JPH09325142A - 標識化合物が結合した被標識化合物の精製方法 - Google Patents

標識化合物が結合した被標識化合物の精製方法

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JPH09325142A
JPH09325142A JP8140428A JP14042896A JPH09325142A JP H09325142 A JPH09325142 A JP H09325142A JP 8140428 A JP8140428 A JP 8140428A JP 14042896 A JP14042896 A JP 14042896A JP H09325142 A JPH09325142 A JP H09325142A
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JP8140428A
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Tazuko Nakajima
多津子 中島
Masako Nanbu
昌子 南部
Takao Fukuoka
隆夫 福岡
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KDK Corp
Kyoto Daiichi Kagaku KK
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 標識化合物とこの標識化合物で標識され得る
被標識化合物との反応混合物から、標識化合物が結合し
た被標識化合物を、分析対象物質親和性と標識の活性を
維持したまま、高感度分析のための分析用試薬として使
用するのに十分なまで高度に精製する方法を提供する。 【解決手段】 標識化合物と、この標識化合物で標識さ
れ得る被標識化合物との反応混合物から、標識化合物が
結合した被標識化合物を精製する際に、疎水性相互作用
クロマトグラフィー(HIC)により、前記反応混合物
から標識化合物が結合した被標識化合物を、好ましくは
一定数の標識化合物が結合した被標識化合物を分離精製
する。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、標識化合物が結合
した被標識化合物の精製方法に関し、詳しくは、標識化
合物が結合した被標識化合物を高感度分析用の試薬とし
て使用するのに十分な精度にまで精製する方法に関する
ものである。
【0002】
【従来の技術】分析用試薬は、分析対象物質親和性要素
と信号発生要素の2つの要素を有するものが多い。分析
対象物質親和性要素とは、分析対象物質の捕捉や認識を
特異的に行う要素であり、信号発生要素とは、前記分析
対象物質の捕捉や認識に際して発生する電磁波、水素イ
オン濃度変化、イオン強度、あるいは温度等の摂動を、
電磁波等の信号へ変換する要素である。例えば、塩素イ
オン含有溶液に硝酸銀を添加すれば、硝酸銀は塩素イオ
ンと反応し、塩化銀の沈澱を生じるため、塩素イオンの
存在を物理化学的にあるいは視覚により認識することが
できる。
【0003】これに対し、近年注目されているイムノア
ッセイ、遺伝子分析に用いられている抗体(以下、「イ
ムノグロブリン」ということもある)、オリゴヌクレオ
チドなどのように、分析対象物質親和性要素を有してい
るが、信号発生要素を有していないか、あったとしても
乏しいものがある。これらの分析対象物質親和性要素を
分析用試薬に利用するために、放射性同位元素、色素、
蛍光物質、化学発光物質、生物発光物質、酵素、酵素の
基質、補酵素、核酸、酸、塩基、プロトン化された窒素
などのイオン性官能基、cis−trans互変異性体
などの標識化合物で標識されたものが使用される。これ
らの分析用試薬においては、標識化合物が信号発生要素
を担っている。
【0004】この様に各種分析対象物質の定量的な分析
を行うために、より強力な信号発生要素を導入すべく、
信号発生要素に乏しい分析対象物質親和性物質(以下、
「被標識化合物」という)を標識化合物で標識すること
によって、分析用試薬を製造することが広く行われてい
る。ここで、標識化合物が結合した被標識化合物が分析
用試薬として有用であるためには、分析対象物質親和性
の強さ、信号の変換効率などが十分大きく、分析対象物
質の量に応じて十分な信号強度(シグナル(Signal))が
得られることが必要であると同時に、分析対象物質が存
在しないときの信号の強度(バックグラウンド(Backgro
und))が十分に低いことが必要である。すなわち分析用
試薬の性能は、それを用いる測定系において、S/B比
(Signalto Background Ratio)として表現され、その
特性はおおむね分析用試薬の純度に依存する。
【0005】ところが、標識化合物と被標識化合物とを
混合させ、結合反応を行わせた反応液中には、標識化合
物が結合した被標識化合物の他に、出発物質である未反
応の標識化合物および未反応の被標識化合物が存在す
る。また、出発物質を溶解させる溶媒として有機溶媒が
利用されることがあり、その場合には標記反応系に有機
溶媒が存在する。さらに、通常の化学反応と同様に、結
合反応の種類によっては反応副産物が生成することがあ
る。反応副産物の例には、標識反応に伴い標識化合物か
ら脱離した分子団、溶媒と反応した標識化合物、反応中
に変性して信号の変換能力を失った変性標識化合物など
がある。さらにまた、結合反応に与る能力を失った標識
化合物や、標識反応中に変性し分析対象物質親和性を喪
失した変性被標識化合物が存在することがある。
【0006】もちろん原料である標識化合物あるいは被
標識化合物に不純物が含まれている場合もある。さらに
意図的に反応促進剤あるいは反応停止剤または反応抑止
剤を添加することがあるので、それら添加物そのもの、
反応停止剤などと反応した標識化合物、またはその変性
した化合物、または反応停止剤などと反応した被標識化
合物が存在する場合がある。さらには、以上の反応物、
生成物、反応副産物、変性物などが組合わさった複合体
が通常複数種存在する。
【0007】未反応標識化合物や溶媒あるいは反応停止
剤などと反応し化学結合に与らなくなった標識化合物
は、測定において信号のバックグラウンドを上昇させ
る。また未反応標識化合物や溶媒と反応し化学結合に与
らなくなった標識化合物は被標識化合物に物理吸着する
ことがあり、特に化学結合で標識反応が行われる場合に
バックグラウンドを上昇させる原因となる。変性した被
標識化合物に対するこの物理吸着はより大きなバックグ
ラウンド上昇の原因となる。変性した被標識化合物は、
分析対象物質に対する特異的な親和性が低下するために
分析対象物質と反応して得られるシグナルは小さくな
り、さらには、分析対象物質とは異なる試料中の共存物
質に偽の親和性を示すためにバックグラウンドを上昇さ
せ、その結果S/B比が悪化する。変性した標識化合物
は信号変換能が破壊されていたり、信号の変換形態が歪
み偽の信号を与えたりすることがある。また、たとえ結
合反応が進行して標識化合物が結合した被標識化合物が
回収されたとしても、変性した標識と被標識化合物の複
合体が混入すると、シグナルが低下し、バックグラウン
ドが上昇する原因となる。
【0008】従って、標識化合物と被標識化合物を反応
させて分析用試薬を製造する際に、十分なS/B比を与
える分析用試薬とするためには、製造過程で生じる上記
のような不純物を何らかの方法で除去し、標識化合物が
結合した被標識化合物の純度を高める必要があり、この
操作は一般にクリーンアップと呼ばれている。このクリ
ーンアップは、多くの場合、分子サイズの差を利用して
行われることが多い。これは、通常、標識化合物の分子
サイズが被標識化合物に比べて嵩高いと、立体障害等に
より結合反応後の被標識化合物の分析対象物質親和性が
低下するため、被標識化合物に比べて分子サイズが十分
小さな標識化合物が使用されることを利用するものであ
る。つまり、未反応標識化合物およびその分解物などの
不純物、また反応にあたって脱離基となった分子団、有
機溶媒は、分子サイズの差を利用して標識化合物が結合
した被標識化合物と分離される。
【0009】分子サイズの差を利用した精製方法とし
て、これまでに、反応液をオープンカラムゲルクロマト
グラフィーにかけ、未反応標識化合物及び有機溶媒を除
去するゲル濾過法が使用されてきた。その場合のゲル
は、例えば、セファデックス(Sephadex)Gシリーズ
(ファルマシア社製)などが用いられていた。またオー
プンカラムクロマトグラフィーの代わりにHPLC(高
速液体クロマトグラフィー)を利用してやはりゲル濾過
法が実施されていた。
【0010】一方、標識化合物が結合した被標識化合物
の分析対象物質親和性が標識反応後も維持される必要が
あるのは前述した通りである。そこで、分析対象物質そ
のものなど被標識化合物が親和性を示す化合物を充填剤
に固定化したカラムに標識反応後の反応液を通過させ、
分析対象物質親和性を有する標識化合物が結合した被標
識化合物を選択的に吸着させて回収する、アフィニティ
ークロマトグラフィーもクリーンアップの方法として用
いられている。
【0011】また、上記ゲル濾過法やアフィニティーク
ロマトグラフィーが不十分であるとして、ヒドロキシア
パタイトクロマトグラフィーを用いて酵素標識抗体を精
製しようとする試み(特開平2−2937号、特開平2
−254363号)やホローファイバー型透析チューブ
を用いる例(特開平7−155178)がある。さらに
上記方法以外にも、標識化合物と被標識化合物の両要素
の物性を利用し、硫安沈殿、透析、限外濾過、濃度勾配
遠心分離といった方法を用いて、未反応標識化合物や有
機溶媒の除去を行っている。さらに、この様なクリーン
アップの手段は組み合わせることができ、現在では、主
に分子サイズあるいは分析対象物質親和性の差を利用し
たクリーンアップ工程の適当な組み合わせによって、標
識化合物が結合した被標識化合物が回収され分析用試薬
として供される。
【0012】しかし、反応液中には、被標識化合物に物
理吸着している標識化合物が多く存在する、例えば、抗
体を化学発光物質アクリジニウムエステルで標識し精製
したとき、通常の化学結合による標識量の3%もの物理
吸着が残存している(I.Week,I.Beheshti,F.McCapra,A.
K.Campbell and J.S.Woodhead,Clin.Chem.,29(8),1474-
1479(1983))が、上記従来の方法では、これを除去する
ことはほとんどできず、バックグラウンドを高くする原
因となっている。また、分析用試薬は分析対象物質に対
し化学量論的に信号を発生する必要があるのに、反応液
中には標識数の異なる混合物(タンパク質などでは複数
の結合サイトがあるので標識数に分布が生じる)が存在
する。
【0013】分析用試薬の例ではないが、例えば、蛍光
標識タンパク質のキャピラリー電気泳動分析で同一種の
タンパク質が複数のピークを与える(B.Nickerson and
J.W.Jorgenson,J.Chromatogr.,480,157-168(1989))こ
とが知られており、これと同じ現象が分析用試薬の製造
工程でも明らかに生じている。M.M.Siegel,I.J.Holland
er,P.R.Hamann,J.P.James,L.Hinman,B.J.Smith,A.P.H.F
arnsworth,A.Phipps,D.J.King,M.Karas,A.Ingendoh and
F.Hillenkamp,Anal.Chem.,63,2470(1991)では標識数の
異なる被標識化合物が存在するのを質量分析によって示
している。この様に、反応液中に標識数の異なる被標識
化合物が存在すると、シグナルに量論性が失われ、分析
用試薬としての感度は下がる。また、標識数が異なると
被標識化合物の分析対象物質親和性が異なり、分析の信
頼性が失われる(例えば、抗体において均一な結合定数
の重要性は、J.G.Fjeld and A.Skretting,J.Immunol.Me
thods,151,97-106(1992)に説明されている)。よって微
量化高感度化する分析には適用できないが、上記従来の
方法ではこれら標識数の異なる被標識化合物の混合物か
ら所望の標識数の被標識化合物のみを分離することはで
きなかった。
【0014】この他にも標識化合物と被標識化合物とを
反応させる際に生じる不純物は上述の様に種々存在し、
これらはS/B比の低下をもたらす原因となるため高感
度の分析を行う際には必ず除去されるべきものである
が、これらの不純物についてもまた、分子サイズで分離
するゲル濾過や親和性によるアフィニティークロマトグ
ラフィーでは対応しきれなかった。
【0015】この様な標識化合物と被標識化合物とを反
応させる際に生じる不純物の除去についての問題は、あ
らゆる標識化合物が結合した被標識化合物に普遍的であ
るが、特に、被標識化合物に抗体、標識化合物に化学発
光物質を用い、抗体のアミノ基に化学反応で標識を行う
場合に問題となることが多い。
【0016】抗体は反応条件下、操作中に変性し分析対
象物質親和性を失い失活を起こしやすい。さらに、免疫
して得られた抗体の場合、目的とする抗体以外の免疫動
物由来の抗体(以下、「host−IgG」と略称す
る)が混入していることが多く、しかもこのhost−
IgGは感度低下及びロット間差の原因となるので、除
去する必要がある。しかし、これは一般的なアフィニテ
ィークロマトグラフィーであるプロテインAおよびイオ
ン交換クロマトグラフィーであるオルトジエチルアミノ
エステル(DEAE)を用いるカラムによる精製では除
くことが難しい。また、抗体の標識反応にはアミノ基が
標識用官能基として用いられるが、通常、アミノ基は抗
体の複数箇所にあるために、標識反応はそれらの部位に
確率的に起こり、その結果標識数の異なる標識抗体が多
数得られる。これは、分析用試薬としての量論性や信頼
性を考えると望ましいものではない。さらに、標識を行
うときに用いられる反応性官能基(例えばアミノ基に対
するN−ヒドロキシスクシンイミド活性エステルなど)
の分解(溶媒との副反応)を考える必要がある。
【0017】一方、化学発光物質は、もともと酸化反応
などで分解するときに信号を発生する性質を有する本来
的に不安定な分子である。標識反応中に分解するばかり
でなく分解残渣が抗体の失活の引き金やバックグラウン
ド上昇の原因となる。また、通常に標識されたとして
も、化学発光物質はその性質上疎水的であることが多い
ので、標識された抗体のコンフォメーションに微妙な影
響を与え、抗体の失活を招く場合もある。さらに、被標
識化合物の変性を誘発しやすい。
【0018】この様な化学発光物質の中で、アクリジニ
ウムエステル類(例えば、4-(2-スクシンイミジロキシ
カルボニルエチル)フェニル-10-メチルアクリジニウム-
9-カルボキシレート フルオロスルフォネートなど)
は、アクリジニウムとアクリダンの平衡、アクリジン-9
-カルボン酸フェニルエステルの加水分解、N-ヒドロキ
シスクシンイミド活性エステルの加水分解と、一分子内
に3カ所存在する反応部位において複雑な反応を生じる
不安定な標識化合物である。アクリジニウムエステル類
のこれらの平衡や分解の問題は、I.Week,I.Beheshti,F.
McCapra,A.K.Campbell and J.S.Woodhead,Clin.Chem.,2
9(8),1474-1479(1983)、P.W.Hammond,W.A.Wiese,A.Wald
rp III,N.C.Nelson and L.J.Arnold Jr,J.Biolumin.Che
milumin.,6,35-43(1991)、M.S.Kaltenbach and M.A.Arn
old,Mikrochim.Acta,108,205-219(1992)、J.S.Littig a
nd T.A.Nieman,J.Biolumin.Chemilumin.,8,25-31(1993)
で議論されている。またN−ヒドロキシスクシンイミド
活性エステルの加水分解と反応性の問題は、P.S.R.Anja
neyulu and J.V.Staros,Int.J.Peptide Protein Res.,3
0,117-124(1987)、A.Kurosky,B.T.Miller and S.L.Knoc
k,J.Chromatogr.,631,281-287(1993)で議論されてい
る。
【0019】また、上記アクリジニウムエステル類を分
析用試薬のための安定な標識化合物とするために、種々
の誘導体が合成されるなど多くの努力が費やされている
ことから、その難点がうかがい知れる(例えば、特開平
7−167862号、日本分析化学会講演要旨集,1E09,
1994 等)。この様に、アクリジニウムエステル類で標
識された抗体は、標識後の分離精製が最も困難な分析用
試薬のひとつである。例えば、従来のゲル濾過法では、
分子量150000の抗体と分子量600程度の未反応
アクリジニウムエステル類の分離は可能であるが、分子
量150600(標識数1個)、151200(標識数
2個)、151800(標識数3個)等の、分子量の近
接する物質同志の分離はできない。また、アクリジニウ
ムエステル類は上述の様に不安定であるので、標識反応
の過程で凝集や分解といった変性を起こし、さらにこう
したアクリジニウムエステル類の変性のために抗体も変
性を起こして3次元構造が変わって表面疎水性が強くな
る。その上標識数が大きいと、一方では発光量(信号)
が大きくなるが、それだけアクリジニウムエステル標識
抗体の表面疎水性が強くなる。これら変性したアクリジ
ニウムエステル類や抗体は非特異吸着を起こし、化学発
光イムノアッセイの実施時に余分な発光を生じ、バック
グラウンドを上昇させる。また、これらの変性は時間の
経過と共に進行するため、標識反応の後、迅速な精製分
離が必要となる。
【0020】以上をまとめると、各種分析対象物質につ
いて高感度な分析を行うためには、分析対象物質親和要
素を有する物質すなわち被標識化合物に、より強力な信
号発生要素を導入すべく標識化合物を結合反応させて分
析用試薬を製造するが、製造の際、反応物中に存在する
多くの不純物、例えば、未反応のあるいは分解、変性し
た標識化合物、被標識化合物、これらと正常に標識され
た被標識化合物との複合体等を効率よく除去し、さらに
標識数が一定な標識化合物で標識された被標識化合物を
単離することが必要である。アクリジニウムエステル標
識抗体でいえば、測定の再現性を上げ、非特異吸着によ
る余分な発光をできるだけ低く抑えて高感度に化学発光
イムノアッセイを実施するためには、不純物である変
性した標識抗体、分解したアクリジニウムエステル、物
理吸着したアクリジニウムエステルあるいはhost−
IgGを除去する、標識抗体のアクリジニウムエステ
ル標識数が適度であって一定なものを得るの2点が必要
である。
【0021】しかし、上記不純物の除去、および標識数
が一定な標識された被標識化合物の単離を行うには、ゲ
ル濾過、透析、限外濾過、アフィニティークロマトグラ
フィー、ヒドロキシアパタイトクロマトグラフィー等の
従来法では不十分であり、これまでに、簡便かつ有効な
分離精製手段は知られていない。
【0022】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、上記観点か
らなされたものであり、標識化合物と、分析対象物質に
対して親和性を有しかつこの標識化合物で標識され得る
被標識化合物との反応混合物から、標識化合物が結合し
た被標識化合物を、分析対象物質親和性と標識の活性を
維持したまま、高感度分析のための分析用試薬として使
用するのに十分なまで高度に精製する方法を提供するこ
とを課題とする。
【0023】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、上記課題
を解決するために、分析用試薬のモデルとして最も精製
が困難であるとされるアクリジニウムエステル標識抗体
を用いて、鋭意研究を重ねた結果、標識化合物と、分析
対象物質に対して親和性を有しかつ前記標識化合物で標
識され得る被標識化合物との反応混合物から、標識化合
物が結合した被標識化合物を精製する際に、疎水性相互
作用クロマトグラフィーを用いて精製することで、分析
対象物質親和性と標識の活性を維持したまま高感度分析
のための分析用試薬として使用するのに十分なまで高度
に、標識化合物が結合した被標識化合物を精製すること
が可能であることを見出し本発明を完成させた。
【0024】すなわち本発明は、標識化合物と、この標
識化合物で標識され得る被標識化合物との反応混合物か
ら、標識化合物が結合した被標識化合物を精製する方法
であって、標識化合物が結合した被標識化合物を、前記
反応混合物から疎水性相互作用クロマトグラフィー(以
下、「HIC」と略称する)により分離することを特徴
とする方法である。
【0025】また本発明は、上記方法において、さらに
標識数により被標識化合物を分画することを特徴とする
方法を提供する。ここで、本発明でいう疎水性相互作用
クロマトグラフィーとは、疎水性相互作用が主たる分離
メカニズムとなって分離が行われるようなクロマトグラ
フィーをいい、例えば、クロマトグラフィーに用いる基
材やリガンドによって複数の分離メカニズムが働くよう
なクロマトグラフィーであっても、その主たる分離メカ
ニズムが疎水性相互作用であれば、疎水性相互作用クロ
マトグラフィーの範疇に含まれるものとする。
【0026】本発明の精製方法が適用される標識化合物
は、被標識化合物に化学的または物理的に結合して、被
標識化合物が捕捉、認識する分析対象物質の量や性質に
応じて、電磁波や水素イオン濃度、イオン強度等の摂動
を検出可能な信号に変換する能力を有する化合物であれ
ば特に制限されるものではない。
【0027】この様な標識化合物として具体的には、色
素、蛍光物質、化学発光物質、生物発光物質、酸化剤、
還元剤、酸、塩基、酵素の基質; 色素生成反応、蛍光
物質生成反応、化学発光反応、生物発光反応、酸化還元
反応、酸塩基反応の出発物質、触媒、促進剤、阻害剤;
前記出発物質、触媒、促進剤または阻害剤を生成する
反応の出発物質、触媒、促進剤、阻害剤、等が挙げられ
る。
【0028】上記標識化合物のうち、色素、蛍光物質、
化学発光物質、生物発光物質、酸化剤、還元剤、酸、塩
基、酵素の基質については、それ自身が直接信号を与え
る標識化合物であり、本発明において好ましく用いられ
る。この様な化合物として具体的には、金コロイド、
2,4−ジニトロフルオロベンゼン、N−スクシニミジ
ル−4−ニトロフェニルアセテート、インドカルボシア
ニン、8−アニリノナフタレンスルホン酸、フルオレッ
サミン、フルオレッセインイソチオシアネート、ダンシ
ルクロリド、イソルミノール、アクリジニウムエステル
類、ルシフェリン、ヨウ素125などを挙げることがで
きる。
【0029】また、本発明に標識化合物として用いられ
る上述の色素生成反応、蛍光物質生成反応、化学発光反
応、生物発光反応、酸化還元反応、酸塩基反応の出発物
質、触媒、促進剤、阻害剤とは、それ自身が直接信号を
与えるものではないが、系に特定の化合物が添加されれ
ばこの化合物と共に上記のような各反応の何れかを起こ
し、これにより信号を与えるような化合物(出発物質)
や、信号発生要素となる化合物本来の活性または信号発
生反応の出発物質となる化合物やこれと反応する特定の
化合物等の本来の活性を促進または阻害するものであっ
て、その結果、上述の信号を与えるに到るような化合物
(触媒、促進剤、阻害剤)のことをいう。このような標
識化合物として、具体的には、上記出発物質としてペル
オキシダーゼ、アルカリホスファターゼなどの酵素、補
酵素FADなどが挙げられる。また上記触媒、促進剤、
阻害剤等の具体例として、2,4−ビス(オルトメトキ
シポリエチレン グリコール)−6−クロロ−s−トリ
アジンを挙げることができる。
【0030】さらに、本発明には上述のように、前記出
発物質、触媒、促進剤または阻害剤を生成する反応の出
発物質、触媒、促進剤、阻害剤等も標識化合物とするこ
とが可能であり、また、信号発生要素となる化合物と被
標識化合物とを架橋する分子団等であって、系に信号発
生要素が添加されて前記分子団との反応等の結果、検出
可能な信号を変換する能力を有する化合物になるような
化合物であっても、本発明においては広義の標識化合物
として取り扱う。このような分子団等として、具体的に
は、N−ヒドロキシスクシンイミドエステルなどの反応
性官能基を一分子中に二つ有するN−(6−マレイミド
カプロキシ)スクシンイミドなど二価性試薬(二官能性
試薬)、1−(4−イソチオシアノベンジル)エチルジ
アミン−N,N,N’,N’−テトラ酢酸、ビオチンと
N−ヒドロキシスクシンイミドエステルの複合体などを
挙げることができる。
【0031】この様に、様々な化合物を本発明の精製方
法が適用される標識化合物として挙げることができる
が、本発明の方法が好ましく適用される標識化合物は、
それ自身が直接信号を与える標識化合物である。この様
な標識化合物のうちでも、色素、蛍光物質、化学発光物
質、生物発光物質等が好ましく、これらのうちでもより
好ましくはアクリジニウムエステル類が挙げられる。
【0032】また、本発明の精製方法が適用される被標
識化合物であるが、上記標識化合物と化学的または物理
的に結合し得る化合物であって、かつ分析対象物質親和
性要素を有する化合物であれば特に制限されるものでは
なく、具体的には、タンパク質、ペプチド、核酸、多糖
類、複合糖質、複合脂質等を挙げることができる。
【0033】本発明において被標識化合物とは、上述の
様に、分析対象物質親和性、すなわち分析対象物質の補
足や認識を分析対象物質に対して特異的に行う能力を有
する化合物のことをいうが、分析対象物質と被標識化合
物は相補的に反応するものであり、ある状況で分析対象
物質となる化合物が別の状況下では被標識化合物として
用いられることもあり、この様な場合、前者で被標識化
合物として作用する化合物は後者では分析対象物質であ
るので、分析対象物質と被標識化合物はこれらの組み合
わせで説明することが適当であると考える。この様な考
え方においては、特異的に結合する化合物または化合物
群の組み合わせの全てが、本発明でいう分析対象物質と
被標識化合物の組み合わせに適合するといえる。
【0034】例えば、特異的に結合する化合物または化
合物群の組み合わせとして、実際に分離や分析に利用さ
れている組み合わせに、ホスト−ゲスト化合物、ビオチ
ンとアビジンなどの基質とタンパク質(例えば基質と酵
素)、イムノグロブリンGとプロテインG、イムノグロ
ブリンGとプロテインA、抗原と抗体もしくは抗体の断
片、アロステリックエフェクタと酵素、補酵素と酵素、
阻害剤と酵素、受容タンパク質(以下、「レセプター」
ということもある)とホルモン、レセプターと結合タン
パク質、シスジオール基を持つ糖とボロン酸、糖とレク
チン、複合糖質とレクチン、AT−IIIなどの血液凝
固因子とヘパリン、フィブロネクチンなどの細胞接着因
子とヘパリン、ポリ(U)ヌクレオチドやポリ(A)ヌ
クレオチド等のオリゴヌクレオチドとその相補体、オリ
ゴヌクレオチドとmRNA結合タンパク質等の組み合わ
せが挙げられるが、これらの組み合わせにおいてどちら
か一方を分析対象物質、他方を被標識化合物として、ま
た、これらの組み合わせにおいても、上述の様に場合に
よっては、分析対象物質と被標識化合物を入れ替えて、
本発明に好ましく用いることができる。もちろん、上記
以外の特異的に結合する化合物または化合物群の組み合
わせについて、同様にどちらか一方を分析対象物質、他
方を被標識化合物として本発明に用いることも可能であ
る。
【0035】これらの被標識化合物のうちでも、本発明
の精製方法が好ましく適用される被標識化合物として
は、アビジン、レクチン、イムノグロブリンもしくはそ
の断片、酵素もしくはその断片、レセプター、ホルモ
ン、オリゴヌクレオチド、mRNA結合タンパク質等を
挙げることができる。さらに、これらのうちでもイムノ
グロブリン(抗体)またはその断片であることがより好
ましい。
【0036】また、本発明の精製方法を適用することが
可能な上記標識化合物と被標識化合物の組み合わせとし
て、標識化合物と被標識化合物が結合したときに、被標
識化合物本来の持つ表面疎水性(表面疎水性の概念は、
例えば、矢野浩二,若山昭大,久保井亮一&駒沢勲,分析
化学,42,673(1993)に記述されている)が変化する組み
合わせを挙げることができる。この様な本発明の精製方
法を適用することが可能な標識化合物が結合した被標識
化合物すなわち標識化合物で標識された被標識化合物の
例を具体的に述べると、以下のような従来の標識化合物
と被標識化合物の組み合わせを挙げることが可能であ
る。なお、カッコ内には、各標識化合物で標識された被
標識化合物の製法等が記載された文献名を示す。
【0037】金コロイドで標識されたプロテインA(J.
Roth,M.Bendayan and L.Orci,J.Histochem.Cytochem.,2
6,1074(1978))、酵素で標識されたアビジン("Pierce
Catalog & Handbook Life Science & Analytical Resea
rch Products",Pierce,1994)、酵素で標識されたビオ
チン("Pierce Catalog & Handbook Life Science &Ana
lytical Research Products",Pierce,1994)、ビオチン
で標識されたペプチド(P.M.Fisher and M.E.H.Howden,
J.Immunoassay,11(3),311(1990))、酵素で標識された
レクチン(J.P.McCoy,J.Varani and I.J.Goldstein,Ana
l.Biochem.,130,437(1983))、金コロイドで標識された
レクチン(J.Roth and M.Wagner,J.Histochem.Cytoche
m.,25,1181(1977))、蛍光色素で標識されたレクチン
(U.R.Rao,et al.,Int.J.Parasito.,20,1099-1103(199
0))、放射性同位元素で標識された抗体(S.A.Berson a
nd R.S.Yalow,J.Clin.Invest.,38,1996(1959))、酵素
で標識された抗体(P.K.Nakane and G.B.Pierce,Jr,J.H
istochem.Cytochem.,14,929(1966))、酵素反応を阻害
あるいは促進する物質で標識された抗原(T.T.Nago and
H.M.Lenhoff,FEBS Lett.,116,285(1980))、基質が当
量以上に反応する酵素サイクリングに寄与する酵素で標
識された抗体あるいは抗原(A.Johannson,et al.,J.Imm
unol.Methods,87,7(1986))、ビオチン及び色素で標識
されたハプテン(T.Kohno and E.Ishikawa,Biochem.Bio
phys.Res.Commun.,147,644(1987))、化学発光物質で標
識された抗体(I.Weeks,I.Beheshti,F.MaCapra,A.K.Cam
pbell and J.S.Woodhead,Clin.Chem.,29(8),1474(198
3))、フェリチンで標識された抗体(S.J.Singer,Natur
e,183,1523(1959))、金コロイドで標識された抗体(E.
L.Romano,C.Stolinski and N.C.Hughes-Jones,Immunoch
emistry,11,521(1974))、ビオチンで標識された抗
体("Pierce Catalog & Handbook Life Science & Anal
ytical Research Products",Pierce,1994)、ビオチン
で標識された核酸("Pierce Catalog & Handbook Life
Science & Analytical Research Products",Pierce,199
4)、蛍光色素で標識されたオリゴヌクレオチド(L.M.S
mith,J.Z.Sanders,R.J.Kaiser,P.Hughes,C.Dodd,C.R.Co
nnell,C.Heiner,S.B.Kent and L.E.Hood,Nature,321,67
4(1986))、希土類イオンとキレート生成する化合物で
標識されたオリゴヌクレオチド(A.Chan,E.P.Diamandis
and M.Krajden,Anal.Chem.,65,158(1993))、化学発光
物質で標識された核酸(M.Goto,S.Oka,K.Okuzumi,S.Kim
ura and K.Shimada,J.Clin.Microbiol.,29,2473(199
1))、酵素基質でもある化学発光物質で標識されたオリ
ゴヌクレオチド(R.Tizard,R.L.Cate,K.L.Ramachandra
n,M.Wysk,J.C.Voyta,O.J.Murphy and I.Bronstein,Pro
c.Natl.Acad.Sci.USA,87,4514(1990))、スズの安定同
位体を含む化合物で標識されたオリゴヌクレオチド(K.
B.Jacobson and H.F.Arlinghaus,Anal.Chem.,64,315A(1
992))、オリゴヌクレオチドで標識された抗体(T.San
o,C.L.Smithand C.R.Cantor,Science,258,120(199
2))、蛍光物質ユーロピニウムで標識されたインスリン
(Y.Hosomi,K.Shii,M.Yoshida,H.Matsuba,Y.Okada,R.Ni
shimura,A.Katsuta,K.Yokono,M.Kasuga and S.Baba,Iga
ku no Ayumi,171(2),143(1994))等々である。
【0038】ここで、上記「表面疎水性変化」が疎水性
相互作用クロマトグラフィーの溶出に有利に影響するほ
ど顕著になり、本発明の精製方法が特に有効に適用でき
るのは、標識化合物が親水性または疎水性の強い構成
要素を持ち、被標識化合物が、表面に親水性基が存在
するなど基本的に水溶性であり、かつ被標識化合物
が、分子(団)の表面という概念が成立するに足る十分
な大きさを有するときである。
【0039】この様な本発明の精製方法がより有効に作
用する様な標識化合物と被標識化合物の組み合わせの例
を以下に示せば、例えば、蛍光色素フルオレッセイン、
化学発光物質アクリジニウムエステル、ビオチンで標識
された抗体は、本来の表面疎水性よりも強い疎水性に変
化する。またヨウ素125で標識されたチロシン含有タ
ンパク質は、ヨウ素が付加することによりチロシンの水
酸基の解離性が高まり、本来の表面疎水性よりも弱い疎
水性に変化する。また、被標識化合物が変性する場合が
あり、水溶液中でのタンパク質を例にして説明すれば、
本来タンパク質の内部に折り畳まれている疎水性原子団
が、標識化合物の物理吸着や有機溶媒などの作用により
表面に出現することで変性するのである。したがって、
この場合には本来の表面疎水性よりも強い疎水性に変化
する。
【0040】この様に、疎水性相互作用クロマトグラフ
ィーの溶出に有利な標識化合物と被標識化合物の組み合
わせの具体例としては、色素、蛍光色素、化学発光物
質、生物発光物質、酵素、1−(4−イソチオシアノベ
ンジル)エチルジアミン−N,N,N’,N’−テトラ
酢酸のいずれかとアビジン、レクチン、イムノグロブリ
ンもしくはその断片、オリゴヌクレオチド、mRNA結
合タンパク質のいずれかの組み合わせを挙げることがで
きる。また、疎水性相互作用クロマトグラフィーの溶出
により有利な標識化合物と被標識化合物の組み合わせと
して、化学発光物質のひとつであるアクリジニウムエス
テル類とイムノグロブリン(抗体)もしくはその断片の
組み合わせが挙げられる。
【0041】以上に述べた被標識化合物と標識化合物と
の結合反応については、通常用いられている各々の化合
物に適した方法により行えばよい。本発明の精製方法に
おいてHICは、通常のカラムクロマトグラフィー法あ
るいは高速液体クロマトグラフィー法等で行うことがで
きる。HICに用いるカラム充填剤の化学構造は、例え
ば、ロバート.K.スコープス著, 塚田欣司訳,「新・タン
パク質精製法-理論と実際」,122頁,シュプリンガーフェ
アラーク東京(1995)に記述されている。これによれ
ば、疎水性相互作用に与るのは主としてリガンドと、リ
ガンドが化学結合したマトリックスである。
【0042】本発明の精製方法においてHICに用いる
カラム充填剤としては、その主たる成分が、エーテル
基、アリール基、短鎖長アルキル基から選ばれる少なく
とも一種のリガンドがマトリックスに化学結合した化合
物であるカラム充填剤を好ましく挙げることができる。
エーテル基として具体的には、オリゴエチレングリコー
ル、アリール基として具体的には、フェニル基、ベンジ
ル基等が挙げられる。また、短鎖長アルキル基として具
体的には、炭素数1〜10のアルキル基を、好ましくは
炭素数1〜5、より好ましくは炭素数1〜4のアルキル
基を挙げることができる。
【0043】また、上記マトリックスとして具体的に
は、デキストラン、架橋デキストラン、アガロース、架
橋アガロース、ポリアクリルアミド、ポリアクリレー
ト、ポリメタクリレート、ポリヒドロキシメタクリレー
ト、ポリビニルアルコール、セルロース、ポリスチレ
ン、ポリ酢酸ビニル等を挙げることができる。
【0044】上述の様に本発明の精製方法に用いるHI
Cのカラム充填剤としては上記リガンドとマトリックス
が化学結合したものが用いられるが、これらのうちで
も、アガロースのトリフェニルメチル、エチル又はブチ
ル誘導体、架橋アガロースのブチル又はフェニル誘導
体、ポリメタクリレートのブチル、フェニル又はオリゴ
エチレングリコール誘導体、ポリアクリレートのネオペ
ンチル又はフェニル誘導体、ポリビニルアルコールのブ
チル誘導体、ポリヒドロキシメタクリレートのフェニル
誘導体が本発明において好ましく用いられる。本発明の
精製方法においては、この様な化合物の1種又は2種以
上がHICのカラム充填剤の主成分として、他の少量成
分と共にカラムに充填されて用いられる。また、本発明
においては、通常のHICによる分離と同様に、精製さ
れる標識化合物が結合した被標識化合物についての特
性、例えば、被標識化合物の分子サイズや本来の表面疎
水性、標識化合物の充填剤への吸着の強さなどに応じ
て、カラム充填剤として用ちいる化合物の種類や粒径、
細孔径等が適宜選択される。
【0045】本発明の精製方法で用いられるHICは、
通常の方法と同様にして行うことができる。例えば、本
発明においてHICに用いる溶離液として、通常の疎水
クロマトグラフィーでよく使用される電解質の水溶液、
極性有機溶媒、界面活性剤の水溶液の単独または組み合
わせを挙げることが可能である。また溶離の方法として
もグラジエント法やイソクラティック法等の通常の方法
を挙げることができる。
【0046】この様にしてHICにより、標識化合物と
被標識化合物との反応混合物から、標識化合物が結合し
た被標識化合物を含む溶出液が分離されるが、この溶出
液から標識化合物が結合した被標識化合物を分離するに
は、標識化合物又は被標識化合物を検出し得る方法、例
えば被標識化合物がタンパク質である場合や標識化合物
が色素である場合等には紫外吸収により、標識化合物が
放射性物質を含む場合には放射線ディテクタ等を用いて
検出することにより、行うことができる。
【0047】本発明の方法によれば、標識化合物と被標
識化合物との反応混合物を上記溶離液を用いてHICに
かけるが、このとき反応混合液中の疎水性の強い化合
物、例えば、未反応の標識化合物、標識された被標識化
合物の変性した物質、疎水性の強い標識化合物が多数結
合した被標識化合物等はHICカラムに強く保持され、
ときには吸着される。標識化合物が結合した被標識化合
物はカラム充填剤には吸着されずに溶出するが、溶出液
中には上記以外の不純物、例えば、未反応の被標識化合
物、変性した標識化合物、分析用試薬として適さないほ
ど標識数が少数である標識された被標識化合物、hos
t−IgGなど被標識化合物中の夾雑物等が含まれる。
この様な不純物から標識化合物が結合した被標識化合物
を分離するには、HIC溶出液を紫外吸収や放射線ディ
テクタ等、標識化合物又は被標識化合物を検出し得る方
法でモニターし、それが検出された画分を取り出すこと
で行われる。さらに、これらの画分について、標識化合
物としての活性あるいは被標識化合物としての活性の有
無や強弱を調べることで、分析に際してより高感度に作
用する一定数の標識化合物が結合した被標識化合物の画
分が得られる。
【0048】
【発明の実施の形態】以下、本発明の実施の形態を説明
する。上述の様に、分析用試薬は分析対象物質親和性要
素と信号発生要素を有することが必須要件となり、分析
対象物質親和性要素が同時に信号発生要素となるような
化合物を分析用試薬として用いる場合を除けば、分析対
象物質親和性要素を有する化合物と信号発生要素を有す
る化合物を反応させて、分析対象物質親和性要素と信号
発生要素の両要素を有する化合物とし、これを分析用試
薬として用いている。つまり、分析対象物質に対して親
和性を有し、かつ標識化合物で標識され得る被標識化合
物と分析対象物質と被標識化合物の反応に際して信号発
生能を有する標識化合物とを反応させた反応混合物よ
り、標識化合物が結合した被標識化合物を精製して分離
しこれを分析用試薬として用いている。本発明は、被標
識化合物と標識化合物とを反応させて得られる反応混合
物より標識化合物が結合した被標識化合物を、分析用試
薬として使用するに十分なまで高度に分離精製する方法
を提供するものである。
【0049】本発明の精製方法が適用される被標識化合
物及び標識化合物については上述の通りである。また、
本発明の精製方法が適用される上記被標識化合物と標識
化合物との反応物とは、特に制限されるものではなく、
被標識化合物と標識化合物とを結合させる反応で得られ
る反応物の全てが対象となりうる。被標識化合物と標識
化合物とを結合させる反応として具体的には、共有結合
を生成する化学結合が最も一般的な結合反応として挙げ
られるが、この他の結合反応、例えば、キレート生成に
よる結合、クーロン力による結合、アフィニティーによ
る結合、物理吸着などによるものも標識化合物と被標識
化合物とを結合させる反応として挙げることができる。
【0050】この様な結合反応は、標識化合物と被標識
化合物の間で直接的に行われることもあるが、標識化合
物と被標識化合物の結合反応の前処理として、被標識化
合物をあらかじめ任意の化合物と反応させ、次行程の結
合反応を容易に行わせるようにしたり、二官能性試薬と
して知られるような架橋反応を行う化合物、(これら
は、さまざまな化学試薬として標識反応用に市販されて
いる(例えば、"PierceCatalog & Handbook Life Scien
ce & Analytical Research Products",Pierce,1994))
を添加し、標識化合物と被標識化合物とを架橋する反応
もよく利用されている。従って、これらの処理自体も標
識化合物と被標識化合物との結合反応の一部として扱う
ことが可能である。標識化合物は、このように被標識化
合物と結合し、これにより標識化合物が結合した被標識
化合物が生成される。これらの一連の処理が結合反応で
ある。
【0051】結合反応は、通常、被標識化合物と標識化
合物のそれぞれに好ましい溶媒中で両者を混合すること
で実施される。架橋反応を行う化合物を添加する場合も
あるのは前述の通りである。前処理として他の反応が用
いられる場合もあることは前述の通りである。また標識
化合物と被標識化合物とを混合した後に、溶媒の交換、
極性やpHなど溶媒の性質の変換、反応促進剤や反応停
止剤などの添加、加熱、乾燥などの処理が実施される場
合がある。このようにして一連の結合反応が実施され、
標識化合物が結合した被標識化合物が得られる。本発明
では、以上のような概念を総称して「標識化合物が結合
した被標識化合物」と呼ぶ。また、この標識化合物が結
合した被標識化合物を「(標識化合物で)標識された被
標識化合物」と呼ぶこともある。標識化合物が結合した
被標識化合物が分析用試薬として用いられる具体的な例
として、ほとんどすべてのイムノアッセイ、遺伝子分析
に用いられる分析用試薬が本発明の標識化合物が結合し
た被標識化合物の範疇に含まれるものとして挙げられ
る。
【0052】被標識化合物と標識化合物とを結合させる
反応については上述した通りであるが、得られる反応物
中には不純物、具体的には、出発物質である未反応の標
識化合物および未反応の被標識化合物、出発物質を溶解
させるために溶媒として有機溶媒を使用した場合には有
機溶媒、結合反応の種類によって生成する各種反応副産
物、例えば、標識反応に伴い標識化合物から脱離した分
子団、溶媒と反応した標識化合物、反応中に変性して信
号の変換能力を失った変性標識化合物、結合反応に与る
能力を失った標識化合物、変性し分析対象物質親和性を
喪失した変性被標識化合物、出発物質である標識化合物
あるいは被標識化合物に含まれていた不純物、反応促進
剤あるいは反応停止剤または反応抑止剤を添加した場合
には、それら添加物そのもの、添加物と反応した標識化
合物、またはその変性した化合物、または反応停止剤な
どと反応した被標識化合物、さらには、以上の反応物、
生成物、反応副産物、変性物などが組合わさった複合体
等、が多数存在する。
【0053】被標識化合物と標識化合物とを結合させる
際に生じる不純物をより具体的に、化学発光物質である
アクリジニウムエステル類で標識された抗体を例にして
説明する。抗体は反応条件下、操作中に変性し分析対象
物質親和性を失い失活を起こしやすい。さらに、免疫し
て得られた抗体の場合、host−IgG(目的とする
抗体以外の免疫動物由来の抗体)が混入していることが
多く、さらにこのhost−IgGはロット間差があ
る。また、抗体の標識反応にはアミノ基が標識用官能基
として用いられるが、通常、アミノ基は抗体の複数箇所
にあるために、標識反応はそれらの部位に確率的に起こ
り、その結果標識数の異なる標識抗体が多数得られる。
さらに、標識を行うときに用いられる反応性官能基(例
えばアミノ基に対するN−ヒドロキシスクシンイミド活
性エステルなど)の分解(溶媒との副反応)を考える必
要がある。
【0054】一方、アクリジニウムエステル類は、一分
子内に3カ所存在する反応部位において複雑な反応を生
じて信号を発生する性質を有する本来的に不安定な標識
化合物である。従って、アクリジニウムエステル類は、
標識反応中に凝集や分解といった変性を起こすばかりで
なく分解残渣が抗体の失活の引き金となる。また、通常
に標識されたとしても、アクリジニウムエステル類はそ
の性質上疎水的であるので、標識された抗体のコンフォ
メーションに微妙な影響を与え、抗体の失活を招く場合
もある。さらにアクリジニウムエステル類の変性のため
に抗体も変性を起こして3次元構造が変わって表面疎水
性が強くなり、非特異的吸着を起こしやすくなる。その
上標識数が大きいと、一方では発光量(信号)が大きく
なるが、それだけアクリジニウムエステル標識抗体の疎
水性が強くなり、非特異吸着をもたらす。この様にして
得られる、アクリジニウムエステル類により適度な標識
数をもって正常に標識された抗体以外の化合物は、全て
不純物として分析の感度低下を招く原因となり除去され
るべきものとして扱われる。
【0055】本発明の精製方法は、高感度な分析を行う
際に感度低下を招くこれら不純物を反応物より除去し、
より高純度の標識化合物が結合した被標識化合物を得る
ための精製方法であり、さらに、より高感度な分析を行
うために、標識数により標識化合物で標識された被標識
化合物を分画する精製方法である。
【0056】本発明の精製方法は、具体的には、上記標
識化合物と被標識化合物の反応物を、HIC(疎水性相
互作用クロマトグラフィー)にかけて精製することで行
われる。これは、多くの問題となる(変性を起こすよう
な)標識化合物が疎水性であることを利用したものであ
る。
【0057】膜タンパクなどの表面疎水性を特徴付け、
分離する方法としては、例えば水性二相分配やミセル導
電クロマトグラフィーがある。ところがこれらは確かに
分離回収にも用いられるが、高分子や界面活性剤の添加
されているため、さらにこれら添加物を除去する工程を
要する。そこで疎水的相互作用の強弱によって分離を行
うHICを、本発明の分析用試薬の精製に用いることに
した。
【0058】疎水性相互作用という概念は、疎水性物質
の水中で会合する傾向を表すものとして、フランクとエ
ヴァンズ(H.S.Frank and M.W.Evans,J.Chem.Phys.,13,
507(1945))、コーズマン(W.Kauzmann,Adv.Protein Ch
em.,14,1(1959))によって提案(上平恒,逢坂昭,「生体
系の水」,55頁,講談社(1989))された概念である。
【0059】疎水性のパラメーターとしては、油化学で
用いられるHLB(Hydrophile Lipophile Balance)
や、それとよく対応するとされる藤田の有機化合物概念
図(藤田穆,赤塚政美,「系統的有機定性分析(純物質
編)」,風間書房(1970)、甲田善生,「有機概念図」,三
共出版(1984))の考え方がある。有機概念図は親水性を
無機性、疎水性を有機性と呼び、それぞれを数値化して
構成原子や官能基に当てはめる。したがって無機性の数
値が小さいかあるいは有機性の数値が大きい原子団・官
能基が主な構成要素である分子が疎水性であると定義さ
れている。そのような官能基の例には、メチル基、フェ
ニル基、iso分岐炭化水素、tert分岐炭化水素が
含まれる。実際には、疎水性相互作用が働く分子には、
「炭化水素のような無極性分子はもとより、アルコール
のように分子内にヒドロキシル基のような親水基をもっ
ていても、分子の一部に炭化水素鎖のような疎水基があ
ればよい」という表現が用いられる(近藤精一,石川達
雄,阿部郁夫,「化学セミナー16吸着の科学」,129頁,
丸善(1991))。
【0060】一方、生体物質の構成要素の一つであるア
ミノ酸では、疎水性パラメータがよく調べられている
(R.F.Rekker,"The Hydrophobic Fragmental Constan
t",Elsevier(1977)、T.Sasagawa,et al.,J.Chromatog
r.,240,329(1982)、C.C.Chen,Y.Zhu.J.A.King and L.B.
Evans,Biopolymers,32,1375(1992))。定性的にはグリ
シン、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、メ
チオニン、プロリン、フェニルアラニン、トリプトファ
ンが疎水性アミノ酸として分類される(日本分析化学会
編,分析化学データブック改訂4版,丸善(1994))。また
ポリペプチド中で疎水的相互作用を担う官能基(アミノ
酸の側鎖の一部)としてメチル基、フェニル基、iso
ブチル基があり(R.Barker著,久保田尚志訳,「生体物質
の有機化学」,101頁,東京化学同人(1978))、このよう
なアミノ酸側鎖などの結果表れてくるタンパク質分子の
表面疎水性を水性二相分配の分配係数として測定してい
る例がある(矢野浩二,若山昭大,久保井亮一&駒沢勲,
分析化学,42,673(1993))。
【0061】また、タンパク質ではpHによって疎水性
が変化する。タンパク質の等電点では水溶性が失われ、
疎水性相互作用を起こしやすくなり、イオン反発も消え
吸着しやすくなる。このような疎水性である化学構造を
その構成要素に含む標識化合物が被標識化合物に結合す
ると、前述の構成要素の無機性・有機性に応じて被標識
化合物が本来持っている表面疎水性が変化するのであ
る。表面疎水性と言う概念は、例えば、矢野浩二,若山
昭大,久保井亮一&駒沢勲,分析化学,42,673(1993)に記
述されている。
【0062】疎水的な化学構造や親水的な化学構造を持
っている標識化合物を、例えば抗体分子など被標識化合
物と結合させると、当然、被標識化合物のもともと持っ
ている表面の疎水性の程度が変化し、かつその度合い
は、そのときの標識数に関係するのである。一方、結合
反応の際に標識化合物が分解すれば、標識化合物の疎水
性の程度も変化するので、被標識化合物の表面の疎水性
の程度は変化し、かつその度合いは標識化合物の分解の
有無に関係する。また、結合反応の際に被標識化合物が
変性・分解すれば、当然、被標識化合物の表面の疎水性
の程度が変化し、かつその度合いは変性の有無に関係す
る。したがって、疎水的相互作用を主たる分離メカニズ
ムとする疎水性相互作用クロマトグラフィーを用いれ
ば、溶離液などの条件設定を工夫して、標識された被標
識化合物の標識数による分画と、標識化合物・被標識化
合物の少なくともどちらか一方が変性したものの除去
が、同時に行えるのである。
【0063】本発明の精製方法に用いるHICは、通常
のカラムクロマトグラフィー法で行うことが可能であ
り、さらに高速液体クロマトグラフィー法で行うことも
可能であるが、時間を短くかつ簡便に分離を行うために
は、高速液体クロマトグラフィーを用いることが好まし
い。
【0064】HICのカラムに用いる充填剤の種類につ
いては、上述の通りであり、被標識化合物の分子サイズ
や本来の表面疎水性、および標識化合物の充填剤への吸
着の強さなどに応じて適するカラム充填剤の種類や、細
孔径、粒径を選ぶことが可能である。本発明の精製方法
においては、カラム充填剤の平均細孔径は、一般的に好
ましいとされる30〜100nmであることが好ましい
が、ノンポーラスであるカラム充填剤を用いてもよい。
また、カラム充填剤の平均粒径は分離効率と回収率に関
係し、粒径が小さければ分離効率は高く精製がよく実施
できるが回収率が劣る。粒径が大きければ回収率が高
く、溶出も速いが分離効率が劣る。この様な観点からカ
ラム充填剤の粒径については、平均粒径で2.5〜50
μmが好ましく、特に好ましくは5〜10μmであると
いえる。
【0065】本発明の方法に好ましく用いられるカラム
充填剤として上述したアガロースのトリフェニルメチ
ル、エチル又はブチル誘導体、架橋アガロースのブチル
又はフェニル誘導体、ポリメタクリレートのブチル、フ
ェニル又はオリゴエチレングリコール誘導体、ポリアク
リレートのネオペンチル又はフェニル誘導体、ポリビニ
ルアルコールのブチル誘導体、ポリヒドロキシメタクリ
レートのフェニル誘導体のほとんどがHIC用充填剤と
して、あるいはこれらが既に充填されたHIC用カラム
として市販されており、本発明の精製方法にこれらを用
いることは何ら制限されるものではない。
【0066】この様な充填剤の市販品のうち通常のカラ
ムクロマトグラフィー法で用いるHICカラム充填剤と
しては、例えば、アガロースのトリフェニルメチル誘導
体であるトリチルアガロース(Trityl-Agarose)、アガ
ロースのエチル誘導体であるエチルアガロース(Ethyl-
Agarose)、アガロースのブチル誘導体であるブチルア
ガロース(Butyl-Agarose)(以上ICN社製)、架橋
アガロースのブチル誘導体であるブチルセファロース
(Butyl-Sepharose)4B、ポリアクリレートのネオペ
ンチル誘導体であるアルキルスーパーロース(Alkyl Su
perose)、ポリアクリレートのフェニル誘導体であるフ
ェニルスーパーロース(Phenyl Superose)、架橋アガ
ロースのフェニル誘導体であるフェニルセファロースH
P(PhenylSepharose HP)(以上ファルマシア社製)等
を挙げることができる。
【0067】また、高速液体クロマトグラフィー用のH
ICカラム充填剤の市販品として、例えば、ポリメタク
リレートのブチル誘導体であるプロテインパックGブチ
ル(Protein PAK G-Butyl)、ポリメタクリレートのフ
ェニル誘導体であるプロテインパックGフェニル(Prot
ein PAK G-Phenyl)、ポリメタクリレートのオリゴエチ
レングリコール誘導体であるプロテインパックGエーテ
ル(Protein PAK G-ETHER)(以上WATERS社
製)、ポリメタクリレートのフェニル誘導体であるフェ
ニル(Phenyl)5PW、ポリメタクリレートのブチル誘
導体であるブチル(Butyl)5PW(以上東ソー社
製)、ポリビニルアルコールのブチル誘導体であるアサ
ヒパックC4P(Asahipak C4P)(島津製作所から販
売)、ポリヒドロキシメタクリレートのフェニル誘導体
であるHIC PH−815(GLサイエンス社から販
売)等を挙げることができる。
【0068】これら市販品のうち本発明の精製方法によ
く適するカラム充填剤は、高速液体クロマトグラフィー
用のHICカラム充填剤であるプロテインパックGブチ
ル、プロテインパックGフェニル、プロテインパックG
エーテル等である。
【0069】本発明の精製方法において、HICは、通
常の疎水クロマトグラフィーでよく使用される電解質の
水溶液、極性有機溶媒、界面活性剤の水溶液を単独また
は組み合わせて溶離液とし、これらを用いてグラジエン
ト(直線濃度勾配または段階的濃度勾配)法またはイソ
クラティック法で行うことが可能であるが、電解質の水
溶液、極性有機溶媒と電解質の水溶液の混合溶液を二液
のグラジエント法で用いるか、または電解質の水溶液を
イソクラティック法で用いる方法が好ましい。
【0070】疎水性相互作用クロマトグラフィーの溶離
液は、例えば、ロバート.K.スコープス著, 塚田欣司訳,
「新・タンパク質精製法-理論と実際」,157頁,シュプリ
ンガーフェアラーク東京(1995)、中川照眞,牧野圭祐
編,「ライフサイエンスのための高速液体クロマトグラ
フィー−基礎と実験−」,188頁,廣川書店(1988)に記
述されている。これによれば、以下の組成の溶離液〜
を単独または組み合わせて用いることができる。
【0071】 緩衝能を有する電解質溶液 極性有機溶媒またはの電解質溶液に前記有機溶媒
を加えた溶液 の電解質溶液にカオトロピックイオンの塩を加え
た溶液 の電解質溶液に塩析効果のあるイオンの塩を加え
た溶液 の電解質溶液に界面活性剤を加えた溶液 の電解質溶液とpHの異なる緩衝能を有する電解
質溶液 (以下、上記溶離液を〜の番号で表すこともあ
る。)
【0072】上記溶離液を単独または組み合わせて用い
て、イソクラティック法、グラジエント法により溶離す
る方法のうちでも、本発明の精製方法においては、の
イソクラティック法、→、→、→、→
または→のグラジエント法を単独または組み合わせ
て溶離させる方法が好ましく用いられる。より好ましく
は、のイソクラティック法、→のグラジエント
法、→のグラジエント法を単独または組み合わせる
溶離方法が用いられる。さらに、好ましくは、のイソ
クラティック法、→のグラジエント法、→のグ
ラジエント法をそれぞれ単独で行うか、あるいは、の
イソクラティック法または→のグラジエント法に続
いて→のグラジエント法を行う溶離方法が用いられ
る。
【0073】本発明の精製方法に好ましく用いられるH
ICの溶離方法に用いる溶離液、すなわち上記、、
の溶離液について具体的に述べれば、の緩衝能を有
する電解質溶液としては、リン酸ナトリウム、リン酸水
素二ナトリウム、リン酸二水素ナトリウム、リン酸カリ
ウム、リン酸水素二カリウム、リン酸二水素カリウム等
の緩衝剤として用いられる塩類を緩衝能を示すように選
択して、0.01mol/L〜1mol/L、好ましく
は0.05mol/L〜0.3mol/L、より好まし
くは0.1mol/L程度の濃度の水溶液としたものが
挙げられる。得られる溶離液のpHについては、5.5
〜7.5の範囲にあることが好ましい。
【0074】上記でいう極性有機溶媒としては、メタ
ノール、エタノール、2−プロパノール、アセトニトリ
ル、ジオキサン、エチレングリコール、グリセリン等を
好ましく挙げることが可能である。また、極性有機溶媒
はタンパク質等を変性する作用やカラム充填剤を損傷す
る作用があるため、多くの場合の電解質溶液に添加し
て用いられる。この様な場合、極性有機溶媒の電解質溶
液中の濃度は、エタノールでは20容量%以下、ジオキ
サンでは10容量%以下、エチレングリコールでは50
容量%以下、アセトニトリルでは30容量%以下となる
ように設定され、本発明においても好ましくはこの範囲
の濃度で用いられる。
【0075】上記でいう塩析効果のあるイオンの塩と
しては、硫酸ナトリウム、硫酸カリウム、硫酸アンモニ
ウム、塩化ナトリウムなどを挙げることができ、これら
をの電解質溶液に、例えば、ロバート.K.スコープス
著, 塚田欣司訳,「新・タンパク質精製法−理論と実
際」,157頁,シュプリンガーフェアラーク東京(1995)
の記述のように、塩化物塩については1〜2mol/L
濃度で、硫酸塩については0.5mol/L程度の濃度
で添加して、本発明の方法に用いることができる。さら
に、本発明の方法における塩析効果のあるイオンの塩の
好ましい濃度として、塩の合計の濃度で、0.5mol
/L〜3mol/Lの濃度範囲を、より好ましくは1〜
2mol/Lの濃度範囲を挙げることができる。この場
合も得られる溶離液のpHについては、5.5〜7.5
の範囲にあることが好ましい。
【0076】HICの溶離液、溶離方法について上述し
たが、これらは標識化合物、被標識化合物のHICカラ
ムへの吸着の強さ、HICカラムの疎水性の強さを勘案
して適宜選択されるものである。本発明の精製方法にお
ける、溶離液、溶離方法の具体例をアクリジニウムエス
テル標識抗体の精製の場合について以下に述べる。
【0077】例えば、HICカラムとしてフェニル5P
Wを用いて、0.05mol/L、リン酸緩衝溶液(p
H 6.5)から、アセトニトリルと0.05mol/
Lリン酸緩衝溶液の混合溶液(10:90)へのグラジ
エントで、アクリジニウムエステル標識抗体を溶離させ
る方法がある。
【0078】アクリジニウムエステル標識抗体を精製す
る場合、標識化合物の疎水性が強いので、上記フェニル
5PWの様にカラム充填剤のリガンドにフェニル基のよ
うな疎水性相互作用が強い官能基を用いるときには、上
記の様に→のグラジエントを用いることができる。
これは、カラム充填剤のリガンドに炭素数8のオクチル
基が用いられる場合も同様である。ただし、これらの場
合、回収すべきアクリジニウム標識抗体の分画が溶出す
るときの溶離液には極性有機溶媒が含まれないほうが好
ましい。また、極性有機溶媒を用いる代わりに溶離液の
イオン強度を低くする方法も好ましく用いられる。さら
に、極性有機溶媒の極性の違い(例えば誘電率)は、精
製して得られる分析用試薬の純度に関係し、例えば2−
プロパノール、エタノール、アセトニトリルでは、極性
の高いものほど有機溶媒による分画中の不純物の混入量
が低下する。
【0079】また、HICカラムとしてプロテインパッ
クGブチルを用いて、0.1mol/Lリン酸緩衝溶液
(pH 6.5)でアクリジニウムエステル標識抗体を
溶離させ、次いでカラムに吸着された疎水性の強い変性
物を、アセトニトリルの0.1mol/Lリン酸緩衝溶
液混合溶液(30:70)で溶出させる方法もある。
【0080】この様にHICに、上記プロテインパック
Gブチルの様な比較的疎水性相互作用の弱い炭素数4の
ブチル基をリガンドとするカラム充填剤を用いる場合に
は、上記の様にしてのイソクラティックのみで溶離す
ることができる。
【0081】さらに、HICカラムとしてプロテインパ
ックGエーテルを用いて、1mol/L硫酸アンモニウ
ムの0.1mol/Lリン酸緩衝溶液(pH 6.5)
から0.1mol/Lリン酸緩衝溶液へのグラジエント
でアクリジニウムエステル標識抗体を溶離させ、次いで
カラムに吸着された疎水性の強い変性物を、アセトニト
リルと0.1mol/Lリン酸緩衝溶液の混合溶液(3
0:70)で溶出させる方法がある。
【0082】この様にHICに、上記プロテインパック
Gエーテルの様な疎水性相互作用の弱いエーテル基をリ
ガンドとするカラム充填剤を用いる場合には、あらかじ
め塩析効果を利用し、上記の様に→のグラジエント
とするのが好ましい。
【0083】以上、アクリジニウムエステル標識抗体を
精製する場合を例にして述べたように、HIC用の溶離
液は、標識化合物、被標識化合物の用いるHICカラム
への吸着の強さ、用いるHICカラムの疎水性の強さを
勘案して適宜選択される。溶離液が疎水性相互作用を弱
める作用は、<<の順に強くなる。したがって疎
水性相互作用クロマトグラフィーの実施にあたっては、
結合反応を行った被標識化合物をの溶離液中で前述の
カラムに保持させ、の溶離液で標識数などに応じて溶
出させ、さらに強く吸着したものはの溶離液で溶出す
るのである。
【0084】また回収すべき分画の溶離液に極性有機溶
媒が用いられると、標識化合物からの信号量に影響がで
る場合、つまり標識化合物が色素、蛍光色素、化学発光
物質などである場合は分取回収した分画の溶離液には極
性有機溶媒を含まないように条件を選んでもよい。しか
し、回収すべき分画に含んでなければよいのであって、
溶離液に極性有機溶媒が含まれていても問題はない。
【0085】また、標識化合物が結合した被標識化合物
によってはカラムに吸着されると変性する場合があるの
で、必要とする標識化合物が結合した被標識化合物がカ
ラム充填剤に吸着されずに溶出するように溶離液、カラ
ム充填剤の種類、分離条件を選択することが好ましい。
【0086】この様にしてHICにより、標識化合物と
被標識化合物との反応混合物から、標識化合物が結合し
た被標識化合物を含む溶出液が分離されるが、この溶出
液から標識化合物が結合した被標識化合物を分離するに
は、標識化合物又は被標識化合物を検出し得る方法、例
えば被標識化合物がタンパク質である場合や標識化合物
がアクリジニウムエステル類等の色素である場合等には
紫外吸収により、標識化合物が放射性物質を含む場合に
は放射線ディテクタ等を用いて検出することにより、行
うことができる。
【0087】具体的な例として、アクリジニウムエステ
ル類で標識された抗体の精製について説明する。抗体溶
液にアクリジニウムエステルのジメチルホルムアミド溶
液を、アクリジニウムエステルがモル量で抗体の5倍程
度になるよう添加して反応させ抗体のアクリジニウムエ
ステル標識を行い、反応混合液を得る。得られた反応混
合液をHIC用カラム、例えば、プロテインパックG−
エーテルカラムに添加し、HPLCを用いて1ml/m
in程度の流速で1mol/L硫酸アンモニウム/0.
1mol/Lリン酸ナトリウム緩衝液(pH6.5)か
ら0.1mol/Lリン酸ナトリウム緩衝液(pH6.
5)への濃度勾配で溶出させる。検出はタンパク質の紫
外吸収をモニターして行う。分取後、紫外吸収が観察さ
れた分画のそれぞれについて抗体濃度を酵素免疫測定法
にて定量し、また分取されたアクリジニウムエステル標
識抗体を用いて抗原の化学発光免疫測定などを行ってS
/B比を調べ、活性を有しかつS/B比の高い分画を選
択することで高感度で再現性のよい化学発光イムノアッ
セイ用のアクリジニウムエステル標識抗体が得られる。
【0088】この場合、反応混合液中の未反応アクリジ
ニウムエステルの大部分、アクリジニウムエステルが特
に多数標識された抗体、及び変性したアクリジニウムエ
ステル標識抗体は、HICカラム充填剤に吸着して溶出
されない。また、溶出液中には、未反応抗体、変性アク
リジニウムエステル、アクリジニウムエステル標識ho
st−IgG、未反応アクリジニウムエステルが物理吸
着した抗体、アクリジニウムエステルが多数標識された
抗体、免疫測定においてバックグラウンドを上昇させる
その他の副反応物等が含まれるが、未反応抗体や変性ア
クリジニウムエステルは化学発光法で発光量を調べるこ
とで、またアクリジニウムエステル標識host−Ig
Gは、酵素免疫測定法にて活性を調べることで、また未
反応アクリジニウムエステルが物理吸着した抗体、アク
リジニウムエステルが多数標識された抗体、バックグラ
ウンドを上昇させるその他の副反応物は化学発光免疫測
定法などでS/B比を調べることで排除される。
【0089】上記HIC溶出液の紫外吸収が観察された
分画のうち酵素免疫測定法にて活性が確認された分画
は、アクリジニウムエステル標識抗体の分画であるが、
各分画において標識数が異なる。そこで、これらの分画
のうち化学発光免疫測定に供したときS/B比の高い分
画を化学発光イムノアッセイ用のアクリジニウムエステ
ル標識抗体として選択する。
【0090】本発明においては、この様にして標識化合
物が結合した被標識化合物の精製を行うが、精製工程に
HICの他にゲル濾過や限外濾過、透析、あるいは、ア
フィニティークロマトグラフィーといった従来の精製手
段を組み入れて精製を行うことも可能である。
【0091】
【実施例】以下に本発明の実施例を、アクリジニウムエ
ステルで標識された抗体の精製を例として説明するが、
これにより本発明が限定されるものではない。
【0092】
【実施例1】 (1)標識反応 ヒトαフェトプロテイン(以下、「AFP」と略称す
る)をマウスへ免疫して得られた抗AFPモノクロナー
ル抗体(MEDIX社製、クローンNo.A013−0
1)を0.1mol/Lリン酸緩衝溶液(pH;8.
0、NaCl濃度;0.1mol/L、)に溶かし濃度
を2.0g/Lに調製した。4−(2−スクシンイミジ
ロキシカルボニルエチル)フェニル−10−メチルアク
リジニウム−9−カルボキシレートフルオロスルフォネ
ート(以下、「AI」と略称する)の0.387g/L
ジメチルホルムアミド(以下、「DMF」と略称する)
溶液を、AIがモル量で抗体の5倍(1.5×10-7
ol)となるように添加し、遮光して室温で撹拌し抗体
のAI標識を行った。反応開始後30分に、AI標識反
応を停止させるために50g/LのD,L−リシンを含
む0.1mol/Lリン酸緩衝溶液(pH;8.0、N
aCl濃度;0.1mol/L)を用いて大過剰のリシ
ン(7.9×10-5mol)を添加し、さらに30分撹
拌して標識反応液を得た。
【0093】(2)AI標識抗体の精製 上記で得られた反応液を2つに分け、一方をあらかじめ
ウシ血清アルブミン(以下、「BSA]と略称する)で
ブロッキングさせたセファデックスG25(ファルマシ
ア社製)を充填したカラム(φ1.6×40cm、ベッ
ド容積;約75ml)で溶離液に0.1mol/Lのリ
ン酸緩衝溶液(pH;6.0)を用いてゲル濾過し、つ
いでウルトラフリーC3 TGCまたはLTK(ミリポ
ア社製)を用いて限外濾過を行い抗体濃度が1.17g
/Lになるまで濃縮した。
【0094】上記の様にして濃度を調整した反応液10
0μlをHIC用カラムであるプロテインパックGブチ
ルカラム(WATERS社製)を備え付けたHPLC
(ポンプ:島津製作所製、LC6A、コントローラ:島
津製作所製、SCL6A、検出器:島津製作所製、SP
C6AV、記録計:島津製作所製、CR4A)に添加
し、1ml/minの流速で0.1mol/Lリン酸緩
衝溶液(pH;6.5)で溶出させた。検出は、タンパ
ク質などの220nmの紫外吸収をモニターして行っ
た。分取はフラクションコレクター(Bio−Rad社
製、Model2110)を用いて2mlずつ行い、分取用の容
器にはあらかじめ0.15%のTween20を含む
0.1mol/Lリン酸緩衝溶液(pH;6.5)の1
mlを添加しておいた。
【0095】220nmの吸収をモニターしたクロマト
グラムを図1に示す。220nmではタンパク質の他種
々の有機化合物が吸収を持つので、反応副産物が多様で
ある本実験には都合がよい。溶出時間6.9分、11.
6分、43.8分にピークが現れ、特に11.6分と4
3.8分のピークの吸収が大きかった。
【0096】また、回収した各分画の標識抗体の性能を
表すために、以下の手順によって酵素免疫測定法で抗体
量を求め、これを基準にして標識抗体の単位抗体量あた
りの化学発光法による発光量、標識抗体の単位抗体量あ
たりのバックグラウンド発光量を以下の手順によって求
め、その比を取ったS/B比、酵素免疫測定法で求めた
抗体の回収率と共に表1にまとめた。
【0097】(3)酵素免疫測定法による抗体の定量 ポリスチレン製マイクロプレート(Nunc社製、Immu
no module maxisorp F8)にヒトAFP精製抗原(日本
バイオテスト研究所製、No.0701−1)を固定化
し、回収したAI標識抗体を含む溶液をウェルに滴下し
1時間反応させた。0.01mol/Lリン酸緩衝溶液
(pH;7.4、NaCl濃度;0.15mol/L、
Tween20濃度;0.1%)で洗浄後、ペルオキシ
ダーゼ標識抗マウス抗体(TAGO社製No.645
0)を1時間反応させた。洗浄後、基質溶液(0.1m
ol/Lクエン酸リン酸緩衝溶液、pH;5.0、含有
オルトフタルアルデヒド濃度;20mmol/L、含有
過酸化水素濃度;10mmol/L)を滴下した。30
分反応させた後に反応停止液(3.6N硫酸)を添加、
ただちに492nmにおける吸光度をマイクロプレート
リーダー(コロナ電気社製MTP32)で測定した。既
知濃度の未標識抗AFP抗体について検量線を準備し、
回収分画中の標識抗体の量を求めた。
【0098】(4)化学発光法による標識抗体発光量の
測定 回収したAI標識抗体の濃度が各分画について0.1m
g/Lとなるように、88mmol/Lの過酸化水素を
含む酸性緩衝溶液(pH;4.0、クエン酸濃度;0.
1mol/L、リン酸水素二ナトリウム濃度;0.1m
ol/L)で希釈した(希釈率は100〜1000倍、
過酸化水素は過剰量にある)。その10μlをポリスチ
レン製ホルダーに入れ(1ng)、オートディスペンサ
ーを備え付けた化学発光測定機の測光室にセットした。
酸性緩衝溶液で希釈してから一定時間経過後(3〜10
分)にディスペンサーから100μlの1N水酸化ナト
リウム水溶液をホルダー内に吐出し、発光量を測定し
た。測定値をAI標識抗体1ngあたりの発光量とした
(count/ng)。
【0099】(5)標識抗体のバックグランド発光量の
測定 ガラスフィルター(ワットマン社製)を3−アミノプロ
ピルトリエトキシシランで処理し、水洗後、0.1mo
l/Lの炭酸水素ナトリウム水溶液中、ビオチンとN−
ヒドロキシスクシンイミドエステルの複合体(同仁化学
研究所社製)で処理した。さらに水洗後、0.1mol
/Lリン酸緩衝溶液(pH 7.0)に溶かしたアビジ
ン(オリエンタル社製)で処理、さらにブロッキング処
理を行い、アビジンを固定化した化学発光免疫測定用固
相を作製した。
【0100】回収したAI標識抗体の濃度が1mg/L
となるように調製し、その65μlを上記で作製した化
学発光免疫測定用固相に点着した(65ng)。固相を
0.1%のTween20を含む0.01mol/Lリ
ン酸緩衝溶液(pH;7.4、NaCl濃度;0.15
mol/L)で洗浄しポリスチレン製ホルダーにセット
した。88mmol/Lの過酸化水素を含む酸性緩衝溶
液(pH;4.0、0.1mol/Lクエン酸、0.1
mol/Lリン酸水素二ナトリウム)の15μlを固相
に点着し、オートディスペンサーを備え付けた化学発光
測定機の測光室にセットした。酸性緩衝溶液を点着して
から一定時間経過後(3〜10分)にディスペンサーか
ら100μlの1N水酸化ナトリウム水溶液をホルダー
内に吐出し、発光量を測定した。測定値を65で除しA
I標識抗体1ngあたりのバックグラウンド発光量(c
ount/ng)とした。
【0101】
【表1】 *:表中の反応溶液は、セファデックスG25でゲル濾過後、限外濾過濃縮した 後の溶液を示す。
【0102】この酵素免疫測定の結果から、図1のクロ
マトグラムにおける6.9分のピークには220nmの
吸収の強度に比べて抗体が少ないことが確認され、この
ことから、このピークではhost−IgGと未反応の
抗体が溶出されていると考えられる。また、標識抗体
は、図1における11.6分と43.8分のピークに分
かれて溶出されていることが確認されたが、これらのう
ち43.8分に出現する標識抗体は、おそらく標識数が
多いなどの原因により疎水性が強いと考えられた。この
43.8分に溶出された標識抗体について、実際にS/
B比を算出すると非特異吸着を起こしやすく分析用試薬
として性能が劣ることがわかった。
【0103】また、化学発光測定の結果、標識抗体は上
記二つのピークの間にも徐々に溶出されてることがわか
ったが、抗体あたりの発光量は後から溶出されたものほ
ど大きくなる傾向があり、標識数による分離が行われて
いることがわかる。
【0104】上記精製過程において、高純度のAI標識
抗体は9〜14分の間に溶出されていたので、この分画
をプールしてS/B比と回収率を算出した。結果を表2
にまとめた。
【0105】
【表2】
【0106】この結果から明らかなように、9〜14分
の分画を回収することで、信号を低下させたりバックグ
ラウンドを上昇させる要因となる種々の不純物を除去
し、すぐれたS/B比を持つ分析用試薬を提供できるこ
とがわかった。この様に本発明の精製方法によれば、高
いS/B比のAI標識抗体を、高い効率で回収できると
いえる。
【0107】なお、回収されたAI標識抗体の性能が各
分画の平均と一致していないのは、各分画について免疫
測定などを行っている間の保存方法がまだ最適化されて
いないためである。保存用緩衝溶液を工夫するか、ある
いは分取後ただちに凍結乾燥などの処理を行えば解決で
きると思われる。
【0108】
【実施例2】上記実施例1で2つに分けた標識反応液の
残りの一方を、限外濾過濃縮で抗体濃度を1.52g/
Lに調整し、実施例1と同じ条件でHICカラムにかけ
た。検出、分取についても実施例1と同様に行った。
【0109】上記で回収した各分画の標識抗体の性能を
表すために、上記実施例1と同様の手順によって酵素免
疫測定法で抗体量を求め、これを基準にして標識抗体の
単位抗体量あたりの化学発光法による発光量、標識抗体
の単位抗体量あたりのバックグラウンド発光量を上記実
施例1と同様の手順によって求め、その比を取ったS/
B比、酵素免疫測定法で求めた抗体の回収率と共に表3
にまとめた。
【0110】
【表3】 *:表中の反応溶液は、限外濾過濃縮後の溶液を示す。
【0111】この結果からわかるように、実施例2のク
ロマトパターンは、実施例1の表1と類似のクロマトパ
ターンとして得られており、高純度のAI標識抗体は、
実施例1と同様に9〜14分の間に溶出されていた。た
だし、予めゲル濾過を行った場合の上記実施例1の図1
に示されるクロマトグラムにおいて1.6分にわずかに
現れるピークが、実施例2においては大きく現れたこと
から、このピークは、比較的親水性の反応副産物など低
分子不純物を示すと考えられる。
【0112】実施例1と同様に、標識抗体は、11.6
分と43.8分のピークに分かれて溶出されていること
が確認され、このうち43.8分に溶出された標識抗体
について、S/B比を算出すると非特異吸着を起こしや
すく分析用試薬として性能が劣ることがわかった。ま
た、実施例1と同様、標識抗体は上記二つのピークの間
にも徐々に溶出されていることがわかったが、抗体あた
りの発光量は後から溶出されたものほど大きくなる傾向
があり、標識数による分離が行われていることがわか
る。さらに、実施例1と同様にして、上記精製過程にお
いて、高純度のAI標識抗体が溶出された9〜14分の
分画をプールしてS/B比と回収率を算出した。結果を
表4に示す。
【0113】
【表4】
【0114】この結果から、ゲル濾過などの前処理を行
わなくても、実施例1と同様にすぐれたS/B比のAI
標識抗体が高回収率で精製できることがわかる。また、
ゲル濾過などの前処理を組み合わせれば、さらに高純度
の分析用試薬を提供できることがわかった。
【0115】
【実施例3】AIの抗AFP抗体(MEDIX社製クロ
ーンNo.A013−01)への標識反応を上記実施例
1と同様にして実施した。
【0116】得られた標識反応液200μlをHIC用
カラムであるプロテインパックGエーテルカラム(WA
TERS社製)を備え付けたHPLC(ポンプ:島津製
作所製 LC6A、コントローラ:島津製作所製、SC
L6A、検出器:島津製作所製、SPC6AV、記録
計:島津製作所製、CR4A)に添加し、1ml/mi
nの流速で、1mol/L硫酸アンモニウム/0.1m
ol/Lリン酸緩衝溶液(pH 6.5)から0.1m
ol/Lリン酸緩衝溶液(pH 6.5)への直線濃度
勾配で溶出させた。検出は、タンパク質などの220n
mの紫外吸収をモニターして行った。
【0117】クロマトグラムには溶出時間約40分をピ
ークとする吸収が37分から以降40分間にわたってテ
ーリングし、テーリング上の55〜65分に小さな吸収
が出現した。そこで溶離液を37〜45分、45〜55
分、55〜77分なる溶出時間に応じ3分画に分けて回
収した。以下、これらの分画を、順に分画1、分画2、
分画3と呼称することにする。
【0118】それぞれの分画について上記実施例1と同
様の手順で酵素免疫測定法で抗体量を測定し、抗体量あ
たりの発光量を求めたところ、発光量は、分画1<分画
2<分画3の順に大きくなった。一方、上記実施例1と
同様の手順でそれぞれの分画のバックグラウンド発光量
を求めたところ、分画1〜3に差は見られなかった。
【0119】また、最後に溶離液を30%アセトニトリ
ル/0.1mol/Lリン酸緩衝溶液(pH;6.5)
にすると、カラムに吸着していたと見られる成分が溶出
され、この分画を評価するとバックグラウンドが非常に
高いことが確認できた。
【0120】したがって、この条件においても標識数に
応じたAI標識抗体の分離が為されており、バックグラ
ウンドを増加させる要因となる疎水性の強い反応副産物
や標識数の過度に多い抗体などはカラムに吸着除去され
るので、分画3のみを分取すれば、目的とする分析用試
薬が回収できることが示された。
【0121】
【比較例】比較のために、上記実施例1と同様にしてA
Iの抗AFP抗体(MEDIX社製クローンNo.A0
13−01)への標識反応を行い、得られた標識反応液
についてゲル濾過とメンブランフィルターによる処理を
行い、AI標識抗体の精製を試みた。
【0122】標識反応液の2.76mlを、あらかじめ
ウシ血清アルブミン(以下、「BSA]と略称する)で
ブロッキングさせたセファデックスG25(ファルマシ
ア社製)を充填したカラム(φ1.6×40cm、ベッ
ド容積;約75 ml)を用い、溶離液として0.1m
ol/Lのリン酸緩衝溶液(pH 6.0)を用いてゲ
ル濾過した。抗体の溶出は280nmにおけるタンパク
質の吸収でモニターし、フラクションコレクター(Bi
o−Rad社製、Model2110)で回収した。溶出したA
I標識抗体を含む分画をメンブランフィルター(シルフ
ィルMFフィルター、ニュクリポア社製、孔径φ0.2
2μm)で濾過した。セファデックスG25によるゲル
濾過、メンブランフィルター濾過の回収率は、タンパク
質の280nmにおける吸収から84%、72%と算出
された。
【0123】ついで上記で回収したAI標識抗体を含む
反応溶液の1.2mlを、あらかじめBSAでブロッキ
ングさせたセファロースCL−6B(ファルマシア社
製)を充填したカラム(φ2×40cm、ベッド容積;
約115ml)を用い、溶離液として0.1mol/L
のリン酸緩衝溶液(pH 6.0)を用いてゲル濾過し
た。タンパク質の吸収から計算した抗体の回収率は約7
2%であった。溶出した標識抗体を含む分画をシルフィ
ルMFフィルターで3〜9回濾過、約60%の抗体を回
収した。すべての精製過程を通じての標識抗体の回収率
は約30%であった。
【0124】上記精製の各過程で回収した標識抗体の性
能を表すために、上記実施例1と同様にして酵素免疫測
定法で抗体量を求め、これを基準にして標識抗体の単位
抗体量あたりの発光量、標識抗体の単位抗体量あたりの
バックグラウンド発光量を上記実施例1と同様にして化
学発光法によって求め、その比を取ったS/B比、酵素
免疫測定法で求めた抗体の回収率と共に表5にまとめ
た。
【0125】
【表5】 *:メンブランフィルター濾過は、最終工程におけるメンブランフィルター濾過 を示す。
【0126】上記と同様の精製をさらに2回行った。こ
れら3回の精製についてメンブランフィルター7回処理
後の標識抗体の測定結果を表6にまとめた。
【0127】
【表6】
【0128】この結果から明らかなように、上記ゲル濾
過とメンブランフィルターを用いた比較例の精製方法で
は各ロット間で、回収率は10〜40%、S/B比は5
00〜3000と大きくばらつき、性能の一致するAI
標識抗体は回収できなかった。しかも高いS/B比の標
識抗体を得ようとすると回収率が犠牲になることがわか
った。この様な、比較例の精製方法により得られたAI
標識抗体に比べ、上記本発明の精製方法で得られたAI
標識抗体は、優れたS/B比を有し、AI標識抗体の回
収率も高い。
【0129】
【実施例4】上記実施例1〜3及び比較例で用いた抗体
とは異なる抗AFP抗体((株)京都第一科学社製クロ
ーンAFPK02)を用いた以外は、上記実施例1と同
様にしてAIの標識反応を実施し、標識反応液を得た。
【0130】得られた標識反応液100μl(抗体濃
度;0.15g/L)をHIC用カラムであるプロテイ
ンパックGブチルカラム(WATERS社製)を備え付
けたHPLC(ポンプ:島津製作所製、LC6A、コン
トローラ:島津製作所製、SCL6A、検出器:島津製
作所製、SPC6AV、記録計:島津製作所製、CR4
A)に添加し、0.5ml/minの流速で0.1mo
l/Lリン酸緩衝溶液(pH 6.5)で溶出させた。
検出は、タンパク質などの220nmの紫外吸収をモニ
ターして行った。分取はフラクションコレクター(Bi
o−Rad社製、Model2110)を用いて1mlずつ行
い、分取用の容器にはあらかじめ0.15%のTwee
n20を含む0.1mol/Lリン酸緩衝溶液(pH
7.4)の0.5mlを添加しておいた。
【0131】220nmの吸収をモニターしたクロマト
グラムを図2に示す。220nmではタンパク質の他種
々の有機化合物が吸収を持つので、反応副産物が多様で
ある本実験には都合がよい。溶出時間5.6分、9.8
分をピークとする吸収が現れた。
【0132】各分画について、上記実施例1と同様の手
順で酵素免疫測定法により抗AFP抗体量を測定したと
ころ、5.6分のピークには目的とする抗AFP抗体が
含まれておらず、これよりこの付近の分画はAI標識さ
れたhost−IgGが溶出しているものと考えられ
る。また、AI標識された抗AFP抗体は、約9〜11
分の分画に溶出されていることがわかった。そこで溶出
時間9〜11分の分画について、標識抗体の単位抗体量
あたりの化学発光法による発光量、標識抗体の単位抗体
量あたりのバックグラウンド発光量を上記実施例1と同
様の手順によって求め、S/B比を算出した。結果を表
7に示す。
【0133】
【表7】
【0134】また、標識抗体はこのピークの後にも徐々
に溶出されており、タンパクあたりの発光量を調べると
溶出時間と共に発光量が増していた。これから、標識数
による分離が行われていると考えられる。
【0135】この結果から、上記精製方法においては、
9〜11分の分画がAI標識されたヒト抗AFPモノク
ロナール抗体として分析用試薬に十分に用いることがで
きるといえる。つまり、本発明の方法によって分析用試
薬として十分に使用できるAI標識されたヒト抗AFP
モノクロナール抗体の精製が行えることがわかる。さら
に分離条件を最適化すればよりすぐれた分析用試薬が回
収されると期待できる。
【0136】
【実施例5】ヒト癌胎児性抗原(以下、「CEA」と略
称する)をマウスへ免疫して得られた抗ヒトCEAモノ
クロナール抗体のAI標識反応を上記実施例1の方法と
同様にして実施し、標識反応液を得た。
【0137】得られた標識反応液200μl(抗体濃度
1.87g/L)をHIC用カラムであるプロテインパ
ックGブチルカラム(WATERS社製)を備え付けた
HPLC(WATERS社製、600SYSTEM、検
出器:WATERS社製、フォトダイオードアレイ99
6)に添加し、0.5ml/minの流速で1mol/
L硫酸アンモニウム/0.1mol/Lリン酸緩衝溶液
(pH;6.5)から0.1mol/Lリン酸緩衝溶液
(pH;6.5)への段階的濃度勾配で溶出した。検出
は、タンパク質の280nmの紫外吸収をモニターして
行った。分取はフラクションコレクター(Bio−Ra
d社製、Model2110)を用いて2mlずつ行
い、分取用の容器にはあらかじめ1%のBSAを含む
0.1mol/Lリン酸緩衝溶液(pH 6.5)の1
mlを添加しておいた。
【0138】溶出時間6分、38分、62分および91
分付近にピークが現れた。以下、これらの分画を、順に
分画1、分画2、分画3、分画4と呼称することにす
る。溶出されたタンパク質の量は分画3で最も大きく、
ついで分画4で大きかった。抗体量の測定は、上記実施
例1で用いた酵素免疫測定法の手順において、ヒトAF
P精製抗原のかわりに、抗原としてCEA(Inter
national Enzymes,Inc.社製N
o.4112)を用いた以外は、実施例1で用いた方法
と同様の方法により実施した。その結果、この4つの分
画とも抗CEA抗体を含み、その濃度は主としてhos
t−IgG由来の吸収と考えられる分画1を除いて、ほ
ぼ280nmにおける吸収強度に一致していることがわ
かった。
【0139】回収した各分画の標識抗体の性能を表すた
めに、上記酵素免疫測定法で求めた各分画の抗体量を基
準にして、標識抗体の単位抗体量あたりの化学発光法に
よる発光量、標識抗体の単位抗体量あたりのバックグラ
ウンド発光量を上記実施例1の手順と同様の手順によっ
て求め、その比を取ったS/B比を算出した。結果を表
8に示す。
【0140】
【表8】
【0141】この結果から、本実施例においても、溶出
時間が長くなるにつれて抗体あたりの発光量が大きくな
る傾向が見られ、標識数による分離が行われていること
がわかった。また、分画4は分画3よりも大きなS/B
比を示し、分画4を回収すれば発光量の大きな分析用試
薬を高純度で入手できることがわかった。さらに、分画
3を細かく分取すると、分画3のヘッド部(溶出時間;
58〜62分)はテール部(溶出時間;66〜74分)
に比べ高いS/B比の標識抗体が溶出しており、このヘ
ッド部を回収すれば高純度の分析用試薬を入手できるこ
とがわかった。
【0142】また、最後に溶離液を30%アセトニトリ
ル/0.1mol/Lリン酸緩衝溶液(pH 6.5)
としてカラムに流すと、カラムに吸着していたと見られ
る成分が溶出され、この分画を評価するとバックグラウ
ンドが非常に高いことが確認できた。
【0143】したがって、本実施例においても標識数に
応じたAI標識抗体の分離が為されており、バックグラ
ウンドを増加させる要因となる疎水性の強い反応副産物
や標識数の過度に多い抗体などはカラムに吸着除去され
るので、分画3のヘッド部や分画4を分取すれば、目的
とする分析用試薬が回収できることがわかった。
【0144】
【実施例6】抗ヒトCEAモノクロナール抗体のAI標
識反応を上記実施例1の方法と同様にして実施し、標識
反応液を得た。
【0145】得られた標識反応液200μl(抗体濃度
1.67g/L)をHIC用カラムであるプロテインパ
ックGブチルカラム(WATERS社製)を備え付けた
HPLC(WATERS社製、600SYSTEM、検
出器:WATERS社製、フォトダイオードアレイ99
6)に添加し、1ml/minの流速で2mol/L硫
酸アンモニウム/0.1mol/Lリン酸緩衝溶液(p
H;6.5)から0.1mol/Lリン酸緩衝溶液(p
H;6.5)への段階的濃度勾配で溶出させ、最後に3
0%アセトニトリル/0.1 mol/Lリン酸緩衝溶
液(pH;6.5)への直線濃度勾配で溶出した。検出
は、タンパク質の280nmの紫外吸収をモニターして
行った。分取はフラクションコレクター(Bio−Ra
d社製、Model2110)を用いて2mlずつ行い、分取用
の容器にはあらかじめ1%のBSAを含む0.1mol
/Lリン酸緩衝溶液(pH;6.5)の1mlを添加し
ておいた。
【0146】溶離液をアセトニトリル含有溶液に切り替
える前の、溶出時間22分、34分、50分、74分付
近にピークが現れた。以下、これらの分画を、順に分画
1、分画2、分画3、分画4と呼称することにする。溶
出されたタンパク質の量は分画4で最も大きくついで分
画2、3の順に大きかった。抗体量の測定は、上記実施
例1で用いた酵素免疫測定法の手順において、ヒトAF
P精製抗原のかわりに、抗原としてCEA(Inter
national Enzymes,Inc.社製N
o.4112)を用いた以外は、実施例1で用いた方法
と同様の方法により実施した。その結果、この4つの分
画とも抗CEA抗体を含み、その濃度はほぼ280nm
における吸収強度に一致していることがわかった。また
host−IgGは約4分頃に溶出されているのがわか
った。
【0147】回収した各分画の標識抗体の性能を表すた
めに、標識抗体の単位抗体量あたりの化学発光法による
発光量を上記実施例1の手順と同様の手順によって求
め、抗原の濃度が40μg/Lのときの化学発光免疫測
定法による発光量(CEA;2.1ng/assa
y)、抗原フリーのときの化学発光免疫測定法によるバ
ックグラウンド発光量を以下に示す手順によって求め、
実際の測定系に即したS/B比を算出した。結果を表9
に示す。
【0148】(化学発光免疫測定法)AI標識抗CEA
抗体を5mg/Lとなるように調製し、その10μl
を、40倍量のビオチン標識抗CEA抗体(0.2g/
L、抗CEA抗体;日本バイオテスト社製、No.EB
−016)の10μl、10%のカゼインと0.1%T
ween20を含む0.01mol/Lリン酸緩衝溶液
(pH;7.4、NaCl濃度;0.15mol/L)
を溶媒とする所定濃度のCEA溶液の80μlと混合
し、室温で10分反応させた。この溶液の65μlを上
記実施例1と同様の方法で作製した化学発光免疫測定用
の固相上に点着し、室温で10分反応させ、固相上にア
ビジン−ビオチン標識抗CEA抗体−CEA−AI標識
抗CEA抗体なる免疫複合体を形成させた。固相を0.
1%のTween20を含む0.01mol/Lリン酸
緩衝溶液(pH;7.4、NaCl濃度;0.15mo
l/L)で洗浄しポリスチレン製ホルダーにセットし
た。88mmol/Lの過酸化水素を含む酸性緩衝溶液
(pH;4.0、0.1mol/Lクエン酸、0.1m
ol/Lリン酸水素二ナトリウム)の15μlを固相に
点着し、オートディスペンサーを備え付けた化学発光測
定機の測光室にセットした。酸性緩衝溶液を点着してか
ら一定時間経過後(3〜10分)にディスペンサーから
100μlの1N水酸化ナトリウム水溶液をホルダー内
に吐出し、発光量を測定した。
【0149】
【表9】 1);化学発光法による測定DATAを示す。 2);化学発光免疫測定法による測定DATAを示す。
【0150】この結果から、本実施例においても溶出時
間が長くなるにつれて抗体あたりの発光量が大きくなる
傾向が見られ、標識数による分離が行われていることが
わかった。また、分画2および分画3は大きなS/B比
を示し、これらの分画を分析用試薬として用いることが
十分に可能であることが示された。特に分画3を回収す
れば発光量の大きな分析用試薬を高純度で入手できるこ
とがわかった。
【0151】また、溶離液を30%アセトニトリル/
0.1mol/Lリン酸緩衝溶液(pH;6.5)にし
て溶出される分画4はカラムに吸着していたと見られ、
この分画を評価するとバックグラウンドが非常に高いこ
とが確認できた。
【0152】したがって、本実施例においても標識数に
応じたAI標識抗体の分離が為されており、バックグラ
ウンドを増加させる要因となる疎水性の強い反応副産物
や標識数の過度に多い抗体などはカラムに吸着除去され
るので、分画2、分画3を分取すれば、目的とする高純
度の分析用試薬が回収できることがわかった。こうして
精製されたAI標識抗体を化学発光免疫測定に供する
と、2.1ngの抗原を56ないしは151のS/B比
で測定できた。
【0153】以上のことは本発明の方法によって精製し
た分析用試薬を使用すれば、測定の再現性及び感度が向
上し、非特異的な反応によるノイズを低く押さえること
が可能であることを意味する。
【0154】
【発明の効果】本発明の精製方法によれば、標識化合物
とこの標識化合物で標識され得る被標識化合物との反応
混合物から、標識化合物が結合した被標識化合物を、分
析対象物質親和性と標識の活性を維持したまま、高感度
分析のための分析用試薬として使用するのに十分なまで
高度に精製することが可能である。また、本発明により
精製された標識化合物が結合した被標識化合物を分析に
用いれば、測定の再現性及び感度を上げ、非特異的な反
応によるノイズを低く抑えることが可能であり、特に臨
床検査など生体成分の分析や環境分析においてこの効果
が期待できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 実施例1においてAIで標識した抗AFP抗
体を疎水性相互作用クロマトグラフィー(HIC)で分
離精製したときの220nmの紫外吸収でモニターした
溶出パターンを示す図である。
【図2】 実施例4においてAIで標識した抗AFP抗
体を疎水性相互作用クロマトグラフィー(HIC)で分
離精製したときの220nmの紫外吸収でモニターした
溶出パターンを示す図である。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.6 識別記号 庁内整理番号 FI 技術表示箇所 G01N 30/88 G01N 30/88 J 33/532 33/532 A Z

Claims (9)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 標識化合物と、この標識化合物で標識さ
    れ得る被標識化合物との反応混合物から、標識化合物が
    結合した被標識化合物を精製する方法であって、 標識化合物が結合した被標識化合物を、前記反応混合物
    から疎水性相互作用クロマトグラフィーを用いて分離す
    ることを特徴とする方法。
  2. 【請求項2】 請求項1において、さらに標識数により
    被標識化合物を分画することを特徴とする方法。
  3. 【請求項3】 標識化合物が色素、蛍光物質、化学発光
    物質、生物発光物質、酸化剤、還元剤、酸、塩基、酵素
    の基質; 色素生成反応、蛍光物質生成反応、化学発光
    反応、生物発光反応、酸化還元反応、酸塩基反応の出発
    物質、触媒、促進剤、阻害剤; 前記出発物質、触媒、
    促進剤または阻害剤を生成する反応の出発物質、触媒、
    促進剤、阻害剤、から選ばれる請求項1又は2記載の方
    法。
  4. 【請求項4】 被標識化合物が、タンパク質、ペプチ
    ド、核酸、多糖類、複合糖質、複合脂質から選ばれる請
    求項1〜3の何れか1項に記載の方法。
  5. 【請求項5】 標識化合物が色素、蛍光物質、化学発光
    物質、生物発光物質から選ばれる請求項4記載の方法。
  6. 【請求項6】 被標識化合物がイムノグロブリンまたは
    その断片であり、標識化合物がアクリジニウムエステル
    類である請求項5記載の方法。
  7. 【請求項7】 前記疎水性相互作用クロマトグラフィー
    に用いるカラム充填剤の主たる成分が、マトリックス
    に、エーテル基、アリール基、短鎖長アルキル基から選
    ばれる少なくとも一種のリガンドが化学結合した化合物
    である請求項1記載の方法。
  8. 【請求項8】 前記マトリックスが、デキストラン、架
    橋デキストラン、アガロース、架橋アガロース、ポリア
    クリルアミド、ポリアクリレート、ポリメタクリレー
    ト、ポリヒドロキシメタクリレート、ポリビニルアルコ
    ール、セルロース、ポリスチレン、ポリ酢酸ビニルから
    選ばれる請求項7記載の方法。
  9. 【請求項9】 前記カラム充填剤の主たる成分が、アガ
    ロースのトリフェニルメチル、エチル又はブチル誘導
    体、架橋アガロースのブチル又はフェニル誘導体、ポリ
    メタクリレートのブチル、フェニル又はオリゴエチレン
    グリコール誘導体、ポリアクリレートのネオペンチル又
    はフェニル誘導体、ポリビニルアルコールのブチル誘導
    体、ポリヒドロキシメタクリレートのフェニル誘導体か
    ら選ばれる請求項8記載の方法。
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