【発明の詳細な説明】
真核細胞を処理する方法
本発明は、真核細胞を処理する方法に関する。
培養中、又はin vivo で真核細胞に関する仕事をしているとき、しばしば起こ
る1つの問題は、エンドトキシンの存在である。
グラム陰性細菌の細胞壁の主要成分である、エンドトキシン(リポ多糖類、L
PS)はしばしば見出される。これは、例えば、通常の方法でプラスミドDNA
を調製すると、プラスミドDNA調製物中の異物として、E.coliの表面LPSの
40%までが遊離してくるためである。負の電荷のために、LPSは陰イオン交
換クロマトグラフィー樹脂の上でDNAと同様の挙動でふるまうが、そのミセル
構造におけるサイズのため、LPSはサイズ排除樹脂上で大きいDNA分子のよ
うにふるまう。CsCl中におけるLPSの密度は、プラスミド/臭化エチジウ
ム複合体と同じであり、これは、CsCl中のDNAが容易に汚染されることを
意味する。従って、DNAのトランスフェクションが実施されるとき、細胞はL
PSと接触する。
LPS分子は有毒で、哺乳類動物の免疫系の強力な刺激剤であるので、細胞の
処理中におけるその存在は好ましくない。このような理由により、LPSの検出
において、この分子又はグラム陰性細菌を除くか、この分子によって引き起こさ
れる有害な影響の効力を中和するための多くの試みがすでになされている(Cordl
eら、1993;Elsbach 及びWeiss、1993;Golenbock ら、1993;Haziotら、1993a
;Lynnら、1991;Pereraら、1993;Rustici ら、1993;Tobiasら、1988;Tobias
ら、1989;Ziegler-Heitbrock 及び Ulevitch、1993)。
本発明の目的は、特に、外来物質、特にDNAの細胞内への導入に関連する、
真核細胞の処理においてLPSの存在に関連する毒性の問題を克服することであ
る。
アデノウイルスに補助されるレセプターに仲介されるエンドサイトーシス(ade
novirus-aided receptor-mediated endocytosis)によってプラスミドDNA
を、初代培養ヒト皮膚繊維芽細胞又は初代培養ヒトメラノーマ細胞に導入する実
験の際、毒性の問題が生じることは確認されており、この問題の解決法を見つけ
ることが、中でもWO 93/07283 and by Wagner ら、1992;Cottenら、1992;Curi
elら、1991;Cottenら、1993;Cristiano ら、1993a;Cristianoら、1993bにお
いて行われていた。DNAを含有するLPS又は純粋なLPSを用いた実験によ
り、この問題はLPSの存在に由来していた。毒性は、100ng/mlの量の
フリーのLPSで生じ、ポリリシン/アデノウイルス複合体にLPSが混入して
いれば、100pg/mlの量で生じる。
本発明の範囲で、LPSに由来する毒性が、アデノウイルスに依存しない遺伝
子転移法(gene transfer methods)においても見つけられた。ポリリシンと関連
する毒性の可能性も除去された。
この知見をもとに、まず第一に、DNAからLPS不純物を取り除き毒性を除
去する方法が開発された。LPSを除去する、簡便かつ効果的な方法は、洗剤Tr
iton X-114を使用する。Triton X-114は20℃未満の温度で水溶液に混和し、2
0℃を超えると層が分離する(Bordier(1981))。この現象は、蛋白質溶液(Aida
と Pabst(1990))又はDNA調製液(Manthorpeら(1993))から親油性のLPS分子
を抽出するのに利用される。
LPSを分離する代替案は、LPSのリピドA/ケトデオキシオクトロン酸(k
etodeoxyoctolonic acid)成分と高い親和力で結合する環状鋳型ペプチド抗生物
質であるポリミキシンBを用いる(Ka = 1.15×107M-1;、Rustici ら、1993;Ly
nn及びGolenbock、1992;Schindler 及びOsborn(1979))。蛋白質からLPSを除
去するためにポリミキシンが用いられた。これを行うために、ポリミキシンは、
クロマトグラフィーカラムで樹脂と結合した形式で用いられる。
純粋なDNAを用いた実験は、DNA調製物からのLPSの除去が遺伝子発現
を増加させることを示す。
けれども、LPSは、DNA調製物の好ましくない付随物であるだけでなく、
中でも、通常に用いられる細胞培養培地に存在する汚染物である。血清調製物の
LPS含有量は広い範囲で変動する。もし、汚染された調製物を排除するために
特別な段階を経なければ、含有量は10〜50ng/mlとなるかもしれない。
問題は、慣例通りに使用された、細菌と接触したガラス製器具に関連しても起こ
る。全ての試薬及びガラス製容器中のLPS含有量を監視することは非常に骨の
おれることであるから、上述した問題(真核細胞の処理中LPSの存在と関連す
る問題)を解決するために、試みは始めから、特に外来物質を細胞内に導入する
ときに除去しようとする方法を見つけるようにされた。
本発明は、真核細胞を処理する方法に関し、特に、外来物質を取り込み、細胞
が、リポ多糖類と結合しそれの細胞に対する毒性を妨害する物質で処理される方
法、及び/又は細胞内に導入される外来物質が、材料が細胞内に導入される前に
LPSを除去するために精製されたものである方法に関する。
この性質を有する物質が、以下わかりやすさのために「LPS結合物質」とし
て言及される。該物質は単一の物質又は混合物として生じ得る。
本発明は、LPSの存在が方法の効率に対する消極的な影響のある毒性を引き
起こす細胞に、外来物質を取り入れる全ての方法に応用できる。中でも、薬剤、
薬剤のコンジュゲート又は毒素の細胞への導入を含有する。
好ましくは、該方法は外部DNA又はRNAを細胞内に導入するための、トラ
ンスフェクション及びインフェクション方法、例えば、組み換えウイルスを用い
る方法だけでなく、リン酸カルシウム法、マイクロインジェクション及びDEA
E法、リポソーム又は陽イオン脂質と操作する方法に適用される。受容体に仲介
されるエンドサイトーシスに基づく遺伝子転移法に関連してこの方法を用いるこ
とは特に好ましい。例えば、この方法の要約がCotten及びWagner(1993)によって
提供される。細胞のトランスフェクションの際に本発明を用いる必要性は、LP
Sの存在又は不存在下で、他の条件を同一にしてこの方法を実施し、得られた結
果を比較することによって決定される。
LPS結合物質は、十分な親和力でLPSと結合すること、及び毒性の原因と
なる細胞成分との相互作用を遮断することの両方が必要である。(これらの要求
を満足する物質と対比して、例えば、実際にLPSと高い親和力で結合するがL
PS毒性に対する細胞の反応を活性化する急性期蛋白質である、リポ多糖類結合
タンパク等のタンパクがある。そのような影響は、本発明の範囲をもって好まし
くない)。
外来物質、特に、LPSを除去するために精製されたDNAが細胞内に取り込
まれる本発明の具体例において、DNAは、ポリミキシンと、特にポリミキシン
樹脂を通したクロマトグラフィーによって処理され、又はTriton X-114等の適当
な洗剤で抽出される。
トランスフェクションの間細胞を処理するために、LPSの存在が少なくとも
飽和しており、物質自身が毒性を有さないように意図した使用に関する毒性が中
和されるような量で、LPS結合物質が用いられる。
基質の適合性及びそれの最適濃度を決定するために、トランスフェクション実
験、例えば、問題の細胞において特有のトランスフェクションが行われることを
目的として、適当に実施された。滴定によって、物質が、それ自身細胞における
有害な影響を有することのない遺伝子発現の増加を引き起こすことで適当な濃度
が見出される。トランスフェクション系に加え、細胞の形態に対するLPS結合
物質の影響が顕微鏡下で研究できる。更に、検定は、LPSに対する反応として
生じているネクローシス又はアポトーシスの測定により、細胞成分の放出の測定
に用いることができる。これらの例は、大規模に臨床上用いられる、商業上入手
可能なラクテートデヒドロゲナーゼ、又は最近記載された、カルセイン−AM及
びヨウ化プロピジウム(propidium iodide)で染色した後のエピ蛍光法である(Lor
enzoら(1994))。そのような方法を用いると、本発明の範囲内で、ポリミキシン
Bの場合、培地は、好ましくは100μg/ml未満含有すべきであり、低濃度
の限界は3μg/ml又はそれ未満である。ポリミキシンによって達成された中
性化は1μg/ml又はそれ未満の濃度で悪化する。これは、10〜100ng
のLPSを中和するのにポリミキシンが250ng必要であることに対応する。
LPSがトランスフェクション複合体に導入され、従って、LPS結合物質への
結合が絶対的に可能にならなくてもよいことは覚えておくべきである。もし、L
PSを含有するトランスフェクション複合体が細胞質に遊離するなら、LPS結
合物質によつ中和が細胞内のレベルで生じることが可能である。従って、培地中
の過剰の抗生物質は、中和を達成するために、LPS結合物質の十分な細胞内濃
度を確実にするために必要である。毒性を妨げるのに必要な最小濃度は滴定によ
って決定することができる。
本発明の1つの具体例において、LPS結合物質はポリミキシンBである。
他の具体例において、物質は、ポリミキシンBの誘導体で1つのアミノ酸にお
いてのみ異なるポリミキシンEである(Stormら、(1977)。ポリミキシンBと同様
に、それはLPSと結合することができるが、ポリミキシンBと異なり、プロテ
インキナーゼC活性を阻害する能力はない。
LPSと結合し中和することが知られている他の例は、以下に挙げられる:
HDLs及びLDLs(Levine ら、1993;Flegelら、1993;Rothら、1993)、アポリポタ
ンパクAl(Flegel ら、1993)、本発明に要求される性質を有するBPIタンパ
ク(殺菌性透過促進タンパク)又はその断片(Dentener ら、1993;Elsbach 及び
Weiss、1993)、リムラス(Limulus)タンパク(Roth 及びTobias、1993)、細胞毒
性を現象するポリミキシンの誘導体、LPSと親和力のある合成ペプチド(Rusti
ciら、1993)、LPS又はリピドAに対する抗体(Burd ら、1992)。更に、例えば
、LPSと結合する性質を有することが知られている大きい分子のLPS結合領
域を同定し、ペプチドを、任意には修飾された形で用いることにより、適当な物
質がデザインされた。また、ポリミキシンBに対する Rusticiら(1993)の提案と
同様に、LPSと結合する性質が知られている低分子の分子の構造が、LPSと
結合し無毒化するための新しい分子を調製するための最適なデザインの出発物質
として用いられた。
細胞を処理するためのLPS結合物質は、好ましいトランスフェクション培地
の部分とすることによって容易に用いられる。一般に、LPSの毒性効果は主に
トランスフェクションの間に現れるので、LPS結合物質はトランスフェクショ
ンの間のみ存在を要求される。従って、トランスフェクションの後に培地を交換
した時、この物質を加える必要はない。けれども、例えば、LPSに感受性のタ
イプの細胞では、トランスフェクション後の物質の存在は細胞の増殖に役立つ。
この場合、トランスフェクション又はインフェクション後の細胞に加える新鮮な
培地も、LPS結合物質を含有する。
本発明に基づく方法の別の具体例においては、もし必要であれば、細胞をトラ
ンスフェクション培地と処理する迄に、存在するLPSと結合し除去するLPS
結合物質と前処理させる。
細胞のLPS結合物質との処理は、例えば、LPSに非常に感受性の細胞を培
養中に、細胞に取り入れられる外来物質をもってそれらの処理をすることに関わ
りなく有利であり得る。
他の面による、本発明は、より高度な真核細胞を処理するための組成物に関す
る。
細胞培養への適用の場合には、この構成は、通常の成分に加え、1又はそれ以
上のLPS結合物質を含有する培地である。通常の成分は、細胞のための栄養素
、緩衝液成分等を含む。もし、LPS結合物質がトランスフェクション培地の成
分であるなら、これは、トランスフェクション成分、即ち、細胞内に導入される
外来物質及びそれの細胞内への転移を仲介する成分(例えば、任意に遺伝子転移
の効率を向上させる、エンドソーム溶菌的(endosomolytic)な試薬と関連する受
容体仲介遺伝子転移のための複合体だけでなく、組み換えウイルス、陽イオン脂
質、リポソーム等、中でも、WO 93/07283 に記載されたこの種の複合体)をも含
有する。この種のトランスフェクション培地を調製する際、トランスフェクショ
ン成分の前にLPS結合物質を添加することが薦められる。
本発明は、細胞培養における細胞の処理、及びin vivo 又はex vivo における
治療への用途の両方に適用される。後者の場合には、LPS結合物質を含有する
培地は薬剤として機能する。
本発明は、LPSの存在が引き起こす問題における治療への適用において有益
である。遺伝子治療の分野におけるこの一例は、遺伝子が変異している嚢胞性線
維症の患者への完全なCFTR(嚢胞性線維症トランスメンブランレギュレータ
ー)遺伝子の投与のための組み換えアデノウイルスの治療への利用である。CF
患者の肺は大量のシュードモナスLPSを含有している(シュードモナス感染は
この病気に付随する現象である)ので、鼻上皮を通して、又は喉頭注入法により
直接肺に導入されるこの方法の1つの制限は、組み換えアデノウイルスとLPS
とが結合して入ることによって引き起こされる、肺上皮への毒性を含み得ること
である。本発明の範囲内で、実験が気道の上皮細胞で行われ、ポリミキシンBが
、LPSによって起こる遺伝子発現の急落を妨げる能力があることが示された。
従って、アデノウイルスを含有する培地へのLPS結合物質の添加は、肺上皮細
胞
の治療処理における重要な改善を達成することができる。
他の例は、トランスフェクトすることが困難であると知られている内皮細胞へ
の適用である;この困難さに対する1つの可能な説明が少量のLPSに応答する
ための、これらの細胞の性質であるかもしれない(Arditi ら、1993、Haziotら、
1993b、Pugin ら、1993)。LPSに影響を及ぼされた他の細胞に対する1つの
細胞の反応としての異なる細胞性因子が分泌する間、それは、自らLPSと直接
接触するわけではない。本発明の範囲内で、膝静脈内皮細胞のトランスフェクシ
ョンは少量のLPSの汚染が毒性を生じることを示す。LPSが精製されたDN
Aを用いているので、これらの汚染は、もっぱら組織培養試薬に由来する。ポリ
ミキシンは、少量のLPSによって引き起こされる毒性でさえも中和することが
できる。
本発明は、細胞集団が少量のLPSに汚染されたとき、ex vivo における患者
細胞のトランスフェクションにおいても好都合である。このような適用の一例は
、患者から腫瘍細胞を取り出し、免疫賦活ポリペプチドをコードするDNAをex
vivo で形質転換し、ワクチン注射として患者に与えられる、癌ワクチンの製造
である。
治療への適用において、LPS結合物質は、トランスフェクション又はインフ
ェクション培地として機能する組成物成分として存在し、従って、トランスフェ
クション成分と共に細胞に適用される。それは、トランスフェクション前にトラ
ンスフェクション培地に添加されるか、トランスフェクション成分とは別に、例
えば、トランスフェクションの前に投与される、薬剤調製物の活性成分として存
在し得る。その最も単純な形態では、この種の調製物はLPS結合物質の溶液で
あり、該調製物は通常の添加剤を含有する;薬剤調製物を製造する方法は、当業
者に知られている。それらは、関連の教科書、例えば、Remington の Pharmaceu
tical Sciences(1980)に記載されている。
従って、他の面によれば、本発明は、外来物質が細胞に取り込まれた治療での
取り扱いのためのLPS結合物質を含有する医薬組成物に関する。外来物質は好
ましくは核酸であり、特に好ましくはDNAである。
他の面によると、本発明は、DNA又はRNAのトランスフェクション又はイ
ンフェクションによるヒト又は動物体の処理前及び/又は同時に、及び/又は処
理後に使用する医薬組成物を製造するためのLPS結合物質としての利用に関す
る。
これらの治療処理は、好ましくは、遺伝子転移法に加え、Cotten及びWagner,
1993の論文に要約して記載されたような遺伝子治療操作を含み、それらの方法は
、特に細胞機能を阻害するために用いられるアンチセンスRNA、リボザイム又
はDNA分子を含有する。
他の面では、本発明は、ヒト又は動物細胞に導入されたDNA(DNAはLP
Sが除去されている)を処理する方法に関する。
図面の簡単な説明
図1.ヒトメラノーマ細胞におけるIL−2を発現するDNAのエンドトキシ
ン含有量による影響
図2.初代培養ヒト繊維芽細胞のトランスフェクションの際のポリミキシンB
によるLPS毒性の減少
図3.0.03μg/ml〜30μg/mlの濃度におけるポリミキシンBの活性
様式
図4.トランスフェクションの間、及びトランスフェクション後のポリミキシ
ンBの影響
図5.ポリミキシンB存在下におけるラクテートデヒドロゲナーゼの遊離及び
トランスフェクション効率の関係
図6.プラスミドDNAの天然LPS汚染物によって引き起こされる毒性の、
ポリミキシンBを用いた遮断
図7.初代培養ヒト気道細胞におけるLPS毒性の、ポリミキシンBを用いた
遮断
図8.組織培養試薬由来のLPSによって引き起こされる、膿静脈内皮細胞に
おける毒性のポリミキシンBによる遮断
図9.ポリミキシンBを用いた、LPSによって誘導される毒性の遮断
図10.種々の遺伝子転移法を適用した場合のDNA発現に対するポリミキシン
の効果
本発明を詳述する以下の実施例においては、特に断らない限り、以下の材料及
び方法を用いた。
a)プラスミド構築物
i)pCMVL
該プラスミド構築物は、WO 93/07283 に記載されている。
ii)pGShIL-2tet
ヒトIL-2をコードする配列を含むプラスミドを得るために、pWS2ベクターを出
発材料として用いた。pHβAPr-1 ベクターをBamHI 及びEcoRI で切断した(Gunni
ngら、1987)。アガロースゲル精製によって、アンピシリン耐性遺伝子、pBR322
の複製オリジン及びSV40ポリアデニル化シグナルを有する2.5kbのフラグメン
トが得られた。この断片を、pAD-CMVI(EP-A 393 438 に記載されている)から0.
7kbPCRフラグメントとして増幅されたCMVプロモーター/エンハンサー
と連結し、EcoRI/BamHI で切断した。得られたプラスミドはpWS と呼ばれる。ヒ
トIL-2をコードするcDNAは、ヒトIL-2をコードするcDNAを含有するヒト
pIL2-50AからPCR フラグメントとして得られた(Taniguchiら、(1983)。PCRフラグ
メントを、SalI/BamHIによって開環されたpwsベクターと連結し、このように
してpWS2が得た。
CMV エンハンサー/プロモーター、IL-2をコードする配列、及びSV40−ポリA
配列を含有するIL-2カセットを、pWS2を基礎とするPCR によって得た。PCR 生成
物をEcoRI による制限酵素で処理し、プラスミドpUC19(Pharmacia)のEcoRI/SmaI
部位にクローニングした。得られたプラスミドはpGShIL-2として知られている。
SspI及びAvaIで切断されるプラスミドpBR327(Soberonら、(1980))を、テトラサ
イクリン耐性遺伝子及びβ−ラクタマーゼ遺伝子(アンピシリン耐性遺伝子)の
「上流」部分との源として用いた。EcoRI/AvaIアダプターと共に、分離されたtet
配列を、pGShIL-2のEcoRI/SspI部位にクローニングした。得られたクローンpGSh
IL-2tet/amp のIL-2カセットを配列した;次いで、amp 配列をEam1105IおよびSs
pIで切断し、プラスミドを再連結した。得られたプラスミドをpGShIL-2tet と名
付けた。
b)DNA調製
プラスミドは、先ず、細菌E.coli DH5α株中で、LB培地中、100μg/ml
のアンピシリン(pCMVL)又はテトラサイクリン(pGShIL-2tet)の存在下、培養した
。一晩培養した培養物を遠心し、下記に示す通り、DNAを調製した。Cottenら
(1993)によって記載された方法を用いて、CsCl密度勾配遠心を行った。これを行
うため、1リットルの培養物からの細菌沈殿物を、20%(w/v)ショ糖、1
0mM EDTA、50mM Tris、pH7.5(溶液1)10ml中で、氷
上で10分間インキュベートした。次いで、2.2mlのリゾチーム(溶液1に1
0mg/mlに溶解したもの)を添加し、氷上で更に10分間インキュベートし
、次いで、0.2M EDTA、pH7.5を10ml添加し、試料を氷上で10分間
インキュベートし、最後に2%(v/v)Triton X-114、60mM EDTA及び
400mM Tris、pH7.5を添加し、氷上で15分間インキュベートした
。この溶解物を30分遠心し(Sorvall SS34(17K))、上清に28.5gのCsCl及
び40μlの臭化エチジウム(10μg/ml)を添加した(最初の量は26m
l)。この材料を、Beckman VTi50 ローターを用い、49,000rpm、20℃で18
時間遠心した。二本のエチジウムを含むバンドの低い方のバンドを集め、Beckma
n VTi65ローターを用い、63,000rpm、20℃で4時間再遠心した。エチジウムを
含むバンドを再び集め、CsCl飽和イソプロパノールでピンク色が消えるまで抽出
し、TE(10mM Tris、0.1mM EDTA、pH7.4)で透析し、1/10
量の3M酢酸ナトリウム、pH5を加え、3倍量のエタノールで−20℃で沈殿
させた。得られたDNA沈殿物を、更にRNase、プロテイナーゼK、フェノ
ール/クロロホルム、及びクロロホルムで処理し、もう一度再沈殿させ、最終の
DNAペレットをTEにとり、吸光度分析により、0.05mg/mlのDNAが2
60nmで1の吸収を有するとの仮定により定量を行った。
c)LPSのDNA精製
i)Triton X-114抽出
洗剤の同質調製物を得るために、Bordier(1981)によって記載されたように、
Triton X-114(Sigma)を、0℃/30℃の温度のサイクルに3回さらした。DN
A試料からリポ多糖類の抽出は、下記に示す公知の方法(Aida 及びPabst,1990、
Manthorpe ら、1993)の変形で行った。即ち、DNA試料(10mM Tris
、0.1mM EDTA、pH7.4(TE)中、濃度0.5〜1.5mg/ml)を0.3M酢
酸ナトリウム(pH7.5)に接触させた。次いで、Triton X-114をDNA溶液1
00μl当たり3μl加え、試料をボルテックスにより力強く攪拌し、氷上で1
0分間インキュベートした。溶液を2層に分離させ、試料を30℃で5分間放置
し、予備加熱しておいたエッペンドルフチューブ中で、2,000rpmで2分間遠心し
、水層を新鮮なエッペンドルフ試験管に移した。抽出を2回以上行い、最終的に
得られた水層を0.6倍容量のイソプロパノールで室温で沈殿させ、沈殿を遠心に
よって得、80%エタノールで2回洗浄し、TEに再び溶解し定量を行った。こ
れを行うため、試料をRNase A、プロテイナーゼK、フェノール/クロロ
ホルム、及びクロロホルムで処理し、再沈殿させ、最終のDNAペレットをTE
に懸濁し、260nmの吸光度を測定し、0.05mg/mlのDNAが1の吸収を
有するとの仮定により定量を行った(この方法は、実施例で用いられるDNAの
ために用いられた)。
ii)ポリミキシンクロマトグラフィー
DNA試料の容量に対し、等量のポリミキシン樹脂スラリー(Affi-Prep-Polym
yxin,Biorad)を3倍量の0.1規定NaOHと簡単に混合し、樹脂の5倍容量のT
Eで3回洗浄した。ペレット状の樹脂を再びDNA試料(TE中、0.8〜1.2mg
/ml)と溶解し、4℃で一晩攪拌した。次いで、試料を、0.1規定NaOHで
前処理しTEで洗浄した使い捨てカラムにのせた。溶出液を集め、樹脂を別のT
Eで洗浄し、溶出液を洗浄液と混合した。この集めた試料のDNAを1/10容量の
3M酢酸ナトリウム及び2倍量のエタノールで沈殿させた。沈殿のその後の処理
及びDNAの定量は上述の通り行った(この方法は予備試験で用いた)。
d)LPSの調製
市販の大腸菌(Escherichia coli)由来のLPSを用いた(0111:B4,Sigma)。調
製物をLPSを含まない水で10mg/mlの割合で溶解し、LPSを含まない
水で系列希釈を調製する前に5分間超音波処理した(SONOREX bath,360W)。最終
の溶液は、使用前に5分間超音波処理した。
LPS検定をBioWhittaker検定を用いて行った(chromogenic Limulus assay,I
wanaga,1993)。そして、用いた試薬全てがLPSを含まないことがわかった(<0
.1 エンドトキシン単位/50 μl)。
e)アデノウイルスの調製
E4欠乏アデノウイルス5、d11014(Bridge 及び Ketner,1989)を、相補的細
胞W162(Weinberg 及びKetner,1983)中で培養した。感染細胞のペレットを20m
M HEPES、pH7.4、1mM PMSF(フッ化フェニルメチルスルフォ
ニル)2mlに、2×107細胞を懸濁し、凍結及び解凍を3回繰り返した(液
体窒素、37℃)。次いで、懸濁液を攪拌しながら等量のフレオンと混合し、3,
000rpmで10分間遠心した(Heraeus Sepatech,2705 Rotor)。水層(上層)を除
去し、フレオン層を1/5容量の20mM HEPES、pH7.4と混合し、再び遠
心した。水層を一緒にし、Beckman VTi50 遠心管に移し(15ml/遠心管)、1
5mlの1.2g/cm3のCsCl/20mM HEPES、pH7.4及び7ml
の1.45g/cm3のCsCl、20mM HEPES、pH7.4を下に積み重ねた
。試料をBeckman VTi50 ローターで49,000rpm で、20℃、40分間遠心した。
下層にある、1.34〜1.35g/cm3(屈折率により測定)の成熟したウイルス粒
子の乳白色のバンド、及び上層にあるバンド(1.31〜1.32g/cm3の未成熟粒
子)を別々に集め、VTi65ローターで、63,000rpm で平衡遠心(4時間以上)し
た。乳白色のウイルスのバンド(1.31g/cm3の未成熟又は1.34g/cm3の成
熟)を集めた。得られたウイルスのN−ヒドロキシスクシミドビオチン(Pierce)
によるビオチン化、8−メトキシプソラレン(8-methoxypsoralene)/UVAによ
る不活性化、及びHBS/40%グリセロールで平衡化したPharmacia PD10カラ
ムを用いたゲル濾過による精製は、WagnerらのWO 93/07283 及びCottenら(1992)
に記載されたように行った。ウイルス試料を、蛋白濃度(BSAを標準物質として用
いたBiorad Bradford Assay)により定量的に検出し、
1mg/mlの蛋白質=3.4×1012アデノウイルス粒子/ml(Lemayら、1980)
の式を用いて解析した。
f)トランスフェクション複合体
修飾されたアデノウイルス粒子(8μl、1×1012粒子/ml)を150μl
のHBSに溶解し、150μlのHBSに溶解した1μgのStrpL(ストレ
プトアビジンで修飾したポリリシン、WO 93/07283 に記載されている)と室温で
30分間混合した。6μgのプラスミドDNAを100μl中の増加させた量の
LPSと混合した。次いで、DNA溶液をアデノウイルス/StrpL溶液と室
温で30分間混合した。最後に、WO 93/07283に記載されているように調製した
、5μgのTfpLを含有するHBS100μlを試料に加え、周囲温度で30
分間混合した。このようにして、500μlのトランスフェクション培地が得ら
れ、1/10が、20,000の細胞を含む細胞培養プレートのそれぞれの穴に用いら
れた。
g)細胞培養
外科的除去の後、皮膚生検を、4℃で、10%FCS、2mMグルタミン及び
ゲンタマイシンを含有するDMEM中に置いた。生検を、組織細胞装置中で、無
菌の6cmのプラスチック皿の中、層流中、ピンセット及び外科用ナイフで微細
に砕いた。次いで、3mlの20%FCS、2mMグルタミン及び抗生物質を含
有するDMEMを加え、培養を37℃の孵卵器中で行った。10日後、培地を1
0%FCS含有DMEMと変えた。培地を週2回変えた。細胞培養開始4週後、
組織断片から成長した細胞をトリプシン処理し、トランスフェクションのために
新しい培養皿に移した。5〜10週経過した初代培養細胞が用いられた。繊維芽
細胞をWagnerら、1992に記載されたようにトランスフェクトを行った。
ii)ヒトメラノーマ細胞
初代培養ヒトメラノーマ細胞を分離し、100IU/mlのペニシリン、10
0μg/mlのストレプトマイシン、2mMのL−グルタミン、1%のピルビン
酸ナトリウム及び10%の加熱非活性化したFCSを補ったRPMI
1640培地(Giboco/BRL)で培養した。
iii)ヒト気道上皮細胞
ヒト気道上皮細胞を、Van Scott ら(1986)に記載されたように、鼻ポリープか
ら分離した。細胞を、ヒト胎盤コラーゲン(Sigma、カタログ番号C 7521)で被覆
した細胞皿で、気管支上皮細胞成長培地(BEGM,Promocell、カタログ番号C-2106
)中、培養した。
iv)ヒト腋静脈内皮細胞
ヒト臍静脈内皮細胞(HUVECs)を細胞システム(Kirklandt,Washington)から得
、0.1%ゼラチンで被覆した細胞培養皿で培養した。
h)発現の測定
i)ルシフェラーゼ検定
細胞抽出物の調製、蛋白含有量の標準化、及びルシフェラーゼ活性の測定は、
Zenke ら、1990及びCottenら、1990及びEP 388 758に記載された通りに行った。
ii)IL-2検定
インターロイキン−2の発現を、Karasuyama及びMelcheres,1988に記載された
バイオアッセイを用いて検出した。更に、IL-2生産量を、Becton Dickinsonによ
って製造されたIL-2 ELISAキット(カタログ番号30032)を用い、製造業者の指
示に従って検出した。
実施例1
初代培養ヒトメラノーマ細胞中のIL-2発現におけるDNAのエンドトキシン含
有量による影響
初代培養ヒトメラノーマ細胞(2×105細胞/6cm培養皿)を図1に示す
データに従って、種々の方法により精製したプラスミド6μgでトランスフェク
ションを行った。精製する前のプラスミド中のエンドトキシン含有量を、暗い陰
影のバーとして図中に示した。ポリミキシン樹脂による精製又はTriton X-114に
よる抽出によって、全ての調製物は0.1EUリポ多糖類/6μgDNA未満とな
った。IL-2含有量は、細胞上清のELISAで測定した。図1に示す値は、106
細胞当たり及び24時間後を示す。
実施例2
ポリミキシンBによる初代培養ヒト繊維芽細胞のトランスフェクションにおけ
るLPS毒性の減少
まず第1に、初代培養ヒト繊維芽細胞へのアデノウイルスに補助されるレセプ
ターに仲介されるエンドサイトーシスによる遺伝子伝達の際のLPSの毒性が調
査された。DNA6μgに基づくLPS含有量を図2に示す。トランスフェクシ
ョンの24時間後、細胞を集め、ルシフェラーゼの測定を行った。DNA中のL
PS含有量が増加すると、遺伝子発現はほぼ2/10に減少した。LPSの高濃
度にさらされた、崩壊した形態は、低い発現値と一致した(図2、上表)。
次に、細胞を、ポリミキシンBの量を増加させて、同一のDNA/アデノウイ
ルス/LPS複合体にさらした(硫酸ポリミキシンB、Sigma、カタログ番号 P
4932)。ポリミキシンBは、培地中に、トランスフェクションの最中と後に、特
定の濃度存在する。即ち、トランスフェクションの3時間後に特定の濃度のポリ
ミキシンを含有する培地と交換する。典型的なポリミキシンBの抗生物質濃度は
1,000単位/mlである。7,500単位/mgの特定の活性はポリミキシ
ン133μg/ml濃度に対応する。3、10及び30μg/mlのポリミキシ
ンBの存在においては、発現の実質的な相違がないことが見出された。これは、
抗生物質が細胞によって許容されることを示す。用いた3種類の濃度では、LP
S汚染を含有するウイルス/DNA複合体で成功したトランスフェクション、1
00ng/6μgDNAに対して完全な保護(実施例2、5、8及び11)、及び
1,000ng/6μgDNAに対して実質的な保護効果(実施例3、6、9及
び12)を示す(図に示した値は、2回のトランスフェクションの平均である。
実施例3
0.03μg/ml〜30μg/ml濃度におけるポリミキシン活性の方法の分析
LPS毒性を中和するのに必要なポリミキシンの最小濃度を実施例1と同様に
滴定により決定した。100又は1000ngLPS/6μgDNAの全ての中
和が10μg/mlのポリミキシンBにより達成されることが示された。0.3〜
3μg/mlのポリミキシンBでは部分的な毒性の中和しか得られず、それより
低い濃度ではわずかな中和が得られた。トランスフェクション混合物の0.6μg
のDNAは、100又は1000ng/6μg濃度のLPSを含有するDNA複
合体が、0.25ml容量当たり10〜100ngのLPSを含有することを示す。
ポリミキシンによって起こる中和は、1μg/ml以下で悪化し始める。これは
、10〜100ngのLPSを中和するのに250ngのポリミキシンが必要で
あることに対応する。中和するための細胞内のポリミキシンの適切な濃度を完全
にするために、培地中の過剰の過剰の抗生物質が必要であると思われる。滴定の
結果を図3に示す;図に示すように、トランスフェクションの最中及び後でポリ
ミキシンBは存在する。この場合は、二重のトランスフェクションが行われた。
ルシフェラーゼ値(トランスフェクションの24時間後に測定)は、コントロー
ル試料の値に対する百分率として、それぞれのポリミキシン濃度に対して表され
た。
実施例4
トランスフェクションの最中及び後におけるポリミキシンBの影響の調査
前述した実施例においては、ポリミキシンは、トランスフェクションの最中及
び後に、ルシフェラーゼ検定のために細胞を集めるまで存在していた。予備試験
に基づき、LPSの毒性の原因である事象がアデノウイルスと共に細胞内に入る
ことであると想定されるので、ポリミキシンBの保護機能は、トランスフェクシ
ョン複合体と細胞との接触の期間の間だけ必要であるべきである。この仮定を確
認するために、初代培養繊維芽細胞を、ポリミキシン不存在下(試料1〜4)及
び存在下のトランスフェクション複合体にさらし、一方で、トランスフェクショ
ンの最中にのみこれを行い(これを行うため、トランスフェクション後、試料を
ポリミキシンBを含まない新鮮な培地と混合した;試料9〜12)、一方で、イ
ンキュベーション後にもトランスフェクション複合体にさらした(これを行うた
めに、試料を、トランスフェクション培地と等量のポリミキシンBを含有する新
鮮な培地と混合した;試料5〜8)。トランスフェクション24時間後に、ルシ
フェラーゼの発現を測定した。結果を図4に示す;トランスフェクションの最中
の30μg/mlのポリミキシンBのみの存在は、実質的にトランスフェクショ
ン後の抗生物質の連続した存在と同じ保護効果があることが見出された(図に示
す値は、2回のトランスフェクションの平均である)。
実施例5
ポリミキシンB存在下におけるラクテートデヒドロゲナーゼの遊離及びトラン
スフェクション効果の関係
実施例1で行われた試験において、LPSを含有するDNA複合体でトランス
フェクトした細胞の形態が遺伝子発現の減少を引き起こす細胞毒性と一致するこ
とが立証された。細胞内酵素ラクテートデヒドロゲナーゼ(LDH)はネクロー
シス又はアポトーシスの進行につれ、周囲の培地の放出されるので、細胞培地内
のLDH活性の測定は、細胞毒性の標識である。培地中へのLDHの放出及び節
フェラーゼ遺伝子の成功したトランスファーとの間に、培地中のLDHの増加が
ルシフェラーゼ遺伝子発現の減少と明らかに一致するという逆相関が見出された
(図5、試料1〜4)。実施例1及び2の結果と一致して、10〜30μg/ml
のポリミキシンBの存在(ポリミキシンBはトランスフェクションの最中にのみ
存在する)はLPSによって誘導される遺伝子伝達における減少を遮断した(図
5、試料5〜12)。ポリミキシンによる毒性の遮断の通り、ポリミキシンは、
LPSによって誘導されるLDHの遊離を遮断する(図5、試料5〜12)(図
中の値は、2回のトランスフェクションの平均である)。
LDH検定は、トランスフェクション後の特定の時間に細胞培養培地のアリコ
ートを取り除き(5〜50μl)、500μlのLD−L試薬(Sigma、カタログ
番号 228-10)と混合することにより行った。試料を37℃で45分間インキュベ
ートし、LD−Lのコントロールと共に340nmの吸光度を測定した。
実施例6
プラスミドDNAの天然LPSによって引き起こされる毒性のポリミキシンB
による遮断
前述した実施例において、LPSを含まないDNAに、決められた量のLPS
調製物を故意に添加して用いた。この実施例では、研究は、DNA調製物に通常
に見つけられるLPS汚染物の毒性がポリミキシンBによって遮断されるかを調
べるために行った。この目的のため、LPSを含まないルシフェラーゼプラスミ
ドを、LPSを除去する操作をしていないプラスミドDNA樹脂(Diagen)を用い
たQiagen法により得られたDNAプラスミドと混合した。従って、このDNAは
プラスミドDNA調製物に通常に見られるLPSの分子を含んでいる。用いたD
NA試料は、6μgのDNA当たり16ngのLPSを含有する;これは、トラ
ンスフェクションの際に、6.4ng/mlに相当する。図6に見られるように、
わずかのDNA転移のみが達成された(図6、試料1)が、3μg/mlのポリ
ミキシンBをトランスフェクションの間に存在させると、ほとんど10倍の増加
が見られた(図6、試料2)。抗生物質の高い濃度では、更なる向上は見られな
かった。3μg/mlのポリミキシンは、トランスフェクションの際に得られる
LPS濃度の約500倍過剰の量である(図に示す値は、2回のトランスフェク
ションの平均である)。
実施例7
ポリミキシンBを用いた、初代培養ヒト気道上皮細胞におけるLPS毒性の遮
断
初代培養ヒト気道上皮細胞を、前述の実施例で記載されたように、一方ではポ
リミキシンBを含まず、一方では10μg/mlのポリミキシンBを含むLPS
を含有するトランスフェクション複合体と、トランスフェクションの間処理した
。トランスフェクションして48時間後、細胞を集め、ルシフェラーゼ発現を測
定した。DNA複合体中のLPSの存在は、遺伝子発現を急激に急降下させるこ
とが見出された(図7、試料1〜4)。用いられたLPSの濃度によって引き起
こ
される毒性はポリミキシンBによって大いに遮断される(図7、試料5〜8)(
図に示す値は、2回のトランスフェクションの平均である)。
実施例8
膿静脈内皮細胞での、細胞培養試薬由来のLPSによって引き起こされる毒性
のポリミキシンBによる遮断
ヒト臍静脈内皮細胞を標準の方法を用いてトランスフェクションした。これら
の細胞は複合体中のLPSの存在に対して感受性であることが示された(LPS
を含まない図8の試料1、LPSを10、100、及び1000ng/DNA6
μg含む、試料2、3及び4参照)。LPSを含まないDNAを用いたときでも
、トランスフェクション効率は低かった。これが、細胞培養試薬からもたらされ
る毒性によって引き起こされることを確認するため、図に示される特定量のポリ
ミキシンBをトランスフェクションの最中及び後に用いた。10μg/mlのポ
リミキシンBの存在が遺伝子発現を5〜6倍増加させることが見出された(試料
1及び5)。ポリミキシンBの高濃度は効果があまりなかった。
実施例9
LPSによって引き起こされる毒性のポリミキシンEを用いた遮断
この実施例で実施される試験は、ポリミキシンBの代わりにポリミキシンE(
コリスチン−メタンスルホネート、Sigma、カタログ番号 C 1511)を用い、それ
をトランスフェクションの最中にのみ存在させたことを除き、実施例2と同様に
行った。この実験の結果を図9に示す。ポリミキシンEは、ポリミキシンBと同
様の方法で、100ng/DNA6μgの量でLPSを遮断する能力を有するこ
とが見出された。しかしながら、ポリミキシンBと異なり、ポリミキシンEは1
000ng/DNA6μgの濃度でLPS汚染を中和することができなかった(
30μg/mlのポリミキシンE濃度(試料4〜6)における明らかな刺激は1
00μg/DNA6μgを含有する試料の刺激よりもむしろコントロール試料(
ポリミキシン30μg/ml、LPSなし)の重大な阻害を減少することができ
る)。
実施例10
異なる遺伝子転移法を用いた時のDNA発現に対するポリミキシンの効果
この実施例において実施した実験は、アデノウイルスに補助される受容体仲介
エンドサイトーシスによる遺伝子転移の際に観察される毒性がトランスフェクシ
ョン複合体成分に帰するかどうかを決定するための比較の役目を果たす。
a)組み換えアデノウイルスによる遺伝子転移
これらの実験は、アデノウイルス及びLPSの存在下に生ずる毒性がポリリシ
ンに帰するかどうかを示すことを意図したものである。この目的のため、ゲノム
β−ガラクトシダーゼ遺伝子を有する組み換えアデノウイルス(Stratford-Perri
caudetら、(1992)を遺伝子転移媒体として用いた。アデノウイルスをLPSの存
在下、細胞に適用させた(2×104/well)。24時間後、β−ガラクトシダー
ゼ発現を、アデノウイルス粒子を有する残存細胞を測定することによって検出し
た。この実験を図10に示す:β−ガラクトシダーゼ発現のLPS濃度に依存す
る減少が見られた(図10A)。培地中へのLDHの遊離の測定(実施例5)は
、細胞の死及び溶菌がβガラクトシダーゼの発現の減少によることを示す。従っ
て、毒性反応が生じるためにポリリシンが必要でないことが見出され、これは、
毒性がLPSの内面化の結果であるという、単純な説明を支持する。LPSによ
る毒性効果はポリミキシンの添加により弱められる(図10、試料5〜8)。
b)非ウイルス系の方法による遺伝子転移
次に、研究は、LPSを入れた後にアデノウイルスがシグナル伝達の役を受け
持つかどうかを明らかにするために実行された。もし、アデノウイルスと細胞と
の相互作用が毒性の役を受け持つなら、非ウイルス系の方法による細胞内へのD
NAの転移はLPSに誘導される毒性を必要としない。この目的のため、一方で
グリセロールが、一方で陽イオン性脂質が非ウイルス遺伝子転移法として用いら
れる。
i)種々の濃度のLPS(図10B、試料5〜8)の添加の結果として繊維芽細
胞のトランスフェクションの間(75μlHBS中の0.4μgのpL又はStr
pLを75μlHBS中で3μgのpCMVLucと30分間インキュベートし
、次いで、75μlHBS中の3μgのTfpL又は2μgのpLを添加し、イ
ンキュベートを更に30分間行った。複合体に培地及び13%グリセロールを添
加した後、トランスフェクション培地を細胞と4時間接触させた。)アデノウイ
ルスに補助されるレセプターに仲介されるエンドサイトーシスと同程度のルシフ
ェラーゼ発現の減少が観察された。
ii)陽イオン性脂肪酸Transfectam(DOGS;商業的に得られる調製物が標準
方法に従って用いられた。)とのトランスフェクションの間、ルシフェラーゼ活
性の減少がLPS含有量の作用として観察された(図10B、試料9〜11)。
1000ng/DNA6μgのLPSはルシフェラーゼ発現を、LPSを含まな
いDNAで得られるコントロール値の約10%減少させた。
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(51)Int.Cl.6 識別記号 庁内整理番号 FI
C12N 5/00 9051−4C A61K 37/22
(81)指定国 EP(AT,BE,CH,DE,
DK,ES,FR,GB,GR,IE,IT,LU,M
C,NL,PT,SE),CA,JP,MX,US
(72)発明者 ブッシュル ミハエル
オーストリア アー2345 ブルーン アム
ゲビルゲ ヒルトルシュトラーセ 35−
1−1
(72)発明者 ワーグナー エルンシュト
オーストリア アー2103 ランゲンツェル
スドルフ ヴィーナー シュトラーセ
201
(72)発明者 シュヴァイヒホッファー タマス
オーストリア アー1180 ウィーン アン
トン フランク ガッセ 3−9