【発明の詳細な説明】
ダニアレルギー治療用の医薬ペプチド組成物発明の背景
世界中で約5億の人々がダニに対してアレルギーであり、そしてダニに対する
アレルギーが喘息ならびに多くの湿疹、枯草熱および他の症状を有する患者の50
−80%の要因となっていると考えれている。ダニは家中に偏在し、そしてベット
、カーテンおよびカーペットで生長する。ダニを生活環境から除去することはき
わめて困難であり、そしてアレルギー患者はいつもそのアレルゲンにさらされて
おり、そしてそのような絶え間無い暴露が時間経過とともにアレルギー症状を悪
化させる。このようにダニに対するアレルギーは慢性的となり、そして治療する
ことが困難である。
ダーマトファゴイデス(Dermatophagoides)属のダニに対するアレルギーは、喘
息、鼻炎および異所性の皮膚炎のような多くのアレルギー症状と関連してきた。
2つの種、ディ.プテロニスシニウス(D.pteronyssinus)およびディ.ファリナエ
(D.farinae)が優勢であり、そして結果として、これら2種により生産されるア
レルゲンを同定するために、多大な努力がなされてきた。研究者はグループI(
例えばDerpIおよびDerfI)およびグループII(例えばDerpIIおよびDerfII)タン
パク質アレルゲンに対する応答の重要性を示した。例えば、60%以上の患者が、
彼らの抗−ダニ抗体の少なくとも50%を、これらのタンパク質に対して有するこ
とが示された(例えば、Lind,Pら、Allergy,39:259-274(1984);van der Zee、J.S.
ら、Journal Allergy and Clinical Immunology,81:884-896(1988))。子供はグ
ループIおよびグループIIアレルゲンに対して、より
高い反応性を示す可能性がある(Thompson,P.J.ら、Immuinology,64:301-314(198
8))。
ディ.プテロニスシニウス(D.pteronyssinus)およびディ.ファリナエ(D.farin ae
)の両方に由来する主要アレルゲンを遺伝子クローニングすることにより、特
性を決定するための猛烈な努力がなされてきた。その結果、幾つかの文献では、Derp
I(Thomas,W.R.ら、International Archives of Allergy and Applied Immu nology
,85:127-129(1988):およびChua,K.Y.ら、Journal of Experimental Medic ine
,167:175-182(1988))、DerpII(Chua,K.Y.ら、International Archives of Al lergy and Applied Immunology
,91:118-123(1990))、DerfI(Dilworth,R.J.ら、Clinical and Experimental Allergy
,21:25-32(1891))、DerfII(ユウキ、T.ら、Japan Journal Allergol.
,39:557-461(1990));およびTrudinger,M.ら、Clinical and Experimental Allergy
,21:33-37(1991))、ならびに低分子量アレルゲン(Ov
ey,E.R.ら、Journal of Experimental Medicine,170:1457-1462(1989))を含む数
種のアレルゲンの完全なヌクレオチド配列が報告された。
DerpIおよびDerfIをコードするcDNA配列の公開されたヌクレオチド配列
は、これら2つのタンパク質がアミノ酸レベルで高度に相同的(81%)であり、
そして成熟タンパク質生成物は、それぞれ222および223残基から成る(Chua,K.Y.
ら、Journal of Experimental Medicine,167:175-182(1988);およびDilworth,R.
J.ら、同上)ことを示した。タンパク質アレルゲンDerpIIおよびDerfIIは、両方
とも129残基から成り、そしてアミノ酸配列が高度に相同的である(88%の同一
性)(Trudinger,M.ら、同上;ユウキ、T.ら、同上);Chua,K.Y.ら、Internationa l Archi
ves of Allergy and Applied Immunology
,91:118-123(1990))。
DerpIおよびDerpIIをコードするcDNAクローンの単離により、組換え抗原
に関する抗体結合実験が可能になった(Green,W.K.ら、International Archives of Allergy and Applied Immunology
,92:30-38(1990);Chua,K.Y.ら、Internatio nal Archives of Allergy and Applied Immunology
,91:124-129(1990))。DerpI
の相補的DNA断片が大腸菌中で発現し、そしてプールされたヒトのダニアレル
ギー性IgE血清を用いたIgE結合実験では分子全体の結合および非結合領域が示さ
れた(Thomas,W.R.ら、アトピー性アレルゲンのエピトープ:アレルギーおよび臨
床的免疫学のヨーロッパアカデミーの第XIV回会議のワークショプ議事録(Epito pes of Atopic Allergens,Proceedings of Workshop from XIV Congress of th e European Academy of Allergy and Clinical Immunology
)、ベルリン、1989年
9月、第77-82頁)。DerpIのT細胞エピトープが報告された(O'Hehir,R.E.ら、An nual Review Immunology
,9:67-95(1991);Stewart,G.A.ら、アトピー性アレルゲ
ンのエピトープ:アレルギーおよび臨床的免疫学のヨーロッパアカデミーの第XI
V回会議のワークショプ議事録、ベルリン、1989年9月、第41-47頁;Yessel,H.ら
、健康および疾患におけるT細胞活性化:免疫性と免疫学的寛容との間の識別(Ac
tivation in Health and Disease:Discrimination Between Immunity and Toler
ance)、1990年9月22-26日の会議、トリニティー大学、オックスフォード、英国
およびHessel,H.ら、Journal of Immunology,148(3):738-745(1992年2月1日)。
現在、家ダニアレルギーの治療には脱感作療法が使用されるている。そのよう
な治療には、全家ダニカルチャーに由来する抽出物をアレルギ
ー個体に投与することを含む。そのような抽出物を使用する脱感作療法は、高投
与量を使用するときにはアナフィラキシーを表すという欠点があり、一方アナフ
ィラキシーを回避するために低投与量を使用すると、治療は高度に効果的ではな
く、そして抽出物に対する免疫学的寛容を確立するために、数年続けられなけれ
ばならない。
国際公開第93/08279号および同第94/24281号明細書は、全家ダニ抽出物を使用
する従来の脱感作療法に付随する潜在的な悪作用を大いに減少する、家ダニに対
するアレルギーの治療用の改良された組成物および方法を開示する。国際公開第
93/08279号および同第94/24281号明細書は、DerpI、DerpII、DerfIおよびDerfI
Iに由来する単離された抗原性断片またはペプチドを開示し、これらをダニに感
受性の個体に投与した時、家ダニに対する個体のアレルギー応答を下方に調節す
ることができることを開示している。そのような個体のアレルギー応答の下方調
節は、家ダニにより誘発される喘息症状を含むアレルギーの古典的症状を減少さ
せるか、または軽減する。そのような抗原性断片は、国際公開第93/08279号およ
び同第94/24281号明細書に、家ダニアレルゲンで攻撃した時に剌激(すなわちT
細胞増殖またはリンホカイン分泌)のようなT細胞応答を現すことができ、かつ
/またはT細胞非応答を誘導できるか、またはT細胞応答の減少を誘導できる、
と開示されている。さらに国際公開第93/08279号および同第94/24281明細書は、
治療的な使用に適するDerpおよびDerfグループIおよびグループIIタンパク質ア
レルゲンに由来する最も好適なペプチドは、そのようなDerpおよびDerfタンパク
質に特異的なIgEと結合しないか、あるいは天然の家ダニタンパク質アレルゲン
よりは実質的に低い程度でIgEに結合し、これによりそのようなペプチ
ドが関与する治療的処方において、アナフィラキシーの可能性を減少するか、ま
たは排除することを開示する。さらに、国際公開第93/08279号および同第94/242
81号明細書は、種間グループIアレルゲン(すなわち、DerpIおよびDerfI)およ
び種間グループIIアレルゲン(すなわち、DerpIIおよびDerfII)の間に交叉反応性
があるならば、例えば1つの種(DerpI)に由来するグループIのペプチドは、
他の種(例えばDerfI)に特異的なT細胞からのT細胞応答を現すことができ、
そして逆も成立することを開示する。最後に、国際公開第93/08279号および同第
94/24281号明細書は、上記特徴を有するペプチドを開示する。
様々な予備配合の努力の結果、本発明はヒトおよび他の哺乳類の家ダニアレル
ギーを治療するための使用に適する製剤の調製に最適な、DerpおよびDerfグルー
プIおよびグループIIタンパク質アレルゲンに由来する新規組成物およびマルチ
ペプチド組成物を提供する。至適化されたヒトへの製剤として使用する、Derpお
よびDerfタンパク質アレルゲンペプチドのそのような新規組成物およびマルチペ
プチド組成物がこれまでに開示または意図されたことはなかった。発明の要約
本発明は、タンパク質アレルゲンに由来するグループIおよびグループIIDerp
およびDerfのペプチド、および修飾ペプチドの新規治療用組成物およびマルチペ
プチド組成物を提供する。そのような新規治療用組成物およびマルチ組成物は、
家ダニアレルゲンに対するアレルギーに罹患しているヒトの治療的処置のために
、至適化された製剤を開発するための予備配合スキームの結果である。本発明のDerp
およびDerfペプチドおよび修飾されたペプチドは、それらを製剤組成物に特
に適するようにす
る特定の独特な特徴を有する。本発明の治療的用組成物およびマルチペプチド組
成物は、家ダニアレルゲンに由来するペプチドおよび修飾ペプチドの独特な特性
を適応させ、そして維持するために至適化され、そして同時にヒトの家ダニアレ
ルギーの処置のための治療用処方に使用された時、最大の治療効果を提供する。
本発明はさらに、DerpIおよびDerpIIタンパク質アレルゲンに由来する新規な修
飾ペプチドを提供する。図面の説明
図1は、本発明の新規な“独特”なペプチドを含む、本発明による“独特”な
ペプチドのアミノ酸配列を表す。
図2は、本明細書に記載したT細胞実験に使用する、DerpIおよびDerpIIタン
パク質アレルゲンに由来する重複ペプチドを表す。
図3は、図2に示す重複DerpIペプチドおよび図1に示すグループIの“独特
”なペプチドDPI-21.2(配列番号27)、DFI-22.2(配列番号28)、DPI-23.31(配
列番号29)、DPI-26.6(配列番号30)に対するT細胞応答のグラフ表示である
。各棒の上に示す平均S.I.(カッコ内)、ならびに応答のパーセント、陽性指数(
平均S.I.に応答パーセントを掛け算した)はY軸である。
図4は、図2に示す重複DerpIIペプチド、DPII-20.9(配列番号31)、DPII-22
.14(配列番号32)およびDPII-25.15(配列番号33)ならびに1図2に示すDerpI
Iの“独特”なペプチドに対するT細胞応答のグラフ表示である。各棒の上に示
す平均S.I.(カッコ内)、ならびに応答のパーセント、陽性指数(平均S.I.に応答
パーセントを掛け算した)はY軸である。
図5は、5%マンニトールを含む50mM リン酸塩緩衝液中の独特”な候補ペプ
チドDPI-21.2(配列番号27)、DFI-22.2(配列番号28)、DPI
-23.31(配列番号29)、DPI-26.6(配列番号30)、DPII-20.9(配列番号31)、D
PII-22.14(配列番号32)およびDPII-25.15(配列番号33)のpH-溶解度プロフィ
ールである。溶解度は約22℃±2で、pH5.5からpH8.5のpH範囲にわたってmg/ml
(y軸)で測定する。
図6は、候補ペプチドDPI-21.2(配列番号27)、DFI-22.2(配列番号28)、DP
I-23.31(配列番号29)、DPI-26.6(配列番号30)、DPII-20.9(配列番号31)、
DPII-22.14(配列番号32)およびDPII-25.15(配列番号33)の等濃度の混合物中
でのpH-安定性プロフィールである。ペプチドの分解は、6.0から8.5のpH範囲に
わたり、3.0、2.0および1.0mg/mlのペプチドの様々な理論濃度で、約22℃±2お
よび約5℃で、24時間後に観察されるペプチドの%分解(HPLC分析を使用してピ
ーク面積により決定)として算出する。本発明の詳細な説明
本明細書で引用する特許明細書および科学文献は、当業者に利用できる知識を
確立する。本明細書で引用する国際公開および他の報告書は、本明細書に参照と
して編入する。
本発明は、家ダニアレルゲンに対するアレルギーに罹患しているヒトの治療的
処置のための至適化された製剤を開発するために、予備配合スキームの一部とし
て、他のDerpIおよびDerfIペプチドと組み合わせる新規の修飾されたDerpIお
よびDerpIIペプチドを提供する。そのようなペプチドおよび修飾されたペプチド
は、それらを製剤組成物に特に適するようにする特定の独特な特性を有し、そし
て本明細書においてはこれらを“独特な”ペプチドと呼ぶ。
薬化学によれば、予備配合は安定で、効果的で、かつ安全な投与形態
の組成物に重要であると考えられる薬剤の物理的および化学的特性の決定および
/または定義を通して、薬剤を至適化する工程である。最終的な製剤に使用する
ことを意図する様々な成分との相互作用の可能性も考慮する。予備配合は、溶解
性、安定性のpHプロフィールおよび薬剤−賦形剤相互作用といったパラメータ
ーの研究を含む徹底的な研究であり、この研究には薬剤の生理学的利用性ならび
に物理および化学的安定性に関する十分な効果があるかもしれない。そのような
研究から得たデータは、活性薬剤成分に関する予備的な薬学的および生化学的研
究と統合されて、最高の薬剤形態、およびこの開発に使用するために最も望まし
い賦形剤の選択を可能にする情報を提供する。
活性薬剤成分および賦形剤の最適な配合の開発は、複雑であり、そして多くの
因子が組成物の性質に影響する。高度な均一性、生理学的利用性および医薬品に
期待される治療的性質は、かなりの努力と技術によってのみ達成できる。また柔
軟性も予備配合には重要な因子である。多数の賦形剤、安定化対イオン等が、組
成物の活性薬剤成分との適合性を見いだすために試験されなければならないかも
しれない。成功裏に製剤を配合するために、活性成分の多種の変更が必要になる
かもしれない。そのような変更は薬剤全体の治療効果には影響しないが、同時に
薬剤を組成物により適するようにするものでなければならない。
家ダニに対する感受性の治療のために、ヒトおよび他の哺乳類に使用するのに
適する、至適化された製剤を提供するための予備配合スキームの一部として、そ
のような組成物中の活性成分(“ペプチド”または“候補ペプチド”)は、Derp
I、Derp IIおよびDerfIタンパク質アレルゲン配列に由来するすべての可能性
のあるペプチドの中で、これらのペ
プチドを“独特”とする以下の特徴を有するべきである。第一に独特なペプチド
は単独で、または他の独特なペプチドと組み合わせて、家ダニアレルゲンに感受
性の個体に実質的な割合で、T細胞非応答またはT細胞の応答の減少を誘導する
ために、十分な割合のDerp およびDerfタンパク質アレルゲンのT細胞反応性を
含んで成るべきである。第二に、候補ペプチドは水性緩衝液中でpH6からpH8のpH
範囲のpHで、3mg/mlより高い溶解性というような本明細書中で定義する“超溶解
性”の特性を有するべきである。第三に、ペプチドは水性緩衝液中でpH6からpH8
のpH範囲のpHで安定である。本発明で“独特”なペプチドと決定されたDerp お
よびDerfタンパク質アレルゲンに由来する候補ペプチドは、DPI-21.2(配列番号
27)、DFI-22.2(配列番号28)、DPI-23.31(配列番号29)、DPI-26.6(配列番
号30)、DPII-20.9(配列番号31)、DPII-22.14(配列番号32)およびDPII-25.
15(配列番号33)であり、すべて図1に示す。
第一の特性により、これらのペプチドはT細胞増殖またはリンホガン分泌(す
なわち少なくとも1つのエピトープを含んで成る)のようなT細胞応答を現すか
、あるいはT細胞非−応答またはT細胞応答の減少を誘導すると判明したこれら
のペプチドは、T細胞反応性を有すると考えられる。T細胞エピトープは、アレ
ルギーの臨床的症状の原因であるタンパク質アレルゲンに対する免疫応答の開始
および持続に関与していると思われる。これらのT細胞エピトープは抗原提示細
胞の表面上の適切なHLA分子と結合し、そして関連するT細胞亜集団を刺激する
ことにより、Tヘルパー細胞のレベルで初期の出来事の引き金を引くと考えられ
る。これらの出来事が、T細胞増殖、リンホカイン分泌、局部炎症反応、さらな
る免疫細胞の部位への再集合、および抗体生産を導くB細胞カス
ケードの活性化を導く。これらの抗体の1つのイソタイプ、IgEはアレルギー症
状の発生に基本的に重要であり、その生産は分泌されるリンホカインの性質によ
り、Tヘルパー細胞のレベルで、カスケードの初期の出来事により影響される。
T細胞エピトープは、T細胞レセプターによる認識の基本的要素または最小単位
であり、ここでエピトープはレセプター認識に必須のアミノ酸を含んで成る。家
ダニアレルギー患者が、少なくとも1つのT細胞エピトープを含んで成る単離さ
れた家ダニグループIおよびグループIIタンパク質アレルゲンペプチドに暴露さ
れると、例えばアネルジー、免疫学的寛容もしくはアポトーシス、天然に存在す
る自己抗原への暴露と比べてリンホカイン分泌プロフィールを変化させる能力;
および/またはT抑制細胞の誘導を引き起こす能力を介して、タンパク質アレル
ゲンに対して非応答になるか、または応答性が減少し、そしてそのような暴露に
際して免疫反応の刺激に参加しないように、適当なT細胞亜集団のT細胞非−応
答性を引き出すことができると考えられている。
T細胞反応性を有し、そして少なくとも1つのT細胞エピトープを含んで成る
ペプチドを決定するために、単離されたペプチドを、例えばT細胞生物学的法に
より試験して、それらのペプチドがT細胞応答を現すか、またはT細胞非−応答
性を誘導するかどうかを決定する。実施例で考察するように、ヒトT細胞刺激活
性は、家ダニアレルゲンに対して感受性の個体(すなわち家ダニアレルゲンに対
してIgE媒介免疫応答を有する個体)から得たT細胞を、DerpまたはDerfグループ
IまたはグループIIタンパク質アレルゲンから得たペプチドまたは修飾ペプチド
と培養し、そして例えばトリウム化チミジンの細胞取り込みにより測定する時
に、T細胞増殖がペプチドに反応して起こるかどうかを決定する。ペプチドに対
するT細胞応答の刺激指数は、ペプチドに反応する1分あたりの最大カウント(C
PM)を対照CPMで割り算して算出できる。バックグラウンドレベルの2倍以上の刺
激指数(S.I.)を、“陽性”と考える。陽性結果は試験した患者群に関して、各ペ
プチドの平均刺激指数を算出するために使用する。最終的な製剤中の配合物の候
補として適するペプチドは、2.0以上の平均T細胞刺激指数を有し、そして好ま
しくはより高い(例えば、少なくとも2.5、より好ましくは少なくとも3.5、より
好ましくは少なくとも4.0、さらに好ましくは少なくとも5、さらに一層好まし
くは少なくとも7、そして最も好ましくは少なくとも約9)。
治療目的のために、候補ペプチドは少なくとも10%、より好ましくは少なくと
も20%、さらに好ましくは少なくとも30%、そして一層好ましくは少なくとも40
%以上の家ダニアレルゲンに感受性の個体群に認識される。さらに、好適な候補
ペプチドは、少なくとも約100、よりこの好ましくは少なくとも約250、そして最
も好ましくは少なくとも約350の陽性指数(P.I.)を有する。ペプチドに関するこ
の陽性指数は、平均T細胞刺激指数に、そのようなペプチドに対して少なくとも
2.0のT細胞刺激指数を有する家ダニアレルゲン対して感受性の個体群中の個体
のパーセント(例えば少なくとも15個体、より好ましくは少なくとも30個体以上
を対象とする)を掛け算することにより決定される。このように陽性指数は、家
ダニアレルゲンに感受性の個体群を対象として、ペプチドに対するT細胞応答の
強さ(S.I.)およびペプチドに対するT細胞応答の頻度の両方を表す。
1つのペプチド(候補ペプチド)または候補ペプチドの組み合わせが、
家ダニアレルゲンに感受性の個体群に実質的な割合で、T細胞非応答を誘導する
ために十分な割合の家ダニタンパク質アレルゲンのT細胞反応性を含んで成るの
かどうかを決定するために、アルゴリズムを使用できる。そのような1つのアル
ゴリズムに従い、問題のタンパク質アレルゲン(1つ、または複数)を、所望の
長さの少なくとも2つの重複ペプチド領域に計画的に分割することにより(例え
ば、約12−30のアミノ酸残基長、好ましくは約25アミノ酸残基長より長くなく、
約5−15個の重複アミノ酸残基を有する)、1組の重複ペプチドを作成する。こ
のペプチド領域への分割は任意に行うことができ、アルゴリズムに従い作成でき
、あるいは少なくとも1つのT細胞エピトープを含んで成ると知られている家ダ
ニグループIおよび/またはグループIIタンパク質アレルゲンの領域の全部または
部分に基づくこともできる。好ましくは全家ダニタンパクアレルゲン配列の少な
くとも50%、そしてより好ましくはの全家ダニタンパク質配列を、2つ以上のペ
プチドに分割する。タンパク質アレルゲンに対して感受性の個体群で試験した各
個体について、ヒトT細胞刺激指数は各ペプチドに関して本明細書に記載するイ
ンビトロT細胞増幅アッセイで決定する。例えば、国際公開93/08279号および同
第93/24281号明細書の両方は、DerpI、DerpII、DerfIおよびDerfIIに由来する
重複ペプチドを用いたT細胞実験を開示する。候補ペプチドまたは候補ペプチド
の組み合わせは、少なくとも部分的には試験したペプチド組の候補ペプチドの平
均ヒトT細胞刺激指数、および試験したペプチド組の候補ペプチドの陽性指数に
基づき選択される(図3および図4を参照にされたい)。候補ペプチド(1つま
たは複数)に関するヒトT細胞刺激指数をまとめる。各個人について、候補ペプ
チド(1つまたは複数)に関
するヒトT細胞刺激指数を、試験したペプチド組中の残りのペプチドのヒトT細
胞刺激指数の和で割り算して、以下に示すようにT細胞反応性の割合を決定する
:
あるいは、候補ペプチド中のT細胞エピトープの存在は、タンパク質抗原のア
ミノ酸配列中の候補ペプチドのN−末端またはC−末端のいずれかに位置する重
複ペプチドのアミノ酸残基に依存するが、そのようなエピトープが候補ペプチド
中には存在しない場合は、以下の式を使用することにより、候補ペプチド中のT
細胞反応性のパーセントを算出できると考えられる:
この式において、“NTフランキングペプチド”とは、このペプチドが由来する
タンパク質抗原のアミノ酸配列において、候補ペプチドのN−末端に位置するア
ミノ酸残基と重複するアミノ酸残基を含んで成るペプチドを言い;“CTフランキ
ングペプチド”とは、このペプチドが由来するタンパク質抗原のアミノ酸配列に
おいて候補ペプチドのC−末端に位置するアミノ酸残基と重複するアミノ酸残基
を含んで成るペプチドを言う。この計算で、候補ペプチドに関する刺激指数は、
N−末端フランキングペプチドおよびC−末端フランキングペプチドを加え、そ
して重複ペプチドの全組に関する総刺激指数の和で割り算することにより、候補
ペプチドに関するT細胞反応性のパーセントを得る。2つ以上の候補ペプチドの
組み合わせが選択されるならば、その各々が重複するアミノ酸残基を含むが、こ
の計算を各候補ペプチドについてT細胞反応性の割合を決定するために別々に使
用できない。しかし、候補ペプチドの組み合わせに関するT細胞反応性の総パー
セントを得ることができる。この場合、重複するすべての候補ペプチドの刺激指
数が計算に含まれる。
試験した各個人において、候補ペプチドまたはペプチドの組み合わせに関する
T細胞反応性のパーセントについて得られた値は、上記計算の結果より低い、お
よび高い値の範囲として表わされる。上記のいずれかの計算により、タンパク質
抗原に対して感受性の少なくとも約(20)、そして好ましくは少なくとも約(30)の
個体についてパーセントを得、そして平均パーセントを決定する。本発明の組成
物に使用するために、候補ペプチドまたは候補ペプチドの組み合わせは以下の基
準を有する:(1)候補ペプチドまたは候補ペプチドの組み合わせは、少なくと
も約10%、好ましくは少なくとも約20%、より好ましくは少なくとも約30%、よ
り好ましくは少なくとも約40%、そしてさらに好ましくは少なくとも約50−60%
以上の平均パーセントを有する;そして(2)試験した個体群において、少なく
とも約60%、好ましくは少なくとも約75%、そしてより好ましくは少なくとも約
90−100%が、陽性T細胞応答(2.0以上のS.I.)を、候補ペプチドまたは候補ペプ
チドの組み合わせに反応して有する。上記基準に合う候補ペプチドまたは候補ペ
プチドの組み合わせは、家ダニタンパク質アレルゲンに対して感受性の個体群に
実質的な割合で、T細胞非−応答またはT細胞応答の減少を誘導するために、家
ダニアレルゲンに対する実質的なパーセントのT細胞反応性を含んで成るようで
あ
る。
上記記載のアルゴリズムの説明的な態様として、DerpIおよびDerpIIそれぞれ
由来する1組の重複ペプチドおよび候補ペプチトを作成し、そして試験した。De rp
Iタンパク質アレルゲンと反応性であると定められた二代目のT細胞カルチャ
ーを、39名の家ダニ-アレルギー性患者から得、そして重複ペプチド組ならびにD erp
IおよびDerfIタンパク質アレルゲンに由来する候補ペプチド、DPI-21.2(配列
番号27)、DFI-22.2(配列番号28)、DPI-23.31(配列番号29)およびDPI-26.6
(配列番号30)の反応性を、本明細書に記載したインビトロT細胞増殖アッセイ
で分析した。結果を図3に示す。各ペプチドに反応して2.0以上の最高の刺激指
数を、試験した各患者について記録した。次にデータを上記式により分析した。
1人のダニ-アレルギー性患者について、この結果、およびT細胞反応性の計算
を式(1)および(2)を使用して、以下に示す。
患者1733に関するT細胞反応性
ペプチド刺激指数
DPI-21.2(配列番号27) 3.6
DPI-3(配列番号3) 3.9
DPI-22.2(配列番号28) 3.1
DPI-12.1(配列番号6) 2.2
DPI-5.1(配列番号7) 3.5
DPI-23.31(配列番号29) 5.7
DPI-14(配列番号9) 2.3
DPI-15(配列番号10) 2.8
DPI-6.1(配列番号11) 2.1
DPI-7.1(配列番号12) 2.2
DPI-26.6(配列番号30) 5.0
DPI-9(配列番号14) 2.4
DPI-16(配列番号15) 2.0
DPI-10(配列番号16) 0
DPI-17(配列番号17) 0
刺激指数の和 40.8(分母)
患者1733に関するペプチドDPI-26.6(配列番号30)の%反応性は、
したがって、この患者に関するペプチドDPI-26.6(配列番号30)のT細胞反応
性の予想範囲は、DerpIタンパク質の総反応性の12.3−24%である。上記計算を
試験した各患者に関して、任意の可能性のある候補ペプチドで繰り返す。試験し
た39名のCryj-Iアレルギー性患者において、以下の結果を得た:
このように、4つの候補ペプチドの組み合わせは化工のために、組み合わせて
十分なDerfおよびDerpのグループIタンパク質アレルゲンのT細胞反応性を有す
る望ましい範囲内であり、そして本発明の“独特“なペプチドという第一の基準
に合っている。
同じ計算で、グループII、Derpタンパク質アレルゲンについて決定した。Derp
Iタンパク質アレルゲンと反応性であると定められた二代目のT細胞カルチャー
を、30名の家ダニ-アレルギー性患者から得、そして重複ペプチド組ならびにDer p
IIに由来する候補ペプチド、DPII-20.9(配列番号31)、DPII-22.14(配列番号
32)、およびDPII-25.15(配列番号33)の反応性を、本明細書に記載したイン
ビトロT細胞増殖アッセイで分析した。結果を図4に示す。各ペプチドに反応し
て2.0以上の最高の刺激指数を、試験した各患者について記録した。次にデータ
を上記式により分析した。試験した30人の家ダニ-アレルギー性患者群について
、以下の結果を得た:
このように、本発明の3つのDerpII候補ペプチドの組み合わせは、化工のため
に、組み合わせて十分なDerpのグループII家ダニタンパク質アレルゲンのT細胞
反応性を有する望ましい範囲内であり、そして本発明
の“独特“なペプチドという第一の基準に合っている。
本発明の方法によるアレルギー治療には、組み合わせて使用するペプチドが免
疫グロブリンE(IgE)に結合しないか、またはペプチドが由来する各々の家ダニ
タンパク質アレルゲンよりも実質的に少ない程度(すなわち少なくとも100倍少
ない結合、より好ましくは少なくとも1,000倍少ない結合)でIgEに結合すること
が好ましい。標準的な免疫療法での主な複雑さは、アナィフラキシーのようなIg
E-媒介反応である。免疫グロブリンEは、アレルギー性(“アトピー性”)患者
において、抗原がマスト細胞または好塩性細胞上のIgEに結合あるいは架橋結合
し、そしてメディエーター(例えばヒスタミン、セロトニン、好酸球遊走因子)
を放出する結果生じるアナィフラキシー反応のメディエーターである。このよう
に、治療されるべきアレルゲンに感受性の個体群で実質的割合のアナフィラキシ
ーは、家ダニアレルゲンに感受性の個体群において、IgEに結合しない1つのペ
プチドまたは複数のペプチドを免疫療法に使用することにより実質的な割合で(
例えば少なくとも約75%)回避できるか、あるいはもしペプチドがIgEと結合し
ても、そのような結合はマスト細胞または好塩性細胞からメディエーターを放出
しない。アナフィラキシーの危険性は、IgE結合性が減少した1つのペプチドま
たは複数のペプチドを免疫療法に使用することにより減少させることができた。
IgE結合は、例えば直接的なELISAまたは捕捉ELISAにより試験できる。さらに、
最小のIgE刺激活性を有するペプチドが治療効力のためには望ましい。最小のIgE
刺激活性とは、天然の家ダニタンパク質アレルゲンにより刺激されるIgE生産量
および/またはIL-4生産量よりも少ないIgE生産を言う。もしペプチドがIgEに結
合するならば、そのような結合がマ
スト細胞または好塩性細胞からメディエーター(例えばヒスタミン)の放出を生
じないことが好ましい。IgEに結合するペプチドがメディエーターを放出するか
どうかを測定するために、ヒスタミン放出アッセイを、例えばアマック社(Amac
,Inc.、ウエストブロック、メリーランド州)から得た標準試薬および手法を使
用して行うことができる。簡単に説明すると、試験するペプチドの緩衝液をアレ
ルギー患者からの等容量の全ヘパリン処理血液と混合する。混合そしてインキュ
ーベーションした後、細胞をペレットとし、そして上清を処理して放射性免疫ア
ッセイを使用して放出されたヒスタミン量を測定する。現在までの実験で、候補
ペプチドDPI-21.2(配列番号27)、DFI-22.2(配列番号28)、DPI-23.31(配列番
号29)およびDPI-26.6(配列番号30)、DPII-20.9(配列番号31)、DPII-22.14
(配列番号32)、およびDPII-25.15(配列番号33)がヒスタミン放出に対して陰
性のIgE反応性を現すことが示されている(データは示さず)。
第二の独特なペプチドの特徴は、既に定義したようなpH6−pH8の範囲のpHで3m
g/mlよりも大きい溶解性の“超溶解性”である。生理学的に許容できるpH範囲(
例えば、pH6−pH8)内のpHでの溶解性は、注射用のマルチペプチド治療剤を配合
するときに特に重要である。生理学的に許容できるpH範囲での可溶性製剤の静脈
または皮下注射による投与は、薬剤が導入される生理学的系に薬剤成分の100%
の生物利用性を提供する。したがって、注射を意図する製剤はシリンジで容易に
注射できる程度に流体である必要があり、そして最大の治療効果を達成するため
には、活性成分も十分に可溶性である必要がある。また溶解性は、経口投与(錠
剤、エアゾール、舌下)のような他の投与様式を介して投与される組成物を
配合する時、または徐放性組成物および配合物にも有用である。
ペプチドは任意の所望するpH範囲では可溶性ではなく、あるいはわずかに狭い
pH範囲でのみ可溶性であるため、タンパク質またはペプチドを可溶性組成物に配
合することは難しいかもしれない。特に、多数のペプチドを一緒に1つのマルチ
ペプチド組成物中に配合する時、各ペプチドの可溶性pH範囲が組成物中の他のペ
プチドの可溶性範囲とは重複しないので、特に難しい。その結果、目的とする候
補ペプチドをかなり修飾して、ほとんどの配合物との柔軟性を要求する“超溶解
性”という必要条件が、マルチペプチド製剤を成功裏に配合するためには必須で
あるかもしれない。
本発明の独特のペプチドは、元の目的とする候補ペプチド配列(“親”)の多く
のアミノ酸を変更した生成物であり、この(“親”)から本発明の修飾された独特
なペプチドが初めに引き出された。そのような修飾された“独特”な本発明のペ
プチドには、DPI-23.31(配列番号29)およびDPI-26.6(配列番号30)、DPII-20
.9(配列番号31)、DPII-22.14(配列番号32)およびDPII-25.15(配列番号33)
を含み、そして図1に示す。例えば、DFII-22.14(配列番号32)のアミノ酸配列
は、全タンパク質配列を網羅する1組の重複ペプチドを使用して、高いT細胞反
応性を有する天然タンパク質のこれらの領域を最初に同定することによりDerpII
のタンパク質配列から取り出した。幾つかのペプチドがT-細胞反応性を現すと
判明し、タンパク質中の3つの異なる位置/領域に相当する。これら領域の1つ
は、3つの隣接ペプチドで網羅されており、それぞれが25-29アミノ酸配列長で
あり、そして10-15個のアミノ酸の重複を有する、DpII-3.1(配列番号20)、DpI
I-4(配列番号21)および、DpII-5(配
列番号22)であり(第2図)、すべて高いT−細胞反応性を現した。このT−
細胞マップに基づき、28アミノ酸長のアミノ酸配列(配列番号34)を有する新
たなペプチドを合成し、これは個々のペプチド中に見出されるほとんどの反応性
を現し(データは示さず)、そしてDpII-4(配列番号21)の全部、ならびにDpII-3
.1(配列番号20)およびDpII-5(配列番号22)の一部を含む。しかしこのペプチ
ドは、本発明の“独特”なペプチドに必要な3mg/mlの溶解性を満たせず、また安
定性の要求も満たさなかった。そこで各末端に1または2つの電荷を付加すること
により、類似体DpII-22.2 KQLEAVFEANQNTKTAKIEIKASIDGLEVK(配列番号35)お
よびDpII-22.6 DKQLEAVFEANQNTKTAKIEIKASIDGLEVD(配列番号36)を作成し、安
定性が実質的に向上したが、溶解性は“超溶解性”の基準に達しなかった。第2
の試みでは、最高5個の荷電アミノ酸残基を持つ一連の短縮類似体を末端に付加
した(表1)。
これらのペプチドの中で、DpII-22.5 DKQLEAVFEANQNTKTAKIEIKASIDE(配列番号3
8)は、“親“ペプチドDPII-22(配列番号34)のT-細胞反応性を保持し、そし
て大変可溶性であるので有望であったが、これは合成するのが大変難しかった。
この配列を合成することの難しさは、疎水性イソロイシンをより疎水性の低いア
ラニンに置換することにより消えると判明し、同時に溶解性も大きく増大した。
ペプチドDpII-22.14 DKELEAVFEANQNTKTAKAE(配列番号32)は、“親”ペプチドD
PII-22(配列番号34)とほとんど同じT-細胞反応性を有し、ならびに6.0−8.0
のpH範囲で3mg/mlよりも大きい溶解度であり、合成そして精製し易いことが分か
った。したがってDPII-22(配列番号34)が6.0−8.0のpH範囲で安定であると決
定された時、“独特”なペプチドとして選択した。他の修飾された“独特”なペ
プチド、DpI-23.31(配列番号29)、DpI-26.6(配列番号30)およびDPII-25.15(
配列番号33)の開発は、DPII-22.14(配列番号32)について記載された上記と
同じ方法に従った。ペプチドDPII-22.14(配列番号32)、DPI-23.31(配列番号2
9)、DPI-26.6(配列番号30)およびDPII-25.15(配列番号33)をすべて図1に
示すが、これらは本発明の新規な修飾されたペプチドである。
本発明の独特なペプチドが満たさなければならない第三の基準は、pH6−pH8の
生理的に許容できるpH範囲での安定性、特に溶液安定性である。ペプチドは製造
または保存の条件下で、そしてもし必要ならば再構成の条件下で安定でなければ
ならない。安定性試験は、最終的な投与形態で製剤の完全性、品質および純度が
保護される時間を決定する。安定性試験は、実施例3に考察したような溶解性の
実験と同時に行うことができる。本発明の各々の候補ペプチドを含んでなる等濃
度組成物は、溶液中、
pH6−8のpH範囲の通常の“ウィンド”内で、およその室温および5℃で少なくと
も24時間、安定であった(例えば有意な分解が無い)(図6を参照にされたい)
。
したがって、候補ペプチドDPI-21.2(配列番号27)、DFI-22.2(配列番号28
)、DPI-23.31(配列番号29)、DPI-26.6(配列番号30)、DPII-20.9(配列番号3
1)、DPII-22.14(配列番号32)、DPII-25.15(配列番号33)は、上記に概説し
た必要とされる3つの“独特”な特性のそれぞれを有し、このペプチドの組み合
わせが、家ダニアレルゲンに対するアレルギーを治療するために、ヒトに投与す
るための至適化された治療用製剤として配合するのに適することを示す。
本発明の高度に精製されたペプチドは、標準的方法を使用して化学合成により
合成的に生成できる。市販されているペプチド合成機で、全または半自動化され
た固相合成のような、様々なペプチドの化学合成法が当該技術分野で知られてい
る。次に合成的に生成したペプチドは均一に精製され(すなわち、少なくとも90
%、より好ましくは少なくとも95%、そしてさらに一層好ましくは少なくとも97
%純度)、すべての他のポリペプチドおよび混入物は、タンパク質精製に関して
文献で知られている任意の多くの方法を使用して除去される。
本発明の高度に精製された均一なペプチドを生成するための1つの方法に従い
、合成的化学手段により生成したペプチド(ポリマー支持体に連結された“固相
合成”、または従来の均一化学反応の“溶液合成”のいずれか)は、調製用逆相
クロマトグラフィーにより精製できる。この方法では、合成で生成した“粗”状
態のペプチドを、適当な溶媒(典型的には水性緩衝液)に溶解し、そして分離カ
ラム(典型的には逆相シリ
カを基本とした媒体、さらにポリマーまたは炭素を基本とした媒体も使用できる
)に添加する。ペプチドをカラムから、水性緩衝液(典型的にはTFA、リン酸
トリエチルアミン、酢酸塩または同様の緩衝液)中の有機成分(典型的にはアセ
トニトリルまたはメタノール)の濃度を増加させることにより溶出する。溶出液
の画分を集め、そして適当な分析法(典型的には逆相HPLCまたはCZEクロ
マトグラフィー)により分析する。必要な均一性を有する画分をプールする。存
在する対イオンは、次に選択した塩の中でのさらなる逆相クロマトグラフィーま
たはイオン交換樹脂により変えることができる。このペプチドを次にその酢酸塩
または他の適当な塩として単離できる。ペプチドを次に濾過し、そして水を除去
(典型的には凍結乾燥による)して、少なくとも90%、より好ましくは少なくと
も95%、そしてさらに一層好ましくは少なくとも97%の必要とするペプチド成分
を含む均一なペプチド組成物を得る。場合によっては、上記の逆相HPLCと組
み合わせて、精製はアフィニティークロマトグラフィー、イオン交換、サイズ排
除、向流または通常の相分離システムにより、あるいはこれらの方法を組み合わ
せることにより行うことができる。ペプチドはさらに限外濾過、ロータリーエバ
ポレーション、沈殿、透析または他の同様な方法により濃縮できる。
高度に精製された均一なペプチド組成物は、次に以下の任意の方法により、ま
たはその組み合わせにより特性を決定することができる:a)ペプチドの同一性
を確認するために分子量を測定するためのマススペクトロメトリー;b)アミノ
酸組成を介して、ペプチドの同一性を確認するためのアミノ酸分析:c)アミノ
酸残基の定めた配列を確認するためのアミノ酸シークエンシング(自動化タンパ
ク質シークエンサーまたは
手動を使用する);d)ペプチドの同一性および純度を検査するために使用する
HPLC(所望により多くのシステム)(すなわち、ペプチドの不純物を同定す
る);e)ペプチド組成物の水濃度を測定するための水含量;f)ペプチド組成
物中の塩の存在を測定するためのイオン含量;およびg)残存有機試薬、出発物
質、および/または有機混入物を検査するための残存有機物質。
本発明のペプチドは、そのようなペプチドをコードする核酸配列で形質転換し
た宿主細胞中で、組換えDNA法により生産することもできる。組換え法により
生産した時、所望のペプチドをコードする核酸で形質転換した宿主細胞を、細胞
に適する培地中で培養し、そして単離したペプチドを細胞培養培地、宿主細胞ま
たはその両方から、イオン交換クロマトグラフィー、限外濾過、電気泳動または
所望のペプチドに特異的な抗体を用いた免疫精製法を含むペプチドおよびタンパ
ク質の精製について当該技術分野で周知の方法を使用して精製できる。組換え的
に生産したペプチドを使用するためには、合成的に生成したペプチド用に上記に
記載した方法に従い単離、そして均一に精製でき、細胞性物質、他のポリペプチ
ドまたは培地を含まない。
特定の限られた状況において、本発明のペプチドは、化学的消化または酵素的
開裂の部位がすでに決定され、そして生じる消化に再現性がある、高度に精製さ
れた完全長の、または天然のタンパク質の化学的または酵素的開裂により生成す
ることもできる。定めたアミノ酸配列を有するペプチドは、合成的または組換え
的に生成したペプチドを高度に精製し、そして単離するために上記に記載した任
意の方法により、酵素的または化学的消化で存在する他のポリペプチドまたは混
入物が無い状態に
高度に精製でき、そして単離できる。
また本発明は、本発明の独特なペプチドを含んで成る治療用組成物およびマル
チペプチド治療用組成物を意図する。本発明の治療用組成物は、ヒトおよび他の
哺乳類の家ダニアレルゲンに対するアレルギーを治療するために、1回分の処方
として同時に、または連続的に投与できる1つ以上の本発明の独特なペプチドを
含んで成ることができる。そのような治療的処方は、本発明の1つ以上のペプチ
ドの物理的混合物である必要は無いが、最大の治療効果を達成するために、その
ようなペプチドの組み合わせを同時に、または連続して1回分の治療として含ん
で成り、独特のペプチド、DPI-21.2(配列番号27)、DFI-22.2(配列番号28)、
DPI-23.31(配列番号29)、DPI-26.6(配列番号30)、DPII-20.9(配列番号31)
、DPII-22.14(配列番号32)およびDPII-25.15(配列番号33)の組み合わせを提
供する(例えば生理的に許容できるpH範囲で、溶解性および安定性を提供し、
ならびに家ダニに対するアレルギー患者群において、グループI家ダニタンパク
質アレルゲンの総T細胞反応性の38-67%のT細胞反応性範囲を有し、そして試
験した少なくとも1つのDerpIペプチドについて91%の応答頻度を有し、同様に
家ダニに対するアレルギー患者群において、グループII家ダニタンパク質アレル
ゲンの総T細胞応答の37-51%のT細胞反応性範囲を有し、そして試験した少な
くとも1つのDerpIIペプチドについて63%の応答頻度を有する)。
本発明の治療用組成物は、1つ以上のペプチドDPI-21.2(配列番号27)、DFI-
22.2(配列番号28)、DPI-23.31(配列番号29)、DPI-26.6(配列番号30)、DPI
I-20.9(配列番号31)、DPII-22.14(配列番号32)およびDPII-25.15(配列番号
33)を含んで成り、そしてまた1つ
の組成物中に存在する1つのペプチドまたは複数のペプチドと適合性がある賦形
剤のような1つ以上の医薬的に許容できるキャリアーも含んで成る。組成物がマ
ルチペプチド組成物の時、医薬的に許容できるキャリアーはマルチペプチド組成
物中のすべてのペプチドと適合性がなければならない。好適な賦形剤は、制限す
る訳ではないが、滅菌水、リン酸ナトリウム、マンニトール、あるいはリン酸ナ
トリウムおよびマンニトールの両方、あるいはこれらの任意の組み合わせを含む
。他の適当な賦形剤は制限する訳ではないが、ソルビトール、スクロース、デキ
ストロース、ラクトースデキストランおよびPVPがある。さらに、マルチペプ
チド組成物中のペプチドの二量体化の可能性から、二量体化を防ぐためにEDTAの
ような薬剤を含んでもよい。あるいは二量体化を防ぐために、当該技術分野で周
知な物質または方法を使用してもよい。さらに医薬的に許容できる対イオンを、
マルチペプチド組成物の調製中に加えてもよい。医薬的に許容できる対イオンに
は酢酸塩、HClおよびクエン酸塩がある。
本発明の治療用組成物は、製造、保存、輸送および使用条件下で滅菌、安定な
状態であるべきであり、そして細菌および真菌のような微生物の混入作用に対し
て保護されるべきである。組成物の完全性を維持するために(すなわち、混入、
長期保存を防ぐ)、本発明の治療用組成物を製造するための好適な手段は、ペプ
チドおよび医薬的に許容できるキャリアー(1つまたは複数)を、組成物が使用
直前に滅菌水のような医薬的に許容できるキャリアー中で再構成される凍結乾燥
粉末状態となるような配合物に調製することである。滅菌注射溶液の調製のため
の滅菌粉末の場合には、調製の好適な方法は真空乾燥、凍結−乾燥またはスピン
乾
燥であり、これらは活性成分にさらなる所望の成分を加えて、すでに滅菌濾過し
たその溶液状態から粉末にする。
好適なマルチペプチド組成物は、独特なペプチド、DPI-21.2(配列番号27)、
DFI-22.2(配列番号28)、DPI-23.31(配列番号29)、DPI-26.6(配列番号30)
、DPII-22.14(配列番号32)およびDPII-25.15(配列番号33)ならびにリン酸ナ
トリウムおよびマンニトールを含んで成り、場合によってはさらにDPII-20.9(配
列番号31)を含んで成るものでよい。この態様のために、EDTAが組成物中に加
えられる。酢酸塩のような適当な対イオンも組成物の調製中に加えることができ
る。組成物は好ましくは生理的に許容できるキャリアー(滅菌水のような)中で
、使用前に再構成される凍結乾燥粉末状態に調製される。制限するわけではない
が、本発明の幾つかの好適なマルチペプチド組成物の例を以下に記載する。独特
な家ダニタンパク質アレルゲンペプチドは、製造中に適当な対イオンと混合され
て、以下の滅菌状態の、パイロジェンを含まない、そして好ましくは所望の組成
物の凍結粉末を含むバイアルが作成される:
活性:DerpI、DerfIおよびDerpIIペプチド、DPI-21.2(配列番号27)、
DFI-22.2(配列番号28)、DPI-23.31(配列番号29)、DPI-26.6
(配列番号30)、DPII-22.14(配列番号32)およびDPII-25.15
(配列番号33)
ペプチドあたり0.75mg濃度
不活性:0.05M リン酸ナトリウム、U.S.P.
5% 重量/容量 マンニトール、U.S.P.
0.1mg/ml EDTA 二ナトリウム二水和物、U.S.P.
最終pH7.2-7.4
希釈剤:注射用滅菌水、U.S.P.
随時 :0.75mgのDPII-20.9(配列番号31)を活性成分に加えてもよい。
1回分の処方として同時に、または連続的に投与するに適し、2つの別個の滅
菌された、パイロジェンを含まないバイアルに凍結乾燥粉末状態で含まれるマル
チペプチド組成物の好適な組合わせは、以下の配合物を含む:
バイアル#1
活性:DerpI、DerfIおよびDerpIIペプチド、DFI-22.2(配列番号28)
、DPI-23.31(配列番号29)およびDPII-22.14(配列番号32)
ペプチドあたり0.75mg濃度
不活性:0.05M リン酸ナトリウム、U.S.P.
5% 重量/容量 マンニトール、U.S.P.
0.1mg/ml EDTA 二ナトリウム二水和物、.
最終pH7.0
希釈剤:注射用滅菌水、U.S.P.
バイアル#2
活性:DerpIおよびDerpIIペプチド、DPI-21.2(配列番号27)、
DPI-26.6(配列番号30)、DPII-20.9(配列番号31)、
DPII-25.15(配列番号33)
ペプチドあたり0.75mg濃度
不活性:0.05M リン酸ナトリウム、U.S.P.
5% 重量/容量 マンニトール、U.S.P.
0.1mg/ml EDTA 二ナトリウム二水和物、U.S.P..
最終pH6.2
希釈剤:注射用滅菌水、U.S.P.
本発明のマルチペプチド組成物は、使用説明書を含むキットの状態で提供され
ることもできる。
上記の治療用組成物およびマルチペプチド組成物を個体に、好ましくは非-免
疫原性の状態で投与することは、個体の家ダニアレルゲンに特異的な免疫反応の
下方調節を引き起こすために有効な投与量および投与期間(すなわち、個体の家
ダニタンパク質アレルゲンにより引き起こされるアレルギー症状を減少する)で
、周知の方法を使用して行うことができる。ヒトの家ダニアレルゲンに応答する
アレルギー性免疫反応の下方調節は、可能であればいつでも(例えば、Varneyら
、British Medical Journal,302:265-269(1990)を参照にされたい)、あるいは患
者毎に(すなわち、患者が家ダニアレルゲンにより起こるアレルギー症状のいく
つか、またはすべてが軽減したと感じる時)に、臨床的に測定できる。
本発明の独特な各ペプチドの独特の特徴の1つは、各ペプチドが“超溶解性”
を有することである。したがって、本発明の組成物およびマルチペプチド組成物
は、注射(例えば静脈または皮下)による投与に特に適する。しかし、至適化さ
れた本発明組成物およびマルチペプチド組成物は、活性薬剤成分の溶解性が望ま
しいか、または許容できる任意の便利な様式で、例えば注射(皮下、静脈等)、
経口投与、舌下、吸入、経皮投与、直腸投与、または可溶性治療剤用に当該技術
分野で周知の任意の他の投与経路により投与できる。本発明の1つ以上の治療用
組成物の治療的に有効な量を同時に、または連続して、個体に1回分の処方とし
て投与することが好ましいかもしれない。1回分の処方として同時または連続的
に投与するためのそのような各組成物は、本発明の独特なペプ
チド単独で成るか、あるいは本発明に従い、至適化されたマルチペプチド組成物
を含んで成るものでもよい。
本発明の1つ以上の治療用組成物およびマルチペプチド組成物の皮下注射につ
いては、投薬単位あたり好ましくは約1μg−3mg、そしてより好ましくは約20μ
g−1.5mg、そしてさらに一層好ましくは約50μg−750μgの各活性成分(ペプチド
)を投与できる。投与の容易さ、および投与量の均一性のためには、単位投薬形
態で非経口組成物を配合することが特に有利である。本明細書で使用する単位投
薬形態とは、治療するヒト患者に単位投与量として適する物理的に分割された単
位を言い;各単位は所望のキャリアーと共に所望の治療効果を生成するために計
算された、予め定めた量の活性化合物を含む。本発明の新規な単位投薬形態の仕
様は、(a)活性化合物の独特な特性および達成すべき特定の治療効果、ならび
に(b)ヒト患者の治療用にそのような活性化合物を化合する技術に固有の制限
に支配され、そして直接的に依存する。
本発明の組成物を非経口投与以外の様式で投与するために(すなわち、経口投
与による)、組成物の不活性化を防ぎ、または吸収および生物利用性を増大させ
るための物質で組成物を被覆するか、あるいはその物質とともに投与する必要が
あるかもしれない。例えば、ペプチド組成物は酵素阻害剤と共に、またはリポソ
ーム中で投与できる。酵素阻害剤には、膵臓トリプシンインヒビター、ジイソプ
ロピルフルオロホスフェート(DEP)およびトラシロールがある。リポソームには
水中油中水CGF乳剤および従来のリポソーム(Strejanら、(1984)J.Neuroimmunol.
,7:27)を含む。ペプチドが適当に保護される時、ペプチドは例えば不活性希釈剤
または同化できる可食性キャリアーと一緒に経口的に投与できる。このペプチ
ドおよび他の成分は、硬質または軟質殻ゼラチンカプセルに封入するか、錠剤に
圧縮するか、あるいは個体の食事に直接的に含ませることもできる。経口治療投
与には、活性化合物は賦形剤と一緒に包含され、そして消化性錠剤、バッカル錠
、トローチ、カプセル、エリクシル、溶剤、ゲル、懸濁剤、シロップ、カシュ剤
等の形態で使用できる。そのような組成物および調製物は、少なくとも1重量%
の活性化合物を含むべきである。組成物および調製物の割合は、もちろん可変で
あってよいが、そして都合よくは単位重量の約5-80%の間であることができる。
そのような治療に有用な組成物中の活性化合物の量は、適切な投与量が得られる
ようなものである。さらに、活性化合物を徐放性または制御放出(一定の、また
は搏動性の放出)調製物または組成物中に包含することができる。
本発明の至適化された薬剤組成物の有効量は、抗原に対する個体の感受性の程
度、年齢、性別および個体の体重、ならびにペプチドの個体中での抗原特異的免
疫反応の下方調節能力、のような因子に従い変化するだろう。投与量の処方は、
最適な治療応答を提供するために調整できる。例えば、幾つかに分けた投与量を
日、週、月または年にわたって投与してもよく、あるいは投与量は治療状況の緊
急性に示されるように、各々の後の注射を比例的に増加または減少することがで
きる。1つの好適な治療的処方では、治療用組成物の皮下注射は、1週間に1回、
3-6週間与えられる。この投与量で各注射を一定にするか、あるいは後の各注射
を増加または減少することもできる。追加注射は最初の処置後、約3ケ月から約
1年の間隔で投与でき、そして1回の注射だけでよいか、あるいは初期の処置と
同様に別に数回の注射が必要かもしれない。
本発明をさらに以下の実施例により説明するが、これらは制限を意図
するものではない。
実施例1
総家ダニグループIT細胞反応性のパーセントおよび独特なDerpIおよびDerfI
ペプチドの組み合わせの患者適用範囲の決定重複ペプチドの合成
DerpIを、17組の重複ペプチド組に分割した。重複ペプチドおよびDerpIおよ
びDerfIの独特のペプチド(すなわち、DPI-21.2(配列番号27)、DFI-22.2(配
列番号28)、DPI-23.31(配列番号29)、DPI-26.6(配列番号30))を、標準的
なFmoc/tBoc合成化学を使用して合成し、そして逆相HPLCにより精製した。図1
はこれらの実験に使用した独特なDerpIおよびDerfIペプチドを表し、そして図
2は重複DerpIペプチドを示す。ペプチド名は実験を通して一貫している。グループI重複ペプチドおよび独特なペプチドに対するT細胞応答
末梢血単核細胞(PBMC)は、季節的なダニアレルギーの臨床的症状を示し、そし
て家ダニに対する皮膚試験が陽性を表すスギ花粉−アレルギー患者から、60mlの
ヘパリン処理血液をFicoll-Hypaque遠心することにより精製した。
各患者からの107 PBMCを、5mlのPRMI-1640(5%のプールしたヒトAB血清を
含有し、そしてグルタミン、ペニシリン、ストレプトマイシンおよびHEPES緩衝
液を補充)中で、20μg/mlの精製された天然のDerpI/mlの存在下で、37℃で6日
間培養した。生細胞を、Ficoll-Hypaque遠心により精製し、そして5単位の組換
えヒトIL-2/mlおよび5単位の組換えヒトIL-4/mlを含むRPMI-1640/5%AB血清中
で、さらに2−3週間培養した。精製した天然のDerpI、重複ペプチドおよび独
特なペプチドに対す
るT細胞応答を評価するために、二代目の増殖アッセイで休止T細胞を試験した
。アッセイのために2×104の休止T細胞を、抗原提示細胞として2×104の自己エ
プスタイン-バールウイルス-形質転換B細胞(20,000Rads)の存在下、または5×
104PBMC(3500Rads)の存在下で、様々な濃度の精製された天然のDerpIまたは合成
のDerpI独特ペプチドまたは重複ペプチドと共に、200μlのRPMI-1640/5%AB血
清中で、3日間、37℃で培養した。各ウェルは次に1μCiのトリチウム化チミジ
ンを16時間受容した。取り込まれたカウントをガラスファイバーフィルター上に
集め、そして液体シンチレーションカウンターで処理した。アレルゲンまたはペ
プチドを含まない培地単独を陰性対照とした。結果を図3に表す。各ペプチドに
対する応答で2.0以上の最高の刺激指数を、試験した各患者について記録した。
次にデータを本明細書の初めに記載した式により分析した。
グループI候補ペプチドDPI-21.2(配列番号27)、DFI-22.2(配列番号28)、
DPI-23.31(配列番号29)、DPI-26.6(配列番号30)の組み合わせは、39名の患
者の分析に基づき、約38-67%のT細胞反応性の範囲を有し、82%の応答頻度は
、少なくとも1つの候補ペプチドに対する反応性を表し、このペプチドの組み合
わせが本発明の“独特”なペプチドの第一基準に合い、ペプチドDPI-21.2(配列
番号27)、DFI-22.2(配列番号28)、DPI-23.31(配列番号29)、DPI-26.6(配
列番号30)の組み合わせが、試験した群に実質的な割合で、DerpおよびDerfに
由来するグループIタンパク質アレルゲンの総T細胞反応性の実質的な割合を含
んで成ることを示している。
実施例2
総家ダニグループIIT細胞反応性のパーセントおよび独特なDerpI候補ペプチド
の組み合わせの患者適用範囲の決定重複ペプチドの合成
DerpIIを、9つの重複ペプチド組に分割した。重複DerIIペプチドおよびDerpI
Iの独特のペプチド(すなわち、DPII-20.9(配列番号31)、DPII-22.14(配列番号
32)およびDPII-25.15(配列番号33))を、標準的なFmoc/tBoc合成化学を使用
して合成し、そして逆相HPLCにより精製した。図1はこれらの実験に使用した独
特なDerpIIペプチドを表し、そして図2は重複DerpIIペプチドを示す。ペプチド
名は実験を通して一貫している。グループII重複ペプチドおよび独特な候補ペプチドに対するT細胞応答
30名のダニ−アレルギー患者から得た第二DerpII反応性T細胞カルチャーを、Derp
IIペプチドの重複組およびDerpII候補ペプチドに対する反応性について、実
施例1に記載したインビトロT細胞増殖アッセイで分析した。結果を第4図に示
す。各ペプチドに対する応答で2.0以上の最高の刺激指数を、試験した各患者に
ついて記録した。次にデータを本明細書の初めに記載した式により分析した。
候補ペプチドDPII-20.9(配列番号31)、DPII-22.14(配列番号32)およびDPI
I-25.15(配列番号33)の組み合わせは、30名の患者の分析に基づき、約36-51%
のT細胞反応性の範囲を有した(図4)。少なくとも1つの候補ペプチドに対する
反応性の頻度は約63%であり、このペプチドの組み合わせが本発明の“独特”な
ペプチドの第一基準に合い、DerpIIペプチドDPII-20.9(配列番号31)、DPII-22
.14(配列番号32)およびDPII-25.15(配列番号33)の組み合わせが、試験した
群に実質的
な割合で、DerIIに対する総T細胞反応性の実質的な割合を含んで成ることを示
している。
実施例3
本発明の候補ペプチドのpH-溶解性およびpH-安定性プロフィールの決定
1.緩衝液の調製
50mMのリン酸ナトリウム保存溶液:
保存溶液A:0.66g(0.05mol)のリン酸1塩基ナトリウム1水和物 U.S.P.および
50mg EDTA二ナトリウム二水和物 U.S.P.を、100mlのWFIに溶解した。溶液を0.2
ミクロンフィルターを通して濾過した。
保存溶液B:0.71g(0.05mol)のリン酸2塩基ナトリウム U.S.P.を100mlのWFI
に溶解した。溶液を0.2ミクロンフィルターを通して濾過した。
2.最初のペプチド分散
分散液A:3.0mgの各候補ペプチドDPI-21.2(配列番号27)、DFI-22.2(配列番
号28)、DPI-23.31(配列番号29)、DPI-26.6(配列番号30)、DPII-20.9(配列
番号31)、DPII-22.14(配列番号32)およびDPII-25.15(配列番号33)を別個
に計り取り、そして別々の1.5mlのエッペンドルフバイアルに600μLの保存溶液
Aと共に入れた。この組成物を5秒間撹拌してよく混合した。
分散液B:3.0mgの各ペプチドDPI-21.2(配列番号27)、DFI-22.2(配列番号2
8)、DPI-23.31(配列番号29)、DPI-26.6(配列番号30)、DPII-20.9(配列番号
31)、DPII-22.14(配列番号32)およびDPII-25.15(配列番号33)を別個に計
り取り、そして別々の1.5mlのエッペンドルフバイアルに600μLの保存溶液Bと
共に入れた。この組成物を5秒間撹拌してよく混合した。
分散液AおよびBを、よく均一にするために2分間超音波処理した。各々の分
散液から、以下の容量比に従い小容量を、表示したエッペンドルフバイアルにピ
ペットで移した:
生成した溶液/懸濁液を、暗室で22℃±2にて24時間、撹拌せずに保存した。溶
液を濾過し、そして濾液をpHおよびペプチド濃度について分析した。
濾過したペプチド溶液の濃度は、HPLC分析により測定した。この実験では、各
pHでのペプチドの溶解度を、0.2マイクロメーターの孔サイズを有する膜フィル
ターを通した後に溶液中に残るペプチド量と定義する。ペプチドの分解の程度は
、総ピーク面積にわたる総分解ピーク面積の割合から算出した。
溶解度の値に関してpH値をプロットし、そして各ペプチドについて図5に示す
。各ペプチドの溶解度を図5に示すように、ペプチドDPI-21.2(配列番号27)、
DFI-22.2(配列番号28)、DPI-23.31(配列番号29)、DPI-26.6(配列番号30)
、DPII-20.9(配列番号31)、DPII-22.14(配
列番号32)およびDPII-25.15(配列番号33)は、それぞれpH6−pH8のpH範囲のp
Hで、3mg/mlより高い溶解度を有する。
ペプチドあたり3、2および1mg/mlの等濃度混合物で、上記のように2連で準備
した各ペプチドの1組を約5℃に24時間、そしてもう1組を約22℃±2で24時間
保存した各ペプチドDPI-21.2(配列番号27)、DFI-22.2(配列番号28)、DPI-23
.31(配列番号29)、DPI-26.6(配列番号30)、DPII-20.9(配列番号31)、DPII
-22.14(配列番号32)およびDPII-25.15(配列番号33)に関するpH安定性プロフ
ィールを算出し、総分解面積ピークの割合の関数として表を作成した(図6)。図
6に示したデータを見ると分かるように、各濃度のペプチドの分解の割合は、約
5℃に24時間24時間保存したペプチドのほうが、約22℃±2で24時間保存したペ
プチドに比べて、pH6.0−pH8.0の重要なpH範囲にわたって少なかった。しかし、
いずれの温度においてもpH6−pH8のpH範囲内の通常の“ウインド”内で、すべて
のペプチドが許容できる溶液安定性を示している。
したがって、各ペプチド、DPI-21.2(配列番号27)、DFI-22.2(配列番号28)
、DPI-23.31(配列番号29)、DPI-26.6(配列番号30)、DPII-20.9(配列番号3
1)、DPII-22.14(配列番号32)およびDPII-25.15(配列番号33)は、本発明の
独特なペプチドに要求される適切な溶解性および安定性を有すると決定した。
本発明はその好適態様に関して記載してきたが、他の態様も同じ結果を達成で
きる。本発明の変更および修飾は当業者には明らかであり、そして添付の請求の
範囲内にすべてのそのような変更および均等物を包含し、本発明の真の精神およ
び範囲に従うものである。
─────────────────────────────────────────────────────
フロントページの続き
(72)発明者 シエイクド,ゼーブ
アメリカ合衆国カリフオルニア州94707バ
ークリー・シーラストリート1038
(72)発明者 フランゼン,ヘンリー・エム
アメリカ合衆国マサチユセツツ州02172ウ
オータータウン・チヤールズリバーロード
372
(72)発明者 クオ,メイ−チヤング
アメリカ合衆国マサチユセツツ州01890ウ
インチエスター・コツクスロード5