JPH09309446A - ラックピニオン式舵取り装置 - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 【課題】 ラックピニオン式舵取り装置でのラックとピ
ニオンとのバックラッシュの調整を簡単な構造により適
正に行い、打音の発生を最大限に防止する。 【解決手段】 舵取り操作に応じて回転するピニオンに
噛合うラック５ａを有するラック軸５を、ステアリング
ボディ７の筒状空間７ａ内で軸線方向に摺動自在に保持
する。ラック軸を摺動自在に保持する保持孔３１ａを偏
心した位置に有する偏心軸受リング部材３１を、ボディ
筒状空間内に回動自在に設ける。この偏心軸受リング部
材の一方の側面部に設けた円周ギア部３３に噛合する小
ギア３２ａを有する回転操作部材３２を、ラック軸に直
交する方向から臨ませる。偏心軸受リング部材の他方の
側面部を弾性体であるＯリング４１を介在させた状態で
ステアリングボディの筒状空間の内壁部７ｄに圧入した
リング４２で固定する。

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【発明の属する技術分野】本発明はラックピニオン式の
舵取り装置に関し、特にピニオンに噛合うラックを有す
るラック軸の支持構造に関する。

【０００２】

【従来の技術】ラックピニオン式の舵取り装置は、ラッ
クを有し自動車の左、右前輪（操舵輪）間で横方向に沿
って配設されたラック軸と、このラック軸のラックに噛
合する舵取りハンドル軸先端に設けたピニオンとからな
る舵取り歯車を有する。そして、ハンドル操作に伴う回
転変位をラック軸の軸線方向での直線変位に変換し、舵
取りリンク機構を介して前輪を所望の方向に旋回させる
構成となっている。このようなラックピニオン式の装置
は、他の形式による舵取り装置に比べ構成が比較的簡単
で、舵取り性能や占有空間が小さい点で優れており、種
々の車輌に搭載されている。

【０００３】この種のラックピニオン式舵取り装置にお
いて、ピニオンと噛合するラックを有するラック軸を底
面側から押圧手段としてのスプリングを利用したラック
支持構造で支持することが一般に行われていた。すなわ
ち、ラック軸の底面側で前記ピニオンに対向して配設さ
れかつラック軸を軸線方向に摺動自在に支持する案内溝
を有する金属製のラック支持体と、このラック支持体を
ラックがピニオンに噛合する方向に付勢するスプリング
と、これらのラック支持部品をステアリングボディ内に
組込むための組込み孔外方端を閉塞するようにねじ込ん
だアジャスティングプラグと呼ばれる押えプラグとを備
えている。

【０００４】そして、この押えプラグの回動調整により
前記スプリングに所要の弾撥力を与えることにより、ラ
ックとピニオンとのバックラッシュを実質的にゼロとな
るように弾性的に支持し、ピニオンが舵取り操作で回転
したときに、前記スプリングの弾撥力で得られるバック
ラッシュによりピニオンとラックとの適正な噛合いを確
保できるように構成している。

【０００５】しかし、上述した従来のラック支持構造に
よれば、構成部品点数が多く構造が複雑であるばかりで
なく、ピニオンとラックとのバックラッシュを、スプリ
ングの弾撥力で依存していることから、たとえば悪路走
行時等においてキックバック等のような大きな過重がラ
ック軸に加わると、ラックとピニオンとの間、あるいは
ラック軸とラック支持体との間等で、いわゆるラトル音
と呼ばれる金属打音が発生するという問題があった。ま
た、上述した従来のラック支持構造では、ラック軸をス
テアリングボディの一端寄りの部分でスプリングの弾撥
力に依存して支持しており、舵取り操作時やキックバッ
ク等の衝撃時にボディの他端側でのラック支持用ブッシ
ュによるラック軸の支持部を中心として揺動動作し、こ
のラック支持用ブッシュによる支持部にも影響するた
め、この部分での剛性を確保する必要があった。

【０００６】上述したラック支持構造としては、たとえ
ば実開昭５７−２４１７５号公報に示す構造のものも知
られている。この従来の構造は、ステアリングボディの
筒状空間内に、二重金属筒体とその間に介在したゴムブ
ッシュとからなるラック軸受を設け、このラック軸受の
内筒を、ゴムブッシュの弾性を利用し、ボディに直交す
る方向から螺合した調整用ボルトで押圧することにより
ラック軸のボディに対しての支持位置を変位させるよう
に構成している。そして、このラック軸受でのゴムブッ
シュの撓みによる弾撥力によって、ラックがピニオンに
バックラッシュが実質的にゼロとなるように噛合させ、
かつゴムブッシュの弾撥力によりピニオンとラックとの
バックラッシュを確保し、回転伝達を行えるようにして
いる。

【０００７】

【発明が解決しようとする課題】上述した従来のラック
ピニオン式の舵取り装置によれば、前者のものでは押圧
手段としてのスプリングにより、後者のものではラック
軸受におけるゴムブッシュで、ピニオンとラックとの間
をバックラッシュが得られるような弾性支持しているか
ら、ラック軸やこのラック軸の他端を保持するラック支
持用ブッシュでの剛性を確保することが難しく、またキ
ックバックのような衝撃を受けた際の打音の発生を避け
られない。また、上述した後者の装置では、ゴムブッシ
ュを構成するゴムの劣化によって、ラック軸の支持精度
に変化が生じ易く、ラック軸ががた付き易く、耐久性も
問題であった。

【０００８】特に、ラックピニオン式舵取り装置によれ
ば、前述したようにピニオンに噛合うラックをスプリン
グまたはゴムブッシュの弾撥力を付与することにより噛
み合わせ、前記弾撥力でバックラッシュを得ていること
から、これらの噛合い部に付与する弾撥力の調整が難し
い。すなわち、舵取り操作時にはラックとピニオンは充
分に噛み合って接触しているが、直進走行時には両者は
スプリング等の弾撥力によって噛み合っているから、走
行に伴う振動によるスプリング等の弾性変形に起因する
打音によって騒音を生じるという問題がある。また、後
者のようなゴムブッシュを利用したものでは、その劣化
によってさらに打音が著しくなる。

【０００９】本発明はこのような事情に鑑みてなされた
もので、ラックピニオン式舵取り装置において、ラック
軸のラックとピニオンとの適正なバックラッシュを簡単
な構造により確保し、両者の軸間距離の調整を所要の状
態で行うことにより、打音の発生を最小限にすることが
できるとともに、各部でのがたの発生を防ぎ、打音の発
生をできるだけ防止することができるラックピニオン式
舵取り装置を得ることを目的としている。

【００１０】

【課題を解決するための手段】このような要請に応える
ために本発明に係るラックピニオン式舵取り装置は、舵
取り操作に応じて回転するピニオンに噛合うラックを有
しステアリングボディの筒状空間内で軸線方向に移動可
能なラック軸を摺動自在に保持する保持孔を偏心した位
置に有する偏心軸受リング部材を、ステアリングボディ
の筒状空間内に回動自在に設け、この偏心軸受リング部
材の一方の側面部に設けた円周ギア部に噛合する小ギア
を有する外部操作可能な回転操作部材を、ラック軸に直
交する方向から臨ませた状態でステアリングボディに回
動操作可能に設けるとともに、偏心軸受リング部材の他
方の側面部を弾性体を介在させた状態でステアリングボ
ディの筒状空間の内壁部に固定したものである。

【００１１】ここで、本発明に係るラックピニオン式舵
取り装置は、偏心軸受リング部材を、ステアリングボデ
ィの筒状空間内で弾性体により軸線方向および径方向か
らの押圧力を与えた状態で固定している。

【００１２】本発明によれば、ラックピニオン式舵取り
装置において、ラック軸を保持する保持孔を偏心させて
形成している偏心軸受リング部材を、外部からの回動操
作部材によりステアリングボディの筒状空間内で回転変
位させることにより、このラックのピニオンとの間のバ
ックラッシュが適正になるように軸間距離の調整を行う
とともに、その調整状態で前記偏心軸受リング部材や回
転操作部材を固定することができ、これによりラック軸
を安定した状態で摺動自在に保持することができる。

【００１３】特に、本発明によれば、偏心軸受リング部
材の小ギアと噛合する円周ギア部と反対側の側面部を、
弾性体を介してステアリングボディの筒状空間の内壁部
に固定しているので、偏心軸受リング部材を、弾性体か
らの軸線方向および径方向からの押圧力によって、がた
のない状態で固定することができ、小ギアとのバックラ
ッシュやボディ筒状空間の内壁部との間の隙間による打
音の発生を防止できる。また、本発明によれば、偏心軸
受リング部材において、弾性体による軸線方向での弾発
力によって、舵取りリンク機構を構成するタイロッド側
での衝突音の低減に寄与することができる。さらに、偏
心軸受リング部材において、弾性体による径方向での弾
発力によって、ラック、ピニオンの噛合い誤差を吸収す
る機能も備える。

【００１４】ラックを有するラック軸は、ステアリング
ボディの筒状空間内に遊嵌状態で嵌挿され、軸線方向に
移動自在に保持されている。このラック軸を保持する偏
心軸受リング部材は、ステアリングボディの一端側であ
ってラックのピニオンとの噛合い部に近接する位置に組
込まれている。偏心軸受リング部材は、全体がリング状
を呈しかつその側面部に円周ギア部が設けられ、ステア
リングボディの筒状空間内で回動自在であって軸線方向
への動きが規制された状態で設けられている。また、こ
の円周ギア部に噛合するように回転操作部材の小ギア
が、ラック軸に直交する方向から臨むようにステアリン
グボディに軸支される。この回転操作部材は、所定の調
整位置で押圧力を与えて固定するためのロック手段とし
て機能するロックナットを備えている。

【００１５】偏心軸受リング部材を固定する際に介在す
る弾性体としては、Ｏリング、断面角形リング、ばね機
能をもつ弾性リング、あるいはゴム、合成樹脂等による
弾性体膜のいずれかによって構成する。このような弾性
体を介して偏心軸受リング部材を固定する手段として
は、ステアリングボディの筒状空間内に圧入して固定す
るリングがあるが、これに限定されない。

【００１６】

【発明の実施の形態】図１（ａ），（ｂ），（ｃ）およ
び図２は本発明に係るラックピニオン式舵取り装置の一
つの実施の形態を示し、この実施の形態では、図２に示
すようなパワーステアリング用のラックピニオン式舵取
り装置すなわちラックピニオン式動力舵取装置の場合を
説明する。図２において、符号１で示すものは、ラック
ピニオン式動力舵取装置におけるパワーステアリング本
体部である。２は図示しない舵取りハンドルに連結され
る入力軸としてのスタブ軸、３はこのスタブ軸２の内方
端（左端）側にトーションバー４を介して連結されるピ
ニオン軸で、このピニオン軸３には、図示しない舵取り
リンク機構を構成するラック５上のラック５ａと噛合す
るピニオン３ａが設けられている。なお、これら両軸
２，３間にはトーションバー４のねじれにより所定角度
範囲内での相対的な回動変位を許容するフェイルセーフ
機構として突部および溝部からなるセーフティスプライ
ン部６が介在されている。

【００１７】前記トーションバー４は、内方端がピニオ
ン軸２側に圧入固定されるとともに、外方端はスタブ軸
２内を貫通し軸２外方端（右端）側にまで延設され、こ
のスタブ軸２の舵取りハンドル側とのカップリング用セ
レーション部２ａ部分においてトーションバー４と全周
溶接等の溶着手段により一体的に連結されている。７は
パワーステアリング本体部を構成するステアリングボデ
ィで、後述する回転型流路切換弁１０のバルブハウジン
グやラック軸５を摺動自在に保持する筒状空間７ａを形
成するボディ部を含めた一体の構造により構成されてい
る。なお、前記両軸２，３は、後述する軸受やボディ７
で直接受けることによる軸支部により回転可能に支持さ
れ、かつ適宜の位置にはオイルシールが介装されてい
る。

【００１８】このステアリングボディ７内で各軸２，３
の内方端側には、回転型流路切換弁１０を構成するロー
タ１１およびスリーブ１２がそれぞれ一体的に連結され
ている。これらのロータ１１およびスリーブ１２の相対
的な回転変位によって、図示しないオイルポンプＰ、オ
イルタンクＴとパワーシリンダ左、右室ＣＬ，ＣＲとの
間の流路切換えを行うことは広く知られている通りであ
る。この実施の形態では、ロータ１１はスタブ軸２側に
一体に形成され、またスリーブ１２はピニオン軸３に一
体に形成され、トーションバー４により相対的に回転変
位可能な状態で組合わされてステアリングボディ７にお
けるバルブハウジング部でのバルブ組込み空間８に組込
まれて内設されている。

【００１９】前記回転型流路切換弁１０を構成するロー
タ１１およびスリーブ１２、さらにはバルブハウジング
部（ボディ７）における油圧回路の構成は広く知られて
いるものと同じか、あるいは類似するものである。この
ような互いに対向して摺接するロータ１１の外周面とス
リーブ１２の内周面には、それぞれ周方向に所定間隔お
いて複数の通路溝がバルブ溝として凹設されるととも
に、複数の流体供給孔および流体排出孔が適宜の個所に
穿設することにより形成され、これら通路溝等の選択的
な連通、遮断により油圧回路が必要に応じて切換え制御
される。

【００２０】図中１５，１６はオイルポンプＰからの圧
油が流入する入りポ−トおよびオイルタンクＴに圧油を
還流させる戻りポート、１７Ａ，１７Ｂはパワーシリン
ダの左、右シリンダ室ＣＬ，ＣＲに接続される左、右出
力ポートで、上述した流路切換弁１０の舵取り操作に伴
なう回転変位で、これらのポート間での油圧通路を任意
に連通、遮断し、図示しないパワーシリンダでの操舵補
助力の発生を制御することも、広く知られている通りで
ある。

【００２１】また、前記回転型流路切換弁１０では、ス
リーブ１２を、ピニオン軸３に一体に設けるとともに、
このピニオン軸３をスリーブ１２の両端部でステアリン
グボディ７に転がり軸受であるボールベアリング２１、
ブッシュ２２により軸支している。さらに、ピニオン軸
３の小径な先端部３ｂを、このピニオン軸３の曲げ許容
応力内であって、前記スリーブ１２の両端部における軸
受２１，２２による軸支部での軸受隙間よりも僅かに大
きくなるように設定した軸支部２３によりステアリング
ボディ７で直接受けることによる軸受構造によって軸支
している。

【００２２】上述したボールベアリング２１は、ピニオ
ン軸３に一体のスリーブ１２の端部に形成した小径部を
内輪とし、ボールと外輪とを組付けた構造で構成してい
る。図中２５はステアリングボディ７において、組込み
空間８の開口端に螺合して組付けられているプラグ部材
であり、このプラグ部材２５の内方端がボールベアリン
グ２１の外輪に突き当てられ、ボディ７の段部との間で
係止されている。このプラグ部材２５には、スタブ軸２
を貫通して保持する開口が開けられ、かつオイルシール
２６を保持する保持溝２５ａが形成されている。そし
て、このオイルシール２６によりスタブ軸２は、ボディ
７内に回動可能な状態で挿入され、かつシールされてい
る。一方、前記ピニオン軸３の前記ブッシュ２２よりも
ピニオン３ａ寄りの部分にもオイルシール２７が設けら
れている。

【００２３】上述したような構成によるラックピニオン
式動力舵取装置において、舵取り操作に応じて回転する
ピニオン軸３のピニオン３ａに噛合うラック５ａを有す
るラック軸５を、ステアリングボディ７の筒状空間７ａ
内に遊嵌状態で嵌挿した状態で軸線方向に摺動自在に保
持するにあたって、図１（ａ），（ｂ）に示すように、
簡単な構造によってピニオン軸３との軸間距離の調整
（バックラッシュの調整）を適正に行えるラック支持部
３０により支持するように構成している。

【００２４】すなわち、上述したラック軸５を摺動自在
に保持する保持孔３１ａを前記筒状空間７ａの軸心とは
偏心した位置に有する偏心軸受リング部材３１を、ステ
アリングボディ７の筒状空間７ａ内で前記ラック５ａの
ピニオン３ａとの噛合い部に近接する位置に回動自在に
設けている。そして、この偏心軸受リング部材３１を、
ステアリングボディ７の外部から回動操作するための回
転操作部材３２を設けている。

【００２５】この実施の形態では、図１（ａ）に示すよ
うに、上述した偏心軸受リング部材３１は、ステアリン
グボディ７の一方の端部に近接する筒状空間７ａ内であ
って、図２に示す前記ラック５ａとピニオン３ａとの噛
合い部に近接する位置で回動自在に支持されている。こ
の偏心軸受リング部材３１は、全体がリング状を呈し、
ボディ筒状空間７ａに回動自在に保持されている。ま
た、この偏心軸受リング部材３１におけるボディ内側の
側面部には、すぐ歯傘歯車による円周ギア部３３が形成
されている。なお、図１（ａ）中９はステアリングボデ
ィ７の端部に付設した蛇腹状ブーツである。

【００２６】前記偏心軸受リング部材３１の円周ギア部
３３に臨むステアリングボディ７の一部には円筒ボス部
７ｂが突設され、このボス部７ｂには、前記ラック軸５
に直交する方向から臨む孔部７ｃが形成されている。そ
して、この孔部７ｃには、前記円周ギア部３３に噛合す
る小ギア３２ａを有する回転操作部材３２が差し込ま
れ、回動自在な状態で軸支されている。なお、３５は孔
部７ｃの外方端側に形成したねじ部に螺合することによ
り前記回転操作部材３２を所定の回転調整位置で押圧力
を加えることによりロックするためのロックナット、３
６は回転操作部材３２とロックナット３５との間に弾撥
力をもって介在され孔部７ｃを密封するために用いたＯ
リングである。

【００２７】この場合に、上述した偏心軸受リング部材
３１と回転操作部材３２とを、すぐ歯傘歯車とこれに噛
合う小ギヤとの組み合わせで回転伝達自在に構成した
が、これに限らず、曲がり歯傘歯車、ハイポイドギア、
あるいはウォームホィールを利用した回転伝達手段で構
成してもよい。また、上述した偏心軸受リング部材３１
としては、焼結金属で一体に形成したものを用いるとよ
いが、これに限らず、金属材の内径にブッシュ、樹脂コ
ーティングあるいは樹脂と一体に形成したものを用いて
もよい。

【００２８】このような構成によれば、偏心軸受リング
部材３１の側面部に設けた円周ギア部３３に噛合する回
転操作部材３２の小ギア３２ａを、ラック軸５に直交す
る方向から臨ませ、これをステアリングボディ７に対し
回動操作するという簡単な操作によってラック軸５のラ
ック５ａのピニオン３ａに対しての支持位置を調整する
ことができる。また、偏心軸受リング部材３１側の円周
ギア部３３と回転操作部材側の小ギア３２ａ、さらにロ
ックナット３５などの構成部品を型物で構成できるか
ら、ラック軸５の支持が安定するとともにコストも安価
である。

【００２９】すなわち、ラック軸５を保持する保持孔３
１ａを筒状空間７ａとは偏心させて形成している偏心軸
受リング部材３１を、回動操作部材３２の回動調整によ
りステアリングボディ７の筒状空間７ａ内で回転変位さ
せることによって、ラック軸５のピニオン軸３との間の
軸間距離の調整を行ってラック５ａとピニオン３ａとの
間でのバックラッシュの調整を適正に行える。また、こ
の調整後にロックナット３５を締め付けると、回転操作
部材３２、さらに偏心軸受リング部材３１をロックする
ことができるから、ラック軸５を安定した状態で摺動自
在に保持することができる。したがって、このような構
成によれば、ラック軸５のラック５ａとピニオン３ａと
の軸間距離すなわちバックラッシュの調整を簡単な構造
によって適正に行える。このようにバックラッシュを適
正に形成すれば、衝撃時においても打音の発生を最小限
とすることができる。

【００３０】本発明によれば、ステアリングボディ７の
筒状空間７ａ内に回動自在でかつ回転操作部材３２によ
り回転駆動される偏心軸受リング部材３１の一方の側面
部に設けた円周ギア部３３に噛合する小ギア３２ａを有
する外部操作可能な回転操作部材３２における他方の側
面部を、弾性体としてのＯリング４１を介在させた状態
でステアリングボディ７の筒状空間７ａに圧入して固定
したリング４２を設けたものである。

【００３１】ここで、本発明では、Ｏリング４１を、偏
心軸受リング部材３１の外周側の端部に設けた三角形状
の切欠き３１ｂとリング４２側の三角形状の切欠き４２
ａとの間に、所定の圧接代をもって介在させており、こ
れにより偏心軸受リング部材３１に、ボディ筒状空間７
ａ内でＯリング４１によって軸線方向および径方向から
の押圧力を与えた状態で固定している。

【００３２】このような構成によれば、回転操作部材３
２の小ギア３２ａと噛合する円周ギア部３３と反対側の
側面部を、Ｏリング４１を介してボディの筒状空間の内
壁部に固定しているので、偏心軸受リング部材３１を、
Ｏリング４１からの軸線方向および径方向からの押圧力
によって、がたのない状態で固定することができる。し
たがって、小ギア３２ａとのバックラッシュやボディ７
の筒状空間７ａの内壁部との間の隙間による偏心軸受リ
ング部材３１の打音の発生を防止できる。また、偏心軸
受リング部材３１において、Ｏリング４１による軸線方
向での弾発力によって、舵取りリンク機構を構成するタ
イロッド側での衝突音の低減に寄与することができる。
さらに、偏心軸受リング部材３１において、Ｏリング４
１による径方向での弾発力によって、ラック５ａ、ピニ
オン３ａの噛合い誤差を吸収する機能も備える。

【００３３】ここで、上述した偏心軸受リング部材３１
を固定する際に介在する弾性体としては、Ｏリング４１
に限らず、図３に示すように断面が角形リング４３、図
４に示すようにばね機能をもつ弾性リング４５、あるい
は図５に示すようにゴム、合成樹脂等による弾性体膜４
７（４７ａ，４７ｂ）によって構成すればよい。このよ
うな弾性体４１，４３，４５，４７を介して偏心軸受リ
ング部材３１を固定する手段としては、ステアリングボ
ディ７の筒状空間７ａ内に圧入して固定するリング４２
がある。

【００３４】ここで、この実施の形態では、図示および
説明を省略したが、ラック軸５の他端は、ステアリング
ボディ７の他端部に設けた金属製パイプの延設端におい
て、ラック支持用ブッシュにより摺動自在に支持されて
いるものである。

【００３５】なお、本発明は上述した実施の形態で説明
した構造には限定されず、ラックピニオン式舵取り装置
としてのラックピニオン式動力舵取装置におけるパワー
ステアリング本体部１における各部の形状、構造等を適
宜変形、変更してもよい。

【００３６】たとえば上述した実施の形態では、ステア
リングボディ７の筒状空間７ａ内に回転可能に保持する
偏心軸受リング部材３１における偏心した位置にラック
軸５を保持する保持孔３１ａを設けているが、本発明は
これに限らず、ボディ７の内周部に偏心して形成した偏
心孔部に、ラック軸の保持孔に対して外周面が偏心して
いる偏心軸受リング部材を回動可能に保持させるように
構成してもよい。

【００３７】また、偏心軸受リング部材３１の軸支構造
や側面の円周ギア部３３の形状、これに噛合う小ギア３
２ａの形状、さらにこの小ギア３２ａを有する回転操作
部材３２の軸支構造、その回転をロックするロックナッ
ト３５のようなロック手段として、種々の変形例が考え
られる。

【００３８】また、偏心軸受リング部材３１を固定する
際に介在する弾性体としては、Ｏリング４１、断面角形
リング４３、ばね機能をもつ弾性リング４５、あるいは
ゴム、合成樹脂等による弾性体膜４７に限らず、これに
類する弾性体を介在させて設けることができるとよい。
さらに、このような弾性体を介して偏心軸受リング部材
３１を固定する手段としては、ステアリングボディ７の
筒状空間７ａ内に端部圧入して固定するリング４２を用
いているが、これに限定されず、ボディ７の内周壁７ｄ
に係止することができるリングであればよい。

【００３９】また、上述した実施の形態においては、パ
ワーステアリングであるラックピニオン式動力舵取装置
について述べたが、本発明はこれに限定されず、マニュ
アルステアリングであるラックピニオン式舵取り装置に
適用しても同様な効果が得られる。

【００４０】

【実施例】ステアリングボディ７における筒状空間７ａ
において、ピニオン軸３のピニオン３ａに噛合するラッ
ク５ａを有するラック軸５を摺動自在に保持するラック
支持部３０を、ボディ筒状空間７ａ内で回動自在に設け
られ弾性体であるＯリング４１を介してリング４２でボ
ディ筒状空間７ａ内に固定した偏心軸受リング部材３１
と、ステアリングボディ７に直交する方向から臨んで回
動自在に保持した回転操作部材３２とを、リング部材３
１の側面に設けたすぐ歯傘歯車による円周ギア部３３と
これに噛合する小ギア３２ａとからなる回転伝達部材３
２によって回動可能に構成している。

【００４１】

【発明の効果】以上説明したように本発明に係るラック
ピニオン式舵取り装置によれば、ステアリングボディの
筒状空間内に配置され舵取り操作に応じて回転するピニ
オンに噛合うラックを有するラック軸を摺動自在に保持
する保持孔を偏心した位置に有する偏心軸受リング部材
を、前記筒状空間内でラックのピニオンとの噛合い部に
近接する位置に回動自在に設け、その一方の側面部に設
けた円周ギア部に噛合する小ギアを有する外部操作可能
な回転操作部材を、ラック軸に直交する方向から臨ませ
た状態でボディに回動操作可能に設けるとともに、偏心
軸受リング部材の他方の側面部を弾性体を介在させた状
態でボディの筒状空間の内壁部に固定したので、簡単な
構成であるにもかかわらず、以下に述べる優れた効果を
奏する。

【００４２】本発明によれば、ラックピニオン式舵取り
装置において、ラック軸を保持する保持孔を偏心させた
状態で形成した偏心軸受リング部材を、外部からの回動
操作部材によりステアリングボディの筒状空間内で回転
変位させることにより、このラックのピニオンとの間の
バックラッシュすなわち軸間距離の調整を適正に行うこ
とができ、またその調整状態で前記偏心軸受リング部材
や回転操作部材を固定することができ、これによりラッ
ク軸を安定した状態で摺動自在に保持することができ
る。

【００４３】特に、本発明によれば、偏心軸受リング部
材の小ギアと噛合する円周ギア部と反対側の側面部を、
弾性体を介してボディ筒状空間の内壁部に対し偏心軸受
リング部材に軸線方向および径方向からの押圧力を与え
た状態で固定しているので、偏心軸受リング部材を、弾
性体からの軸線方向および径方向からの押圧力によっ
て、がたのない状態で固定することができ、小ギアとの
バックラッシュやボディ筒状空間の内壁部との間の隙間
による打音の発生を防止できる。

【００４４】また、本発明によれば、偏心軸受リング部
材において、弾性体による軸線方向での弾発力によっ
て、舵取りリンク機構を構成するタイロッド側での衝突
音の低減に寄与することができる。さらに、偏心軸受リ
ング部材において、弾性体による径方向での弾発力によ
って、ラック、ピニオンの噛合い誤差を吸収する機能も
備える。

【００４５】また、本発明によれば、ラックとピニオン
との軸間距離調整すなわちバックラッシュ間隙の調整
を、偏心軸受リング部材とこれを回動調整する回転操作
部材という簡単な構造によって、簡単な操作でしかも確
実に行える。さらに、ラック軸を偏心軸受リング部材に
よりがたのない状態で確実に軸支できるから、従来のよ
うにラック軸の他端側を支持するラック支持用ブッシュ
での支持部を中心として揺動したりすることがなく、ラ
ック軸やその支持部での剛性を向上させ、打音も防止す
ることができ、耐久性が向上する。

【００４６】また、本発明によれば、偏心軸受リング部
材の偏心量による軸間距離の調整量に対し回転伝達系で
のギアの減速比が比較的大きいので、調整作業が容易と
なり、しかも軸間距離の精度を高めることができる。さ
らに、本発明によれば、調整手段である回転操作部材と
固定手段であるロックナットとが独立しているから、調
整後の調整位置を乱すことなく確実に固定することがで
きる。また、本発明によれば、偏心軸受リング部材側の
大ギア（円周ギア部）と回転操作部材側の小ギア、さら
にロックナットなどの構成部品を型物で構成でき、しか
もコストも安価であるという利点がある。

【図面の簡単な説明】

【図１】 本発明に係るラックピニオン式舵取り装置の
一つの実施の形態を示し、（ａ）はステアリングボディ
におけるラック軸の支持部を拡大した要部断面図、
（ｂ）は（ａ）のＩ−Ｉ線断面図、（ｃ）は回転操作部
材の付設部を示す平面図、（ｄ）は（ａ）の要部拡大図
である。

【図２】 本発明に係るラックピニオン式舵取り装置を
適用したパワーステアリング用装置におけるパワーステ
アリング本体部の断面図である。

【図３】 本発明の別の実施例を示すラック軸支持部を
拡大した要部断面図である。

【図４】 本発明の他の実施例を示すラック軸支持部を
拡大した要部断面図である。

【図５】 本発明のさらに他の実施例を示すラック軸支
持部を拡大した要部断面図である。

【符号の説明】 １…ラックピニオン式動力舵取装置におけるパワーステ
アリング本体部、２…スタブ軸、３…ピニオン軸、３ａ
…ピニオン、３ｂ…先端部、４…トーションバー、５…
ラック軸、５ａ…ラック、７…ステアリングボディ、７
ａ…筒状空間、７ｂ…円筒ボス部、７ｃ…孔部、８…組
込み空間、１０…回転型流路切換弁、１１…ロータ、１
２…スリーブ、１５，１６…入りポートおよび戻りポー
ト、１７Ａ，１７Ｂ…左、右出力ポート、２１…ボール
ベアリング（軸支部としての軸受）、２２…ブッシュ
（軸支部としての軸受）、２３…軸支部、３０…ラック
軸支持部、３１…偏心軸受リング部材、３１ａ…保持
孔、３１ｂ…三角形状の切欠き、３１ｃ…四角形状の切
欠き、３２…回転操作部材、３２ａ…小ギア、３３…円
周ギア部、３５…ロックナット、３６…Ｏリング、４１
…Ｏリング（弾性体）、４２…リング、４２ａ…三角形
状の切欠き、４３…角形リング、４３ａ…角形切欠き、
４５…ばね性をもつ弾性リング、４７（４７ａ，４７
ｂ）…弾性体膜、Ｐ…オイルポンプ、Ｔ…オイルタン
ク、ＣＬ，ＣＲ…パワーシリンダ左、右室。

Claims (2)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】 舵取り操作に応じて回転するピニオンに
   噛合うラックを有するラック軸を、ステアリングボディ
   の筒状空間内で軸線方向に摺動自在に保持しているラッ
   クピニオン式動力舵取装置において、 前記ラック軸を摺動自在に保持する保持孔を偏心した位
   置に有する偏心軸受リング部材を、前記ステアリングボ
   ディの筒状空間内に回動自在に設け、この偏心軸受リン
   グ部材の一方の側面部に設けた円周ギア部に噛合する小
   ギアを有する外部操作可能な回転操作部材を、前記ラッ
   ク軸に直交する方向から臨ませた状態で前記ステアリン
   グボディに回動操作可能に設けるとともに、 前記偏心軸受リング部材の他方の側面部を弾性体を介在
   させた状態で前記ステアリングボディの筒状空間の内壁
   部に固定したことを特徴とするラックピニオン式舵取り
   装置。
2. 【請求項２】 請求項１記載のラックピニオン式舵取り
   装置において、偏心軸受リング部材を、ステアリングボ
   ディの筒状空間内で弾性体により軸線方向および径方向
   からの押圧力を与えた状態で固定したことを特徴とする
   ラックピニオン式舵取り装置。