JPH0929529A - 複合工具 - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 【目的】 転削工具による粗加工と仕上げ加工を一工程
で行え、しかも、粗加工用刃具と仕上げ用刃具を適正条
件で使用できるようにすることである。 【構成】 先端外周に切刃チップ１ｂを装着した正面フ
ライス１を工作機械の主軸に装着する工具ホルダ３に取
付ける。また、工具ホルダ３内にはエアータービン４を
有するスピンドル４ａを同心的に組込み、このスピンド
ルの先端に研削ホイール２を取付ける。そして、導管ホ
ルダ５を含めて構成されるロータリジョイント経由で外
部から回転する工具ホルダ３内にエアーを吹込み、その
空気流でエアータービン４を回転させる。かかる構成に
した複合工具は、正面フライス１と研削ホイール２をそ
れぞれに適正速度で回転させ、正面フライス１で粗加工
した面を研削ホイール２で再加工して仕上げることがで
きる。

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【発明が属する技術分野】この発明は、転削工具による
粗加工と仕上げ加工を一工程で段取り良く行えるように
した複合工具に関するものである。

【０００２】

【従来の技術】機械加工で高精度の平面を得ようとする
場合、一般的にはフライス盤を用いて被削材の表面に生
じている硬化層と凹凸を先ず削り取り、次に、平面研削
盤等で仕上げ加工を行って要求面粗さを確保する方法が
採られる。ところが、この方法では加工が２工程になる
のに加えて段取り替えの手間と時間を必要とし、加工能
率が高まらない。

【０００３】そこで、特開平１−２０５９０８号公報に
示されるように、粗加工用の転削工具に砥石を取付け、
転削工具の固有の切刃が切削した面を砥石で研磨して加
工面の面粗度を高めるものが提案されている。

【０００４】

【発明が解決しようとする課題】上記公報に開示の工具
は、砥石が転削工具の本体に取付けられており、転削工
具の切刃と一体となって回転するため、砥石、切刃の各
々を最適切削条件で使用することができず、どちらかの
刃具が犠牲になってその欠損や早期摩耗が生じ、或いは
加工面の仕上げ精度が悪くなったりすると云う致命的な
欠点をもつ。

【０００５】この発明は、加工能率の向上及び低コスト
での高精度加工を実現するため、粗加工と仕上げ加工を
一工程で行え、しかもそれぞれに最適条件で行えるよう
にすることを課題としている。

【０００６】

【課題を解決するための手段】上記の課題を解決するた
め、この発明においては、粗加工用の刃具を有する第１
転削工具と、仕上げ用の刃具を有する第２転削工具を同
心配置にして相対回転可能に組合わせると共に、工作機
械の主軸の回転を一方の転削工具にダイレクトに伝える
回転伝達部材と他方の転削工具を独立して回転させる駆
動手段を設け、さらに、第２転削工具の刃具を工具の送
りによる変位で第１転削工具の刃具による加工面を再加
工する位置に設ける。

【０００７】また、もうひとつの手段として第１、第２
転削工具のどちらか一方は工作機械の主軸の回転をダイ
レクトに伝えて回転させ、他方の転削工具は一方の転削
工具との間に設ける動力伝達機構で前記主軸の回転を変
速して伝えて回転させる構成を採用する。そして、より
好ましくは、第１転削工具と第２転削工具の刃具の材質
も異ならせる。

【０００８】この発明で云う回転伝達部材とは、後述す
る工具ホルダや工具自身のシャンクを指す。

【０００９】なお、この発明は、全体を横送りしながら
加工を行う工具、縦送りしながら加工を行う工具のどち
らにも適用できるが、粗加工を先行させることが必須で
あるので、仕上げ用工具と粗加工用工具のどちらを内側
に配置するかは少なくとも刃具の配置を考慮して決定す
る必要がある。

【００１０】

【作用】この発明の複合工具は、送りをかけて被削材に
切り込ませると第１転削工具の刃具が被削材の表層部を
粗加工し、その後、第２転削工具の刃具が粗加工された
面を再加工していくので一連の作業が一工程で完了す
る。

【００１１】また、第１、第２転削工具を異なる駆動手
段によって回転させるので、両工具を共に適正速度で回
転させて最適条件で加工を行える。

【００１２】工作機械の主軸の回転を一方の工具にダイ
レクトに伝え、他方の工具には動力伝達機構で変速して
伝えるものも、第１、第２転削工具の回転数をそれぞれ
の加工条件に合ったものにすることができる。

【００１３】なお、複合工具のコンパクト化や切粉処理
の面からは、図示の形態の工具が特に好ましい。

【００１４】また、粗加工用刃具にはコスト面で有利な
超硬合金を、仕上げ用刃具には切味が良くて耐摩耗性、
耐溶着性に優れるＣＢＮ等を選択すると云う具合に刃具
材質を使い分けることも、コスト削減と加工精度向上の
効果を高めるのに有効である。

【００１５】

【実施の形態】図１（ａ）、（ｂ）に、この発明を正面
フライスに適用した例を示す。

【００１６】図１（ａ）の１は、本体１ａの先端外周に
切刃チップ１ｂを装着した粗加工用正面フライス、２は
先端外周にＣＢＮ研削刃２ａを設けた仕上げ用研削ホイ
ール、３は工作機械の主軸（図示せず）に装着する工具
ホルダ、４は研削ホイールを駆動するエアータービン、
５は工具ホルダ３の外周に軸受６を介して取付けたエア
ー供給用の導管ホルダである。

【００１７】正面フライス１は、工具ホルダ３にボルト
止めするアダプタ７を設けてこのアダプタ７にボルト８
で固定し、工作機械の主軸によって回転させるようにし
てある。

【００１８】一方、研削ホイール２は、工具ホルダ３の
内部にスピンドル４ａを同心にして配置し、正面フライ
ス１の中心前方に突出させたそのスピンドル４ａの先端
部にナット９、ホイール両面に締付け圧を作用させる皿
バネ１０及び３個の座金１１を用いて着脱自在に取付
け、エアータービン４で回転させるようにしてある。ス
ピンドル４ａは、アダプタ７にハウジング１２をボルト
止めし、そのハウジング内に組込んだアンギュラ球軸受
付き針状コロ軸受１３及び深溝玉軸受１４で支持してお
り、そのスピンドル４ａの後端にエアータービン４が回
り止めキーを介して固定されている。

【００１９】導管ホルダ５には、エアー供給口に接続す
る導管５ａとこの導管からのエアーを内側に導くエアー
通路５ｂを設けてあり、導管５ａをエアー供給口に差込
むことによって回り止めされるこの導管ホルダ５と、エ
アー通路５ｂの内端に通じる工具ホルダ外周の環状溝３
ａと、その溝からホルダ内に至るエアーノズル３ｂと、
環状溝３ａの両側を封止するシール１５とでロータリジ
ョイントを構成して回転する工具ホルダ３の内部に外部
からエアーを送り込むようしてある。

【００２０】エアータービン４は、図１（ｂ）に示すよ
うに、エアーノズル３ｂから吹き込まれる空気をタービ
ンブレード４ｂに斜めに吹き付けてその空気流で回転さ
せるようにしてある。

【００２１】このように、研削ホイール２の駆動手段が
エアータービンであると、エアーの吹込み圧、吹込み量
の制御で研削ホイール２の回転数を自由に変更でき、工
具全体のコンパクト化も図れる。

【００２２】なお、ここでは、用済みのエアーをハウジ
ング１２に周方向に定間隔で複数設けた逃げ口１６から
工具先端側に吹き出させるようにしており、この排出エ
アーによる切粉の吹き飛ばしも行える。

【００２３】以上の如く構成した図１の複合工具は、正
面フライス１を低速で、研削ホイール２を高速で各々回
転させて被削材に切刃チップ１ｂを切込ませ、全体を横
送りしていく。正面フライスによる切削では、切込みと
送りを大きくすると正面刃で切削した面に正面刃軌跡の
ずれによる微細な条がアヤメ模様に切り残されるが、図
示の複合工具を用いると切刃チップ１ｂによる切削面を
研削ホイール２が再加工し、切り残された条を削り取っ
ていくため、一度の作業で精度の良い加工面が得られ
る。

【００２４】なお、タービン４は、エアーの代わりに液
体（例えば油）で回転させてもよい。また、このタービ
ン４に代えて工具ホルダ３内に電動モータを組込み、そ
のモータに導管ホルダ５に代わる給電用ロータリジョイ
ント経由で電気を流して研削ホイール２を電動モータで
回転させる構造や、第１ホルダの外周に第２ホルダを軸
受を介して取付け、第１ホルダで研削ホイールを保持
し、第２ホルダで正面フライスを保持して第１ホルダを
工作機械の主軸で、第２ホルダをモータ等の別駆動源で
各々回転させる構造、更には、工作機械の主軸の回転を
一方の工具にダイレクトに伝え、他方の工具には歯車機
構等で変速して伝えて正面フライスと研削ホイールを同
一駆動源で回転させる構造でも同心配置にした工具の各
々を適正速度で回転させることができる。

【００２５】研削ホイール２も、仕上げを切削や研磨で
行うものに置き換えることができる。また、この発明の
複合工具の用途も正面フライス加工に限定されない。

【００２６】図２に、通し穴用ボーリング工具への適用
例を示す。図の１７は、本体１７ａの先端外周に切刃チ
ップ１７ｂを有する粗加工用カッタであり、このカッタ
１７のシャンクを工作機械の主軸に直接又は工具ホルダ
を介して取付ける。カッタ１７のヘッド部近くの外周に
は円筒状本体１８ａの外周に仕上げ用切刃１８ｂを付け
た仕上用カッタ１８を軸受１９で支えて回転可能に取付
けてあり、このカッタ１８の本体と一体のエアータービ
ン１８ｃにエアー孔２０に通じたノズル２１からエアー
を吹き当てて仕上げ用カッタ１８を粗加工用カッタ１７
よりも高速で回転させるようにしてある。孔２０へのエ
アー導入はシャンク後方から行うようにしているが、ロ
ータリジョイントを用いて本体１７ａの長手方向途中か
ら導入することも勿論可能である。

【００２７】この図２の複合工具も、２つのカッタ１
７、１８をそれぞれに適正速度で回転させ、カッタ１７
が粗加工した穴面をカッタ１８で仕上げていくことがで
きる。

【００２８】

【発明の効果】以上説明したように、この発明の複合工
具は、粗加工用の転削工具と工具の送りによって粗加工
後の面を再加工する仕上用転削工具を同心的に組合わ
せ、その２つの工具をそれぞれに独立して回転させる構
造にしたので、一工程での粗加工と仕上げが可能になる
だけでなく、２つの工具をそれぞれに適正速度で回転さ
せて刃具の寿命を延ばし、かつ、各刃具の特性を充分に
引き出すことができ、加工能率及び仕上げ面粗度の向上
と加工コストの低減が図れる。

【００２９】なお、この発明の複合工具は、生産性、コ
スト、品質を追求する所、例えば、カーメーカーや金型
メーカーなどにおいては、高精度加工をより低コストで
より短時間のうちに行うことの要求が強く、このような
所で利用するのに特に適している。

【図面の簡単な説明】

【図１】（ａ）：第１実施例の断面図 （ｂ）：同上のＡ−Ａ線部の断面図

【図２】第２実施例の部分破断側面図

【符号の説明】

１ 粗加工用正面フライス ２ 仕上げ用研削ホイール ３ 工具ホルダ ３ａ 環状溝 ３ｂ エアーノズル ４ エアータービン ４ａ スピンドル ５ 導管ホルダ ７ アダプタ ６、１３、１４ 軸受 ９ ナット １０ 皿バネ １１ 座金 １２ ハウジング １５ シール １６ エアー逃げ口 １７ 粗加工用カッタ １８ 仕上げ用カッタ １８ｃ エアータービン ２０ エアー孔 ２１ ノズル

Claims (4)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】 粗加工用の刃具を有する第１転削工具
   と、仕上げ用の刃具を有する第２転削工具を同心配置に
   して相対回転可能に組合わせると共に、工作機械の主軸
   の回転を一方の転削工具にダイレクトに伝える回転伝達
   部材と他方の転削工具を独立して回転させる駆動手段を
   設け、さらに、第２転削工具の刃具を工具の送りによる
   変位で第１転削工具の刃具による加工面を再加工する位
   置に設けて構成される複合工具。
2. 【請求項２】 前記回転伝達部材が工作機械の主軸に装
   着する工具ホルダであり、このホルダに第１転削工具を
   取付けて第１転削工具を前記工作機械の主軸で回転さ
   せ、第２転削工具は前記工具ホルダの外部からロータリ
   ジョイントを介して供給される流体又は電気で駆動する
   原動機を備え、独立回転用の駆動手段であるその原動機
   と共に前記工具ホルダの中心部に回転可能に組込んで第
   １転削工具とは異なる回転数で回転させる構成にした請
   求項１記載の複合工具。
3. 【請求項３】 粗加工用の刃具を有する第１転削工具
   と、仕上げ用の刃具を有する第２転削工具を同心配置に
   して相対回転可能に組み合わせると共に、第１、第２転
   削工具のどちらか一方は工作機械の主軸の回転をダイレ
   クトに伝えて回転させ、他方の転削工具は一方の転削工
   具との間に設ける動力伝達機構で前記主軸の回転を変速
   して伝えて回転させる構成にした複合工具。
4. 【請求項４】 第１、第２転削工具の刃具材質を異なら
   せてある請求項１、２又は３記載の複合工具。