JPH09290751A - 制動力制御装置 - Google Patents

制動力制御装置

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Publication number
JPH09290751A
JPH09290751A JP10818296A JP10818296A JPH09290751A JP H09290751 A JPH09290751 A JP H09290751A JP 10818296 A JP10818296 A JP 10818296A JP 10818296 A JP10818296 A JP 10818296A JP H09290751 A JPH09290751 A JP H09290751A
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JP
Japan
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pressure
brake
force
control
master cylinder
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Application number
JP10818296A
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English (en)
Inventor
Satoshi Shimizu
聡 清水
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Toyota Motor Corp
Original Assignee
Toyota Motor Corp
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Publication date
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Publication of JPH09290751A publication Critical patent/JPH09290751A/ja
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 本発明は所定の実行条件を満たす制動操作が
行われた場合に通常時に比して大きな制動力の発生を図
る制動力制御装置に関し、車両の運転者が、低速走行時
に不必要に違和感を感ずる頻度を抑制することを目的と
する。 【解決手段】 通常の制動操作に対してはブレーキ踏力
に応じた制動力を発生させる通常制御を実行する。所定
の実行条件を満たす制動操作に対しては通常制御時に比
して大きな制動力を発生させるブレーキアシスト制御を
実行する。車速VがV2 以下である場合は急ブレーキ条
件を実行条件とする(ステップ104,108)。車
速VがV2 に比して高い場合は急ブレーキ条件を実行
条件とする(ステップ104,106)。急ブレーキ条
件を急ブレーキ条件に比して急制動側に設定する。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、制動力制御装置に
係り、特に、所定の実行条件を満たす制動操作が行われ
た場合に通常時に比して大きな制動力の発生を図る制動
力制御装置に関する。
【0002】
【従来の技術】従来より、例えば特開平4−12126
0号に開示される如く、緊急ブレーキが要求される際に
は、通常時に比して大きな制動力を発生させる制動力制
御装置が知られている。上記従来の装置は、ブレーキ踏
力FP に対して所定の倍力比を有する押圧力を発生する
ブレーキブースタを備えている。ブレーキブースタの押
圧力はマスタシリンダに伝達される。マスタシリンダ
は、ブレーキブースタの押圧力に応じた、すなわち、ブ
レーキ踏力FP に応じたマスタシリンダ圧PM/C を発生
する。
【0003】また、上記従来の装置は、ポンプを液圧源
としてアシスト油圧を発生する液圧発生機構を備えてい
る。液圧発生機構は、制御回路から供給される駆動信号
に応じたアシスト油圧を発生する。制御回路は、ブレー
キペダルが所定速度を超える速度で操作された際に運転
者によって緊急制動操作が行われたと判断し、液圧発生
機構に対して最大のアシスト油圧を要求する駆動信号を
出力する。液圧発生機構において発生されたアシスト油
圧は、マスタシリンダ圧PM/C と共にチェンジバルブに
供給される。チェンジバルブは、液圧発生機構の発する
アシスト油圧とマスタシリンダ圧PM/C とのうち、何れ
か高圧の液圧をホイルシリンダに向けて供給する。
【0004】上記従来の装置によれば、ブレーキペダル
が所定の操作速度以下の速度で操作されている場合は、
ブレーキ踏力FP に応じた液圧に調圧されたマスタシリ
ンダ圧PM/C が、ホイルシリンダに供給される。以下、
かかる状態を形成するための制御を通常制御と称す。ま
た、ブレーキペダルが所定の操作速度を超える速度で操
作されると、ポンプを液圧源とする高圧のアシスト油圧
がホイルシリンダに供給される。以下、かかる状態を形
成するための制御をブレーキアシスト制御と称す。従っ
て、上記従来の装置によれば、通常時において制動力を
ブレーキ踏力F P に応じた大きさに制御し、かつ、緊急
制動操作が検出された後に、制動力を速やかに急増させ
ることができる。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】上記従来の装置によっ
てブレーキアシスト制御が開始されると、車両に作用す
る制動力は、その後速やかにフルブレーキング時に生ず
る制動力まで増加される。車両においてフルブレーキン
グがなされた場合に搭乗者が感ずる減速度は、車速が高
速であるほど小さく、車速が低速であるほど大きなもの
となる。このため、運転者は、高速走行時にブレーキア
シスト制御が行われる場合に比して、低速走行時にブレ
ーキアシスト制御が実行される場合において、より大き
な違和感を感じ易い。
【0006】従って、低速走行時に、高速走行時と同様
の条件によりブレーキアシスト制御が開始されるとすれ
ば、ブレーキアシストの機能を搭載したことにより、車
両の乗り心地が、特に低速走行時において損なわれ易く
なる。この点、ブレーキアシスト制御の実行可否の判断
が、車速に因らず常に同一の実行条件に基づいて行われ
る上記従来の装置は、低速走行時における車両の乗り心
地を不必要に悪化させ易いという問題を有するものであ
った。
【0007】本発明は、上述の点に鑑みてなされたもの
であり、ブレーキアシスト制御の実行条件を車速に応じ
て変更することにより、上記の課題を解決する制動力制
御装置を提供することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】上記の目的は、請求項1
に記載する如く、ブレーキ踏力に応じた制動力を発生さ
せる通常制御を実行すると共に、所定の実行条件を満た
す制動操作が行われた際に、通常制御時に比して大きな
制動力を発生させるブレーキアシスト制御を実行する制
動力制御装置において、前記所定の実行条件を車速に応
じて変更する実行条件変更手段を備える制動力制御装置
により達成される。
【0009】本発明において、所定の実行条件を満たす
制動操作が行われると通常制御の実行が停止され、ブレ
ーキアシスト制御の実行が開始される。実行条件変更手
段は、車速に応じてブレーキアシスト制御の実行条件を
変更する。このため、ブレーキアシスト制御の実行可否
は、制動操作と車速とに基づいて判断される。
【0010】上記の目的は、請求項2に記載する如く、
上記請求項1記載の制動力制御装置において、前記実行
条件変更手段が、車速が低速であるほど前記実行条件を
急制動側に変更する制動力制御装置によっても達成され
る。
【0011】本発明において、ブレーキアシスト制御の
実行条件は、車速が低速であるほど急制動側に変更され
る。従って、ブレーキアシスト制御は、車速が低速であ
るほど実行され難くなる。ブレーキアシスト制御の実行
に伴って生ずる体感減速度は、車速が低速であるほど大
きなものとなる。車速が低速である場合に、ブレーキア
シスト制御が実行され難い状況が形成されると、車両の
搭乗者が不必要に、大きな体感減速度を感ずるという不
都合が回避される。
【0012】上記の目的は、請求項3に記載する如く、
上記請求項1および2記載の制動力制御装置において、
車速が所定速度以下である場合に、前記ブレーキアシス
ト制御の実行を禁止するアシスト制御禁止手段を備える
制動力制御装置によっても達成される。
【0013】本発明において、車速が所定速度以下であ
る場合は、アシスト制御禁止手段によってブレーキアシ
スト制御の実行が禁止される。車速が所定速度以下であ
る場合にブレーキアシスト制御の実行が禁止されると、
かかる状況下で、車両の搭乗者が不必要に、大きな体感
減速度を感ずるという不都合が確実に回避される。
【0014】
【発明の実施の形態】図1は、本発明の一実施例のシス
テム構成図を示す。図1に示す制動圧力制御装置は、電
子制御ユニット10(以下、ECU10と称す)により
制御されている。制動圧力制御装置は、ポンプ12を備
えている。ポンプ12は、その動力源としてモータ14
を備えている。ポンプ12の吸入口12aはリザーバタ
ンク16に連通している。また、ポンプ12の吐出口1
2bには、逆止弁18を介してアキュムレータ20が連
通している。ポンプ12は、アキュムレータ20内に、
常に所定の液圧が蓄圧されるように、リザーバタンク1
6内のブレーキフルードを、その吐出口12bから圧送
する。
【0015】アキュムレータ20は、高圧通路22を介
してレギュレータ24の高圧ポート24a、およびレギ
ュレータ切り換えソレノイド26(以下、STR26と
称す)に連通している。レギュレータ24は、低圧通路
28を介してリザーバタンク16に連通する低圧ポート
24bと、制御液圧通路29を介してSTR26に連通
する制御液圧ポート24cを備えている。STR26
は、制御液圧通路29および高圧通路22の一方を選択
的に導通状態とする2位置の電磁弁であり、常態では、
制御液圧通路29を導通状態とし、かつ、高圧通路22
を遮断状態とする。
【0016】レギュレータ24には、ブレーキペダル3
0が連結されていると共に、マスタシリンダ32が固定
されている。レギュレータ24は、その内部に液圧室を
備えている。液圧室は、常に制御液圧ポート24cに連
通されていると共に、ブレーキペダル30の操作状態に
応じて、選択的に高圧ポート24aまたは低圧ポート2
4bに連通される。レギュレータ24は、液圧室の内圧
が、ブレーキペダル30に作用するブレーキ踏力FP
応じた液圧に調整されるように構成されている。このた
め、レギュレータ24の制御液圧ポート24cには、常
に、ブレーキ踏力FP に応じた液圧が現れる。以下、こ
の液圧をレギュレータ圧PREと称す。
【0017】ブレーキペダル30に作用するブレーキ踏
力FP は、レギュレータ24を介して機械的にマスタシ
リンダ32に伝達される。また、マスタシリンダ32に
は、レギュレータ24の液圧室の液圧に応じた、すなわ
ちレギュレータ圧PREに応じた力が伝達される。以下、
この力をブレーキアシスト力FA と称す。従って、ブレ
ーキペダル30が踏み込まれると、マスタシリンダ32
には、ブレーキ踏力F P とブレーキアシスト力FA との
合力が伝達される。
【0018】マスタシリンダ32は、その内部に第1液
圧室32aと第2液圧室32bとを備えている。第1液
圧室32aおよび第2液圧室32bには、ブレーキ踏力
Pとブレーキアシスト力FA との合力に応じたマスタ
シリンダ圧PM/C が発生する。第1液圧室32aに発生
するマスタシリンダ圧PM/C および第2液圧室32bに
発生するマスタシリンダ圧PM/C は、共にプロポーショ
ニングバルブ34(以下、Pバルブ34と称す)に連通
している。
【0019】Pバルブ34には、第1液圧通路36と第
2液圧通路38とが連通している。Pバルブ34は、マ
スタシリンダ圧PM/C が所定値に満たない領域では、第
1液圧通路36および第2液圧通路38に対して、マス
タシリンダ圧PM/C をそのまま供給する。また、Pバル
ブ34は、マスタシリンダ圧PM/C が所定値を超える領
域では、第1液圧通路36に対してマスタシリンダ圧P
M/C をそのまま供給すると共に、第2液圧通路に対して
マスタシリンダ圧PM/C を所定の比率で減圧した液圧を
供給する。
【0020】マスタシリンダ32の第2液圧室32bと
Pバルブ34との間には、マスタシリンダ圧PM/C に応
じた電気信号を出力する油圧センサ40が加設されてい
る。油圧センサ40の出力信号はECU10に供給され
ている。ECU10は、油圧センサ40の出力信号に基
づいて、マスタシリンダ32に生じているマスタシリン
ダ圧PM/C を検出する。
【0021】上述したSTR26には、第3液圧通路4
2が連通している。第3液圧通路42は、STR26の
状態に応じて、制御液圧通路29または高圧通路22の
一方と導通状態とされる。本実施例において、左右前輪
FL,FRに配設されるホイルシリンダ44FL,44
FRには、Pバルブ34に連通する第1液圧通路36、
または、STR26に連通する第3液圧通路42からブ
レーキ液圧が供給される。また、左右後輪RL,RRに
配設されるホイルシリンダ44RL,44RRには、P
バルブ34に連通する第2液圧通路38、または、ST
R26に連通する第3液圧通路42からブレーキ液圧が
供給される。
【0022】第1液圧通路36には、第1アシストソレ
ノイド46(以下、SA-146と称す)、および第2ア
シストソレノイド48(以下、SA-248と称す)が連
通している。一方、第3液圧通路42には、右前輪保持
ソレノイド50(以下、SFRH50と称す)、左前輪
保持ソレノイド52(以下、SFLH52と称す)、お
よび第3アシストソレノイド54(以下、SA-354と
称す)が連通している。
【0023】SFRH50は、常態では開弁状態を維持
する2位置の電磁開閉弁である。SFRH50は、調圧
用液圧通路56を介して、SA-146および右前輪減圧
ソレノイド58(以下、SFRR58と称す)に連通し
ている。第3液圧通路42と調圧用液圧通路56との間
には、調圧用液圧通路56側から第3通路42側へ向か
う流体の流れのみを許容する逆止弁60が並設されてい
る。
【0024】SA-146は、第1液圧通路36および調
圧用液圧通路56の一方を、選択的にホイルシリンダ4
4FRに導通させる2位置の電磁弁であり、常態(オフ
状態)では、第1液圧通路36とホイルシリンダ44F
Rとを導通状態とする。一方、SFRR58は、調圧用
液圧通路56とリザーバタンク16とを導通状態または
遮断状態とする2位置の電磁開閉弁である。SFRR5
8は、常態(オフ状態)では調圧用液圧通路56とリザ
ーバタンク16とを遮断状態とする。
【0025】SFLH52は、常態では開弁状態を維持
する2位置の電磁開閉弁である。SFLH52は、調圧
用液圧通路62を介して、SA-248および左前輪減圧
ソレノイド64(以下、SFLR64と称す)に連通し
ている。第3液圧通路42と調圧用液圧通路62との間
には、調圧用液圧通路62側から第3通路42側へ向か
う流体の流れのみを許容する逆止弁66が並設されてい
る。
【0026】SA-248は、第1液圧通路36および調
圧用液圧通路62の一方を、選択的にホイルシリンダ4
4FLに導通させる2位置の電磁弁であり、常態(オフ
状態)では、第1液圧通路36とホイルシリンダ44F
Lとを導通状態とする。一方、SFLR64は、調圧用
液圧通路62とリザーバタンク16とを導通状態または
遮断状態とする2位置の電磁開閉弁である。SFLR6
4は、常態(オフ状態)では調圧用液圧通路62とリザ
ーバタンク16とを遮断状態とする。
【0027】第2液圧通路38は、上述したSA-354
に連通している。SA-354の下流側には、右後輪RR
のホイルシリンダ44RRに対応して設けられた右後輪
保持ソレノイド68(以下、SRRH68と称す)、お
よび、左後輪RLのホイルシリンダ44RLに対応して
設けられた左後輪保持ソレノイド70(以下、SRLH
70)が連通している。SA-354は、第2液圧通路3
8および第3液圧通路42の一方を、選択的にSRRH
68およびSRLH70に連通させる2位置の電磁弁で
あり、常態(オフ状態)では、第2液圧通路38とSR
RH68およびSRLH70とを連通状態とする。
【0028】SRRH68の下流側には、調圧用液圧通
路72を介して、ホイルシリンダ44RR、および、右
後輪減圧ソレノイド74(以下、SRRR74と称す)
が連通している。SRRR74は、調圧用液圧通路72
とリザーバタンク16とを導通状態または遮断状態とす
る2位置の電磁開閉弁であり、常態(オフ状態)では調
圧用液圧通路72とリザーバタンク16とを遮断状態と
する。また、SA-354と調圧用液圧通路72との間に
は、調圧用液圧通路72側からSA-354側へ向かう流
体の流れのみを許容する逆止弁76が並設されている。
【0029】同様に、SRLH70の下流側には、調圧
用液圧通路78を介して、ホイルシリンダ44RL、お
よび、左後輪減圧ソレノイド80(以下、SRLR80
と称す)が連通している。SRLR80は、調圧用液圧
通路78とリザーバタンク16とを導通状態または遮断
状態とする2位置の電磁開閉弁であり、常態(オフ状
態)では調圧用液圧通路78とリザーバタンク16とを
遮断状態とする。また、SA-354と調圧用液圧通路7
8との間には、調圧用液圧通路78側からSA-354側
へ向かう流体の流れのみを許容する逆止弁82が並設さ
れている。
【0030】本実施例のシステムにおいて、ブレーキペ
ダル30の近傍には、ブレーキスイッチ84が配設され
ている。ブレーキスイッチ84は、ブレーキペダル30
が踏み込まれている場合にオン出力を発するスイッチで
ある。ブレーキスイッチ84の出力信号はECU10に
供給されている。ECU10は、ブレーキスイッチ84
の出力信号に基づいて、運転者によって制動操作がなさ
れているか否かを判別する。
【0031】また、本実施例のシステムにおいて、左右
前輪FL,FRおよび左右後輪RL,RRの近傍には、
それぞれ各車輪が所定回転角回転する毎にパルス信号を
発する車輪速センサ86FL,86FR,86RL,8
6RR(以下、これらを総称する場合は符号86**を付
して表す)が配設されている。車輪速センサ86**の出
力信号はECU10に供給されている。ECU10は、
車輪速センサ86**の出力信号に基づいて、各車輪F
L,FR,RL,RRの回転速度、すなわち、各車輪F
L,FR,RL,RRの車輪速度を検出する。
【0032】ECU10は、油圧センサ40、車輪速セ
ンサ86**、および、ブレーキスイッチ84の出力信号
に基づいて、上述したSTR26、SA-146、SA-2
48、SA-354、SFRH50、SFLH52、SF
RR58、SFLR64、SRRH68、SRLH7
0、SRRR74、および、SRLR80に対して適宜
駆動信号を供給する。
【0033】次に、本実施例の制動圧力制御装置の動作
を説明する。本実施例の制動圧力制御装置は、車両状態
が安定している場合は、ブレーキペダル30に作用する
ブレーキ踏力FP に応じた制動力を発生させる通常制御
を実行する。通常制御は、図1に示す如く、STR2
6、SA-146、SA-248、SA-354、SFRH5
0、SFLH52、SFRR58、SFLR64、SR
RH68、SRLH70、SRRR74、および、SR
LR80を全てオフ状態とすることで実現される。
【0034】すなわち、図1に示す状態においては、ホ
イルシリンダ44FRおよび44FLは第1液圧通路3
6に、また、ホイルシリンダ44RRおよび44RLは
第2液圧通路38にそれぞれ連通される。この場合、ブ
レーキフルードは、マスタシリンダ32とホイルシリン
ダ44FR,44FL,44RL,44RR(以下、こ
れらを総称する場合は符号44**を付して表す)との間
で授受されることとなり、各車輪FL,FR,RL,R
Rにおいて、ブレーキ踏力FP に応じた制動力が発生さ
れる。
【0035】本実施例において、何れかの車輪について
ロック状態へ移行する可能性が検出されると、アンチロ
ックブレーキ制御(以後、ABS制御と称す)の実行条
件が成立したと判別され、以後、ABS制御が開始され
る。ECU10は、車輪速センサ86**の出力信号に基
づいて各車輪の車輪速度VwFL,VwFR,VwRL,Vw
RR(以下、これらを総称する場合は符号Vw**を付して
表す)を演算し、それらの車輪速度Vw**に基づいて、
公知の手法により車体速度の推定値VS0(以下、推定車
体速度VSOと称す)を演算する。そして、車両が制動状
態にある場合に、次式に従って個々の車輪のスリップ率
Sを演算し、Sが所定値を超えている場合に、その車輪
がロック状態に移行する可能性があると判断する。
【0036】 S=(VSO−Vw**)・100/VS0 ・・・(1) ABS制御の実行条件が成立すると、ECU10は、S
-146、SA-248、およびSA-354に対して駆動
信号を出力する。その結果、SA-146がオン状態とな
ると、ホイルシリンダ44FRは、第1液圧通路36か
ら遮断されて調圧用液圧通路56に連通される。また、
SA-248がオン状態となると、ホイルシリンダ44F
Lは、第1液圧通路36から遮断されて調圧用液圧通路
62に連通される。更に、SA-354がオン状態となる
と、SRRH68およびSRLH70の上流側は、第2
液圧通路38から遮断されて第3液圧通路42に連通さ
れる。
【0037】この場合、全てのホイルシリンダ44
**が、それぞれの保持ソレノイドSFRH50,SFL
H52,SRRH68,SRLH70(以下、これらを
総称する場合は、保持ソレノイドS**Hと称す)、およ
び、それぞれの減圧ソレノイドSFRR58,SFLR
64,SRRR74,SRLR80(以下、これらを総
称する場合は、減圧ソレノイドS**Rと称す)に連通
し、かつ、全ての保持ソレノイドS**Hの上流に、第3
液圧通路42およびSTR26を介して、レギュレータ
圧PREが導かれる。
【0038】上記の状況下では、保持ソレノイドS**
が開弁状態とされ、かつ、減圧ソレノイドS**Rが閉弁
状態とされることにより、対応するホイルシリンダ44
**のホイルシリンダ圧PW/C が、レギュレータ圧PRE
上限値として増圧される。以下、この状態を増圧モー
ドと称す。また、保持ソレノイドS**Hが閉弁状態とさ
れ、かつ、減圧ソレノイドS**Rが閉弁状態とされるこ
とにより、対応するホイルシリンダ44**のホイルシリ
ンダ圧PW/C が増減されることなく保持される。以下、
この状態を保持モードと称す。更に、保持ソレノイド
**Hが閉弁状態とされ、かつ、減圧ソレノイドS**
が開弁状態とされることにより、対応するホイルシリン
ダ44**のホイルシリンダ圧PW/C が減圧される。以
下、この状態を減圧モードと称す。ECU10は、制
動時における各車輪のスリップ率Sが適当な値に収まる
ように、すなわち、各車輪がロック状態に移行しないよ
うに、適宜上述した増圧モード、保持モードおよび
減圧モードを実現する。
【0039】ABS制御の実行中に、運転者によってブ
レーキペダル30の踏み込みが解除された後は、速やか
にホイルシリンダ圧PW/C が減圧される必要がある。本
実施例のシステムにおいて、各ホイルシリンダ44**
対応する油圧経路中には、ホイルシリンダ44**側から
第3液圧通路42側へ向かう流体の流れを許容する逆止
弁60,66,76,82が配設されている。このた
め、本実施例のシステムによれば、ブレーキペダル30
の踏み込みが解除された後に、速やかに全てのホイルシ
リンダ44**のホイルシリンダ圧PW/C を減圧させるこ
とができる。
【0040】本実施例のシステムにおいてABS制御が
実行されている場合、ホイルシリンダ圧PW/C は、ホイ
ルシリンダ44**に対してレギュレータ24からブレー
キフルードが供給されることにより、すなわち、ホイル
シリンダ44**に対してポンプ12からブレーキフルー
ドが供給されることにより増圧されると共に、ホイルシ
リンダ44**内のブレーキフルードがリザーバタンク1
6に流出することにより減圧される。ホイルシリンダ圧
W/C の増圧が、マスタシリンダ32を液圧源として行
われるとすれば、増圧モードと減圧モードとが繰り返し
行われた場合に、マスタシリンダ32内のブレーキフル
ードが徐々に減少し、いわゆるマスタシリンダの床付き
が生ずる場合がある。
【0041】これに対して、本実施例のシステムの如
く、ポンプ12を液圧源としてホイルシリンダ圧PW/C
の昇圧を図ることとすれば、かかる床付きを防止するこ
とができる。このため、本実施例のシステムによれば、
長期間にわたってABS制御が続行される場合において
も、安定した作動状態を維持することができる。
【0042】ところで、本実施例のシステムにおいて、
ABS制御は、何れかの車輪について、ロック状態に移
行する可能性が検出された場合に開始される。従って、
ABS制御が開始させるためには、その前提として、何
れかの車輪に大きなスリップ率Sを発生させる程度の制
動操作がなされる必要がある。
【0043】図2は、種々の状況下でブレーキペダル3
0に加えられるブレーキ踏力FP の経時的変化を示す。
図2中におよびを付して表す曲線は、それぞれ技量
の高い運転者(以下、上級者と称す)、および、技量の
低い若しくは非力な運転者(以下、初級者と称す)が緊
急制動操作を行った場合に表れる踏力FP の変化を示
す。緊急制動操作は、車両を急減速させたい場合に行わ
れる操作である。従って、緊急制動操作に伴うブレーキ
踏力FP は、ABS制御が実行される程度に十分に大き
な力であることが望ましい。
【0044】曲線に示す如く、車両の運転者が上級者
である場合は、緊急ブレーキが必要とされる状況が生じ
た後、速やかにブレーキ踏力FP を急上昇させ、かつ、
大きなブレーキ踏力FP を長期間にわたって維持するこ
とができる。ブレーキペダル30に対してかかるブレー
キ踏力FP が作用すれば、マスタシリンダ32から各ホ
イルシリンダ44**に対して十分に高圧のブレーキ液圧
を供給することができ、ABS制御を開始させることが
できる。
【0045】しかしながら、曲線に示す如く、車両の
運転者が初級者である場合は、緊急ブレーキが必要とさ
れる状況が生じた後、ブレーキ踏力FP が十分に大きな
値にまで上昇されない場合がある。ブレーキペダル30
に作用するブレーキ踏力FPが、曲線に示す如く、緊
急ブレーキが必要となった後十分に上昇されない場合に
は、各ホイルシリンダ44**のホイルシリンダ圧PW/C
が十分に昇圧されず、ABS制御が開始されない可能性
がある。
【0046】このように、車両の運転者が初級者である
と、車両が優れた制動能力を有しているにも関わらず、
緊急制動操作時でさえ、その能力が十分に発揮されない
場合がある。そこで、本実施例のシステムには、ブレー
キペダル30が緊急ブレーキを意図して操作された際に
は、ブレーキ踏力FP が十分に上昇されなくともホイル
シリンダ圧PW/C を十分に上昇させるブレーキアシスト
機能が組み込まれている。以下、かかる機能を実現する
ためにECU10が実行する制御をブレーキアシスト制
御と称す。
【0047】本実施例のシステムにおいて、ブレーキア
シスト制御を実行するにあたっては、ブレーキペダル3
0が操作された際に、その操作が、緊急制動操作を意図
するものであるか、或いは通常の制動操作を意図するも
のであるかを精度良く判別する必要がある。
【0048】図2中におよびを付して表す曲線は、
種々の状況下で、運転者が通常の制動操作を意図してブ
レーキペダル30を操作した際に表れるブレーキ踏力F
P の変化を示す。曲線乃至に示す如く、通常の制動
操作に伴うブレーキ踏力FPの変化は、緊急制動操作に
伴うブレーキ踏力FP の変化に比して緩やかである。ま
た、通常の制動操作に伴うブレーキ踏力FP の収束値
は、緊急制動操作に伴うブレーキ踏力FP の収束値ほど
大きくない。
【0049】これらの相違に着目すると、制動操作が開
始された後、ブレーキ踏力FP が、所定値を超える変化
率で、かつ、十分に大きな値にまで上昇された場合は、
すなわち、ブレーキ踏力FP が図2中に(I)で示す領
域に到達するように、ブレーキペダル30が操作された
場合は、緊急制動操作がなされたと判断することができ
る。
【0050】また、制動操作が開始された後、ブレーキ
踏力FP の変化率が所定値に比して小さい場合、また
は、ブーキ踏力FP の収束値が所定値に比して小さい場
合は、すなわち、ブレーキ踏力FP が常に図2中に(I
I)で示す領域内で変化するように、ブレーキペダル3
0が操作された場合は、通常制動操作がなされたと判断
することができる。
【0051】従って、ブレーキペダル30が踏み込まれ
た後、何らかの手法でブレーキペダル30の操作速度お
よび操作量を検出または推定し、更に、その操作速度が
所定速度を超えており、かつ、その操作量が所定値を超
えているか否かを判断することで、ブレーキペダル30
の操作が緊急ブレーキを意図したものであるか否かを判
断することができる。
【0052】本実施例において、ブレーキペダル30の
操作速度および操作量は、油圧センサ40によって検出
されるマスタシリンダ圧PM/C をパラメータとして検出
される。マスタシリンダ圧PM/C は、ブレーキペダル3
0の操作量に応じた値を示し、かつ、ペダルの操作速度
に応じた変化率ΔPM/C で変化する。従って、本実施例
の装置によれば、運転者によって制動操作が行われた場
合に、その操作が緊急制動操作を意図したものである
か、或いは通常の制動操作を意図したものであるかを精
度良く判別することができる。
【0053】以下、ECU10によって緊急制動操作の
実行が判断された場合の、本実施例のシステムの動作に
ついて説明する。ECU10は、ブレーキペダル30が
踏み込まれた後、所定値を超えるマスタシリンダ圧P
M/C が検出され、かつ、所定値を超える変化率ΔPM/C
が検出された場合に、緊急制動操作がなされたと判断す
る。緊急制動操作が実行されたと判断すると、ECU1
0は、STR26、SA -146、SA-248およびSA
-354に対して駆動信号を出力する。
【0054】上記の駆動信号を受けてSTR26がオン
状態となると、第3液圧通路42と高圧通路22とが直
結状態となる。この場合、第3液圧通路42には、アキ
ュムレータ圧PACC が導かれる。また、上記の駆動信号
を受けてSA-146およびSA-248がオン状態となる
と、ホイルシリンダ44FRおよび44FLが、それぞ
れ調圧用液圧通路56および62に連通される。更に、
上記の駆動信号を受けてSA-354がオン状態となる
と、SRRH68およびSRLH70の上流側が第3液
圧通路42に連通される。この場合、全てのホイルシリ
ンダ44**が、それぞれの保持ソレノイドS**H、およ
び、それぞれの減圧ソレノイドS**Rに連通し、かつ、
全ての保持ソレノイドS**Hの上流に、アキュムレータ
圧PACC が導かれる状態が形成される。
【0055】ECU10において、緊急制動操作の実行
が検出された直後は、全ての保持ソレノイドS**H、お
よび、全ての減圧ソレノイドS**Rがオフ状態に維持さ
れる。従って、上記の如く、保持ソレノイドS**Hの上
流にアキュムレータ圧PACCが導かれると、その液圧は
そのままホイルシリンダ44**に供給される。その結
果、全てのホイルシリンダ44**のホイルシリンダ圧P
W/C は、アキュムレータ圧PACC に向けて昇圧される。
【0056】このように、本実施例のシステムによれ
ば、緊急制動操作が実行された場合に、ブレーキ踏力F
P の大きさとは無関係に、全てのホイルシリンダ44**
のホイルシリンダ圧PW/C を速やかに急昇圧させること
ができる。従って、本実施例のシステムによれば、運転
者が初級者であっても、緊急ブレーキが必要とされる状
況が生じた後に、速やかに大きな制動力を発生させるこ
とができる。
【0057】ホイルシリンダ44**に対して、上記の如
くアキュムレータ圧PACC が供給され始めると、その
後、各車輪FL,FR,RL,RRのスリップ率Sが急
激に増大され、やがてABS制御の実行条件が成立す
る。ABS制御の実行条件が成立すると、ECU10
は、全ての車輪のスリップ率Sが適当な値に収まるよう
に、すなわち、各車輪がロック状態に移行しないよう
に、適宜上述した増圧モード、保持モード、および
減圧モードを実現する。
【0058】尚、緊急制動操作に続いてABS制御が実
行される場合、ホイルシリンダ圧P W/C は、ポンプ12
およびアキュムレータ20からホイルシリンダ44**
ブレーキフルードが供給されることにより増圧されると
共に、ホイルシリンダ44**内のブレーキフルードがリ
ザーバタンク16に流出することにより減圧される。従
って、増圧モードと減圧モードとが繰り返し行われて
も、いわゆるマスタシリンダ32の床付きが生ずること
はない。
【0059】緊急制動操作が行われることにより、上記
の如くブレーキアシスト制御が開始された場合、ブレー
キペダル30の踏み込みが解除された時点で、ブレーキ
アシスト制御を終了させる必要がある。本実施例のシス
テムにおいて、ブレーキアシスト制御が実行されている
間は、上述の如くSTR26、SA-146、SA-2
8、およびSA-354がオン状態に維持される。STR
26、SA-146、SA -248、およびSA-354がオ
ン状態である場合、レギュレータ24内部の液圧室、お
よびマスタシリンダ32が備える第1および第2液圧室
32a,32bが、実質的には何れも閉空間となる。
【0060】かかる状況下では、マスタシリンダ圧P
M/C は、ブレーキ踏力FP に応じた値となる。従って、
ECU10は、油圧センサ40により検出されるマスタ
シリンダ圧PM/C の出力信号を監視することにより、容
易にブレーキペダル30の踏み込みが解除されたか否か
を判断することができる。ブレーキペダル30の踏み込
みの解除を検出すると、ECU10は、STR26、S
-146、SA-248、およびSA-354に対する駆動
信号の供給を停止して、通常制御の実行状態を実現す
る。
【0061】ところで、ブレーキアシスト制御が開始さ
れた後に車両の搭乗者が体感する減速度(以下、体感減
速度と称す)は、車速が低速であるほど大きなものとな
る。従って、車両の運転者は、高速走行時にブレーキア
シスト制御が開始される場合に比して、低速走行時にブ
レーキアシスト制御が開始される場合において、より大
きな違和感を感じ易い。そこで、本実施例の制動力制御
装置においては、車速が低速であるほど、ブレーキアシ
スト制御の実行条件を急制動側に、すなわち、成立し難
い側に変更することとしている。
【0062】以下、図3乃至図5を参照して、上記の機
能を実現すべくECU10が実行する処理の内容につい
て説明する。図3および図4は、上記の機能を実現すべ
くECU10が実行する制御ルーチンの一例のフローチ
ャートを示す。本ルーチンはブレーキペダル30が踏み
込まれることにより起動される。尚、ルーチン中で用い
られるフラグや一時記憶値は、ブレーキペダル30が踏
み込まれて本ルーチンが始めて実行される際に初期かさ
れる。本ルーチンが起動されると、先ずステップ100
の処理が実行される。
【0063】ステップ100では、ブレーキアシスト制
御の実行中であるか否かが判別される。本ルーチンは、
ブレーキアシスト制御の実行可否を判断すべく実行され
るルーチンである。従って、既にブレーキアシスト制御
が実行中であれば、本ルーチンを実行する実益はない。
このため、上記判別により、既にブレーキアシスト制御
が開始されていると判別された場合は、以後、何ら処理
が進められることなく今回のルーチンが終了される。一
方、上記判別により、ブレーキアシスト制御が実行中で
ないと判別された場合は、次にステップ101の処理が
実行される。
【0064】ステップ101では、マスタシリンダ圧P
M/C の変化率ΔPM/C の最大値 MAXΔPM/C が記憶され
る。具体的には、今回の処理により検出された変化率Δ
M/ C が、前回以前の処理時に最大値 MAXΔPM/C とし
て記憶された値に比して大きい場合は、今回の検出値が
新たに最大値 MAXΔPM/C として記憶され、一方、今回
検出された変化率ΔPM/C が、前回以前の処理で最大値
MAXΔPM/C として記憶された値に比して小さい場合
は、その最大値 MAXΔPM/C が、書き換えられることな
くそのまま記憶される。最大値 MAXΔPM/C を記憶する
処理が終了すると、次にステップ102の処理が実行さ
れる。
【0065】ステップ102では、車速Vが、所定車速
1 に比して大きいか否かが判別される。所定車速V1
は、その速度V1 より低速の領域でブレーキアシスト制
御が実行されると大きな体感減速度が発生し易く、か
つ、車速Vがその速度V1 より低速である場合には、ブ
レーキアシスト制御を実行するまでもなく、通常制御に
よって容易に車両を停止させ得る速度である。
【0066】本ルーチンでは、上記ステップ102にお
いてV>V1 が不成立であると判別される場合(以下、
この場合を車両が極低速走行中である場合と称す)は、
ブレーキアシスト制御の実行を禁止すべく、以後、何ら
処理が進められることなく今回のルーチンが終了され
る。このため、本実施例の制動力制御装置によれば、極
低速走行中にブレーキアシスト制御が実行されることに
より、運転者に不必要に違和感を与えるという不都合を
回避することができる。一方、上記ステップ102にお
いてV>V1 が成立すると判別される場合は、ブレーキ
アシスト制御の実行可否の判断を進めるべく、次にステ
ップ104の処理が実行される。
【0067】ステップ104では、車速Vが所定速度V
2 (>V1 )に比して大きいか否かが判別される。所定
車速V2 は、その速度V2 より低速の領域でブレーキア
シスト制御が実行されると大きな体感減速度が発生し易
く、かつ、車速Vがその速度V2 より低速である場合
に、真に緊急ブレーキを要求する制動操作が行われた際
にはブレーキアシスト制御を開始することが適切な速度
である。
【0068】本ルーチンでは、上記ステップ104にお
いてV>V2 が成立すると判別される場合(以下、この
場合を車両が高速走行中である場合と称す)は、次にス
テップ106の処理が実行される。一方、V>V1 が不
成立であるすると判別される場合(以下、この場合を車
両が低速走行中である場合と称す)は、次にステップ1
08の処理が実行される。
【0069】ステップ106では、急ブレーキ条件が
成立するか否かが判別される。急ブレーキ条件は、マ
スタシリンダ圧PM/C が所定値Th0 を超えており、か
つ、変化率ΔPM/C が所定値αを超えている場合に成立
すると判断される。上述の如く、本ステップ106の処
理は、車速Vが所定車速V2 を超えている場合に、すな
わち、ブレーキアシスト制御の開始に伴って不当に大き
な減速度が生ずることのない場合に実行される処理であ
る。このため、急ブレーキ条件は、成立し易い条件に
設定されている。
【0070】上記ステップ106において、急ブレーキ
条件が不成立であると判別される場合は、ブレーキア
シスト制御を開始する必要がないと判断される。この場
合、以後何ら処理が進められることなく今回のルーチン
が終了される。一方、急ブレーキ条件が成立すると判
別される場合は、ブレーキアシスト制御を開始すべき状
況が生じていると判断される。この場合、以後、ステッ
プ112の処理が実行される。
【0071】ステップ108では、急ブレーキ条件が
成立するか否かが判別される。急ブレーキ条件は、マ
スタシリンダ圧PM/C が所定値ThM/C を超えており、
かつ、変化率ΔPM/C が所定値αを超えている場合に成
立すると判断される。所定値ThM/C は、図5に示すマ
ップを参照して、車速Vに基づいて設定される。図5に
示す如く、所定値ThM/C は車速Vが高速であるほど
(V2 に近いほど)最小値Th0 に近づき、一方、車速
Vが低速であるほど(V1 に近いほど)最大値Th1
近づく。従って、急ブレーキ条件は、車速Vが低速で
あるほど、急制動側の条件、すなわち成立し難い条件と
なる。
【0072】上記ステップ108において、急ブレーキ
条件が不成立であると判別される場合は、ブレーキア
シスト制御を開始する必要がないと判断される。この場
合、以後何ら処理が進められることなく今回のルーチン
が終了される。一方、急ブレーキ条件が成立すると判
別される場合は、ブレーキアシスト制御を開始すべき状
況が生じていると判断される。この場合、以後、ステッ
プ112の処理が実行される。
【0073】上記の処理によれば、ブレーキアシスト制
御の実行可否が、車速Vに応じて異なる実行条件に基づ
いて判別される。その結果、車速Vが高速である場合
は、ブレーキペダル30が高速かつ大きく操作されるこ
とにより、比較的容易にブレーキアシスト制御の必要性
が認識される。一方、車速Vが低速である場合は、ブレ
ーキペダル30が、高速で、かつ、著しく大きく操作さ
れなければ、ブレーキアシスト制御の必要性は認識され
ない。このため、本実施例の制動力制御装置によれば、
高速走行時および低速走行時に、適切にブレーキアシス
ト制御の必要性を認識することができると共に、低速走
行時に、ブレーキアシスト制御の実行に起因して運転者
が違和感を感ずる頻度を抑制することができる。
【0074】ステップ112では、マスタシリンダ圧P
M/C の変化率ΔPM/C が所定値βに比して小さいか否か
が判別される。所定値βは、マスタシリンダ圧PM/C
昇圧変化が緩やかになったか否かの判別に用いられるし
きい値である。従って、未だΔPM/C <βが不成立であ
ると判別される場合は、マスタシリンダ圧PM/C が急上
昇中であると判断することができる。この場合、以後速
やかに今回の処理が終了される。そして、ΔPM/C <β
が成立すると判別される場合は、既にマスタシリンダ圧
M/C の昇圧が緩やかであると判断することができる。
この場合、次に、図4に示すステップ114の処理が実
行される。上記の処理によれば、ステップ101で記憶
される最大値 MAXΔPM/C には、ブレーキペダル30の
踏み込みが開始された後、マスタシリンダ圧PM/C の昇
圧傾向が緩やかになるまでに生じた最も大きな変化率Δ
M/C の値が記録される。
【0075】上記ステップ112の条件は、制動操作の
実行に伴ってマスタシリンダ圧PM/ C が急昇圧された
後、その昇圧変化が緩やかになった時点で成立する条件
である。従って、上記ステップ112の条件が成立する
と判別される時点では必ずマスタシリンダ32に高圧の
マスタシリンダ圧PM/C が発生している。
【0076】マスタシリンダ圧PM/C が昇圧された後、
ホイルシリンダ圧PW/C が昇圧されるまでにはある程度
の遅延が生ずる。このため、マスタシリンダ圧PM/C
ホイルシリンダ圧PW/C との間には、上記ステップ11
2の条件が成立した時点で差圧が生じている(以下、こ
の差圧を緊急制動時差圧ΔPEMと称す)。大きな緊急制
動時差圧ΔPEMが発生している場合は、その後、差圧|
M/C −PW/C |が適当な値に減圧されるまでの間は、
ポンプ12およびアキュムレータ20を液圧源としてホ
イルシリンダ圧PW/C の昇圧を図るより、マスタシリン
ダ32を液圧源として維持した方が、ホイルシリンダ圧
W/C を速やかに昇圧させることができる。このため、
本実施例においては、上記ステップ112の条件が成立
した場合、その後、所定の遅延時間Dの経過を待ってブ
レーキアシスト制御を開始することとしている。
【0077】マスタシリンダ圧PM/C を液圧源とした方
がポンプ12およびアキュムレータ20を液圧源とする
よりもホイルシリンダ圧PW/C を急昇圧させ得る時間
は、緊急制動時差圧ΔPEMが高いほど長時間となる。従
って、ブレーキアシスト制御の開始に先立って経過を待
つべき遅延時間Dは、緊急制動時差圧ΔPEMが高いほど
長時間とすべきである。
【0078】また、緊急制動時差圧ΔPEMは、上記ステ
ップ112の条件が成立した時点でのマスタシリンダ圧
M/C (以下、この液圧を緊急制動時マスタ圧PM/CEM
と称す)が高圧であるほど大きな値となり、かつ、制動
操作が開始された後上記ステップ112の条件が成立す
る以前に発生した変化率ΔPM/C の最大値、すなわち、
上記ステップ101で記憶した最大値 MAXΔPM/C が大
きいほど大きな値となる。このため、本実施例において
遅延時間Dは、ステップ114以降の処理により、緊急
制動時マスタ圧PM/CEM と最大値 MAXΔPM/C とに基づ
いて設定される。
【0079】ステップ114では、その時点で油圧セン
サ40に検出されているマスタシリンダ圧PM/C が、緊
急制動時マスタ圧PM/CEM として記憶される。上記の処
理が終了すると、次にステップ116の処理が実行され
る。ステップ116では、緊急制動時マスタ圧PM/CEM
と、最大値 MAXΔPM/C とに基づいて遅延時間Dが算出
される。遅延時間Dは、予めECU10に記憶されてい
るマップに基づいて、緊急制動時マスタ圧PM/CEM およ
び最大値 MAXΔPM/ C が共に大きい場合、すなわち、緊
急制動時差圧ΔPEMが大きい場合には比較的長い時間D
L に、一方、緊急制動時マスタ圧PM/CEM および最大値
MAXΔPM/Cが共に小さい場合、すなわち、緊急制動時
差圧ΔPEMが小さい場合には比較的短い時間DS に設定
される。
【0080】上記ステップ116の処理が終了すると、
次にステップ118において遅延時間Dがカウントダウ
ンされる。次いでステップ120では、ブレーキアシス
ト制御の開始タイミングに到達したか否か、すなわち、
遅延時間Dのカウントダウンが終了したか否かが判別さ
れる。その結果、未だ遅延時間Dのカウントダウンが終
了していないと判別される場合は、そのカウントダウン
が終了したと判別されるまで、上記ステップ118およ
び120の処理が繰り返し実行される。そして、遅延時
間Dのカウントダウンが終了したと判別されると、次に
ステップ122の処理が実行される。
【0081】ステップ122では、車速Vが所定のしき
い値V3 (>V1 )に比して大きいか否かが判別され
る。しきい値V3 は、その値V3 に対して車速V>V3
が成立する場合は、ブレーキアシスト制御が開始された
後、各ホイルシリンダ44**のホイルシリンダ圧PW/C
が急激にアキュムレータ圧PACC に向けて昇圧されて
も、搭乗者にとって不快な体感減速度は生じないと判断
することができる値である。上記ステップ122でV>
3 が成立すると判別された場合は、次にステップ12
4の処理が実行される。一方、V>V3 が不成立である
と判別された場合は、次にステップ126の処理が実行
される。
【0082】ステップ124では、ブレーキアシスト制
御が通常の手法により、すなわち、STR26、SA-1
46、SA-248およびSA-354をオン状態とするこ
とにより開始される。以下、上記の処理により開始され
る制御を、特に、ブレーキアシスト通常制御と称す。ス
テップ124の処理が終了すると、今回のルーチンが終
了される。上記の処理が実行されると、以後、各ホイル
シリンダ44**のホイルシリンダ圧PW/C は、アキュム
レータ圧PACC に向けて継続的かつ急激に昇圧される。
【0083】ステップ126では、ブレーキアシスト開
始特定制御を開始させるための処理が行われる。ステッ
プ126の処理が終了すると、今回のルーチンが終了さ
れる。ブレーキアシスト開始特定制御は、各ホイルシリ
ンダ44**のホイルシリンダ圧PW/C を、アキュムレー
タ後PACC に向けて比較的緩やかに昇圧させるための制
御である。
【0084】ブレーキアシスト開始特定制御は、具体的
には、STR26、SA-146、SA-248およびSA
-354をオン状態とし、かつ、保持ソレノイドS**Hを
所定時間毎に開閉させることにより実現される。上記の
環境下では、アキュムレータ圧PACC が断続的にホイル
シリンダ44**に供給される。その結果、各ホイルシリ
ンダ44**のホイルシリンダ圧PW/C は、ブレーキアシ
スト制御がブレーキアシスト通常制御によって開始され
る場合に比して緩やかに昇圧される。
【0085】上記の処理によれば、車両が所定値V3
超える速度で走行している際に緊急制動操作が行われた
場合には、車両に作用する制動力を急増させることがで
きる。また、車両が所定値V3 以下の速度で走行してい
る際に緊急制動操作が行われた場合には、車両に作用す
る制動力の増加傾向を比較的緩やかにすることができ
る。車両に作用する制動力の増加傾向が緩やかである
と、搭乗者の感ずる体感減速度は抑制される。従って、
本実施例の制動力制御装置によれば、車速V≦V3が成
立する状況下でブレーキアシスト制御が開始された場合
に、車両の搭乗者が不当に大きな体感減速度を感ずると
いう不都合を回避することができる。
【0086】尚、上述した実施例においては、急ブレー
キ条件および急ブレーキ条件が前記請求項1記載の
「所定の実行条件」に相当すると共に、ECU10が上
記ステップ104〜108の処理を実行することにより
前記請求項1および2記載の「実行条件変更手段」が、
また、ECU10が上記ステップ102の処理を実行す
ることにより前記請求項3記載の「アシスト制御禁止手
段」がそれぞれ実現されている。
【0087】ところで、上述した実施例においては、車
速Vに応じて、ブレーキアシスト制御の実行条件のうち
マスタシリンダ圧PM/C に関する条件を変更することと
しているが、本発明はこれに限定されるものではなく、
変化率ΔPM/C に関する条件、または、マスタシリンダ
圧PM/C に関する条件および変化率ΔPM/C に関する条
件の双方を、車速Vに応じて変更することとしてもよ
い。また、上述した実施例においては、急ブレーキ条件
中で用いられるしきい値ThM/C を、車速Vに応じて
変化させることとしているが、本発明はこれに限定され
るものではなく、しきい値ThM/C は定数としてもよ
い。
【0088】更に、上述した実施例においては、ステッ
プ100でブレーキアシスト制御中か否かを判別した後
に、ステップ102で車速Vが所定車速V1を超えてい
るか否かを判別することとしているが、本発明はこれに
限定されるものではなく、先ず車速Vが所定車速V1を
超えているか否かを判別し、V>V1が成立する場合に
ブレーキアシスト制御中か否かを判別することとしても
よい。
【0089】また、上述した実施例においては、運転者
によって行われた制動操作が緊急制動操作を意図するも
のであるか否かは、マスタシリンダ圧PM/C およびその
変化率ΔPM/C に基づいて判別されているが、緊急制動
操作を判別する基礎パラメータはマスタシリンダ圧P
M/C およびその変化率ΔPM/C に限定されるものではな
い。
【0090】すなわち、ブレーキペダル30が操作され
る際には、マスタシリンダ圧PM/Cが変化する他、ブレ
ーキペダル30に作用するブレーキ踏力FP や、ブレー
キペダル30のストローク量Lにも変化が生ずる。ま
た、ブレーキペダル30が操作され、その結果車両に制
動力が作用すると、車両には、減速度Gが発生する。こ
のため、緊急制動操作と通常の制動操作との判別は、上
述したマスタシリンダ圧PM/C の他、ブレーキ踏力
P 、ペダルストロークL、車体減速度G、推定
車体速度VSO、および、車輪速度Vw**等に基づいて
行うことも可能である。そして、これら〜のパラメ
ータが用いられる場合は、それらのパラメータに関して
設定される実行条件を車速Vに応じて変更することによ
り、本発明の有する優れた効果を得ることができる。
【0091】次に、図6を参照して、本発明の第2実施
例について説明する。図6は、本実施例の制動力制御装
置のシステム構成図を示す。尚、図6には、説明の便宜
上、制動力制御装置の一輪分の構成のみを示す。図6に
示す制動力制御装置は、ECU200により制御されて
いる。本実施例の制動力制御装置は、ブレーキペダル2
02を備えている。ブレーキペダル202の近傍には、
ブレーキスイッチ203が配設されている。ブレーキス
イッチ203は、ブレーキペダル202が踏み込まれて
いる場合にオン出力を発するスイッチである。ブレーキ
スイッチ203の出力信号はECU200に供給されて
いる。ECU200は、ブレーキスイッチ203の出力
信号に基づいてブレーキ操作がなされているか否かを判
別する。
【0092】ブレーキペダル202は、バキュームブー
スタ204に連結されている。バキュームブースタ20
4は、内燃機関の吸気負圧等を動力源としてブレーキ踏
力を助勢する装置である。バキュームブースタ204に
は、マスタシリンダ206が固定されている。バキュー
ムブースタ204は、ブレーキペダル202に付与され
るブレーキ踏力FP と、自らが発生するブレーキアシス
ト力FA との合力をマスタシリンダ206に伝達する。
【0093】マスタシリンダ206は、その内部に液圧
室を備えている。また、マスタシリンダ206の上部に
はリザーバタンク208が配設されている。マスタシリ
ンダの液圧室とリザーバタンク208とは、ブレーキペ
ダル202の踏み込みが解除されている場合に導通状態
となり、一方、ブレーキペダル202が踏み込まれてい
る場合に遮断状態となる。従って、液圧室には、ブレー
キペダル202の踏み込みが解除される毎にブレーキフ
ルードが補充される。
【0094】マスタシリンダ206の液圧室には、液圧
通路210が連通している。液圧通路210には液圧通
路210の内圧に応じた電気信号を出力する油圧センサ
212が配設されている。油圧センサ212の出力信号
はECU200に供給されている。ECU200は、油
圧センサ212の出力信号に基づいて、マスタシリンダ
206により発生されている液圧、すなわち、マスタシ
リンダ圧PM/C を検出する。
【0095】液圧通路210には保持ソレノイド216
(以下、SH216と称す)が配設されている。SH2
16は、常態(オフ状態)で開弁状態を維持する2位置
の電磁開閉弁である。SH216は、ECU200から
駆動信号が供給されることによりオン状態(閉弁状態)
となる。
【0096】SH216の下流側には、ホイルシリンダ
218および減圧ソレノイド220(以下、SR220
と称す)が連通されている。SR220は、常態(オフ
状態)では閉弁状態を維持する2位置の電磁開閉弁であ
る。SR220は、ECU200から駆動信号が供給さ
れることによりオン状態(開弁状態)となる。また、ホ
イルシリンダ218と液圧通路210との間には、ホイ
ルシリンダ218側から液圧通路210側へ向かう流体
の流れのみを許容する逆止弁222が配設されている。
【0097】ホイルシリンダ218の近傍には、車輪が
所定回転角回転する毎にパルス信号を発する車輪速セン
サ219が配設されている。車輪速センサ219の出力
信号はECU200に供給されている。ECU200
は、車輪速センサ219の出力信号に基づいて車輪速度
を検出する。
【0098】SR220の下流側には、リザーバ224
が配設されている。SR220がオン状態(開弁状態)
とされた際にSR220から流出するブレーキフルード
は、リザーバ224に貯留される。尚、リザーバ224
には、予め所定量のブレーキフルードが貯留されてい
る。リザーバ224には、ポンプ226の吸入口226
aが連通している。また、ポンプ226の吐出口226
bは、逆止弁228を介して、液圧通路210の、SH
216の上流側に連通している。逆止弁228は、ポン
プ228側から液圧通路210側へ向かう流体の流れの
みを許容する一方向弁である。
【0099】バキュームブースタ204には、負圧通路
230および調整圧通路232が連通している。負圧通
路230は、内燃機関の吸気系等の負圧源に連通してい
る。一方、調整圧通路232は、負圧導入バルブ234
および大気導入バルブ236に連通している。負圧導入
バルブ234は、調整圧通路232と負圧通路230と
の間に介在する2位置の電磁開閉弁であり、常態(オフ
状態)では開弁状態を維持する。一方、大気導入バルブ
236は、調整圧通路232と大気との導通状態を制御
する2位置の電磁開閉弁であり、常態(オフ状態)では
閉弁状態を維持する。負圧導入バルブ234および大気
導入バルブ236は、それぞれECU200から駆動信
号が供給されることによりオン状態(閉弁状態、また
は、開弁状態)となる。
【0100】バキュームブースタ204は、その内部
に、ダイアフラムによって隔成された負圧室と変圧室と
を備えている。負圧室は、負圧通路230に連通してお
り、車両の運転中は常に所定負圧に保たれている。変圧
室は、変圧室の内圧を調整するバルブ機構を介して調整
圧通路232および大気空間に連通されている。バルブ
機構は、ブレーキペダル202の操作と連動して以下の
如く作動する。
【0101】バルブ機構は、調整圧通路232に負圧が
導かれている場合は、変圧室と負圧室とにブレーキ踏力
P に応じた差圧が生ずるまで、変圧室を大気空間に連
通させる。この場合、ダイアフラムには、変圧室と負圧
室との差圧に応じた、すなわち、ブレーキ踏力FP に応
じた付勢力が作用する。バキュームブースタ204は、
この付勢力を、ブレーキアシスト力FA としてマスタシ
リンダ206に伝達する。また、バルブ機構は、調整圧
通路232に大気圧が導かれている場合は、ブレーキ踏
力FP の如何に関わらず、変圧室に大気圧を導入する。
この場合、ダイアフラムには負圧室の内圧と大気圧との
差圧に応じた付勢力が作用し、バキュームブースタによ
り、最大のブレーキアシスト力FAMAXが発生される。
【0102】次に、本実施例の制動力制御装置の動作に
ついて説明する。本実施例において、ECU200は、
上述した第1実施例におけるECU10と同様に、上記
図3および図4に示すルーチンを実行することにより、
ブレーキアシスト制御の開始の可否を判断する。すなわ
ち、ECU200は、ブレーキペダル202が踏み込ま
れた際に、車速VがV1 以下である場合はブレーキアシ
スト制御の実行を禁止する。そして、車速VがV1 を超
えており、かつ、V2 以下である場合は急ブレーキ条件
により、また、車速VがV2 を超えている場合は急ブ
レーキ条件により、それぞれ緊急制動操作が実行され
たか否かを判断する。
【0103】このように、本実施例の制動力制御装置に
おいても、上述した第1実施例の場合と同様に、緊急制
動操作が実行されたか否かは、車速Vに応じて異なる実
行条件に基づいて判別される。このため、本実施例の制
動力制御装置によっても、上述した第1実施例の場合と
同様に、高速走行時および低速走行時に適切にブレーキ
アシスト制御の必要性を認識することができると共に、
低速走行時に、ブレーキアシスト制御の実行に起因して
運転者が違和感を感ずる頻度を抑制することができる。
【0104】ECU200は、車速Vに対応する実行条
件を満たす緊急制動操作が実行されていないと判断され
る場合は、通常制御を実行する。一方、車速Vに対応す
る実行条件を満たす緊急制動操作が実行されていると判
断される場合は、ブレーキアシスト制御を実行する。こ
の際、ブレーキアシスト制御は、車速VがV3 を超えて
いる場合は“ブレーキアシスト通常制御”により、ま
た、車速VがV3 以下である場合は“ブレーキアシスト
開始特定制御”により開始される。
【0105】本実施例のシステムにおいて、ECU20
0が通常制御を実行する場合は、負圧導入バルブ234
および大気導入バルブ236が、共にオフ状態に維持さ
れる。この場合、バキュームブースタ204は、上述の
如くブレーキ踏力FP に応じたブレーキアシスト力FA
を発生する。その結果、マスタシリンダ206には、ブ
レーキ踏力FP とブレーキアシスト力FA との合力が伝
達される。また、マスタシリンダ206に対してブレー
キ踏力FP とブレーキアシスト力FA との合力が伝達さ
れると、マスタシリンダ206は、ブレーキ踏力FP
対して所定の倍力比を有するマスタシリンダ圧PM/C
発生する。
【0106】ECU200は、車両状態が安定している
場合は、SH216およびSR220をオフ状態とする
と共に、ポンプ226を停止状態に維持する。以下、こ
の状態を通常状態と称す。油圧回路が通常状態とされて
いる場合、ホイルシリンダ218には、マスタシリンダ
圧PM/C がそのまま導かれる。従って、ホイルシリンダ
218で発生される制動力は、ブレーキ踏力FP に応じ
た大きさに調整される。
【0107】ブレーキ操作が開始された後、車輪のスリ
ップ率Sが所定値を超えると、ECU200は、上記第
1実施例におけるECU10と同様にABS制御を開始
する。ABS制御は、ブレーキペダル202が踏み込ま
れている場合、すなわち、マスタシリンダ圧PM/C が適
当に昇圧されている場合に、ポンプ226を作動させな
がら、下記の如くSH216およびSR220を駆動す
ることにより実現される。
【0108】マスタシリンダ204から適当に昇圧され
たマスタシリンダ圧PM/C が出力されている場合、SH
216を開弁状態とし、かつ、SR220を閉弁状態と
することで、ホイルシリンダ圧PW/C を、マスタシリン
ダ圧PM/C を上限値として増圧されることができる。以
下、この状態を増圧モードと称す。また、同様の環境
下で、SH216を閉弁状態とし、かつ、SR220を
閉弁状態とすると、ホイルシリンダ圧PW/C を保持する
ことができる。また、SH216を開弁状態とし、か
つ、SR220を開弁状態とすると、ホイルシリンダ圧
W/C を減圧させることができる。以下、これらの状態
を、それぞれ保持モード、および、減圧モードと称
す。ECU200は、車輪のスリップ率Sが適当な値に
収まるように、適宜上述した増圧モード、保持モー
ド、および減圧モードを実現する。
【0109】ABS制御の実行中に、運転者によってブ
レーキペダル202の踏み込みが解除された後は、速や
かにホイルシリンダ圧PW/C が減圧される必要がある。
本実施例のシステムにおいて、ホイルシリンダ218に
対応する油圧回路には、ホイルシリンダ218側からマ
スタシリンダ206側へ向かう流体の流れを許容する逆
止弁222が配設されている。このため、本実施例のシ
ステムによれば、ブレーキペダル202の踏み込みが解
除された後に、速やかにホイルシリンダ222のホイル
シリンダ圧PW/C を減圧させることができる。
【0110】本実施例のシステムにおいてABS制御の
実行中は、ホイルシリンダ圧PW/Cが、マスタシリンダ
206を液圧源として昇圧される。また、ホイルシリン
ダ圧PW/C は、ホイルシリンダ218内のブレーキフル
ードをリザーバ224に流出させることにより減圧され
る。従って、増圧モードと減圧モードとが繰り返し実行
されると、ブレーキフルードが、徐々にマスタシリンダ
206側からリザーバ224側へ流出される。しかしな
がら、本実施例のシステムにおいて、リザーバ224に
流出されたブレーキフルードは、ポンプ226によりマ
スタシリンダ206側へ圧送される。このため、ABS
制御が長期間継続して行われた場合においても、いわゆ
るマスタシリンダの床付きが生ずることはない。
【0111】次に、ECU200がブレーキアシスト制
御を実行することにより実現される動作について説明す
る。上述の如く、ECU200は、車速VがV3 を超え
る状況下で緊急制動操作が実行された場合は、ブレーキ
アシスト通常制御によってブレーキアシスト制御を開始
する。ブレーキアシスト通常制御は、負圧導入バルブ2
34をオン状態(閉状態)、大気導入バルブ236をオ
ン状態(開状態)、保持ソレノイドSH216をオフ状
態(開状態)、減圧ソレノイドSR220をオフ状態
(閉状態)とし、かつ、ポンプ226を停止状態とする
ことにより実現される。
【0112】上記の条件下では、調整圧通路232に大
気が導入される。調整圧通路232に大気が導入される
と、バキュームブースタ204の発するブレーキアシス
ト力FA は、最大のブレーキアシスト力FAMAXに向けて
急増される。その結果、マスタシリンダ圧PM/C は、最
大のブレーキアアシスト力FAMAXとブレーキ踏力FP
の合力に応じた圧力に急昇圧される。また、上記の条件
下では、ホイルシリンダ218にマスタシリンダ圧P
M/C がそのまま導かれる。従って、ホイルシリンダ圧P
W/C は、ブレーキアシスト通常制御が開始された後、
“FAMAX+FP ”に応じた圧力に向けて急昇圧される。
【0113】また、ECU200は、上述の如く、車速
がV3 以下である状況下で緊急制動操作が実行された場
合は、ブレーキアシスト開始特定制御によってブレーキ
アシスト制御を開始する。ブレーキアシスト開始特定制
御は、負圧導入バルブ234をオン状態(閉状態)、大
気導入バルブ236をオン状態(開状態)、減圧ソレノ
イドSR220をオフ状態(閉状態)、ポンプ226を
停止状態とし、かつ、保持ソレノイドSH216を所定
時間毎に開閉させることにより実現される。
【0114】上記の状況下では、ブレーキアシスト開始
特定制御が開始された後速やかに、マスタシリンダ圧P
M/C が最大のブレーキアアシスト力FAMAXとブレーキ踏
力F P との合力に応じた圧力に急昇圧されると共に、ホ
イルシリンダ218が断続的にマスタシリンダ206と
導通状態とされる。その結果、ホイルシリンダ圧PW/ C
は、ブレーキアシスト制御が、ブレーキアシスト通常制
御によって開始される場合に比して緩やかに昇圧され
る。
【0115】このように、本実施例の制動力制御装置に
よっても、上述した第1実施例の場合と同様に、ブレー
キアシスト制御が開始された後のホイルシリンダ圧P
W/C の増圧傾向を車速Vに応じて変化させることができ
る。従って、本実施例の制動力制御装置によっても、上
述した第1実施例の場合と同様に、低速走行中にブレー
キアシスト制御が開始された際に、車両の搭乗者が不当
に大きな体感減速度を感ずるという不都合を回避するこ
とができる。
【0116】ブレーキアシスト制御が開始されることに
より、上記の如くホイルシリンダ圧PW/C が昇圧される
と、その後、車輪のスリップ率Sが増大してやがてAB
S制御の実行条件が成立する。ABS制御の実行条件が
成立すると、ECU200は、車輪のスリップ率Sが適
当な値に収まるように、適宜上述した増圧モード、
保持モード、および減圧モードを実現する。
【0117】本実施例のシステムにおいて、ブレーキア
シスト制御が開始された後、ブレーキペダル202に対
してブレーキ踏力FP が付与されている間は、マスタシ
リンダ圧PM/C が、“FAMAX+FP ”に応じた圧力に維
持される。一方、ブレーキアシスト制御が開始された
後、ブレーキペダル202の踏み込みが解除されると、
マスタシリンダ圧PM/C は“FAMAX”に応じた圧力に減
圧される。
【0118】従って、ECU200は、油圧センサ21
2により検出されるマスタシリンダ圧PM/C の出力信号
を監視することにより、容易にブレーキペダル202の
踏み込みが解除されたか否かを判断することができる。
ECU200は、ブレーキペダル202の踏み込みが解
除されたことを検出すると、負圧導入バルブ234およ
び大気導入バルブ236への駆動信号の供給を停止し
て、ブレーキアシスト制御を終了させる。
【0119】上述の如く、上記第2実施例の制動力制御
装置によれば、上述した第1実施例の制動力制御装置と
同様に、緊急ブレーキが要求される状況下で適切に大き
な制動力を発生させることができると共に、低速走行中
に不必要に大きな制動力が発生するのを防止することが
できる。このため、第2実施例の制動力制御装置によっ
ても、全ての車速領域において、乗り心地を損なうこと
なくブレーキアシスト制御を効果的に機能させることが
できる。
【0120】尚、上述した第2実施例においては、EC
U200が図3に示すステップ104〜108の処理を
実行することにより前記請求項1および2記載の「実行
条件変更手段」が、また、ECU200が図3に示すス
テップ102の処理を実行することにより前記請求項3
記載の「アシスト制御禁止手段」がそれぞれ実現されて
いる。
【0121】
【発明の効果】上述の如く、請求項1記載の発明によれ
ば、車速に応じてブレーキアシスト制御の実行条件を変
更することができる。従って、本発明に係る制動力制御
装置によれば、車速の影響を考慮した適切なブレーキフ
ィーリングを実現することができる。
【0122】請求項2記載の発明によれば、車速が低速
であるほど、ブレーキアシスト制御が開始され難い状況
を形成することができる。従って、本発明に係る制動力
制御装置によれば、低速走行時において運転者に大きな
違和感を与えることなく、適切に、緊急ブレーキの要求
に応える制動力を発生させることができる。
【0123】また、請求項3記載の発明によれば、車速
が所定速度以下である場合に、ブレーキアシスト制御の
実行を禁止することができる。従って、本発明に係る制
動力制御装置によれば、低速走行時に、運転者に違和感
を与える体感減速度が生ずるのを確実に防止することが
できると共に、高速走行時に、確実に緊急ブレーキの要
求に応える制動力を発生させることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施例のシステム構成図である。
【図2】種々の環境下で実現されるブレーキ踏力の変化
状態を示す図である。
【図3】図1に示す制動力制御装置において実行される
制御ルーチンの一例のフローチャート(その1)であ
る。
【図4】図1に示す制動力制御装置において実行される
制御ルーチンの一例のフローチャート(その2)であ
る。
【図5】図3および図4に示す制御ルーチン中で用いら
れるマップの一例である。
【図6】本発明の第2実施例のシステム構成図である。
【符号の説明】
10,200 電子制御ユニット(ECU) 26 レギュレータ切り換えソレノイド(STR) 30,202 ブレーキペダル 32,206 マスタシリンダ 40,212 油圧センサ 46 第1アシストソレノイド(SA-1) 48 第2アシストソレノイド(SA-2) 50 右前輪保持ソレノイド(SFRH) 52 左前輪保持ソレノイド(SFLH) 54 第3アシストソレノイド(SA-3) 58 右前輪減圧ソレノイド(SFRR) 64 左前輪保持ソレノイド(SFLR) 68 右後輪保持ソレノイド(SRRH) 70 左後輪保持ソレノイド(SRLH) 74 右後輪減圧ソレノイド(SRRR) 80 左後輪保持ソレノイド(SRLR) 204 バキュームブースタ 214 液圧カットソレノイド(SC) 216 保持ソレノイド(SH) 220 減圧ソレノイド(SR) 234 負圧導入バルブ 236 大気導入バルブ

Claims (3)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 ブレーキ踏力に応じた制動力を発生させ
    る通常制御を実行すると共に、所定の実行条件を満たす
    制動操作が行われた際に、通常制御時に比して大きな制
    動力を発生させるブレーキアシスト制御を実行する制動
    力制御装置において、 前記所定の実行条件を車速に応じて変更する実行条件変
    更手段を備えることを特徴とする制動力制御装置。
  2. 【請求項2】 請求項1記載の制動力制御装置におい
    て、 前記実行条件変更手段が、車速が低速であるほど前記実
    行条件を急制動側に変更することを特徴とする制動力制
    御装置。
  3. 【請求項3】 請求項1および2記載の制動力制御装置
    において、 車速が所定速度以下である場合に、前記ブレーキアシス
    ト制御の実行を禁止するアシスト制御禁止手段を備える
    ことを特徴とする制動力制御装置。
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