JPH0953578A - スクロール圧縮機 - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 【目的】圧縮される冷媒ガスの流れを滑らかにし吐出抵
抗を小さくし、過圧縮時の冷媒ガスの再膨張を少なくす
るとともに、相対する２つの圧縮室の吐出タイミングを
合わせ圧縮ロスを低減し、性能の向上、騒音振動の発生
を防ぎ、高性能、低騒音低振動のスクロール圧縮機を提
供することを、その目的とするものである。 【構成】固定スクロールには圧縮された冷媒ガスを吐き
出すための吐出孔を設け、旋回スクロールの端板上渦巻
の中心近辺に凹部を設けてなるスクロール圧縮機に於い
て、前記旋回スクロールの凹部が、その断面形状を凹部
の底面側の内径が凹部の開口側の内径よりも小径となる
台形状あるいは球面形状とされたスクロール圧縮機とし
た。また、前記旋回スクロールに設けられた凹部の径よ
りも、固定スクロールに設けられた吐出孔の径が大きく
されたものである。

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【産業上の利用分野】本発明は、スクロール圧縮機に係
り、特に空気調和機、冷蔵庫等に用い、簡便な手段で信
頼性の向上、高効率化させるのに好適なスクロール圧縮
機に関するものである。

【０００２】

【従来の技術】従来のスクロール圧縮機における、旋回
スクロールの凹部の配置や構造に関しては、例えば特開
昭５４−７６０４号のようなものがある。

【０００３】図９に示す従来のスクロール圧縮機は、密
閉ケース１内に圧縮機構部２と電動機部１０とが収納さ
れたもので、固定スクロール３は、端板３ａ上に渦巻状
のラップ３ｂが直立したものであり、旋回スクロール４
は、端板４ａ上に渦巻状のラップ４ｂが直立したもの
で、互いにラップを内側に向けて噛みあわせることによ
り圧縮室５を形成している。

【０００４】圧縮室５は吸込口４０より吸い込まれた冷
媒ガスを旋回スクロール４の揺動回転により容積が徐々
に減少しながら中央に向い、圧縮された冷媒ガスを旋回
スクロール４の中心付近に設けられた円柱状凹部４ｄを
介して、固定スクロール３中央の吐出孔３ｃより吐出す
る。

【０００５】電動機１０は、ステータ１１とロータ１２
とからなっている。

【０００６】６は、電動機１０の回転力を伝達し旋回ス
クロール４を公転させるクランク軸、７は、このクラン
ク軸６を回転させる主軸受１５を具備するフレーム、１
６は、固定された軸受ハウジング１７に設けた下軸受で
ある。

【０００７】ロータ１２に結合されたクランク軸６は、
電動機１０の両側に設けられた主軸受１５と下軸受１６
とで支持されており、下軸受１６とは、自動調芯可能な
球面形状の軸受となっている。

【０００８】また、図１０に示すように旋回スクロール
４の渦巻中心４ｃ付近には円筒状の凹部４ｄが設けられ
ている。別の従来例ではこの円筒状の凹部４ｄがないも
のもある（図示せず）。

【０００９】更に、固定スクロール３に設けられている
圧縮された冷媒ガスを吐出するための吐出孔３ｃの孔径
は、図９に図示のとおり旋回スクロールに設けられてい
る円筒状の凹部４ｄと略同一径となっている。

【００１０】

【発明が解決しようとする課題】しかしながら、上記の
従来技術の圧縮機構造においては、旋回スクロールの渦
巻中心４ｃ付近に設けられた、円筒状凹部の断面形状が
長方形あるいは正方形であるため、圧縮された冷媒ガス
を吐出孔から吐き出す際、冷媒の流れ方が滑らかでな
く、且つ流路抵抗が大きくなり性能を悪くさせる要因で
あることが判った。しかも、デッドボリュウムを小さく
しようとして浅い凹部とした場合は、流路面積が小さく
なって流路抵抗が大きくなり、性能を悪くさせる。ま
た、流路抵抗を小さくしようとして深い凹部とした場合
は、円筒状凹部は圧縮されないデッドボリュウムが大き
くなり、性能を悪くさせる要因となる。

【００１１】更に、旋回スクロール渦巻中心付近に設け
る円筒状の凹部は凹部加工面と旋回スクロール底部面が
直角となりバリが発生しやすく、また、渦巻の中心付近
に溝を設けるため、直立している渦巻が視界をさえぎり
肉眼では小さなバリが見えにくく、バリ取り作業が困難
であるという問題もあり、加工性が悪い。

【００１２】また、別の従来例の様に旋回スクロールの
渦巻中心付近に凹部がない場合には、デッドボリュウム
が無いという利点がある一方で、２つの相対した圧縮室
が最小密閉空間を形成した直後、吐出孔から吐出する際
に、前記最小空間となった２つの圧縮室は、吐出孔の中
心に対して対称でないため、２つの圧縮室が吐出孔に連
通するタイミングずれるとともに連通する通路面積が同
一にならず、特に、吐出孔に連通した直後の通路面積は
大きく異なる。これによって、旋回スクロールを固定ス
クロールから離れるように軸方向に揺動させ、旋回スク
ロールと固定スクロール間の渦巻先端と歯底間の摺動部
のクリアランスを増加させ、その部分から圧縮された冷
媒ガスが洩れてしまい、圧縮性能の悪化及び振動、騒音
が増加してしまう問題があることが判った。

【００１３】また、固定スクロールに設けられた吐出孔
の内径と旋回スクロールに設けられた円筒状凹部の内径
が略同一であるため、吐出抵抗が大きく、旋回スクロー
ルに設けられた凹部は、圧縮できないデッドボリュウム
となるため、性能面で若干劣る問題があった。

【００１４】本発明は、上記従来技術の問題点を解決す
るためになされたもので、圧縮される冷媒ガスの流れを
滑らかにし吐出抵抗を小さくし、過圧縮を防止し、且つ
過圧縮が防止されるだけ冷媒ガスの再膨張を少なくする
とともに、相対する２つの圧縮室の吐出タイミングを合
わせ圧縮ロスを低減し、性能の向上、騒音振動の発生を
防ぎ、更に、旋回スクロール中央部に設ける凹部をバリ
の発生しにくい形状とし加工性を良好なものとすること
ができ、簡便な手段で安価でより高性能、低騒音低振動
のスクロール圧縮機を提供することを、その目的とする
ものである。

【００１５】

【課題を解決するための手段】上記目的を達成するため
に、電動機と、該電動機に連結された圧縮機構部と、上
記電動機と圧縮機構部とを収納する密閉容器とから成
り、上記圧縮機構部は、それぞれの端板に渦巻状のラッ
プを有し、それぞれのラップを噛みあわせて圧縮室を形
成する固定スクロール及び旋回スクロールと、前記旋回
スクロールの自転防止手段と、電動機の回転力を伝達し
旋回スクロールを回転させるクランク軸と、このクラン
ク軸を回転させる軸受を具備するフレームとを備え、前
記固定スクロールには圧縮された冷媒ガスを吐き出すた
めの吐出孔を設け、前記旋回スクロールの端板上渦巻の
中心近辺に凹部を設けてなるスクロール圧縮機に於い
て、前記旋回スクロールの凹部が、その断面形状を凹部
の底面側の内径が凹部の開口側の内径よりも小径となる
台形状あるいは球面形状とされたものである。

【００１６】また、更に固定スクロールに設けられた吐
出孔は旋回スクロールに設けられた凹部の径よりも大き
い径となっている。

【００１７】

【作用】上記の技術的手段による働きは下記のとおりで
ある。

【００１８】旋回スクロールの渦巻中心付近に設けられ
る凹部の断面形状は台形状あるいは球面形状となされ、
圧縮される冷媒ガスの流れを滑らかにし吐出抵抗を小さ
くし、過圧縮時の冷媒ガスの再膨張を少なくするととも
に、相対する２つの圧縮室の吐出タイミングを合わせ圧
縮ロスを低減し、性能の向上、騒音振動の発生を防ぎ、
更に、旋回スクロール中央部に設ける凹部の開口部が鈍
角となるためバリが発生しにくく、加工性を良好なもの
とすることができる。

【００１９】また、更に、固定スクロールに設けられた
吐出孔の径が、旋回スクロールに設けられた凹部の径よ
りも大きい径で構成されていることによって、上記凹部
を会して連通した圧縮室からの冷媒が、吐出孔に直接連
通した圧縮室からの冷媒に合流しても吐出抵抗の増加を
抑制し、また、圧縮できないデッドボリュウムを小さく
し且つ過圧縮を抑制する。

【００２０】

【実施例】以下本発明の実施例を図１ないし図７を用い
て説明する。

【００２１】図１は、本発明の第１の実施例に係るスク
ロール圧縮機の縦断面図、図２は図１の旋回スクロール
の渦巻中央付近に断面台形状の凹部を設けた旋回スクロ
ールの断面図、図３は図２の平面図、図４は第２の実施
例に係る旋回スクロールの縦断面図、図５は図４の平面
図、図６はスクロール圧縮機の基本圧縮構造を示した断
面斜視図、図７はスクロール圧縮機の基本動作を示す
図、図８は第３の実施例で、第１の実施例に係る固定ス
クロール吐出孔の径を旋回スクロールの凹部の径より大
きくしたポンプ部の縦断面図。図中、図９と同一符号の
ものは、従来技術と同一または相当部分をしめしてい
る。

【００２２】図１において、１は密閉ケース、２は、密
閉ケース１内の上部に収納された圧縮機構部、３は、端
板３ａ上に渦巻き状のラップ３ｂが直立した固定スクロ
ール、４は、端板４ａ上に渦巻き状のラップ４ｂが直立
した旋回スクロールであり、固定スクロール３と旋回ス
クロール４とはそれぞれのラップ３ｂ，４ｂを互いに内
側に向けて噛みあわせ圧縮室５を形成している。

【００２３】圧縮室５は吸込口４０より吸い込まれた冷
媒ガスをクランク軸６の回転により容積が徐々に減少し
ながら中央に向い、中央の吐出孔３ｃより圧縮された冷
媒ガスを、図２・図３に示す旋回スクロール４の渦巻中
心４ｃ付近に設けられた円柱状の凹部４ｄを介して吐出
する。

【００２４】６はクランク軸で、その偏心部６ａを旋回
スクロール４のボス部に嵌入させ、電動機１０の回転力
を伝達し旋回スクロール４を公転させるものである。旋
回スクロール４は、オルダムリング（図示せず）の作用
で自転が防止されている。

【００２５】７は、旋回スクロール４を収納し固定スク
ロール３を締結する固定されたフレーム、８は、フレー
ム７に具備されクランク軸６を回転自在に支持する主軸
受、９は、前記主軸受８に対し反電動機側に位置する下
軸受、１３は、下軸受９の軸受ハウジングである。

【００２６】電動機１０は、ステータ１１とロータ１２
とからなり、ロータ１２に結合されたクランク軸６は、
電動機１０の両側に設けられた主軸受８と副軸受９とで
支持される構成となっている。

【００２７】主軸受８は、内径面が一般的なストレート
形状のすべり軸受であり、下軸受９は、内径面が自動調
芯形状（略球面形状）をなす、すべり軸受である。

【００２８】図６，７を用いて、スクロール圧縮機の基
本構成と動作原理を説明する、図６にスクロール圧縮機
の基本構成を示す、冷媒ガスは固定スクロール３と旋回
スクロール４の渦巻３ｂ，４ｂと、その渦巻３ｂ，４ｂ
を保持する端板３ａ，４ａの間に形成される空間で圧縮
される。固定スクロールは、外周部に吸込口３０、端板
３ａの中心部に吐出孔３ｃを有し、外周部で静止部品で
あるフレーム７に固定されている。旋回スクロール４は
クランク軸６の回転に伴い偏心量を半径とする旋回公転
運動を行う。この運動は旋回スクロール４が自転せずに
姿勢を一定に保ったまま、その中心を固定スクロールの
中心（吐出孔３ｃの中心）の周りに円軌道運転させる運
動である。オルダムリングはこの旋回スクロール４の自
転を防止する部品であり、上面の突起が旋回スクロール
背面のキー溝に、下面の突起がフレーム７のキー溝に組
み入れられている。

【００２９】次に図７を用いて圧縮原理を示す。固定ス
クロール３と旋回スクロール４の渦巻３ｂ，４ｂは基本
的に同形あり、位相が１８０°ずれた状態で、且つ各々
の中心を上記偏心量の分だけ離れた状態で組み合わされ
ている。この結果、両渦巻３ｂ，４ｂ間に圧縮室５が形
成される。同図は、図７（ａ）が渦巻３ｂ，４ｂ外周部
の圧縮室５が閉じた吸い込み完了状態を示し、図７
（ｂ）乃至図７（ｄ）は旋回スクロール４の中心４ｃ
が、固定スクロール３の吐出孔３ｃの中心に対して時計
周りに円軌道運動するときの様子を回転各９０°おきに
示している。これによって、圧縮室５が渦巻３ｂ，４ｂ
の中心部へ向かって体積を縮小しながら移動し圧縮動作
するものである。

【００３０】また、図２・図３のように、旋回スクロー
ル４には渦巻４ｂの中心４ｃ付近に断面形状が台形の凹
部４ｃが設けられ、圧縮される冷媒ガスの流れを台形凹
部４ｃのテーパ部分に沿って滑らかに流入させることで
吐出抵抗を小さくするとともに、相対する２つの圧縮室
５の吐出タイミングを合わせて圧縮ロスを低減し、性能
の向上、騒音振動の発生を防ぎ、更に、旋回スクロール
中央部に設けた凹部をバリの発生しにくく加工性の良好
なものとすることができ、簡便な手段で安価でより高性
能、低騒音低振動のスクロール圧縮機を提供することが
できる。

【００３１】更に、図４・図５に図示の様に凹部は断面
形状が台形だけに限らず、球面状でも同様の効果が得ら
れる。

【００３２】また、図８を用いて第３の実施例を説明す
る。旋回スクロール４に設けられた凹部４ｄを台形状と
し、固定スクロール３に設けられた吐出孔３ｃは旋回ス
クロール４に設けられた凹部４ｄの径よりも大きい径と
して構成されている、例えば上記凹部４ｄの公転軌跡の
径と同程度にしている。このようにすることで、吐出す
る際の吐出抵抗を小さくでき、また、流路抵抗を小さく
するとともに圧縮できないデッドボリュウムを小さくで
き、且つ、上記吐出抵抗が小さくできることから化圧縮
の発生を抑制し、よって過圧縮時の吐出孔からの冷媒吐
出直後の再膨張も少なくできる。これによって、簡便な
手段で安価でより高性能、低騒音低振動のスクロール圧
縮機を提供することができる。

【００３３】

【発明の効果】本発明によれば、圧縮される冷媒ガスの
流れを滑らかにし吐出抵抗を小さくし、更に、過圧縮時
の冷媒ガスの再膨張を少なくするとともに、相対する２
つの圧縮室の吐出タイミングを合わせ圧縮ロスを低減
し、性能の向上、騒音振動の発生を防ぎ、更に、旋回ス
クロール中央部に設ける溝をバリの発生しにくい形状と
し加工性を良好なものとすることができ、簡便な手段で
安価でより高性能、低騒音低振動のスクロール圧縮機を
提供することができる。

【００３４】また、吐出する際の吐出抵抗を少なくで
き、また、圧縮できないデッドボリュウムを最小限に
し、且つ、過圧縮時の再膨張も少なくでき、簡便な手段
で安価でより高性能、低騒音低振動のスクロール圧縮機
を提供することができる。

【図面の簡単な説明】

【図１】本発明の一実施例に係る旋回スクロールの渦巻
中央付近に凹状の断面台形溝付きスクロール圧縮機の断
面図である。

【図２】図１のスクロール圧縮機の旋回スクロールの断
面図である。

【図３】図２の旋回スクロールの平面図である。

【図４】第２の実施例に係る旋回スクロールの縦断面図
である。

【図５】図４の旋回スクロールの平面図である。

【図６】スクロール圧縮機の基本構造示した図である。

【図７】スクロール圧縮機の基本圧縮動作を示した図で
ある。

【図８】第３の実施例に係るポンプ部の縦断面図であ
る。

【図９】従来のスクロール圧縮機の縦断面図である。

【図１０】従来のスクロール圧縮機の旋回スクロールの
縦断面図である。

【符号の説明】

１…密閉ケース、 ２…圧縮機構部、 ３…固定ス
クロール、４…旋回スクロール、 ３ａ，４ａ…端
板、 ３ｂ，４ｂ…ラップ、３ｃ…吐出穴、 ４ｄ
…凹部、 ５…圧縮室、 ６…クランク軸、７…フ
レーム、 ８…主軸受、 ９…下副軸受、 １０…
電動機 １１…ステータ １２…ロータ １５…主軸受
１６…球面軸受 １７…軸受ハウジング

───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 寺井 利行 栃木県下都賀郡大平町大字富田800番地株 式会社日立製作所冷熱事業部内

Claims (2)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】電動機と、該電動機に連結された圧縮機構
   部と、上記電動機と圧縮機構部とを収納する密閉容器と
   から成り、上記圧縮機構部は、それぞれの端板に渦巻状
   のラップを有し、それぞれのラップを噛みあわせて圧縮
   室を形成する固定スクロール及び旋回スクロールと、前
   記旋回スクロールの自転防止手段と、電動機の回転力を
   伝達し旋回スクロールを回転させるクランク軸と、この
   クランク軸を回転させる軸受を具備するフレームとを備
   え、前記固定スクロールには圧縮された冷媒ガスを吐き
   出すための吐出孔を設け、前記旋回スクロールの端板上
   渦巻の中心近辺に凹部を設けてなるスクロール圧縮機に
   於いて、 前記旋回スクロールの凹部が、その断面形状を凹部の底
   面側の内径が凹部の開口側の内径よりも小径となる台形
   状あるいは球面形状とされたことを特徴とするスクロー
   ル圧縮機。
2. 【請求項２】電動機と、該電動機に連結された圧縮機構
   部と、上記電動機と圧縮機構部とを収納する密閉容器と
   から成り、上記圧縮機構部は、それぞれの端板に渦巻状
   のラップを有し、それぞれのラップを噛みあわせて圧縮
   室を形成する固定スクロール及び旋回スクロールと、前
   記旋回スクロールの自転防止手段と、電動機の回転力を
   伝達し旋回スクロールを回転させるクランク軸と、この
   クランク軸を回転させる軸受を具備するフレームとを備
   え、前記固定スクロールには圧縮された冷媒ガスを吐き
   出すための吐出孔を設け、前記旋回スクロールの端板の
   渦巻の中心近辺に凹部を設けてなるスクロール圧縮機に
   於いて 前記旋回スクロールに設けられた凹部の径よりも、固定
   スクロールに設けられた吐出孔の径が大きいことを特徴
   とするスクロール圧縮機。