JPH0953480A - トラクション制御装置 - Google Patents

トラクション制御装置

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Publication number
JPH0953480A
JPH0953480A JP7208132A JP20813295A JPH0953480A JP H0953480 A JPH0953480 A JP H0953480A JP 7208132 A JP7208132 A JP 7208132A JP 20813295 A JP20813295 A JP 20813295A JP H0953480 A JPH0953480 A JP H0953480A
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JP
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control
slip state
acceleration slip
throttle valve
opening
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JP7208132A
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English (en)
Inventor
Munenori Ishizaka
宗徳 石坂
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Toyota Motor Corp
Original Assignee
Toyota Motor Corp
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Publication date
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  • Control Of Driving Devices And Active Controlling Of Vehicle (AREA)
  • Control Of Vehicle Engines Or Engines For Specific Uses (AREA)
  • Electrical Control Of Air Or Fuel Supplied To Internal-Combustion Engine (AREA)

Abstract

(57)【要約】 【課題】加速スリップ状態が設定加速スリップ状態を超
える事態の検出の正誤の判定の信頼性の高いトラクショ
ン制御装置を提供する。 【解決手段】回転速度センサの電気ノイズ,車両の駆動
系の振動等により駆動輪速度VR が見かけ上あるいは一
時的に急上昇し、駆動輪速度VR がスロットルバルブ制
御基準値VS 以上になった後、8msecが経過し、トラク
ション制御が開始されても、サブスロットル開度θS
メインスロットル開度θM 以下、ホイールシリンダに液
圧が発生するまでに時間があり、駆動輪速度VR の急上
昇が見かけ上あるいは一時的であれば実際にエンジンの
駆動トルクが減少させられ、駆動輪の回転が抑制される
前にスロットルバルブ制御基準値VS 以下になり、(S
309〜S312)、誤検出フラグFI がセットされて
スロットルバルブ開閉制御,ブレーキ制御が終了させら
れ、トラクション制御が無駄に行われることがない。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、車両の加速時に駆
動輪の加速スリップ状態を適正加速スリップ状態に制御
するトラクション制御装置に関するものであり、特に、
制御の信頼性の向上に関するものである。
【0002】
【従来の技術】この種のトラクション制御装置は、特開
平1−212628号公報等において既に知られてお
り、駆動輪の加速スリップ状態を検出する加速スリップ
状態検出手段と、その加速スリップ状態検出手段により
検出された加速スリップ状態が設定加速スリップ状態を
超えた場合に加速スリップ状態を適正加速スリップ状態
に制御する加速スリップ状態制御手段とを含むように構
成されるのが普通である。加速スリップ状態は、例え
ば、加速スリップ率,加速スリップ量,車輪加速度,車
輪加速度の変化率,それらのうち少なくとも2つの組合
わせ等に基づいて検出される。設定加速スリップ状態
は、例えば、加速スリップ率,加速スリップ量,車輪加
速度,車輪加速度の変化率の各値や、それら加速スリッ
プ率が設定値を超えた状態が継続する時間等により設定
される。
【0003】また、加速スリップ状態制御手段は、スロ
ットルバルブ装置の開度の調節によるエンジンの駆動ト
ルクの制御によって加速スリップ状態を適正加速スリッ
プ状態に制御する手段を含むものとされることが多い。
加速スリップ状態の制御に使用されるスロットルバルブ
装置は、運転者によるアクセルペダル,アクセルレバー
等の加速操作部材の操作に応じた開度である加速操作対
応開度に制御されるとともに、必要に応じて自動開度制
御装置により加速操作対応開度とは異なる制御目標開度
に制御され得る自動開度制御装置付きスロットルバルブ
装置とされる。運転者の加速操作部材の操作とは別に、
必要な開度が自動的に得られるようにされているのであ
る。
【0004】運転者の加速操作部材の操作に応じて機械
的に開閉させられるメインスロットルバルブと、そのメ
インスロットルバルブとは別に設けられ、自動開度制御
装置によりメインスロットルバルブとは独立に開閉させ
られるサブスロットルバルブとを含むスロットルバルブ
装置は、その一例である。このスロットルバルブ装置に
おいて、通常の加速時にはメインスロットルバルブが開
閉させられ、トラクション制御時に更にサブスロットル
バルブが開閉させられる。
【0005】サブスロットルバルブは、例えば、開閉方
向および開閉速度が設定され、それら方向および速度に
従って開閉させられることにより、メインスロットルバ
ルブの開度である加速操作対応開度より小さい開度が得
られる位置まで閉じられる。この開度が制御目標開度で
ある。あるいはメインスロットルバルブの開度より小さ
い制御目標開度が設定され、その制御目標開度が得られ
る位置へサブスロットルバルブが閉じられる。いずれの
場合にも制御目標開度はメインスロットルバルブの開度
より小さく、サブスロットルバルブが閉じられることに
より吸入空気量が減少させられ、エンジンの駆動トルク
が減少させられる。このスロットルバルブ装置において
は、メインスロットルバルブの開度とサブスロットルバ
ルブの開度とのうち小さい方の開度がスロットルバルブ
装置全体の開度となるが、加速スリップ状態制御手段に
よりスロットルバルブ装置が閉じられるという場合に
は、サブスロットルバルブが閉じられることを意味する
ものとする。加速スリップ状態制御手段によりサブスロ
ットルバルブが閉じられても、そのサブスロットルバル
ブの開度がメインスロットルバルブの開度より小さくな
らなければ、スロットルバルブ装置全体の開度は変わら
ないことになる。
【0006】また、自動開度制御装置により開閉させら
れる単一のスロットルバルブのみを有し、通常の加速時
にもトラクション制御時にも単一スロットルバルブが自
動開度制御装置によって開閉させられるスロットルバル
ブ装置もある。通常の加速時には、加速操作対応開度が
単一スロットルバルブの開度とされ、トラクション制御
時には加速操作対応開度より小さい制御目標開度まで単
一スロットルバルブが閉じられる。単一スロットルバル
ブは、開閉方向および開閉速度が設定され、それら方向
および速度に従って閉じられることにより制御目標開度
とされ、あるいは制御目標開度が設定され、その制御目
標開度が得られる位置まで閉じられる。このスロットル
バルブ装置は単一のスロットルバルブを有するのみであ
るため、その単一スロットルバルブの開度がスロットル
バルブ装置全体の開度であり、スロットルバルブ装置を
閉じるとは、単一スロットルバルブを閉じることであ
る。
【0007】この種の加速スリップ制御装置において、
加速スリップ状態の誤った検出により、実際には設定加
速スリップ状態を超えていないのに超えたと検出され、
無用なトラクション制御が行われることがある。例え
ば、駆動輪の車輪速度を検出する車輪速センサの電気系
統にノイズが生じ、車輪速度が誤って高く検出され、加
速スリップ状態が設定加速スリップ状態を超えたとして
トラクション制御が開始されることがある。この場合、
実際の駆動輪の加速スリップ状態は設定加速スリップ状
態を超えておらず、トラクション制御が不必要である
が、見かけ上、加速スリップ状態が設定加速スリップ状
態を超えるため、トラクション制御が開始されてしまう
のである。
【0008】また、車両の駆動系に共振が生ずることに
より、車輪速度が実際より過大に検出されることがあ
る。駆動系の共振は、例えば、エンジンがレーシング状
態になることに起因して生じる。エンジンのレーシング
状態は、エンジンが無負荷状態において回転数が設定回
転数以上に高くなる状態であり、空ふかし状態とも称す
る。レーシング状態は、車両の停止中に限らず、惰性走
行中にも生ずる。エンジンがレーシング状態になると駆
動系に共振が生じることがあるのであり、そのために車
輪速センサが誤って実際より大きい車輪速度を検出し、
不必要なトラクション制御が開始されてしまうことがあ
る。
【0009】例えば、車輪速センサが、非回転部材であ
る車体側部材に固定されたヨーク,コイルおよび永久磁
石等を備えた電磁ピックアップと、車輪と一体的に回転
可能に設けられるとともに外周部に歯が形成されたロー
タとを含み、ロータの回転に伴ってヨークとロータとの
間のギャップの周期的な変化により生ずる交流電流の周
波数に基づいて車輪速度を検出するものである場合、駆
動系に共振が生ずれば、車体側部材と車輪とが互に振動
させられ、ヨークとロータとの相対位置が周期的に変化
させられる。それに伴って上記ギャップの大きさが周期
的に変化させられ、コイルに交流電流が発生させられ
て、現実に車輪が回転していないのに車輪速度が誤って
検出され、あるいは車輪が回転している場合、車輪速度
が実際より高く検出されることがあり、トラクション制
御の開始条件が満たされる場合があるのである。レーシ
ング状態以外においても駆動系の共振に起因して車輪速
センサが誤って実際より大きい回転速度を検出すること
がある。
【0010】さらに、車両の追越し走行時等のように、
乾燥路上で車両の急加減速が行われれば、加速スリップ
状態が設定加速スリップ状態を超えたと検出され、トラ
クション制御が開始されることがある。例えば、車輪速
度が一時的に急上昇するのに対し、車輪速度を平滑化し
て求められる車体速度はそれほど急激に上昇しないた
め、加速スリップ状態が設定加速スリップ状態を超えた
と検出されることがあるのである。
【0011】また、車両の動力伝達系の構成部品間の遊
隙(組付けガタ)によっても、車輪速度が誤って高く検
出され、トラクション制御が開始されることがある。例
えば、車輪速センサがトランスミッションの出力軸に取
り付けられている場合、トランスミッションから駆動輪
までの動力伝達系の遊隙により、車両を急加速したとき
に駆動輪の回転速度が急増していないにもかかわらず、
トランスミッションの出力軸の回転速度が急増し、車輪
速度が実際より高く検出されるのである。車輪速センサ
が車軸に取り付けられている場合、車軸から駆動輪まで
の遊隙により、車輪速度が誤って高く検出されることも
ある。
【0012】このように駆動輪の速度や加速度が誤って
高く検出され、あるいは一時的にであっても実際に急上
昇し、加速スリップ状態が見かけ上あるいは一時的に設
定加速スリップ状態を超えれば、トラクション制御が開
始される。しかし、車輪速度や加速度は実際には急上昇
しておらず、あるいは一時的な上昇であってトラクショ
ン制御を行わなくても収束するため、トラクション制御
は不必要である。加速スリップ状態が設定加速スリップ
状態を超えたこと、すなわちトラクション制御が必要で
あることが誤って検出されるのであり、不必要なトラク
ション制御の実行により加速性の低下,騒音発生等の問
題が生ずる。
【0013】そのため、前記公報に記載のトラクション
制御装置においては、加速スリップ状態が設定加速スリ
ップ状態を超えたとき、トラクション制御が開始される
が、その加速スリップ状態が所定時間内に収束すれば、
トラクション制御が終了させられるようにされている。
車輪速度や車輪加速度が見かけ上あるいは一時的に急上
昇した場合、それら急上昇を生じさせている原因は短時
間で消滅する。そのため、所定時間内に加速スリップ状
態が適正加速スリップ状態に収束すれば、設定加速スリ
ップ状態を超える加速スリップ状態の検出が誤りであっ
たことがわかり、もともと不必要なトラクション制御が
終了させられるのである。
【0014】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、このよ
うに時間に基づく誤検出か否かの判定は信頼性が低い問
題がある。加速スリップ状態が所定時間内に収束して
も、トラクション制御の実行による収束であるのか、加
速スリップ状態を見かけ上あるいは一時的に設定加速ス
リップ状態を超えさせた原因の消滅による収束であるの
かがわからないことがあるからである。上記所定時間
は、トラクション制御が必要な状態であれば加速スリッ
プ状態が収束せず、見かけ上あるいは一時的に設定加速
スリップ状態を超えたのみであれば収束する長さに設定
される。しかし、例えば、加速スリップ状態が設定加速
スリップ状態を超えたときのスロットルバルブ装置の開
度は一定ではなく、トラクション制御が必要な場合に加
速スリップ状態が設定加速スリップ状態を超えたときの
スロットルバルブ装置の開度が小さければ、トラクショ
ン制御が開始されて直ちに制御目標開度まで閉じられ、
所定時間内に加速スリップ状態が収束させられることが
ある。この場合は、所定時間内に加速スリップ状態が収
束したのはトラクション制御が行われたからであり、ト
ラクション制御が終了させられれば、再び加速スリップ
状態が適正加速スリップ状態を超え、トラクション制御
が開始され、トラクション制御が頻繁に終了,開始させ
られる制御のハンチングが生ずる。
【0015】これを防止するために前記所定時間を短く
設定すれば、見かけ上あるいは一時的に加速スリップ状
態が設定加速スリップ状態を超えた場合、加速スリップ
状態が自然に収束する前に所定時間が経過してしまい、
トラクション制御が終了させられず、終了条件が成立す
るまでトラクション制御が行われ、加速性が低下するこ
とを避け得ない。それぞれ請求項1および請求項2に係
る第一発明および第二発明は、加速スリップ状態が適正
加速スリップ状態を超えたことの検出が誤ったものであ
るか否かの判定の信頼性が高いトラクション制御装置を
得ることを課題として為されたものである。
【0016】
【課題を解決するための手段,作用および発明の効果】
第一発明は、上記の課題を解決するために、前記(A)
加速スリップ状態検出手段,(B)少なくとも、スロッ
トルバルブ装置の開度の調節によるエンジンの駆動トル
クの制御によって加速スリップ状態を適正加速スリップ
状態に制御する加速スリップ状態制御手段を含むトラク
ション制御装置において、トラクション制御開始後、遅
くとも前記加速スリップ状態制御手段により前記スロッ
トルバルブ装置が制御目標開度まで閉じられるまでに加
速スリップ状態が少なくとも収束し始めたことに基づい
てそのトラクション制御を終了させるトラクション制御
終了手段を設けたことを特徴とするものである。
【0017】このトラクション制御装置においては、加
速スリップ状態が設定加速スリップ状態を超えたとき、
スロットルバルブ装置が閉じられる。スロットルバルブ
装置が制御目標開度まで閉じられるには時間がかかるた
め、加速スリップ状態が見かけ上あるいは一時的に設定
加速スリップ状態を超えたのみであり、実際にはトラク
ション制御が不必要であれば、遅くともスロットルバル
ブ開度が制御目標開度に達する以前に加速スリップ状態
が少なくとも収束し始めるはずであり、トラクション制
御が終了させられる。トラクション制御が必要な加速ス
リップ状態であれば、スロットルバルブの開度が制御目
標開度に達する以前に収束し、あるいは収束を始めるこ
とはないため、トラクション制御が途中で終了させられ
ることはない。
【0018】「遅くともスロットルバルブ開度が制御目
標開度に達する以前」とは、スロットルバルブ開度が加
速操作対応開度等予め定められた開度に達する以前、あ
るいは遅くとも制御目標開度に達する以前を意味する。
また、「加速スリップ状態が少なくとも収束し始めたこ
とに基づいてそのトラクション制御を終了させる」と
は、加速スリップ状態が既に収束したことに基づいてト
ラクション制御を終了させてもよいが、少なくとも収束
し始めたことに基づいてはトラクション制御を終了させ
るべきことを意味する。「加速スリップ状態が収束し始
めた」とは、例えば、駆動輪加速度または駆動輪加速度
の変化率が減少したこと、あるいは駆動輪速度,駆動輪
のスリップ量またはスリップ率が減少したことであり、
「加速スリップ状態が収束した」とは、例えば、駆動輪
速度が設定速度以下になったこと、あるいは駆動輪のス
リップ量またはスリップ率が設定量または設定率以下に
なったことである。スロットルバルブ装置を閉じると
き、サブスロットルバルブや単一スロットルバルブの開
閉方向,開閉速度や制御目標開度は、エンジン回転速度
とメインスロットルバルブあるいは単一スロットルバル
ブの開度とに基づいて設定してもよく、スリップ量また
はスリップ率とメインスロットルバルブあるいは単一ス
ロットルバルブの開度とに基づいて設定してもよく、メ
インスロットルバルブあるいは単一スロットルバルブの
開度のみに基づいて設定してもよい等、種々の態様で設
定することができる。
【0019】本第一発明によれば、加速スリップ状態が
設定加速スリップ状態を超えることによりトラクション
制御が開始されても、不必要であれば終了させられ、必
要であれば終了させられることはなく、制御のハンチン
グが生じたり、不必要なトラクション制御の実行により
加速性が低下することのないトラクション制御装置が得
られる。また、必要があれば、一旦開始されたトラクシ
ョン制御が、遅くともスロットルバルブ装置が制御目標
開度まで閉じられるまでに加速スリップ状態が少なくと
も収束し始めたことに基づいて終了させられたことによ
り、レーシング,センサにおける電気ノイズの発生,急
加速,駆動系の遊隙の存在等を検出することができる。
【0020】第二発明は、(a)駆動輪の加速スリップ
状態を検出する加速スリップ状態検出手段,(b)その
加速スリップ状態検出手段により検出された加速スリッ
プ状態が設定加速スリップ状態を超えた場合、その加速
スリップ状態を適正加速スリップ状態に制御する加速ス
リップ状態制御手段を含むトラクション制御装置におい
て、トラクション制御開始後、前記加速スリップ状態制
御手段の実質的な制御作用が生ずる前に加速スリップ状
態が少なくとも収束し始めたことに基づいてそのトラク
ション制御を終了させる実質的制御作用依拠型トラクシ
ョン制御終了手段を設けたことを特徴とするものであ
る。
【0021】このトラクション制御装置において加速ス
リップ状態制御手段は、スロットルバルブ装置の開度の
制御,燃料噴射量の制御,燃料カット,エンジンの点火
時期の制御,過給圧の制御,変速装置の変速段の切換え
等によるエンジンの駆動トルクの制御と、駆動輪の回転
を抑制するブレーキのブレーキ力の制御のうちの少なく
とも1つを実行し、加速スリップ状態を適正加速スリッ
プ状態に制御する。「実質的な制御作用」とは、例え
ば、ホイールシリンダ液圧が発生したこと、エンジンの
吸入空気量が減少したこと等、車輪の回転の抑制やエン
ジンの駆動トルクの減少を実際に生じさせる作用であ
る。
【0022】第二発明に係るトラクション制御装置にお
いても、見かけ上あるいは一時的に加速スリップ状態が
設定加速スリップ状態を超えたのであれば、その加速ス
リップ状態はトラクション制御によらなくても収束する
ため、実質的な制御作用が生ずる前に加速スリップ状態
が収束するか、収束し始め、トラクション制御が終了さ
せられる。それに対し、加速スリップ状態が設定加速ス
リップ状態を超えたのが一時的あるいは見かけ上ではな
く、トラクション制御が必要な状態であれば、実質的な
制御作用が生ずる前に加速スリップ状態が収束したり、
収束し始めることはなく、トラクション制御は終了させ
られない。
【0023】第二発明によれば、無用なトラクション制
御を確実に終了させることができる。特に、加速スリッ
プ状態が収束し始めたことによりトラクション制御を終
了させる場合には、無用なトラクション制御を早期に終
了させることができる。また、第二発明は、設定加速ス
リップ状態を超える加速スリップ状態をスロットルバル
ブ装置の開閉により適正加速スリップ状態に収束させる
トラクション制御装置に限らず、燃料噴射量の制御やホ
イールシリンダ液圧の制御等、別の手段により加速スリ
ップ状態を収束させるスロットルバルブ装置にも広く適
用することができる。
【0024】本発明は、上記請求項1,2に記載の態様
の他に、下記の態様でも実施可能である。 (1)前記加速スリップ状態制御手段が、前記スロットル
バルブ装置の開度の調節に加えて、駆動輪の回転を抑制
するブレーキのホイールシリンダ液圧の制御によっても
過大なスリップを抑制するものであり、かつ、前記トラ
クション制御終了手段が、遅くとも前記スロットルバル
ブ装置の開度が制御目標開度まで閉じられる以前で、か
つ、前記ブレーキのホイールシリンダ液圧が上昇を開始
する以前に、加速スリップが少なくとも収束し始めてい
ることに基づいてトラクション制御を終了させるスロッ
トルバルブ開度・ホイールシリンダ液圧依拠型トラクシ
ョン制御終了手段を含む請求項1に記載のトラクション
制御装置。加速スリップ状態が設定加速スリップ状態を
超え、スロットルバルブ装置の開度が加速操作対応開度
等予め定められた開度を超えて閉じられ、あるいは遅く
とも制御目標開度まで閉じられるまでに時間がかかる。
また、ホイールシリンダへのブレーキ液の供給指令が出
力されてから実際にホイールシリンダ液圧が上昇するま
で、すなわち摩擦材がディスクロータやブレーキドラム
等の回転体に摺接して摩擦力を発生させるまでに時間が
ある。加速スリップ状態がトラクション制御の不必要な
ものであればこれらの間に収束し、あるいは少なくとも
収束し始め、トラクション制御が終了させられる。加速
スリップ状態がトラクション制御の必要なものであれ
ば、スロットルバルブ装置の開度が少なくとも加速操作
対応開度を超えて閉じられ、あるいはホイールシリンダ
圧が上昇を開始して始めて収束するのであって、間違っ
てトラクション制御が終了させられてハンチングが生ず
ることがない。加速スリップ状態制御手段が、スロット
ルバルブ装置の開度の調節とホイールシリンダ液圧の制
御との両方によって過大なスリップを抑制するものであ
る場合には、加速スリップ状態が設定加速スリップ状態
を超えれば両方が同時に指令されることが多いが、時期
をずらして指令されるようにすることも可能である。い
ずれにしても、スロットルバルブ装置の開度が少なくと
も加速操作対応開度を超えておらず、かつ、ホイールシ
リンダ液圧が上昇し始めてもいない間は実質的な加速ス
リップ抑制作用は得られない。それにもかかわらず、加
速スリップ状態が少なくとも収束し始めれば、加速スリ
ップ抑制の必要がないことを意味するため、加速スリッ
プ制御が終了させられるようにして差し支えない。 (2)前記スロットルバルブ装置が、運転者の加速操作部
材の操作に応じた開度である加速操作対応開度に制御さ
れるとともに、必要に応じてその加速操作対応開度とは
異なる制御目標開度に自動開度制御装置により制御され
得る自動開度制御装置付きスロットルバルブ装置である
請求項1または態様1に記載のトラクション制御装置。 (3)前記トラクション制御終了手段が、前記加速スリッ
プ状態が収束したことに基づいてトラクション制御を終
了させる加速スリップ状態収束時トラクション制御終了
手段を含む請求項1,態様1,2のいずれか1つに記載
のトラクション制御装置。 (4)前記トラクション制御終了手段が、前記スロットル
バルブ装置の開度が、前記制御目標開度に基づいてその
制御目標開度より大きい開度に設定される中間開度以下
になる以前に既に加速スリップが収束していることに基
づいてトラクション制御を終了させる中間開度依拠型ト
ラクション制御終了手段を含む請求項1,態様1〜3の
いずれか1つに記載のトラクション制御装置。スロット
ルバルブ装置の最小開度を0%、最大開度を100%と
すれば、メインスロットルバルブおよびサブスロットル
バルブを有するスロットルバルブ装置おいては、通常、
メインスロットルバルブは加速操作部材の操作に応じた
加速操作対応開度にあり、サブスロットルバルブは開度
100%となっている。そして、サブスロットルバルブ
の制御目標開度は、加速操作対応開度より小さい値に設
定され、中間開度は、100%と制御目標開度との間の
値に設定される。中間開度は加速操作対応開度より大き
いことも小さいこともある。単一スロットルバルブが自
動開度制御装置により開閉させられるスロットルバルブ
装置においては、通常、単一スロットルバルブは加速操
作部材の操作に応じた加速操作対応開度にある。制御目
標開度は加速操作対応開度より小さい値に設定され、中
間開度は、制御目標開度を超えかつ加速操作対応開度以
下の範囲の値に設定される。 (5)前記スロットルバルブ装置が、前記加速操作部材の
操作に応じて開閉させられるメインスロットルバルブ
と、そのメインスロットルバルブとは別に設けられ、前
記自動開度制御装置によりメインスロットルバルブとは
独立に開閉させられるサブスロットルバルブとを含む請
求項1,態様1ないし4のいずれか1つに記載のトラク
ション制御装置。 (6)前記制御目標開度が前記加速操作対応開度より小さ
く、前記トラクション制御終了手段が、サブスロットル
バルブの実開度が前記加速操作対応開度より小さくなる
以前に加速スリップ状態が既に収束したこと、または収
束し始めていることに基づいてトラクション制御を終了
させる加速操作開度・実開度比較型トラクション制御終
了手段を含む態様5に記載のトラクション制御装置。 (7)前記トラクション制御終了手段が、加速スリップ状
態の収束を前記駆動輪の回転速度が設定回転速度以下に
なったことに基づいて判定する手段を含む態様3〜6の
いずれか1つに記載のトラクション制御装置。設定回転
速度は、例えば、スロットルバルブ装置の開度の制御に
よる目標回転速度、あるいはブレーキのホイールシリン
ダ液圧の制御による目標回転速度、あるいはそれら速度
に設定値を加減し、あるいは設定比率を乗じた速度等、
加速スリップ状態の収束がわかる速度に設定される。 (8)前記トラクション制御終了手段が、前記加速スリッ
プ状態の収束を前記駆動輪の回転速度が減少し始めたこ
とに基づいて判定する手段を含む請求項1,2,態様
1,2のいずれか1つに記載のトラクション制御装置。 (9)前記スロットルバルブ開度・ホイールシリンダ液圧
依拠型トラクション制御終了手段が、前記ホイールシリ
ンダ液圧を測定するホイールシリンダ液圧測定手段と、
そのホイールシリンダ液圧測定手段により測定されたホ
イールシリンダ液圧が実質的に0であることに基づいて
トラクション制御を終了させる手段とを含む態様1に記
載のトラクション制御装置。 (10)前記トラクション制御終了手段が、過大な加速スリ
ップ状態の検出後、設定時間以内に加速スリップ状態が
収束し始めたことに基づいてトラクション制御を終了さ
せる設定時間依拠型トラクション制御終了手段を含む請
求項1,2,態様1,2,8のいずれか1つに記載のト
ラクション制御装置。 (11)前記設定時間が、前記ブレーキによる車輪回転抑制
指令の出力から実際にホイールシリンダ液圧が生ずるま
での遅れ時間である態様10に記載のトラクション制御
装置。ホイールシリンダ液圧が上昇し始めたか否かは、
態様9の装置におけるように、ホイールシリンダ液圧を
実際に測定することによりわかり、あるいは態様10の
装置におけるように時間によりわかる。ホイールシリン
ダへのブレーキ液の供給指令出力から実際にホイールシ
リンダ液圧が生ずるまでの時間を実際に測定し、あるい
は理論的に推定し、この遅れ時間を設定時間としてもよ
く、遅れ時間に基づいて設定時間を設定してもよい。実
際にホイールシリンダ液圧を測定すれば、ホイールシリ
ンダ液圧が上昇し始める以前であること、すなわち0で
あることが正確にわかり、トラクション制御を正確に終
了させ、あるいは終了させないようにすることができ
る。設定時間によれば、ホイールシリンダ液圧を測定す
る手段を設けなくてもよく、装置を安価に構成すること
ができる。 (12)前記実質的制御作用依拠型トラクション制御終了手
段が、前記駆動輪の回転速度が少なくとも減少し始めた
ことに基づいてトラクション制御を終了させる回転速度
依拠型トラクション制御終了手段を含む請求項2に記載
のトラクション制御装置。 (13)前記加速スリップ制御手段が、駆動輪の回転を抑制
するブレーキのブレーキ力の制御によってトラクション
制御を行うブレーキ依存型加速スリップ制御手段を含
み、前記実質的制御作用依拠型トラクション制御終了手
段が、トラクション制御開始後、実質的なブレーキ力が
発生する以前に加速スリップ状態が少なくとも収束し始
めたことに基づいてそのトラクション制御を終了させる
ブレーキ力着目型トラクション制御終了手段を含む請求
項2または態様12に記載のトラクション制御装置。ブ
レーキのブレーキ力の制御によってトラクション制御を
行う場合、ホイールシリンダへのブレーキ液の供給指令
の出力から実際にホイールシリンダ液圧が発生するまで
に遅れがあり、加速スリップ状態が一時的あるいは見か
け上、設定加速スリップ状態を超えたのであれば、この
遅れ時間が経過する以前に少なくとも収束し始め、トラ
クション制御が終了させられて、無駄に行われることが
ない。トラクション制御の必要な加速スリップ状態であ
れば、ホイールシリンダ液圧が上昇し始めなけれは加速
スリップ状態は収束させられず、トラクション制御が途
中で終了させられて制御のハンチングが生ずることがな
い。 (14)前記加速スリップ状態制御手段が、運転者の加速操
作部材の操作に応じた開度である加速操作対応開度に制
御されるとともに、必要に応じてその加速操作対応開度
とは異なる制御目標開度に自動開度制御装置により制御
され得る自動開度制御装置付きスロットルバルブ装置
と、そのスロットルバルブ装置を制御することによって
加速スリップ制御を行うスロットルバルブ装置依存型加
速スリップ制御手段とを含み、前記実質的制御作用依拠
型トラクション制御終了手段が、トラクション制御開始
後、前記スロットルバルブ装置の開度が加速操作対応開
度以下になる以前に加速スリップ状態が少なくとも収束
し始めたことに基づいてそのトラクション制御を終了さ
せるバルブ開度着目型トラクション制御終了手段を含む
請求項2,態様12または態様13に記載のトラクショ
ン制御装置。このトラクション制御装置において、スロ
ットルバルブ装置が制御目標開度まで閉じられるまでに
時間があり、加速スリップ状態が一時的あるいは見かけ
上、設定加速スリップ状態を超えた場合には、スロット
ルバルブ装置が加速操作対応開度以下になる以前に加速
スリップ状態が少なくとも収束し始めれば、トラクショ
ン制御が終了させられる。スロットルバルブ装置が制御
目標開度まで閉じられなくてもトラクション制御が終了
させられ、無用なトラクション制御が早期に終了させら
れる。 (15)駆動輪の加速スリップ状態を検出する加速スリップ
状態検出手段と、その加速スリップ状態検出手段により
検出された加速スリップ状態が設定加速スリップ状態を
超えた場合、少なくとも、駆動輪の回転を抑制するブレ
ーキのホイールシリンダ液圧の制御によって加速スリッ
プ状態を適正加速スリップ状態に制御する加速スリップ
状態制御手段とを含むトラクション制御装置において、
前記ホイールシリンダ液圧を測定するホイールシリンダ
液圧測定手段を有し、トラクション制御開始後、そのホ
イールシリンダ液圧測定手段によって測定されたホイー
ルシリンダ液圧が実質的に0である間に、加速スリップ
状態が少なくとも収束し始めたことに基づいてそのトラ
クション制御を終了させるトラクション制御終了手段を
設けたことを特徴とするトラクション制御装置。ホイー
ルシリンダ液圧をホイールシリンダ液圧測定手段により
測定すれば、ホイールシリンダ液圧が上昇を開始する以
前であることが正確にわかり、不必要なトラクション制
御を確実に終了させ、あるいは必要なトラクション制御
を確実に終了させないでおくことができる。 (16)前記トラクション制御終了手段が、加速スリップ状
態が収束し始めたことに基づいてトラクション制御を終
了させるものである態様13ないし15のいずれか1つ
に記載のトラクション制御装置。 (17)前記トラクション制御終了手段が、加速スリップ状
態が収束したことに基づいてトラクション制御を終了さ
せるものである態様13ないし15のいずれか1つに記
載のトラクション制御装置。
【0025】
【発明の実施の形態】以下、第一発明の実施の形態を図
面に基づいて説明する。本実施形態のトラクション制御
装置は、スロットルバルブ装置の開度の調節によるエン
ジンの駆動トルクの制御と、ブレーキのホイールシリン
ダ液圧の制御による駆動輪の制動とによって加速スリッ
プ状態が適正加速スリップ状態に制御されるように構成
されている。ホイールシリンダ液圧は、アンチロック制
御用のアクチュエータを利用して制御される。まず、ホ
イールシリンダ液圧制御装置の構成を説明する。
【0026】図1において10は、ブレーキペダルであ
る。ブレーキペダル10の踏込み操作に応じて、マスタ
シリンダ12のそれぞれ独立した2つの加圧室に同じ高
さの液圧が発生する。14は、マスタシリンダ12に取
り付けられ、これにブレーキ液を供給するリザーバであ
る。マスタシリンダ12の一方の加圧室に発生した液圧
は、液通路16,18によって左前輪20のブレーキの
ホイールシリンダ22に伝達され、液通路16,24に
よって右前輪26のブレーキのホイールシリンダ28に
伝達される。マスタシリンダ12の他方の加圧室に発生
した液圧は、液通路30,32によって左後輪34のブ
レーキのホイールシリンダ36に伝達され、液通路3
0,38によって右後輪40のブレーキのホイールシリ
ンダ42に伝達される。本実施形態のブレーキ装置は、
前後2系統式ブレーキ装置であり、左右前輪20,26
が操向輪であって非駆動輪であり、左右後輪34,40
が駆動輪である。
【0027】左右の前輪20,26および後輪34,4
0はそれぞれ、4輪独立してアンチロック制御される。
そのため、4輪それぞれについて液圧制御アクチュエー
タが設けられ、これら4つの液圧制御アクチュエータが
アンチロック制御アクチュエータ44(図2参照)を構
成している。これら液圧制御アクチュエータの構成は同
じであり、左前輪系統を例に取って説明する。
【0028】液通路18には、3位置の電磁液圧制御弁
50が設けられている。電磁液圧制御弁50は、リザー
バ通路52によってリザーバ54に接続されており、ソ
レノイドに電流が供給されない状態では図1に示す位置
にあって、ホイールシリンダ22がマスタシリンダ12
に連通させられ、ホイールシリンダ液圧が増圧される。
ソレノイドに中電流が供給されれば、電磁液圧制御弁5
0が中央の位置に切り換えられ、ホイールシリンダ22
はマスタシリンダ12とリザーバ54とのいずれとも連
通を遮断され、ホイールシリンダ液圧が保持される。ま
た、ソレノイドに大電流が供給されれば、電磁液圧制御
弁50は右側の位置に切り換えられ、ホイールシリンダ
22はリザーバ54に連通させられ、ブレーキ液がリザ
ーバ54に流出してホイールシリンダ液圧が減圧され
る。ホイールシリンダ液圧は、増圧モード,保持モー
ド,減圧モードの3種類の制御モードで制御されるので
ある。
【0029】ホイールシリンダ22からリザーバ54に
流出したブレーキ液は、ポンプモータ56により駆動さ
れるアンチロック制御用ポンプ58によって汲み上げら
れ、ポンプ通路60から液通路16に戻される。液通路
18には、電磁液圧制御弁50をバイパスし、逆止弁6
2を備えたバイパス通路64が設けられている。逆止弁
62は、ホイールシリンダ22からマスタシリンダ12
へのブレーキ液の流れは許容するが、逆向きの流れは阻
止するものであり、ホイールシリンダ22が電磁液圧制
御弁50によりマスタシリンダ12との連通を遮断され
た状態においてブレーキペダル10の踏込みが緩められ
た場合に、ホイールシリンダ22内のブレーキ液がバイ
パス通路64を通ってマスタシリンダ12へ戻り、ホイ
ールシリンダ圧がブレーキペダル10の踏込み力に見合
った高さに低下させられる。
【0030】左右の前輪20,26および後輪34,4
0の各回転速度は、回転速度センサ70,72,74,
76により検出され、検出結果がABS&TRCコンピ
ュータ80に供給される。回転速度センサ70〜76は
いずれも、車輪と一体的に回転可能に取り付けられると
ともに外周面に多数の歯を有するロータと、ステアリン
グナックル,アクスルハウジング等の非回転部材に固定
された電磁ピックアップとを含むものである。電磁ピッ
クアップはヨーク,コイルおよび永久磁石等を備えて構
成される。
【0031】ABS&TRCコンピュータ80は、回転
速度センサ70〜76の検出信号に基づいて車輪速度,
車輪加速度,車体速度,車体加速度等を演算する。回転
速度センサ70〜76の検出信号に含まれる電気ノイズ
は、回転速度センサ70〜76からABS&TRCコン
ピュータ80に信号が入力される電子回路に設けられた
フィルタにより、あるいは車輪速度の演算時のフィルタ
処理により除去される。
【0032】ABS&TRCコンピュータ80にはま
た、ブレーキペダル10の踏込みを検出するブレーキス
イッチ82の信号および左右後輪34,40のホイール
シリンダ36,42の液圧を検出するホイールシリンダ
液圧センサ83の検出信号が供給される。ABS&TR
Cコンピュータ80のROMには、上記車輪速度等を演
算するためのプログラムが格納されるとともに、アンチ
ロック制御の実行に必要な種々のプログラムが格納され
ており、それらプログラムに基づいて電磁液圧制御弁5
0およびアンチロック制御用ポンプ58を制御してアン
チロック制御を行う。ABS&TRCコンピュータ80
はまた、図2に示すABSコントロールリレー84を制
御して電磁液圧制御弁50およびポンプモータ56を電
源に接続する。ABSウォーニングランプ86は、アン
チロック制御に異常が発生したとき点灯され、運転者に
異常の発生を知らせるものである。
【0033】駆動輪である左右後輪34,40の回転を
ブレーキにより抑制してトラクション制御を行うため
に、図2に示すように、アンチロック制御アクチュエー
タ44に加えてトラクション制御アクチュエータ90が
設けられている。トラクション制御アクチュエータ90
は、ポンプモータ91により駆動されるトラクション制
御用ポンプ92によりリザーバ14のブレーキ液を汲み
上げてホイールシリンダ36,42に供給し、ホイール
シリンダ36,42からリザーバ54に流出したブレー
キ液をリザーバ14に戻すように構成されている。マス
タシリンダ12と、左右後輪34,40のブレーキのホ
イールシリンダ36,42と、トラクション制御用液圧
源としてのトラクション制御用ポンプ92との間に電磁
方向切換弁94が設けられており、ホイールシリンダ3
6,42をマスタシリンダ12に連通させる状態と、ト
ラクション制御用ポンプ92に連通させる状態とに切り
換えられる。96は逆止弁である。98はレギュレータ
であり、トラクション制御用ポンプ92の吐出圧をトラ
クション制御のために必要な液圧に制御する。リザーバ
54はリザーバ通路100によってリザーバ14に接続
され、リザーバ通路100に設けられた電磁開閉弁10
2の開閉によりリザーバ14に連通させられ、あるいは
連通を遮断される。リザーバ通路100にはまた、リリ
ーフ通路104によってリリーフ弁106が接続されて
おり、トラクション制御アクチュエータ90の異常時に
ブレーキ液がリザーバ54に流出することを許容して過
大な液圧の発生を防止する。
【0034】電磁方向切換弁94は、駆動輪の制動によ
るトラクション制御実行時以外は、図1に示す位置に切
り換えられていて、ホイールシリンダ34,42はトラ
クション制御用ポンプ92との連通を遮断され、マスタ
シリンダ12に連通させられている。また、電磁開閉弁
102は閉じられていて、ホイールシリンダ34,42
とリザーバ14との連通が遮断されている。トラクショ
ン制御時には、トラクション制御用ポンプ92が起動さ
れるとともに、電磁方向切換弁94は、ホイールシリン
ダ36,42をトラクション制御用ポンプ92に連通さ
せる位置に切り換えられ、電磁開閉弁102が開かれ
る。それによりホイールシリンダ36,42に液圧が伝
達され、駆動輪の回転が抑制される。ホイールシリンダ
液圧は、電磁液圧制御弁50が増圧モード,保持モード
あるいは減圧モードに制御されることにより、加速スリ
ップ状態が適正加速スリップ状態に収束する高さに制御
される。リザーバ54に流出したブレーキ液は、リザー
バ通路100および電磁開閉弁102を通ってリザーバ
14に戻る。
【0035】ABS&TRCコンピュータ80は、図2
に示すTRCコントロールリレー108を制御し、電磁
方向切換弁94,電磁開閉弁102およびトラクション
制御用ポンプ92を電源に接続するとともに、これらを
制御してトラクション制御を行う。ABS&TRCコン
ピュータ80には、エンジンコントロールコンピュータ
110を介してメインスロットルポジションセンサ11
2により検出されるメインスロットルバルブ114の開
度θM (以下、メインスロットル開度θM と称する),
サブスロットルバルブセンサ116により検出されるサ
ブスロットルバルブ118の開度θS (以下、サブスロ
ットル開度θS と称する),エンジン回転速度センサ1
20により検出されるエンジン122の回転速度が供給
される。メインスロットルバルブ114は、加速操作部
材としてのアクセルペダル124の踏込みにより開閉さ
せられ、サブスロットルバルブ118は、サブスロット
ルバルブモータ126により開閉させられる。サブスロ
ットルバルブモータ126は、ABS&TRCコンピュ
ータ80によりサブスロットルバルブモータドライバ1
28を介して制御される。サブスロットルバルブモータ
126およびABS&TRCコンピュータ80のサブス
ロットルバルブモータ126を制御する部分が自動開度
制御装置を構成し、メインスロットルバルブ114,サ
ブスロットルバルブ118と共に自動開度制御装置付き
スロットルバルブ装置129を構成している。
【0036】ABS&TRCコンピュータ80には、ア
クセルペダル124の踏込みを検出するアクセルスイッ
チ130の検出信号およびTRC・OFFスイッチ13
2の信号も供給される。TRC・OFFスイッチ132
は、トラクション制御の作動を停止するスイッチであ
り、スイッチを押すとONになり、もう一度押すとOF
Fになる。TRC・OFFスイッチ132がONにされ
れば、トラクション制御装置が作動させられず、OFF
にされればトラクション制御装置が作動させられる。T
RC・OFFランプ134は、TRC・OFFスイッチ
132がONのときに点灯させられ、OFFのときに消
灯させられる。また、スリップインジケータ136は、
点灯により、運転者にトラクション制御装置が作動中で
あることを表示する。
【0037】ABS&TRCコンピュータ80のRAM
には、図3に示すように、スロットルバルブ開閉制御実
行フラグFS ,誤検出フラグFI ,ブレーキ制御実行フ
ラグFB ,サブスロットルバルブ開度小フラグFO ,加
速スリップ状態進行検出フラグFK ,トラクション制御
実行準備フラグFP ,第一,第二のタイマ140,14
2等がワーキングメモリと共に設けられている。また、
ROMには、図4に示すサブスロットルバルブ制御量算
出ルーチン,図5に示すサブスロットルバルブ駆動ルー
チン,図6に示すブレーキ制御ルーチン,図7に示す誤
検出判定ルーチン,図8に示すスリップインジケータ駆
動ルーチン等、トラクション制御を行うために必要な種
々のプログラムが格納されている。これらルーチンは6
ms毎に実行される。なお、サブスロットルバルブ制御量
算出ルーチン,サブスロットルバルブ駆動ルーチン,ス
リップインジケータ駆動ルーチン,誤検出判定ルーチン
は左右後輪34,42について共通に行われ、ブレーキ
制御ルーチンは別々に実行される。そのため、ブレーキ
制御実行フラグFB は左右後輪34,40の各々につい
て設けられている。
【0038】以上のように構成されたトラクション制御
装置によるトラクション制御は以下のようにして行われ
る。まず、サブスロットルバルブ制御量算出ルーチンが
実行され、ステップ1(以下、S1と略記する。他のス
テップについても同じ。)において車体速度VF および
駆動輪速度VR が算出される。車体速度VF は、操向輪
である左右前輪20,26の各回転速度の平均値または
そのうちの大きい方の値に前輪の周囲長を乗じて算出さ
れ、左右の各駆動輪速度VR は、左右後輪34,40の
各回転速度に後輪の周囲長を乗じて算出される。
【0039】次いでS2が実行され、スロットルバルブ
開閉制御を開始するためのスロットルバルブ開閉制御基
準値VS と、ホイールシリンダ液圧を制御するためのブ
レーキ制御開始のためのブレーキ制御基準値VB がそれ
ぞれ、(1) 式,(2) 式により算出される。 VS =VF ・a1 ・・・・・(1) VB =VF ・a2 ・・・・・(2) ここで、a1 ,a2 は共に1以上の定数であり、a1
2 である。スロットルバルブ開閉制御基準値VS は当
該トラクション制御装置において駆動輪の目標回転速度
となるため、その値が路面に対する駆動力が最も大きく
なるように、a1は1.12〜1.20程度の値が選ばれる。な
お、これら制御基準値VS ,VB は、(1) 式,(2) 式に
代えて(3) 式,(4)式により算出してもよい。 VS =VF +b1 ・・・・・(3) VB =VF +b2 ・・・・・(4) ここで、0<b1 <b2 である。(1) 式,(2) 式による
場合はスリップ率が適正範囲になるようにトラクション
制御が行われ、(3) 式,(4) 式による場合はスリップ量
が適正範囲になるようにトラクション制御が行われるこ
ととなる。
【0040】次に、S3においてスロットルバルブ開閉
制御実行フラグFS がセットされているか否かの判定が
行われる。スロットルバルブ開閉制御実行フラグF
S は、サブスロットルバルブ118の開閉制御を行うか
否かを示すフラグであり、図示しないメインルーチンの
初期設定において0にリセットされており、S3が1回
目に行われるとき、その判定結果はYESになる。その
ため、次にS4が実行され、駆動輪速度VR がスロット
ルバルブ開閉制御基準値VS 以上であり、かつメインス
ロットルバルブ114が全閉状態でないか、すなわちア
クセルペダル124が踏み込まれて加速操作が行われて
いるか否かの判定が行われる。メインスロットルバルブ
114が全閉状態でないことは、アクセルスイッチ13
0の信号がOFFであることによりわかる。また、ここ
において駆動輪速度VR は、左右の駆動輪の各周速度の
平均値である。いずれか1つでも満たしていなければル
ーチンの実行は終了する。
【0041】駆動輪速度VR がスロットルバルブ開閉制
御基準値VS 以上であり、アクセルペダル124が踏み
込まれて加速操作が行われていれば、S4の判定結果は
YESになり、S5においてS4の判定結果がYESに
なってから一定時間(ここでは8msec)以上が経過した
か否かが判定される。これは、路面の凹凸等による瞬間
的な駆動輪の回転変動に対して、加速スリップ状態が設
定加速スリップ状態を超えたと判断してサブスロットル
バルブ118の開閉制御が行われることがないようにす
るためである。
【0042】S5の判定は当初はNOであり、ルーチン
の実行は終了する。S4の判定結果がYESの状態が一
定時間継続すればS5の判定結果はYESになり、S6
においてスロットルバルブ開閉制御実行フラグFS がセ
ットされた後、S7が実行され、誤検出フラグFI がリ
セットされているか否かが判定される。誤検出フラグF
I は、後述する誤検出判定ルーチンにおいて、加速スリ
ップ状態が設定加速スリップ状態を超えた事態の検出が
誤りであったと判定されたときにセットされ、誤検出フ
ラグFI がセットされていなければ、スロットルバルブ
開閉制御が行われる。本実施形態において、加速スリッ
プ状態は駆動輪のスリップ率により検出され、設定加速
スリップ状態は、駆動輪速度VR がスロットルバルブ開
閉制御基準値VS を超える状態の継続時間により規定さ
れる。誤検出フラグFI はメインルーチンの初期設定に
おいて0にリセットされており、S7の判定結果は当初
YESになる。
【0043】続いてS8が実行され、エンジン回転速度
センサ120により検出されるエンジン122の回転速
度NEと、スロットル開度θ(スロットルバルブ装置1
29の開度)とに基づき、補正係数Kが図9に示すマッ
プから補間演算により求められる。これは、スロットル
開度θと内燃機関の出力トルクとの関係が、図10に示
すように、低開度において感度良く対応し、中開度から
高開度においてトラクションの上昇には殆ど影響がなく
なることから、必要以上にサブスロットルバルブ118
の制御量が大きくなって、サブスロットルバルブ118
による制御応答性が低下することを防止するためであ
る。なお、この補正係数Kの算出にあたっては、制御開
始時等、メインスロットル開度θM がサブスロットル開
度θS 以下となっている場合には、メインスロットル開
度θM がスロットル開度θとして用いられ、サブスロッ
トルバルブ118の開閉制御実行開始後、サブスロット
ル開度θS がメインスロットル開度θM より小さくなっ
た場合には、サブスロットル開度θS がスロットル開度
θとして用いられる。
【0044】次に、S9においてブレーキ制御実行フラ
グFB がセットされているかにより、ブレーキによる駆
動輪の回転抑制制御が行われているか否かが判定され
る。ブレーキ制御実行フラグFB は初期設定において0
にリセットされており、S9の判定結果は当初YESに
なってS10が実行され、サブスロットルバルブ118
の制御量θS ´が(5) 式により算出される。 θS ´=K{α・ΔV+β・ΔV´}・・・・・(5) ここにおいてαは比例ゲイン,βは微分ゲイン,ΔVは
目標駆動輪速度となるスロットルバルブ開閉制御基準値
S と駆動輪速度VR との差,ΔV´はΔVの微分値で
ある。すなわち、ブレーキ制御が行われていないときに
は、駆動輪速度V R がスロットルバルブ開閉制御基準値
S に速やかに近づくようにサブスロットルバルブ11
8の開閉制御を実行するのである。なお、ここにおいて
駆動輪速度VR は、左右の駆動輪の各周速度の平均値で
ある。
【0045】ブレーキ制御が実行され、ブレーキ制御実
行フラグFB がセットされていればS9の判定結果はN
OになってS11が実行され、サブスロットルバルブ1
18の制御量θS ´が負の所定値−cに設定される。制
御量が負であるとき、サブスロットルバルブ118は閉
じられる。なお、制御量θS ´は、(5) 式によって求め
られる場合にも、値−cに設定される場合にも、サブス
ロットル開度指令値の時間微分値であり、サブスロット
ルバルブモータ124の目標回転速度となる。
【0046】このようにブレーキ制御実行中には、サブ
スロットルバルブ118が一定速度cで閉じられること
となるが、これは、ブレーキ制御実行時にも(5) 式によ
って設定される制御量でスロットルバルブ118を開閉
制御していると、スロットルバルブ118が急速に閉弁
されて、ブレーキ制御による駆動輪の回転低下とスロッ
トルバルブ118の急閉弁による駆動輪の回転低下と
で、駆動輪の回転を一時的に抑制し過ぎ、それに続いて
駆動輪に回転変動が生じて乗り心地が悪化することがあ
るからである。すなわち、ブレーキ制御実行時には、サ
ブスロットルバルブ118の閉弁速度を所定速度cに抑
えることで、サブスロットルバルブ118の開閉制御が
過大になることを防止しているのである。このようにサ
ブスロットルバルブ118の制御量θs´が設定されれ
ば、ルーチンの実行は終了する。
【0047】サブスロットルバルブ制御開始条件が成立
し、スロットルバルブ開閉制御実行フラグFS がセット
されれば、次にS3が実行されるとき、その判定結果は
NOになってS12が実行され、サブスロットル開度θ
S がメインスロットル開度θ M 以下であるときにセット
されるサブスロットルバルブ開度小フラグFO がセット
されているか否かの判定が行われる。トラクション制御
開始当初は、サブスロットル開度θS はメインスロット
ル開度θM より大きく、サブスロットルバルブ開閉制御
実行条件が成立してサブスロットルバルブ118が閉じ
られ始めても、当初はサブスロットル開度θS の方がメ
インスロットル開度θM より大きく、S12の判定結果
はNOになってS7が実行される。
【0048】後述するように、サブスロットルバルブ1
18が開閉制御され、サブスロットル開度θS がメイン
スロットル開度θM 以下になってサブスロットルバルブ
開度小フラグFO がセットされれば、S12の判定結果
はYESになり、S13においてメインスロットル開度
θM がサブスロットル開度θS 以上であるか否かが判定
される。一旦、サブスロットルバルブ118が閉じられ
て開度θS が開度θM以下になった後、サブスロットル
バルブ118が開かれて、開度θS が開度θMより大き
くなったか否かが判定されるのであり、サブスロットル
バルブ118が閉じられた後、依然としてサブスロット
ル開度θS の方が小さければS13の判定結果はYES
になる。
【0049】サブスロットル開度θS の方が大きければ
S13の判定結果はNOになり、S14,S15が実行
され、スロットルバルブ開閉制御実行フラグFS ,サブ
スロットルバルブ開度小フラグFO がリセットされる。
サブスロットル開度θS がメインスロットル開度θM
り大きければ、もはや駆動輪の加速スリップ状態が設定
加速スリップ状態を超える事態が発生することはないと
判断されるのである。
【0050】次に、図5に示すサブスロットルバルブ駆
動ルーチンを説明する。このルーチンにおいては、ま
ず、S101においてスロットルバルブ開閉制御実行フ
ラグF S がセットされているか否かの判定が行われる。
サブスロットルバルブ制御開始条件が成立し、スロット
ルバルブ開閉制御実行フラグFS がセットされればS1
01の判定結果はYESになり、S102が実行され、
メインスロットル開度θ M がサブスロットル開度θS
上であるか否かの判定が行われる。制御開始当初はサブ
スロットル開度θS はメインスロットル開度θM より大
きく、S102の判定結果はNOになってS103が実
行され、サブスロットルバルブ118を急閉すべく、サ
ブスロットルバルブモータ126が駆動される。先に設
定された制御量θS ´とは関係なく、サブスロットルバ
ルブ118が急速度で閉じられるのである。
【0051】サブスロットルバルブ118が閉じられ、
その開度θS がメインスロットルバルブ114の開度θ
M 以下になればS102の判定結果はYESになり、S
104においてサブスロットルバルブ開度小フラグFO
がセットされた後、S105が実行され、先にS10に
おいて設定された制御量θS ´に応じてサブスロットル
バルブ118を開閉すべく、サブスロットルバルブモー
タ126が駆動される。
【0052】スロットルバルブ開閉制御実行フラグFS
がリセットされていれば、S101の判定結果はNOに
なり、S106においてサブスロットルバルブ118が
全開状態にないか否かが判定される。この判断は、サブ
スロットル開度θS が最大値θSMAXより小さくなってい
るか否かによって行われ、開度θS が最大値θSMAXより
小さく、全開状態になければS106の判定結果はYE
Sになり、S107が実行され、サブスロットルバルブ
118を急開すべく、サブスロットルバルブモータ12
6が駆動される。また、サブスロットルバルブ118が
全開状態にあれば、S106の判定結果はNOになり、
S108が実行され、サブスロットルバルブモータ12
6が停止させられる。
【0053】すなわち、本実施形態では、駆動輪速度V
R とスロットルバルブ制御基準値V S とに基づいて、加
速スリップ状態が設定加速スリップ状態を超えたことが
検出されれば、サブスロットルバルブ118の開閉制御
が開始され、その後、駆動輪速度VR とスロットルバル
ブ制御基準値VS との偏差に基づいて制御されるサブス
ロットル開度θS がメインスロットル開度θM を越えた
とき、車両が加速スリップ制御を実行する必要のない運
転状態になったと判断して、サブスロットルバルブ11
8の開閉制御が終了させられるのである。
【0054】次にブレーキ制御を説明する。まず、ブレ
ーキ制御ルーチンのS201が実行され、ブレーキ制御
実行フラグFB がリセットされているか否か、すなわち
現在、ブレーキ制御が実行されているか否かが判定され
る。ブレーキ制御実行フラグFB は初期設定において0
にリセットされており、S201が1回目に実行される
とき、その判定結果はYESになり、S202において
駆動輪速度VR がブレーキ制御基準値VB 以上であるか
否かが判定される。ブレーキ制御を開始するか否かが判
定されるのであり、駆動輪速度VR がブレーキ制御基準
値VB より小さければS202の判定結果はNOにな
る。
【0055】そのためS209が実行され、トラクショ
ン制御実行準備フラグFP がセットされているか否かの
判定が行われる。トラクション制御実行準備フラグFP
は、後述する誤検出判定ルーチンにおいて、加速スリッ
プ状態が設定加速スリップ状態を超え、トラクション制
御が行われることが予想されるときにセットされる。ト
ラクション制御実行準備フラグFP がセットされていれ
ばS209の判定結果はYESになり、S210におい
てトラクション制御用ポンプ92が起動され、ホイール
シリンダ36,42へのブレーキ液の供給に備えて待機
させられる。トラクション制御実行準備フラグFP がセ
ットされていなければS211が実行され、トラクショ
ン制御用ポンプ92が停止させられてルーチンの実行が
終了する。
【0056】駆動輪速度VR がブレーキ制御基準値VB
以上であればS202の判定結果はYESになり、S2
03においてブレーキ制御実行フラグFB がセットされ
た後、S204が実行され、誤検出フラグFI がリセッ
トされているか否かが判定される。誤検出フラグFI
セットされていなければS204の判定結果はYESに
なってS205が実行され、ホイールシリンダ液圧制御
が行われる。ホイールシリンダ液圧制御時には、ホイー
ルシリンダ液圧の制御モードが図11に示すように駆動
輪速度VR および駆動輪加速度VR ´に基づいて設定さ
れる。図11においてG1 は正の基準加速度,G2 は負
の基準加速度であり、SDはホイールシリンダ液圧を緩
やかに減少させる緩減圧を表し、SUはホイールシリン
ダ液圧を緩やかに増大させる緩増圧を表し、FDはホイ
ールシリンダ液圧を急速に減少させる急減圧を表し、F
Uはホイールシリンダ液圧を急速に増大させる急増圧を
表す。S205では、駆動輪速度VR に基づいて駆動輪
加速度VR ´が算出されるとともに、駆動輪速度VR
B 以上かつ駆動加速度VR ´がG2 以上であれば液圧
が上昇させられ、それ以外では液圧が下降させられる。
【0057】次いでS207においてブレーキ制御によ
るホイールシリンダ液圧が0になったか否かの判定が行
われる。この判定は、ホイールシリンダ液圧の上昇制御
時間TPの積分値ΣTPがホイールシリンダ液圧の下降
制御時間TDPの積分値ΣTDPに補正係数Kpを乗じ
た値を下回ったか否かによって行われる。ホイールシリ
ンダ液圧が0でなければS207の判定結果はNOにな
ってルーチンの実行は終了し、0であればS207の判
定結果はYESになり、S208においてブレーキ制御
実行フラグFB ,トラクション制御実行準備フラグFP
がリセットされてブレーキ制御が終了する。このように
駆動輪のブレーキ制御は、駆動輪速度VR が制御基準値
B 以上となったときに開始され、その後、ホイールシ
リンダ液圧が0になるまでの間、駆動輪速度VR および
駆動輪加速度VR ´に応じて制御モードが設定され、過
大な加速スリップが抑制される。
【0058】次に図7に示す誤検出判定ルーチンに基づ
いて、加速スリップ状態が設定加速スリップ状態を超え
る事態の検出が誤りであるか否かの判定を説明する。ま
ず、S301が実行され、加速スリップ状態が設定加速
スリップ状態を超える可能性が高く、トラクション制御
が開始されることが予想されることを表す加速スリップ
状態進行検出フラグFK がセットされているか否かが判
定される。加速スリップ状態進行検出フラグFK は初期
設定において0にリセットされており、S301の判定
が初めて行われるとき、その判定結果はYESになって
S302が実行され、駆動輪速度VR がスロットルバル
ブ制御基準値VS 以上となっているか否かが判定され
る。VR ≧VS であればS302の判定結果はYESに
なり、S304が実行されてトラクション制御実行準備
フラグFP がセットされ、それによりブレーキ制御ルー
チンのS210が実行され、トラクション制御用ポンプ
92が起動される。なお、ここにおいて駆動輪速度VR
は、左右の駆動輪の各周速度の平均値である。
【0059】駆動輪速度VR がスロットルバルブ制御基
準値VS より小さければS302の判定結果はNOにな
ってS303が実行され、駆動輪加速度VR ´の変化率
ΔV R ´が設定値ΔG以上であるか否かの判定が行われ
る。変化率ΔVR ´は、駆動輪加速度VR ´の変化傾向
を表し、この値が大きいほど駆動輪加速度VR ´が急激
に増大し、引いては駆動輪速度VR が急増する可能性が
高い。変化率ΔVR ´が設定値ΔG以上であれば、S3
04においてトラクション制御実行準備フラグFP がセ
ットされる。
【0060】駆動輪速度VR がスロットルバルブ制御基
準値VS より小さく、駆動加速度V R ´の変化率ΔVR
´が設定値ΔGより小さければS307が実行され、ト
ラクション制御実行準備フラグFP がリセットされてル
ーチンの実行が終了する。一方、S304が実行された
場合には、続いてS305が実行され、駆動輪速度VR
がスロットルバルブ制御基準値VS 以上、あるいは駆動
輪加速度VR ´の変化率ΔVR ´が設定値ΔG以上にな
ってから設定時間(図示の例では8msec)経過したか否
かが判定される。設定時間が経過する前からトラクショ
ン制御用ポンプ92が起動され、ホイールシリンダ液圧
の制御に備えて待機させられるのである。S305の判
定結果は当初はNOであり、ルーチンの実行は終了す
る。
【0061】設定時間が経過すればS305の判定結果
はYESになり、S306において加速スリップ状態進
行検出フラグFK がセットされる。次いでS308が実
行され、誤検出フラグFI がセットされているか否かが
判定される。誤検出フラグF I は初期設定において0に
リセットされており、S308が1回目に行われるとき
その判定結果はNOになり、S309,S310,S3
11において、加速スリップ状態が設定加速スリップ状
態を超える事態が誤って検出されたか否かが判定され
る。この判定は、サブスロットル開度θS がメインスロ
ットル開度θM より大きく、かつ、ホイールシリンダ液
圧センサ83により検出されるホイールシリンダ液圧P
wが0である状態において、駆動輪速度VR がスロット
ルバルブ制御基準値VS 以下であるか否か、すなわち加
速スリップ状態がトラクション制御の必要のない適正加
速スリップ状態に収束しているか否かにより行われる。
【0062】加速スリップ状態は、駆動輪のスリップが
実際に大きく、トラクション制御が必要な場合に設定加
速スリップ状態を超える他、車両のレーシング状態にお
ける駆動系の共振,回転速度センサ74,76の電気ノ
イズ,車軸から駆動輪までの遊隙等によって駆動輪速度
が見かけ上あるいは一時的に上昇した場合のように、ト
ラクション制御が不要であるのに設定加速スリップ状態
を超えることがある。
【0063】加速スリップ状態が設定加速スリップ状態
を超えたのがトラクション制御が必要な場合であって
も、トラクション制御開始当初は、サブスロットルバル
ブ118が閉じるのに時間がかかり、サブスロットル開
度θS がメインスロットル開度θM より大きく、また、
ホイールシリンダ液圧が上昇し始めるまでに遅れがあっ
てホイールシリンダ液圧が0であって、S309,S3
10の各判定結果がいずれもYESになることがある
が、駆動輪速度VR が大きいためS311の判定結果が
NOになり、ルーチンの実行は終了する。なお、S31
1において駆動輪速度VR は、左右の駆動輪の各周速度
の平均値である。
【0064】サブスロットル開度θS がメインスロット
ル開度θM 以下になり、あるいはホイールシリンダ液圧
が上昇し始めれば、S309,S310の判定結果の少
なくとも一つがNOになり、ルーチンの実行が終了する
か、あるいはS313が実行される。S313において
はスロットルバルブ開閉制御実行フラグFS がリセット
されているか否か、すなわちスロットルバルブ制御を終
了してもよいか否かの判定が行われる。この判定結果は
当初はNOであり、ルーチンの実行は終了する。
【0065】サブスロットルバルブ118の作動やホイ
ールシリンダ36,42へのブレーキ液の供給により加
速スリップ状態が適正加速スリップ状態に収束し、サブ
スロットル開度θS がメインスロットル開度θM より大
きくなってスロットルバルブ制御が終了し、スロットル
バルブ開閉制御実行フラグFS がリセットされればS3
13の判定結果がYESになり、S314においてトラ
クション制御実行準備フラグFP ,加速スリップ状態進
行検出フラグFK がリセットされてルーチンの実行が終
了する。
【0066】それに対し、駆動輪速度VR が見かけ上あ
るいは一時的に増大し、加速スリップ状態が設定加速ス
リップ状態を超えた場合には、トラクション制御を行わ
なくても、加速スリップ状態は自然に適正加速スリップ
状態に収束する。そのため、S309,S310がいず
れもYESの状態でS311の判定結果がYESにな
り、加速スリップ状態が設定加速スリップ状態を超えた
との検出は誤りであったことがわかる。そのため、S3
12において誤検出フラグFI がセットされてルーチン
の実行が終了する。
【0067】誤検出フラグFI がセットされることによ
り、図4に示す前記スロットルバルブ制御量算出ルーチ
ンのS7の判定結果がNOになってS14,S15が実
行され、スロットルバルブ開閉制御実行フラグFS ,サ
ブスロットルバルブ開度小フラグFO がリセットされ
る。それにより図5に示すサブスロットルバルブ駆動ル
ーチンのS101の判定結果がNOになり、S107あ
るいはS108が実行されてサブスロットルバルブ11
8が最大開度θSMAXまで開かれる。スロットルバルブ制
御が途中で終了させられるのである。また、図6に示す
ブレーキ制御ルーチンのS204の判定結果がNOにな
ってS206が実行され、ホイールシリンダ液圧が0ま
で急減させられる。ブレーキ制御が途中で終了させられ
るのである。ホイールシリンダ液圧が0になれば、ブレ
ーキ制御実行フラグFB ,トラクション制御実行準備フ
ラグFP がリセットされる。
【0068】誤検出フラグFI がセットされれば、次に
誤検出判定ルーチンのS308が実行されるとき、その
判定結果はYESになり、S315,S316において
スロットルバルブ開閉制御実行フラグFS ,ブレーキ制
御実行フラグFB がリセットされているか否かが判定さ
れる。いずれか一方でもセットされていればルーチンの
実行は終了する。両フラグFS ,FB がリセットされて
いて、スロットルバルブ開閉制御もホイールシリンダ液
圧制御も終了させられていれば、S317が実行され、
誤検出フラグFI ,加速スリップ状態進行検出フラグF
K がリセットされてルーチンの実行が終了する。両フラ
グFS ,FB のリセット時に誤検出フラグFI をリセッ
トするのは、一方のみがリセットされ、他方がリセット
されていない状態で誤検出フラグFI がリセットされれ
ば、他方において誤検出フラグF I のセットに基づく制
御の終了処理が行われなくなってしまうからである。
【0069】誤検出フラグFI はまた、図8に示すスリ
ップインジケータ制御ルーチンにおいてスリップインジ
ケータ136を点灯させるか否かの判断に用いられる。
スリップインジケータ制御を簡単に説明すれば、スロッ
トルバルブ開閉制御実行フラグFS がセット,誤検出フ
ラグFI がリセットされており、この状態が第一設定時
間TS1継続すればスリップインジケータ136が点灯さ
せられる(S401〜S405)。第一設定時間T
S1は、例えば0.5秒に設定されており、第一タイマ1
40により計測される。点灯後、第二タイマ142によ
り、点灯時間の計測が開始される(S406)。
【0070】スリップインジケータ136の点灯後、ス
ロットルバルブ制御が終了し、スロットルバルブ開閉制
御実行フラグFS がリセットされたとき、スリップイン
ジケータ136が第二設定時間TS2だけ点灯させられて
いれば、第一,第二タイマ140,142がリセットさ
れるとともに、スリップインジケータ136が消灯させ
られる(S407〜S411)。第二設定時間TS2は、
例えば3秒に設定され、スリップインジケータ136が
点灯させられた後、第二設定時間TS2が経過する前にス
ロットルバルブ開閉制御実行フラグFS がリセットされ
れば、第二設定時間TS2が経過するのを待って第二タイ
マ142がリセットされる(S408,S405,S4
06,S410)。
【0071】スリップインジケータ136は、トラクシ
ョン制御の開始後、所定時間(例えば0.5秒)経過す
ると点灯させられるため、車両が乾燥路を走行している
場合、あるいは車両運転者による加速指令が緩やかな場
合等、トラクション制御によって加速スリップ状態が速
やかに抑制される場合には、スリップインジケータ13
6の点滅が抑えられ、スリップインジケータ136が頻
繁に点灯されるのを防止できる。すなわち、車両運転者
がアクセルペダルを踏込み過ぎているときや、設定加速
スリップ状態を超える状態が発生し易い路面を走行して
いるとき等、車両運転者にアクセル操作の注意を促す必
要のあるときにのみ、スリップインジケータ136を点
灯させることができ、スリップインジケータ136が点
滅し過ぎて車両の運転の邪魔になることがないようにさ
れているのである。
【0072】誤検出フラグFI がセットされていれば、
第一,第二タイマ140,142がリセットされるとと
もに、スリップインジケータ136が消灯させられる
(S402,S409〜S411)。第一設定時間TS1
が経過する前に誤検出フラグF I がセットされ、S40
5が実行されて誤検出時にスリップインジケータ136
が点灯させられることはない。トラクション制御は開始
されるが、スリップインジケータ136が点灯させられ
る前に終了するのであり、トラクション制御が誤って開
始されたことに運転者は気付かずに済む。
【0073】なお、誤検出判定ルーチンのS309〜S
311によれば、駆動輪速度VR が実際にスロットルバ
ルブ開閉制御基準値VS を超えて増大し、加速スリップ
状態が設定スリップ状態を超える事態の検出が誤検出で
はなく、トラクション制御の実行により加速スリップ状
態が収束させられた場合にもトラクション制御を終了さ
せることができる。スロットルバルブ開閉制御,ブレー
キ制御が行われて加速スリップ状態が適正加速スリップ
状態に収束し、サブスロットル開度θS がメインスロッ
トル開度θM より大きくなり、かつ、ホイールシリンダ
液圧が0になり、駆動輪速度VR がスロットルバルブ開
閉制御基準値VS 以下になれば、S312が実行され、
誤検出フラグFI がセットされる。それにより、スロッ
トルバルブ制御量算出ルーチンあるいはブレーキ制御ル
ーチンにおいて、スロットルバルブ開閉制御実行フラグ
S あるいはブレーキ制御実行フラグFB がリセットさ
れ、スロットルバルブ開閉制御あるいはブレーキ制御が
終了させられるのである。
【0074】トラクション制御時のメインスロットル開
度θM ,サブスロットル開度θS ,ホイールシリンダ液
圧Pw,スリップインジケータ136の表示状態および
駆動輪速度VR ,車体速度VF を含む速度Vの関係を図
12に示す。図12に示すように、車両運転者のアクセ
ル操作により、時点t0 から時点t1 の間でメインスロ
ットルバルブ114が急開され、駆動輪速度VR が車体
速度VF に基づいて設定されるスロットルバルブ制御基
準値VS 以上になると(時点t3 )、サブスロットルバ
ルブ118の開閉制御が開始され、さらに駆動輪速度V
R がブレーキ制御基準値VB 以上になると(時点t
4 )、ブレーキ制御が開始される。サブスロットルバル
ブ118の開閉制御の開始後、0.5秒経過すれば(時
点t5 )、スリップインジケータ136が点灯させられ
る。ブレーキ制御により駆動輪速度V R が速やかに低下
し、その駆動輪速度VR がブレーキ制御基準値VB 以下
になり、ホイールシリンダ液圧Pwが低下して0になれ
ば(時点t6 )、ブレーキ制御が終了される。そして、
その後、サブスロットル開度θS がメインスロットル開
度θM より大きくなって、加速スリップ状態が設定加速
スリップ状態を超えなくなるまでの間、サブスロットル
バルブ118の開閉制御によるトラクション制御が継続
される。
【0075】図13に示すように、誤って過大な駆動輪
速度VR が検出された場合、加速スリップ状態が設定加
速スリップ状態を超えた事態が誤りであることが検出さ
れなければ、破線で示すようにサブスロットルバルブ1
18はメインスロットル開度θM より小さい制御目標開
度まで閉じられ、その後、開かれるが、加速性が低下す
る。しかし、誤検出であると判定されれば、実線で示す
ようにサブスロットルバルブ118は途中で開かれ、加
速性の低下が防止される。
【0076】以上の説明から明らかなように、本実施形
態においては、ABS&TRCコンピュータ80のS
4,S5,S202を実行する部分が加速スリップ状態
検出手段を構成し、S8〜S11,S102〜S10
5,S205を実行する部分が加速スリップ状態制御手
段を構成し、S309〜S312を実行する部分がトラ
クション制御終了手段を構成している。
【0077】トラクション制御が不必要であることに基
づいてトラクション制御を終了させることは、誤検出の
場合も、トラクション制御によって加速スリップ状態が
収束した場合も同じであり、誤検出判定ルーチンは、図
14に示すように、トラクション制御終了ルーチンとし
てもよい。S501〜S503は、前記誤検出判定ルー
チンのS301,S302,S306と同様に実行され
る。一旦、駆動輪速度VR がスロットルバルブ制御基準
値VS 以上になれば、S504〜S506においてトラ
クション制御を終了してもよいか否かが判定される。
【0078】加速スリップ状態が設定加速スリップ状態
を超える事態の検出が誤りであれば、サブスロットル開
度θS がメインスロットル開度θM を超え、ホイールシ
リンダ液圧が上昇し始める以前に駆動輪速度VR がスロ
ットルバルブ制御基準値VS以下になり、S507が実
行されてトラクション制御の終了処理が行われる。加速
スリップ状態進行検出フラグFK のリセット,別のルー
チンにおいて実行されているサブスロットルバルブ11
8の開閉制御の終了,ブレーキ制御の終了等の処理が行
われるのである。加速スリップ状態が実際に設定加速ス
リップ状態を超え、トラクション制御の実行により加速
スリップ状態が収束させられる場合は、トラクション制
御の開始後、収束までの間にS504,S505の判定
結果の少なくとも一方が一旦NOになる。そして、加速
スリップ状態が収束すれば、S504〜S506の判定
結果がいずれもYESになり、トラクション制御が終了
させられる。本実施形態においては、コンピュータのS
504〜S507を実行する部分がトラクション制御終
了手段を構成している。
【0079】第一発明の更に別の実施形態を図15に示
す。本実施形態は、サブスロットルバルブの開度が制御
目標開度より大きい開度に設定される中間開度まで閉じ
られる以前に加速スリップ状態が適正加速スリップ状態
に収束した場合に、誤検出があったとしてトラクション
制御を終了するようにしたものである。なお、非加速操
作時にはメインスロットルバルブ114は閉じられてい
て開度は0%であり、サブスロットルバルブ118は開
かれていて開度は100%であるとする。なお、本トラ
クション制御装置においてサブスロットルバルブの開閉
制御は、サブスロットルバルブを閉じる位置、すなわち
制御目標開度θT を決定し、サブスロットルバルブをそ
の制御目標開度θT が得られる位置まで閉じることによ
り行われる。制御目標開度θT は、メインスロットル開
度θM およびスリップの増加量に基づいて設定される。
駆動輪速度がスロットルバルブ開閉制御基準値以上にな
ったときの駆動輪速度と、前回、駆動輪速度がスロット
ルバルブ開閉制御基準値以上か否かの判定が行われたと
きの駆動輪速度との差が設定値以上であれば、メインス
ロットル開度θM の2/5が制御目標開度θT とされ、
設定値より小さければメインスロットル開度θM の4/
5が制御目標開度θT とされるのである。
【0080】図15に示す誤検出判定ルーチンは、前記
図7に示す誤検出判定ルーチンのS309〜S311を
S609,S610に変えたものであり、その他のステ
ップは同じであり、説明を省略する。S609において
は、サブスロットル開度θS が制御目標開度θT の1/
2である中間開度θH より大きいか否かの判定が行われ
る。なお、S609の実行時にまだ制御目標開度θT
設定されていなければ、メインスロットル開度θM が仮
に中間開度θH とされる。
【0081】サブスロットル開度θS が中間開度θH
り大きければ、次にS610において左右の各駆動輪の
速度VR がいずれもスロットルバルブ制御基準値VS
下であるか否か、すなわち加速スリップ状態が適正加速
スリップ状態に収束しているか否かにより、加速スリッ
プ状態が収束したか否かが判定される。収束していれば
S610の判定結果がYESになり、S612において
誤検出フラグFI がセットされ、スロットルバルブ開閉
制御,ホイールシリンダ液圧制御が終了させられるよう
にされる。本実施形態においては、ABS&TRCコン
ピュータのS609〜S612を実行する部分がトラク
ション制御終了手段を構成している。なお、制御目標開
度は、2段階に限らず、更に多段階に設定してもよい。
【0082】第二発明の実施形態を図16に示す。本実
施形態においては、ブレーキ制御開始後、ブレーキの作
用により駆動輪の回転が抑制される以前に駆動輪速度が
減少し始めたか否かにより、加速スリップ状態が設定加
速スリップ状態を超えた事態の検出が誤りであったか否
かが判定される。ホイールシリンダへのブレーキ液の供
給指令の出力から、実際にホイールシリンダ液圧が上昇
し始めるまでには遅れがあり、その間に加速スリップ状
態が収束し始めれば、設定加速スリップ状態を超える事
態の検出は誤検出であったとし、トラクション制御が終
了させられるのである。上記時間は、例えば、20msec
に設定される。本実施形態は、誤検出判定ルーチンを除
いて前記実施形態と同じであり、誤検出判定ルーチンの
みを説明する。
【0083】まず、S701において誤検出フラグFI
がセットされているか否かが判定される。この判定結果
は当初NOであり、S702においてブレーキ制御実行
フラグFB がセットされているか否かの判定が行われ
る。トラクション制御のブレーキ制御が開始されていな
ければS702の判定結果はNOになり、ルーチンの実
行は終了する。駆動輪速度VR がブレーキ制御基準値V
B 以上になってブレーキ制御が開始されればS702の
判定結果がYESになり、S703においてタイマの値
Tが1増加させられる。次いでS604においてタイマ
値Tが設定値TSO以上であるか否かが判定される。設定
値TSOは20msecに相当する値であり、S704の判定
結果は当初はNOになり、次にS705において今回の
駆動輪速度VR(n)が前回の駆動輪速度VR(n-1)より小さ
いか否かが判定される。
【0084】駆動輪速度VR は、サブスロットルバルブ
制御量算出ルーチンのS1において算出される毎にRA
Mに格納される。RAMには、今回の駆動輪速度を格納
する今回駆動輪速度メモリおよび前回の駆動輪速度を格
納する前回駆動輪速度メモリが設けられており、駆動輪
速度が算出される毎に、今回駆動輪速度メモリの内容が
前回駆動輪速度メモリに移されるとともに、算出された
駆動輪速度が今回駆動輪速度メモリに格納される。S7
05の判定は、駆動輪である左右後輪34,40の各々
について行われ、いずれか1つでも今回の駆動輪速度V
R(n)が前回の駆動輪速度VR(n-1)以上であればS705
の判定結果はNOになる。S705の判定結果がYES
になる前に設定時間TSOが経過すれば、誤検出フラグF
I がセットされることなくS704の判定結果がYES
になり、トラクション制御がそのまま行われる。
【0085】左右後輪34,40の両方について、今回
の駆動輪速度VR(n)が前回の駆動輪速度VR(n-1)より小
さければS705の判定結果がYESになる。ブレーキ
制御により駆動輪の回転が抑制される以前に加速スリッ
プ状態が収束し始めたと判断されるのであり、S706
において誤検出フラグFI がセットされ、スロットルバ
ルブ開閉制御,ブレーキ制御が終了させられる。それに
より、ブレーキ制御実行フラグFB ,スロットルバルブ
開閉制御実行フラグFS がいずれもリセットされれば、
S707,S708の判定結果がいずれもYESにな
り、S709が実行されて誤検出フラグFI ,タイマが
リセットされる。以上の説明から明らかなように、本実
施形態においては、ABS&TRCコンピュータのS7
03〜S706を実行する部分が実質的制御作用依拠型
トラクション制御終了手段の一種であるブレーキ力着目
型トラクション制御終了手段を構成している。
【0086】なお、図16に示す実施形態において、実
質的なブレーキ力が発生したか否かを時間により判定す
ることに代えて、ホイールシリンダ液圧を測定する手段
を設け、ブレーキ制御開始後、ホイールシリンダ液圧が
0から上昇し始めたか否かにより判定してもよい。
【0087】また、上記各実施形態において誤検出の判
定は、加速スリップ状態が設定加速スリップ状態を超え
た後に行われるようになっていたが、トラクション制御
の実行が許可された後、あるいはトラクション制御が開
始された後等、種々の時に行うことができる。トラクシ
ョン制御装置には、トラクション制御の実行を許可する
制御許可条件を設定し、制御許可条件が満たされている
場合にトラクション制御が開始されるように構成される
装置がある。トラクション制御許可条件は、例えば、
異常診断装置により異常が検出されていないこと、加
速操作部材が操作されていることと車体速度が極めて低
いこととのいずれか一方が満たされていること、パー
キング・ニュートラルスイッチがOFFであることと車
体速度が設定値以上であることとのいずれか一方が満た
されていることの全部が成立していることとされる。
【0088】さらに、本発明は、エンジンの駆動トルク
の制御が、スロットルバルブ装置の開度の制御の他、例
えば、燃料カット,点火時期の制御,吸入空気量の制
御,過給圧の制御,変速装置の変速段の切換え等により
行われるトラクション制御装置や、ブレーキ制御が容積
式アンチロック制御装置を利用して行われるトラクショ
ン制御装置にも適用することができる。さらにまた、ス
タンバイ制御が行われるトラクション制御装置にも本発
明を適用することができる。スタンバイ制御とは、車両
がトラクション制御が行われることが予想される状態に
あれば、実際にトラクション制御の開始条件が満たされ
る前に制御を開始するものである。スタンバイ制御機能
を備えたトラクション制御装置においては、スタンバイ
制御開始後と、トラクション制御の開始条件が満たされ
てトラクション制御が開始された後との両方において、
加速スリップ状態が設定加速スリップ状態を超える事態
の検出が誤検出であったか否かの判定を行うようにして
もよく、トラクション制御開始後のみに行うようにして
もよい。さらに、本発明は、上記各実施形態の構成要素
の組合わせを変えた態様で実施することができる。その
他、特許請求の範囲を逸脱することなく、当業者の知識
に基づいて種々の変形,改良を施した態様で本発明を実
施することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】第一発明の一実施形態であるトラクション制御
装置を構成する液圧ブレーキ装置を示す系統図である。
【図2】上記トラクション制御装置を概略的に示す図で
ある。
【図3】上記トラクション制御装置のABS&TRCコ
ンピュータのRAMのうち、本発明に関連の深い部分を
取り出して示す図である。
【図4】上記コンピュータのROMに格納されたスロッ
トルバルブ制御量算出ルーチンを表すフローチャートで
ある。
【図5】上記ROMに格納されたサブスロットルバルブ
駆動ルーチンを表すフローチャートである。
【図6】上記ROMに記憶されたブレーキ制御ルーチン
を表すフローチャートである。
【図7】上記ROMに記憶された誤検出判定ルーチンを
表すフローチャートである。
【図8】上記ROMに記憶されたスリップインジケータ
制御ルーチンを表すフローチャートである。
【図9】上記ROMに格納され、サブスロットルバルブ
の制御量の算出に用いる補正係数を設定するためのマッ
プを表す図表である。
【図10】上記トラクション制御装置におけるスロット
ル開度とエンジンの出力トルクとの関係を表すグラフで
ある。
【図11】上記トラクション制御装置のブレーキ制御時
のホイールシリンダ液圧の制御モードを設定するマップ
を表す図表である。
【図12】トラクション制御の動作を示すタイムチャー
トである。
【図13】加速スリップ状態が設定加速スリップ状態を
超える事態の検出が誤りであった場合のトラクション制
御の動作を従来と比較して示すタイムチャートである。
【図14】第一発明の別の実施形態であるトラクション
制御装置のコンピュータのROMに記憶された誤検出判
定ルーチンを表すフローチャートである。
【図15】第一発明の更に別の実施形態であるトラクシ
ョン制御装置のコンピュータのROMに記憶された誤検
出判定ルーチンを表すフローチャートである。
【図16】第二発明の実施形態であるトラクション制御
装置のコンピュータのROMに記憶された誤検出判定ル
ーチンを表すフローチャートである。
【符号の説明】
34 左後輪 40 右後輪 44 アンチロック制御アクチュエータ 80 ABS&TRCコンピュータ 90 トラクション制御アクチュエータ 129 自動開度制御装置付きスロットルバルブ装置

Claims (2)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 駆動輪の加速スリップ状態を検出する加
    速スリップ状態検出手段と、 その加速スリップ状態検出手段により検出された加速ス
    リップ状態が設定加速スリップ状態を超えた場合、少な
    くとも、スロットルバルブ装置の開度の調節によるエン
    ジンの駆動トルクの制御によって加速スリップ状態を適
    正加速スリップ状態に制御する加速スリップ状態制御手
    段とを含むトラクション制御装置において、 トラクション制御開始後、遅くとも前記加速スリップ状
    態制御手段により前記スロットルバルブ装置が制御目標
    開度まで閉じられるまでに加速スリップ状態が少なくと
    も収束し始めたことに基づいてそのトラクション制御を
    終了させるトラクション制御終了手段を設けたことを特
    徴とするトラクション制御装置。
  2. 【請求項2】 駆動輪の加速スリップ状態を検出する加
    速スリップ状態検出手段と、 その加速スリップ状態検出手段により検出された加速ス
    リップ状態が設定加速スリップ状態を超えた場合、その
    加速スリップ状態を適正加速スリップ状態に制御する加
    速スリップ状態制御手段とを含むトラクション制御装置
    において、 トラクション制御開始後、前記加速スリップ状態制御手
    段の実質的な制御作用が生ずる前に加速スリップ状態が
    少なくとも収束し始めたことに基づいてそのトラクショ
    ン制御を終了させる実質的制御作用依拠型トラクション
    制御終了手段を設けたことを特徴とするトラクション制
    御装置。
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Cited By (3)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2005307875A (ja) * 2004-04-22 2005-11-04 Hino Motors Ltd 急加減速評価装置および方法
CN100339260C (zh) * 2004-06-09 2007-09-26 丰田自动车株式会社 制动器控制装置
JP2014231274A (ja) * 2013-05-29 2014-12-11 トヨタ自動車株式会社 ブレーキ液圧制御システム

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