【発明の詳細な説明】
好中球の接着および移動の遮断に有用なMac-1 I-ドメイン蛋白質
発明の背景
細胞接着分子は、免疫および炎症、細胞固定および移動、ならびに細胞増殖お
よび分化を包含する数多くの細胞プロセスに必須である。多数の種々の細胞接着
蛋白質の中で、白血球インテグリンは、白血球の炎症組織への接着および内皮細
胞間-移動の媒介に関与している。これらのインテグリンは、白血球表面の膜-固
定蛋白質であり、種々のリガンドに対する受容体として機能している。これらの
受容体は、アルファおよびベータサブユニットよりなるヘテロダイマー蛋白質で
あり、3種の公知白血球インテグリンが共通のベータ-2サブユニットを共有し
ているところから、それらはベータ-2インテグリンとも呼称されている。これ
ら3種のインテグリンにおいては、LFA-1(CD11a/CD18)、Mac-
1(CD11b/CD18)、およびp150,95(CD11c/CD18)、βサ
ブユニットCD18が、非共有結合様式にてαサブユニットCD11と相互作用
する。
これらのインテグリンのαおよびβサブユニットは両方とも大きな糖蛋白質で
あり;CD18サブユニットは分子量で約95kdである。Mac-Iの170
Kd αサブユニットCD11bは、I-ドメイン(またはA-ドメイン)を含んで
おり、これはCD11a、CD11cおよび数種の他のインテグリンにも保存さ
れている(Larsonら、J.Cell.Biol.、108:703-12(1989))。約200アミノ酸
残基のこのI-ドメインは挿入配列のようであり;それは他の数種のインテグリ
ンには見い出されない。I-ドメインは、フォンビルブランド因子、軟骨マトリッ
クス蛋白質、および補体蛋白質C2およびB因子のごとき蛋白質のリガンド結合
に関与するドメインに配列類似を示す。
したがって、β2インテグリン中のI-ドメインがそれらのリガンドに対する
これらのインテグリンの相互作用に役割を演じ得ると考えられることは興味をそ
そる。I-ドメインがリガンド結合における認識領域として機能し得ることを示
唆する結果が、Diamondら、J.Cell Biol.、120:1031-43(1993)によって報告
され;彼らは、CD11b I-ドメインに対するモノクローナル抗体が、iC3
、フィブリノーゲン、ICAM-1および好中球リガンドに対するMac-1の結
合を遮断し得ることを示した。Mac-1リガンド結合には、カチオンの存在を
要することが知られている。Michishitaら、Cell、72:857-67(1993)は、CD1
1bのイー・コリ(E.coli)-由来組換えI-ドメインに対するMn2+の結合を示
しており、再度、リガンド結合におけるI-ドメインの関与を示唆している。
CD11b I-ドメインの機能および構造を研究するためにCD11b I-ド
メインを得るためには、組換え蛋白質のイー・コリ(E.coli)発現を要した。残
念なことには、それ自体によるI-ドメインの発現レベルは低く、該蛋白質は精
製するのが困難であった。融合産物からI-ドメインを回収し得るように融合結
合部にトロンビン切断サイトを有するGST(グルタチオン S-トランスフェラ
ーゼ)の融合物としてのI-ドメインを、高レベルで発現する菌株を作製する試行
が行われた。しかしながら、この融合蛋白質は、トロンビン蛋白質加水分解に対
して感受性ではなかった。
本発明は、GSTとの融合物としてイー・コリ(E.coli)中で産生される組換
え蛋白質が、以下のいくつかの利点:1)GST自体が高レベルで発現し、よっ
て融合蛋白質の高レベルの産生が促進されるにちがいないこと;2)GSTはそ
れ自体が高可溶性であるため、融合蛋白質のホールディングを促進/安定化する
ように作用して、可溶性で活性な産物に通じ得ること;および3)GSTは精製
機会、すなわち、グルタチオン セファロース4Bカラムを用いた固定化グルタ
チオン上のアフィニティークロマトグラフィーによって融合蛋白質の一工程精製
として使用できること;を有することを示す。
本発明の構築物により、切断サイトの接近し易さをマスクするGSTおよびI
-ドメインの物理的極隣接性によって引き起こされる問題が克服される。本発明
の構築物は、グリシンのごとき残基をGSTおよびI-ドメイン融合点に導入し
て、2つの構造物を分離する。加えて、本発明は、Xa因子(factor Xa)切断
サイトを有するGSTおよびI-ドメイン融合物を教示し、かかる融合産物にお
けるトロンビンおよびXa因子蛋白質加水分解の効率を比較する。種々の融合結
合部-結合GSTおよびI-ドメインを以下に示す。下線を引いた残基はトロンビ
ンまたはXa因子の認識配列であり、矢印(-↑-)は切断点を示す。太字で強調し
た残基は、蛋白質加水分解後のI-ドメインのN-末端の伸長である。プロテアー
ゼによる認識を要するため、所望の2グリシンにくわえて臨時残基が融合構築物
からのI-ドメインの伸長に必要である。
トロンビン
トロンビン
Xa因子
主題の組換え産物において、CD11b I-ドメイン配列がポジション#133
のセリンで規定され、#337のグルタミン酸で終結することを特記しておく。
Michishitaら(前掲)の報告において、彼らのイー・コリ(E.coli)-由来組換え
CD11b I-ドメイン(Aドメインと呼ぶ)は#111のグリシンで出発し、#
318のアラニンで終結する(図1参照)。正確なI-ドメイン配列を設計するこ
となしに、Michishitaらは、I-ドメイン周辺の領域をコードする配列をクローン
化するために利用できる制限酵素サイトの利点を得、よってCD11bのN-末
端に向けてI-ドメインがシフトする。
独特なことには、主題の構築物におけるGSTおよびI-ドメインの間の2個
のグリシン残基の付加により、融合蛋白質のトロンビン修飾が可能となる。Xa
因子切断サイトを有する構築物も、Xa因子によって効率的に修飾され得、トロ
ンビン切断を有する融合物からのものよりも、良好な収率のI-ドメインが得ら
れる。主題の発明は、CD11b I-ドメインの下流単離用のXa切断サイトを
有する融合蛋白質を産生するイー・コリ(E.coli)株から調製した細胞抽出物を
提供する。
情報公開の陳述
欧州特許出願0365837号(Springerら)は、細胞間接着分子(ICAM-1)の一
般的背景および炎症の治療に有用となり得るその機能性誘導体を開示している。
欧州特許出願0391088号(Springerら)は、ウイルス感染症の治療に有用となり
得る細胞間接着分子(ICAM-1)およびその機能性誘導体を開示している。
欧州特許出願0364690号(Springerら)は、炎症の治療に有用となり得る白血球
接着受容体Mac-1アルファサブユニット、ならびに対応するDNAおよび誘
導体を開示している。
欧州特許出願0387668号(Springerら)は、炎症サイトに白血球が移動するプロ
セスに関与すると記載されているICAM-2として分類される細胞間接着分子
を開示している。
Diamondら、「4種の異なる接着リガンドの白血球インテグリンMac-1(C
D11b/CD18)の主要な認識サイトであるI-ドメイン(The I-domainis a
Major Recognition Site on the Leukocyte Integlin Mac-1(CD11b/CD18
)for Four Distinct Adhesion Ligands)」J.of Cell.Biology、120、4、103
1-1043(1993)は、I-ドメインに特異的なmAbがMac-1-依存性の接着を遮
断することを開示している。
Michishitaら、「リガンド結合に必須であるベータ-2 インテグリンCR3(C
D11/CD18)のAドメイン中の新規な二価カチオン-結合サイト(A Novel Di-val
ent Cation-Binding Site in the A Domain of the Beta-2 IntegrinC
R3(CD11/CD18)Is Essential for Ligand Binding)」Cell、72、857-867(19
93年3月26日)は、Mac-1のI-ドメイン領域におけるある種の突然変異がiC3b
への接着を遮断することを開示している。
Zhouら、「組換えCD11b/CD18インテグリン I-ドメインの異なるリ
ガンド結合特異性(Differential Ligand Binding Specificities of Recom
binant CD11b/CD18 Integrin I-Domain)」J.Biological Chemistry、269、25、1
7075-17079(1994年6月24日)は、CD11bの組換え形のI-ドメインの発
現、およびこのドメインはフィブリノーゲンおよびICAM-1に結合するが、
それはCD11b/CD18リガンドレパートリー全体を再現していないことを
報告している。
Kernら、 「ヒトインテグリンα1β1のリガンド結合におけるI-ドメインの役
割り(The Role of the I Domain in Ligand Binding of the Human Int
egrinα1β1)」J.Biological.Chemistry、269、36、22811-22816(1994年9月9日)は
、このドメインを含むすべてのインテグリンαサブユニットのリガンド認識にお
いて、I ドメインが中心的な役割を演じていることを報告している。
Muchowskiら、「インテグリン・アンタゴニスト好中球阻害因子およびCD11b/
CD18のI ドメインの間の機能的相互作用(Functional Interaction between t
he Integrin Antagonist Neutrophil Inhibitory Factor and the I Dom
ain of CD11b/CD18)」J.Biological.Chemistry、269、42、26419-26423(1994年10月
21日)は、組換え好中球阻害因子(rNIF)がCD11b/CD18の約200ア
ミノ酸残基のI ドメインと結合すること、およびこの相互作用がNIFによる
好中球機能の阻害に必須であることを報告している。
Arnaoutらに対する米国特許第5,091,303号は、ウェゲナー肉芽腫症を有する
個人の血清中に存在する自己抗体に結合する29kD好中球蛋白質、およびウェ
ゲナー肉芽腫症に苦しむ個人を診断するためのこの自己抗体の使用方法を開示し
ている。
Arnaoutらに対する米国特許第5,200,319号は、患者における小-免疫壊死症お
よび/または半月糸球体炎を診断する方法において使用する29kD好中球蛋白
質を開示している。
発明の概要
一態様において、本発明は、グルタチオン-S-トランスフェラーゼ(GST)お
よびヒト白血球B2-インテグリンMac-1由来のI-ドメインの融合蛋白質であ
り、その中で該GSTおよび該I-ドメインは、配列番号:Iに記載するXa因子
切断サイトを含むペプチドセグメントによって結合している。この融合蛋白質は
、
合成および発現用のI-ドメイン蛋白質を扱う改善された手段、ならびにXa因子
酵素による切断のための接近し易さを供するユニークな切断サイトを供する。
もう一態様において、本発明は、配列番号:Iに記載する、アミノ酸配列Gly
226ないしGlu435によって規定されるI-ドメイン蛋白質である。この配
列には、I-ドメインおよび前記した特別の切断サイトが含まれる。
さらにもう一態様において、本発明は、配列番号:Iに記載するアミノ酸配列
Gly226ないしGlu435によって規定されるヒト白血球B2-インテグリン
Mac-1由来の組換えI-ドメイン蛋白質;および医薬上許容される担体または
賦形剤よりなる医薬組成物である。また、該医薬組成物は、前記したI-ドメイ
ン蛋白質の断片、アナログまたは化学誘導体よりなり得る。
さらにもう一態様において、本発明は、配列番号:Iに記載するアミノ酸配列
Gly226ないしGlu435によって規定されるヒト白血球B2-インテグリン
Mac-1由来の組換えI-ドメインよりなる医薬上有効量の抗-炎症剤を、炎症状
態に苦しむ患者に投与することよりなる炎症を治療する方法である。また、該方
法は、前記した組換えI-ドメイン蛋白質の断片、アナログまたは化学誘導体か
らもなり得る。
融合蛋白質、I-ドメイン蛋白質(特別な切断セグメントを含み得る)およびそ
れらから調製した医薬組成物は、汚染物または他の生物学的不純物を実質的に含
まない全組換え蛋白質である。
図面の簡単な説明
図1. Michishitaら、「リガンド結合に必須であるベータ-2インテグリン
CR3(CD11/CD18)のAドメイン中の新規な二価カチオン-結合性サイト
(A Novel Divalent Cation-Binding Site in the A Domain of the Be
ta-2 Integrin CR3(CD11/CD18)Is Essential for Ligand Binding)」Cel
l、72、857-867(1993年3月6日)により記載されたA-ドメインおよび本発明のI-ド
メインの模式図である。A-ドメインはI-ドメインとほぼ同じサイズであるが、
Mac-1の配列中の約20アミノ酸上流(Gly111)で開始することは特記してお
く。したがって、それは、I-ドメイン中のC-末端残基(Glu337)の20残基
上流のAla318で終結する。A-ドメインは、クローニング戦略の一部として導
入したAsn-Ser-SerのC-末端伸長を有する。I-ドメインは、Xa因子
による切断を促進するのに要する配列、H2N-Gly-Ile-Pro-Gly-Gly-..によ
ってN-末端で伸長する。I-ドメイン構築物中の1番目のMac-1残基はSer133
に相当するセリンである。
発明の詳細な説明
本発明は、グルタチオン S-トランスフェラーゼ(GST)との可溶性融合蛋白
質として組換えエスシェリヒア・コリ(Escherichia coli)で発現される、ヒト
白血球β2-インテグリン Mac-1からのI-ドメインに相当する単離および精製
蛋白質である。該蛋白質は、細胞接着機構を妨害して好中球の接着および移動を
遮断することによって、炎症を治療するのに有用である。
グルタチオン-S-トランスフェラーゼ(GST)およびヒト白血球β2-インテグ
リン Mac-1からのI-ドメインに相当する融合蛋白質を、完全なアミノ酸配
列として示す(配列番号:I)。I-ドメイン蛋白質アミノ酸は、融合蛋白質にお
けるそれらの位置に従って番号付けする。該分子のNH2-末端部分(残基220)
は、可溶性発現のレベルの上昇を補助し、GSH-アフィニティークロマトグラ
フィーによる精製を容易ならしめる融合パートナー、グルタチオン-S-トランス
フェラーゼ(GST)である。221-230からの残基は、I-ドメインへGST
を結合するセグメントを示し、Arg225-Gly226のXa因子による切断
のサイトは配列;[Ile-Glu-Gly-Arg-↓-Gly-Ile-Pro-]によって示される
。太字のGly-Gly配列は、Arg-Glyの切断サイトにプロテイナーゼを適応させ
るスペーサーを表している。231のSerにつづくGly-Gly配列は、I-ドメイ
ンの開始、プロセシングされたMac-I中のSer133に相当し、該構築物はGlu3 37
で終結する。したがって、I-ドメインは、Xa因子につづくMac-1のI-ド
メイン(残基133〜337)によるGSTの除去に要するペンタペブチド配列:
Gly-Ile-Pro-Gly-Gly-で開始する。この構造を図1に模式化する。
単離蛋白質は、非経口または経口投与によって、ヒト患者および他の恒温動物
における炎症および関連症状の治療に有用である。
本発明の医薬組成物は、標準的および慣用的な技術を用いて、本発明のヒト白
血球β2-インテグリン Mac-1(配列番号:I)からのI-ドメインの蛋白質、
その断片、変形、アナログまたは化学誘導体を、医薬上許容される担体、医薬上
許容されるアジュバントまたは賦形剤と合わせることによって調製し得る。
好ましくは、該医薬組成物は、慣用技術を用いて、抗-炎症有効量または適量
の有効成分、蛋白質、すなわちヒト白血球β2-インテグリン Mac-1(配列番号:
I)、その断片、変形、アナログまたは化学誘導体からのI-ドメインを含有する
単位投与量形態に調製する。
医薬組成物およびその単位投与量形態における本発明による有効成分の量は、
特定の適用、特定の化合物の能力、または所望の濃度に大きく依存して変動また
は調整し得る。治療するための治療上使用、またはかかるもので診断し得る患者
における炎症またはそのいずれの関連病徴を駆逐することにおいて、該単離およ
び精製した組換え蛋白質またはその医薬組成物は、投与量で経口および/または
非経口投与して、抗-炎症的に有効であろう治療を行う患者において有効成分の
濃度、すなわち、量または血中レベルが達成し維持されるであろう。一般に、有
効成分の投与量のかかる医薬上有効量は、炎症サイトをモニターすることによっ
て明らかとなるであろう。患者の要求性、治療する炎症の程度、および用いる特
定成分に依存して、該投与量が変動し得ることは理解されよう。また、投与した
初期投与量が所望の血中レベルを迅速に達成するために所定の上限レベルを超え
て上昇し得ること、または初期投与量が最適よりも少量となり得ること、および
日投与量が特定の状況に依存して治療の過程の間に進行的に上昇し得ることは理
解されよう。望むなら、該日用量は、投与のために複数用量、例えば、一日当た
り2ないし4回に分割してもよい。
本発明の組成物は、非経口、すなわち、注射、例えば、静脈注射または他の投
与の非経口経路によって投与できる。非経口投与用の医薬組成物は、一般に、ヒ
ト白血球β2-インテグリン Mac-1(配列番号:I)、その断片、変形、アナロ
グまたは化学誘導体からの、例えば、注射用水および緩衝液のごとき医薬上許容
される液体担体中で混合した医薬上許容される量の組換え I-ドメイン蛋白質を
含み、適当に緩衝化された等張溶液が得られる。
有効成分は、十分量の担体中に混合して、医薬上許容される注射濃度が得られ
るであろう。得られた液体医薬組成物は、前記した抗-炎症有効量の投与量が得
られるように投与されるであろう。
本発明の融合蛋白質構築物は、GSTパートナーを利用して、可溶性蛋白質の
高レベルの発現を促進し、固定化グルタチオン(GSH)上のアフィニティークロ
マトグラフィーによる精製ができる。また、N-末端的に結合したGST基が除
去し得るように、I-ドメインに領域結合GST中の接近可能なXa-因子感受性
サイトを含むようにも設計した。GSH-セファロースカラム上のイー・コリ(E
.coli)抽出物のアフィニティークロマトグラフィーにより、当該カラムに直接
通す夾雑物を含む蛋白質から結合したGST/I-ドメインを分離することができ
る。GST/I-ドメインの除去は、該カラムをGSHを含む緩衝液で洗浄するこ
とによって達成した。かくして、精製した融合蛋白質は、リンカー領域中で特異
的に切断するXa因子で加水分解され、得られたGSTおよびI-ドメイン蛋白質
はS-セファロースカラム上のイオン-交換クロマトグラフィーによって分離した
。配列および組成分析によって、およびI-ドメインについて予想されていたも
のと一致する分子量(25,767)を供するエレクトロスプレーイオン化質量分
析によって、最終的なI-ドメイン産物が>99%純度であることが示された。
I-ドメインがトリプシンに対して耐性であったという事実は、円二色性および
二次元NMRによる物理学的特徴付けと併せて、組換えI-ドメインが折り畳ま
れ、かつ規則正しい三次元構造を有するという事実を提供した。
β2-インテグリンの巨大なサイズでしかも複雑なために、それは、慣用的な方
法による構造分析になじまない。しかしながら、I-ドメインは妥当な標的であ
る;それはサイズで比較的小さく、ジスルフィド架橋および低レベルのみの糖化
しか有さず、最も重要なことには、それは、機能的に適当であるようである。標
題I-ドメイン産物の調製において、イー・コリ(E.coli)中のMac-1のI-ド
メインをクローン化し、発現した。2種のI-ドメイン構築物を設計した。1つ
は、COOH-末端に6個のヒスチジンの伸長(6Hisタグ)を有し、固定化金
属イオンアフィニティークロマトグラフィーによる精製を容易ならしめる。この
構築物は、H2N-Ser133-Asp-Ile-Ala-Phe-Leu...で開始し、..Ser-Gln-
GlU337-Ile-Leu-Gly-Arg-↓-His-His-His-His-His-His-COOHで
終結し、ここに数字はMac-1αサブユニット(配列番号:I、図1)中の残基
を示し、矢印は前の4個のアミノ酸によってXa因子の切断点となるように設計
された結合を示す。この記載全体を通して、数字付け系は、シグナルペプチドを
欠く修飾Mac-1のものであり、命名法はMichishitaら、Cell、72:857-67(1993
)のものと一致する。これらの知見は、組換えI-ドメインにおける興味の促進を
援助した。
結合蛋白質としてGSTを含むもう1つの構築物を作製した。この分子の一般
的レイアウトを以下に示す:
GST-Leu-Val-Pro-Arg-↓-Gly-Ser-Ser133....Glu337-Ile-Glu-
Gly-Arg-↑-(His)6(ここに、↓はトロンビン切断配列を示し、↑はXa因子切
断配列を示す)。したがって、I-ドメインは、Ser133およびGlU337からの配列
として、6His構築物として規定される。したがって、この構築物は、精製用に
2つの機会、GSTおよび6Hisタグを有していた。残念なことには、該蛋白
質はトロンビン、Xa因子またはトリプシンでさえも切断できなかった。分子間-
ドメイン領域に隠れるために、該トロンビンサイトは接近性につき制限されてい
るようであった。
この問題点を解決するために、新たなセットの構築物を設計し、その中では6
個のHisタグを除去し、さらなるアミノ酸がGSTおよびI-ドメインに結合し
たリンカー領域にさらなるアミノ酸を挿入した、かくして:
再度、矢印は、2種のプロテアーゼによって修飾されるサイトを示し、したが
って、構築物は、太字で強調したN-末端の伸長を有するが、COOH-末端を有
していなかった。両方の融合蛋白質は、各々トロンビンおよびXa因子によって
修飾されることが見い出されたが、後者はI-ドメインの収率において、よりは
るかに良好であろうことが証明された。
GSTに対するCD11b I-ドメインの2種の融合蛋白質のクローニングおよ
び発現
イー・コリ(E.coli)の細胞質でGSTへの融合物としてのCD11b I-ド
メインを発現させるために、2種の構築物を作製した。1つの構築物は、融合ジ
ャンクションにXa因子切断用の認識サイトを有するが、もう1つの構築物はト
ロンビン蛋白質加水分解サイトを有する。該融合蛋白質を精製した後に、該I-
ドメインはXa因子またはトロンビン修飾によって融合蛋白質から回収できる。
蛋白質加水分解サイトの接近し易さを許容するGST構造物からI-ドメインを
分離するために、2個のグリシン残基を該融合セグメントに導入した。蛋白質加
水分解認識配列により、2個のグリシン残基に加えて他の残基を導入することが
必要であった。蛋白質加水分解修飾の後に、CD11b I-ドメインは太字で示
すN-末端伸長を有する。CD11b I-ドメインには、Ser133ないしGlu
337のアミノ酸残基が含まれる。
CD11b I-ドメインをコードする2種のDNA配列は、実施例に記載する
ごとく、プラスミドpET-CD11b/I(His)6からのPCRによってクロー
ン化した。これらのBamHIおよびEcoRI消化660bpDNA断片を、
ファルマシア(Pharmacia)発現ベクターpGEX-3XおよびpGEX-2Tにク
ローン化し、これをBamHIおよびEcoRIで消化した。PCRプライマー
KAC250およびKAC251からの660bp断片をpGEX-3Xにクロ
ーン化し、プライマーKAC249およびKAC251からのものをpGEX-
2Tにクローン化した。GSTに融合したI-ドメインを運搬する得られた発現
プラスミドベクターは、Xa因子切断サイトおよびトロンビンプロセスサイトを
各々有する、pGST-Xa-CD11b/IおよびpGST-Throm-CD11b/I
と命名した。発現プラスミドにおいて、該融合蛋白質は、IPTGによって誘導
され得る強力なtacプロモーターの制御下にある。また、プラスミドは、IPT
Gのごときインデューサー不存在下でtacプロモーター活性を抑制するlacIq
配列も運搬している。抑制性lacIqが存在することは組換え蛋白質のバック
グラウンド発現を最小限化するのに、特に組換え蛋白質が宿主細胞に有害な場合
には重要である。lacIqリプレッサー配列がプラスミドに存在しない場合に
は、該プラスミドを、通常はF'エピソーム上にあるリプレッサーを運搬するイー
・コリ(E.coli)宿主に維持しておきたいであろう。前記ベクターはlacIqを
運搬するため、プラスミド構築に用いたイー・コリ(E.coli)DH1および発現
に用いたイー・コリ(E.coli)K12Sにはリプレッサー配列が含まれていない
。
前記発現ベクターからの融合蛋白質の発現を試験するため、pGST-Xa-CD
11b/IおよびpGST-Throm-CD11b/Iを3種のイー・コリ(E.coli)宿
主、JM103、JM109およびK12Sに形質転換した。これらの菌株を、
実施例に記載のごとく、1×10-3M IPTGにより融合蛋白質の発現につき
誘導した。SDS-PAGEによって細胞抽出物を分析した場合、該融合蛋白質
の予想サイズ(約45kd)に相当する顕著な蛋白質バンドが認められた。この蛋
白質バンドは、I-ドメイン融合物なしにGSTを発現する菌株由来の細胞抽出
物には存在しない。予想されたように、これらの対照抽出物において、GSTは
高レベルで発現する。1×10-3M IPTGにより誘導したこれら3種の宿主
における融合蛋白質の発現は、2回以上反復させた。JM109およびK12S
は、高レベルの融合蛋白質を産生し、全細胞蛋白質の30%の融合蛋白質の蓄積
に通じ、JM103よりも良好な宿主のようである。
1×10-3M IPTGで発現を誘導することによって、融合蛋白質の大部分
は不溶性で、凝集形で、すなわち封入体で蓄積する。ある種の場合において、プ
ロモーターが徐々に作動し始める場合には、組換え蛋白質が可溶性状態にホール
ディングするためのより望ましい条件に導き得る蛋白質合成が可能である。種々
のレベルのIPTGのプロモーター誘導下での、可溶性および不溶性形のGST
I-ドメイン融合蛋白質の分布を検査した。IPTGレベルが1×10-3Mから
、1×10-4M、5×10-5M、1×10-5Mに低下するほど、より融合産物は
可溶性状態で蓄積する。1×10-5M IPTGにおいては、産生された融合蛋
白質の約60-80%が可溶性状態である。
Xa因子切断サイトでGSTに融合したI-ドメインを産生するイー・コリ(E
.coli)K12S株(pGST-Xa-CD11b/I)を用いれば、1×10-5M I
PTGを入れた振盪-フラスコ中で25Lを超える細胞を増殖させ発現を誘導す
ることができる。これらの細胞から、超音波処理によって細胞抽出物を調製し、
不溶性物質を除去する遠心によって封入体を含有しない上清抽出物を得ることが
できる。これらの上清抽出物は、I-ドメインにつき精製し得る。細胞1Lから
10mgを超える精製I-ドメインを得ることができる。この産生量は重要であ
る。なぜなら、振盪-フラスコを用いてイー・コリ(E.coli)培養物を増殖させて
も、約1.5 A550の細胞密度しか達しないためである。
NMR分析用の標識I-ドメインの単離のために融合蛋白質を15Nおよび15N/13
Cで標識するために、細胞増殖条件を試験して、何が標識蛋白質を効率的であ
るが経済的に産生するかを決定した。先行実験には、(15Nまたは13Cを含まな
い)セルトン(Celtone)-N培地(実施例参照)を用いることが含まれる。非標識セ
ルトン-N培地を1:1、1:2および1:3の比率にて非標識M9塩培地で希
釈し、それを用いて、発現誘導用の1×10-5M IPTGと共にK12S(pG
ST-Xa-CD11b/I)を培養した。セルトン培地自体は、ルリア(Luria)ブロ
ス(全細胞タンパク質の30%)よりも低い発現レベルしか供しない(全細胞蛋白
質の24%)ようである。セルトン培地を1部または2部のM9塩培地で希釈し
ても、発現を顕著に低下しなかったが、3部のM9で希釈すると発現を低下させ
た。これらの培養条件下においては、約60%の融合産物が可溶性状態で残って
いた。
2部の15N-および15N/13C-含有M9塩培地で希釈した15N-および15N/
13
C-含有セルトン培地を用いて、数リットルのK12S(pGST-Xa-CD11b/I)
細胞を増殖させ(Xa因子切断サイトでGSTに融合したI-ドメインを発現する
菌株)、封入体を含まない上清抽出物を調製した。15N-および15N/13C-標識I-
ドメイン分子をNMR分析用に単離した。
ヒト白血球インテグリンMac-Iのα-サブユニットCD11bの組換えI-
ドメインを、pBR-ベースのベクターバックグラウンド中のtacプロモーター
の制御下にて、GST(グルタチオン S-トランスフェラーゼ)への融合物として
イー・コリ(E.coli)中で産生した。高レベルの発現により、融合産物の蓄積は
全細胞蛋白質の少なくとも30%まで達する。高レベルのIPTGでtacプロ
モーターを誘導すると、大部分の融合産物が、不溶性で凝集した封入体形となる
。IPTGレベルを1×10-5Mまで低下させることにより、産生された融合蛋
白質の60%を超えるものがイー・コリ(E.coli)の細胞質中に可溶性形で残る
。
各々、特異的な蛋白質加水分解切断サイト(Xa因子またはトロンビン)を融合
ジャンクションに有して、Xa因子またはトロンビンのいずれかでの消化により
融合産物からI-ドメインを回収できる、2種の融合蛋白質を産生した。I-ドメ
インおよびGSTが物理学的に接近し過ぎて、プロテアーゼに対する切断サイト
の接近し易さをマスクすることがないことを確認するため、該融合結合部にグリ
シン残基を導入して2種のポリペプチド構造を分離した。切断後に、得られたI
-ドメインはN-末端に4-5の臨時の残基を有している。I-ドメイン精製用の出
発物質を供するため、複数リットルのイー・コリ(E.coli)細胞を振盪-フラスコ
中で培養し、封入体を含まない細胞抽出物を調製した。
実施例
酵素および基本的分子生物学的技術
制限エンドヌクレアーゼ、他のDNA修飾酵素およびT4 DNAリガーゼは、
ニューイングランド・バイオラボズ(New England Biolabs)社またはベーリン
ガー・マンハイム(Boehringer Mannheim)社製であった。全ての酵素は、製造
業者の指示書に従って用いた。
用いた全てのプラスミドはアンピシリン耐性マーカーを運搬しており、ルリア
ブロス中または抗生物質培地(Antibiotic Medium)#2(ディフコ(Difco)社)
寒天プレートのいずれか中、100μg/mlアンピシリン存在下にてイー・コリ
(E.coli)DH1中で構築し、維持した。DNA断片の単離、形質転換、小さい
および大きなスケールのプラスミド調製、および他の基本的な分子生物学的技術
は、Sambrookら、「モレキュラー・クローニング:ア・ラボラトリー・マニュアル
第2版(Molecular Cloning:A Laboratory Manual,2nd Edition)」、ニュー
ヨーク州、コールドスプリングハーバー(Co1d Spring Harbor,NY):コール
ド・スプリング・ハーバー・プレス社(1989年)に記載されているものに従った
。プラスミド構築物の確認は、ユナイテッド・ステーツ・バイオケミカル・コー
ポレイション(United States Biochemical Corporation)社製のシークエナ
ーゼ・キット(Sequenase kit)を用いた制限酵素分析およびDNA配列決定によ
って行った。
GSTに融合したCD11b I-ドメイン発現用のベクターの構築
GSTに融合したCD11b I-ドメイン配列を有するプラスミドの構築には
、ベクターpGEX-3XおよびpGEX-2Tを用い、これらはファルマシア(
Pharmacia)社から購入した。プラスミドpGEX-3XはXa因子切断認識サイ
トを、そしてpGEX-2TはGST配列から下流のポリリンカー領域にトロン
ビン切断サイトを運搬している。これらのベクターには、GST発現を制御する
ためのtacプロモーター[IPTG(イソプロピルチオガラクトシド)によって
誘導される]、IPTG不存在ではtacプロモーター活性を最小限化するため
のlacIqリプレッサー、GSTへの融合物としての遺伝子クローニング用の
ポリリンカー領域、アンピシリン-耐性マーカー、およびpBR322由来の複
製開始点が含まれる。
CD11b I-ドメイン配列は、Corbiら(J.Biol.Chem.、263:12403-11(1988)
)によって元々構築されたヒトCD11b cDNAを含むプラスミドからクロー
ン化した。PCR鋳型としてpET-CD11b/I(His)6と共に、KAC250
およびKAC251と命名したオリゴヌクレオチドを用いて、GSTと融合用の
I-ドメイン配列をpGEX-3X中にクローン化したが、KAC249およびK
AC251を用いて、GSTと融台用のI-ドメインをpGEX-2T中にクローン
化した。これらのオリゴヌクレオチドプライマーの配列を以下に示す。該プライ
マーの下線部分はI-ドメイン配列(配列番号:I参照)と重複する。KAC24
9およびKAC250中の他の部分は、N-I-ドメイン用のN-末端伸長配列お
よびI-ドメインをベクターpGEX-3XおよびpGEX-2Tにクローニング
するための制限酵素BamHIサイトを供する。KAC251の下線部分は、g
lu337でI-ドメイン配列を終止する蛋白質合成終止コドンTAG、および該
ベクターにクローニングするための制限酵素EcoRIサイトを供する。
最終用量100μlのPCR反応混合物は、水68μl、10×反応緩衝液(1
00mM トリス-HCl、pH8.3、500mM KCl、15mM MgCl2、
0.01%ゼラチン)10μl、4種のデオキシヌクレオチド三リン酸(各1.25
mM)の混合物16μl、1μM 各適当なオリゴヌクレオチド・プライマー、p
ET-CD11b/I(His)6プラスミドDNA1ng、およびTaqポリメラー
ゼ1μlよりなっていた。反応は、以下の様式にてジーンアンプPCRシステム(
GeneAmp PCR system)(シータス(Cetus)社)を適用することによって行った
:
試料を94℃に加熱し、ついで94℃にて30秒、65℃にて30秒および72
℃にて45秒を30サイクル処理し、つづいて65℃にて5分間アニーリングし
、72℃にて5分間伸長させ、ついで4℃に冷却した。
該PCR反応混合物のアリコットを1.5%アガロースゲル電気泳動によって
分析して、該DNA断片のサイズが約660bpであることを確認した。ついで
、
フェノール抽出により該DNA断片を精製し、0.3M酢酸ナトリウム100μl
およびエタノール400μlを添加することによってPCR反応混合物から沈殿
させた。この660bpのDNA断片をBamHIおよびEcoRIで処理し、
1.5%アガロースゲル電気泳動によって精製し、フェノール抽出およびエタノー
ル沈殿によって精製し、ついで、10mM トリス-HCl、pH7.4および1mM
EDTA中、-20℃にて発現ベクターにクローニングするために使用するまで
保存した。
GSTに融合したCD11b I-ドメインの発現
発現ベクターpGST-Xa-CD11b/IおよびpGST-Throm-CD11b/I
を、3種の異なるイー・コリ(E.coli)宿主(JM103およびJM109は販売
されている;K12Sは単離して融合蛋白質の発現を試験した)に形質転換した。
融合蛋白質を発現させるためのtacプロモーターの誘導は、1×10-3のIP
TG(イソプロピルチオガラクトシド)を添加するか、明細書に記載したごとくす
ることによって行った。イー・コリ(E.coli)細胞は、増殖培地(100μg/ml
アンピシリンを入れたルリアブロス)中で通気しつつ37℃にて増殖させた。詳
細には、イー・コリ(E.coli)細胞の一晩培養物を増殖培地で50-100倍に希
釈してA550にて約0.1とし、対数増加期中期(A550 0.6-0.8)まで
増殖させ、ついで、IPTGを添加することによって誘導した。誘導の最後(2-
4時間)に、遠心によって細胞を回収し、10mM トリス-HCl、pH7.4お
よび1mM EDTAで20のA550に再懸濁し、さらに使用するまで-20℃
にて保存した。ブランソン・ソニファー(Branson Sonifier)中で細胞懸濁液を
超音波処理することによって、超音波処理細胞抽出物を調製した。
発現レベルを測定するために、超音波処理細胞抽出物をSDS-PAGEによ
って分析し、クーマシー染色蛋白質バンドを有するゲルをシマズ(Shimadzu)・
デンシトメーターによりスキャンした。細胞抽出物中の融合蛋白質量は、全細胞
蛋白質の%として算出した。SDS-PAGEは、17%濃度のポリアクリルア
ミドにて架橋リンカーがN,N'-ジアリルターター ジアミドであるゲルシステム
を
用いて行った(Morseら、「単純ヘルペスウイルスDNAの解剖学(Anatomy of
herpes simplex virus DNA)」J.Virol.26:389-410(1978))。蛋白質分子量標
準はアマーシャム(Amersham)社から購入した。
封入体を含まない抽出物の調製
イー・コリ(E.coli)細胞の細胞質に見出された可溶性融合蛋白質を、I-ドメ
インの下流精製のための出発物質として用いた。不溶性で、凝集形の融合蛋白質
(封入体内のもの)を取り除くため、超音波処理細胞抽出物を、SS34ローター
を用いたソルボール(Sorvall)RC-5B遠心機中、4℃、13,000×gにて
5分間遠心した。封入体を含まない上清は、さらに使用するまで-20℃にて保
存した。
I-ドメインの15Nおよび15N/13C標識用の培地の調製
15N-および15N/13C-標識I-ドメインを産生するイー・コリ(E.coli)は、
メリーランド州、コロンビアのマーテック・バイオサイエンス・コーポレイショ
ン(Martek Bioscience Corp.)社から購入した。培地はM9塩培地で希釈した
(Sambrookら(前掲))。適当な希釈率を試験するために、マーテック非-標識培地
セルトン(Celtone)-Uを、アミノ酸を補充することなくM9塩培地と用いた。
100μg/mlのアンピシリンを用い、細胞増殖は37℃で行った。該蛋白質を15
Nで標識するために、唯一のアンモニア源として2gm/l15N-塩化アンモニ
ウムを用いるM9塩培地2部で希釈したマーテック・セルトン-N培地(>98%15
N)中で細胞を増殖させた。該蛋白質を15Nおよび13Cで標識するために、2
gm/l15N-塩化アンモニウムおよび4gm/l13C-グルコースを唯一のアンモニ
アおよび炭素源として用いるM9塩培地2部で希釈したマーテック・セルトン-C
N培地(>98%13Cおよび15N)中で細胞を増殖させた。
方法:GST-I-ドメインの発現
Xa因子での切断によってこの融合蛋白質から生成した主題のI-ドメインは、
(成熟Mac-1の残基133ないし337)+(蛋白質加水分解切断が可能なよう
に要するペンタペプチドN-末端伸長Gly-Ile-Pro-Gly-Gly)に正確に相当する。
I-ドメイン構造とA-ドメインについてMichishitaら(前掲)により公開された
ものとの模式的な比較を図1に示す。主題の蛋白質は、A-ドメインから約20-
残基下流で開始し、終結する(図1)。これは重要な相異であり、これらの蛋白質
の機能に示され得る相異を説明し得る。さらに、主題のI-ドメインはN-末端伸
長を有するが、A-ドメインはCOOH-末端セグメントを有し、両方のものが蛋
白質に属するかは疑問である。
I-ドメインの精製:グルタチオン・セファロース・クロマトグラフィー
グルタチオン-セファロース(Sepharose)およびS-セファロース・ファースト
・フローは、ファルマシアLKB社から購入した。還元型グルタチオン(GSH)
は、シグマ(Sigma)社から購入した。配列決定グレードのXa因子はベーリンガ
ー・マンハイム(Boehringer Mannheim)社から得た。限外濾過膜はアミコン社(
Amicon)製で、ポリアクリルアミドゲルはISSエンプロテック(Enprotech)社
から購入した。他の全ての試薬は、販売されている最高品質のものであった。イ
ー・コリ(E.coli)細胞ホモジネートは、40,000×gで遠心し、つづいて0
.45μmフィルターを通して濾過した。その濾液は、PBS/0.2%β-オクチ
ルグルコシド、pH7.4で予め平衡化したグルタチオン・セファロースカラム(
50-ml;1.6cm i.d.×26cm長)上に直接負荷した。そのカラムを1.0ml/
分で負荷し、溶出液中の蛋白質は280nmでモニターした。そのカラムを4カ
ラム容量(CV)の平衡緩衝液で洗浄し、20mM還元型グルタチオンを含有する
2CVの50mM トリス緩衝液、pH8.0で段階-溶出した。溶出液は9ml画
分に採取した。全てのプロセス画分を、非-還元条件(NR)下にてSDS-PAG
Eに付した。GST/I-ドメインを含有する画分を貯め、4℃にて保存した。
Xa因子の切断
精製した融合蛋白質を、Xa因子(1重量%)での消化に23℃にて16-24時
間付した。常時、SDS-PAGEを行い、消化が完全であるかを確認した。
S-セファロース・ファースト・フロー・クロマトグラフィー
蛋白質消化物は、50mMリン酸ナトリウム緩衝液、pH6.5で予め平衡化
したS-セファロース・ファースト・フロー・カラム(50-ml;1.6cmi.d.×
26cm長)上に直接負荷した。カラムは1.0ml/分で流し、その溶出液を280
nmでモニターした。そのカラムを4CVの平衡緩衝液で洗浄し、50mMリン
酸ナトリウム、pH6.5が存在する0-1.0M NaClからの2CV線形塩グ
ラジエントを行い溶出した。カラム画分はSDS-PAGE(NR)に付した。精
製I-ドメインは、約25kDの単一バンドとして認められ、約150mM Na
Clでカラムから溶出した。
限外濾過
精製I-ドメインは、YM05膜を含むアミコン(Amicon)撹拌-細胞限外濾過
モジュールを用いて20mg/mlに濃縮した。窒素圧は、濃縮の間60psiに
維持した。
I-ドメインの特徴付け:分析方法
蛋白質は、フェニルチオヒダントイン(PHT)アミノ酸の同定および定量用の
オン-ラインHPLCアナライザー(モデル120A)に連結したアプライド・バイ
オシステムズ・モデル470ガスフェーズ・シークエンサー(Applied Biosystems
Model 470 Gas Phase Sequencer)における自動化エドマン分解によって配列
決定した。HPLCからのピークの積算は、モデル120A HPLCシステム
の出力へのレコーダーと並列連結したネルソンアナリティカル3000シリーズ・ク
ロマトグラフィー・データシステム(Nelson Analytical 3000 Series Chrom
atography data system)で行った。
アミノ酸分析は、ベックマン・モデル6300アナライザー(Beckman Model 6300
analyzer)の援助で行った。試料は、6N HCl中、110℃真空下にて24時
間加水分解し、つづいてスピード・バック・コンセントレイター(Speed Vac
Concentrator)(サバント(Savant)社)で乾燥した。得られた残渣を緩衝液(NaS;
ベックマン(Beckman)社)中で再現し、該アナライザーに適用した。
逆相(RP)HPLCは、4.6×250mm ビダック(Vydac)C4カラムを付
したHP 1090液体クロマトグラフィー上で行った。グラジエント移動相は、各
々、0.15%トリフルオロ酢酸(TFA)を含有する、水およびアセトニトリル
であった。グラジエントは、1.0ml/分の流速で70分間、0-70%アセトニ
トリルで行った。溶出液は220nmおよび280nmで同時にモニターした。
I-ドメインは単一のピークとして溶出され、2-mlポリプロピレン卓上遠心用
試験管に採取し、スピード・バック中で乾燥し、分析した。SDS-PAGEは
、Laemmli、Nature、277:680-85(1970)に記載のごとく行うか、またはSchagge
rおよびvon Jagow、Anal.BioChem、166:368-79(1987)に記載のトリシン緩衝
液系を用いて行った。ゲルを固定し、つづいて0.1%クーマシー・ブリリアン
ト・ブルーR-250で染色した。
全てのエレクトロスプレーイオン化(ESI)質量分析は、ベステック(Vestec
)201A質量分析器上で記録した。アセトニトリル/水/0.1%TFA中のI-ドメ
イン溶液のアリコット(5μl)(アセトニトリル/TFAグラジエント系中のHPL
Cによって単離した蛋白質約0.05〜0.5μg)を、ループインジェクターを
介してイオン源に注射した。質量分析は、m/z500から2000まで2秒/ス
キャンにてスキャンした。データは、テクニベント・ベクター2データシステム
(Teknivent Vector 2 data system)で獲得した。10スキャンを平均し、さら
なる処理のためにハリス(Harris)800コンピューターに移行した。平均分子量(平
均M.W.)は社内で開発されたプログラムを用いて決定した。単一成分には、セ
ントロイド・プログラム(centroid program)およびデコンボルーション・プログ
ラム(deconvolution program)を用いた。混合物には、デコンボリューション・
プログラムで良好な結果が得られた。ついで、実験的に得られた平均M.W.を、
I-ドメインの種々の試料の理論平均M.W.と比較した。
I-ドメイン(1.0mg/ml)の円二色性(CD)分析は、0.086mmセル中
にて、260-190nmまでジャスコ・モデル(Jasco Model)J-720CD分光偏
光計上、室温(20-22℃)にて測定した。分光偏光計は、D-10-カンファス
ルホン酸で290nmにて補正した。モル強度は、蛋白質試料濃度および113.2
の平均残基分子量からコンピューター処理した。二次構造は、16種の蛋白質の
データベースに対するコンプトン(Compton)およびジョンソン(Johnson)の方法
を用いて算出した。
I-ドメインの精製
プラスミドpG-3×-CD11bを有するイー・コリ(E.coli)発現系は、納
得のいくレベルのGST/I-ドメイン融合蛋白質を供した。良好な収率として非
常に率直であることが証明された固定化GSH上のGST/I-ドメイン構築精製
物は、極めて高い純度であることが認められた。実際、SDS-PAGE分析で
認められた無比の夾雑物は非常に低いレベル(<5%)の遊離GSTのようであり
、それは融合蛋白質と同時-精製されたと予想される。GSH-カラムから回収し
た蛋白質のRP-HPLCにより、単一のピークを得た。これは、N-末端配列分
析の際には、GSTのN-末端に相当する単一配列を供した。二次配列の不存在
は、第一プロセス段階の間には融合蛋白質の蛋白質加水分解がほとんどまたは全
く起こらなかったという点で良好な事実であった。RP-HPLCピークのアミ
ノ酸分析は、無傷GST/I-ドメイン融合蛋白質の予想された組成と非常に良好
な相関を示す。これらの分析結果に基づいて、無傷融合蛋白質の純度は>95%
と概算された。
融合蛋白質からのI-ドメインの遊離は、Xa因子とのインキュベートを介して
酵素的に達成された。Xa因子はセリンプロテアーゼであり、これは構築物の設
計により、Arg-Gly結合で融合蛋白質を特異的に切断して、I-ドメインのGly-Ile
-Pro-Gly-Gly-N末端伸長(配列番号:I、図1)に導く。Xa因子は精製した融合
蛋白質に、最終濃度1%(重量%)にて直接添加し、インキュベートは室温にて行
った。Xa因子での経時的酵素消化物のSDS-PAGE図は、融合蛋白質の消化
が
16-24時間の間に完了することを示している。GSTおよびI-ドメインは分
子量で酷似しているため、これらの蛋白質産物はこの方法によっては分割しなか
った。それにも拘わらず、SDS-PAGEは、消化の程度をモニターするため
の有用な技術を提供した。なぜならば、融合蛋白質の損失が容易に追跡できるた
めである。
GSTおよびXa因子の等電点(各々、pI=6.5およびpI=4.3)が互い
に顕著に異なり、無傷I-ドメインのもの(pI=9.0)からも異なるため、イオ
ン交換クロマトグラフィーをI-ドメイン精製の最終段階とした。Xa因子消化物
は、I-ドメインのみを結合させるであろう条件下にてカチオン交換樹脂S-セフ
ァロース・ファースト・フロー上に直接負荷した。I-ドメインは、グラジエン
ト中の150mM NaCl周辺で単一の均一なバンドとして溶出され、生理-型
緩衝液のその回収物となった。結合効率は、RP-HPLCによってモニターし
、これにより、I-ドメインからGSTを分割した。負荷したS-セファロースは
、RP-HPLC上で2本のピーク(GSTおよびI-ドメインに相当する)を示し
たが、フロースルー、洗液、および保存画分には、各々主に、GST、GST、
およびI-ドメインに相当する1本のピークが各々含まれていた。
I-ドメインの特徴付け
N-末端配列分析およびアミノ酸分析は、夾雑物または分解の徴候を全く有さ
ない予想された結果と非常に高い相関があった最終産物で行った。SDS-PA
の2本の初期-溶出ピークが存在することも示した。これらのピークの採取、凍
種であることが確認された。両方のピークのN-末端配列決定およびアミノ酸分
析により、これらがArg残基306(配列番号:I)での単一内部切断から生じ
たI-ドメインの分解産物であることが示された。これらの結果に基づいて、こ
のプロセスに由来するI-ドメインの純度は>95%であると決定した。この高
品質の物質は、この精製プロトコールの手段により、一貫して得られた(n=7)
。
エレクトロスプレーイオン化質量分析を用いて、I-ドメイン調製物の完全性
をさらに評価した。精製I-ドメイン(2-3nmol)をRP-HPLCから採取
し、凍結乾燥し、分光器プローブに適用する前に、少量の50%アセトニトリル
中で再現した。質量/単位電荷(m/z)に相当する一連の分子イオンを得、これか
ら平均分子量を決定し得る。全てのXa因子-由来I-ドメイン調製物は実質的に
同一の結果が得られた。スペクトルは、異なる分子量を有する2種と同定した。
多い方の種(80-95%)の分子量は23,767と決定され、これは理論値に正
確に合致するが、少ない方の種は164ダルトン低い分子量が得られた。この種
の生成は、この分子量の違いに基づくC-末端の異種性または典型的な転写後修
飾によるもののようではない。
CD11bに対して向けられたモノクローナル抗体(mAb)3H5を生成し、
単離し、特徴付けた。フィブリノーゲンは、カビ・ファルマシア(Kabi Pharmasia
)社(オハイオ州、フランクリン)から購入し、ゼラチン-セファロース4B(ファル
マシア(Pharmacia)社;スウェーデン、アップサラ)を利用してフィブロネクチ
ンを枯渇させた。
細胞調製
多形核白血球(PMN)は、以前に記載されているごとく(Smith,C.W.ら、J.
Clin.Invest.、83:2008-17(1989))、デキストラン-沈降分離およびフィコール-ハ
イパーク(Ficoll-Hypaque)グラジエント遠心によってヘパリン処理血液から単
離した。PMNは1mM MgCl2および1mM CaCl2を含有するリン酸緩衝
液セーライン(1.2mMリン酸、138mM NaCl、pH7.4;PBS)中で
2回洗浄した。PMNは、2',7'-ビス-(2--カルボキシエチル)-5(および-6)
-カルボキシフルオレセイン(BCECF;オレゴン州、ユージンのモレキュラー・
プローブス・インコーポレイテッド(Molecular Probes,Inc.)社;90%DM
SO中の1mg/ml)で標識した。
細胞接着アッセイ:
マイクロタイタープレートプレートにおける蛋白質に対する好中球接着(表1、
2および3)
iC3bリガンドに対する好中球接着を評価するために、96ウェル・マイク
ロタイタープレート(イムロン2(Immulon 2)、ダイナテック・ラボズ(Dynatech
Labs)社、バージア州、チャンティリー)を170μg/mlBSAおよび75μ
g/mlヒト・ポリクローナルIgG(カルバイオケム(Calbiochem)社、カリフォ
ルニア州、ラ・ジョーラ)を含有するPBS200μlでコートした。37℃にて
1時間インキュベートした後に、プレートをPBS200μlで3回洗浄した。
プラスチック上の残りのサイトは、PBS中の1%セラチンを添加することによ
ってブロックした。プレートは、1mM CaCl2および1mM MgCl2(PB
S/Ca2+/Mg2+)を含有するPBS200μlで1回洗浄し、つづいてヒト血清
(PBS/Ca2+/Mg2+中で1:3に希釈した)200μlを添加した。プレート
は、0.05%ツイーン(Tween)20および0.01%チメローザルを含有するP
BS200μlで3回洗浄した。
標識好中球は、n-ホルミル-メチオニン-ロイシン-フェニルアラニン(fMLP
;10-7M)で、37℃にて10分間刺激した。抗CD11b mAb3H5(陽
性対照)(20μg/ml)またはI-ドメイン蛋白質(0.5、1、5、10または2
0μM)50μlを、好中球(107/ml)50μlを添加する前に、幾つかのウェル
に添加した。37℃にて20分間インキュベートした後に、プレートを打ち振る
ことによって非接着細胞を除去した。ついで、プレートをPBS/Ca2+/Mg2+
200μlで3回洗浄した。ウェル中の蛍光量は、パンデックス蛍光濃度アナラ
イザー(Pandex fluorescence concentration analyzer)(イリノイ州、マンデレ
インのバクスター・ヘルスケア・コーポレイション(Baxter Healthcare Corp.)
社)を用いて485/535nmで測定した。
フィブリノーゲンへの好中球接着を評価するために、96ウェル・マイクロタ
イタープレートを37℃にて2時間、フィブリノーゲン(100μg/ml)50μl
でコートした。プラスチック上の残りのサイトは、PBS中の1%ゼラチンを添
加することによってブロックした。プレートはPBS/Ca2+/Mg2+で3回洗浄
した。mAb 3H5(20μg/ml)またはI-ドメイン蛋白質(0.5、1、5、
10または20μM)50μlを、細胞を添加する前に、幾つかのウェルに添加し
た。該ウェルにfMLP刺激した標識好中球を添加し、37℃にて20分間イン
キュベートし、細胞接着を前記のごとく測定した。
ICAM-1への好中球接着を評価するために、記載された方法(Marlinおよ
びSpringer、「精製した細胞間接着分子-1(ICAM-1)(Purified inter-ce
llular adhesion molecule-1(ICAM-1))」Cell、51:813-19(1987))の修飾を用い
てヒト胎盤70gからこの蛋白質を免疫精製した。抗ICAM-1 mAb 8.4(*
)をこれらのアフィニティークロマトグラフィー方法に用いた。好中球接着アッ
セイには、マイクロタイタープレートを、PBS/Ca2+/Mg2+中で1:15(
容積/容積)に希釈した精製ICAM-1でコートした。37℃にて2時間インキ
ュベートした後に、PBS中の1%ゼラチンを添加することによってICAM-
1基質をブロックした。プレートは、PBS/Ca2+/Mg2+で3回洗浄した。
I-ドメイン蛋白質のmAb 3H5(20μl/ml)(0.5、1、5、10または
20μM)50μlを、細胞を添加する前に幾つかのウェルに添加した。fMLP
刺激標識好中球をウェルに添加し、37℃にて20分間インキュベートし、細胞
接着は前記のごとく測定した。
スミス-ホラーズ接着チャンバーにおける蛋白質基質への好中球接着(表4)
マイクロタイター・プレート・アッセイ(前掲)に加えて、Mac-1基質に対
する化学走性的に刺激した好中球の接着を、以前に記載されている(Andersonら
、「新生児多核白血球の異常な移動(Abnormal mobility of neonatal polymorph
o-nucler leukocytes)」J.Clin.Invest.68:863-74(1981))ごとくスミス-ホーラー
ズ(Smith-Hollers)チャンバーにおいてアッセイした。これらの接着チャンバ
ーを使用することにより、β2インテグリン-依存性を上昇する条件である、剪断
ストレス不存在下での接着分析が促進される(Lawrenceら、「CD-18...に対す
る静脈剪断ストレスの効果(Effect of venous shear stress on CD-18...)」
Blood、75:227-37(1989))。好中球(107/ml)は、接着チャンバー(
0.5×106)に取り込む前に、fMLP(10nM)およびI-ドメイン(2.5-
25μM)を含有する懸濁液中、またはCD11b mAb 3H5(10μg/ml
)中にて、21℃にて5分間予めインキュベートした。蛋白質基質の調製には、
KLH(1mg/ml)またはフィブリノーゲン(10mg/ml)を37℃にて30
分間カバーガラス上でインキュベートし、アッセイ前に洗浄した。iC3b基質
は、ヒト血清(PBSで1:3に希釈したもの)を添加する前に、ヒトポリクロー
ナルIgG(75μg/ml)-BSA(170μg/ml)混合物をカバーガラス上で
37℃にて1時間インキュベートし、37℃にてさらに1時間インキュベートす
ることによって調製した。蛋白質基質に接触する接着好中球の%は、記載のごと
く算出した(Andersonら、(1981)、前掲)。
好中球-内皮細胞接着および移動アッセイ(表5、6)
好中球のヒト臍静脈内皮細胞(HUVEC)の密集単層への接着、および該単層
を通しての移動の評価は、以前に記載されているごとくスミス-ホーラーズ(Smi
th-Hollers)接着チャンバーにおいて行った(Smithら、「LFA-1およびMa
c-1と細胞間接着分子-1...との共同的相互作用(Cooperative Interactions
of LFA-1 and Mac-1 with intercellular adhesion molecule-1...)」J.Clin.
Invest.83:2008-17(1989))。表4および5に示す代表的実験では、HUVECを
TNF(100U/ml、4時間、37℃)と予めインキュベートし、チャンバーに
取り込む前に、高レベルのICAM-1発現を誘導した。好中球(107/ml)は、
接着アッセイ(0.7ml/チャンバー)に取り込む前に、選択した濃度のCD11
b I-ドメイン(Xa因子−切断GST融合蛋白質)、GSTまたは抗CD11b
mAb 3H5(10μg/ml)と37℃にて5分間インキュベートした。HUV
ECと接触した接着好中球の%および内皮細胞間移動を示した細胞の%は、以前
に記載れている(Smith,C.W.ら、J.Clin.Invest.82:1746-1756(1988))ごとく測
定した。
ICAM-1精製
ICAM-1は、以前に記載されている方法(Marlin,S,Springer,T.A.、
Cell,51:813-19(1987))の修飾によってヒト胎盤70gから精製した。抗-ICA
M-1モノクローナル抗体8.4を、アフィニティークロマトグラフィー精製に用
いた。
表1.iC3bに対する好中球の接着
蛍光的に標識した好中球およびI-ドメイン構築物を、「材料および方法」で
記載するごとくiC3bで予めコートしたマイクロタイターウェルに(示した濃
度で)添加した。20分間インキュベートした後に、打ち振ることにより非接着
好中球を除去し、該マイクロタイターウェルをアッセイ緩衝液で3回洗浄した。
接着細胞は、パンデックス蛍光濃度アナライザー(Pandex fluorescence concent
ration analyzer)を用いて蛍光強度を測定することによって定量した。好中球の
接着も、mAb 3H5(抗-CD11b)存在下で測定した。各値(蛍光強度とし
て表した)は、3回測定値の平均±標準誤差を表す。結果は、3回実験の代表的
な値である。6-His I-ドメインは、6個のヒスチジン(6 His tag)のC
OOH-末端の伸長であり、固定化金属イオンアフィニティークロマトグラフィー
による精製を促進する。この構築物はH2N-Ser133-Asp-Ile-Ala-Phe-Leu
...で開始し、...Ser-Gln-Glu337-Ile-Leu-Gly-Arg-↓-His-His-His-
His-His-His-COOHで終結し、ここに数字は(Ser231-Glu435、配
列番号:1に相当する、Michishitaら、Cell、72:857-67(1993)からの)
Mac-1α-サブユニット中の残基を示し、矢印は前の4アミノ酸によりデザイ
ンされた結合を示し、Xa因子の切断点である。6-Hisペプチドは、認められ
た6-His I-ドメインの活性がアーティファクトでないことを確認するため
の、Ser-G1n-Glu-Ile-Leu-Gly-Arg-↓-His-His-His-His-His-His-
His-COOHで出発する6-His I-ドメイン用の対照である。
これらの結果は、用量-依存性で、iC3bに対する好中球接着を6-His-I
ドメイン蛋白質が阻害することを示している。半分最大阻害(half maximal inhi
bition)は、1μmol濃度で認められた。この阻害は、6-His tag自体
によるものではないようである。なぜならば、対照ペプチドが接着を阻害しなか
ったからである。それとは反対に、X因子(無冷凍)切断I-ドメイン蛋白質は、
試験した最高濃度(20μmol)においてさえiC3bに対する好中球接着を阻
害しなかった。接着は特異的であった(なぜならば、それがmAb 3H5(抗-C
D11b)によって阻害されたからである)。
表2.フィブリノーゲンに対する好中球の接着
蛍光的に標識した(所定濃度の)好中球およびI-ドメイン構築物を、フィブリ
ノーゲン(100μl/ml)で予めコートしたマイクロタイターウェルに添加した
。20分間インキュベートした後に、打ち振ることにより非接着好中球を除去し
、該マイクロタイターウェルをアッセイ緩衝液で3回洗浄した。接着細胞は、パ
ンデックス蛍光濃度アナライザー(Pandex fluorescence concentration analyz
er)を用いて蛍光強度を測定することによって定量した。また、好中球の接着も
、mAb 3H5(抗-CD11b)存在下で測定した。各値(蛍光強度)は、3回測
定値の平均±標準誤差を表す。結果は、3回実験の代表的な値である。
結果は、X因子切断GST-I-ドメイン融合蛋白質が、半分最大阻害が1μmol
の濃度で認められるように、用量-依存性で好中球接着を阻害したことを示して
いる。それとは反対に、フィブリノーゲンに対する好中球接着は、6-His I-
ドメイン融合蛋白質によりごくわずかだけ阻害された。対照ペプチドは接着に対
して影響を全く有さず、以前冷凍し解凍したX因子は不活性であった。接着は特
異的であった。なぜなら、それがmAb 3H5(抗-CD11b)によって阻害さ
れたからである。
表3:ICAM-1に対する好中球接着
蛍光的に標識した(所定濃度の)好中球およびI-ドメイン構築物を、精製した
胎盤ICAM-1で予めコートしたマイクロタイターウェルに添加した。20分
間インキュベートした後に、打ち振ることにより非接着好中球を除去し、該マイ
クロタイターウェルをアッセイ緩衝液で3回洗浄した。接着細胞は、パンデック
ス蛍光濃度アナライザー(Pandex fluorescence concentration analyzer)を用
いて蛍光強度を測定することによって定量した。また、好中球の接着も、mAb
3H5(抗-CD11b)存在下で測定した。各値(蛍光強度)は、3回測定値の平
均±標準誤差を表す。
結果は、X因子および6-His tag I-ドメイン融合蛋白質の両方が、用
量-依存性で、精製ICAM-1に対する好中球接着を阻害することを示している
。半分最大阻害は、各々、1μmolおよび3μmolの濃度で認めれた。対照
ペプチドは接着に対して影響を全く有さず、冷凍し解凍したX因子は不活性であ
った。接着は特異的であった。なぜなら、それがmAb 3H5(抗-CD11b)
に
よって阻害されたからである。
要約すると、表1-3は、CD11b I-ドメイン蛋白質が好中球接着に対し
て異なる効果を有することを示している。因子X I-ドメインは、フィブリノー
ゲンおよびICAM-1に対する好中球接着を用量-依存性で阻害するが、iC3
bに対する好中球接着には全く阻害効果を有していない。フィブリノーゲンおよ
びICAM-1への半分最大阻害は、両方の蛋白質とも1μmolの濃度で認め
られた。それとは反対に、半分最大阻害が各々1および3μmolの濃度で起こ
るような用量依存性で、リガンドiC3bおよびICAM-1に対する好中球接
着を6-His tag I-ドメイン蛋白質は阻害する。ヘキサヒスチジンを含有
する対照ペプチドは好中球接着に対して全く効果を有さなかった。これらの結果
は、CD11b/CD18のリガンド結合機能におけるI-ドメインの重要性をさ
らに支持している。
+KLH(1mg/ml)またはフィブリノーゲン(10μg/ml)は、37℃にて
30分間カバーガラス上でインキュベートし、アッセイ前に洗浄した。iC3b
基質は、ヒト血清の1:3希釈液を添加する前にカバーガラス上で37℃にて1
時間、IgG(75μg/ml)-BSA(170μg/ml)混合物をインキュベート
し、37℃にてさらに1時間インキュベートすることによって調製した。
*好中球は、スミス-ホーラーズ(Smith-Hollers)接着チャンバーに取り込む
前に、fMLPおよびI-ドメインまたはmAb中で、21℃にて5分間予めイン
キュベートした。蛋白質の最終濃度を示す。
**好中球接着は以前に記載されている(Andersonら、「新生児多形核白血球の
異常な移動(Abnormal mobility of neonatal polymorphonucler leukocytes)」
、J.Clin.Invest、68:863-74(1981))ごとくアッセイした。
代表的な実験の結果(前掲)は、剪断ストレス不存在下で評価した場合の、KLH
、iC3bおよび/またはフィブリノーゲン基質に対する刺激好中球接着を阻害
するCD11b I-ドメイン蛋白質の能力を示している。このことは、iC3b
およびフィブリノーゲン結合に関して特に明白であり、2.5μMおよび/または
10μM濃度のI-ドメインは刺激した対照に対して39-53%で接着を阻害す
る。この阻害レベルは、飽和濃度(10μg/ml)で使用した場合のMac-1(CD
11b)に向けたmAb 3H5を遮断するものに匹敵する。I-ドメイン阻害に
関しては明白な濃度-依存性の関係が認められた。最適阻害濃度のI-ドメインは
、2.5μMである。
前記した代表的な実験の結果は、ICAM-1および他の好中球接着リガンド
の発現を最大に誘導するTNFで予め処理した内皮細胞単層への非刺激好中球の
接着を阻害するCD11b-I-ドメインの能力を示している。示したごとく、5
μMまたは25μMの最終I-ドメイン濃度において、(刺激した対象に比して)
各々、37%または24%で接着を阻害したが、陽性対照3H5 mAbは、飽
和濃度で用いた場合には、56%で接着を阻害した。残りの接着(3H5 mAb
により遮断していない)は、TNFにより誘起されたE-セレクチンおよび他の内
皮細胞リガンドの寄与を表しており、このアッセイにおけるI-ドメイン蛋白質
による影響であるとは予想されなかった。
前掲の代表的な実験のの結果は、TNFで予め刺激した内皮細胞単層に対する
好中球接着および該細胞を通っての移動の両方を阻害するCD11b-I−ドメ
インの能力を示している。I-ドメイン濃度と接着阻害の程度との間には逆の関
係が認められる。最適阻害濃度は1μMで、この実験においては、25μM濃度
では接着を阻害しない。重要なことには、1μM濃度のI-ドメインが、飽和濃
度で用いた場合に、3H5 mAbで認められたのと同程度まで接着を阻害する
。GST(対照)融合蛋白質断片は非阻害である。移動評価において、幾分異なる
関係が認められた。高濃度(25μM)のI-ドメインが接着から独立して好中球
運動を阻害し、低濃度(1μM)が減少した好中球-内皮細胞接着と関連する移動
を遮断するという点で、2モードの用量応答効果が明白である。各々の場合、内
皮細胞間移動は、3H5 mAbにより影響されるのと同程度まで強く阻害され
る。これらの知見は、好中球運動性(走化性)およびそれ自体への接着性に対する
、CD11b-I-ドメイン蛋白質の異なる阻害効果を示している。かかる知見は
、公知のMac-1の多機能特性と全体的に一致する(Andersonら、「接着-依存
性顆粒球機能...に対するMac−1糖蛋白質ファミリーの寄与(Contributions
of the Mac-1 glycoprotein family to adherence-dependent granulocyte fu
nction...)」J.Immunol.137:15-27(1986)およびSmithら「内皮
細胞間移動(Transendothelial migration)」、Adhesion、pp85-115、ダブリュ・
イー・フリーマン・アンド・コーポレイション、ニューヨーク(1992))。
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(51)Int.Cl.6 識別記号 庁内整理番号 FI
C12P 21/02 9051−4C A61K 37/02 ABE
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C12R 1:19)
(C12P 21/02
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DK,ES,FR,GB,GR,IE,IT,LU,M
C,NL,PT,SE),OA(BF,BJ,CF,CG
,CI,CM,GA,GN,ML,MR,NE,SN,
TD,TG),AP(KE,MW,SD,SZ,UG),
AM,AT,AU,BB,BG,BR,BY,CA,C
H,CN,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,GB
,GE,HU,IS,JP,KE,KG,KP,KR,
KZ,LK,LR,LT,LU,LV,MD,MG,M
N,MW,MX,NO,NZ,PL,PT,RO,RU
,SD,SE,SG,SI,SK,TJ,TT,UA,
US,UZ,VN
(72)発明者 トミッチ,チェ−シェン・シイ
アメリカ合衆国49008ミシガン州カラマズ
ー、ブラックベリー・レイン3703番
(72)発明者 フェアバンクス,マイケル・ビイ
アメリカ合衆国49004ミシガン州カラマズ
ー、マウント・オリベット2330番
(72)発明者 バジト−ジェシュケ,メアリー・エル
アメリカ合衆国49009ミシガン州カラマズ
ー、ウインドリフト・アベニュー6233番