JPH0929592A - ダイヤモンド膜の研磨方法 - Google Patents

ダイヤモンド膜の研磨方法

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JPH0929592A
JPH0929592A JP18183095A JP18183095A JPH0929592A JP H0929592 A JPH0929592 A JP H0929592A JP 18183095 A JP18183095 A JP 18183095A JP 18183095 A JP18183095 A JP 18183095A JP H0929592 A JPH0929592 A JP H0929592A
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diamond film
film
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Masaaki Yokota
正明 横田
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  • Grinding And Polishing Of Tertiary Curved Surfaces And Surfaces With Complex Shapes (AREA)

Abstract

(57)【要約】 【目的】 ダイヤモンド膜の平滑化を効率的に実現する
ダイヤモンド膜の研磨方法を提供する。 【構成】 高温での金属との化学反応によりダイヤモン
ド膜の平滑化を行うダイヤモンド膜の研磨方法におい
て、ダイヤモンド表面を、予め、酸化処理した後に、金
属工具と前記酸化処理したダイヤモンドとを接触させ、
摺動させることを特徴とする。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、ダイヤモンド膜の研磨
法に関し、特に、光学素子成形用型などのあらゆる形状
の基材上に成膜されたダイヤモンド膜を、高度な形状精
度を保ちながら、表面の平滑化を図り、それを光学的に
満足する範囲で能率的に達成するダイヤモンド膜の研磨
方法に関する。
【0002】
【従来の技術】従来のダイヤモンド膜の研磨方法には、
鋳鉄板を用いるスカイフ法や、非酸化性雰囲気中、また
は、活性酸素もしくは水素の雰囲気中で加熱した鉄系金
属板と摺り合わせる方法、または、粉末状の流動性金属
と摺り合わせる方法などが知られているが、これらの技
術では、ダイヤモンド膜の表面の凹凸を平滑にはできる
ものの、その形状精度に関しては、平面研磨面につい
て、もしくは、倣い研磨が辛うじてできる程度であり、
高精度な非球面、球面、トーリック面などを創成するこ
とは不可能であった。
【0003】そこで、ダイヤモンド膜を所望形状に高精
度研磨する方法として、熱化学反応を用いた加工が採用
されるようになり、加工部分、つまり、金属とダイヤモ
ンドとの接触部分を小さくして、その部分を摺動移動さ
せることにより、ダイヤモンド膜表面を所望形状に精度
良く平滑化することが可能になった。
【0004】
【発明が解決しようとしている課題】しかしながら、こ
の方法では、金属とダイヤモンドとの接触面積が小さ
い、つまり、反応にあずかる面積が小さいために、加工
に長時間を必要として、非常に加工能率が悪いという問
題点があった。一方、前記方法における接触面積が小さ
いため、微量の荷重にもかかわらず、工具に微量変形を
生じて、更に向上すべき高精度化には問題点となってい
た。
【0005】
【課題を解決するための手段】本発明は、前記問題点の
加工能率を改善するためのもので、ダイヤモンド膜表面
を、高温中で、酸素雰囲気に曝した後に、高温下で、加
工用金属製工具と接触、摺動させることにより、ダイヤ
モンド膜の平滑化を効率的に実現するダイヤモンド膜の
研磨方法を提供するものである。
【0006】本発明は、同様に、加工雰囲気に含まれる
酸素濃度を連続的に減少させながら、高温下で、ダイヤ
モンド膜と加工用金属製工具とを接触、摺動させること
により、ダイヤモンド膜の平滑化を効率的に実現するダ
イヤモンド膜の研磨方法を提供するものである。
【0007】本発明は、同様に、ダイヤモンド膜表面の
全面に金属酸化物薄膜を被覆した後、もしくは、被覆
し、熱処理した後に、高温下で、加工用金属製工具と接
触、摺動させることにより、ダイヤモンド膜の平滑化を
効率的に実現するダイヤモンド膜の研磨方法を提供する
ものである。
【0008】本発明は、同様に、ダイヤモンド膜と加工
用金属製工具の接触部分とを、他の部分より高温にし
て、前記工具とダイヤモンド膜を接触、摺動させること
により、ダイヤモンドの諸性質を損なうことなく、ダイ
ヤモンド膜の平滑化を高精度に効率的に実現するダイヤ
モンド膜の研磨方法を提供するものである。
【0009】この場合、本発明は、ダイヤモンド膜の平
滑化を、更に高精度になるように工夫したもので、その
ために、金属で被覆された、細孔を有する加工工具とダ
イヤモンド膜とを接触、摺動することにより、その工具
変形が軽減され、ダイヤモンド膜がより高精度に加工さ
れる研磨方法を得るためになされたものである。
【0010】
【実施例】
(実施例1)ここでは、高温中で、ダイヤモンド膜を、
その表面を酸素雰囲気に曝した後に、高温下で、加工用
金属製工具と接触させ、摺動させることにより、ダイヤ
モンド膜を効率的に研磨する研磨方法の具体例を示す。 (1)ダイヤモンド膜の表面酸化処理方法:図5に示す
ような、平面が円盤形状のSiC基材11上に、マイク
ロ波プラズマCVD法により、ダイヤモンド膜12を、
膜厚:7μmにて、形成したサンプルを、図4に示す酸
化処理装置にセットする。次に、真空槽40内を6×1
-3Torrの真空度まで排気し、ヒーター60によ
り、サンプル48内の温度センサー600が660℃に
なるまで加熱する。
【0011】次に、排気をやめ、パイプ58から酸素:
20%の酸素−窒素混合ガスを導入し、チャンバー40
内に満たす。そして、酸化処理時間を5分、10分、2
0分の3通り行い、再び、排気を開始し、ヒーター通電
を切り、常温まで冷却する。
【0012】このサンプルを図6に示す。ここで、11
1はSiC母材、112はCVDダイヤモンド膜、11
3は酸化処理により変質したダイヤモンド層である。 (2)平坦化加工例:1 前記方法により得られた酸化処理したサンプル3種類
と、酸化処理をしていないサンプルとを、それぞれにつ
いて、加工装置の回転台上に乗せ、回転可能な球形状の
純鉄製工具を、接触荷重:0.98Nで酸化処理された
ダイヤモンド膜、および、ダイヤモンド膜にそれぞれ接
触させて、20mm/秒の速さで、摺動させた(図1
(A)の状態)。
【0013】この時の工具およびダイヤモンド膜の接触
部分の温度を850℃に設定すると共に、加工系全体を
3×10-3Torrの真空度にした。そして、図2に示
すようにダイヤモンド膜のサンプルの回転中心から10
mm離れたポイントに、純鉄製工具を、その回転中心が
ダイヤモンド膜のサンプル回転の接線上で、かつ、加工
面に対して、高さ方向に30°の角度で接離するように
設置し、接触させ、偏摩耗防止のため、3r.p.mで
回転させた。この状態で、20分間の加工を行い、輪帯
状の加工溝を作った。この実験結果を表1に示す。
【0014】
【表1】 なお、ここで、酸化処理時間5分のサンプルよりも、1
0分のサンプルが、その加工深さが大きいのは、ダイヤ
モンド変質層が、時間と共に増加したためと考えられる
(表1:No.1と2とを比較)。また、処理なしのサ
ンプルよりも、酸化処理のサンプルの加工深さが大きい
のは、酸化処理によって作られる処理層は、ダイヤモン
ド構造が変化したもので、例えば、グラファイトなどで
あり、ダイヤモンドよりも容易に炭素結合が切れて、こ
の実験の熱化学反応加工で、純鉄工具中へのカーボンの
拡散が容易に起こり得るためと考えられる(表1:N
o.1、2および4を参照)。
【0015】酸化処理時間が20分のサンプルでは、ダ
イヤモンド膜の剥離が発生した。これは、ダイヤモンド
膜と型母材との界面まで酸素が拡散して、膜の密着力が
低下したためと考えられる(表1:No.4)。 (3)平坦化加工例:2 次に、本発明を使った、球面形状のCVDダイヤモンド
膜の平坦化加工例を述べる。なお、以下に述べる実施例
では、図7に示す温度(加熱、冷却)、作用時間(送り
速度、各軸の回転数)、加工位置の集中制御システムを
用いて、正確な制御を行った。
【0016】*球面形状ダイヤモンド膜の平坦化加工 図8に示すような、凹面球面形状の光学素子を成形する
ための型母材61上のCVDダイヤ膜62を酸化処理し
た後に、熱化学反応による加工例が示されている。
【0017】(サンプルの準備)型母材の形状は、曲率
半径R=80mmの凹面、口径:20mmで、その材質
は超硬合金である。そして、球面部分に、マイクロ波プ
ラズマCVD法により、ダイヤモンド膜を被覆した。膜
厚は、成膜の効率と膜の内部応力増加による超硬合金型
母材との密着力の低下などを考慮して、50μm以下が
良いと考えられるが、更に、好ましい値として、10μ
m以下の膜厚の4μmを選択した。
【0018】このようなサンプルを3個製作して、その
うちの2つを、図4に示す酸化処理装置に組み込み、前
記実施例と同様にして、1つは5分、もう1つは10分
の酸化処理をした。このサンプルを図9に示す。ここ
で、符号611は超硬合金母材、612はCVDダイヤ
モンド膜、613は酸化処理層である。このようにし
て、3種類のサンプルが用意された。
【0019】(球面形状加工、加工時間の比較)前記3
種類のサンプル(酸化処理した2種類と、CVDダイヤ
モンド膜のみのもの)を加工装置に組み込み(図1
(B)の状態)、ダイヤモンド膜厚:1μmの球面形状
に加工する方法を述べる。まず、図1において、回転軸
71は回転機構21に、回転軸74は歯車機構25を介
して回転機構24に、それぞれ、接続されており、更
に、回転軸74は移動機構23に接続されている。ま
た、回転軸71に型母材72が取りつけられている。直
径5mmの金属製加工工具73は、移動可能な回転軸7
4の先端に取りつけられている。また、工具の接触部分
は、任意の一定加圧力を保った状態で、移動機構23を
集中制御装置(図示せず)により制御することで、所望
の速度で、型72のダイヤ面上を移動することができ
る。
【0020】サンプルの加工部分は、ヒーター75によ
り、任意の温度に制御される。前記集中制御装置によ
り、加工温度、圧力、各部分の作用時間、摺動速度は、
所望の値に制御できる。これらの加工系全体は、チャン
バー76の中にあり、酸素濃度1.6ppm以下の真空
および不活性ガス雰囲気に制御される。特に、今回は、
3×10-3Torrの真空雰囲気中で、加工工具に純鉄
を用い、回転軸71および74を回転させ、加工部分の
摺動速度が20mm/秒になるように制御した。また、
加工ポイントを接触荷重:0.98Nに保った状態で、
型母材の中心から周辺に向かって、各部分での作用時間
が一定になるような速度で移動した。また、加工部分の
温度は、850℃に保った。そして、3種類のサンプル
の加工時間の比較を行った。
【0021】本実験の加工時間は、酸化処理が5分のサ
ンプルでは、約9時間、酸化処理が10分では、約7時
間、処理なしのダイヤモンド膜サンプルでは、約14時
間であった。また、加工後のダイヤ膜の表面粗さは、酸
化処理サンプル、処理なしサンプル共に、RMAX ≒20
nm以下であり、面形状はN=±0.5本以下であっ
た。
【0022】ここで、前記3種類のサンプル型によるガ
ラス光学素子の成形加工を行った。その結果、酸化処理
が5分の型や、処理なしの型により成形された光学素子
の表面は、曇り欠陥や成形時の融着欠陥も無く、実用に
耐えることができたが、酸化処理が10分の型により成
形された光学素子表面では曇り欠陥が発生した。これ
は、酸化処理によるグラファイト構造が型表面に部分的
に残留しているためと考えられる。この型の表面を、ラ
マン散乱分光分析法により、分析した結果を図3に示
す。これより、この型の表面にはダイヤモンドとグラフ
ァイトが混在していることが確認された。ここで、球面
形状のダイヤモンド膜の平坦化加工実験の結果を表2に
示す。
【0023】
【表2】 以上、説明したように、CVDダイヤモンド膜の熱化学
反応利用の表面研磨加工の際に、CVDダイヤモンド膜
表面を、予め、酸化処理した後に、金属工具による加工
をすることで、加工精度を損なうことなく、加工能率を
改善することが可能になった。 (実施例2)ここでは、加工雰囲気に含まれる酸素濃度
を連続的に減少させながら、高温下で、ダイヤモンド膜
と加工用金属製工具とを接触させ、摺動させることによ
り、ダイヤモンド膜を効率的に平滑化する研磨方法の具
体例を示す。 (1)平坦化加工例:1 図5に示すような、平面が円盤形状のSiC基材11上
に、マイクロ波プラズマCVD法により、ダイヤモンド
膜12を、その膜厚:7μmにて形成し、このサンプル
を、加工装置の回転台上に乗せ、回転可能な球形状の純
鉄製工具を、接触荷重が0.98Nで、ダイヤモンド膜
に接触させて、20mm/秒の速さで、摺動させた(図
1(A)の状態)。
【0024】この時の工具とダイヤモンド膜の接触部分
との温度を、850℃に設定すると共に、加工系の雰囲
気を、それぞれ、酸素濃度:1ppm、5ppm、20
ppm、100ppm、200ppmの5通りにした。
そして、実施例1(図2を参照)と同様に加工溝を作っ
た。この実験結果を表3に示す。
【0025】
【表3】 ここでは、加工雰囲気の酸素濃度が増加するに従い、表
面層のダイヤモンド構造が減少し、グラファイト構造が
増加した。また、酸素濃度の増加にともない、加工深さ
も増加している。それは、純鉄工具中へのカーボンの拡
散のみならず、加工雰囲気中の酸素が、ダイヤモンドカ
ーボンと反応して、ガス化し、ダイヤモンドが除去され
たためと考えられる。また、表面粗さが増加しているの
も、この加工が、純鉄工具中へのカーボンの拡散より
も、酸素によるダイヤモンドのガス化現象に多く支配さ
れているためと考えられる。
【0026】酸素濃度:200ppmでは、20分間の
加工中に、酸化変質層が型母材とダイヤモンド膜の界面
まで進み、ダイヤモンド膜の密着力が低下したため、膜
剥離が発生したと考えられる。 (2)平坦化加工例:2 本発明を使った球面形状のCVDダイヤモンド膜の平坦
化加工は、実施例1(図7を参照)と同様に行った。ま
た、球面形状のダイヤモンド膜の平坦化加工は実施例1
と同様であり、また、サンプルの準備も実施例1と同様
であるが、その個数は4個であり、種々の雰囲気での加
工実験である。
【0027】球面形状加工については、前記4種類のサ
ンプルを、図10(A)、(B)に示すような加工装置
に組み込んで、ダイヤモンド膜厚:1μmの球面形状に
加工するが、上記加工装置は、基本的には、実施例1
(図1(A)、(B)参照)と同様であり、特に、この
実施例では、チャンバー76には、酸素ガス用および不
活性ガス用ニードルバルブ171、172を備えた、ガ
ス混合用サブチャンバー173からの導入口78があ
り、任意の酸素濃度に加工雰囲気を設定できる。
【0028】今回は、加工工具に純鉄を用い、回転軸7
1および74を回転させ、加工部分の摺動速度が20m
m/秒になるように制御した。また、加工ポイントを接
触荷重:0.98Nに保った状態で、型母材の中心から
周辺に向かって、各部分での作用時間が一定になるよう
な速度で移動した。また、加工部分の温度は850℃
(一定)に保った。そして、加工中の雰囲気を下記の4
通りの条件で加工した。 O2 :100ppmで、6.5時間の加工後、
2:1ppmで、1時間の 加工 O2 :100ppmで、6時間の加工後、O2 :2
0ppmで、1時間の 加工後、更に、O2 :1p
pmで、1時間の加工 O2 :100ppmで、6時間の加工後、O2 :1
ppmで、2時間の加 工 O2 :1ppmで、14時間加工 これらの条件では、すべて、CVDダイヤモンド膜を膜
厚:1μmに加工できた。また、加工後のダイヤ膜の表
面粗さは、前記条件では、RMAX ≒50nm、〜
条件では、RMAX ≒20nm以下であり、面形状は、す
べての条件でN=±0.5本以下であった。
【0029】ここで、前記4種類のサンプル型によるガ
ラス光学素子の成形加工を行った。その結果、条件
のサンプルでは曇り欠陥が発生した。これは、O2 :1
00ppm加工時に形成されたグラファイト層が[1p
pm/1時間]および[20ppm/1時間+1ppm
/1時間]の加工では除去されず、表面に残留したため
と考えられる。これは、成形後の型表面を、ラマン分光
分析法で分析した結果と一致する。
【0030】また、図11は、前記条件で得られたサ
ンプルのラマン分光分析による解析結果のグラフを示
す。ここでは、グラファイトのピークはほとんど認めら
れず、ダイヤモンドの明確なピークが確認された。従っ
て、条件のサンプルが最も効率よく加工できたことに
なる。
【0031】ここで球面形状のダイヤモンド膜の平坦化
加工実験の結果を表4に示す。
【0032】
【表4】 以上説明したように、CVDダイヤ膜の熱化学反応利用
の表面研磨加工の際に加工雰囲気中の酸素濃度を変化さ
せながら、金属工具による加工をすることで、加工精度
を損なうことなく、加工能率を改善することが可能にな
った。 (実施例3)ここでは、ダイヤモンド膜の表面、全面に
金属酸化物薄膜を被覆した後、もしくは、被覆し熱処理
した後に、高温下で、加工用金属製工具と接触、摺動さ
せることにより、ダイヤモンド膜を効率的に平滑化する
研磨方法の具体例を示す。 (1)金属酸化物薄膜形成方法 (反応性スパッタリング法による蒸着)反応性スパッタ
リング法により、酸化鉄および酸化銅を形成する方法
を、以下に述べる。実施例1と同様に、図5に示すよう
な、平面が円盤形状のSiC基材11上に、マイクロ波
プラズマCVD法により、ダイヤモンド膜12を、膜
厚:7μmに形成し、このサンプルを、図12に示すス
パッタリング装置にセットする。次に、真空槽40ない
を所定の真空度まで排気し、パイプ58からアルゴンガ
スを導入し、電源59より基板ホルダー46に高周波電
圧を印加して、グロー放電を発生させ、アルゴンイオン
による、CVDダイヤモンド膜のサンプル48のスパッ
タクリーニングを行う。
【0033】その後、電源57より、純鉄ターゲットま
たは純銅ターゲット56がボンディングされているカソ
ード電極54に、高周波または直流の電圧を印加して、
パイプ58からスパッタ用ガスのアルゴンガスを、ま
た、パイプ581から反応用ガスの酸素ガスを、それぞ
れ導入して、反応性スパッタリングを行い、CVDダイ
ヤモンド上に、酸化鉄の薄膜を形成した。そして、スパ
ッタリング時間をそれぞれ変化させて、膜厚250n
m,50nmのサンプルを得た。なお、この時の膜厚は
モニター60上の膜厚60を触針式膜厚計により測定し
た。このサンプルは、実施例1と同様に図6に示す形で
ある。ここで、符号111はSiC母材、112はCV
Dダイヤモンド膜、113は酸化鉄膜または酸化銅膜で
ある。 (2)平坦化加工例:1 前記方法により得られた、酸化鉄および酸化銅をコーテ
ィングしたサンプルの4種類と、スパッタリング法によ
り純鉄をコーティングしたサンプルの2種類とを、実施
例1と同様に、加工装置の回転台上に乗せ(図1(A)
の状態)、センサー20を950℃にセットして、チャ
ンバー76内部の雰囲気を、3×10-3Torr以下に
して、約1時間保持した。この時、工具22は、ワーク
72′と接触しないようにしておく。
【0034】続いて、前記6種類のサンプルと、表面に
金属などを被覆していないCVDダイヤモンド膜のサン
プル、合計で7種類のサンプルを、それぞれ、加工装置
の回転台上に乗せ、回転可能な球形状の純鉄製工具を、
接触荷重:0.98Nで、それぞれの被覆処理されたダ
イヤモンド膜、および、ダイヤモンド膜にそれぞれ接触
させ、20mm/秒の速さで摺動させた(図1(A)の
状態)。この時の工具とダイヤモンド膜の接触部分の温
度は、850℃に設定すると共に、加工系全体を真空
(3×10-3Torr以下)に制御した。そして、実施
例1(図2を参照)と同様に、加工溝を作った。この実
験結果を表5に示す。
【0035】
【表5】 酸化銅膜の250nmの膜が剥離したが、それは、膜厚
増加に伴う内部応力増加とダイヤモンドとの熱膨張率の
差が大き過ぎて、酸化銅膜とダイヤモンドの密着力が低
下したためと考えられる(表5:No.3)。
【0036】酸化鉄コートサンプルが、純鉄コートサン
プルよりも、加工深さが大きいのは、加熱反応でダイヤ
モンドのカーボンが鉄中に拡散するのみならず、酸化鉄
中の酸素がダイヤモンドカーボンと反応したためと考え
られる(表5:No.1、2とNo.5、6の比較)。
【0037】また、純鉄コートサンプルより、酸化銅コ
ートサンプルの加工深さが大きいのは、カーボンの拡散
反応より、酸化銅の酸素によるカーボンの酸化の影響が
大きいためと考えられる(表5:No.4とNo.6の
比較)。
【0038】また、カーボンは銅よりも鉄中に多く拡散
するのに、酸化鉄コートサンプルと酸化銅コートサンプ
ルとでは、その加工深さが同様なのは、酸化銅の酸素が
酸化鉄のそれよりもカーボンを酸化しやすいためと考え
られる。これは、酸化物の生成自由エネルギーの差が
(Fe−C)<(Cu−C)であることに関係している
と考えられる(表5:No.2とNo.4の比較)。
【0039】また、酸化鉄コートの厚みと共に加工深さ
が増すのは、酸化および拡散の反応層が増加するためと
考えられる(表5:No.1とNo.2の比較)。ま
た、純鉄コートおよび酸化鉄コートの膜が厚いほど、加
工深さが増すのは、加熱反応により、純鉄中に拡散する
ダイヤモンドのカーボン量、および、酸化されるカーボ
ン量が、純鉄および酸化鉄の体積増加にともない増加す
るためと考えられる(表5:No.1とNo.2および
No.5とNo.6の比較)。
【0040】以上述べてきた酸化あるいは拡散反応は、
ダイヤモンドの結晶構造を破壊するものであり、それら
が多いほど、ダイヤモンドが加工容易になる。 (3)平坦化加工例:2(酸化鉄膜250nmの場合) 本発明を使った球面形状のCVDダイヤモンド膜の平坦
化加工は、実施例1(図7を参照)と同様に行った。ま
た、この球面形状のダイヤモンド膜の平坦化加工は、実
施例1と同様であり、また、サンプルの準備も、実施例
1と同様であるが、その個数は2個であり、そのうちの
1つを、図12に示すスパッタリング装置に組み込み、
CVDダイヤモンド膜上に酸化鉄を成膜する。この成膜
方法は前記実施例と同様にして、膜厚:250nmの酸
化鉄膜を成膜した。
【0041】このサンプルは、実施例1と同様に図9に
示す形である。ここで、符号611は超硬合金母材、6
12はCVDダイヤモンド膜、613は酸化鉄膜であ
る。このようにして、2種類のサンプルが用意された。
【0042】(加熱処理)前記方法により得られた酸化
鉄を被覆したCVDダイヤモンド膜サンプルを、実施例
1と同様に、加工装置の回転台上に乗せ(図1(B)の
状態)、センサー20を950℃にセットして、チャン
バー76内部の雰囲気を、3×10-3Torr以下にし
て、約1時間保持して、加熱処理を行った。この時、工
具22は、ワーク72と接触しないようにしておく。
【0043】(球面形状加工、加工時間の比較)ここで
は2種類のサンプル(酸化鉄を被覆した後、加熱処理し
たものとCVDダイヤ膜のみのもの)を、実施例1(図
1(A)、(B)参照)と同様に、加工装置に組込ん
で、ダイヤモンド膜厚:1μmの球面形状に加工する。
そして、2種類のサンプルの加工時間の比較を行った。
本実験の加工時間は、酸化鉄を被覆した熱処理サンプル
で、約7時間、被覆なしのダイヤモンド膜サンプルで、
2倍の約14時間であった。
【0044】また、加工後のダイヤモンド膜の表面粗さ
は、酸化鉄を被覆した熱処理サンプル、被覆なしサンプ
ルの何れもRMAX ≒20nm以下であり、面形状は、何
れもN=±0.5本以下であった。
【0045】ここで、表面粗さRMAX ≒20nm以下の
型で成形された光学素子は、表面の曇り欠陥や成形時の
融着欠陥も無く、実用に耐えるので、光学素子成形用型
の表面粗さとして十分である。 (4)平坦化加工例:3(酸化銅50nmの場合) (サンプルの準備)本実施例は、酸化銅の被覆膜厚を5
0nmにした例である。CVDダイヤサンプルは、前記
実施例と同様で、型母材形状は、曲率半径R=80mm
の凹面、口径20mmで、材質は超硬合金である。そし
て、球面部分に、マイクロ波プラズマCVD法により、
4μmのダイヤモンド膜を被覆した。更に、このサンプ
ルを図12に示すスパッタリング装置に組み込み、CV
Dダイヤモンド膜上に酸化銅を成膜する。成膜方法は、
前記実施例と同様にして、今回は、膜厚:50nmの酸
化銅膜を成膜した。
【0046】(加熱処理)前記方法により得られた酸化
銅を被覆したCVDダイヤモンド膜サンプルを、前記実
施例同様にして、加工装置の回転台上に乗せ(図1
(B)の状態)センサー20を950℃にセットして、
チャンバー76内部の雰囲気を3×10-3Torr以下
にして約1時間保持して加熱処理を行った。
【0047】(球面形状加工、加工時間の比較)このサ
ンプルを、前記実施例と同様に、加工装置に組み込み、
ダイヤ膜厚:1μmの球面形状に加工した。加工条件
は、前記実施例と同様である。
【0048】本実験の加工時間は、約9時間であり、被
覆なしのダイヤモンド膜サンプルの約2/3の時間であ
った。
【0049】また、加工後のダイヤ膜の表面状態は、そ
の面形状がN=±0.5本以下であったが、酸化銅を被
覆した熱処理サンプルでは、加工工具の軌跡が、細かい
輪帯状のスジとして残留し、その影響で、表面粗さR
MAX ≒150nmであった。前記スジ状欠陥の発生原因
は、酸化銅膜が加工時にうまく除去されずに、残留した
ためと考えられる。
【0050】ここで、球面形状のダイヤモンド膜の平坦
化加工実験の結果を表6に示す。これらの実験より、球
面形状の平坦化には、酸化鉄膜が好ましいと思われる。
【0051】
【表6】 以上説明したように、CVDダイヤ膜の熱化学反応を利
用した表面研磨の加工の際に、CVDダイヤモンド膜表
面に酸化金属薄膜を形成し、加熱処理後に金属工具によ
る加工をすることで、加工精度を損なうことなく、加工
能率を改善することが可能になった。 (実施例4)ここでは、ダイヤモンド膜と加工用金属製
工具の接触部分を、他の部分より高温にして、前記工具
とダイヤモンド膜とを接触させ、摺動させることによ
り、ダイヤモンドの諸性質を損なうことなく、高精度
に、また、効率的に平滑化が実現できる研磨方法の具体
例を示す。 (1)平坦化加工例:1(加工速度の温度依存性の確
認) 図5に示すような、平面が円盤形状のSiC基材11上
に、マイクロ波プラズマCVD法により、ダイヤモンド
膜12を、膜厚:7μmで形成し、そのサンプルを加工
装置の回転台上に乗せ、回転可能な球形状の純鉄製工具
を、接触荷重:0.98Nで、ダイヤモンド膜に接触さ
せて、20mm/秒の速さで摺動させた(図1(A)の
状態)。
【0052】この時のダイヤモンド膜の被覆サンプルの
中心部の温度を、それぞれ、850℃、900℃、95
0℃、1000℃、1050℃の4種類にして(温度セ
ンサー20により制御)、共に、加工系全体を真空(3
×10-3Torr以下)に制御して、加工実験をした。
また、この温度は、ダイヤモンド膜と金属製加工工具の
接触部分の温度とほぼ等しく、両者の温度差は2℃以内
であることが、別の測定より確認されている。そして、
実施例1(図2を参照)と同様にして、加工溝を作成し
た。この実験結果を表7に示す。
【0053】
【表7】 図13は、本実験の結果をグラフ化したものである。こ
れより、ダイヤモンドの加工速度は、温度と共に上昇す
ることがわかる。また、850℃から1050℃の範囲
では、加工後のダイヤモンド膜の表面粗さは、すべて2
0nm以下であった。 (2)平坦化加工例:2(温度差加工法) 次に、本発明を使った球面形状のCVDダイヤモンド膜
の平坦化加工例を述べる。ここでは、実施例1と同様
に、図7に示す温度(加熱、冷却)、作用時間(送り速
度、各軸の回転数)、加工位置の集中制御システムを用
いて、正確な制御を行った。これは、図8に示すよう
な、凹面の球面形状の光学素子成形用の型母材61上の
CVDダイヤモンド膜62の、純鉄工具と接触する部分
を、ほかの部分よりも高温にして加工する熱化学反応に
よる加工例である。
【0054】なお、サンプルの準備は、実施例1と同様
であり、その個数は6個である。また、球面形状加工に
ついては、前記6個のサンプルを図14(A)、(B)
に示すような加工装置に組み込んで、ダイヤ膜厚:1μ
mの球面形状に加工するが、上記加工装置は、基本的に
は実施例1(図1(A)、(B)参照)と同様である。
しかし、この実施例では、ワーク全体は、ワーク用ヒー
ター75により、任意の温度に制御される。また、加工
部分、つまり、純鉄工具とダイヤモンド膜の接触部分
は、スポットヒーター175により、任意の温度に制御
される。このスポットヒーター175は、図示しない移
動機構に接続されており、前記接触部分を常に加熱する
ように動く。その温度は、工具73内にセットされた温
度センサー22で検出され、この温度と前記接触部分の
温度は、温度差2℃以内であることが別の実験により確
認されている。なお、実施例1と同様に、前記集中制御
装置(図7参照)により、加工温度、圧力、各部分の作
用時間、摺動速度は、所望の値に制御できる。これらの
加工系全体は、チャンバー76の中にあり、酸素濃度
1.6ppm以下の真空および不活性ガス雰囲気に制御
される。なお、今回は、3×10-3Torrの真空雰囲
気で、加工工具に純鉄を用い、回転軸71および74を
回転させ、加工部分の摺動速度が20mm/秒になるよ
うに制御した。また、加工ポイントを接触荷重:0.9
8Nに保った状態で、型母材の中心から周辺に向かっ
て、各部分での作用時間が一定になるような速度で移動
した。そして、ワーク全体と前記接触部分とに温度差を
つけて加工をした。表8に加工条件と加工結果およびガ
ラス成形結果を記す。
【0055】
【表8】 表8において、No.1〜3は、純鉄工具と、ダイヤモ
ンド膜の接触部分と、その他の部分とに温度差をつけた
加工であり、No.4〜6は、温度差をつけない加工例
である。ここでは、総加工時間が温度上昇にしたがっ
て、短くなっている(No.1〜3、No.4〜6)。
【0056】温度差をつけた加工では、No.1、2が
良好な結果を得ており、均一温度加工のNo.4に比べ
て、総加工時間が1/3以下の4.1時間に短縮され
た。また、No.3では、更に短縮され、総加工時間が
3.5時間になったが、その型で、ガラス成形を行った
ところ、成形したガラスに曇り不良が発生した。その原
因は、前記工具とダイヤモンド膜の接触部分の温度が1
050℃と、非常に高いために、加工雰囲気中に残留す
る約1ppmの酸素により、ダイヤモンド膜表面がグラ
ファイト化されたためと考えられる。 (3)平坦化加工例:3(均一温度加工法) 前記実施例と同様に、ただし、スポットヒーター175
は使用せずに、全体加熱による加工を行った。ここでの
温度制御は、ワーク用ヒーター75とワーク内の温度セ
ンサー20によって行われる。このセンサー20の温度
と純鉄工具とダイヤモンド膜の接触部分の温度差は、平
坦化加工例:1と同様に、2℃以内である。表8に加工
条件と加工結果およびガラス成形結果を記す。
【0057】一方、均一温度で加工した場合、No.6
の1050℃の加工では、加工の直後に、また、No.
5の950℃の加工では、ガラス成形の連続10ショッ
ト後に、それぞれ、ダイヤモンド膜が型母材から剥離し
た。これは、加工中にダイヤモンド膜と型母材界面が高
温になって、型母材中のコバルト、その他の物質が界面
に析出して、ダイヤモンド膜と型母材との密着力を低下
させたためと考えられる。なお、No.6では、高温の
ため、前記ダイヤモンド膜がすぐに剥離したが、No.
5では、No.6よりも前記密着力が多少強く、ガラス
成形時の機械的圧力により剥離したと思われる。
【0058】これらの実験から、加工時のワーク(全
体)の温度を900℃に、工具とダイヤモンド膜の接触
部分の温度を1000℃に、相互に温度差を設けて加工
することにより、均一加熱では得られない加工速度(総
加工時間4.1時間)を得ることが可能になった。ま
た、ここで得られたサンプルの形状精度は、N=±0.
5本以下であった。
【0059】以上説明したように、CVDダイヤモンド
膜の熱化学反応を利用した表面研磨加工の際に、工具と
CVDダイヤモンド膜の接触部分を、その他の部分より
も高温にすることにより、ガラス成形に支障を来さない
ダイヤモンド成形型が効率よく加工できるようになっ
た。 (実施例5)ここでは、工具変形を改善して、ダイヤモ
ンド膜の更なる高精度を図るために、金属で被覆された
細孔を有する加工工具とダイヤモンド膜とを接触させ、
摺動させる研磨方法の具体例を示す。これにより工具変
形が軽減され、ダイヤモンド膜が、より高精度に加工さ
れる。 (1)平坦化加工例:1(平面形状サンプル) (サンプルの準備)図5に示すような、平面が円盤形状
のSiC基材11上に、マイクロ波プラズマCVD法に
より、ダイヤモンド膜12を、膜厚:7μmで、形成
し、このサンプルを加工装置の回転台上に乗せ、回転可
能な、直径5mmの球形状の純鉄製工具を、接触荷重:
0.98Nで、ダイヤモンド膜に接触させて、20mm
/秒の速さで摺動させた(図1(A)の状態)。この時
の工具とダイヤモンド膜の接触部分の温度を850℃に
設定し、また、加工系全体を真空(3×10-3Torr
以下)に制御した。
【0060】そして、図2に示すように、ダイヤモンド
膜のサンプルに、その回転中心から10mm離れたポイ
ントで、純鉄製工具を、その回転中心がダイヤモンド膜
のサンプルの回転の接線上で、かつ、加工面に対して高
さ方向に30°の角度で、進退可能に接触させ、偏摩耗
防止のため、3rpmで回転させた。この状態で、加工
時間を20分間、13分間、7分間の3通りにして、表
面粗さの異なる輪帯状加工溝を持つサンプルを3種類作
った。これらのサンプルの表面状態、特に、ダイヤモン
ドの先端部の形状に着目して観察した。この結果を、表
9および図15に示す。
【0061】
【表9】 (サンプルの加工)直径:5mmの球形状のSiCの表
面に、口径:1μmと5μmの細孔を作る。それらの表
面に純度99.9%のFeをコーティングして、更に、
細孔部以外のFeを除去して、2種類の工具を用意する
(図16参照)。
【0062】それら2種類の工具(表10で、工具細孔
径:5μm、1μmで表示)と、表9のサンプルNo.
、を、表10の組み合わせで加工した。
【0063】
【表10】 前記実験のNo.1、2で、その表面粗さがNo.3、
4のそれに比べて粗いのは、図17に示すように、加工
工具とダイヤモンド膜の接触部において、ダイヤモンド
の先端平坦部分が、Feで充填されている工具の細孔部
分の開口部よりも小さく、加工がすすむに従い、Feと
SiCとの硬度の違いにより、両者の変形量に差を生じ
て、工具の表面粗さが増加するためと考えられる。ま
た、ダイヤモンドの先端平坦部と前記開口部との大きさ
の差が、より大きく且つ加工時間の長い加工条件のN
o.2が、No.1よりも粗くなっている。
【0064】一方、No.3、4での表面粗さが、N
o.1、2のそれに比べて少ないのは、前記接触部にお
いて、工具細孔の開口部が、ダイヤモンド膜の先端平坦
部と同等もしくは小さいために(図18参照)、Feが
充填されている細孔では、拡大図に示すように平坦にな
るが、No.1、2(図17参照)のように、へこむこ
とがないためと考えられる。また、No.3の表面粗さ
が最も小さいのは、工具の開口部が、サンプルの平坦
部よりも、全ての部分で小さいためと考えられる。 (2)平坦化加工例:2(球面形状サンプル) 次に、本発明を使った球面形状のCVDダイヤモンド膜
の平坦化加工例を述べる。以下に述べる実施例では、図
7に示す温度(加熱、冷却)、作用時間(送り速度、各
軸の回転数)、加工位置の集中制御システムを用いて、
正確な制御を行った。
【0065】(サンプルの準備)型母材形状は、曲率半
径R=80mmの凹面、口径:20mmで、材質は超硬
合金である。そして、球面部分に、マイクロ波プラズマ
CVD法により、ダイヤモンド膜を被覆した。膜厚は、
成膜の効率と膜の内部応力増加による超硬合金型母材と
の密着力の低下などを考慮して、50μm以下が良いと
考えられるが、更に好ましい値として、10μm以下の
膜厚、即ち、4μmを選択し、このようなサンプルを5
個、製作した。
【0066】一方、加工用工具は、直径:5mmの球形
状で、純鉄製を1本、SiCの表面に口径:5μmの細
孔を有するもの、および、口径:1μmの細孔を有する
もので、それぞれ、細孔内部およびその表面にFeを4
μmと5μmの厚さで被覆したものを準備した(図19
参照)。
【0067】(球面形状加工)これらのサンプルを、表
11に示す組み合わせで、それぞれの時間加工して、ダ
イヤモンド膜の膜厚が約1μmの球面形状を得た。この
球面形状加工は、上記サンプルを実施例1と同様、図1
(A)、(B)に示すような加工装置に組込んで行われ
る。ここでは、ダイヤモンド膜は、膜厚:1μmに加工
するが、その時の加工時間は表11に示す通りである。
【0068】表11に示した加工結果において、工具摩
耗量とは、Feコート膜厚を除いたSiC母材の直径方
向の減少量を表している(図20参照)。なお、No.
1は、純鉄工具による比較実験であり、当然、工具摩耗
量は、純鉄工具自体の減少量になる。
【0069】
【表11】 (表面粗さ、形状精度の比較)加工結果については以下
に説明する。No.1の比較例では14時間で純鉄工具
が5μm消耗して、RMAX ≦20nm、N=±0.5の
表面を得た。No.2において、表面粗さが悪いのは、
膜厚:4μmのFe膜が消耗しきった時点ではダイヤモ
ンド膜の凹凸が残っており、前記平面平坦化の実施例の
No.1と同様に、工具表面粗さが増したためと考えら
れる。
【0070】一方、No.3でも、膜厚:4μmのFe
膜が消耗しきった時点ではダイヤモンド膜の凹凸が残っ
ているが、前記平面平坦化の実施例のNo.3と同様
に、工具細孔径が小さいために、工具表面粗さが増加し
ないので、RMAX ≦20nmになったと考えられる。
【0071】No.4、5では、No.1と比較すると
解るように、膜厚:5μmのFe膜が消耗しきった時点
(14時間後)では、すでにダイヤモンド膜の凹凸が除
去されて、RMAX ≦20nmになっており、それ以後の
加工は、形状精度の向上に寄与するものと考えられる。
【0072】次に、本実施例における発明の主要目的で
ある形状精度について以下に述べることにする。比較例
No.1よりも、本発明の加工例であるNo.2〜5の
形状精度が勝っているのは、工具の摩耗量、つまり、変
形量が少なく、要求通りにダイヤモンド膜を除去できる
ためと考えられる。
【0073】更に詳しく見ると、SiCより消耗しやす
いFeが充填されている細孔径が大きいNo.2、4
(5μm)では、それが小さいNo.3、5(1μm)
よりも工具摩耗量が大きくなり、形状精度も悪くなる。
また、細孔径が共に1μmで、Feコート厚の違うN
o.3とNo.5を比較すると、Fe膜が消耗した時点
のダイヤモンド膜の粗さが少ないNo.5が、本実施例
中で、工具摩耗が最も少なく、最も良い形状精度が得ら
れたものと考えられる。
【0074】以上説明したように、CVDダイヤ膜の熱
化学反応利用の表面研磨加工の際に金属が充填された細
孔を有する加工工具を用いることにより、加工精度を向
上させることが可能になった。
【0075】
【発明の効果】本発明は、以上詳述したようになり、以
下の作用効果を得ることができる。
【0076】(1)CVDダイヤモンド膜の熱化学反応
利用の表面研磨加工の際に、CVDダイヤモンド膜の表
面を、予め、酸化処理した後に金属工具による加工をす
ることで、加工精度を損なうことなく、加工能率を改善
することが可能になった。
【0077】(2)CVDダイヤモンド膜の熱化学反応
利用の表面研磨加工の際に、加工雰囲気中の酸素濃度を
変化させながら、金属工具による加工をすることで、加
工精度を損なうことなく、加工能率を改善することが可
能になった。
【0078】(3)CVDダイヤモンド膜の熱化学反応
利用の表面研磨加工の際に、CVDダイヤモンド膜の表
面に酸化金属薄膜を形成し、加熱処理した後に、金属工
具による加工をすることで、加工精度を損なうことな
く、加工能率を改善することが可能になった。
【0079】(4)CVDダイヤモンド膜の熱化学反応
利用の表面研磨加工の際に、工具とCVDダイヤモンド
膜の接触部分を、その他の部分よりも高温にすることに
よりガラス成形に支障を来さないダイヤモンド成形型が
効率よく加工できるようになった。
【0080】(5)CVDダイヤモンド膜の熱化学反応
利用の表面研磨加工の際に、金属が充填された細孔を有
する加工工具を用いることにより、加工精度を向上させ
ることが可能になった。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係るダイヤモンド膜の平坦化加工装置
の一実施例を示す図である。
【図2】本発明の加工実験における工具とダイヤモンド
膜の位置関係を示す平面および側面の模式図である。
【図3】実施例1について、型表面をラマン散乱分光分
析法により分析した結果を示すグラフである。
【図4】酸化処理装置の概略側面図である。
【図5】型表面にマイクロ波プラズマCVD法によりダ
イヤモンド膜を形成した状態を示す模式図である。
【図6】サンプルの一例を示す模式図である。
【図7】集中制御システムのブロック図である。
【図8】別のサンプルの一例を示す模式図である。
【図9】更に別のサンプルの一例を示す模式図である。
【図10】本発明に係るダイヤモンド膜平坦化加工装置
の他の実施例を示す図である。
【図11】実施例2について、型表面をラマン散乱分光
分析法により分析した結果を示すグラフである。
【図12】実施例3について、スパッタリング装置の概
略側面図である。
【図13】実施例4について、実験結果を示すグラフで
ある。
【図14】本発明に係るダイヤモンド膜の平坦化加工装
置の別の実施例を示す図である。
【図15】実施例5について、サンプルのダイヤモンド
膜の模式図である。
【図16】実施例5についての2種類の工具の構成を示
す概念図である。
【図17】工具表面粗さが増加する過程を説明するため
の模式図である。
【図18】同じく、加工工程の模式図である。
【図19】実施例5における工具の模式図である。
【図20】同じく、工具の減少量を示す模式図である。
【符号の説明】
71 ワーク回転軸 72、72′ 被加工サンプル 73 加工用工具 74 工具回転軸 75 加熱用ヒーター 76 チャンバー 77 温度調節用ガス導入バルブ 78 雰囲気調製ガス導入口 111、611 基材 112、612 CVDダイヤモンド膜 113、613 酸化処理層 21、24 回転機構 23 移動機構

Claims (12)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 高温での金属との化学反応によりダイヤ
    モンド膜の平滑化を行うダイヤモンド膜の研磨方法にお
    いて、ダイヤモンド表面を、予め、酸化処理した後に、
    金属工具と前記酸化処理したダイヤモンドとを接触さ
    せ、摺動させることを特徴とするダイヤモンド膜の研磨
    方法。
  2. 【請求項2】 前記金属工具と酸化処理したダイヤモン
    ドとの接触部分の面積が、ダイヤモンドの総加工面積よ
    りも小さくなるように接触させ、摺動させることを特徴
    とする請求項1に記載のダイヤモンド膜の研磨方法。
  3. 【請求項3】 高温での金属との化学反応によりダイヤ
    モンド膜の平滑化を行うダイヤモンド膜の研磨方法にお
    いて、加工雰囲気を時間と共に変化させながら、金属工
    具とダイヤモンドとを接触させ、摺動させることを特徴
    とするダイヤモンド膜の研磨方法。
  4. 【請求項4】 前記加工雰囲気が酸素を含む雰囲気であ
    ることを特徴とする請求項3に記載のダイヤモンド膜の
    研磨方法。
  5. 【請求項5】 前記金属工具とダイヤモンドとの接触部
    分の面積が、ダイヤモンドの総加工面積よりも小さくな
    るように接触させ、摺動させることを特徴とする請求項
    3、4に記載のダイヤモンド膜の研磨方法。
  6. 【請求項6】 高温での金属との化学反応によりダイヤ
    モンド膜の平滑化を行うダイヤモンド膜の研磨方法にお
    いて、ダイヤモンド表面に、予め、金属酸化物薄膜を形
    成した後に、金属工具と前記金属酸化物薄膜を形成した
    ダイヤモンドとを接触させ、摺動させることを特徴とす
    るダイヤモンド膜の研磨方法。
  7. 【請求項7】 高温での金属との化学反応によりダイヤ
    モンド膜の平滑化を行うダイヤモンド膜の研磨方法にお
    いて、ダイヤモンド表面に、予め、金属酸化物薄膜を形
    成し、加熱処理した後に、金属工具と前記金属酸化物薄
    膜を形成したダイヤモンドとを接触させ、摺動させるこ
    とを特徴とするダイヤモンド膜の研磨方法。
  8. 【請求項8】 前記金属工具と前記金属酸化物薄膜を形
    成したダイヤモンドとの接触部分の面積が、ダイヤモン
    ドの総加工面積よりも小さくなるように接触させ、摺動
    させることを特徴とする請求項6または7に記載のダイ
    ヤモンド膜の研磨方法。
  9. 【請求項9】 高温での金属との化学反応によりダイヤ
    モンド膜の平滑化を行うダイヤモンド膜の研磨方法にお
    いて、ダイヤモンド上の金属工具接触部分と前記ダイヤ
    モンド上の前記工具非接触部分との間に温度差を設けな
    がら、前記金属工具と前記ダイヤモンドとを接触させ、
    摺動させることを特徴とするダイヤモンド膜の研磨方
    法。
  10. 【請求項10】 前記金属工具とダイヤモンドとの接触
    部分の面積が、ダイヤモンドの総加工面積よりも小さく
    なるように接触させ、摺動させることを特徴とする請求
    項9に記載のダイヤモンド膜の研磨方法。
  11. 【請求項11】 高温での金属との化学反応によりダイ
    ヤモンド膜の平滑化を行うダイヤモンド膜の研磨方法に
    おいて、細孔を有する、表面に金属を被覆した加工工具
    とダイヤモンドとを接触させ、摺動させることを特徴と
    するダイヤモンド膜の研磨方法。
  12. 【請求項12】 前記加工工具とダイヤモンドとの接触
    部分の面積が、ダイヤモンドの総加工面積よりも小さく
    なるように接触させ、摺動させることを特徴とする請求
    項11に記載のダイヤモンド膜の研磨方法。
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JP2008087132A (ja) * 2006-10-04 2008-04-17 Mitsubishi Electric Building Techno Service Co Ltd エレベータのロープ溝加工装置及びその加工方法
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