JPH09324325A - 気相成長炭素繊維製造装置 - Google Patents

気相成長炭素繊維製造装置

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JPH09324325A
JPH09324325A JP8539297A JP8539297A JPH09324325A JP H09324325 A JPH09324325 A JP H09324325A JP 8539297 A JP8539297 A JP 8539297A JP 8539297 A JP8539297 A JP 8539297A JP H09324325 A JPH09324325 A JP H09324325A
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 収率良く気相成長炭素繊維を製造可能な装置
を提供すること。 【解決手段】 反応管内を移動する加熱体を設けてなる
気相成長炭素繊維製造装置。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】この発明は気相成長炭素繊維
製造装置に関し、さらに詳しくは、高収率で気相成長炭
素繊維を製造することのできる気相成長炭素繊維製造装
置に関する。
【0002】
【従来の技術】気相法による炭素繊維(以下、気相成長
炭素繊維と略称する。)は、結晶配向性に優れているの
で、機械的特性、電気的特性、生化学的特性等におい
て、従来の炭素繊維たとえばポリアクリロニトリル系炭
素繊維には見られない優れた特性を有している。
【0003】従来、気相成長炭素繊維は、流動気相法と
称される製造方法により製造されている。この流動気相
法と称される方法は、メタン、エタン、ベンゼン等の炭
素化合物のガスと、フェロセン等の有機遷移金属化合物
のガスと、キャリヤガスとを予め混合することにより混
合ガスを得、その混合ガスを加熱炉に注入することによ
り、気相中で金属触媒を生成し、この金属触媒を核とし
て連続的に炭素繊維を成長させてこれを製造する方法で
ある。流動気相法による気相成長炭素繊維の製造方法と
して、特公昭62−49363号公報、公昭4−371
66号公報等に記載された方法が、連続生産が可能で生
産性の高い方法と評価され、主流となっている。
【0004】しかしながら、一般的に有機金属化合物は
炭素化合物に比べて分解温度が低いので、有機金属化合
物のみが分解する温度では分解して生じた金属原子が凝
集して壁に金属鏡を作ってしまう。したがって、折角分
解して生じた金属原子が炭素繊維生成のための触媒とし
て有効に寄与せず、有機金属化合物が炭素繊維生成に寄
与しなくなる。したがって、低温の原料を速やかに炭素
生成温度に上昇させて上記温度範囲の時間をできるだけ
短くする必要がある。
【0005】そのために、分解を起こさない温度範囲
の、有機金属化合物・炭素化合物・キャリヤガスの混合
ガスを高温のキャリヤガスまたはキャリヤガスと炭素化
合物との混合ガス中に注入する方法が採用されている。
【0006】生成する炭素繊維が反応管の内壁に付着す
るのを防止するには、炭素化合物が壁際に移動し難いよ
うに、加熱炉内の反応管に上からキャリヤガスを流通さ
せ、温度が十分に上がった反応管の中程の部分に上から
周囲を保冷もしくは冷却されたノズルを差し込み、そこ
から原料ガスを下に向かって注入するのであるが、ガス
は管壁からの輻射熱を吸収し難いので、速やかな加熱は
困難であり、高い収率で、すすを含まない炭素繊維を得
ることは困難であった。換言すると、原料ガスは加熱炉
からの輻射熱を吸収しにくいので、反応管内でのガスの
流れの乱れがない場合には、触媒の形成および活性化が
遅くなり、もって気相法成長炭素繊維の収率の低下やス
スの発生が起こる。といって、反応管上からキャリヤガ
スのみならず、炭素化合物のガスも注入する場合には、
炭素化合物の単独分解およびこれによるすすの発生を避
けるために余り高い温度を採用することはできず、上記
問題が更に重要になっていた。
【0007】そこで最近、前記問題を解決する気相成長
炭素繊維の製造方法として特開平1−292118公報
に開示された。
【0008】前記公報に記載された気相成長炭素繊維の
製造方法は、その特許請求の範囲第1項に記載されたよ
うに、「有機ケイ素化合物または有機ケイ素化合物と炭
化水素化合物との混合物を、イオウ化合物を含有する還
元性または不活性のキャリヤガスの存在下に高温で気相
熱分解することによって炭素繊維を生成させるに当り、
前記の熱分解帯域中を連続的に通過する炭素繊維糸上で
前記の炭素繊維を成長させると共に成長した該炭素繊維
糸と共に連続的に該熱分解帯域より取り出すことを特徴
とする」。
【0009】しかしながら、前記公報に記載された気相
成長炭素繊維の製造方法には、次のような問題点があ
る。すなわち、上記公報に記載された気相成長炭素繊維
の製造方法を具体的に実施するとすれば、(1)「炭素
繊維糸」に炭素繊維が付着すると、キャリヤガスの流れ
が乱れて反応管内壁への付着物の量が増加するという問
題、(2)長時間に渡って実施すると、反応管内が前記
付着物で閉塞されてしまい、炭素繊維の生成量が減少
し、場合によっては炭素繊維が生成しなくなるという問
題等がある。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】この発明の目的は、金
属鏡が形成されることなく、高収率で、ススを含まない
気相成長炭素繊維を製造することのできる簡単な構造の
製造装置を提供することにある。この発明の他の目的
は、長時間に渡る運転を行っても反応管の閉塞が起こら
ず、安定して炭素繊維を効率良く製造することのできる
気相成長炭素繊維の製造装置を提供することにある。
【0011】
【課題を解決するための手段】前記課題を解決するため
の請求項1に記載の発明は、加熱手段と、前記加熱手段
により加熱される反応空間を有する反応空間形成手段
と、前記反応空間形成手段内に原料ガスを供給する原料
ガス供給手段と、前記反応空間形成手段内でキャリヤガ
スが一定の気流方向に流れるように、この反応空間形成
手段内にキャリヤガスを供給するキャリヤガス供給手段
と、前記反応空間形成手段における反応空間中を気流方
向に連続して移動し、反応空間形成手段中に供給される
原料ガスを加熱する連続加熱体とを有することを特徴と
する気相成長炭素繊維製造装置であり、請求項2に記載
の発明は、前記連続加熱体が、前記原料ガス供給手段お
よびキャリヤガス供給手段のいずれかまたは両方を通過
し、反応空間形成手段における反応空間を気流方向に沿
って連続して移動し、その後前記原料ガス供給手段およ
びキャリヤガス供給手段のいずれかまたは両方に戻され
て再び前記反応空間形成手段における反応空間を気流方
向に沿って連続して移動するように、循環移動可能に形
成されてなる前記請求項1に記載の気相成長炭素繊維製
造装置であり、請求項3に記載の発明は、前記連続加熱
体が、前記原料ガス供給手段およびキャリヤガス供給手
段のいずれかまたは両方を通過し、反応空間形成手段に
おける反応空間を気流方向に沿って連続して移動するよ
うに、一方向に移動可能に形成されてなる前記請求項1
に記載の気相成長炭素繊維製造装置であり、請求項4に
記載の発明は、前記連続加熱体の移動速度が1〜500
cm/分である前記請求項1〜3のいずれかに記載の気
相成長炭素繊維製造装置であり、請求項5に記載の発明
は、前記反応空間形成手段が縦型反応管であり、前記原
料ガス供給手段が原料ガス供給ノズルを含み、前記キャ
リヤガス供給手段がキャリヤガス供給ノズルを含む前記
請求項1〜4のいずれかに記載の気相成長炭素繊維製造
装置である。
【0012】
【発明の実施の形態】
(一般説明)この発明に係る好適な気相成長炭素繊維製
造装置は、加熱手段と、反応空間形成手段と、原料ガス
供給手段と、キャリヤガス供給手段と、連続加熱体とを
有する。
【0013】前記加熱手段は、前記反応空間形成手段に
おける反応空間内を加熱して、この反応空間内で後述す
るような気相成長炭素繊維が形成されるように、前記反
応空間形成手段に対して固定的に(換言すると、気相成
長炭素繊維の生成中にはその設置位置を変えることがな
いように固定されて)構成される。通常、この加熱手段
は、反応空間形成手段の外部に設けられた電気炉をもっ
て構成することができる。もっとも、特別の工夫をする
のであれば反応空間形成手段の内部に加熱手段たとえば
電気炉を設けることができる。
【0014】この加熱手段により加熱される反応空間内
の温度、特に気相成長炭素繊維が生成する空間すなわち
気相成長炭素繊維生成領域の温度としては、600〜
1,500℃、好ましくは800〜1,300℃であ
る。さらに、後述するように、この反応空間形成手段が
縦型反応管、特に気体を上から下へと一方向に流通する
ことができるように形成してなる縦型反応管であるとき
には、気相成長炭素繊維生成領域の温度が、前記温度範
囲において、原料ガスの気体が流通する風上から風下に
向かって、順次に温度が低下するように温度勾配を形成
するのが好ましい。どのように温度勾配を設けるかは、
縦型反応管の規模等に応じて適宜に決定される。
【0015】反応空間形成手段は、原料ガスおよびキャ
リヤガスが一方向に流通し、かつ前記加熱手段による加
熱によって原料ガスが熱分解し、気相成長炭素繊維が生
成する空間すなわち反応空間を形成することができるよ
うに形成された手段であり、通常、反応空間を外部雰囲
気から遮断し、前記機能を実現することのできるように
付帯設備を備えてなるところの、反応管、反応槽、反応
チャンバー等と称される構造を有して形成される。
【0016】好適な反応空間形成手段は、反応空間を外
部雰囲気と遮断することができる隔壁を有し、加熱手段
により反応空間内を、特に気相成長炭素繊維生成領域を
所定の温度に維持することができ、一端に原料ガス供給
手段およびキャリヤガス供給手段を備えた反応管であ
る。
【0017】さらに好適な反応空間形成手段は、反応空
間を外部雰囲気と遮断することができる隔壁を有し、加
熱手段により反応空間内を、特に気相成長炭素繊維生成
領域を所定の温度に維持することができ、一端に原料ガ
ス供給手段およびキャリヤガス供給手段を備え、気体が
ピストンフローに近い状態で、換言すると、ガスの流通
に実質的な乱れのない状態で、流通することができるよ
うに形成された縦型反応管である。
【0018】反応管はその中心線が垂直になっている縦
型反応管、その中心線が水平になっている横型反応管お
よびその中心線が傾斜している傾斜型反応管のいずれも
採用することができる。もっとも、反応管の中心線に直
交する断面において均一な温度分布を有するように反応
管内を良好に加熱すると言う観点よりすると、反応管は
縦型反応管が好ましい。
【0019】縦型反応管を採用する場合に、原料ガスを
初めとする気流を下から上へと流通させることにより、
気相成長炭素繊維を製造することも技術的に可能であ
る。
【0020】しかし、気流を上から下へと流通させる方
が好ましい。というのは、前記加熱手段たとえば電気炉
により、縦型反応管の上部が高温であり、縦型反応管の
下部が低温であるように、縦型反応管の上部から下部へ
と温度勾配を設けると、縦型反応管内で対流が起き難く
なるからである。縦型反応管の上部の温度と縦型反応管
の下部の温度差は、縦型反応管内で上下方向の対流が生
じないようにすることができる限り特に制限はない。も
し縦型反応管中で上部温度と下部温度とに他の理由によ
り温度勾配が生じていないときには、縦型反応管中の上
部温度と下部温度とに温度勾配を特に設ける必要はな
い。
【0021】縦型反応管を含む反応管の形状についても
特に制限がなく、その中心線に直交する断面が方形、長
方形、多角形、楕円形、および円形のいずれであっても
良い。もっとも、中心線に直交する断面が円形である円
筒状反応管が好適であり、また汎用的でもある。
【0022】反応管の一端部には、後述する原料ガス供
給手段、および後述するキャリヤガス供給手段が設けら
れる。
【0023】反応管中に形成される前記ピストンフロー
としては、理想的には反応管中を流通する流体の微小部
分が、その流体の理想的な流れ方向に対して直交する方
向での流体断面における任意位置において、同じ方向に
同じ速度で移動している状態を挙げることができ、流体
がシリンダー内でピストンにより押し出されるときのよ
うな流通状態を含む。また、ピストンフローに近い流通
状態は、対流や乱流の実質的に生じていない流通状態を
含む。この発明においては、反応管中特に縦型反応管中
における気相成長炭素繊維生成領域において、対流を生
じさせないようにしてピストンフローに近い気流を実現
して気相成長炭素繊維を製造するのが好ましい。反応管
中特に縦型反応管中を原料ガスがピストンフローとなっ
て流通すると、ピストンフローではない気流の乱れによ
り反応管中特に縦型反応管中で生成した気相成長炭素繊
維が反応管内壁特に縦型反応管内壁に付着することが防
止され、連続的に生成した気相成長炭素繊維を気流とと
もに容易に取り出すことができるようになる。
【0024】反応管内特に縦型反応管内を流通する気体
がピストンフローに近い流通状態を形成するためには、
反応管中特に縦型反応管中に気流を整流する整流手段を
設けるのが好ましい。
【0025】整流手段としては、反応管内特に縦型反応
管内を流通する気体がピストンフローに近い流通状態と
なり得るように構成されている限り種々の構成あるいは
手段を採用することができ、たとえば、反応管特に縦型
反応管の中心線に直交する断面全体を覆い、しかも内部
孔を反応管軸に平行となるように配置されたハニカム
板、多孔質板および多数枚の平行に配列されたフィンの
集合体などを挙げることができる。また、このように配
置された整流手段と共に、あるいは整流手段に代えて、
後述する原料ガス供給手段たとえば原料供給ノズルと、
キャリヤガス供給手段たとえばキャリヤガス供給ノズル
との少なくともいずれかに他の整流手段を設けても良
い。
【0026】原料ガス供給手段は反応空間形成手段にお
ける反応空間中に原料ガスを供給する手段である。通
常、原料ガス供給手段として反応空間形成手段に設けら
れた原料ガス供給ノズルが挙げられる。
【0027】原料ガス供給ノズルは、反応管の一端部、
特に縦型反応管の上端部であって、反応管特に縦型反応
管の中心線に一致するように配置するのが好ましい。反
応管特に縦型反応管の中心線に一致するように原料ガス
供給ノズルを配置しておくと、その原料ガス供給ノズル
の先端開口部から吹き出すガスが反応管特に縦型反応管
の軸に平行な方向に流通し、反応管中特に縦型反応管中
の気相成長炭素繊維生成領域へと均一に流通するからで
ある。
【0028】原料ガス供給手段たとえば原料ガス供給ノ
ズルから供給されるガスは、原料ガス供給手段内たとえ
ば原料ガス供給ノズル内で凝縮し、あるいは分解したり
せずに、ガスを形成する各成分が良好に混合した状態で
あるのが好ましい。そのためには、原料ガス供給手段た
とえば原料ガス供給ノズルには、これによって反応管中
特に縦型反応管中に供給されるガスを所定の温度に制御
する温度調整手段およびガス中の成分の混合状態を良好
に調整する混合調整手段などの調整手段を備えているの
が好ましい。
【0029】前記調整手段の取り付け位置は、原料ガス
供給手段たとえば原料ガス供給ノズルから供給されるガ
スが実質的なピストンフローもしくはピストンフローに
近い状態となって反応管中特に縦型反応管中を流通する
ように噴出することが阻害されない限り、特に制限がな
い。前記調整手段の一例デアル温度調整手段としてガス
加熱手段またはガス冷却手段が、たとえば原料ガス供給
ノズル内に設けられる。
【0030】もっとも、原料ガス供給ノズルにガス加熱
手段およびガス冷却手段のいずれを設けるかは、原料ガ
ス供給ノズルの反応管中特に縦型反応管中での長さによ
って決定されることもある。たとえば、原料ガス供給ノ
ズルの先端部が反応管中特に縦型反応管中の気相成長炭
素繊維生成領域に到達するように十分長く原料ガス供給
ノズルの反応管中特に縦型反応管中での長さが設定され
ているときには、原料ガス供給ノズルが前記加熱手段特
に前記電気炉により加熱されるので、原料ガス供給ノズ
ルから反応管中特に縦型反応管中に供給されるガスの温
度が後述する炭素源のガスおよび触媒源のガス等の分解
温度以上になるから、このときには原料ガス供給ノズル
にガス冷却手段が設けられることがある。
【0031】また、原料ガス供給ノズルの先端部が反応
管、特に縦型反応管の中に形成される気相成長炭素繊維
生成領域よりも遠い位置にある場合には、原料ガス供給
ノズルから出た原料ガスが速やかにその分解温度にまで
昇温されて、気相成長炭素繊維の生成反応が円滑に行わ
れるように、原料ガス供給ノズルに補助的にガス加熱手
段が設けられることもある。
【0032】原料ガス供給手段たとえば原料ガス供給ノ
ズルから供給されるガスの温度は、通常200〜800
℃であり、たとえば原料ガス中のたとえば有機遷移金属
化合物がフェロセンなどのメタロセンなどであるときに
は、この原料ガス供給ノズルから供給されるガスは30
0〜600℃に加熱されるのが好ましい。換言すると、
300〜600℃に維持された原料ガスが反応管中特に
縦型反応管中に供給れるのが、好ましい。
【0033】この原料ガス供給ノズルには原料ガス用整
流手段を設けておくのが好ましい。原料ガス用整流手段
としては、原料ガス供給ノズルから吹き出す原料ガスを
整流することができる限りその構造等については特に制
限がなく、たとえば原料ガス供給ノズルの開口部に装着
するハニカム板、多孔質板および平行に配置された多数
枚のフィンの集合体等を挙げることができる。
【0034】この発明においては、反応管の一端部にお
いて、特に縦型反応管の上端部において、原料ガス供給
ノズルの周囲に、好ましくは原料ガス供給ノズルを囲繞
するようにして原料ガス供給ノズルの外側にキャリヤガ
ス供給ノズルが設けられる。原料ガス供給ノズルとキャ
リヤガス供給ノズルとの組合せとして、たとえば、反応
管の一端部特に縦型反応管の上端部に、反応管の中心線
と一致する中心線を有するように配置された円筒形の原
料ガス供給ノズルと、この原料ガス供給ノズルの外側
に、この原料ガス供給ノズルの中心線と一致する中心線
を有する円筒体を配置することにより、この円筒体の内
壁面と原料ガス供給ノズルの外壁面とで形成される環状
の吹き出し口を有するキャリヤガス供給ノズルとの組合
せ、および、反応管の一端部特に縦型反応管の上端部
に、反応管の中心線と一致する中心線を有するように配
置された円筒形の原料ガス供給ノズルと、この原料ガス
供給ノズルの外側にこの原料ガス供給ノズルを囲繞する
ように配置された、同一または相違する直径の小さな複
数の円筒体であるキャリヤガス供給ノズルとの組合せ等
を挙げることができる。
【0035】原料ガス供給ノズルに対してキャリヤガス
供給ノズルをこのような配置関係で設けることにより、
加熱手段たとえば電気炉により反応管内特に縦型反応管
内に供給される熱が直ちに原料ガス供給ノズルに伝導す
るのを防止するという効果が奏される。もっとも、原料
ガス供給ノズルにガス冷却手段を設けておくことによ
り、加熱手段たとえば電気炉により原料ガス供給ノズル
から供給されるガスがオーバーヒートされることがさら
に有効に防止される。
【0036】かくしてキャリヤガス供給ノズルは、原料
ガス供給ノズルの外周に設けられるのであるが、このキ
ャリヤガス供給ノズルの外側にこれを囲繞するように、
キャリヤガスを反応管内特に縦型反応管内に供給する第
2キャリヤガス供給ノズルを設けるのも良い。
【0037】キャリヤガス供給ノズルから反応管内特に
縦型反応管内に供給されるところのキャリヤガスが所定
の温度、たとえば600〜1,700℃、好ましくは8
00〜1,500℃の温度範囲から選択される適宜の温
度に調整され、反応管内特に縦型反応管内での対流を有
効に防止することができるように、キャリヤガスの温度
を調整する第1温度調整手段を設けるのも好ましい。
【0038】第1温度調整手段の取付位置は、キャリヤ
ガス供給ノズルから反応管内特に縦型反応管内に供給さ
れるキャリヤガスが所定の温度になるように決定され、
たとえばキャリヤガス供給ノズル内に第1温度調整手段
を設けても良く、またキャリヤガス供給ノズルの上流側
に第1温度調整手段を設けても良い。
【0039】キャリヤガス供給ノズルにおいて前記第1
温度調整手段により調整されるキャリヤガスの温度は、
反応管内特に縦型反応管内の気相成長炭素繊維生成領域
における温度と同じかそれよりも高い温度に調整される
のが好ましい。これによって、(1) 反応管内特に縦型反
応管内での対流の発生の防止、(2) 原料ガス供給手段た
とえば原料ガス供給ノズルより供給される低温度の原料
ガスに熱を供給することにより触媒源の分解、触媒の形
成、および気相成長炭素繊維の生成が円滑に行われる、
等の効果が奏されて気相成長炭素繊維の迅速な生成が達
成される。
【0040】この発明においては、反応管内特に縦型反
応管内の気相成長炭素繊維生成領域において気流がピス
トンフローとなるようにしむけることが好ましい。前記
したように、キャリヤガス供給ノズルから供給されるガ
スの温度を原料ガス供給ノズルから供給されるガスの温
度よりも高くすることによる対流発生の防止が、気流の
ピストンフローの形成に寄与している。
【0041】キャリヤガス供給ノズルおよび原料ガス供
給ノズルから反応管内に供給されるガスが反応管中で良
好なピストンフローとなるように、キャリヤガスを整流
する第1整流手段を設けるのが好ましい。第1整流手段
としてはたとえば、ハニカム板、多孔質板、平行に配列
された複数枚のフィンの集合体等を挙げることができ
る。このような第1整流手段は、キャリヤガス供給ノズ
ルのガス噴出穴を覆うように装着するのが好ましい。
【0042】第2キャリヤガス供給ノズルを設ける場
合、これは、前記キャリヤガス供給ノズルを第1キャリ
ヤガス供給ノズルとしてこの第1キャリヤガス供給ノズ
ルの外側に設けられる。
【0043】この第2キャリヤガス供給ノズルは、反応
管壁に沿ってキャリヤガス(以下において、第2キャリ
ヤガスと称することがある。)が流通するようにこれを
噴出させる機能を有する。
【0044】そして、この第2キャリヤガスを反応管壁
に沿って流通させることは、反応管内特に縦型反応管内
における気相成長炭素繊維生成領域で生成する気相成長
炭素繊維あるいは黒鉛成分ないし炭素成分等の付着成分
が、反応管特に縦型反応管内の内壁に付着するのを防止
する点で、好ましい。さらにこれらの付着成分が、反応
管特に縦型反応管内の内壁に付着するのを有効に防止す
るには、第2キャリヤガス供給ノズルから噴出する第2
キャリヤガスを、気相成長炭素繊維の生成反応を阻害す
るガスにし、または第2キャリヤガスが気相成長炭素繊
維の生成反応に影響を与えないガスであるときには、そ
の第2キャリヤガスの流速を第1キャリヤガス供給ノズ
ルから噴出する第1キャリヤガスの流速よりも大きくす
るのが、好ましい。こうすることにより、気相成長炭素
繊維生成領域で生成した気相成長炭素繊維およびその他
の物質が反応管内壁特に縦型反応管内壁に付着するのが
有効に防止される。したがって、このような機能が達成
される限り、この第2キャリヤガス供給ノズルの形状、
構造あるいは配置について特に制限がない。
【0045】第2キャリヤガスの流速を第1キャリヤガ
スの流速よりも大きくする場合、第2キャリヤガスの流
速を混合ガスの流速に対して1.01〜3倍程度に大き
くするのが好ましい。
【0046】第2キャリヤガス供給ノズルから反応管内
が特に反応管内に供給される第2キャリヤガスが所定の
温度に調整されるように、第2キャリヤガスの温度を調
整する第2温度調整手段を設けるのが好ましい。第2温
度調整手段は、気相成長炭素繊維生成領域における温度
よりも低い温度の第2キャリヤガスが供給されると、反
応管中、特に縦型反応管中で対流が発生し易いので、そ
れを有効に防止するために、第2温度調整手段は気相成
長炭素繊維生成領域の反応温度もしくはそれよりも高い
温度に第2キャリヤガスを維持することができるよう
に、形成される。また、この第2温度調整手段は、低い
温度に維持された原料ガスを迅速に反応温度にまで高め
るようにも作用する。
【0047】第2温度調整手段の取付位置は、第2キャ
リヤガス供給ノズルから反応管内特に縦型反応管内に供
給される第2キャリヤガスが所定の温度になるように調
整することのできる位置であれば特に制限がなく、たと
えば第2キャリヤガス供給ノズル内に第2温度調整手段
を設けても良く、また第2キャリヤガス供給ノズルの上
流側に第2温度調整手段を設けても良い。
【0048】第2キャリヤガス供給ノズルにおいて前記
第2温度調整手段により調整される第2キャリヤガスの
温度は、第1キャリヤガス供給ノズルから吹き出す第1
キャリヤガスの温度よりも高く設定することもできる
し、また場合によっては、原料ガス供給ノズルから供給
されるガスの温度よりも高いが第1キャリヤガスの温度
よりも低い温度に設定することもできる。第2キャリヤ
ガスの温度を前記いずれの温度に設定しても、原料ガス
供給ノズルから供給されるガス、第1キャリヤガスおよ
び第2キャリヤガスによる流体が実質的にピストンフロ
ーに近い流通状態になり、対流の発生を防止することが
できて気相成長炭素繊維の製造を良好に行うことができ
る。特に、第2キャリヤガスの温度が第1キャリヤガス
の温度よりも高い場合には、原料ガス供給ノズルから供
給されるガスの周囲を第1キャリヤガスと共に第2キャ
リヤガスが包み込み、しかも第2キャリヤガスの温度が
原料ガス供給手段より供給されるガスの温度よりも高い
値になっているので、第2キャリヤガスと第1キャリヤ
ガスと原料ガス供給ノズルより供給されるガスとの間で
の対流発生が防止される。その結果、気相成長炭素繊維
生成領域における気流の乱れが防止され、気相成長炭素
繊維が良好に生成される。
【0049】前記したように、第2キャリヤガスの温度
を第1キャリヤガスの温度よりも高く、第1キャリヤガ
スの温度を原料ガスの温度よりも高くすることにより、
あるいは第1キャリヤガスの温度を第2キャリヤガスの
温度よりも高く、第1キャリヤガスの温度を原料ガスの
温度よりも高くすることにより、反応管内特に縦型反応
管内での対流発生が防止され、気流のピストンフローに
近い流通状態が良好に形成される。
【0050】第2キャリヤガス供給ノズルから反応管内
特に縦型反応管内に供給される第2キャリヤガスが原料
ガスおよび第1キャリヤガスと共に反応管中特に縦型反
応管中で良好なピストンフローに近い流通状態が形成さ
れるようにするには、第2キャリヤガスを整流する第2
整流手段を第2キャリヤガス供給ノズルに設けるのが好
ましい。第2整流手段としてはたとえば、ハニカム板、
多孔質板、および平行に配列された複数のフィン集合体
等を挙げることができる。このような第2整流手段は、
第2キャリヤガス供給ノズルを覆うように装着するのが
好ましい。
【0051】原料ガス供給ノズル、第1キャリヤガス供
給ノズルおよび第2キャリヤガス供給ノズルの好適例を
述べると以下のようである。
【0052】すなわち、原料ガス供給ノズルは、縦型反
応管の中心線に一致するように配置され、かつ縦型反応
管の上端に設けられた円筒体であり、第1キャリヤガス
供給ノズルは前記原料ガス供給ノズルを形成する円筒体
の外周を囲繞するように、縦型反応管の上端に設けられ
た円筒管すなわち内筒管と、前記円筒体とで形成され、
したがって、この第1キャリヤガス供給ノズルは、縦型
反応管の内部下方から見ると環状に開口した状態にな
り、第2キャリヤガス供給ノズルは、第1キャリヤガス
供給ノズルにおける内筒管と縦型反応管の内壁とで形成
され、この第2キャリヤガス供給ノズルを縦型反応管の
内部下方から見ると環状に開口した状態に形成される。
【0053】もっとも、原料ガス供給ノズル、第1キャ
リヤガス供給ノズルおよび第2キャリヤガス供給ノズル
の好適例は上記の例に限られない。
【0054】要は、原料ガス供給ノズルから反応管中に
拡散するガスを気相成長炭素繊維生成領域にピストンフ
ローに近い流通状態にして流通させることができるよう
に、また、第1キャリヤガス供給ノズルは前記原料ガス
供給ノズルから噴出するガスを囲繞するように、あるい
は包み込むように噴出して、原料ガス供給ノズルからの
ガスを気相成長炭素繊維生成領域に同伴することができ
るように、また第2キャリヤガス供給ノズルは、反応管
内壁に沿って流通し、気相成長炭素繊維生成領域におい
ては気相成長炭素繊維が反応管内壁に付着するのを防止
するように流通することができるように形成されていれ
ば良い。
【0055】したがって、原料ガス供給ノズルは、縦型
反応管の上端に、縦型反応管の中心線に一致するよう
に、配置された円筒体であり、第1キャリヤガス供給ノ
ズルは、前記原料ガス供給ノズルの外周を囲繞するよう
に配置された多数の小口径ノズルの集合体であり、第2
キャリヤガス供給ノズルは反応管の内壁と前記小口径ノ
ズルの集合体とで形成される環状の空間であっても良
い。
【0056】原料ガス供給ノズルから反応管内特に縦型
反応管内には、原料ガス、および必要に応じて添加され
るキャリヤガスが供給される。
【0057】前記原料ガスは、気相成長炭素繊維を形成
する炭素源と気相成長炭素繊維生成の触媒となり得る遷
移金属を含有する触媒源とを少なくとも含有し、好適に
は助触媒源をも含有する。炭素源と触媒源とをガス状に
して原料ガス供給手段たとえば原料ガス供給ノズルを経
由して反応空間形成手段たとえば反応管特に縦型反応管
の内部に供給することができるのであれば、原料ガスに
は特にキャリヤガスを必須とはしないけれど、炭素源と
触媒源とが原料ガス供給手段たとえば原料ガス供給ノズ
ル中で、あるいはそれ以前に分解してしまうのを防止
し、かつ円滑に反応空間形成手段たとえば反応管特に縦
型反応管の内部に炭素源と触媒源とを供給するには、多
くの場合、原料ガス中にキャリヤガスが含まれているの
が望ましい。すなわち、好適な原料ガスは、炭素源と、
触媒源と、必要に応じて添加され助触媒源と、キャリヤ
ガスとを含有する。
【0058】前記炭素源としては、触媒源を構成する化
合物中の炭素成分および有機化合物を挙げることができ
る。触媒源を構成する炭素成分の含有量が気相成長炭素
繊維を生成するのに十分な量であるときには、触媒源は
反応中に触媒となる遷移金属を供給する機能のほかに気
相成長炭素繊維となる炭素の供給源としての機能を有す
る。したがって、原料ガスは炭素源でもある触媒源から
なることもある。また、原料ガスは炭素源と触媒源とを
共に含有してなることもある。
【0059】触媒源としては有機遷移金属化合物を挙げ
ることができる。この有機遷移金属化合物は、反応空間
内で分解することにより触媒としての遷移金属を発生さ
せることのできる有機金属化合物である限り特に制限が
ない。有機遷移金属化合物を構成する好適な遷移金属
は、周期律表第VIII族に属する金属を挙げることができ
る、特に好適な遷移金属は、鉄、ニッケルおよびコバル
トよりなる群から選択される少なくとも一種であり、更
に好適な遷移金属は鉄である。これらの外に有機遷移金
属化合物を構成し得る遷移金属の具体例としては、特公
昭62−49363号公報の第5欄第14行から第22
行までに記載されたスカンジウム、チタン、バナジウ
ム、クロム、マンガン等の金属を挙げることができる。
【0060】炭素源である有機化合物は反応空間内で気
相成長炭素繊維を形成するための炭素源となり得る化合
物である限り特に制限がない。この発明の方法に使用さ
れる炭素源としての有機化合物としては、特公昭62−
49363号公報の第4欄第14行から第37行までに
記載の化合物を挙げることができる。好適な有機化合物
としては、ベンゼン、トルエン、スチレン等の芳香族炭
化水素化合物、メタン、エタン、プロパン等の脂肪族炭
化水素化合物を挙げることができる。またこれらはその
一種を単独で使用することもできるし、その二種以上を
組みあわせて使用することもできる。
【0061】助触媒源としては、前記触媒源から発生す
る触媒金属と相互作用して気相成長炭素繊維の生成を促
進することのできるものであれば良く、たとえばベンゾ
チオフェン、チオフェン等の含硫黄複素環式化合物およ
び硫化水素等の硫黄化合物などが好適である。
【0062】原料ガス供給手段たとえば原料ガス供給ノ
ズルから供給される前記キャリアガスとしては、気相成
長炭素繊維の生成反応に影響を与えない限り特に制限が
なく、ヘリウム、ネオン、アルゴン等の希ガス、窒素ガ
スおよび水素ガスなどを挙げることができる。好ましい
のは水素ガスである。
【0063】原料ガス供給手段たとえばキャリヤガス供
給ノズルから反応空間内に供給されるキャリヤガスとし
ては、気相成長炭素繊維の生成反応に影響を与えない限
り特に制限がなく、ヘリウム、ネオン、アルゴン等の希
ガス、窒素ガスおよび水素ガスなどを挙げることがで
き、好ましいのは水素ガスである。キャリヤガス供給手
段たとえばキャリヤガス供給ノズルから供給されるキャ
リヤガスと原料ガス供給手段たとえば原料ガス供給ノズ
ルから供給されるキャリヤガスとは同じ種類、たとえば
水素ガスであるのが望ましい。
【0064】前記キャリヤガス供給ノズルが第1キャリ
ヤガス供給ノズルと第2キャリヤガスとからなるときに
は、この第1キャリヤガス供給ノズルから供給されるガ
スとして、前記キャリヤガスと前記炭素源とを含有する
混合ガス、または前記キャリヤガスと二酸化炭素との混
合ガスを採用することもできる。
【0065】第2キャリヤガス供給ノズルからは前記キ
ャリヤガス供給ノズルから供給するのと同じキャリヤガ
スを供給することが好ましい。
【0066】この発明における好適な連続加熱体は、前
記反応空間形成手段たとえば反応管特に縦型反応管の内
部に供給された原料ガスを加熱し、かつ反応空間中を気
流方向に移動するように形成されることができる。この
連続加熱体は、原料ガス供給手段たとえば原料供給ノズ
ルから供給され、しかも原料ガスの分解温度よりも低い
温度に調整された原料ガスに熱を与え、触媒源の分解、
触媒の形成および触媒の活性化を迅速に達成し、高収率
で気相法成長炭素繊維を生成するのに役立つように機能
する。
【0067】この連続加熱体は、原料ガスを加熱するこ
とができ、しかも、生成する気相長炭素繊維が原料ガス
の流れを乱す程に付着しない材質で形成されているので
のであれば、原料ガス供給手段たとえば原料ガス供給ノ
ズルおよびキャリヤガス供給手段たとえばキャリヤガス
供給ノズルのいずれかあるいはその両方から引き出され
て、反応空間中を気流方向に沿って移動するように、形
成されることができる。
【0068】この場合、(1) キャリヤガス供給手段たと
えばキャリヤガス供給ノズルからは引き出されずに原料
ガス供給手段たとえば原料ガス供給ノズルから連続加熱
体が引き出されて反応空間中を気流方向に沿って移動す
る態様、(2) 原料ガス供給手段たとえば原料ガス供給ノ
ズルからは引き出されずにキャリヤガス供給手段たとえ
ばキャリヤガス供給ノズルから引き出されて反応空間中
を気流方向に沿って移動する態様、および(3) 原料ガス
供給手段たとえば原料ガス供給ノズルおよびキャリヤガ
ス供給手段たとえばキャリヤガス供給ノズルの両方から
引き出されて反応空間中を気流方向に沿って移動する態
様が挙げられる。
【0069】原料ガス供給手段たとえば原料ガス供給ノ
ズルおよびキャリヤガス供給手段たとえばキャリヤガス
供給ノズルのいずれから連続加熱体が引き出されるにせ
よ、1基のノズルにつき複数の連続加熱体が引き出され
るのも好ましい。複数の連続加熱体が原料ガス供給手段
たとえば原料ガス供給ノズルおよびキャリヤガス供給手
段たとえばキャリヤガス供給ノズルのいずれかまたは両
方から引き出される場合、連続加熱体が引き出される位
置は、反応管特に縦型反応管の軸線に対して互いに対称
になっているのが、好ましい。たとえば、キャリヤガス
供給ノズルから連続加熱体が引き出されるその位置が二
箇所であるとき、その位置が、反応管特に縦型反応管の
中心軸に直交する面内において、前記中心軸を中心にし
て180度の回転対称となるように、決定される。ま
た、キャリヤガス供給ノズルから連続加熱体が引き出さ
れるその位置が四箇所であるとき、その位置が、反応管
特に縦型反応管の中心軸に直交する面内において、前記
中心軸を中心にして90度の回転対称となるように決定
される。このように、連続加熱体を引き出すn個の引き
出し位置(ただし、nは360/nが整数となる数であ
る。)は、反応管特に縦型反応管の中心軸に直交する面
内において、前記中心軸を中心にして360/n度の回
転対称となるように、決定される。
【0070】前記連続加熱体の移動方式として、前記原
料ガス供給手段たとえば原料ガス供給ノズルおよびキャ
リヤガス供給手段たとえばキャリヤガス供給ノズルのい
ずれかまたは両方から引き出された連続加熱体が、反応
管中特に縦型反応管中を気流方向に沿って移動し、次い
で、再び元の原料ガス供給手段たとえば原料ガス供給ノ
ズルおよび/または元のキャリヤガス供給手段たとえば
キャリヤガス供給ノズルに戻り、再度これら原料ガス供
給手段たとえば原料ガス供給ノズルおよび/またはキャ
リヤガス供給手段たとえばキャリヤガス供給ノズルから
引き出されて反応管中特に縦型反応管中を気流方向に沿
って移動するように、反応管内特に縦型反応管内を必ず
通過する一方向循環移動方式(a) を挙げることができ
る。また別に、前記原料ガス供給手段たとえば原料ガス
供給ノズルおよび/またはキャリヤガス供給手段たとえ
ばキャリヤガス供給ノズルを通過した連続加熱体が反応
管中を気流方向に移動するだけの一方向通過方式(b) も
挙げられる。
【0071】前記一方向循環移動方式(a) の場合、(i)
反応空間形成手段たとえば反応管特に縦型反応管中で循
環移動するような、連続加熱体の移動機構が採用される
のも良いし、また、(ii)反応空間形成手段たとえば反応
管特に縦型反応管中を気流方向に沿って移動する連続加
熱体が、気相成長炭素繊維生成領域を通過した後に、一
旦反応空間形成手段たとえば反応管特に縦型反応管の外
に移動し、原料ガス供給手段および/またはキャリヤガ
ス供給手段に戻され、次いでこれらから引き出されて反
応空間形成手段たとえば反応管特に縦型反応管中を気流
方向に沿って移動するような、連続加熱体の移動機構が
採用されても良い。
【0072】一方向通過方式(b) の場合、反応空間形成
手段たとえば反応管特に縦型反応管中で気流方向に沿っ
て移動した連続加熱体が適宜の収容手段に収容されても
良いし、またこの連続加熱体が長尺の状態であるときに
は、反応空間形成手段たとえば反応管特に縦型反応管中
で気流方向に沿って移動した連続加熱体が反応空間形成
手段たとえば反応管特に縦型反応管の外で巻き取られる
ように形成されていても良い。
【0073】前記連続加熱体の形状としては、前記循環
移動方式(a) および一方向通過方式(b) のいずれかに適
合するものであれば特に制限がなく、チェーン、ワイヤ
ー等の倦回可能な条体が挙げられる。連続加熱体の形状
としては、これらの中でも凹凸のない、表面の平滑なワ
イヤーが好ましい。と言うのは、反応空間形成手段たと
えば反応管特に縦型反応管内に外気を導伴することな
く、反応空間形成手段たとえば反応管特に縦型反応管内
を外気から遮断した状態でワイヤーを導入しやすいから
であるい。また、原料ガスを反応空間形成手段内で均一
に加熱すると言う観点からすると、この連続加熱体は熱
容量の大きな材質で形成されているのが好ましく、たと
えば、耐熱性材料で形成された短い複数の円筒体または
円柱体を相互に適宜の連結部材で一連に連結されてなる
連続加熱体、ワイヤーに、耐熱性材料で形成された短い
複数の円筒体を挿通してなる連続加熱体等を挙げること
ができる。
【0074】前記連続加熱体は、反応空間形成手段内に
おける温度たとえば800℃〜1500℃位の温度で化
学的および物理的な変化を生じさせない程の耐熱性を有
する材料で形成されるのが好ましい。たとえば連続加熱
体が鉄で形成されている場合には、鉄に含まれている他
の金属の一部が炭素と反応していわゆる浸炭を生じるの
で、好ましくない。したがって、好ましい連続加熱体の
材料として、少なくとも浸炭を起こさない材料が好ま
れ、具体的にはアルミナ等のセラミックス、浸炭不可能
な金属等を挙げることができる。また、この連続加熱体
は、表面が平滑であるのが好ましい。すなわち表面平滑
な連続加熱体が好ましい。ここで、表面平滑とは、その
表面に気相成長炭素繊維が付着せず、あるいは連続加熱
体の凹凸部に触媒源の分解により生成した金属が粒子と
なって付着し、その金属粒子から気相成長炭素繊維が生
成することのない程の平滑性を有することを意味する。
【0075】この連続加熱体は、通常600℃〜150
0℃、好ましくは800〜1300℃、更に好ましくは
900〜1200℃の温度を有して反応管中を気流方向
に沿って移動される。
【0076】例えば上記温度範囲の温度に連続加熱体を
維持するには、以下の手段が挙げられる。
【0077】先ず第一は、連続加熱体が電気的に高抵抗
の金属製の長尺の条体であるときには、この連続加熱体
に通電することにより連続加熱体自身を発熱させる手
法、および連続加熱体自身の内部に加熱手段たとえばヒ
ータを設けることにより、連続加熱体の内部のヒータに
より連続加熱体を発熱させる手法等を挙げることができ
る。これら手法においては、連続加熱体は自己発熱型構
造を有する連続加熱体であると称することができる。
【0078】第二は、連続加熱体の内部に加熱手段を有
さず、反応空間ないたとえば反応管を加熱する外部熱源
たとえば電気炉からの輻射熱により加熱される外部加熱
構造の連続加熱体、すなわち外部加熱型連続加熱体を挙
げることができる。
【0079】反応空間中たとえば反応管中に連続加熱体
を設けない場合、反応管内雰囲気(反応空間内雰囲気)
は、輻射熱の吸収率が低いので、反応空間内たとえば反
応管内での原料ガスの昇温速度が小さい。そこで前記第
二の手段は、輻射熱の吸収率の高い連続加熱体を設け
て、輻射熱を吸収させ、それと接触する原料ガスの昇温
速度を高めようとするものである。
【0080】上述の両連続加熱体は、原料ガスとの接触
面積を大きくする点から、細い連続加熱体を多数走行さ
せるのが好ましい。ただし、多数といっても、連続加熱
体が相互に輻射を受けるのを妨げるほどでは、かえって
効率が悪くなる。
【0081】また、連続加熱体を、原料ガスの流れ方向
(縦方向)に多数走行させると、原料ガスの横方向への
流れを妨げるので、ピストンフローを維持する点からも
好ましい。
【0082】連続加熱体の走行速度(移動速度)は、反
応空間内たとえば反応管内を流れる原料ガスの速度とほ
ぼ等しくすることが、ピストンフローを乱さない点から
好ましい。
【0083】一方、気相成長炭素繊維生成領域におい
て、連続加熱体の表面付近の温度が、繊維の生成に最適
であると、連続加熱体表面に繊維が生成、付着して、繊
維回収率を下げたり、連続加熱体再使用の前に清掃が必
要となったりして、好ましくない。特に前記第二の手段
において、外部熱源からの輻射熱によって連続加熱体の
表面付近の温度が、繊維の生成に最適となった場合、連
続加熱体の表面付近の温度を該最適温度よりも高くする
ために、連続加熱体の走行速度を遅くすることは、連続
加熱体表面への繊維の生成、付着を防止する点で好まし
い。
【0084】反応空間中たとえば反応管中における前記
連続加熱体の移動速度は、通常の場合1〜500cm/
分、好ましくは5〜500cm/分、更に好ましくは5
〜100cm/分、更に好ましくは10〜50cm/
分、特に好ましくは10〜30cm/分である。このよ
うな移動速度で反応管中を前記連続加熱体が移動するこ
とにより、この発明の目的をより一層良く達成すること
ができる。
【0085】この発明の方法は以下のようにして使用さ
れることができる。
【0086】すなわち、原料ガス供給手段たとえば原料
ガス供給ノズルを通じて反応空間形成手段たとえば反応
管特に縦型反応管の内部に導入された原料ガスは、キャ
リヤガス供給手段たとえばキャリヤガス供給ノズルから
反応空間形成手段たとえば反応管特に縦型反応管の内部
に供給されるキャリヤガスにより同伴されて、気相成長
炭素繊維生成領域に至る。この気相成長炭素繊維生成領
域では、原料ガス中の触媒源たとえば遷移金属化合物お
よび炭素源たとえば有機化合物は、加熱されることによ
り分解され、その結果、触媒金属の作用により気相成長
炭素繊維が生成する。
【0087】ここで、たとえばキャリヤガス供給ノズル
に第1温度調整手段が設けられ、必要に応じて設けられ
る第2キャリヤガス供給ノズルに第2温度調整手段が設
けられていると、温度調整されたキャリヤガスが反応管
内に供給されることになり、また温度調整された第2キ
ャリヤガスが反応管内に供給されることになり、たとえ
ば加熱されないガスが反応管中に供給されることにより
生じる温度低下による気相成長炭素繊維の生成反応の効
率の低下が防止される。
【0088】しかも、第1キャリヤガスおよび第2キャ
リヤガスの温度を反応管特に縦型反応管中の気相生成炭
素繊維生成領域の温度と同じかそれよりも高く設定して
おくことにより、反応管特に縦型反応管内では、原料ガ
スの外側に高温の第1キャリヤガスおよび第2キャリヤ
ガスが存在するので、原料ガスから第1キャリヤガスお
よび第2キャリヤガスに向かってのガスの対流が起こら
なくなる。この対流の消失により、反応管特に縦型反応
管内を流通する気体がピストンフローに近い流通状態に
なり、気相成長炭素繊維の生成が良好になる。また、第
1キャリヤガスおよび第2キャリヤガスの温度を反応管
特に縦型反応管中の気相成長炭素繊維生成領域の温度と
同じかそれよりも高く設定しておくことにより、たとえ
ば縦型反応管の上部に低温領域の発生を防止することが
でき、低温領域の発生により縦型反応管中での上下方向
の対流の発生を有効に防止することができる。
【0089】キャリヤガス供給ノズルに第1整流手段が
設けられ、しかも第2キャリヤガス供給ノズルに第2整
流手段が設けられていると、反応空間中たとえば反応管
中を流通するガス全体がピストンフローに近い流通状態
になり、気相成長炭素繊維の生成を阻害する対流の発生
が防止される。
【0090】反応空間中たとえば反応管中を連続加熱体
が移動すると、原料ガス供給ノズル内で原料ガスの分解
温度以下に調整された原料ガスが連続加熱体により加熱
され、原料ガス中の触媒源の分解、触媒の形成、形成さ
れる触媒の迅速な活性化が促進される。また連続加熱体
が移動しているので、連続加熱体の表面にたとえススが
付着することがあったとしても、付着するススは連続加
熱体と共に、気相法成長炭素生成領域外に迅速に排除さ
れる。また、この連続加熱体の移動は、ガスの流通方向
に沿っているので、原料ガスなどのガスの気流を乱すこ
とがない。これらの諸要素により、気相成長炭素繊維が
高収率でススの発生を抑制して製造される。
【0091】(具体的説明)この発明の気相成長炭素繊
維製造装置の一実施例を、図面を参照しながら、詳細に
説明する。なお、この発明は以下の実施例に限定される
ものではない。
【0092】−装置構成例− 図1に示される気相成長炭素繊維製造装置1は、原料タ
ンク2、原料ポンプ3、気化器4、第1マスフローコン
トローラ5、第2マスフローコントローラ6、原料ガス
供給ノズル7、反応管8、電気炉9、捕集容器10、整
流筒11、連続加熱体12等を備えてなる。
【0093】反応空間を有する反応管8は、その中心軸
線が縦になるように立設された円筒管状体である。すな
わち、この反応管8は円筒状の縦型反応管である。反応
管8の上端部には、反応管8の中心線を共通にする中心
線を有する環状筒体である原料ガス供給ノズル7が挿入
配置されている。
【0094】前記原料ガス供給ノズル7には、原料を供
給する配管14が接続され、配管14の途中には支管1
5が分岐し、その支管15には第2マスフローコントロ
ーラ6が接続され、その第2マスフローコントローラ6
には水素ガスおよび窒素ガスが導入されてこれらの混合
ガスの流量を一定にする。前記配管14には、前記支管
15の分岐位置よりも源流側に、気化器4が接続され、
原料ポンプ3を介して原料タンク2から取り出した原料
をガス化するようになっている。
【0095】反応管8の内部における上方において、こ
の原料ガス供給ノズル7の周囲にキャリヤガス供給ノズ
ル7aが設けられている。このキャリヤガス供給ノズル
7aの、反応管8の中心線に直交する面すなわち水平面
の形状は、前記原料ガス供給ノズル7の外部を囲繞する
ように形成された環状である。
【0096】このキャリヤガス供給ノズル7aの内部に
は、整流手段である整流筒11が装填される。整流筒1
1の上端と反応管8の上端部との間には所定の空間が設
けられている。この整流筒11は、整流筒11の上端と
反応管8の上端部との間に設けられた空間内に供給され
たキャリヤガスを加熱して整流筒11の下端面から反応
管8内にこれを整流として流通させる機能を有する。こ
の整流筒11は、反応室内で所定の気流を形成するため
のキャリヤガスを所定の温度に加熱する機能および反応
管8内での気流を整流する機能を有しているのがさらに
好ましい。このような機能を十分に発揮させるには、こ
の整流筒11は、ハニカム構造を有しているのが好まし
い。ハニカムセル中のキャリヤガスが流通する間に、電
気炉9により反応管8を介して加熱されたハニカムセル
にキャリヤガスが接触することにより、キャリヤガスが
加熱される。
【0097】このキャリヤガス供給ノズル7aには、キ
ャリヤガスを導入する配管13が接続される。
【0098】前記配管13には第1マスフローコントロ
ーラ5が接続される。この第1マスフローコントローラ
5にはキャリヤガスであるところの、水素ガスおよび必
要に応じて混合される窒素ガス等のガスが供給されるよ
うになっている。この第1マスフローコントローラ5に
より、反応管8に供給される水素ガスまたは水素ガスと
窒素ガスとの混合物の流量が調整されるようになってい
る。
【0099】反応管8の下端部には捕集室である捕集容
器10が接続される。
【0100】この実施例の気相成長炭素繊維製造装置に
おいては、連続加熱体12が装着されている。この連続
加熱体12は、ステンレス(SUS310S)製の、直
径が1mmのワイヤである。この連続加熱体12は、反
応管8外に設置されたワイヤー繰り出しリール12Aか
ら繰り出され、原料ガス供給ノズル7内に導入され、こ
れを通過し、原料ガス供給ノズル7から反応管8内を下
降して捕集容器10内に到り、最終的には反応管8外に
設けられたワイヤー巻取りリール12Bに巻き取られる
ように、なっている。このワイヤー巻取りリール12B
は図示しない駆動手段により回転駆動することができ
る。
【0101】この連続加熱体12は、電気炉により加熱
された反応管8からの輻射熱により加熱される。
【0102】反応管8の外周には加熱手段である電気炉
9が設けられ、この電気炉9は所定温度に発熱するよう
になっている。なお、図示されていないが、この電気炉
9を制御して電気炉9の発熱温度を所定温度に維持する
ように制御装置が設けられる。
【0103】前記捕集容器10は、排気口16を有し、
また、捕集容器10内に集積された気相成長炭素繊維を
取り出すことができるように工夫される。そのような工
夫は当業者により容易に考えられることであるから、こ
こでは特に説明を要しない。以上構成の気相成長炭素繊
維製造装置1によると、以下のようにして気相成長炭素
繊維が製造される。
【0104】電気炉9を作動することにより反応管8内
を所定温度に加熱する。第1マスフローコントローラ5
により流量の調整された水素ガスまたは水素ガスと窒素
ガスとの混合物である第1キャリヤガスが配管13を介
してキャリヤガス供給ノズル7aより反応管8内に導入
される。第1キャリヤガスは整流筒11で加熱され、整
流筒11によって整流となって反応管8内の気相成長炭
素繊維生成領域に導入される。
【0105】この整流筒11により、加熱されていない
第1キャリヤガスが反応領域へ直接に導入されることに
より気相成長炭素繊維生成領域が冷却されることが防止
され、気相成長炭素繊維生成領域における気流速度が気
相成長炭素繊維生成に必要な速度に調整される。
【0106】一方、原料タンク2内に貯留されている原
料たとえば遷移金属化合物と有機化合物との混合液が原
料ポンプ3により汲み出されて気化器4で気化され、生
成するガス状混合物は、第2マスフローコントローラ6
により流量の調整された水素ガスまたは水素ガスと窒素
ガスとの混合物と混合されて原料ガスとして、原料ガス
供給ノズル7内に導入される。この原料ガスは、言うま
でもなく、遷移金属化合物と有機化合物とキャリヤガス
との混合ガスである。
【0107】一方、連続加熱体12は、ワイヤー巻取り
リール12Bにより、一定の走行速度で、原料ガス供給
ノズル7および反応管8内を、気流方向に沿って、走行
する。電気炉9により加熱された反応管8からの輻射熱
により加熱された連続加熱体12が、原料ガス供給ノズ
ル7内を走行することにより、原料ガス供給ノズル7の
内表面に金属鏡が形成されることもない。ノズルから反
応管8内に出て来た連続加熱体12は輻射熱を受けて更
に加熱される。
【0108】原料ガス供給ノズル7を通過した連続加熱
体12は、反応管8内を、気流方向に沿って移動、走行
し、ワイヤ巻取りリール12Bに巻き取られる。
【0109】加熱された連続加熱体12が反応管8内を
走行することにより、原料ガスを加熱し、触媒源の分
解、触媒の形成、触媒の活性化をさらに促進するという
作用を奏する。
【0110】原料ガスは、原料ガス供給ノズル7内を通
過する間に、所定温度に予備加熱され、予備加熱された
原料ガスが原料ガス供給ノズル7の先端開口部から反応
管8内の気相成長炭素繊維生成領域に導出される。
【0111】図2にこの発明の気相成長炭素繊維製造装
置の第2の実施例を示す。
【0112】図2に示される気相成長炭素繊維製造装置
100は、原料タンク102、ポンプ103、気化器1
04、ヒートブロック105、第1マスフローコントロ
ーラ106、第2マスフローコントローラ107、第3
マスフローコントローラ108、ヒートチューブ10
9、原料ガス供給ノズル110、反応管111、内筒管
112、第1キャリヤガス供給ノズル113、第2キャ
リヤガス供給ノズル114、電気炉115、捕集箱11
6、および排気管117、連続加熱体124、回転ロー
ラー125を備えてなる。
【0113】反応管111は、その中心線が縦になるよ
うに立設された円筒管状体であり、その上端部である天
井部には原料ガス供給ノズル110が装着される。な
お、この反応管111は縦型反応管とも称される。
【0114】前記原料ガス供給ノズル110は、その下
端先端部に原料ガス供給口118を有する円筒管状体で
あり、その下端先端部を前記反応管111内部に挿入し
た状態で前記反応管111の天井部の中心に装着されて
いる。換言すると、この原料ガス供給ノズル110の中
心線は反応管111の中心線と一致する。
【0115】原料ガス供給ノズルを形成する円筒環状体
の壁体は、内壁と外壁とからなる二重壁となっている。
この内壁と外壁との間隙からは、冷却用窒素ガスが流出
していて、第1温度調整手段によって加熱された第1キ
ャリヤガスの熱により原料ガスがオーバーヒートしない
ようになっている(窒素ガスの入出の配管は図示せ
ず。)。
【0116】前記原料ガス供給ノズル110には整流装
置(図示せず。)および温度調整装置(図示せず。)が
設けられていて、原料ガス供給ノズル110から噴出す
る原料ガスが所定温度に調整され、かつ整流されて流出
するようになっている。この整流装置はこの発明におけ
る整流手段であり、この温度調整装置はこの発明におけ
る温度調整手段である。
【0117】前記原料ガス供給ノズル110の上端部に
は、原料ガスおよびキャリヤガスからなる混合ガスをこ
の原料ガス供給ノズル110に供給するヒートチューブ
109が接続される。このヒートチューブ109にはヒ
ータが倦回されていて、ヒートチューブ109内を流通
する前記混合ガスが所定温度に維持されるようになって
いる。ヒートブロック105で所定の温度に調整された
前記混合ガスがこのヒートチューブ109を通じてこの
原料ガス供給ノズル110に供給される。
【0118】前記ヒートブロック105は混合ガスを所
定温度に調整する加熱手段たとえばヒータを備えてな
る。
【0119】前記ヒートブロック105には、配管12
0が接続され、この配管120の途中には分岐管119
が接続される。また、この配管120の他端には、原料
ガスを気化させる気化器104が接続される。前記分岐
管119の他端には、ガスの流量を調整する第1マスフ
ローコントローラ106が接続されている。この配管1
20における前記分岐管119の分岐点において、気化
器104から供給される原料ガスと第1マスフローコン
トローラ106から供給されるキャリアガスおよび必要
に応じて含有される二酸化炭素等の他のガスとが混合さ
れる。
【0120】前記気化器104には、原料供給管121
が接続され、ポンプ103を動作させると、この原料供
給管121を介して原料タンク102内に収容されてい
る液体の原料が前記気化器104に供給されるようにな
っている。
【0121】前記第1マスフローコントローラ106に
キャリヤガスが導入され、第1マスフローコントローラ
106で流量の調整されたキャリヤガスが分岐管119
に導出される。
【0122】反応管111の内部上端部である天井部に
は、前記原料ガス供給ノズル110の外周を囲繞するよ
うに内筒管112が設けられている。この内筒管112
と前記原料ガス供給ノズルである円筒環状体とで環状円
柱状に形成された空間を有する第1キャリヤガス供給ノ
ズル113が形成される。この第1キャリヤガス供給ノ
ズル113の天井部には、キャリヤガスを供給する開口
部が開口している。この内筒管112と前記原料ガス供
給ノズル110である円筒環状体とで環状筒状に形成さ
れた空間内には、前記開口部から導入された前記キャリ
ヤガスの温度を調整する第1温度調整手段とこの混合ガ
スが反応室111内に流出する気流を整流する第1整流
手段としてのハニカム板が装着されている。
【0123】前記内筒管112の外周面と反応管111
の内周面とで、環状円柱状の空間となっている第2キャ
リヤガス供給ノズル114が形成されており、この環状
円柱状の空間の上端、すなわち反応管111の天井部に
は第2キャリヤガスを導入する開口部が開口されてい
る。前記内筒管112の外周面と反応管111の内周面
とで環状円柱状に形成された空間内には、第2キャリヤ
ガスの温度を調整する第2温度調整手段と第2キャリヤ
ガスを整流して反応室111内に送出する第2整流手段
としてのハニカム板が装着されている。この第2キャリ
ヤガス供給ノズル114からは、第2キャリヤガスが、
反応管111の内壁に沿って流通するようになってい
る。
【0124】前記第1キャリヤガス供給ノズル113に
は、配管122を介して第2マスフローコントローラ1
07が接続され、前記第2キャリヤガス供給ノズル11
4には、配管123を介して第3マスフローコントロー
ラ108が接続されている。前記第2マスフローコント
ローラ107には、第1キャリヤガスが導入され、一定
の流量で配管122から導出される。
【0125】前記第3マスフローコントローラ108に
は、第2キャリヤガスが導入され、一定の流量で導出さ
れる。
【0126】この実施例の気相成長炭素繊維製造装置に
おいては、連続加熱体124が装着されている。この連
続加熱体124は、ニッケル製の、直径が0.8mmの
ワイヤである。この連続加熱体12は、反応管8外に設
置された回転ローラー125から繰り出され、原料ガス
供給ノズル110内に導入され、これを通過し、原料ガ
ス供給ノズル110から反応管111内を下降して捕集
容器116内に到り、最終的には前記回転ローラー12
5に戻り、循環移動運動ができるようになっている。こ
の回転ローラー125は図示しない駆動手段により回転
駆動することができる。
【0127】この連続加熱体124は、電気炉により加
熱された反応管からの輻射熱により加熱される。
【0128】反応管111の外周には管内加熱手段であ
る電気炉115が設けられ、この電気炉115は、熱エ
ネルギーを反応管111内に供給し、反応管111の内
部を所定の温度に加熱することができるようになってい
る。尚、この電気炉115には、電気炉115の発熱温
度を制御するための制御装置(図示しない。)が設けら
れている。
【0129】前記捕集箱116は、反応管111内に生
成した気相成長炭素繊維を捕集する機能を有し、前記反
応管111の下端部に結合され、その周側面に排気口1
17を有する。気相成長炭素繊維生成領域を通過した残
存ガス成分はこの排気口117から排出され、反応管1
11中で生成した気相成長炭素繊維はこの捕集箱116
内に収容される。
【0130】以上構成の気相成長炭素繊維の連続製造装
置100によると、例えば、以下のようにして気相成長
炭素繊維を連続的に製造することができる。なお、以下
に示す製造方法は、この発明の気相成長炭素繊維の製造
法の一実施態様である。
【0131】電気炉115を作動することにより反応管
111内、特に気相成長炭素繊維生成領域を所定温度に
加熱する。
【0132】原料タンク102内に貯留されている原
料、例えば遷移金属化合物と有機化合物との混合液は、
ポンプ103により汲み出されて気化器104で気化さ
れる。気化したガス状混合物と、第1マスフローコント
ローラ106により流量の調整されたキャリヤガスおよ
び必要に応じて加えられる二酸化炭素等の他のガスと
が、前記配管120内において混合される。このガス状
混合物とキャリヤガスとの混合ガスは、ヒートブロック
105内で完全にガス化された後、原料ガス供給ノズル
110内に導入される。
【0133】原料ガス供給ノズル110内に導入された
混合ガスは、原料ガス供給ノズル110内を通過する際
に、加熱手段により所定温度に予備調整され、整流手段
で整流された混合ガスが原料ガス供給ノズル110の先
端開口部118から反応管111内の反応領域に導出さ
れる。
【0134】一方、連続加熱体124は、回転ローラー
125により、一定の走行速度で、原料ガス供給ノズル
110および反応管111内を、気流方向に沿って、走
行する。
【0135】電気炉115により加熱された反応管11
1からの輻射熱により加熱された連続加熱体124が、
原料ガス供給ノズル110内を走行することにより、原
料ガス供給ノズル110内に配管109を介して供給さ
れた原料ガスが低温で分解されず、したがって原料ガス
供給ノズル110の内表面に金属鏡が形成されることも
ない。ノズルから反応管111内に出て来た連続加熱体
124は輻射熱を受けて更に加熱される。
【0136】原料ガス供給ノズル110を通過した連続
加熱体124は、反応管111内を、気流方向に沿って
移動し、走行する。前記反応管111内を通過した前記
連続加熱体124は、捕集容器116の所定の位置にお
いて捕集容器116外部に向かって排気管117と反対
の方向に移動、走行する。捕集容器116を通過した前
記連続加熱体124は、外部のある位置で前記回転ロー
ラー125に向かって前記気流方向と逆の方向に移動、
走行する。前記連続加熱体124が前記回転ローラー1
25に到達すると、前記反応管111に向かって移動、
走行し、循環移動運動する。
【0137】加熱された連続加熱体124が反応管11
1内を走行することにより、原料ガスを加熱し、触媒源
の分解、触媒の形成、触媒の活性化をさらに促進すると
いう作用を奏する。
【0138】第2マスフローコントローラ107におい
て流量の調整された第1キャリヤガスが配管122を介
して第1ガス供給ノズルである第1キャリヤガス供給ノ
ズル113内に導入され、この第1キャリヤガス供給ノ
ズル113から反応管111内に第1キャリヤガスが導
入される。この第1キャリヤガスは、第1キャリヤガス
供給ノズル113に設けられた第1温度調整手段で所定
温度に調整され、第1整流手段で整流されて、反応管1
11内の反応領域へ導入される。
【0139】第1キャリヤガスは、この第1キャリヤガ
ス供給ノズル113から反応領域(反応空間)へ導入さ
れる前に第1温度調整手段で加熱されるので、第1キャ
リヤガスにより気相成長炭素生成領域が冷却されること
が防止される。また、第1整流手段により、第1キャリ
ヤガスはピストンフローに近い流通状態となって反応管
111内を流通し、気相成長炭素生成領域における気流
速度および気流の流れ方向が気相成長炭素繊維生成に適
した状態に調整される。
【0140】第1温度調整手段により温度調整される第
1キャリヤガスの温度を原料ガス供給ノズル110から
吹き出す原料ガスの温度よりも高くすると、第1キャリ
ヤガスと前記混合ガスとの間に対流を生じることがな
く、これによっても第1キャリヤガスと前記混合ガスと
はピストンフローに近い流通状態となる。
【0141】さらに、第3マスフローコントローラ10
8により流量の調整された第2キャリヤガスが第2キャ
リヤガス供給ノズル114に導入され、第2キャリヤガ
ス供給ノズル114から反応管111内に導入される。
【0142】反応管111内に導入された第2キャリヤ
ガスは、前記内筒管112の外周面と反応管111の内
周面との間の形成される間隙を通過し、気相成長炭素繊
維生成領域内に導入される。
【0143】気相成長炭素生成領域内に導入された原料
ガス中の遷移金属化合物、助触媒成分および有機化合物
は、電気炉115から供給されるエネルギーにより分解
され、その結果、触媒金属の作用により気相成長炭素繊
維が生成する。生成した気相成長炭素繊維は、キャリア
ガスに導伴されて捕集箱116に収集される。
【0144】このとき、生成した気相成長炭素繊維の反
応管111の内壁への付着は発生せず、反応管111内
に原料ガス、キャリアガス等を連続的に供給することに
より気相成長炭素繊維を連続的に製造することができ
る。
【0145】−試験例1〜2− 図1に示される装置を使用し、表1に示す条件にて気相
成長炭素繊維の製造試験を行なった。結果を表1に示し
た。
【0146】反応管には内径85mm、長さ2,000
mmの炭化珪素管を使用した。
【0147】原料タンク内に貯留させる原料としては、
トルエン98.4質量%、フェロセン0.9重量%、チ
オフェン0.7重量%よりなる混合物を使用した。
【0148】気相成長炭素繊維の収率は、反応管内に供
給されたトルエン中に含まれる炭素重量に対する生成物
の重量の割合として計算した。
【0149】なお、表1中、電気炉温度とあるのは加熱
手段の設定温度を示す。ガス総流量とあるのは反応管内
を流通するガスを標準状態(0℃、1気圧)で表示した
ものであり、そのガスは原料ガス、キャリアガスの全て
を含む。
【0150】−試験例3〜4− 図2に示される装置を使用し、表2に示す条件にて気相
成長炭素繊維の製造試験を行なった。結果を表2に示し
た。
【0151】反応管には内径85mm、長さ2,000
mmの炭化珪素管を使用した。
【0152】原料タンク内に貯留させる原料としては、
トルエン98.4質量%、フェロセン0.9重量%、チ
オフェン0.7重量%よりなる混合物を使用した。
【0153】気相成長炭素繊維の収率は、反応管内に供
給されたトルエン中に含まれる炭素重量に対する生成物
の重量の割合として計算した。
【0154】なお、表2中、電気炉温度とあるのは加熱
手段の設定温度を示す。ガス総流量とあるのは反応管内
を流通するガスを標準状態(0℃、1気圧)で表示した
ものであり、そのガスは原料ガス、キャリアガスの全て
を含む。
【0155】−比較例1〜2− 図1に示される装置を使用し、表1に示す条件にて気相
成長炭素繊維の製造試験を行なった。結果を表1に示し
た。
【0156】−比較例3〜4− 図2に示される装置を使用し、表2に示す条件にて気相
成長炭素繊維の製造試験を行なった。結果を表2に示し
た。
【0157】
【表1】
【0158】
【表2】
【0159】
【発明の効果】この発明によると、金属鏡が形成される
ことなく、高収率で、ススを含まない気相成長炭素繊維
を製造することのできる簡単な構造の製造装置を提供す
ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1はこの発明の一実施例を示す気相成長炭素
繊維製造装置を示す概略説明図である。
【図2】図2はこの発明の一実施例を示す気相成長炭素
繊維製造装置を示す概略説明図である。
【符号の説明】
1・・・気相成長炭素繊維製造装置、2・・・原料タン
ク、3・・・原料ポンプ、4・・・気化器、5・・・第
1マスフローコントローラ、6・・・第2マスフローコ
ントローラ、7・・・注入ノズル、8・・・反応管、9
・・・電気炉、10・・・捕集容器、11・・・整流
筒、12・・・加熱体、12A・・・ワイヤー繰り出し
リール、12B・・・ワイヤー巻取リール、13・・・
配管、14・・・原料供給管、15・・・支管、16・
・・排気口、101・・・気相成長炭素繊維の製造装
置、102・・・原料タンク、103・・・原料ポン
プ、104・・・気化器、105・・・ヒートブロッ
ク、106・・・第1マスフローコントローラ、107
・・・第2マスフローコントローラ、108・・・第3
マスフローコントローラ、109・・・ヒートチュー
ブ、110・・・原料ガス供給ノズル、111・・・反
応管、112・・・内筒管、113・・・第1キャリア
ガス供給口、114・・・第2キャリアガス供給口、1
15・・・加熱手段、116・・・捕集容器、117・
・・排気管、118・・・原料ガス供給口、119・・
・分岐管、120・・・配管、121・・・原料供給
管、122・・・配管、123・・・配管、124・・
・加熱体、125・・・回転ローラー

Claims (5)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 加熱手段と、前記加熱手段により加熱さ
    れる反応空間を有する反応空間形成手段と、前記反応空
    間形成手段内に原料ガスを供給する原料ガス供給手段
    と、前記反応空間形成手段内でキャリヤガスが一定の気
    流方向に流れるように、この反応空間形成手段内にキャ
    リヤガスを供給するキャリヤガス供給手段と、前記反応
    空間形成手段における反応空間中を気流方向に沿って連
    続して移動し、反応空間形成手段中に供給される原料ガ
    スを加熱する連続加熱体とを有することを特徴とする気
    相成長炭素繊維製造装置。
  2. 【請求項2】 前記連続加熱体が、前記原料ガス供給手
    段およびキャリヤガス供給手段のいずれかまたは両方を
    通過し、反応空間形成手段における反応空間を気流方向
    に沿って連続して移動し、その後前記原料ガス供給手段
    およびキャリヤガス供給手段のいずれかまたは両方に戻
    されて再び前記反応空間形成手段における反応空間を気
    流方向に沿って連続して移動するように、循環移動可能
    に形成されてなる前記請求項1に記載の気相成長炭素繊
    維製造装置。
  3. 【請求項3】 前記連続加熱体が、前記原料ガス供給手
    段およびキャリヤガス供給手段のいずれかまたは両方を
    通過し、反応空間形成手段における反応空間を気流方向
    に沿って連続して移動するように、一方向に移動可能に
    形成されてなる前記請求項1に記載の気相成長炭素繊維
    製造装置。
  4. 【請求項4】 前記連続加熱体の移動速度が1〜500
    cm/分である前記請求項1〜3のいずれかに記載の気
    相成長炭素繊維製造装置。
  5. 【請求項5】 前記反応空間形成手段が縦型反応管であ
    り、前記原料ガス供給手段が原料ガス供給ノズルを含
    み、前記キャリヤガス供給手段がキャリヤガス供給ノズ
    ルを含む前記請求項1〜4のいずれかに記載の気相成長
    炭素繊維製造装置。
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