JPH0968601A - 被膜を備えた光学物品およびその製造方法 - Google Patents

被膜を備えた光学物品およびその製造方法

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JPH0968601A
JPH0968601A JP7221952A JP22195295A JPH0968601A JP H0968601 A JPH0968601 A JP H0968601A JP 7221952 A JP7221952 A JP 7221952A JP 22195295 A JP22195295 A JP 22195295A JP H0968601 A JPH0968601 A JP H0968601A
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layer
hard coat
film thickness
antireflection film
thickness
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JP7221952A
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English (en)
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Tetsuo Suzuki
哲男 鈴木
Hiroshi Niikura
宏 新倉
Atsushi Abe
淳 阿部
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Nikon Corp
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Abstract

(57)【要約】 【課題】耐環境性が大きく、透明にすることが可能であ
り、干渉縞の発生を抑制する作用のある被膜を、気相成
長法により、連続した工程で形成するための被膜つき物
品の製造方法を提供する。 【課題解決手段】合成樹脂基材と、前記基材上に形成さ
れ、Si系および/またはTi系化合物の少なくとも一
方を含み、厚さ方向に向かって屈折率が変化している、
CVD法により形成された変性層と、前記変性層上に形
成され、前記変性層よりも相対的に厚い膜厚を有し、か
つ、屈折率が一定であり、SiおよびOを有する、CV
D法により形成されたハードコート層と、前記ハードコ
ート層上に真空蒸着法により形成された無機酸化物から
なる反射防止膜とを有する光学物品。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、耐擦傷性向上のための
硬化層を表面に備えた物品の製造方法に係わり、特に、
CRTディスプレー、光学用レンズ、液晶表示素子など
の光学的物品の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】眼鏡用プラスチックレンズ等の光学物品
の耐擦傷性を向上させるために、ハードコートと呼ばれ
る被膜を表面に形成する技術が知られている。この被膜
を形成するために、従来、シランカップリング剤に対象
物を浸漬する浸漬表面処理(ディッピング)技術が用い
られている。この浸漬表面処理技術は、対象物の素材が
合成樹脂である場合、耐熱性の点などから非常に有効な
技術であることが知られている。
【0003】しかしながら、浸漬表面処理技術において
は、被膜の材質が異なると、浸漬剤の組成も異なる。こ
のため、例えば、プラスチックレンズにハードコートを
形成する場合には、新たな高屈折率レンズが開発される
のに伴い、これに対応可能な屈折率のハードコートを形
成するための浸漬剤を開発しなければならない。そのた
め、浸漬剤の開発費用の負担が重くなってきている。
【0004】また、プラスチックレンズの場合、レンズ
の屈折率ごとに用いる浸漬剤が異なるため、浸漬表面処
理用の装置等の設備を、屈折率ごとに、複数台設置しな
ければならない。このため、設備の減価償却費が毎年増
大する傾向にある。
【0005】さらに、最近では特注品のプラスチックレ
ンズを受注する傾向がある。特に、眼鏡レンズの場合、
1ペア(2枚)で受注し、そのまま製造工場の一貫製造
ラインを流れる工程などが検討されている。この場合、
特注品がどのような屈折率であってもハードコートを形
成できるようにするためには、常に全屈折率分の浸漬表
面処理装置ラインを設置しておく必要があり、生産効率
が悪くなる欠点を有している。
【0006】また、従来の浸漬表面処理法でハードコー
トを形成する場合、コートする前の表面処理として、ア
ルカリ溶液に浸すというような表面の活性化処理等が不
可欠である。しかしながら、最近、環境問題などからこ
れらに使用される廃液処理等の問題が起こり始めてい
る。
【0007】さらにまた、従来の被膜の製造工程では縮
合硬化工程が必須であり、この工程に数時間要するた
め、納期の短縮化を計る上で非常に重要な改善上の課題
となっている。
【0008】また、複数の被膜を積層する必要のある対
象物の場合、これらの被膜を全て浸漬表面処理法で形成
すると、高価な浸漬剤が何種類も必要になり、製造コス
トに見合わなくなるという問題も生じている。
【0009】そこで、浸漬表面処理法を用いずに被膜を
形成する技術として、プラズマCVDによって被膜を製
造する技術が、特開平5ー140356に開示されてい
る。この技術は、車両などに使われる透明樹脂製窓に、
密着性及び表面硬度を向上させるための表面硬化膜を形
成するために、プラズマCVDによってシリコン含有膜
(SiOx膜)を形成するものである。
【0010】また、複数層の被膜を形成するために、ヨ
ーロッパ特許EP−203730号においては、光学部
品基材上に有機ケイ素化合物を浸漬表面処理法により形
成し、その上に反射防止膜を形成し、さらにその上に有
機物硬化性物質(撥水性コート)を形成させるものが提
案されている。
【0011】また、特開昭62−247302号公報で
は、無機物の反射防止コート膜上に、シラザン化合物を
形成させ、撥水性を持たせ表面を改質させる技術が開示
されている。
【0012】また、眼鏡プラスチックレンズの場合に
は、プラスチックレンズを保護するためのハードコート
と呼ばれる有機シリコーン被膜を浸漬表面処理法(ディ
ッピング法)によって形成した後、反射防止膜を真空蒸
着法により形成する方法を用いることにより、浸漬剤の
種類を減らして製造コストを減らす方法も知られてい
る。
【0013】一方、最近では、眼鏡用プラスチックレン
ズに対しては、耐久性の向上が要求されてきている。特
に、プラスチックレンズの素材の高屈折率化に伴い、耐
久性の中でも、機械的耐久性、すなわち、耐温水性、耐
熱性、耐酸性、耐擦傷性に対する要求が大きい。また、
干渉縞防止等の美的外観の向上も望まれている。
【0014】また、特開平7−56001号および特開
平7−56002号公報には、プラスチックレンズのハ
ードコート層の屈折率を、膜厚方向について変化させる
ことにより、干渉縞の発生を抑制することが開示されて
いる。このために、ハードコート層を高屈折率材料と低
屈折率材料とを混合した材料で形成し、膜厚方向につい
て混合割合を変化させることにより、屈折率を変化させ
ている。
【0015】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、上述の
特開平5−140356号公報に記載されている方法で
形成された被膜は、耐温水性が低く、眼鏡用プラスチッ
クレンズ等の耐温水性が要求される対象物には使用でき
ない。具体的には、この方法で形成された被膜は、80
℃、10分の温水浸漬テストにおいて、膜が剥離してし
まう。
【0016】また、EP−203730号等のように、
浸漬表面処理法と、他の気相成長方法とを組み合わせて
複数層の被膜を形成する方法は、浸漬表面処理法により
形成する被膜の硬化時間が非常に長時間必要である。ま
た、次の反射防止膜の形成工程へ移るために、一度大気
に晒される状態が避けられず、一貫した工程を連続して
行うことが困難である。
【0017】また、特開平7−56001号および特開
平7−56002号公報記載の技術においては、ハード
コート層の屈折率を変化させることにより、干渉縞の発
生を抑制することは可能であるが、この層を、プラスチ
ックレンズを保護するためのハードコート層として実際
に作用させるためには、硬い膜にする必要がある。その
ために、ハードコート層は、通常、厚い膜(通常3μm
以上)に形成される。
【0018】しかしながら、前記の開示された技術にお
いて、プラズマ中に発生する金属および酸素などの各正
負イオンからなる空間電荷を平衡状態に保つためには、
それらの各正負イオンの安定した制御が必要であるが、
実際にはこの制御を長い時間にわたり行なうと、基板側
に発生するバイアス電圧が不安定になりやすい。そのた
め、プラズマによる放電が継続あるいは中断される現象
が伴い、形成される薄膜内部の原子組成比が不均一にな
り、ハードコート層内の酸素結合状態の欠損が生じる。
これにより、形成される酸化物膜が低級酸化物を含むよ
うになり、ハードコート層自体が吸収を生じ着色してし
まう。したがって、特開平7−56001号および特開
平7−56002号公報記載の技術で、実際にハードコ
ート層を形成すると、ハードコート層が着色してしまい
実用上問題等が生じる。この着色は、ハードコート層の
機械的耐久性を向上させるために、膜厚を大きくするほ
ど顕著になる。
【0019】よって、眼鏡等の透明なプラスチックレン
ズに、特開平7−56001号および特開平7−560
02号公報記載の技術を実施することは、実際には非常
に困難である。
【0020】また、本発明者は、特開平7−56001
号および特開平7−56002号のように、プラスチッ
ク基材表面にCVD法によりハードコート層を形成し、
ハードコート層の屈折率を膜厚方向について変化させる
ことを試みた。しかし、この場合、ハードコート層に吸
収が生じてしまうという問題点が生じた。また、ハード
コード層を形成するにあたり、ハードコート層の屈折率
が徐々に変化するように膜を形成することが困難であっ
た。つまり、ハードコート層の屈折率にむらが生じてし
まうような状態になり、不安定な屈折率の変化状態にな
る問題点が発生した。さらに、このむらの部分の耐久性
が落ち、脆くなってしまうこともわかった。
【0021】また、最近、特に眼鏡レンズの分野におい
て、レンズに対する使用者の要求が多様化するととも
に、基材の屈折率も多様化し、各々の基材に適応する膜
を形成する必要性が生じてきている。そのため、前記問
題点のあるハードコート層上に形成する反射防止膜に適
応する反射防止膜の材料、構成、膜厚、製造方法などを
検討しなければ、多様化する使用者の要求に適応できな
くなってきた。
【0022】本発明は、上記問題点を解決し、耐環境性
が大きく、透明にすることが可能であり、干渉縞の発生
を抑制する作用のある被膜を備えた物品と、このような
被膜を、気相成長法により連続した工程で形成すること
ができる製造方法を提供することを目的とする。
【0023】
【課題を解決するための手段】本発明者は、様々な屈折
率を有するプラスチック基材表面に、ハードコート層を
形成し、レンズの耐久性を向上させながら、前記屈折率
を徐々に変化させることの困難さを克服し、かつ、反射
防止効果の優れた光学物品を得ることを試みた。
【0024】その結果、ハードコート層の耐久性と膜厚
との関係を見直すことにした。つまり、十分な耐久性の
保持のために、従来3μm以上の膜厚でハードコート層
を形成していたが、屈折率を徐々に変化させるには、こ
の膜厚は厚すぎることが判った。しかし、屈折率を徐々
に変化させやすいように、ハードコート層の膜厚を薄く
し過ぎると、本来の耐久性という面が劣ってしまうこと
も判明した。
【0025】そして、本発明者は、ハードコート層の耐
久性を保持しつつ、吸収の起こらないハードコート層を
簡単に形成し、かつ、反射防止効果も優れた光学物品を
得ることを目的とした。
【0026】上記目的を達成するために、本発明によれ
ば、合成樹脂基材と、前記基材上に形成され、Si系お
よび/またはTi系化合物の少なくとも一方を含み、厚
さ方向に向かって屈折率が変化している、CVD法によ
り形成された変性層と、前記変性層上に形成され、前記
変性層よりも相対的に厚い膜厚を有し、かつ、屈折率が
一定であり、SiおよびOを有する、CVD法により形
成されたハードコート層と、前記ハードコート層上に真
空蒸着法により形成された無機酸化物からなる反射防止
膜とを有することを特徴とする光学物品が提供される。
【0027】反射防止膜は、例えば、基材側から順に積
層された第1、第2、第3、第4の層からなり、第1お
よび第3の層は、酸化チタンを含み、第2および第4の
層は、酸化珪素を含む構成にすることが可能である。
【0028】このとき、層の幾何的膜厚と、その層の屈
折率との積を、その層の光学的膜厚とした場合に、前記
第1および第2の層の光学的膜厚は、それぞれ、0.0
5×λ以上0.15×λ以下であり、第3の層の光学的
膜厚は、0.36×λ以上0.49×λ以下であり、第
4の層の光学的膜厚は、0.15×λ以上0.35×λ
以下であることが望ましい。但し、λは、本発明の被膜
を備えた物品に入射する光の中心波長であり、本発明で
は、450以上550以下の任意の値とする。
【0029】また、さらには、第1および第3の層は、
TiO2からなり、第2および第4の層は、SiO2から
なることが望ましい。
【0030】また、変性層は、厚さ方向について屈折率
を変化させ、ハードコート層は、厚さ方向について屈折
率を一定にする構成にすることができる。また、変性層
を、ハードコート層より膜厚が厚い構成にすることもで
きる。
【0031】また、上記目的を達成するために、本発明
によれば、被膜を備えた光学物品の製造方法であって、
透明基材を用意し、Siを含む有機化合物ガスおよびT
iを含む有機化合物ガスの少なくとも一方を用い、プラ
ズマを用いた化学気相成長法により、前記基材上に変性
層を形成する第1工程と、Siを含む有機化合物ガスと
酸素ガスとの混合ガスを用い、プラズマを用いた化学気
相成長法により、前記変性層よりも相対的に厚い膜厚を
有するハードコート層を前記変性層上に形成する第2工
程と、真空蒸着法により多層膜からなる反射防止膜を形
成する第3工程を有する光学物品の製造方法が提供され
る。
【0032】本発明では、基体として、ポリカーボネイ
ト、ポリメチルメタクリレートおよびその共重合体、ジ
エチレングリコールビスアリルカーボネイト(ピッツバ
ークプレート ガラス社製 CR−39)の重合体、ポ
リエステル、不飽和ポリエステル、アクリロニトリルー
スチレン共重合体、塩化ビニル、ポリウレタン、エポキ
シ樹脂、ハロゲン(但し、フッ素を除く)および水酸基
を含有するモノまたはジ(メタ)アクリレートとイソシ
アネート化合物との重合体またはその共重合体等から任
意に選択された材料からなる基体を用いることができ
る。ポリエステルのなかでは、特にポリエチレンテレフ
タレートが好ましく使用される。
【0033】また、これらの中で特に好ましくは、ジエ
チレングリコールビスアリルカーボネイトの重合体、ポ
リウレタン、および、ハロゲン(但し、フッ素を除く)
および水酸基を含有するモノまたはジ(メタ)アクリレ
ートとイソシアネート化合物と重合体またはその共重合
体のうちのいずれかからなる基体が使用できる。
【0034】本発明の製造方法において、第1および第
2の工程において用いられるSiを含む有機化合物とし
ては、テトラエトキシシラン Si(OC25)4、ジメ
トキシジメチルシラン (CH3)2Si(OCH3)2、メチ
ルトリメトキシシラン CH3Si(OCH3)3、テトラ
メトキシシラン Si(OCH3)4、エチルトリメトキシ
シラン C25Si(OCH3)3、ジエトキシジメチルシ
ラン (C25O)2Si(CH3)2、メチルトリエトキシ
シラン CH3Si(OC25)3等が好適に用いられる。
【0035】また、本発明の製造方法において、第1の
工程において用いられるTiを含む有機化合物として
は、テトラメトキシチタン Ti(OCH3)4、テトラエ
トキシチタン Ti(OC25)4、テトラ-i-プロポキシ
チタン Ti(O-i-C37)4、テトラ-n-プロポキシチ
タン Ti(O-n-C37)4、テトラ-n-ブトキシチタン
Ti(O-n-C49)4、テトラ-i-ブトキシチタン Ti
(O-i-C49)4、テトラ-sec-ブトキシチタン Ti(O
-sec-C49)4、テトラ-t-ブトキシチタン Ti(O-t-
49)4、テトラジエチルアミノチタン Ti(N(C2
5)2)4等が好適に用いられる。
【0036】これらのSiを含む有機化合物およびTi
を含む有機化合物は、その一種類を単独で用いても良
く、また、二種類以上を併用してもよい。
【0037】また、本発明において使用されるプラズマ
を用いた化学気相成長(CVD)法は、原料ガスに熱エ
ネルギー及び電気的エネルギーを与えることにより放電
させ、そのプラズマ雰囲気中の非熱平衡状態において反
応を促進させ、基体上に薄膜を堆積させる方法であり、
通常使われてるものには平行平板電極型、容量結合型ま
たは誘導結合型等がある。特に本発明においては、基体
の主平面に平行に電界と磁界とをかけるプラズマ促進C
VD(PECVD)法により形成することが好適であ
る。
【0038】というのは、電界と平行に磁界を印加する
ことにより、対向する電極の間には磁界による電場が起
こり、プラズマ中のイオンは基板ホルダー側に加速され
る。また、この磁界による電場により、プラズマ密度が
均一化され、基板へのイオン損傷および温度上昇などが
抑制できる。従って、特にプラスチックレンズのような
透明な基体材料に薄膜を形成させる場合や、イオン損傷
により側鎖基が破断されやすい材料や耐熱性の低い材料
からなる基体を用いる場合、基体の損傷が少ないため、
磁界をかけるプラズマ促進CVDが非常に有効である。
【0039】
【作用】上述のように、本発明では、基材の上に、変性
層と、ハードコート層と、反射防止膜とを備える。ハー
ドコート層は、SiおよびOを含む膜の組成と組織が耐
環境性に優れていることに加え、その組成から厚膜を容
易に形成できるため、基体を保護する。また、変性層
は、ハードコート層と基材との密着性を向上させるとと
もに、ハードコート層に加わる衝撃を吸収することによ
り、被膜全体の耐環境性を向上させる。反射防止膜は、
干渉縞が発生するのを抑制し、美的外観に優れた物品が
得られる。
【0040】変性層は、Siの量および/またはTiの
量を、膜厚方向について変化させることにより、膜厚方
向について、容易に屈折率を変化させることができる。
これにより、基体と被膜との屈折率の差による干渉縞の
発生を防ぐことができる。
【0041】また、ハードコート層は、その組成から酸
素量を調節することにより、膜厚が厚い場合にも容易に
透明になるので、透明なハードコートが形成できる。ま
た、変性層は、基材を保護するハードコート層ではない
ため、膜厚が薄くてもよく、変性層が有色のTiを含む
場合にも、薄くすることにより、透明にできる。反射防
止膜は、光学的条件を満たす薄膜にすることができるた
め、反射防止膜も、透明にできる。このように、本発明
の基材上に形成される各層を、透明にすることができ
る。したがって、眼鏡用プラスチックレンズ用の被膜を
形成するために本発明の方法を好適に用いることができ
る。
【0042】また、変性層、ハードコート層は、いずれ
も気相成長法で形成することができるため、複数層から
なる被膜を連続した工程で形成することができる。
【0043】本願発明の変性層とは、基材表面上に形成
され、基材側から膜厚方向に徐々に屈折率が変化してい
る層であり、変性層内の物質の組成比が変化しているも
のである。またさらに、変性層を設けることにより、耐
衝撃性が向上することも確認されているが、これは、従
来のハードコート層の膜厚が3μm以上であったために
ハードコート層の残留内部応力が高くなっていいたもの
を、本願発明のような変性層を基材とハードコート層と
の間に設けることにより、ハードコート層に残留する内
部応力を低くすることが可能である。従って、内部応力
を低くできるため、耐温水性、耐熱性等によって、引き
起こされるクラックなどが回避できる効果がある。
【0044】つまり、変性層は、ハードコート層の内部
応力の低下によるクラックの抑制、および、耐衝撃性を
向上させることができる層とも言える。さらにまた、基
材との密着力が向上するため、耐熱性等で起こる界面破
壊を防止できるのである。また、耐衝撃性の向上は、変
性層内の原子密度の変化により内部応力あるいは音響イ
ンピーダンス等が変化することにも起因していると思わ
れるが定かではない。
【0045】尚、変性層を形成する前に、基材表面を酸
素プラズマにより活性化処理することにより、ハードコ
ート層の膜厚を従来のもののように厚くしても、耐衝撃
性を向上させることが可能である。
【0046】また、本願発明のハードコート層の屈折率
は、一定であり、従来のように、3μm弱の膜厚を有す
るハードコート層の屈折率を変化させる必要がない。こ
のため、従来のように、ハードコート層の屈折率を徐々
に変化させた場合に生じていた膜形成時の制御性困難や
膜厚むらおよび吸収等の発生というような問題点を生じ
ることがない。
【0047】
【実施例】以下、本発明の一実施例として、眼鏡用プラ
スチックレンズについて説明する。
【0048】(実施例1)まず、本発明の第1の実施例
として、基体のプラスチックレンズの表面に、変性層
と、第1、第2、第3のハードコート層と、多層の反射
防止膜とからなる被膜を備えたプラスチックレンズを製
造する方法について説明する。
【0049】基体のプラスチックレンズは、ジエチレン
グリコールビスアリルカーボネート(ピッツバーク プ
レート ガラス社製 CR−39)の重合体からなって
いる。
【0050】この基体上に、バルツェルス(Balze
rs)社製PECVD装置と真空蒸着装置とを用いて、
上述の構成の被膜を形成する。PECVD装置の真空室
と真空蒸着装置の真空室とは、ロードロック室で連結さ
れている。ロードロック室は、基体を、PECVD装置
の真空室から真空蒸着室の真空室へ真空を保った状態で
移動させるための空間である。
【0051】PECVD装置は、真空室外に電磁コイル
を備えている。電磁コイルは、真空室内に配置された一
対の電極の間の空間に、電界と平行な方向に磁界をかけ
るように配置されている。電極間の空間には、カローセ
ルタイプの基体ホルダーが、基体の主平面を電界の向き
と平行に保持するように配置されている。
【0052】蒸着装置は、電子ビームによって蒸着源を
加熱する構成である。
【0053】まず、準備工程として、基体のレンズを超
音波洗浄機に通して洗浄し、PECVD装置の真空室内
の基体ホルダーに設置する。その後、真空室内を2.7
×10~4Paまで排気する。
【0054】つぎに、変性層を形成する工程について説
明する。
【0055】真空室に接続されたメチルトリエトキシシ
ランの入った容器を加熱することにより、メチルトリエ
トキシランを気化させ、メチルトリエトキシランガスを
流量100SCCMで真空室内に流す。真空室の圧力が
0.7Paになったら、真空室外の電磁石コイルに5A
の電流を流して、電極間に磁場をかけ、同時に、カソー
ドに高周波出力2KWを3分間印加する。これにより、
電極間にプラズマが発生する。磁場は、低気圧アーク放
電を安定化させる。この間のメチルトリエトキシシラン
ガスの流量は、100SCCMである。その後、カソー
ドの高周波出力を段階的に40W/minの割合で徐々
に上げていき、12分間で2.5KWに達するように制
御する。この12分間の間のメチルトリエトキシシラン
ガスの流量は、180SCCMにして一定にしておく。
【0056】この12分間で、屈折率が、段階的に変化
した変性層が形成される。変性層は、その膜厚が、つぎ
の工程で形成する第1、第2、第3のハードコート層の
膜厚をあわせた厚さよりも薄くなるように、膜厚を制御
しながら形成する。本実施例では、100nmより大き
く、900nmよりも小さい範囲に入る特定の厚さに形
成した。
【0057】つぎに、第1、第2、第3のハードコート
層を形成する工程について説明する。
【0058】変性層を形成する工程に連続させて、酸素
ガスを真空室に50SCCM流し、真空室圧力を0.5
Paにして、メチルトリエトキシシランガスの流量18
0SCCM、高周波出力2.5KW、電磁石コイル5A
で、20分間、第1のハードコート層を形成する。
【0059】その後、酸素ガス流量を100SCCMに
増加し、真空室圧力を0.8Paにすると同時に、カソ
ードの高周波出力を3KWに変え、メチルトリエトキシ
シランガスの流量180SCCM、電磁石コイル5Aの
ままで、さらに20分間、第2のハードコート層を形成
する。
【0060】最後に、酸素ガス流量を200SCCMに
増加して流し、真空室圧力をそのまま1.0Paに保持
するように排気系のコンダクタンスをバリアブルオリフ
ィスにより調整し、メチルトリエトキシシランガスの流
量180SCCM、電磁石コイル5A、カソードの高周
波出力3KWのままで、さらに第3のハードコート層を
形成する。
【0061】第1、第2、第3のハードコート層は、こ
れらの膜厚をあわせたものが、変性層の膜厚よりも厚く
なるように、膜厚を制御した。本実施例では、0.4μ
mより大きく、5μmよりも小さい範囲に入り、しか
も、変性層の膜厚よりも厚くなるように、膜厚を制御し
た。
【0062】これらの工程で、基体のレンズの両面に、
変性層、第1、第2、第3のハードコート層からなる被
膜が形成される。
【0063】つぎに上述の被膜の形成された基体レンズ
を、基体ホルダーごとロードロック室に移動して、基体
レンズの一方の面が真空蒸着装置の蒸着源の方向に向く
ように、基体レンズの向きを変え、真空蒸着室へ基体レ
ンズを送る。
【0064】そして、真空蒸着装置の真空室を1.3×
10~3 Paまで排気した後、電子ビーム加熱蒸着法に
より、蒸着源の方を向いた基体レンズ面の第3のハード
コート層の上に、下記4層から成る反射防止膜を下記蒸
着条件により形成する。但し、蒸着源として、第1層目
と第3層目は、TiOx(0<x<2)を用い、第2層
目と第4層目は、SiO2を用いる。
【0065】 真空蒸着諸条件 (但し、Aは、オングストロームを表す) 第1層目 二酸化チタン 114A(幾何的膜厚) 0.049λ(光学的膜厚) 蒸着時圧力 4×10~3Pa(O2雰囲気) 第2層目 二酸化珪素 380A(幾何的膜厚) 0.1605λ(光学的膜厚) 蒸着時圧力 1×10~3Pa 第3層目 二酸化チタン 1167A(幾何的膜厚) 0.5λ (光学的膜厚) 蒸着時圧力 5×10~3Pa(O2雰囲気) 第4層目 二酸化珪素 871A(幾何的膜厚) 0.244λ (光学的膜厚) 蒸着時圧力 1×10~3Pa 但し、上述の光学的膜厚は、その層の屈折率と幾何的膜
厚との積で定義される。また、中心波長λ=525nm
であり、第1層目と第3層目の二酸化チタンの屈折率
は、2.25、第2層目と第4層目の二酸化珪素の屈折
率は、1.47である。
【0066】これにより、基体レンズの片方の面に反射
防止膜を形成させた後、今度はレンズ基板ホルダーに付
随する基体面反転機構により、もう一方の面を蒸発源の
方向に向かせ、再び、上述と同様の蒸着条件により、反
射防止膜を形成する。
【0067】これらの工程により、基体レンズの両面
に、変性層、第1、第2、第3のハードコート層、多層
の反射防止膜を備えたプラスチックレンズが製造でき
る。
【0068】(実施例2)つぎに、本発明の第2の実施
例として、基体のプラスチックレンズの表面に、変性層
と、第1、第2、第3のハードコート層と、多層の反射
防止膜とからなる被膜が形成されたプラスチックレンズ
を製造する方法について説明する。
【0069】本実施例では、基体としてポリウレタン系
重合体からなるレンズを用いた。PECVD装置は、第
1の実施例と同じ装置を用いた。また、変性層と、第
1、第2、第3のハードコート層の膜厚は、第1の実施
例と同じにした。
【0070】まず、準備工程として、基体レンズを超音
波洗浄機に通して洗浄し、PECVD装置の真空室内の
カソード電極とアノード電極との間のカローセルタイプ
の基板ホルダーに設置し、2.7×10~4Paまで排気
する。
【0071】つぎに、変性層を形成する工程について説
明する。
【0072】真空室に接続されたメチルトリエトキシシ
ランの入った容器を加熱することにより、メチルトリエ
トキシランを気化させ、メチルトリエトキシランガスを
流量35SCCMで真空室内に流す。同時に、真空室に
接続されたジメトキシジメチルシランの入った容器を加
熱することにより、ジメトキシジメチルシランを気化さ
せ、ジメトキシジメチルシランガスを流量148SCC
Mで真空室内に流す。真空室の圧力が、0.5Paなっ
たら、ガスの流量を保持したまま、真空室外の電磁石コ
イルに5Aの電流を流して、電極間に磁場をかける。そ
して、メチルトリエトキシシランガスの流量を、1分間
当たり110SCCMの割合で徐々に増加させ、同時
に、ジメトキシジメチルシランガスの流量を、1分間当
たり98.7SCCMの割合で徐々に減少させながら、
カソードに高周波出力2KWを1.5分間印加し、1.
5分間で変性層を形成させる。
【0073】第1、第2、第3のハードコート層を形成
する工程について説明する。
【0074】さらに続いて、メチルトリエトキシシラン
のガスを流量200SCCMと酸素ガスを流量50SC
CM流し、真空室の圧力が1.0Paになって流量が安
定したところで、外部電磁石コイルに5Aの電流を流す
と同時に、カソードに高周波出力2.5KWを17分間
印加して第1のハードコート層を形成する。
【0075】さらに、酸素ガスの流量を100SCCM
に増加して、真空室の圧力が2.0Paになるように排
気系のコンダクタンスをバリアブルオリフィスにより調
整し、カソードの高周波出力を3KWに上げて、メチル
トリエトキシシランガスの流量200SCCM、外部電
磁石コイル5Aで、引き続き17分間、第2のハードコ
ート層を形成する。
【0076】最後に、酸素ガスの流量を200SCCM
に増加して、真空室の圧力2.0Pa、カソードの高周
波出力3KW、メチルトリエトキシシランガスの流量2
00SCCM、外部電磁石コイル5Aで、17分間、第
3のハードコート層を形成する。
【0077】つぎに上述の被膜の形成された基体レンズ
を、基体ホルダーごとロードロック室に移動して、基体
レンズの一方の面が真空蒸着装置の蒸着源の方向に向く
ように、基体レンズの向きを変え、真空蒸着室へ基体レ
ンズを送る。
【0078】そして、真空蒸着装置の真空室を1.3×
10~3 Paまで排気した後、電子ビーム加熱蒸着法に
より、蒸着源の方を向いた基体レンズ面の第3のハード
コート層の上に、下記4層から成る反射防止膜を下記蒸
着条件により形成する。但し、蒸着源として、第1層目
と第3層目は、TiOx(0<x<2)を用い、第2層
目と第4層目は、SiO2を用いる。
【0079】 真空蒸着諸条件 (但し、Aは、オングストロームを表す) 第1層目 二酸化チタン 130A(幾何的膜厚) 0.055λ(光学的膜厚) 蒸着時圧力 4×10~3Pa(O2雰囲気) 第2層目 二酸化珪素 333A(幾何的膜厚) 0.0915λ(光学的膜厚) 蒸着時圧力 1×10~3Pa 第3層目 二酸化チタン 1189A(幾何的膜厚) 0.5λ(光学的膜厚) 蒸着時圧力 5×10~3Pa(O2雰囲気) 第4層目 二酸化珪素 880A(幾何的膜厚) 0.242λ(光学的膜厚) 蒸着時圧力 1×10~3Pa 但し、上述の光学的膜厚は、その層の屈折率と幾何的膜
厚との積で定義される。また、中心波長λ=525nm
であり、第1層目と第3層目の二酸化チタンの屈折率
は、2.25、第2層目と第4層目の二酸化珪素の屈折
率は、1.47である。
【0080】これにより、基体レンズの片方の面に反射
防止膜を形成させた後、今度はレンズ基板ホルダーに付
随する基体面反転機構により、もう一方の面を蒸発源の
方向に向かせ、再び、上述と同様の蒸着条件により、反
射防止膜を形成する。
【0081】これらの工程により、基体レンズの両面
に、変性層、第1、第2、第3のハードコート層、多層
の反射防止膜を備えたプラスチックレンズが製造でき
る。
【0082】(実施例3)第3の実施例のプラスチック
レンズは、基体のプラスチックレンズの表面に、変性
層、第1、第2、第3のハードコート層と、多層の反射
防止膜とからなる被膜を順に備えている。この製造方法
について、説明する。変性層、第1、第2、第3のハー
ドコート層の膜厚は、第1の実施例と同じにした。
【0083】まず、準備工程として、ポリウレタン系レ
ンズを超音波洗浄機に通して洗浄後、Balzers社
製PECVD装置の真空室に設置し、2.7×10~4
aまで排気する。
【0084】つぎに、変性層を形成する工程を行う。
【0085】ジメチルジエトキシランのガスを流量11
SCCMで、テトライソプロポキシチタンのガスを流量
9SCCMで真空室内に流した。真空室の圧力が2.9
Paになったら、真空室外の電磁石コイルに2.6Aの
電流を流して、電極間に磁場をかけ、同時に、カソード
に高周波出力0.6KWを45秒間印加する。この45
秒間に、テトライソプロポキシチタンガスの流量を1分
間当たり9SCCMの割合で徐々に増加させ、同時に、
ジメチルジエトキシシランガスの流量を1分間当たり1
1SCCMの割合で徐々に減少させる。この45秒間
で、変性層を形成させる。
【0086】さらに続いて、ジメチルジエトキシシラン
のガスを流量100SCCMで、酸素ガスを流量35S
CCMで流し、真空室の圧力が2.9Paになって流量
が安定したところで、外部電磁石コイルに2.6Aの電
流を流すと同時に、カソードに高周波出力0.8KWを
25分間印加して、第1のハードコート層を形成する。
【0087】さらに、酸素ガスの流量を70SCCMに
増加して、真空室の圧力が2.9Paになるように排気
系のコンダクタンスをバリアブルオリフィスにより調整
し、カソードの高周波出力を1KWに上げて、ジメチル
ジエトキシシランガスの流量100SCCM、外部電磁
石コイル2.6Aで、引き続き25分間、第2のハード
コート層を形成する。
【0088】最後に、酸素ガスの流量を140SCCM
に増加して、他の条件は保持したまま25分間、第3の
ハードコート層を形成する。
【0089】つぎに上述の被膜の形成された基体レンズ
を、基体ホルダーごとロードロック室に移動して、基体
レンズの一方の面が真空蒸着装置の蒸着源の方向に向く
ように、基体レンズの向きを変え、真空蒸着室へ基体レ
ンズを送る。
【0090】そして、真空蒸着装置の真空室を1.3×
10~3 Paまで排気した後、電子ビーム加熱蒸着法に
より、蒸着源の方を向いた基体レンズ面の第3のハード
コート層の上に、下記4層から成る反射防止膜を下記蒸
着条件により形成する。但し、蒸着源として、第1層目
と第3層目は、TiOx(0<x<2)を用い、第2層
目と第4層目は、SiO2を用いる。
【0091】 真空蒸着諸条件 (但し、Aは、オングストロームを表す) 第1層目 二酸化チタン 130A(幾何的膜厚) 0.055λ(光学的膜厚) 蒸着時圧力 4×10~3Pa(O2雰囲気) 第2層目 二酸化珪素 333A(幾何的膜厚) 0.0915λ(光学的膜厚) 蒸着時圧力 1×10~3Pa 第3層目 二酸化チタン 1189A(幾何的膜厚) 0.5λ(光学的膜厚) 蒸着時圧力 5×10~3Pa(O2雰囲気) 第4層目 二酸化珪素 880A(幾何的膜厚) 0.242λ(光学的膜厚) 蒸着時圧力 1×10~3Pa 但し、上述の光学的膜厚は、その層の屈折率と幾何的膜
厚との積で定義される。また、中心波長λ=525nm
であり、第1層目と第3層目の二酸化チタンの屈折率
は、2.25、第2層目と第4層目の二酸化珪素の屈折
率は、1.47である。
【0092】これにより、基体レンズの片方の面に反射
防止膜を形成させた後、今度はレンズ基板ホルダーに付
随する基体面反転機構により、もう一方の面を蒸発源の
方向に向かせ、再び、上述と同様の蒸着条件により、反
射防止膜を形成する。
【0093】これらの工程により、基体レンズの両面
に、変性層、第1、第2、第3のハードコート層、多層
の反射防止膜を備えたプラスチックレンズが製造でき
る。
【0094】(実施例4)本発明の第4実施例として、
基体のプラスチックレンズの表面に、変性層と、第1、
第2、第3のハードコート層と、多層の反射防止膜とか
らなる被膜を備えたプラスチックレンズを製造する方法
について説明する。
【0095】基体のプラスチックレンズは、ジエチレン
グリコールビスアリルカーボネート(ピッツバーク プ
レート ガラス社製 CR−39)の重合体からなって
いる。
【0096】この基体上に、バルツェルス(Balze
rs)社製PECVD装置と真空蒸着装置とを用いて、
上述の構成の被膜を形成する。PECVD装置の真空室
と真空蒸着装置の真空室とは、ロードロック室で連結さ
れている。ロードロック室は、基体を、PECVD装置
の真空室から真空蒸着室の真空室へ真空を保った状態で
移動させるための空間である。
【0097】PECVD装置は、真空室外に電磁コイル
を備えている。電磁コイルは、真空室内に配置された一
対の電極の間の空間に、電界と平行な方向に磁界をかけ
るように配置されている。電極間の空間には、カローセ
ルタイプの基体ホルダーが、基体の主平面を電界の向き
と平行に保持するように配置されている。
【0098】蒸着装置は、電子ビームによって蒸着源を
加熱する構成である。
【0099】まず、準備工程として、基体のレンズを超
音波洗浄機に通して洗浄し、PECVD装置の真空室内
の基体ホルダーに設置する。その後、真空室内を2.7
×10~4Paまで排気する。
【0100】つぎに、変性層を形成する工程について説
明する。
【0101】真空室に接続されたメチルトリエトキシシ
ランの入った容器を加熱することにより、メチルトリエ
トキシランを気化させ、メチルトリエトキシランガスを
流量100SCCMで真空室内に流す。真空室の圧力が
0.7Paになったら、真空室外の電磁石コイルに5A
の電流を流して、電極間に磁場をかけ、同時に、カソー
ドに高周波出力2KWを3分間印加する。これにより、
電極間にプラズマが発生する。磁場は、低気圧アーク放
電を安定化させる。この間のメチルトリエトキシシラン
ガスの流量は、100SCCMである。その後、カソー
ドの高周波出力を段階的に40W/minの割合で徐々
に上げていき、12分間で2.5KWに達するように制
御する。この12分間の間のメチルトリエトキシシラン
ガスの流量は、180SCCMにして一定にしておく。
【0102】この12分間で、屈折率が、徐々に変化し
た変性層が形成される。変性層は、その膜厚が、つぎの
工程で形成する第1、第2、第3のハードコート層の膜
厚をあわせた厚さよりも薄くなるように、膜厚を制御し
ながら形成する。本実施例では、100nmより大き
く、900nmよりも小さい範囲に入る特定の厚さに形
成した。
【0103】つぎに、第1、第2、第3のハードコート
層を形成する工程について説明する。
【0104】変性層を形成する工程に連続させて、酸素
ガスを真空室に50SCCM流し、真空室圧力を0.5
Paにして、メチルトリエトキシシランガスの流量18
0SCCM、高周波出力2.5KW、電磁石コイル5A
で、20分間、第1のハードコート層を形成する。
【0105】その後、酸素ガス流量を100SCCMに
増加し、真空室圧力を0.8Paにすると同時に、カソ
ードの高周波出力を3KWに変え、メチルトリエトキシ
シランガスの流量180SCCM、電磁石コイル5Aの
ままで、さらに20分間、第2のハードコート層を形成
する。
【0106】最後に、酸素ガス流量を200SCCMに
増加して流し、真空室圧力をそのまま1.0Paに保持
するように排気系のコンダクタンスをバリアブルオリフ
ィスにより調整し、メチルトリエトキシシランガスの流
量180SCCM、電磁石コイル5A、カソードの高周
波出力3KWのままで、さらに第3のハードコート層を
形成する。
【0107】第1、第2、第3のハードコート層は、こ
れらの膜厚をあわせたものが、変性層の膜厚よりも厚く
なるように、膜厚を制御した。本実施例では、0.4μ
mより大きく、5μmよりも小さい範囲に入り、しか
も、変性層の膜厚よりも厚くなるように、膜厚を制御し
た。
【0108】これらの工程で、基体のレンズの両面に、
変性層、第1、第2、第3のハードコート層からなる被
膜が形成される。
【0109】つぎに上述の被膜の形成された基体レンズ
を、基体ホルダーごとロードロック室に移動して、基体
レンズの一方の面が真空蒸着装置の蒸着源の方向に向く
ように、基体レンズの向きを変え、真空蒸着室へ基体レ
ンズを送る。
【0110】そして、真空蒸着装置の真空室を1.3×
10~3 Paまで排気した後、電子ビーム加熱蒸着法に
より、蒸着源の方を向いた基体レンズ面の第3のハード
コート層の上に、下記4層から成る反射防止膜を下記蒸
着条件により形成する。但し、蒸着源として、第1層目
は、ZrO2(94%)とSc23(6%)との混合物
の焼結体を用い、第2層目と第4層目は、SiO2を用
い、第3層目は、TiOx(0<x<2)を用いる。基
体温度は常温である。
【0111】 真空蒸着諸条件 (但し、Aは、オングストロームを表す) 第1層目 二酸化ジルコニウム(94%)と三酸化二スカンジウム(6%)と の混合物のアモルファス 213A(幾何的膜厚) 0.008λ(光学的膜厚) 蒸着時圧力 4×10~3Pa(O2雰囲気) 第2層目 二酸化珪素 289A(幾何的膜厚) 0.081λ(光学的膜厚) 蒸着時圧力 1×10~3Pa 第3層目 二酸化チタン 1177A(幾何的膜厚) 0.50λ(光学的膜厚) 蒸着時圧力 5×10~3Pa(O2雰囲気) 第4層目 二酸化珪素 868A(幾何的膜厚) 0.243λ(光学的膜厚) 蒸着時圧力 1×10~3Pa 但し、上述の光学的膜厚は、その層の屈折率と幾何的膜
厚との積で定義される。また、中心波長λ=525nm
であり、第1層目の二酸化ジルコニウム(94%)と三
酸化二スカンジウム(6%)との混合物の屈折率は、
1.97、第2層目と第4層目の二酸化珪素の屈折率
は、1.47、第3層目の二酸化チタンの屈折率は、
2.23である。
【0112】これにより、基体レンズの片方の面に反射
防止膜を形成させた後、今度はレンズ基板ホルダーに付
随する基体面反転機構により、もう一方の面を蒸発源の
方向に向かせ、再び、上述と同様の蒸着条件により、反
射防止膜を形成する。
【0113】これらの工程により、基体レンズの両面
に、変性層、第1、第2、第3のハードコート層、多層
の反射防止膜を備えたプラスチックレンズが製造でき
る。
【0114】(実施例5)つぎに、本発明の第5の実施
例として、基体のプラスチックレンズの表面に、変性層
と、第1、第2、第3のハードコート層と、多層の反射
防止膜とからなる被膜が形成されたプラスチックレンズ
を製造する方法について説明する。
【0115】本実施例では、基体としてポリウレタン系
重合体からなるレンズを用いた。PECVD装置は、第
4の実施例と同じ装置を用いた。また、変性層、およ
び、第1、第2、第3のハードコート層の膜厚は、第4
の実施例と同じにした。
【0116】まず、準備工程として、基体レンズを超音
波洗浄機に通して洗浄し、PECVD装置の真空室内の
カソード電極とアノード電極との間のカローセルタイプ
の基板ホルダーに設置し、2.7×10~4Paまで排気
する。
【0117】つぎに、変性層を形成する工程について説
明する。
【0118】真空室に接続されたメチルトリエトキシシ
ランの入った容器を加熱することにより、メチルトリエ
トキシランを気化させ、メチルトリエトキシランガスを
流量35SCCMで真空室内に流す。同時に、真空室に
接続されたジメトキジメチルシランの入った容器を加熱
することにより、ジメトキシジメチルシランを気化さ
せ、ジメトキシジメチルシランガスを流量148SCC
Mで真空室内に流す。真空室の圧力が、0.5Paなっ
たら、ガスの流量を保持したまま、真空室外の電磁石コ
イルに5Aの電流を流して、電極間に磁場をかける。そ
して、メチルトリエトキシシランガスの流量を、1分間
当たり110SCCMの割合で徐々に増加させ、同時
に、ジメトキシジメチルシランガスの流量を、1分間当
たり98.7SCCMの割合で徐々に減少させながら、
カソードに高周波出力2KWを1.5分間印加し、1.
5分間で変性層を形成させる。
【0119】第1、第2、第3のハードコート層を形成
する工程について説明する。
【0120】さらに続いて、メチルトリエトキシシラン
のガスを流量200SCCMと酸素ガスを流量50SC
CM流し、真空室の圧力が1.0Paになって流量が安
定したところで、外部電磁石コイルに5Aの電流を流す
と同時に、カソードに高周波出力2.5KWを17分間
印加して第1のハードコート層を形成した。
【0121】さらに、酸素ガスの流量を100SCCM
に増加して、真空室の圧力が2.0Paになるように排
気系のコンダクタンスをバリアブルオリフィスにより調
整し、カソードの高周波出力を3KWに上げて、メチル
トリエトキシシランガスの流量200SCCM、外部電
磁石コイル5Aで、引き続き17分間、第2のハードコ
ート層を形成した。
【0122】最後に、酸素ガスの流量を200SCCM
に増加して、真空室の圧力2.0Pa、カソードの高周
波出力3KW、メチルトリエトキシシランガスの流量2
00SCCM、外部電磁石コイル5Aで、17分間、第
3のハードコート層を形成した。
【0123】つぎに上述の被膜の形成された基体レンズ
を、基体ホルダーごとロードロック室に移動して、基体
レンズの一方の面が真空蒸着装置の蒸着源の方向に向く
ように、基体レンズの向きを変え、真空蒸着室へ基体レ
ンズを送る。
【0124】そして、真空蒸着装置の真空室を1.3×
10~3 Paまで排気した後、電子ビーム加熱蒸着法に
より、蒸着源の方を向いた基体レンズ面の第3のハード
コート層の上に、下記4層から成る反射防止膜を下記蒸
着条件により形成する。但し、蒸着源として、第1層目
は、ZrO2(94%)とSc23(6%)との混合物
の焼結体を用い、第2層目と第4層目は、SiO2を用
い、第3層目は、TiOx(0<x<2)を用いる。基
体温度は常温である。
【0125】 真空蒸着諸条件 (但し、Aは、オングストロームを表す) 第1層目 二酸化ジルコニウム(94%)と三酸化二スカンジウム(6%)と の混合物のアモルファス 213A(幾何的膜厚) 0.008λ(光学的膜厚) 蒸着時圧力 4×10~3Pa(O2雰囲気) 第2層目 二酸化珪素 289A(幾何的膜厚) 0.081λ(光学的膜厚) 蒸着時圧力 1×10~3Pa 第3層目 二酸化チタン 1177A(幾何的膜厚) 0.50λ(光学的膜厚) 蒸着時圧力 5×10~3Pa(O2雰囲気) 第4層目 二酸化珪素 868A(幾何的膜厚) 0.243λ(光学的膜厚) 蒸着時圧力 1×10~3Pa 但し、上述の光学的膜厚は、その層の屈折率と幾何的膜
厚との積で定義される。また、中心波長λ=525nm
であり、第1層目の二酸化ジルコニウム(94%)と三
酸化二スカンジウム(6%)との混合物の屈折率は、
1.97、第2層目と第4層目の二酸化珪素の屈折率
は、1.47、第3層目の二酸化チタンの屈折率は、
2.23である。
【0126】これにより、基体レンズの片方の面に反射
防止膜を形成させた後、今度はレンズ基板ホルダーに付
随する基体面反転機構により、もう一方の面を蒸発源の
方向に向かせ、再び、上述と同様の蒸着条件により、反
射防止膜を形成する。
【0127】これらの工程により、基体レンズの両面
に、変性層、第1、第2、第3のハードコート層、多層
の反射防止膜を備えたプラスチックレンズが製造でき
る。
【0128】(実施例6)第6の実施例のプラスチック
レンズは、基体のプラスチックレンズの表面に、変性
層、第1、第2、第3のハードコート層と、多層の反射
防止膜とからなる被膜を順に備えている。この製造方法
について、説明する。変性層、および、第1、第2、第
3のハードコート層の膜厚は、第4の実施例と同じにし
た。
【0129】まず、準備工程として、ポリウレタン系レ
ンズを超音波洗浄機に通して洗浄後、Balzers社
製PECVD装置の真空室に設置し、2.7×10~4
aまで排気する。
【0130】つぎに、変性層を形成する工程を行う。
【0131】ジメチルジエトキシランのガスを流量11
SCCMで、テトライソプロポキシチタンのガスを流量
9SCCMで真空室内に流した。真空室の圧力が2.9
Paになったら、真空室外の電磁石コイルに2.6Aの
電流を流して、電極間に磁場をかけ、同時に、カソード
に高周波出力0.6KWを45秒間印加する。この45
秒間に、テトライソプロポキシチタンガスの流量を1分
間当たり9SCCMの割合で徐々に増加させ、同時に、
ジメチルジエトキシシランガスの流量を1分間当たり1
1SCCMの割合で徐々に減少させる。この45秒間
で、変性層を形成させる。
【0132】さらに続いて、ジメチルジエトキシシラン
のガスを流量100SCCMで、酸素ガスを流量35S
CCMで流し、真空室の圧力が2.9Paになって流量
が安定したところで、外部電磁石コイルに2.6Aの電
流を流すと同時に、カソードに高周波出力0.8KWを
25分間印加して、第1のハードコート層を形成する。
【0133】さらに、酸素ガスの流量を70SCCMに
増加して、真空室の圧力が2.9Paになるように排気
系のコンダクタンスをバリアブルオリフィスにより調整
し、カソードの高周波出力を1KWに上げて、ジメチル
ジエトキシシランガスの流量100SCCM、外部電磁
石コイル2.6Aで、引き続き25分間、第2のハード
コート層を形成する。
【0134】最後に、酸素ガスの流量を140SCCM
に増加して、他の条件は保持したまま25分間、第3の
ハードコート層を形成する。
【0135】つぎに上述の被膜の形成された基体レンズ
を、基体ホルダーごとロードロック室に移動して、基体
レンズの一方の面が真空蒸着装置の蒸着源の方向に向く
ように、基体レンズの向きを変え、真空蒸着室へ基体レ
ンズを送る。
【0136】そして、真空蒸着装置の真空室を1.3×
10~3 Paまで排気した後、電子ビーム加熱蒸着法に
より、蒸着源の方を向いた基体レンズ面の第3のハード
コート層の上に、下記4層から成る反射防止膜を下記蒸
着条件により形成する。但し、蒸着源として、第1層目
は、ZrO2(94%)とSc23(6%)との混合物
の焼結体を用い、第2層目と第4層目は、SiO2を用
い、第3層目は、TiOx(0<x<2)を用いる。基
体温度は常温である。
【0137】 真空蒸着諸条件 (但し、Aは、オングストロームを表す) 第1層目 二酸化ジルコニウム(94%)と三酸化二スカンジウム(6%)と の混合物のアモルファス 213A(幾何的膜厚) 0.008λ(光学的膜厚) 蒸着時圧力 4×10~3Pa(O2雰囲気) 第2層目 二酸化珪素 289A(幾何的膜厚) 0.081λ(光学的膜厚) 蒸着時圧力 1×10~3Pa 第3層目 二酸化チタン 1177A(幾何的膜厚) 0.50λ(光学的膜厚) 蒸着時圧力 5×10~3Pa(O2雰囲気) 第4層目 二酸化珪素 868A(幾何的膜厚) 0.243λ(光学的膜厚) 蒸着時圧力 1×10~3Pa 但し、上述の光学的膜厚は、その層の屈折率と幾何的膜
厚との積で定義される。また、中心波長λ=525nm
であり、第1層目の二酸化ジルコニウム(94%)と三
酸化二スカンジウム(6%)との混合物の屈折率は、
1.97、第2層目と第4層目の二酸化珪素の屈折率
は、1.47、第3層目の二酸化チタンの屈折率は、
2.23である。
【0138】これにより、基体レンズの片方の面に反射
防止膜を形成させた後、今度はレンズ基板ホルダーに付
随する基体面反転機構により、もう一方の面を蒸発源の
方向に向かせ、再び、上述と同様の蒸着条件により、反
射防止膜を形成する。
【0139】これらの工程により、基体レンズの両面
に、変性層、第1、第2、第3のハードコート層、多層
の反射防止膜を備えたプラスチックレンズが製造でき
る。
【0140】(比較例1)つぎに、第1の比較例とし
て、基体のプラスチックレンズの表面に、変性層と、第
1、第2、第3のハードコート層と、多層の反射防止膜
とからなる被膜を備えたプラスチックレンズを製造する
方法について説明する。
【0141】本比較例の被膜を備えたプラスチックレン
ズは、基体の材質、変性層と第1、第2、第3のハード
コート層との膜厚、変性層と第1、第2、第3のハード
コート層との製造方法が第1の実施例と同じであるが、
反射防止膜の材質、構成が第1の実施例とは異なってい
る。
【0142】本比較例では、第3のハードコート層を形
成した後、第1の実施例と同じく、真空蒸着装置に基体
を移動させ、1.3×10~3 Paまで排気した後、電
子ビーム加熱蒸着法により、反射防止膜の各層を下記蒸
着条件により形成した。但し、蒸着源としては、第1層
目は、Y2x(0<x<3)を用い、第2層目は、Ti
x(0<x<2)を用い、第3層目は、SiO2を用い
る。
【0143】 真空蒸着諸条件 (但し、Aはオングストロームを表す) 第1層目 三酸化二イットリウム 465A(幾何的膜厚) 0.210λ(光学的膜厚) 蒸着時圧力 4×10~3Pa(O2雰囲気) 第2層目 二酸化チタン 911A(幾何的膜厚) 0.50λ (光学的膜厚) 蒸着時圧力 5×10~3Pa 第3層目 二酸化珪素 795A(幾何的膜厚) 0.285λ(光学的膜厚) 蒸着時圧力 1×10~3Pa 但し、上述の光学的膜厚は、その層の屈折率と幾何的膜
厚との積で定義される。また、中心波長λ=410nm
であり、第1層目の三酸化二イットリウムの屈折率は、
1.85、第2層目の二酸化チタンの屈折率は、2.2
5、第3層目の二酸化珪素の屈折率は、1.47であ
る。
【0144】これにより、基体レンズの片方の面に反射
防止膜を形成させた後、今度はレンズ基板ホルダーに付
随する基体面反転機構により、もう一方の面を蒸発源の
方向に向かせ、再び、上述と同様の蒸着条件により、反
射防止膜を形成する。
【0145】これらの工程により、基体レンズの両面
に、変性層、第1、第2、第3のハードコート層、3層
からなる反射防止膜を備えた比較例のプラスチックレン
ズが製造できる。
【0146】(比較例2)つぎに、第2の比較例とし
て、基体のプラスチックレンズの表面に、変性層と、第
1、第2、第3のハードコート層と、多層の反射防止膜
とからなる被膜を備えたプラスチックレンズを製造する
方法について説明する。
【0147】本比較例の被膜を備えたプラスチックレン
ズは、基体の材質、変性層と第1、第2、第3のハード
コート層との膜厚、変性層と第1、第2、第3のハード
コート層との製造方法が、第2の実施例と同じである
が、反射防止膜の材質、構成が第2の実施例とは異なっ
ている。
【0148】本比較例では、第3のハードコート層を形
成した後、第1の実施例と同じく、真空蒸着装置に基体
を移動させ、1.3×10~3 Paまで排気した後、電
子ビーム加熱蒸着法により、反射防止膜の各層を下記蒸
着条件により形成した。但し、蒸着源としては、第1層
目は、Y2x(0<x<3)を用い、第2層目は、Ti
x(0<x<2)を用い、第3層目は、SiO2を用い
る。
【0149】 真空蒸着諸条件 (但し、Aはオングストロームを表す) 第1層目 三酸化二イットリウム 465A(幾何的膜厚) 0.210λ(光学的膜厚) 蒸着時圧力 4×10~3Pa(O2雰囲気) 第2層目 二酸化チタン 911A(幾何的膜厚) 0.50λ (光学的膜厚) 蒸着時圧力 5×10~3Pa 第3層目 二酸化珪素 795A(幾何的膜厚) 0.285λ(光学的膜厚) 蒸着時圧力 1×10~3Pa 但し、上述の光学的膜厚は、その層の屈折率と幾何的膜
厚との積で定義される。また、中心波長λ=410nm
であり、第1層目の三酸化二イットリウムの屈折率は、
1.85、第2層目の二酸化チタンの屈折率は、2.2
5、第3層目の二酸化珪素の屈折率は、1.47であ
る。
【0150】これにより、基体レンズの片方の面に反射
防止膜を形成させた後、今度はレンズ基板ホルダーに付
随する基体面反転機構により、もう一方の面を蒸発源の
方向に向かせ、再び、上述と同様の蒸着条件により、反
射防止膜を形成する。
【0151】これらの工程により、基体レンズの両面
に、変性層、第1、第2、第3のハードコート層、3層
からなる反射防止膜を備えた比較例のプラスチックレン
ズが製造できる。
【0152】(比較例3)つぎに、第3の比較例とし
て、基体のプラスチックレンズの表面に、変性層と、第
1、第2、第3のハードコート層と、多層の反射防止膜
とからなる被膜を備えたプラスチックレンズを製造する
方法について説明する。
【0153】本比較例の被膜を備えたプラスチックレン
ズは、基体の材質、変性層および第1、第2、第3のハ
ードコート層の製造方法、ならびに、変性層および第
1、第2、第3のハードコート層の膜厚が第4の実施例
と同じであるが、反射防止膜の材質、構成が第4の実施
例とは異なっている。
【0154】本比較例では、第3のハードコート層を形
成した後、第4の実施例と同じく、真空蒸着装置に基体
を移動させ、1.3×10~3 Paまで排気した後、電
子ビーム加熱蒸着法により、反射防止膜の各層を下記蒸
着条件により形成した。但し、蒸着源としては、第1層
目は、Y2x(0<x<3)を用い、第2層目は、Ti
x(0<x<2)を用い、第3層目は、SiO2を用い
る。
【0155】 真空蒸着諸条件 (但し、Aはオングストロームを表す) 第1層目 三酸化二イットリウム 465A(幾何的膜厚) 0.210λ(光学的膜厚) 蒸着時圧力 4×10~3Pa(O2雰囲気) 第2層目 二酸化チタン 911A(幾何的膜厚) 0.50λ (光学的膜厚) 蒸着時圧力 5×10~3Pa 第3層目 二酸化珪素 795A(幾何的膜厚) 0.285λ(光学的膜厚) 蒸着時圧力 1×10~3Pa 但し、上述の光学的膜厚は、その層の屈折率と幾何的膜
厚との積で定義される。また、中心波長λ=410nm
であり、第1層目の三酸化二イットリウムの屈折率は、
1.85、第2層目の二酸化チタンの屈折率は、2.2
5、第3層目の二酸化珪素の屈折率は、1.47であ
る。
【0156】これにより、基体レンズの片方の面に反射
防止膜を形成させた後、今度はレンズ基板ホルダーに付
随する基体面反転機構により、もう一方の面を蒸発源の
方向に向かせ、再び、上述と同様の蒸着条件により、反
射防止膜を形成する。
【0157】これらの工程により、基体レンズの両面
に、変性層、第1、第2、第3のハードコート層、3層
からなる反射防止膜を備えた比較例のプラスチックレン
ズが製造できる。
【0158】(比較例4)つぎに、第4の比較例とし
て、基体のプラスチックレンズの表面に、変性層と、第
1、第2、第3のハードコート層と、多層の反射防止膜
とからなる被膜を備えたプラスチックレンズを製造する
方法について説明する。
【0159】本比較例の被膜を備えたプラスチックレン
ズは、基体の材質、変性層および第1、第2、第3のハ
ードコート層の製造方法、ならびに、変性層および第
1、第2、第3のハードコート層の膜厚が第5の実施例
と同じであるが、反射防止膜の材質、構成が第5の実施
例とは異なっている。
【0160】本比較例では、第3のハードコート層を形
成した後、第4の実施例と同じく、真空蒸着装置に基体
を移動させ、1.3×10~3 Paまで排気した後、電
子ビーム加熱蒸着法により、反射防止膜の各層を下記蒸
着条件により形成した。但し、蒸着源としては、第1層
目は、Y2x(0<x<3)を用い、第2層目は、Ti
x(0<x<2)を用い、第3層目は、SiO2を用い
る。
【0161】 真空蒸着諸条件 (但し、Aはオングストロームを表す) 第1層目 三酸化二イットリウム 465A(幾何的膜厚) 0.210λ(光学的膜厚) 蒸着時圧力 4×10~3Pa(O2雰囲気) 第2層目 二酸化チタン 911A(幾何的膜厚) 0.50λ (光学的膜厚) 蒸着時圧力 5×10~3Pa 第3層目 二酸化珪素 795A(幾何的膜厚) 0.285λ(光学的膜厚) 蒸着時圧力 1×10~3Pa 但し、上述の光学的膜厚は、その層の屈折率と幾何的膜
厚との積で定義される。また、中心波長λ=410nm
であり、第1層目の三酸化二イットリウムの屈折率は、
1.85、第2層目の二酸化チタンの屈折率は、2.2
5、第3層目の二酸化珪素の屈折率は、1.47であ
る。
【0162】これにより、基体レンズの片方の面に反射
防止膜を形成させた後、今度はレンズ基板ホルダーに付
随する基体面反転機構により、もう一方の面を蒸発源の
方向に向かせ、再び、上述と同様の蒸着条件により、反
射防止膜を形成する。
【0163】これらの工程により、基体レンズの両面
に、変性層、第1、第2、第3のハードコート層、3層
からなる反射防止膜を備えた第4の比較例のプラスチッ
クレンズが製造できる。
【0164】つぎに、上述の実施例1〜6および比較例
1〜4で得られた眼鏡用プラスチックレンズの試料につ
いて、機械的耐久性を評価した。下記に評価内容を示
す。
【0165】評価項目 1)密着性 JIS D−202に準じて、試料表面に、1mm間隔
の切り込みを縦横にいれ、セロハンテープ(ニチバン製
商品名 セロテープ)をこの切り込みの上に貼り付
け、4kgの力でこのテープをはがし、膜はがれが生じ
るかどうかを調べる。
【0166】2)耐擦傷性 (a)粗さ#0000のスチールウールを荷重600g
で試料に押しつけ、15秒間に30回往復させた後、試
料表面の傷の有無を調べる。
【0167】(b)砂消しゴム(ライオン製 商品名
砂消しゴムER−502)を荷重500gで試料に押し
つけ、15秒間に30往復させた後、試料表面の傷の有
無を調べる。
【0168】3)耐温水 恒温槽の80℃の市水に10分間浸漬した後、試料表面
の膜に変化があるかどうかを調べる。
【0169】4)耐熱性 エアー・オーブンの100℃の大気中に5分間放置した
後、試料表面の膜に変化があるかどうかを調べる。
【0170】5)耐アルカリ性 水酸化ナトリウム水溶液(PH11)に6時間浸漬した
後、試料表面の膜に変化があるかどうかを調べる。
【0171】6)耐酸性 硝酸水溶液(PH1)に6時間浸漬した後、試料表面の
膜に変化があるかどうかを調べる。
【0172】上述の評価項目について、実施例および比
較例の評価結果を、表1にまとめて示す。
【0173】
【表1】
【0174】表1からわかるように、上述の実施例1〜
6の全ての試料は、密着性、耐擦傷性、耐温水性、耐熱
性、耐酸性の項目において、比較例1〜4の試料よりも
耐久性が優れている。また、耐アルカリ性において、比
較例と同等の耐久性を示している。
【0175】つぎに、本発明の実施例7〜12の眼鏡用
プラスチックレンズについて説明する。
【0176】(実施例7)まず、本発明の第7の実施例
として、基体のプラスチックレンズの表面に、変性層
と、第1、第2、第3のハードコート層と、多層の反射
防止膜とからなる被膜を備えたプラスチックレンズを製
造する方法について説明する。
【0177】基体のプラスチックレンズは、ジエチレン
グリコールビスアリルカーボネート(ピッツバーク プ
レート ガラス社製 CR−39)の重合体からなって
いる。
【0178】この基体上に、バルツェルス(Balze
rs)社製PECVD装置と、イオン源を備えた真空蒸
着装置とを用いて、上述の構成の被膜を形成する。PE
CVD装置の真空室と真空蒸着装置の真空室とは、ロー
ドロック室で連結されている。ロードロック室は、基体
を、PECVD装置の真空室から真空蒸着室の真空室へ
真空を保った状態で移動させるための空間である。
【0179】PECVD装置は、真空室外に電磁コイル
を備えている。電磁コイルは、真空室内に配置された一
対の電極の間の空間に、電界と平行な方向に磁界をかけ
るように配置されている。電極間の空間には、カローセ
ルタイプの基体ホルダーが、基体の主平面を電界の向き
と平行に保持するように配置されている。
【0180】蒸着装置は、電子ビームによって蒸着源を
加熱する構成である。
【0181】まず、準備工程として、基体のレンズを超
音波洗浄機に通して洗浄し、PECVD装置の真空室内
の基体ホルダーに設置する。その後、真空室内を2.7
×10~4Paまで排気する。
【0182】つぎに、変性層を形成する工程について説
明する。
【0183】真空室に接続されたメチルトリエトキシシ
ランの入った容器を加熱することにより、メチルトリエ
トキシランを気化させ、メチルトリエトキシランガスを
流量100SCCMで真空室内に流す。真空室の圧力が
0.7Paになったら、真空室外の電磁石コイルに5A
の電流を流して、電極間に磁場をかけ、同時に、カソー
ドに高周波出力2KWを3分間印加する。これにより、
電極間にプラズマが発生する。磁場は、低気圧アーク放
電を安定化させる。この間のメチルトリエトキシシラン
ガスの流量は、100SCCMである。その後、カソー
ドの高周波出力を段階的に40W/minの割合で徐々
に上げていき、12分間で2.5KWに達するように制
御する。この12分間の間のメチルトリエトキシシラン
ガスの流量は、180SCCMにして一定にしておく。
【0184】この12分間で、屈折率が、段階的に変化
した変性層が形成される。変性層は、その膜厚が、つぎ
の工程で形成する第1、第2、第3のハードコート層の
膜厚をあわせた厚さよりも薄くなるように、膜厚を制御
しながら形成する。本実施例では、100nmより大き
く、900nmよりも小さい範囲に入る特定の厚さに形
成した。
【0185】つぎに、第1、第2、第3のハードコート
層を形成する工程について説明する。
【0186】変性層を形成する工程に連続させて、酸素
ガスを真空室に50SCCM流し、真空室圧力を0.5
Paにして、メチルトリエトキシシランガスの流量18
0SCCM、高周波出力2.5KW、電磁石コイル5A
で、20分間、第1のハードコート層を形成する。
【0187】その後、酸素ガス流量を100SCCMに
増加し、真空室圧力を0.8Paにすると同時に、カソ
ードの高周波出力を3KWに変え、メチルトリエトキシ
シランガスの流量180SCCM、電磁石コイル5Aの
ままで、さらに20分間、第2のハードコート層を形成
する。
【0188】最後に、酸素ガス流量を200SCCMに
増加して流し、真空室圧力をそのまま1.0Paに保持
するように排気系のコンダクタンスをバリアブルオリフ
ィスにより調整し、メチルトリエトキシシランガスの流
量180SCCM、電磁石コイル5A、カソードの高周
波出力3KWのままで、さらに第3のハードコート層を
形成する。
【0189】第1、第2、第3のハードコート層は、こ
れらの膜厚をあわせたものが、変性層の膜厚よりも厚く
なるように、膜厚を制御した。本実施例では、0.4μ
mより大きく、5μmよりも小さい範囲に入り、しか
も、変性層の膜厚よりも厚くなるように、膜厚を制御し
た。
【0190】これらの工程で、基体のレンズの両面に、
変性層、第1、第2、第3のハードコート層からなる被
膜が形成される。
【0191】つぎに、ハードコート層の上に、Al23
層、ZrO2層、ZrO2層、SiO2層の4層からなる
反射防止膜を形成する工程について説明する。
【0192】上述のハードコート層までが形成された基
体レンズを、基体ホルダーごとロードロック室に移動し
て、基体レンズの一方の面が真空蒸着装置の蒸着源の方
向に向くように、基体レンズの向きを変え、真空蒸着室
へ基体レンズを送る。
【0193】そして、真空蒸着装置の真空室を1.3×
10~3 Paまで排気した後、電子ビーム加熱蒸着法に
より、蒸着源Al23を加熱蒸発させて、蒸着源の方を
向いた基体レンズ面のハードコート層の上に、Al23
層を形成する。この時、Al23層の光学的膜厚nd
が、nd=λ/4を満たすように、光学的膜厚計により
幾何的膜厚をモニターしながら形成する。但し、光学的
膜厚ndは、この層の屈折率nと、幾何的膜厚dとの積
で定義される。λは、この眼鏡用プラスチックレンズに
入射する光の設計上の中心波長であり、本実施例では、
λ=510nmである。
【0194】つぎに、真空蒸着装置の真空を破ることな
く、蒸着源をZrO2にする。そして、真空室内に、酸
素ガスを6.6×10~2Paまで導入し、イオン源のシ
ャッタを閉じた状態で、イオン源を動作させ、酸素のイ
オンビームをイオン電流密度16μA/cm2(ビーム
電圧1000eV)の条件で引き出し、安定させる。イ
オンビームの照射方向は、基体の方向である。同時に、
蒸着源のシャッタを閉じた状態で、電子ビーム加熱によ
り、蒸着源のZrO2を予備加熱状態にして安定させ
る。
【0195】イオン源と蒸着源の双方が安定したら、両
者のシャッタを同時に開いて、Al23層の上に、Zr
2層を形成する。この時、光学的膜厚計により幾何的
膜厚をモニターしながら形成し、光学的膜厚ndがnd
=λ/4になったら、イオン源と蒸着源の両者のシャッ
タを閉じる。
【0196】つづけて、イオン源のイオン電流密度を7
6μA/cm2(ビーム電圧1500eV)に上昇さ
せ、再度、イオン源と蒸着源の双方のシャッタを開い
て、光学的膜厚ndがnd=λ/4の厚さになるよう
に、ZrO2層を形成する。
【0197】つぎに、真空蒸着装置の真空を破ることな
く、蒸着源をSiO2に替える。そして、蒸着源のシャ
ッタを閉じたまま、電子ビームにより、蒸着源を予備加
熱状態にする。同時に、イオン源のイオン電流密度を7
6μA/cm2(ビーム電圧1500eV)に上昇さ
せ、イオン源と蒸着源の両方のシャッタを開いて、Si
2層を、光学的膜厚nd=λ/4になるように形成し
た。
【0198】これにより、基体レンズの片方の面に反射
防止膜を形成させた後、今度はレンズ基板ホルダーに付
随する基体面反転機構により、もう一方の面を蒸発源の
方向に向かせ、再び、上述と同様の蒸着条件により、反
射防止膜を形成する。
【0199】これらの工程により、基体レンズの両面
に、変性層、第1、第2、第3のハードコート層、多層
の反射防止膜を備えたプラスチックレンズが製造でき
る。
【0200】(実施例8)つぎに、本発明の第8の実施
例として、基体のプラスチックレンズの表面に、変性層
と、第1、第2、第3のハードコート層と、多層の反射
防止膜とからなる被膜が形成されたプラスチックレンズ
を製造する方法について説明する。
【0201】本実施例では、基体としてポリウレタン系
重合体からなるレンズを用いた。PECVD装置、およ
び、イオン源を備えた真空蒸着装置は、第1の実施例と
同じ装置を用いた。また、変性層、および、第1、第
2、第3のハードコート層の膜厚は、第7の実施例と同
じにした。
【0202】まず、準備工程として、基体レンズを超音
波洗浄機に通して洗浄し、PECVD装置の真空室内の
カソード電極とアノード電極との間のカローセルタイプ
の基板ホルダーに設置し、2.7×10~4Paまで排気
する。
【0203】つぎに、変性層を形成する工程について説
明する。
【0204】真空室に接続されたメチルトリエトキシシ
ランの入った容器を加熱することにより、メチルトリエ
トキシランを気化させ、メチルトリエトキシランガスを
流量35SCCMで真空室内に流す。同時に、真空室に
接続されたジメトキシジメチルシランの入った容器を加
熱することにより、ジメトキシジメチルシランを気化さ
せ、ジメトキシジメチルシランガスを流量148SCC
Mで真空室内に流す。真空室の圧力が、0.5Paなっ
たら、ガスの流量を保持したまま、真空室外の電磁石コ
イルに5Aの電流を流して、電極間に磁場をかける。そ
して、メチルトリエトキシシランガスの流量を、1分間
当たり110SCCMの割合で徐々に増加させ、同時
に、ジメトキシジメチルシランガスの流量を、1分間当
たり98.7SCCMの割合で徐々に減少させながら、
カソードに高周波出力2KWを1.5分間印加し、1.
5分間で変性層を形成させる。
【0205】第1、第2、第3のハードコート層を形成
する工程について説明する。
【0206】さらに続いて、メチルトリエトキシシラン
のガスを流量200SCCMと酸素ガスを流量50SC
CM流し、真空室の圧力が1.0Paになって流量が安
定したところで、外部電磁石コイルに5Aの電流を流す
と同時に、カソードに高周波出力2.5KWを17分間
印加して第1のハードコート層を形成する。
【0207】さらに、酸素ガスの流量を100SCCM
に増加して、真空室の圧力が2.0Paになるように排
気系のコンダクタンスをバリアブルオリフィスにより調
整し、カソードの高周波出力を3KWに上げて、メチル
トリエトキシシランガスの流量200SCCM、外部電
磁石コイル5Aで、引き続き17分間、第2のハードコ
ート層を形成する。
【0208】最後に、酸素ガスの流量を200SCCM
に増加して、真空室の圧力2.0Pa、カソードの高周
波出力3KW、メチルトリエトキシシランガスの流量2
00SCCM、外部電磁石コイル5Aで、17分間、第
3のハードコート層を形成する。
【0209】これらの工程で、基体のレンズの両面に、
変性層、第1、第2、第3のハードコート層からなる被
膜が形成される。
【0210】つぎに、ハードコート層の上に、Al23
層、ZrO2層、ZrO2層、SiO 2層の4層からなる
反射防止膜を形成する工程について説明する。
【0211】上述のハードコート層までが形成された基
体レンズを、基体ホルダーごとロードロック室に移動し
て、基体レンズの一方の面が真空蒸着装置の蒸着源の方
向に向くように、基体レンズの向きを変え、真空蒸着室
へ基体レンズを送る。
【0212】そして、真空蒸着装置の真空室を1.3×
10~3 Paまで排気した後、電子ビーム加熱蒸着法に
より、蒸着源Al23を加熱蒸発させて、蒸着源の方を
向いた基体レンズ面のハードコート層の上に、Al23
層を形成する。この時、Al23層の光学的膜厚nd
が、nd=λ/4を満たすように、光学的膜厚計により
幾何的膜厚をモニターしながら形成する。但し、光学的
膜厚ndは、この層の屈折率nと、幾何的膜厚dとの積
で定義される。λは、この眼鏡用プラスチックレンズに
入射する光の設計上の中心波長であり、本実施例では、
λ=510nmである。
【0213】つぎに、真空蒸着装置の真空を破ることな
く、蒸着源をZrO2にする。そして、真空室内に、酸
素ガスを6.6×10~2Paまで導入し、イオン源のシ
ャッタを閉じた状態で、イオン源を動作させ、酸素のイ
オンビームをイオン電流密度16μA/cm2(ビーム
電圧1000eV)の条件で引き出し、安定させる。イ
オンビームの照射方向は、基体の方向である。同時に、
蒸着源のシャッタを閉じた状態で、電子ビーム加熱によ
り、蒸着源のZrO2を予備加熱状態にして安定させ
る。
【0214】イオン源と蒸着源の双方が安定したら、両
者のシャッタを同時に開いて、Al23層の上に、Zr
2層を形成する。この時、光学的膜厚計により幾何的
膜厚をモニターしながら形成し、光学的膜厚ndがnd
=λ/4になったら、イオン源と蒸着源の両者のシャッ
タを閉じる。
【0215】つづけて、イオン源のイオン電流密度を7
6μA/cm2(ビーム電圧1500eV)に上昇さ
せ、再度、イオン源と蒸着源の双方のシャッタを開い
て、光学的膜厚ndがnd=λ/4の厚さになるよう
に、ZrO2層を形成する。
【0216】つぎに、真空蒸着装置の真空を破ることな
く、蒸着源をSiO2に替える。そして、蒸着源のシャ
ッタを閉じたまま、電子ビームにより、蒸着源を予備加
熱状態にする。同時に、イオン源のイオン電流密度を7
6μA/cm2(ビーム電圧1500eV)に上昇さ
せ、イオン源と蒸着源の両方のシャッタを開いて、Si
2層を、光学的膜厚nd=λ/4になるように形成し
た。
【0217】これにより、基体レンズの片方の面に反射
防止膜を形成させた後、今度はレンズ基板ホルダーに付
随する基体面反転機構により、もう一方の面を蒸発源の
方向に向かせ、再び、上述と同様の蒸着条件により、反
射防止膜を形成する。
【0218】これらの工程により、基体レンズの両面
に、変性層、第1、第2、第3のハードコート層、多層
の反射防止膜を備えたプラスチックレンズが製造でき
る。
【0219】(実施例9)第9の実施例のプラスチック
レンズは、基体のプラスチックレンズの表面に、変性
層、第1、第2、第3のハードコート層と、多層の反射
防止膜とからなる被膜を順に備えている。この製造方法
について、説明する。変性層、および、第1、第2、第
3のハードコート層の膜厚は、第7の実施例と同じにし
た。
【0220】まず、準備工程として、ポリウレタン系レ
ンズを超音波洗浄機に通して洗浄後、Balzers社
製PECVD装置の真空室に設置し、2.7×10~4
aまで排気する。
【0221】つぎに、変性層を形成する工程を行う。
【0222】ジメチルジエトキシランのガスを流量11
SCCMで、テトライソプロポキシチタンのガスを流量
9SCCMで真空室内に流した。真空室の圧力が2.9
Paになったら、真空室外の電磁石コイルに2.6Aの
電流を流して、電極間に磁場をかけ、同時に、カソード
に高周波出力0.6KWを45秒間印加する。この45
秒間に、テトライソプロポキシチタンガスの流量を1分
間当たり9SCCMの割合で徐々に増加させ、同時に、
ジメチルジエトキシシランガスの流量を1分間当たり1
1SCCMの割合で徐々に減少させる。この45秒間
で、変性層を形成させる。
【0223】さらに続いて、ジメチルジエトキシシラン
のガスを流量100SCCMで、酸素ガスを流量35S
CCMで流し、真空室の圧力が2.9Paになって流量
が安定したところで、外部電磁石コイルに2.6Aの電
流を流すと同時に、カソードに高周波出力0.8KWを
25分間印加して、第1のハードコート層を形成する。
【0224】さらに、酸素ガスの流量を70SCCMに
増加して、真空室の圧力が2.9Paになるように排気
系のコンダクタンスをバリアブルオリフィスにより調整
し、カソードの高周波出力を1KWに上げて、ジメチル
ジエトキシシランガスの流量100SCCM、外部電磁
石コイル2.6Aで、引き続き25分間、第2のハード
コート層を形成する。
【0225】最後に、酸素ガスの流量を140SCCM
に増加して、他の条件は保持したまま25分間、第3の
ハードコート層を形成する。
【0226】つぎに、ハードコート層の上に、Al23
層、ZrO2層、ZrO2層、SiO2層の4層からなる
反射防止膜を形成する工程について説明する。
【0227】上述のハードコート層までが形成された基
体レンズを、基体ホルダーごとロードロック室に移動し
て、基体レンズの一方の面が真空蒸着装置の蒸着源の方
向に向くように、基体レンズの向きを変え、真空蒸着室
へ基体レンズを送る。
【0228】そして、真空蒸着装置の真空室を1.3×
10~3 Paまで排気した後、電子ビーム加熱蒸着法に
より、蒸着源Al23を加熱蒸発させて、蒸着源の方を
向いた基体レンズ面のハードコート層の上に、Al23
層を形成する。この時、Al23層の光学的膜厚nd
が、nd=λ/4を満たすように、光学的膜厚計により
幾何的膜厚をモニターしながら形成する。但し、光学的
膜厚ndは、この層の屈折率nと、幾何的膜厚dとの積
で定義される。λは、この眼鏡用プラスチックレンズに
入射する光の設計上の中心波長であり、本実施例では、
λ=510nmである。
【0229】つぎに、真空蒸着装置の真空を破ることな
く、蒸着源をZrO2にする。そして、真空室内に、酸
素ガスを6.6×10~2Paまで導入し、イオン源のシ
ャッタを閉じた状態で、イオン源を動作させ、酸素のイ
オンビームをイオン電流密度16μA/cm2(ビーム
電圧1000eV)の条件で引き出し、安定させる。イ
オンビームの照射方向は、基体の方向である。同時に、
蒸着源のシャッタを閉じた状態で、電子ビーム加熱によ
り、蒸着源のZrO2を予備加熱状態にして安定させ
る。
【0230】イオン源と蒸着源の双方が安定したら、両
者のシャッタを同時に開いて、Al23層の上に、Zr
2層を形成する。この時、光学的膜厚計により幾何的
膜厚をモニターしながら形成し、光学的膜厚ndがnd
=λ/4になったら、イオン源と蒸着源の両者のシャッ
タを閉じる。
【0231】つづけて、イオン源のイオン電流密度を7
6μA/cm2(ビーム電圧1500eV)に上昇さ
せ、再度、イオン源と蒸着源の双方のシャッタを開い
て、光学的膜厚ndがnd=λ/4の厚さになるよう
に、ZrO2層を形成する。
【0232】つぎに、真空蒸着装置の真空を破ることな
く、蒸着源をSiO2に替える。そして、蒸着源のシャ
ッタを閉じたまま、電子ビームにより、蒸着源を予備加
熱状態にする。同時に、イオン源のイオン電流密度を7
6μA/cm2(ビーム電圧1500eV)に上昇さ
せ、イオン源と蒸着源の両方のシャッタを開いて、Si
2層を、光学的膜厚nd=λ/4になるように形成し
た。
【0233】これにより、基体レンズの片方の面に反射
防止膜を形成させた後、今度はレンズ基板ホルダーに付
随する基体面反転機構により、もう一方の面を蒸発源の
方向に向かせ、再び、上述と同様の蒸着条件により、反
射防止膜を形成する。
【0234】これらの工程により、基体レンズの両面
に、変性層、第1、第2、第3のハードコート層、多層
の反射防止膜を備えたプラスチックレンズが製造でき
る。
【0235】(実施例10)本発明の第10の実施例と
して、基体のプラスチックレンズの表面に、変性層と、
第1、第2、第3のハードコート層と、多層の反射防止
膜と、撥水性コート層とからなる被膜を備えたプラスチ
ックレンズを製造する方法について説明する。
【0236】製造に用いる装置は、PECVD装置と、
イオン源を備えた真空蒸着装置と、抵抗加熱用の真空蒸
着装置とをロードロック室で連結したものである。
【0237】まず、第7の実施例と同じ基体上に、第7
の実施例と同じ工程で、変性層、ハードコート層、反射
防止膜まで製造した被膜つきプラスチックレンズを、ロ
ードロック室に基体ホルダーごと移動させ、さらに、抵
抗加熱用の真空蒸着装置に移動させる。抵抗加熱ボート
には、セラミックに含浸させたシラザン化合物を設置し
ておく。そして、抵抗加熱用の真空蒸着装置の真空室を
1.3×10~3Paまで排気し、抵抗加熱ボートに電流
を流し、シラザン化合物を加熱蒸発させて、反射防止膜
の上に、50〜100オングストロームの膜厚の撥水性
コート層を形成させる。
【0238】これにより、基体レンズの片方の面に撥水
性コート層を形成させた後、今度はレンズ基板ホルダー
に付随する基体面反転機構により、もう一方の面を蒸発
源の方向に向かせ、再び、上述と同様の蒸着条件によ
り、撥水性コート層を形成する。
【0239】これらの工程により、基体レンズの両面
に、変性層、第1、第2、第3のハードコート層、多層
の反射防止膜、撥水性コート層を備えたプラスチックレ
ンズが製造できる。
【0240】(実施例11)本発明の第11の実施例と
して、基体のプラスチックレンズの表面に、変性層と、
第1、第2、第3のハードコート層と、多層の反射防止
膜と、撥水性コート層とからなる被膜を備えたプラスチ
ックレンズを製造する方法について説明する。
【0241】基体の材質、変性層、ハードコート層、反
射防止膜を製造する工程、ならびに、製造に用いる装置
は、第8の実施例と同じである。
【0242】そして、反射防止膜の上に、第10の実施
例と同じ工程で、撥水性コート層を形成する。
【0243】(実施例12)本発明の第12の実施例と
して、基体のプラスチックレンズの表面に、変性層と、
第1、第2、第3のハードコート層と、多層の反射防止
膜と、撥水性コート層とからなる被膜を備えたプラスチ
ックレンズを製造する方法について説明する。
【0244】基体の材質、変性層、ハードコート層、反
射防止膜を製造する工程、ならびに、製造に用いる装置
は、第9の実施例と同じである。
【0245】そして、反射防止膜の上に、第10の実施
例と同じ工程で、撥水性防止コート層を形成する。
【0246】(比較例5)つぎに、第5の比較例とし
て、基体のプラスチックレンズの表面に、変性層と、第
1、第2、第3のハードコート層と、多層の反射防止膜
とからなる被膜を備えたプラスチックレンズを製造する
方法について説明する。
【0247】本比較例の被膜を備えたプラスチックレン
ズは、基体の材質、変性層および第1、第2、第3のハ
ードコート層の膜厚、ならびに、変性層および第1、第
2、第3のハードコート層の製造方法が第7の実施例と
同じであるが、反射防止膜の製造方法が第7の実施例と
は異なっている。
【0248】本比較例では、第3のハードコート層を形
成した後、第7の実施例と同じく、真空蒸着装置に基体
を移動させ、1.3×10~3 Paまで排気した後、
1.3×10~3〜1.3×10~2Paの範囲で圧力を制
御して、電子ビーム加熱蒸着法により、Al23、Zr
2、ZrO2、SiO2の順に反射防止膜の各層を形成
した。但し、各層の光学的膜厚ndが、nd=λ/4
(λ=510nm)となるように、膜厚を制御した。同
様に、基体レンズのもう一方の面にも、反射防止膜を形
成した。
【0249】(比較例6)つぎに、第6の比較例とし
て、基体のプラスチックレンズの表面に、変性層と、第
1、第2、第3のハードコート層と、多層の反射防止膜
とからなる被膜を備えたプラスチックレンズを製造する
方法について説明する。
【0250】本比較例の被膜を備えたプラスチックレン
ズは、基体の材質、変性層および第1、第2、第3のハ
ードコート層の膜厚、ならびに、変性層および第1、第
2、第3のハードコート層の製造方法が第8の実施例と
同じであるが、反射防止膜の製造方法が第8の実施例と
は異なっている。
【0251】本比較例では、第3のハードコート層を形
成した後、第7の実施例と同じく、真空蒸着装置に基体
を移動させ、1.3×10~3 Paまで排気した後、
1.3×10~3〜1.3×10~2Paの範囲で圧力を制
御して、電子ビーム加熱蒸着法により、Al23、Zr
2、ZrO2、SiO2の順に反射防止膜の各層を形成
した。但し、各層の光学的膜厚ndが、nd=λ/4
(λ=510nm)となるように、膜厚を制御した。同
様に、基体レンズのもう一方の面にも、反射防止膜を形
成した。
【0252】(比較例7)本発明の第7の比較例とし
て、基体のプラスチックレンズの表面に、変性層と、第
1、第2、第3のハードコート層と、多層の反射防止膜
と、撥水性コート層とからなる被膜を備えたプラスチッ
クレンズを製造する方法について説明する。
【0253】まず、第7の実施例と同じ基体上に、第7
の実施例と同じ工程で、変性層、ハードコート層まで形
成し、さらに、反射防止膜を第7の比較例と同じ工程で
形成する。
【0254】そして、反射防止膜の上に、第10の実施
例と同じ工程で、基体レンズの両面に、撥水性コート層
を形成する。
【0255】(比較例8)本発明の第8の比較例とし
て、基体のプラスチックレンズの表面に、変性層と、第
1、第2、第3のハードコート層と、多層の反射防止膜
と、撥水性コート層とからなる被膜を備えたプラスチッ
クレンズを製造する方法について説明する。
【0256】まず、第8の実施例と同じ基体上に、第8
の実施例と同じ工程で、変性層、ハードコート層まで形
成し、さらに、反射防止膜を第6の比較例と同じ工程で
形成する。
【0257】さらに、反射防止膜の上に、第7の比較例
と同じ工程で、撥水性防止コート層を形成する。
【0258】つぎに、上述の実施例7〜12および比較
例5〜8で得られた眼鏡用プラスチックレンズの試料に
ついて、機械的耐久性を評価した。下記に評価内容を示
す。
【0259】評価項目 1)密着性 2)耐擦傷性 3)耐温水性 4)耐熱性 6)耐酸性 これらの評価条件は、すでに述べたので説明を省略す
る。
【0260】7)落砂テスト 試料の上部1mの点から、粗さ#80の炭化珪素(カー
ボランダム社製 商品名カーボランダム)を115g/
分の速度で合計2kg落下させる。この落砂の前後で試
料の透過率(波長550nm)を測定し、落砂前の透過
率を落砂後の透過率で除した値をヘーズ値として示し
た。
【0261】上述の評価項目について、実施例および比
較例の評価結果を、表2にまとめて示す。
【0262】
【表2】
【0263】表2からわかるように、上述の実施例7〜
12の全ての試料は、密着性、耐擦傷性、耐温水性、耐
熱性、耐酸性、落砂テストの項目において、比較例5〜
8の試料よりも耐久性が優れている。また、耐アルカリ
性において、比較例5〜8と同等の耐久性を示す。
【0264】本実施例1〜12の被膜が耐久性に優れて
いるのは、つぎのようなことに起因すると考えられる。
【0265】本実施例では、基材の屈折率と被膜の屈折
率との差により干渉縞が発生するのを防ぐために、屈折
率を膜厚方向に徐々に変化させる層を、変性層として、
ハードコート層とは別に設けている。これにより、ハー
ドコート層の屈折率を徐々に変化させる必要がなくな
り、ハードコート層は、耐久性というハードコート層本
来の機能を高めることを追及することが可能になった。
【0266】本実施例のハードコート層は、アルコキシ
シラン化合物と酸素ガスとの混合ガスを用いたPECV
Dにより、混合ガスの圧力を0.5〜12Paの範囲に
制御する条件で形成されている。この条件で形成するこ
とにより、本実施例のハードコート層の組成と組織その
ものが耐久性に優れたものにすることが可能になった。
これに加え、本実施例のハードコート層は、屈折率を徐
々に変化させる必要がないため、着色しやすい高屈折率
材料を含む必要がなく、酸素量の調節により容易に透明
にできる。よって、膜厚を厚くしても着色しないため、
ハードコート層の膜厚を厚くすることができ、この厚さ
により、さらに高い機械的耐久性と耐薬品性とが得られ
ている。
【0267】変性層は、高屈折率材料と低屈折率材料と
を用い、形成時の高周波出力またはガス流量を徐々に変
化させることにより、膜厚方向の低屈折率材料と高屈折
率材料との比を連続的に変化させ、屈折率を徐々に変化
させている。本実施例の製造方法では、変性層の屈折率
が、基体の屈折率および第1のハードコート層の屈折率
と連続するように、高周波出力またはガス流量を設定す
ることができる。このような変性層を基体と第1のハー
ドコート層との間に配置することにより、外部から光が
入射した際に干渉縞が発生するのを防止することができ
る。
【0268】このとき、本実施例の変性層は、ハードコ
ート層とは別に、ハードコート層より基体側に設けられ
ているため、変性層自体には、耐久性が要求されない。
よって、本実施例の変性層は、着色しやすい高屈折率材
料のTiの酸化物を含んでいるが、膜厚が薄いため、容
易に透明にできる。
【0269】さらに、本実施例の変性層は、ハードコー
ト層と基体との間に配置され、両者との密着性がよいた
め、ハードコート層と基体との密着性を向上させてい
る。さらに、本実施例の変性層は、ハードコート層に加
わる衝撃を吸収する作用をしていると考えられ、被膜の
機械的耐久性を高めている。
【0270】また、本実施例の反射防止膜は、膜構成、
膜組成、膜組織自体が、機械的耐久性、耐薬品性に優れ
ており、ハードコート層との密着性も高い。また、本実
施例の反射防止膜は、各層の光学的膜厚を、第1および
第2の層の光学的膜厚が、それぞれ、0.05×λ以上
0.15×λ以下であり、第3の層の光学的膜厚が、
0.36×λ以上0.49×λ以下であり、第4の層の
光学的膜厚は、0.15×λ以上0.35×λ以下であ
るように設定しているため、効果的に干渉縞の発生を抑
制することができる。
【0271】特に、本実施例4、5、6の反射防止膜
は、第1層を二酸化ジルコニウム94%と三酸化二スカ
ンジウム6%との混合物のアモルファスにより形成して
いる。二酸化ジルコニウムと三酸化二スカンジウムは、
三酸化二スカンジウムを6%以上含むことにより、アモ
ルファスになる。二酸化ジルコニウムと三酸化二スカン
ジウムとの混合物のアモルファスは、結晶化した二酸化
ジルコニウムよりも耐酸性、耐アルカリ性等の化学的安
定性に優れている。したがって、実施例4、5、6の反
射防止膜は、特に耐久性に優れている。
【0272】また、本実施例7〜12の反射防止膜は、
Al23層、ZrO2層、ZrO2層、SiO2層からな
るが、この反射防止膜もまた、耐久性に優れている。と
いうのは、本実施例では、Al23層を真空蒸着法で形
成し、ZrO2層およびSiO2層は、イオンビームを用
いた蒸着法で形成しているが、従来では、Al23層、
ZrO2層、ZrO2層、SiO2層を積層した膜を形成
する場合には、イオンビームを用いた蒸着法によって、
全ての層を形成し、製造効率を高める。しかしながら、
本実施例では、Al23層を形成する際には、イオンビ
ームを用いない真空蒸着法で形成することにより、イオ
ンビームを用いた蒸着法で形成した場合よりも耐酸性等
の耐久性に優れた膜が得ている。一方、ZrO2層およ
びSiO2層は、イオンビームを用いた蒸着法で形成す
ることにより、真空蒸着法で形成した場合よりも耐久性
に優れた膜を得ることができる。したがって、本実施例
7〜12の反射防止膜は、特に耐久性に優れている。
【0273】また、本実施例7〜12では、反射防止膜
の第3層のZrO2層の形成時に照射されるイオンビー
ムのエネルギーを、第2層のZrO2層の形成時に照射
されるイオンビームのエネルギーよりも大きくしている
ため、第3層の原子の充填密度は、第2層よりも大きく
なっている。このため、第2層と第3層とは、同じ組成
であるが、原子の充填密度が異なるため、屈折率が異な
る。このように、屈折率が異なる4層で、各層の光学的
膜厚がλ/4である反射防止膜は、対応できる光の波長
帯域が広く、効果的に干渉縞の発生を抑制することがで
きる。
【0274】上述してきたように、変性層、ハードコー
ト層、および、反射防止膜により構成される本実施例1
〜12の被膜は、耐環境性に優れ、しかも、可視光に対
して透明であることがわかる。よって、本実施例の被膜
は、眼鏡用プラスチックレンズの被膜として用いた場
合、干渉縞が発生するのを防止し、美的外観の優れた眼
鏡用プラスチックレンズが得られる。
【0275】また、本実施例のプラスチックレンズの製
造方法は、PECVDというドライプロセスのみで、変
性層、第1、第2、第3のハードコート層、反射防止膜
を連続して形成することができる。この製造方法は、工
程が非常に単純であり、しかも従来の湿式プロセスのよ
うに、廃液処理や、表面活性化処理や、縮合硬化工程等
が不要であるため、製造コストを低減することができ
る。また、環境汚染問題も解決できる。さらに、本実施
例の製造方法は、ガスの種類や真空容器内の圧力等の成
膜条件を変えるのみで、1台のPECVD装置で、屈折
率等の膜性質を変化させた被膜を製造することができ
る。したがって、湿式プロセスのように予め溶液を準備
しておく必要はなく、1ロット2枚のレンズのような特
注レンズの製造を短い納期で行うことができる。
【0276】上述の実施例では、磁界によってプラズマ
密度を高めるPECVD装置を用いたが、磁界を用いな
いプラズマCVD装置を用いることももちろん可能であ
る。
【0277】上述の実施例1、2、3では、反射防止膜
の第1層、第2層、第3層、第4層の組成をTiO2
SiO2、TiO2、SiO2にすることにより、可視光
の透過率が高い反射防止膜を構成したが、反射防止膜の
可視光の透過率が低くてもよい場合、例えば、基体が色
付きレンズである場合や、赤外光を入射させる基体の被
膜として本実施例の構成を用いる場合には、TiOx
SiOy、TiOx、SiOyにすることもできる。但
し、0<x<2、0<y<2である。
【0278】同様に、実施例4〜12でも、反射防止膜
の各層の組成を酸素の割合が低い組成にすることもでき
る。
【0279】また、上述の各実施例で形成した反射防止
膜の上に、真空蒸着等の気相成長法により、フッ素や珪
素化合物からなる撥水性の薄膜を形成することもでき
る。また、反射防止膜の上に、ディッピングとよばれる
浸漬表面処理法により、湿式工程で、水ヤケ防止コート
等を形成することもできる。例えば、ディッピング用溶
液として、下記単位式で表される有機シラザン化合物を
好適に用いることができる。
【0280】Cp2p+1CH2CH2Si(NH)1.5 (ここに、pは正の整数) また、上述の実施例において、PECVD装置で変性層
やハードコート層を形成する際のガスの流量は、それぞ
れの目的にあった流量を適宜に選択すればよいが、好ま
しくは、Siとアルコキシ基とを含む有機化合物のガス
の場合は80〜200SCCM、Tiとアルコキシ基と
を含む有機化合物のガスの場合は30〜200SCC
M、また、酸素ガスは50〜200SCCMに設定し、
単独若しくは併用させて真空室へ流す。
【0281】また、この際の真空室内の圧力は、0.5
〜12Paの範囲で安定させることがのぞましい。この
圧力範囲に設定することにより、上述の評価項目につい
て、耐久性の優れた変性層やハードコート層が形成でき
る。
【0282】また、電極に印加するエネルギーとして
は、高周波2〜3.5KWを印加することが望ましい。
【0283】また、屈折率変性層を形成する際に、ガス
導入時の流量あるいは高周波出力(RFパワー)を連続
的に変化させることにより、同じ薄膜内部において連続
的に屈折率を変化させることが可能となる。これによ
り、変性層の屈折率を、基体側では、基体の屈折率に近
く、ハードコート層側では、ハードコート層の屈折率に
近くすることができる。
【0284】
【発明の効果】以上説明してきたように、本発明によれ
ば、耐環境性が大きく、複数層からなる被膜を連続した
工程で形成することの可能であり、しかも、被膜によっ
て干渉縞が発生するのを抑止した被膜つき物品を製造す
ることができる。
【0285】

Claims (13)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】合成樹脂基材と、 前記基材上に形成され、Si系および/またはTi系化
    合物の少なくとも一方を含み、厚さ方向に向かって屈折
    率が変化している、CVD法により形成された変性層
    と、 前記変性層上に形成され、前記変性層よりも相対的に厚
    い膜厚を有し、かつ、屈折率が一定であり、Siおよび
    Oを有する、CVD法により形成されたハードコート層
    と、 前記ハードコート層上に真空蒸着法により形成された無
    機酸化物からなる反射防止膜とを有することを特徴とす
    る光学物品。
  2. 【請求項2】請求項1において、前記反射防止膜は、前
    記基材側から順に積層された第1、第2、第3、第4の
    層からなり、 前記第1および第3の層は、酸化チタンを含み、 前記第2および第4の層は、酸化珪素を含むことを特徴
    とする光学物品。
  3. 【請求項3】請求項2において、層の幾何的膜厚と、そ
    の層の屈折率との積を、その層の光学的膜厚とした場合
    に、 前記第3の膜の第1および第2の層の光学的膜厚は、そ
    れぞれ、0.05×λ以上0.15×λ以下であり、 第3の層の光学的膜厚は、0.36×λ以上0.49×
    λ以下であり、 第4の層の光学的膜厚は、0.15×λ以上0.35×
    λ以下である、 但し、λは、450以上550以下の任意の値とする、
    ことを特徴とする光学物品。
  4. 【請求項4】請求項1において、前記反射防止膜は、前
    記基材側から順に積層された第1、第2、第3、第4の
    層からなり、 前記第1の層は、酸化ジルコニウムを含み、 前記第2および第4の層は、酸化珪素を含み、 前記第3の層は、酸化チタンを含むことを特徴とする光
    学物品。
  5. 【請求項5】請求項4において、層の幾何的膜厚と、そ
    の層の屈折率との積を、その層の光学的膜厚とした場合
    に、 前記第3の膜の第1および第2の層の光学的膜厚は、そ
    れぞれ、0.05×λ以上0.15×λ以下であり、 第3の層の光学的膜厚は、0.36×λ以上0.49×
    λ以下であり、 第4の層の光学的膜厚は、0.15×λ以上0.35×
    λ以下である、 但し、λは、450以上550以下の任意の値とする、
    ことを特徴とする光学物品。
  6. 【請求項6】請求項1において、前記反射防止膜は、前
    記基材側から順に積層された第1、第2、第3、第4の
    層からなり、 前記第1の層は、酸化アルミニウムを含み、 前記第2および第3の層は、酸化ジルコニウムを含み、 前記第4の層は、酸化珪素を含むことを特徴とする光学
    物品。
  7. 【請求項7】請求項6において、層の幾何的膜厚と、そ
    の層の屈折率との積を、その層の光学的膜厚とした場合
    に、 前記第3の膜の第1、第2、第3、第4の層の光学的膜
    厚は、それぞれ、λ/4である、 但し、λは、前記被膜に入射する光の中心波長する、こ
    とを特徴とする光学物品。
  8. 【請求項8】請求項1において、前記反射防止膜は、前
    記基材側から順に積層された第1、第2、第3、第4の
    層からなり、 前記第1および第3の層は、酸化ジルコニウムを含み、 前記第2および第4の層は、酸化珪素を含むことを特徴
    とする光学物品。
  9. 【請求項9】透明基材を用意し、Siを含む有機化合物
    ガスおよびTiを含む有機化合物ガスの少なくとも一方
    を用い、プラズマを用いた化学気相成長法により、前記
    基材上に変性層を形成する第1工程と、 Siを含む有機化合物ガスと酸素ガスとの混合ガスを用
    い、プラズマを用いた化学気相成長法により、前記変性
    層よりも相対的に厚い膜厚を有するハードコート層を前
    記変性層上に形成する第2工程と、 真空蒸着法により多層膜からなる反射防止膜を形成する
    第3工程を有する光学物品の製造方法。
  10. 【請求項10】請求項9の前記プラズマを用いた化学気
    相成長法において、プラズマに供給するエネルギーを徐
    々に増加または減少させることを特徴とする光学物品の
    製造方法。
  11. 【請求項11】請求項9または10の前記第1工程にお
    いて、前記ガスの流量を徐々に各々増加および減少させ
    ることを特徴とする光学物品の製造方法。
  12. 【請求項12】透明基材を用意し、Siを含む有機化合
    物ガスおよびTiを含む有機化合物ガスの少なくとも一
    方を用い、プラズマを用いた化学気相成長法により、前
    記基材上に変性層を形成する第1工程と、 Siを含む有機化合物ガスと酸素ガスとの混合ガスを用
    い、プラズマを用いた化学気相成長法により、前記変性
    層よりも相対的に厚い膜厚を有するハードコート層を前
    記変性層上に形成する第2工程と、 真空蒸着法により酸化アルミニウムからなる第1の反射
    防止層を形成する第3工程と、 イオンビームアシスト法により、酸化ジルコニウムから
    なる第2および第3の反射防止層、ならびに、酸化珪素
    からなる第4の反射防止層を形成する第4工程とを有す
    ることを特徴とする光学物品の製造方法。
  13. 【請求項13】請求項12において、前記第1、第2、
    第3、第4の反射防止層を形成するとき、各層の幾何的
    膜厚と、その層の屈折率との積を、その層の光学的膜厚
    とした場合に、前記反射防止膜の各層の光学的膜厚が、
    それぞれλ/4となるように形成する、但し、λは、前
    記反射防止膜に入射する光の中心波長であることを特徴
    とする光学物品の製造方法。
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JP2002082209A (ja) * 2000-09-08 2002-03-22 Olympus Optical Co Ltd 複合光学部品
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