR OSCILLATING-PISTON, POSITIVE-DISPLACEMENT PUMPS
- F04C18/00—Rotary-piston pumps specially adapted for elastic fluids
- F04C18/02—Rotary-piston pumps specially adapted for elastic fluids of arcuate-engagement type, i.e. with circular translatory movement of co-operating members, each member having the same number of teeth or tooth-equivalents
- F04C18/0207—Rotary-piston pumps specially adapted for elastic fluids of arcuate-engagement type, i.e. with circular translatory movement of co-operating members, each member having the same number of teeth or tooth-equivalents both members having co-operating elements in spiral form
- F04C18/0246—Details concerning the involute wraps or their base, e.g. geometry
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Abstract
(57)【要約】
【課題】 鋳造Ａｌ合金の疲労強度を低下させるという
硬質アルマイト処理に起因する問題点がなく、スクロー
ル羽根を高く形成して高効率化を実現でき、しかもＡｌ
合金製母材の表面硬度を高めて、靭性にも優れた表面処
理層を有するスクロール部材、並びに上記スクロール部
材を組み込んだスクロール型流体機械を提供する。 【解決手段】 Ａｌ合金鋳造材を母材とし、該母材表面
の少なくとも摺動作用部分に厚さ１μｍ以上のＮｉ系め
っき層が形成されたスクロール部材である。また上記ス
クロール部材において、(i) 上記Ｎｉ系めっき層を無電
解めっきにより形成すること、(ii)上記Ｎｉ系めっき層
の下地層として、アルマイト処理層を形成すること、或
いは(iii) Ｎｉ系めっき層が形成された後、圧縮応力を
付与する様な処理を施すことも有効であり、これらによ
ってスクロール部材の性能を更に向上させることができ
る。
硬質アルマイト処理に起因する問題点がなく、スクロー
ル羽根を高く形成して高効率化を実現でき、しかもＡｌ
合金製母材の表面硬度を高めて、靭性にも優れた表面処
理層を有するスクロール部材、並びに上記スクロール部
材を組み込んだスクロール型流体機械を提供する。 【解決手段】 Ａｌ合金鋳造材を母材とし、該母材表面
の少なくとも摺動作用部分に厚さ１μｍ以上のＮｉ系め
っき層が形成されたスクロール部材である。また上記ス
クロール部材において、(i) 上記Ｎｉ系めっき層を無電
解めっきにより形成すること、(ii)上記Ｎｉ系めっき層
の下地層として、アルマイト処理層を形成すること、或
いは(iii) Ｎｉ系めっき層が形成された後、圧縮応力を
付与する様な処理を施すことも有効であり、これらによ
ってスクロール部材の性能を更に向上させることができ
る。
Description
【０００１】
【発明の属する技術分野】本発明は、密閉型スクロール
圧縮機，開放型スクロール圧縮機，半密閉型スクロール
圧縮機及びスクロール型膨張機等のスクロール型流体機
械、及び該スクロール型流体機械に用いられ優れた疲労
強度を発揮する固定スクロール及び旋回スクロール等の
スクロール部材に関するものである。
圧縮機，開放型スクロール圧縮機，半密閉型スクロール
圧縮機及びスクロール型膨張機等のスクロール型流体機
械、及び該スクロール型流体機械に用いられ優れた疲労
強度を発揮する固定スクロール及び旋回スクロール等の
スクロール部材に関するものである。
【０００２】
【従来の技術】スクロール型流体機械は、固定スクロー
ル、及び該固定スクロールに対向する様に組み合わされ
て公転する旋回スクロールを備えて、両スクロールによ
り形成される空間の容積が、上記旋回スクロールの公転
に伴って変化する機構を利用した機械であり、流体の圧
縮機や膨張機として適用されている。
ル、及び該固定スクロールに対向する様に組み合わされ
て公転する旋回スクロールを備えて、両スクロールによ
り形成される空間の容積が、上記旋回スクロールの公転
に伴って変化する機構を利用した機械であり、流体の圧
縮機や膨張機として適用されている。
【０００３】近年、上記スクロール型流体機械において
は、旋回スクロールの高速回転化やスクロール型流体機
械自体の軽量化の要求に応えることを目的として、Ａｌ
合金製のスクロール部材をスクロール型流体機械に組み
込む試みが急増している。
は、旋回スクロールの高速回転化やスクロール型流体機
械自体の軽量化の要求に応えることを目的として、Ａｌ
合金製のスクロール部材をスクロール型流体機械に組み
込む試みが急増している。
【０００４】Ａｌ合金製のスクロール部材を製造する方
法は、鋳造法と鍛造法に大別できる。鋳造法で製造され
るスクロール部材（以下、鋳造スクロールということが
ある）は、強度が十分ではないので、両スクロール部材
が接触しない程度に接近させて、流体漏れを可及的に少
なくする様に構成されている。一方鍛造法で製造される
スクロール部材（以下、鍛造スクロールということがあ
る）は、強度に優れることから、旋回スクロールを固定
スクロールに擦り合わせる様に公転させることができ、
両スクロールで形成する空間の密閉性を高めることが可
能である。
法は、鋳造法と鍛造法に大別できる。鋳造法で製造され
るスクロール部材（以下、鋳造スクロールということが
ある）は、強度が十分ではないので、両スクロール部材
が接触しない程度に接近させて、流体漏れを可及的に少
なくする様に構成されている。一方鍛造法で製造される
スクロール部材（以下、鍛造スクロールということがあ
る）は、強度に優れることから、旋回スクロールを固定
スクロールに擦り合わせる様に公転させることができ、
両スクロールで形成する空間の密閉性を高めることが可
能である。
【０００５】但し、Ａｌ合金製のスクロール部材は鍛造
スクロールであっても摺動摩耗が著しく、焼付きや異常
摩耗を起こし易いという欠点があるので、部材表面に耐
摺動摩耗性を向上させる表面処理を施すことが不可欠で
ある。また、鋳造スクロールであっても両スクロールが
全く接触を起こさない訳ではなく、何らかの原因により
接触した場合には損傷を起こす場合がある。そこで、例
えば特公昭６３−３２９９２号公報には、スクロール部
材の表面に硬質アルマイト処理を施すことにより摺動面
同士の凝着による焼付きや摩耗の進行を防止する技術が
開示されている。また、特開平４−１７９８８５号，特
開平５−３４０３６４号，特開平５−１７２０６６号に
は、ＭｏＳ2 やＰＴＦＥ等を含浸させたアルマイト処理
を施す方法により耐摩耗性を一層向上させる技術が開示
されている。この様に、硬質アルマイト処理は、低コス
トで実用的なＡｌ合金の耐摩耗性を改善する処理技術と
して広く用いられている。
スクロールであっても摺動摩耗が著しく、焼付きや異常
摩耗を起こし易いという欠点があるので、部材表面に耐
摺動摩耗性を向上させる表面処理を施すことが不可欠で
ある。また、鋳造スクロールであっても両スクロールが
全く接触を起こさない訳ではなく、何らかの原因により
接触した場合には損傷を起こす場合がある。そこで、例
えば特公昭６３−３２９９２号公報には、スクロール部
材の表面に硬質アルマイト処理を施すことにより摺動面
同士の凝着による焼付きや摩耗の進行を防止する技術が
開示されている。また、特開平４−１７９８８５号，特
開平５−３４０３６４号，特開平５−１７２０６６号に
は、ＭｏＳ2 やＰＴＦＥ等を含浸させたアルマイト処理
を施す方法により耐摩耗性を一層向上させる技術が開示
されている。この様に、硬質アルマイト処理は、低コス
トで実用的なＡｌ合金の耐摩耗性を改善する処理技術と
して広く用いられている。
【０００６】ところで、スクロール型流体機械には、よ
り一層の高効率化が求められており、公転速度の増加と
併せて、圧縮比を上げるために、スクロール羽根を高く
形成して内容積を拡大する方法が検討されているが、鍛
造スクロールで羽根高さを一層高くすることは技術的に
困難である。これに対して鋳造スクロールの場合には、
任意にスクロール羽根を高く形成することができ、圧縮
比を上げてスクロール型流体機械の高効率化を図ること
が可能であると考えられる。しかしながらスクロール羽
根を高く形成すると、例えば圧縮機の場合には、特にス
クロール軸心部付近の高圧域における圧力が高まり、羽
根にはより振幅の大きな繰り返し歪がかかるために疲労
破壊を起こし易くなる。従って、スクロールには疲労強
度の高いＡｌ合金が求められる様になるが、現在のスク
ロールの設計は鋳造Ａｌ合金の疲労強度限界に近いとこ
ろで行われており、鋳造Ａｌ合金の疲労強度を大幅に向
上させる合金設計の余地も少ない。しかも後述する様
に、前記硬質アルマイト処理により鋳造Ａｌ合金の疲労
強度が低下することも指摘され問題視されている。
り一層の高効率化が求められており、公転速度の増加と
併せて、圧縮比を上げるために、スクロール羽根を高く
形成して内容積を拡大する方法が検討されているが、鍛
造スクロールで羽根高さを一層高くすることは技術的に
困難である。これに対して鋳造スクロールの場合には、
任意にスクロール羽根を高く形成することができ、圧縮
比を上げてスクロール型流体機械の高効率化を図ること
が可能であると考えられる。しかしながらスクロール羽
根を高く形成すると、例えば圧縮機の場合には、特にス
クロール軸心部付近の高圧域における圧力が高まり、羽
根にはより振幅の大きな繰り返し歪がかかるために疲労
破壊を起こし易くなる。従って、スクロールには疲労強
度の高いＡｌ合金が求められる様になるが、現在のスク
ロールの設計は鋳造Ａｌ合金の疲労強度限界に近いとこ
ろで行われており、鋳造Ａｌ合金の疲労強度を大幅に向
上させる合金設計の余地も少ない。しかも後述する様
に、前記硬質アルマイト処理により鋳造Ａｌ合金の疲労
強度が低下することも指摘され問題視されている。
【０００７】
【発明が解決しようとする課題】本発明は上記事情に着
目してなされたものであって、鋳造Ａｌ合金の疲労強度
を低下させるという硬質アルマイト処理に起因する問題
点がなく、スクロール羽根を高く形成して高効率化を実
現でき、しかもＡｌ合金製母材の表面硬度を高めて、靭
性にも優れた表面処理層を有するスクロール部材、並び
に上記スクロール部材を組み込んだスクロール型流体機
械の提供を目的とするものである。
目してなされたものであって、鋳造Ａｌ合金の疲労強度
を低下させるという硬質アルマイト処理に起因する問題
点がなく、スクロール羽根を高く形成して高効率化を実
現でき、しかもＡｌ合金製母材の表面硬度を高めて、靭
性にも優れた表面処理層を有するスクロール部材、並び
に上記スクロール部材を組み込んだスクロール型流体機
械の提供を目的とするものである。
【０００８】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成した本発
明のスクロール部材とは、Ａｌ合金鋳造材を母材とし、
該母材表面の少なくとも摺動作用部分に厚さ１μｍ以上
のＮｉ系めっき層が形成されたものであることを要旨と
するものである。
明のスクロール部材とは、Ａｌ合金鋳造材を母材とし、
該母材表面の少なくとも摺動作用部分に厚さ１μｍ以上
のＮｉ系めっき層が形成されたものであることを要旨と
するものである。
【０００９】また上記スクロール部材において、(i) 上
記Ｎｉ系めっき層を無電解めっきにより形成すること、
(ii)上記Ｎｉ系めっき層の下地層として、アルマイト処
理層を形成すること、或いは(iii) Ｎｉ系めっき層が形
成された後、圧縮応力を付与する様な処理を施すことも
有効であり、これらによってスクロール部材の性能を更
に向上させることができる。
記Ｎｉ系めっき層を無電解めっきにより形成すること、
(ii)上記Ｎｉ系めっき層の下地層として、アルマイト処
理層を形成すること、或いは(iii) Ｎｉ系めっき層が形
成された後、圧縮応力を付与する様な処理を施すことも
有効であり、これらによってスクロール部材の性能を更
に向上させることができる。
【００１０】尚、めっき層に圧縮応力を付与する様な処
理としては、ショットピーニング処理をはじめ、ドライ
ホーニング処理、液体ホーニング処理、サンドブラスト
処理等が例示できる。
理としては、ショットピーニング処理をはじめ、ドライ
ホーニング処理、液体ホーニング処理、サンドブラスト
処理等が例示できる。
【００１１】さらに、前記目的を達成した本発明のスク
ロール型流体機械とは、固定スクロール又は旋回スクロ
ールのいずれか若しくは両方が上記の様なスクロール部
材によって構成されたものである点に要旨を有するもの
である。
ロール型流体機械とは、固定スクロール又は旋回スクロ
ールのいずれか若しくは両方が上記の様なスクロール部
材によって構成されたものである点に要旨を有するもの
である。
【００１２】
【発明の実施の形態】鋳造Ａｌ合金に硬質アルマイト処
理を施した場合に、疲労強度が低下する原因としては、
以下の３つの要因が考えられる。即ち、硬質アルマイ
トによって母材の表面粗さが大きくなることが、第１に
挙げられる。本発明者らの実測結果では、硬質アルマイ
ト処理前の表面粗さに対して、硬質アルマイト処理後で
は中心線平均粗さＲａ及び最高粗さＲｍａｘが共に、約
１０倍以上に増加しており、硬質アルマイト処理により
表面粗さが大きくなることは明らかである。
理を施した場合に、疲労強度が低下する原因としては、
以下の３つの要因が考えられる。即ち、硬質アルマイ
トによって母材の表面粗さが大きくなることが、第１に
挙げられる。本発明者らの実測結果では、硬質アルマイ
ト処理前の表面粗さに対して、硬質アルマイト処理後で
は中心線平均粗さＲａ及び最高粗さＲｍａｘが共に、約
１０倍以上に増加しており、硬質アルマイト処理により
表面粗さが大きくなることは明らかである。
【００１３】硬質アルマイト皮膜には強い引張応力が
かかっており、クラックが入り易い状態になっている。
含浸処理を施した場合には、膜応力は引張から圧縮に変
化するが、経時変化により引張応力に戻る傾向がある。
かかっており、クラックが入り易い状態になっている。
含浸処理を施した場合には、膜応力は引張から圧縮に変
化するが、経時変化により引張応力に戻る傾向がある。
【００１４】硬質アルマイトは主にＡｌ酸化物によっ
て構成され、靭性に乏しい。従って硬質アルマイト皮膜
に何らかの衝撃が加わった場合には、皮膜にクラックが
発生したり、欠落が生じ易い。
て構成され、靭性に乏しい。従って硬質アルマイト皮膜
に何らかの衝撃が加わった場合には、皮膜にクラックが
発生したり、欠落が生じ易い。
【００１５】この様に、硬質アルマイト皮膜は、表面粗
さが大きく、またクラックや皮膜の欠落が生じると、母
材の疲労強度を低下させる切欠きと同様に作用して、疲
労強度の低下をもたらしているものと推察される。
さが大きく、またクラックや皮膜の欠落が生じると、母
材の疲労強度を低下させる切欠きと同様に作用して、疲
労強度の低下をもたらしているものと推察される。
【００１６】本発明者らは、スクロール部材の耐摩耗性
だけではなく、疲労強度の観点からその表面処理方法を
見直し、スクロール部材表面をＮｉ系めっき層で被覆す
ることにより、硬質アルマイト皮膜で疲労強度低下の原
因となっていた表面の荒れや皮膜のクラックや欠落を防
止して、耐摩耗性のみならず高い疲労強度を有するスク
ロール部材を得ることに成功したものである。
だけではなく、疲労強度の観点からその表面処理方法を
見直し、スクロール部材表面をＮｉ系めっき層で被覆す
ることにより、硬質アルマイト皮膜で疲労強度低下の原
因となっていた表面の荒れや皮膜のクラックや欠落を防
止して、耐摩耗性のみならず高い疲労強度を有するスク
ロール部材を得ることに成功したものである。
【００１７】Ｎｉ系めっきの膜厚は少なくとも１μｍ以
上必要であり、３μｍ以上であるとより好ましい。１μ
ｍ未満では、めっきが必要な部位の表面全体を十分覆っ
ているとは言いがたく、硬質アルマイト並みの耐摺動摩
耗性も発揮し得ない。Ｎｉ系めっきの膜厚の上限に関し
ては特に規定するものではないが、旋回スクロールや固
定スクロールには高い寸法精度が要求され、めっき膜厚
が厚くなるほど寸法精度の維持が難しくなることや経済
性の観点からも２０μｍ程度を目安とすればよい。
上必要であり、３μｍ以上であるとより好ましい。１μ
ｍ未満では、めっきが必要な部位の表面全体を十分覆っ
ているとは言いがたく、硬質アルマイト並みの耐摺動摩
耗性も発揮し得ない。Ｎｉ系めっきの膜厚の上限に関し
ては特に規定するものではないが、旋回スクロールや固
定スクロールには高い寸法精度が要求され、めっき膜厚
が厚くなるほど寸法精度の維持が難しくなることや経済
性の観点からも２０μｍ程度を目安とすればよい。
【００１８】めっきを行う方法としては、電気めっき法
と無電解めっき法のいずれを用いてもよい。電気めっき
法であれば、電気Ｎｉめっきや電気Ｎｉ−Ｐめっき等を
挙げることができ、一方無電解めっき法であれば、無電
解Ｎｉ−Ｐめっき、無電解Ｎｉ−Ｂめっき、無電解複合
Ｎｉ−Ｐめっき等を用いることが可能である。
と無電解めっき法のいずれを用いてもよい。電気めっき
法であれば、電気Ｎｉめっきや電気Ｎｉ−Ｐめっき等を
挙げることができ、一方無電解めっき法であれば、無電
解Ｎｉ−Ｐめっき、無電解Ｎｉ−Ｂめっき、無電解複合
Ｎｉ−Ｐめっき等を用いることが可能である。
【００１９】尚、複雑な形状を有するスクロールに寸法
精度良くめっきを施すという観点からすれば、無電解め
っき法を用いる方が好ましい。但し、無電解めっきの場
合、めっき条件によってはめっき層に引張応力がかかる
場合がある。その場合には、めっき後に、ショットピー
ニング処理や、ドライホーニング処理，液体ホーニング
処理，サンドブラスト処理等を行うことによって、めっ
き層の内部応力を引張方向から圧縮方向に変えることが
好ましい。一方、電気めっき法でも電極配置等を工夫す
れば必要な寸法精度を達成することは可能である。
精度良くめっきを施すという観点からすれば、無電解め
っき法を用いる方が好ましい。但し、無電解めっきの場
合、めっき条件によってはめっき層に引張応力がかかる
場合がある。その場合には、めっき後に、ショットピー
ニング処理や、ドライホーニング処理，液体ホーニング
処理，サンドブラスト処理等を行うことによって、めっ
き層の内部応力を引張方向から圧縮方向に変えることが
好ましい。一方、電気めっき法でも電極配置等を工夫す
れば必要な寸法精度を達成することは可能である。
【００２０】尚、電気Ｎｉ−Ｐめっきでは、表面の結晶
粒が凸状に規則正しく並び、結晶粒レベルの適度の大き
さからなる凹凸を形成するので、潤滑剤使用下では潤滑
剤の保持効果が高くなって、潤滑性能が持続するという
効果も得られる。
粒が凸状に規則正しく並び、結晶粒レベルの適度の大き
さからなる凹凸を形成するので、潤滑剤使用下では潤滑
剤の保持効果が高くなって、潤滑性能が持続するという
効果も得られる。
【００２１】上記電気Ｎｉ−Ｐめっきを採用する場合に
は、めっき中のＰ含有量を０．５〜７％に制御すること
が好ましい。このＰ含有量が０．５％未満では、めっき
層の表面硬度が不十分になり、７％を超えると、めっき
層の引張り応力が増加し、靭性及び耐衝撃性の低下を招
いたり、めっき層と母材の密着性が悪くなることがある
からである。尚Ｐ含有量の好ましい範囲は、１〜５％程
度である。
は、めっき中のＰ含有量を０．５〜７％に制御すること
が好ましい。このＰ含有量が０．５％未満では、めっき
層の表面硬度が不十分になり、７％を超えると、めっき
層の引張り応力が増加し、靭性及び耐衝撃性の低下を招
いたり、めっき層と母材の密着性が悪くなることがある
からである。尚Ｐ含有量の好ましい範囲は、１〜５％程
度である。
【００２２】また電気Ｎｉ系めっき層の下地層として、
アルマイト処理層や無電解Ｎｉ系めっき層を形成して複
層構造とすることによって、要求される寸法精度をより
有利に達成することができる。
アルマイト処理層や無電解Ｎｉ系めっき層を形成して複
層構造とすることによって、要求される寸法精度をより
有利に達成することができる。
【００２３】更に本発明のスクロール部材では、上記電
気Ｎｉ系めっきの場合に限らず、Ｎｉ系めっき層に下地
層を形成することが好ましい。例えば、アルマイト処
理，ジンケート処理，Ｓｎ置換処理等の下地処理を行う
ことにより、めっき層と鋳造Ａｌ合金間の密着性を強固
なものとすることができる。特に３〜５μｍ以上のアル
マイト処理層を下地として形成することにより、従来の
各種表面処理層に比較して非常に優れた耐摺動摩耗性を
得ることが可能である。
気Ｎｉ系めっきの場合に限らず、Ｎｉ系めっき層に下地
層を形成することが好ましい。例えば、アルマイト処
理，ジンケート処理，Ｓｎ置換処理等の下地処理を行う
ことにより、めっき層と鋳造Ａｌ合金間の密着性を強固
なものとすることができる。特に３〜５μｍ以上のアル
マイト処理層を下地として形成することにより、従来の
各種表面処理層に比較して非常に優れた耐摺動摩耗性を
得ることが可能である。
【００２４】下地層として形成されることのあるアルマ
イト処理層は、例えば硫酸浴、リン酸浴又はシュウ酸
浴、更にはこれらの混合浴等を用いることによって形成
することができるが、硬質アルマイト処理層であること
が好ましい。
イト処理層は、例えば硫酸浴、リン酸浴又はシュウ酸
浴、更にはこれらの混合浴等を用いることによって形成
することができるが、硬質アルマイト処理層であること
が好ましい。
【００２５】スクロール型流体機械全体の軽量化を達成
するという観点からすれば、前記固定スクロール及び旋
回スクロールのいずれもがＡｌ合金を母材とするスクロ
ール部材によって構成されたものであることが好まし
く、本発明のスクロール部材を固定スクロール及び旋回
スクロールの両方に採用することによって、疲労特性に
優れていることは勿論のこと、耐摩耗性及び靭性が著し
く改善されたスクロール型流体機械が実現できる。
するという観点からすれば、前記固定スクロール及び旋
回スクロールのいずれもがＡｌ合金を母材とするスクロ
ール部材によって構成されたものであることが好まし
く、本発明のスクロール部材を固定スクロール及び旋回
スクロールの両方に採用することによって、疲労特性に
優れていることは勿論のこと、耐摩耗性及び靭性が著し
く改善されたスクロール型流体機械が実現できる。
【００２６】尚、固定スクロール又は旋回スクロールの
いずれかに本発明のスクロール部材を採用すると共に、
他方のスクロールをＡｌ合金を母材とし、該母材表面の
少なくとも摺動作用部分に、Ｃｒ系めっき層又はＦｅ系
めっき層が形成されたスクロール部材を用いる様な構成
であっても良い。これらのめっき層は、電気Ｎｉ−Ｐめ
っき層との馴染み性が良好であり、この様なめっき層を
表面に形成したスクロール部材と本発明のスクロール部
材を組み合わせることによっても、従来技術で示した不
都合を生じることなく、スクロール型流体機械の特性を
著しく改善することができる。
いずれかに本発明のスクロール部材を採用すると共に、
他方のスクロールをＡｌ合金を母材とし、該母材表面の
少なくとも摺動作用部分に、Ｃｒ系めっき層又はＦｅ系
めっき層が形成されたスクロール部材を用いる様な構成
であっても良い。これらのめっき層は、電気Ｎｉ−Ｐめ
っき層との馴染み性が良好であり、この様なめっき層を
表面に形成したスクロール部材と本発明のスクロール部
材を組み合わせることによっても、従来技術で示した不
都合を生じることなく、スクロール型流体機械の特性を
著しく改善することができる。
【００２７】また、本発明のスクロール部材を、固定ス
クロール又は旋回スクロールのいずれかが鋳鉄等によっ
て構成されたスクロール型流体機械の他方のスクロール
として用いてもよい。
クロール又は旋回スクロールのいずれかが鋳鉄等によっ
て構成されたスクロール型流体機械の他方のスクロール
として用いてもよい。
【００２８】本発明のスクロール部材の母材として用い
られるＡｌ合金としては、各種鋳造材を用いることがで
き、固定スクロール及び旋回スクロールの両方が本発明
のスクロール部材を用いる場合には、ＡＣ８Ａ，ＡＣ８
Ｃ，ＡＤＣ１０，ＡＤＣ１２などの鋳造Ａｌ合金が例示
できる。尚、固定スクロール又は旋回スクロールのいず
れか一方のみに、本発明のスクロール部材を用い、他方
のスクロールとして例えば鋳鉄を用いる場合には、固定
スクロールと旋回スクロールの熱膨張率の差を少なくす
ることを目的として、Ｓｉを８％以上含有する鋳造Ａｌ
合金を用いることが推奨される。
られるＡｌ合金としては、各種鋳造材を用いることがで
き、固定スクロール及び旋回スクロールの両方が本発明
のスクロール部材を用いる場合には、ＡＣ８Ａ，ＡＣ８
Ｃ，ＡＤＣ１０，ＡＤＣ１２などの鋳造Ａｌ合金が例示
できる。尚、固定スクロール又は旋回スクロールのいず
れか一方のみに、本発明のスクロール部材を用い、他方
のスクロールとして例えば鋳鉄を用いる場合には、固定
スクロールと旋回スクロールの熱膨張率の差を少なくす
ることを目的として、Ｓｉを８％以上含有する鋳造Ａｌ
合金を用いることが推奨される。
【００２９】以下本発明を実施例によって更に詳細に説
明するが、下記実施例は本発明を限定する性質のもので
はなく、前・後記の趣旨に徴して設計変更することはい
ずれも本発明の技術的範囲に含まれるものである。
明するが、下記実施例は本発明を限定する性質のもので
はなく、前・後記の趣旨に徴して設計変更することはい
ずれも本発明の技術的範囲に含まれるものである。
【００３０】
実施例１ ＡＣ８Ｃ鋳造材を母材として用い、脱脂，水洗，活性化
処理，水洗，りん酸アルマイト処理の各工程の後、市販
のめっき液を用いた無電解Ｎｉ−Ｐめっき処理、或いは
下記条件により電気Ｎｉ−Ｐめっき処理を施し、平行部
φ６ｍｍの回転曲げ試験片を得た。 （電気Ｎｉ−Ｐめっき処理の条件） めっき浴組成：ＮｉＳＯ4 ・６Ｈ2 Ｏ ２００ｇ／ｌ ＮｉＣｌ2 ・６Ｈ2 Ｏ ５０ｇ／ｌ Ｈ3 ＰＯ3 ４〜４０ｇ／ｌ Ｈ3 ＰＯ4 ５０ｇ／ｌ サッカリン ０〜１．０ｇ／ｌ 温度 ：６０±５℃ ｐＨ ：１±０．５ 電流密度 ：４〜３０Ａ／ｄｍ2 攪拌手段 ：エアー攪拌
処理，水洗，りん酸アルマイト処理の各工程の後、市販
のめっき液を用いた無電解Ｎｉ−Ｐめっき処理、或いは
下記条件により電気Ｎｉ−Ｐめっき処理を施し、平行部
φ６ｍｍの回転曲げ試験片を得た。 （電気Ｎｉ−Ｐめっき処理の条件） めっき浴組成：ＮｉＳＯ4 ・６Ｈ2 Ｏ ２００ｇ／ｌ ＮｉＣｌ2 ・６Ｈ2 Ｏ ５０ｇ／ｌ Ｈ3 ＰＯ3 ４〜４０ｇ／ｌ Ｈ3 ＰＯ4 ５０ｇ／ｌ サッカリン ０〜１．０ｇ／ｌ 温度 ：６０±５℃ ｐＨ ：１±０．５ 電流密度 ：４〜３０Ａ／ｄｍ2 攪拌手段 ：エアー攪拌
【００３１】上記試験片を用いて、ビッカース硬度を測
定すると共に、靭性の評価を目的として、めっき表面か
らのビッカース圧子押し込みによる割れ発生荷重を測定
した。さらに疲労強度は、小野式回転曲げ疲労試験によ
り最大荷重１５kgf/mm2 により行い、硬質アルマイト処
理材との比較により以下の様に評価した。 ［疲労強度評価基準］硬質アルマイト処理材（Ｎｏ．１
０）と比較して、 ◎：＋１００％以上の寿命向上 ○：＋５０％以上の寿命向上 △：同程度の寿命（−５０％〜＋５０％） ×：−５０％以下の寿命低下 結果は表１に示す。
定すると共に、靭性の評価を目的として、めっき表面か
らのビッカース圧子押し込みによる割れ発生荷重を測定
した。さらに疲労強度は、小野式回転曲げ疲労試験によ
り最大荷重１５kgf/mm2 により行い、硬質アルマイト処
理材との比較により以下の様に評価した。 ［疲労強度評価基準］硬質アルマイト処理材（Ｎｏ．１
０）と比較して、 ◎：＋１００％以上の寿命向上 ○：＋５０％以上の寿命向上 △：同程度の寿命（−５０％〜＋５０％） ×：−５０％以下の寿命低下 結果は表１に示す。
【００３２】
【表１】
【００３３】Ｎｏ．１〜７は本発明の実施例であり、表
面硬度はいずれもＨｖ６００を上回っており、靭性も良
好であり、しかも疲労強度にも優れていることが分か
る。
面硬度はいずれもＨｖ６００を上回っており、靭性も良
好であり、しかも疲労強度にも優れていることが分か
る。
【００３４】一方、Ｎｏ．８，９は、本発明で規定する
要件を満足していない比較例であり、めっき層が薄過ぎ
るのでビッカース硬度が小さく、しかも疲労強度の向上
効果も見られない。Ｎｏ．１０，１１は硬質アルマイト
処理が施された従来例であり、表面硬度，靭性及び疲労
強度のいずれも本発明例に劣っている。
要件を満足していない比較例であり、めっき層が薄過ぎ
るのでビッカース硬度が小さく、しかも疲労強度の向上
効果も見られない。Ｎｏ．１０，１１は硬質アルマイト
処理が施された従来例であり、表面硬度，靭性及び疲労
強度のいずれも本発明例に劣っている。
【００３５】
【発明の効果】本発明は以上の様に構成されているの
で、硬度，靭性，疲労強度のいずれをも高度なレベルで
満足することのできるスクロール部材を得ることがで
き、従来では困難とされていた条件でのスクロール部材
の設計を可能とすることによって、スクロール流体機械
の軽量化及び高効率化を達成できることとなった。
で、硬度，靭性，疲労強度のいずれをも高度なレベルで
満足することのできるスクロール部材を得ることがで
き、従来では困難とされていた条件でのスクロール部材
の設計を可能とすることによって、スクロール流体機械
の軽量化及び高効率化を達成できることとなった。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 杵渕 雅男 兵庫県神戸市西区高塚台１丁目５番５号 株式会社神戸製鋼所神戸総合技術研究所内
Claims (5)
- 【請求項１】 スクロール型流体機械に用いられるスク
ロール部材であって、Ａｌ合金鋳造材を母材とし、該母
材表面の少なくとも摺動作用部分に厚さ１μｍ以上のＮ
ｉ系めっき層が形成されたものであることを特徴とする
疲労強度に優れたスクロール部材。 - 【請求項２】 前記Ｎｉ系めっき層が、無電解めっきよ
りなる請求項１に記載のスクロール部材。 - 【請求項３】 前記Ｎｉ系めっき層の下地層として、ア
ルマイト処理層が形成されたものである請求項１または
２に記載のスクロール部材。 - 【請求項４】 前記Ｎｉ系めっき層に圧縮応力が付与さ
れたものである請求項１〜３のいずれかに記載のスクロ
ール部材。 - 【請求項５】 固定スクロール又は旋回スクロールのい
ずれか若しくは両方が請求項１〜４のいずれかに記載の
スクロール部材よりなるものであることを特徴とするス
クロール型流体機械。
Priority Applications (1)
| Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
|---|---|---|---|
| JP22827695A JPH0972288A (ja) | 1995-09-05 | 1995-09-05 | 疲労強度に優れたスクロール部材及びスクロール型流体機械 |
Applications Claiming Priority (1)
| Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
|---|---|---|---|
| JP22827695A JPH0972288A (ja) | 1995-09-05 | 1995-09-05 | 疲労強度に優れたスクロール部材及びスクロール型流体機械 |
Publications (1)
| Publication Number | Publication Date |
|---|---|
| JPH0972288A true JPH0972288A (ja) | 1997-03-18 |
Family
ID=16873949
Family Applications (1)
| Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
|---|---|---|---|
| JP22827695A Withdrawn JPH0972288A (ja) | 1995-09-05 | 1995-09-05 | 疲労強度に優れたスクロール部材及びスクロール型流体機械 |
Country Status (1)
| Country | Link |
|---|---|
| JP (1) | JPH0972288A (ja) |
Cited By (3)
| Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
|---|---|---|---|---|
| BE1011124A3 (nl) * | 1997-04-22 | 1999-05-04 | Atlas Copco Airpower Nv | Spiraalcompressor. |
| DE102005041078A1 (de) * | 2005-08-30 | 2007-03-01 | Fraunhofer-Gesellschaft zur Förderung der angewandten Forschung e.V. | Verfahren zur Herstellung eines Verbundkörpers mit einer druckeigenspannungsbelasteten galvanischen Beschichtung |
| JP2008002421A (ja) * | 2006-06-26 | 2008-01-10 | Matsushita Electric Ind Co Ltd | 圧縮機 |
-
1995
- 1995-09-05 JP JP22827695A patent/JPH0972288A/ja not_active Withdrawn
Cited By (4)
| Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
|---|---|---|---|---|
| BE1011124A3 (nl) * | 1997-04-22 | 1999-05-04 | Atlas Copco Airpower Nv | Spiraalcompressor. |
| DE102005041078A1 (de) * | 2005-08-30 | 2007-03-01 | Fraunhofer-Gesellschaft zur Förderung der angewandten Forschung e.V. | Verfahren zur Herstellung eines Verbundkörpers mit einer druckeigenspannungsbelasteten galvanischen Beschichtung |
| DE102005041078B4 (de) * | 2005-08-30 | 2007-05-24 | Fraunhofer-Gesellschaft zur Förderung der angewandten Forschung e.V. | Verfahren zur Herstellung eines Verbundkörpers mit einer druckeigenspannungsbelasteten galvanischen Beschichtung |
| JP2008002421A (ja) * | 2006-06-26 | 2008-01-10 | Matsushita Electric Ind Co Ltd | 圧縮機 |
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Legal Events
| Date | Code | Title | Description |
|---|---|---|---|
| A300 | Withdrawal of application because of no request for examination |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A300 Effective date: 20021105 |