JPH09315981A - 脳ガングリオシド含量減少抑制剤 - Google Patents

脳ガングリオシド含量減少抑制剤

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JPH09315981A
JPH09315981A JP8160654A JP16065496A JPH09315981A JP H09315981 A JPH09315981 A JP H09315981A JP 8160654 A JP8160654 A JP 8160654A JP 16065496 A JP16065496 A JP 16065496A JP H09315981 A JPH09315981 A JP H09315981A
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範宜 松原
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義弘 池内
Kyoko Yabe
恭子 矢部
Seiichiro Aoe
誠一郎 青江
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 加令に伴なう脳中のガングリオシド含量の減
少を抑制する医薬及び飲食品の提供。 【解決手段】 シアリルラクトース又はその塩類を有効
成分とし含有せしめて加令に伴なう脳中のガングリオシ
ド含量の減少を抑制して脳機能を改善する脳ガングリオ
シド含量減少抑制剤及びその作用をもつ飲食品。壮年又
は老人の加令に伴う脳中のガングリオシド含量の減少を
抑制することができる。シアリルラクトースは、乳やチ
ーズホエー等乳由来のものが好ましい。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、脳中ガングリオシ
ド含量の減少、特に加令に伴なう脳中のガングリオシド
含量の減少を抑制する脳ガングリオシド含量減少抑制剤
及びその作用をもつ飲食品に関する。
【0002】
【従来の技術】ガングリオシドは、その糖鎖部分にシア
ル酸を有する糖脂質の総称であり、細胞の表層に位置
し、細胞相互間の認識や細胞の分化、誘導等様々な生理
機能を果たしていると考えられている。また、コレラト
キシンに対する中和作用を有すること(Fishman, Journa
l of Membrane Biology, vol.69, pp.85-97, 1982)、ボ
ツリヌス菌が産生する毒素に対する中和作用を有するこ
と(Kitamura, Biochemicaet Biophisica, vol.628, pp.
328-335, 1980)、破傷風菌が産生する毒素に対する中和
作用を有すること(Rogers and Synder, Journal of Bio
logical Chemistry,vol.255, pp.2402-2407, 1981) 等
も知られている。さらに、生体内で種々のホルモンやイ
ンターフェロン等に対するレセプター機能を発揮するこ
とも知られている。
【0003】従来より、ガングリオシドは脳中に多く存
在することから、神経系において何らかの役割を果たし
ているものと考えられている。その理由としては、(1)
脳組織中のガングリオシド含量は、他のどの組織中のガ
ングリオシド含量よりも多く、脳の進化の過程や脳組織
の構築の過程で特徴的な変化を示す。特に、乳児期にお
いて脳組織中のガングリオシド含量は増加し、加齢に伴
って減少することが知られている(蛋白質・核酸・酵
素, vol.35, pp.535-545, 1990)。
【0004】(2) ガングリオシドは、ドーパミン、セレ
トニン、アセチルコリン等の神経伝達物質の放出を促進
する(神奈木ら, 複合糖質, pp.124-135, メジカルビュ
ー社発行, 1994)。すなわち、ガングリオシドは、神経
分化やシナプス機能を促進する作用を有することから、
神経障害に対する治療効果が期待されている。例えば、
パーキンソン病は、筋肉の硬直と運動の減少をもたらす
疾病であり、高齢者にその患者が多く、痴呆になること
もあり得るとされている。このパーキンソン病のモデル
実験として、マウスに、1−メチル−4−フェニル−
1,2,3,6−テトラヒドロピリジン(MPTP)を
注射し、ドーパミン量を50%程度に減少させた後、ガン
グリオシドを投与したところ、ドーパミン量の回復と行
動の改善が認められることが明らかにされている(Hadji
constantinou,M., J. Neurochem, vol.51, pp.1190-119
6, 1988)。また、脳虚血障害は、ニューロンの死と脱落
をもたらし、その結果として、記憶や知能等の脳の機能
が失われて痴呆状態となる。この障害に対してもガング
リオシドの投与が有効であり、ガングリオシドの投与に
より脳浮腫や行動が改善され、死亡率も低下したという
報告がなされている(Lombardi,G., Lett., vol.134, p
p.171-174, 1992)。
【0005】(3) ガングリオシドは、脳シナプス機能の
促進にも働くといわれている。すなわち、ラットの脳か
ら調製したシナプトソームを高カリウムで脱分極刺激す
ると伝達物質の放出が起こる。この際、シナプトソーム
を予めガングリオシドで処理しておくと伝達物質である
アセチルコリンの放出が促進されることが知られている
(Bliss,T.V.P., Nature, vol.361, pp.31-39, 1993) 。
【0006】また、ガングリオシドのヒトに対する投与
についても、1993年までに少なくとも 3,000件以上の治
療例が報告されている。例えば、糖尿病性末梢神経症患
者にガングリオシドを投与することにより、一定の改善
効果を示すことが知られている(Eduardo, Drugs, vol.4
7, pp.576-585, 1994; Bradley Muscleand Nerve, vol.
13, pp.833-842) 。このように、ガングリオシドを利用
した臨床例は今後も増加すると考えられるが、このガン
グリオシドは、生物界において非常に微量な成分であ
り、かつ抽出精製に困難性を伴うので、価格が高価であ
るという問題がある。したがって、ガングリオシドと同
様の効果を有する物質を見出すか、あるいは、生体内で
ガングリオシド含量の増加を促進する作用を有する物質
を見出すことが望まれていた。
【0007】一方、シアリルラクトースは、N−アセチ
ルノイラミン酸が乳糖のガラクトース残基にα2−3結
合あるいはα2−6結合したシアル酸化合物であって、
乳や乳製品中に微量に含まれていることが知られてい
る。近年、このシアリルラクトースの生理効果が注目さ
れだしており、例えば、N−アセチルノイラミン酸が乳
糖のガラクトース残基にα2−3結合したシアリルラク
トースは、胃炎の原因菌といわれているカンピロバクタ
ー・ピロリ(Campylobacter pylori) の粘膜への付着を
阻害したり(Infect Immun., vol.56, pp.2896-2906, 19
88) 、新生児における脳膜炎や敗血症の原因菌であるS
−型大腸菌の付着を阻害すること(Acta Paediatr, vol.
82, pp.6-11, 1993)等が知られている。また、N−アセ
チルノイラミン酸が乳糖のガラクトース残基にα2−6
結合したシアリルラクトースは、A型インフルエンザウ
イルスのレセプターとして知られている(Nature, vol.3
33,pp.426-431, 1988) 。
【0008】そして、これらのシアル酸化合物の脳に及
ぼす影響については、N−アセチルノイラミン酸におい
て検討されている。すなわち、N−アセチルノイラミン
酸を乳児期ラットに経口投与すると、大脳や小脳のN−
アセチルノイラミン酸含量が増加すること(Carlson,S.
E., J. Nutr., vol.116, pp.881-886, 1986)や記憶学
習能を向上させること(Morgan,B.L.G., J. Nutr., vol.
110, pp.416-424, 1980)が報告されている。さらに、シ
アリルラクトースの脳に及ぼす影響については、乳由来
のシアリルラクトースを配合した粉乳類に関する発明の
中で検討されている。すなわち、乳由来のシアリルラク
トースを乳仔期のラットに投与すると、脳中のシアル酸
含量が早期に一定の値に達するというものである(特公
昭63-65285号公報)。新生児では、肝臓でのN−アセチ
ルノイラミン酸の合成能が未発達であるため、この時期
に乳由来のシアリルラクトースを投与する意義は大きい
ものと考えられる。しかしながら、この発明において、
脳中のシアル酸 (ガングリオシド) 含量と学習機能との
関係については言及されておらず、また、乳由来のシア
リルラクトースを摂取する対象は乳幼児であった。な
お、脳中のシアル酸 (ガングリオシド) 含量は成人にな
ると一定となり、その後、加齢と共に徐々に減少するこ
とが知られている (現代化学増刊24, 老化の科学,東京
化学同人発行, 1994) 。そして、この脳中のシアル酸
(ガングリオシド)含量の減少は、脳や神経系の機能に
も影響を及ぼすため、如何にその減少を緩やかにするか
が重要となる。したがって、脳中のシアル酸 (ガングリ
オシド) 含量の減少を抑制する作用を有する物質の開発
が強く望まれていた。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】本発明者らは、脳ガン
グリオシド含量の減少を抑制し、脳機能改善を促進する
物質について鋭意研究を進めてきたところ、乳や乳製品
中に微量に含まれているシアリルラクトースが脳ガング
リオシド含量の減少を抑制し、学習行動改善の効果を有
することを見出し、本発明を完成するに至った。したが
って、本発明は、シアリルラクトース又はその塩類を有
効成分として脳ガングリオシド含量の減少を抑制する医
薬を提供することを課題とする。また、本発明は、シア
リルラクトース又はその塩類を配合して脳ガングリオシ
ド含量の減少抑制作用を賦与して脳機能改善作用をもつ
飲食品を提供することを課題とする。本発明は、特に壮
年又は老年の加令に伴なう脳機能の改善を課題としてい
る。
【0010】
【課題を解決するための手段】本発明では、有効成分と
してシアリルラクトース又はその塩類を使用する。シア
リルラクトースとしては、乳由来のシアリルラクトース
又はその塩類が望ましい。乳由来のシアリルラクトース
は、例えば、シアル酸含有オリゴ糖の分離方法(特開平7
- 79800号公報) に開示されている方法に従って製造す
ることができる。すなわち、チーズを製造する際に排出
されるホエーを限外濾過膜で処理して蛋白質を除去し、
これを擬似移動床式クロマト分離装置 (SMB) で処理
することにより、シアリルラクトースを5%重量程度含
有する画分を得る。そして、この画分をロータリーエバ
ポレーターで濃縮し、アニオン交換樹脂にシアリルラク
トースを吸着させ、脱イオン水で中性糖を溶出した後、
吸着したシアリルラクトースをグラジェント法により酢
酸ナトリウムで溶出し、さらに、電気透析で脱塩し、減
圧濃縮後、凍結乾燥することにより高純度シアリルラク
トースを得ることができる。また、ウシ初乳由来のシア
リルラクトース及びヒト乳由来のシアリルラクトースが
市販されている。
【0011】次にシアリルラクトースの製造法を具体的
に説明する。
【参考例1】チーズ製造に際して排出されたホエー 1,5
00リットルを限外濾過膜(Cefilt、分画分子量 10kDa、
膜面積 1.4m2、NGフィルテック製) 処理して蛋白質を
除去し、さらにシーディングにより乳糖結晶を除去し、
得られる乳糖結晶母液をエバポレーターで濃度30%まで
濃縮した後、擬似移動床式クロマト分離装置 (SMB)
で処理して処理液とした。なお、溶離液は脱イオン水を
使用し、SMBは、カラムの直径25mm、長さ460mm の8
塔型で、各々カチオン交換樹脂UBK510L(三菱化成)の対
イオンをNa型として充填した。また、SMBの運転条件
は、処理液供給量 3.4ml/min、溶離液供給量 5.8ml/mi
n、ラフィネート抜き出し量 4.2ml/min、エキストラク
ト抜き出し量 5.0ml/min、カラム温度10℃、ステップ時
間7.40分とした。このようにして、乳糖結晶母液濃縮液
31リットルを処理したところ、エキストラクトに乳糖等
を含む非酸性糖画分38リットルを、また、ラフィネート
にシアリルラクトースを含む画分46リットルをそれぞれ
得た。
【0012】このラフィネートをエバポレーターで濃縮
し、直径40cm×70cmのアニオン交換樹脂(Dow 1, 酢酸
型)カラムに通液してシアリルラクトースを吸着させ
た。そして、充分量の水を通液して中性糖を溶出した
後、0〜0.06M の酢酸ナトリウムで吸着していたシアリ
ルラクトースをグラジェント溶出した。この溶出条件に
よりシアリルラクトースを完全に分離、回収することが
できた。さらに、得られたシアリルラクトース溶出液を
脱塩し、濃縮した後、凍結乾燥してシアリルラクトース
の白色粉末480gを得た。なお、このシアリルラクトース
粉末を高速液体クロマトグラフィーによって純度を測定
したところ、純度は97%以上であった。
【0013】このようにして得られたシアリルラクトー
スの脳ガングリオシド含量減少抑制効果は、次のとおり
であった。
【試験例1】参考例1で得られたシアリルラクトースを
使用し、脳ガングリオシド含量の減少抑制効果について
調べた。なお、実験動物として8週齢のSD系雄ラット
(日本チャールズリバー)を使用した。まず、全てのラ
ットを標準食(AIN-93 G)で7日間予備飼育した後、1群
6匹からなる4群に分け、表1に示した組成の飼料をそ
れぞれの群に投与した。
【0014】
【表1】 ──────────────────────────────────── Cont Lac NANA SL ──────────────────────────────────── α−コーンスターチ 13.2 13.2 13.2 13.2 コーンスターチ 39.7 39.7 39.7 39.7 ミルクカゼイン 20.0 20.0 20.0 20.0 上白糖 10.0 6.0 6.0 6.0 大豆油 7.0 7.0 7.0 7.0 結晶セルロースパウダー 5.0 5.0 5.0 5.0 ミネラル混合1) 3.5 3.5 3.5 3.5 ビタミン混合2) 1.0 1.0 1.0 1.0 L−シスチン 0.3 0.3 0.3 0.3 重酒石酸コリン 0.25 0.25 0.25 0.25 第三ブチルヒドロキノン 0.0014 0.0014 0.0014 0.0014 乳糖 − 4.0 − − N−アセチルノイラミン酸 − − 4.0 − シアリルラクトース − − − 4.0 ──────────────────────────────────── Cont:対照群 Lac :乳糖投与群 NANA:N−アセチルノイラミン酸投与群 SL:シアリルラクトース投与群 1):AIN-93-G-MX-OYC 2):AIN-93-VX-OYC
【0015】ラットの飼育は、湿度60%、室温24℃、li
ght-darkコントロール12時間の条件下で行い、ラットに
飼料及びイオン交換水を自由に摂取させて2週間飼育し
た。そして、2週間後、ラットをエチルエーテルで麻酔
して全脳を摘出し、脳の重量を測定した後、凍結乾燥し
て脳中の各脂質含量を分析した。
【0016】なお、脳中の各脂質の分析は以下のように
行った。全脂質の抽出 ラットから摘出した脳の試料(1〜1.5g) に30倍量のクロ
ロホルム:メタノール:水(4:8:3) からなる溶媒を加え
て5分間ホモジナイズした後、10分間遠心分離して抽出
液を得た。さらに、遠心分離の残渣にクロロホルム:メ
タノール:水(4:8:3) からなる溶媒30ml加えて再抽出し
て抽出液を得た。そして、この両抽出液をあわせて 100
mlに定容し、これを脂質分析用の試料とした。
【0017】ガングリオシドの分析 (1)陰イオン交換樹脂によるカラムクロマトグラフィー DEAE−セファデックスA-25(酢酸型、ファルマシア
社)8mlをカラムに充填し、2倍量のクロロホルム:メ
タノール:水(4:8:3) で平衡化した後、脂質抽出液50ml
を通液してガングリオシド等の酸性物質を吸着させた。
次に、クロロホルム:メタノール:水(4:8:3)からなる
溶媒80mlで非吸着物質を溶出した後、クロロホルム:メ
タノール:5M酢酸ナトリウム(30:60:8) からなる溶媒60
mlで酸性物質を溶出して回収した。
【0018】(2) 弱アルカリ分解及び透析 上記(1) で回収した溶出液を濃縮した後、0.5M水酸化ナ
トリウムを含むメタノール溶液20mlを加え、37℃で2時
間放置してエステル脂質を加水分解した。そして、酢酸
で中和した後、メタノールを除去し、混在する不純物を
透析により除去した。なお、透析は5℃で2日間行い、
透析終了後、内液を濃縮及び凍結乾燥して粗ガングリオ
シドを得た。
【0019】(3) シリカゲルカラムクロマトグラフィ
ー クロロホルム:メタノール(85:15) からなる溶媒に懸濁
し、脱気したイアトロビーズ (イアトロン社) 2.5gをガ
ラスカラムに充填した後、クロロホルム:メタノール(8
5:15) 1mlに溶解した粗ガングリオシドを通液してガン
グリオシドを吸着させた。次に、クロロホルム:メタノ
ール(85:15)からなる溶媒30mlで不純物を溶出した後、
クロロホルム:メタノール(3:7) からなる溶媒50mlでガ
ングリオシドを溶出した。そして、溶媒を除去した後、
一定量に定容して定量用の試料とした。
【0020】(4) ガングリオシド中に含まれる総シア
ル酸量の分析 定量用の試料から一定量を分取し、窒素ガスで乾燥した
後、レゾルシノール塩酸試薬2mlを加えて撹拌し、 100
℃で30分間加熱して発色させた。そして、直ちに冷却し
た後、酢酸ブチル:1−ブタノール(85:15) からなる溶
液4ml加えて色素を抽出し、580 nmの吸光度を測定する
ことにより、ガングリオシド中に含まれる総シアル酸量
を定量した。
【0021】(5) ガングリオシド組成の分析 定量用の試料から一定量を高速液体クロマトグラフィー
(HPLC)に注入し、以下の測定条件でガングリオシド組成
を分析した。 カラム; Aquasil SS (6mm×200mm) 溶離液; アセトニトリル:イソプロピルアルコール:50
mMテトラアンモニウムクロリド水溶液(20:68:12)〜(5:4
3:52)のグラジェント溶出 検出器; UV 208nm
【0022】脂質の分析 トリグリセライドの分析は、トリグリセライド−テスト
ワコー (アセチルアセトン法、和光純薬) を使用して行
った。また、リン脂質の分析は、リン脂質−テストワコ
ー (過マンガン酸塩灰化法、和光純薬) を使用して行っ
た。さらに、コレステロールの分析は、デタミナTC555
(酵素法、協和メデェクス) を使用して行った。その結
果を表2に示す。
【0023】
【表2】 ──────────────────────────────────── Cont Lac NANA SL ──────────────────────────────────── トリグリセリド 5.15±0.83 4.91±0.30 5.44±0.53 5.53±0.91 コレステロール 9.52±0.75 9.39±0.48 10.00±0.47 10.21±0.70 リン脂質 34.46±1.66 34.13±1.25 35.25±1.56 34.03±1.09 ガングリオシド 0.89±0.07 0.82±0.05 0.93±0.09 1.05±0.06 ──────────────────────────────────── Cont:対照群 Lac :乳糖投与群 NANA:N−アセチルノイラミン酸投与群 SL:シアリルラクトース投与群 表中の値は平均値±標準誤差であり、単位はmg/g脳湿重量である。
【0024】全脳中の他の脂質量には有意差がなかった
が、ガングリオシド含量には、N−アセチルノイラミン
酸投与群で乳糖投与群に対して有意差があり(p<0.05)、
シアリルラクトース投与群で対照群、乳糖投与群及びN
−アセチルノイラミン酸投与群に対して有意差があった
(p<0.05)。なお、脳中のガングリオシド組成に変化は認
められなかった。
【0025】
【試験例2】参考例1で得られたシアリルラクトースを
使用し、長期投与による脳ガングリオシド含量の減少抑
制効果について調べた。なお、実験動物として12ヶ月齢
のSD系ラット(日本チャールズリバー)を使用した。
まず、全てのラットを標準食(AIN-93 G)で7日間予備飼
育した後、1群30匹からなる2群に分け、表3に示した
組成の飼料をそれぞれの群に投与した。
【0026】
【表3】 ────────────────────────── Cont SL ────────────────────────── α−コーンスターチ 13.2 13.2 コーンスターチ 39.7 39.7 ミルクカゼイン 20.0 20.0 上白糖 10.0 6.0 大豆油 7.0 7.0 結晶セルロースパウダー 5.0 5.0 ミネラル混合1) 3.5 3.5 ビタミン混合2) 1.0 1.0 L−シスチン 0.3 0.3 重酒石酸コリン 0.25 0.25 第三ブチルヒドロキノン 0.0014 0.0014 シアリルラクトース − 0.2 ────────────────────────── Cont:対照群 SL:シアリルラクトース投与群 1):AIN-93-G-MX-OYC 2):AIN-93-VX-OYC
【0027】ラットの飼育は、湿度60%、室温24℃、li
ght-darkコントロール12時間の条件下で行い、ラットに
飼料及びイオン交換水を自由に摂取させて飼育した。そ
して、飼育開始時及び飼育開始3ヶ月、6ヶ月、9ヶ
月、12ヶ月後、各群6匹ずつ無作為に抽出したラットを
エチルエーテルで麻酔して全脳を摘出し、脳の重量を測
定した後、凍結乾燥して脳中のガングリオシド含量を分
析した。その結果を図1に示す。なお、一般的にラット
はヒトよりも約30倍早く歳をとるといわれており、12ヶ
月齢のラットは30歳のヒトに相当する。全脳中のガング
リオシド含量は、シアリルラクトース投与群で対照群に
対して有意差があった(p<0.05)。
【0028】
【試験例3】参考例1で得られたシアリルラクトースを
使用し、全脳ガングリオシド含量の違いによる学習行動
の改善に及ぼす影響を調べる目的で水迷路実験を行っ
た。なお、実験動物として8週齢のSD系雄ラット(日
本チャールズリバー)を使用した。まず、全てのラット
を標準食(AIN-93 G)で7日間予備飼育した後、1群6匹
からなる4群に分け、試験例1の表1に示した組成と同
様の飼料をそれぞれの群に投与した。ラットの飼育は、
湿度60%、室温24℃、light-darkコントロール12時間の
条件下で行い、ラットに飼料及びイオン交換水を自由に
摂取させて10日間飼育した。
【0029】そして、図2に示したような"water fille
d multiple T-maze"で、縦及び横の長さがそれぞれ 120
cm、深さが40cmの水槽にT字型迷路を組み合わせ、11ヶ
所の盲路を配置して、石崎の方法(Ishizaki, Exp. Ani
m., vol.27, pp.9-12, 1978)により水温23〜24℃で水迷
路実験を行った。まず、実験の前に直進水路で5試行し
た後、水迷路で翌日から4日間連続して3回試行(総計
12回)し、水迷路の出発点から目標点に到達するまでの
所要時間を測定した。その結果を図3に示す。水迷路実
験開始1〜3日目において出発点から目標点に到達する
までの所要時間は、シアリルラクトース投与群で対照群
及び乳糖投与群に対して有意(p<0.05)に短かった。ま
た、水迷路実験開始2日目において出発点から目標点に
到達するまでの所要時間は、シアリルラクトース投与群
でN−アセチルノイラミン酸投与群に対して有意(p<0.0
5)に短かった。
【0030】
【発明の実施の形態】本発明では、脳中ガングリオシド
含量の減少を抑制する脳ガングリオシド含量減少抑制剤
の有効成分としてシアリルラクトースを使用する。この
シアリルラクトースは、担体、その他製剤に用いられる
慣用の成分とともにあるいはそのまま製剤にする。製剤
の形態としては、通常糖衣錠、タブレット等の錠剤、顆
粒剤、液剤、カプセル等として、経口的に投与するとよ
い。また、このシアリルラクトースを栄養組成物等を含
む飲食品に配合して使用してもよい。このような飲食品
としては、ヨーグルト、ドリンク剤、チーズ、加工乳等
を例示することができる。脳中ガングリオシド含量の減
少抑制効果を発揮させるためには、成人一日当たり少な
くとも10mg/kg 体重、望ましくは30〜100mg/kg体重のシ
アリルラクトースを摂取させるとよい。
【0031】
【実施例1】参考例1で得られたシアリルラクトース0.
5gを日本薬局方の内服用ゼラチンカプセル000号に充
填し、脳中ガングリオシド含量の減少を抑制する脳ガン
グリオシド含量減少抑制剤を製造した。
【0032】
【実施例2】脱脂粉乳3kgに温水19.4kgを加えて撹拌
し、95℃で10分間殺菌した後、42℃まで冷却した。この
還元脱脂乳にラクトバチルス・ブルガリクス(Lactobaci
llusbulugaricus)とストレプトコッカス・サーモフィル
(Streptococcus thermophilus) の混合スターターMR
C-32を接種し、42℃で4時間発酵させて培養物を調製し
た。一方、水 7.3kgに異性化糖5kg、ペクチン125g、参
考例1で得られたシアリルラクトース 71.5gを加えて撹
拌溶解し、90℃で10分間殺菌した後、10℃まで冷却して
糖質溶液を調製した。そして、撹拌しながらこの糖質溶
液に上記の培養物を添加し、均一に混合した後、ホモゲ
ナイザーで均質化してドリンクヨーグルト30リットルを
製造した。これを、1リットル容量の紙容器に充填し
て、脳中ガングリオシド含量の減少抑制効果を賦与した
ドリンクヨーグルトを得た。このドリンクヨーグルト1
リットルには、シアリルラクトース2g が含有されてい
る。
【0033】
【発明の効果】シアリルラクトースは、脳中ガングリオ
シド含量の減少抑制効果を有し、学習行動改善等の脳機
能改善効果を示すので、成人や老人の脳中のガングリオ
シド減少に伴なう脳疾患を改善し、脳機能を改善する医
薬や飲食品の素材として有用である。
【図面の簡単な説明】
【図1】試験例2におけるラットの加令に伴なう脳中ガ
ングリオシド含量の変化を示す。
【図2】試験例3で使用するT字型水迷路の平面図を示
す。
【符号の説明】
1〜11 盲路番号
【図3】試験例3によるT字型水迷路の出発点から目標
点に到達するまでのラットの所要時間を示す。
フロントページの続き (72)発明者 矢部 恭子 埼玉県所沢市旭町16−10 ベルアミ所沢 303 (72)発明者 青江 誠一郎 埼玉県狭山市新狭山2−8−9−406

Claims (5)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 シアリルラクトース又はその塩類を有効
    成分として脳中のガングリオシド含量の減少を抑制する
    ことを特徴とする脳ガングリオシド含量減少抑制剤。
  2. 【請求項2】 壮年又は老年の加令に伴なう脳中のガン
    グリオシド含量の減少を抑制する請求項(1) 記載の脳ガ
    ングリオシド含量減少抑制剤。
  3. 【請求項3】 シアリルラクトース又はその塩類を配合
    して脳中のガングリオシド含量の減少を抑制することを
    特徴とする脳ガングリオシド含量減少抑制作用を持つ飲
    食品。
  4. 【請求項4】 シアリルラクトースが乳由来のものであ
    る請求項1〜3のいずれかに記載の脳ガングリオシド含
    量減少抑制剤またはその作用を持つ飲食品。
  5. 【請求項5】 乳由来のシアリルラクトースがチーズホ
    エー、ウシ初乳及びヒト乳よりなる群から選択されるい
    ずかれの乳由来によるシアリルラクトースである請求項
    4記載の脳ガングリオシド含量減少抑制剤またはその作
    用をもつ飲食品。
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