JPH09287098A - 無機系塗膜との密着性に優れたオーステナイト系ステンレス鋼板およびその製造方法 - Google Patents
無機系塗膜との密着性に優れたオーステナイト系ステンレス鋼板およびその製造方法Info
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Abstract
るステンレス鋼板を連続生産により提供する。 【解決手段】 鋼板表面に球面状のピットが隙間なく形
成しており、これらピットの開口部の平均径D(μm)
とピットの平均深さH(μm)が、下記(1)式および
(2)式の関係を満足している無機系塗膜との密着性に
優れたオーステナイト系ステンレス鋼板を提供する。 1≦D≦5 -----(1) D/3≦H≦D/2 -----(2) このステンレス鋼板は、Fe3+を30〜120g/L含
む塩化第二鉄水溶液中で、アノード電解時の電流密度を
1.0〜10.0kA/m2、カソード電解時の電流密
度を0.5〜3.0kA/m2とした1〜10Hzの交
番電解をステンレス鋼板に10〜120秒間施すことに
より、製造することができる。
Description
着性に優れたオーステナイト系ステンレス鋼板、および
その製造方法に関する。
材や家電製品等の多くの用途に各種の塗料を塗装したス
テンレス鋼板が使用されているが、最近ではさらに高度
な機能を有する塗装ステンレス鋼板のニーズが高まりつ
つある。例えば、住宅やビルの内外壁に使用される材料
にはメンテナンスフリー化の観点から数十年の使用に耐
える耐食性・耐候性・耐汚染性が、また、トンネル内壁
材のような道路施設材料には繰り返しの洗浄に耐える耐
傷付き性,火災発生時の耐燃焼性・無煙性が要求され
る。
有機高分子を主体とした塗料ではこれらの要求特性を満
足するには限界がある。そこで、最近ではアルコキシシ
ラン化合物を出発原料として加水分解・縮合反応により
塗膜を形成するセラミックス塗料や、ほうろう等の、無
機系塗料をステンレス鋼板に塗布した材料が注目されは
じめている。これら無機系塗料は、塗膜を形成する主鎖
に有機結合がないことから、有機系の塗料と比較して耐
食性,耐候性,耐熱性,耐傷付き性等の特性が格段に優
れる。しかし反面、下地ステンレス鋼との十分な密着力
が得られないため、広く普及するには至っていない。
向上させる方法として、ステンレス鋼板表面を粗面化し
て塗膜との密着力を向上させる方法が知られている。例
えば、ダルロール圧延,ショットブラスト,ホーニング
といったステンレス鋼板表面を物理的に粗面化する方
法、硫酸,塩酸,硝弗酸等の酸類や塩化第二鉄溶液によ
るスプレーあるいは浸漬による化学エッチングでステン
レス鋼板表面を粗面化する方法等が挙げられる。
施した凹凸を転写するため、塗膜との密着性を満足する
ような微細な粗面化が不可能である。また、ショットブ
ラストやホーニングにおいては、削り取られた鋼粉の処
理による連続生産性の低下、さらには、薄ゲージ鋼板に
適用した場合には鋼板が反りかえる等の問題がある。そ
ればかりか、物理的な粗面化方法では鋼板に歪が残り、
鋼板本来の耐食性を低下させるといった問題も残る。一
方、化学エッチング処理による方法は、局所的に大きな
ピットが発生するなどステンレス鋼板表面に均一にピッ
トを形成させるのが難しく、処理時間も長いことから連
続生産には向かない。
開平6−136600号では、塗膜との密着性向上を目
的に、硝酸または硝酸を主成分とする水溶液中でステン
レス鋼の陽極電解または陽極電解と陰極電解を行って表
面を粗面化する方法を開示している。しかし、塗膜との
十分な密着力を得るための粗面化に要する処理時間は、
オーステナイト系鋼種で3〜60minと長時間を要し
ていることから判るように、この方法も連続生産に適す
るとはいい難い。また、この方法では鋼種によって粗面
化形態が異なり、特に、オーステナイト系鋼種では開口
部が広く凹凸の大きい粒界侵食型の粗面化形態となりや
すく、この場合には加工を施したときに開口部の広がり
が助長されてアンカー効果不足が生じ、無機系の塗膜に
対しては十分な密着力を維持できない。
塗膜で被覆したステンレス鋼板のニーズが高いにもかか
わらず、無機系塗膜に対して高い密着性を発揮するステ
ンレス鋼板素材を工業的に安定して製造する技術が確立
されていないために、上記ニーズに対応することができ
ないのが現状である。本発明は、かかる現状に鑑み、無
機系塗膜との密着力を高めるのにふさわしい鋼板の表面
形態を明らかにして、そのようなオーステナイト系ステ
ンレス鋼板を提供することを目的とする。併せて、その
ようなオーステナイト系ステンレス鋼板を、連続生産が
可能な短い処理時間で、しかも薄ゲージ材にも適用可能
な方法で製造する技術を提供する。
球面状のピットが隙間なく形成しており、これらピット
の開口部の平均径D(μm)とピットの平均深さH(μ
m)が、下記(1)式および(2)式の関係を満足して
いる無機系塗膜との密着性に優れたオーステナイト系ス
テンレス鋼板によって達成される。 1≦D≦5 -----(1) D/3≦H≦D/2 -----(2) また、このオーステナイト系ステンレス鋼板は、Fe3+
を30〜120g/L(リットル)含む塩化第二鉄水溶
液中で、アノード電解時の電流密度を1.0〜10.0
kA/m2、カソード電解時の電流密度を0.5〜3.
0kA/m2とした1〜10Hzの交番電解をステンレ
ス鋼板に10〜120秒間施すことにより、製造するこ
とができる。
は、各ピットの間にピット未発生部分がないこと、換言
すれば、各ピットは周囲全体が他のピットと接するよう
にして連続的につながっている状態を意味する。また、
ここで、ピットの開口部の平均径Dは、各ピットの開口
部の直径を平均したμm単位の値を意味する。したがっ
て、(1)式によりDの値は1〜5μmの範囲に規定さ
れるが、開口部の直径が5μmを超えるピットや1μm
未満であるピットが存在する場合も含まれる。また同様
に、ピットの平均深さHは、各ピットの深さを平均した
μm単位の値を意味する。したがって、(2)式により
Hの値はD/3〜D/2の範囲に規定されるが、深さが
D/2を超えるピットやD/3未満であるピットが存在
する場合も含まれる。
着力を高めるような鋼板の表面形態について種々研究し
た結果、球面状のピットが隙間なく連続的に形成してお
り、しかもピットの形状が半球状に近いとき、際だって
高い密着力が得られることを知見した。ピットの形状が
半球状であれば、接しているピット同士の境界が鋭く切
り立った状態となる。各ピットが隙間なく接していると
き、この鋭く切り立ったピット境界は塗膜を強固に固着
させる作用を最も強く発揮する。
のものである場合、ステンレス鋼板表面に隙間なく形成
したピットの開口部の平均径Dが1〜5μmであり、し
かも、これらのピットの平均深さHがD/3〜D/2の
範囲であるとき、このステンレス鋼板は加工にも耐える
だけの非常に高い塗膜密着力を発現することがわかっ
た。ピット開口部の平均径が1μm未満だと、塗膜の中
に食い込むピット境界部の深さが浅いためアンカー効果
が薄れ、無機系塗膜を強固に固着させることができな
い。一方、ピット開口部の平均径が5μmを超えると、
未加工部では依然として高い密着力を示すが、加工を受
けた部分の密着力が急激に低下する。また、ピットの平
均深さHがD/3未満だと、アンカー効果が発揮でき
ず、無機系塗膜との密着力が不足する。HがD/2を超
えるような場合は理論的に生じ難い。このような理由か
ら、本発明では、前記(1)式および(2)式の規定を
設けた。
発明のステンレス鋼板表面の電子顕微鏡(SEM)写真
を示す。また、図2に、そのステンレス鋼板の断面の電
子顕微鏡(SEM)写真を示す。これらの写真から、前
記のとおり、鋼板表面には球面状のピットが隙間なく連
続的に形成しており、隣り合ったピット同士の境界は鋭
く切り立った状態となっていることが判る。なお、ピッ
ト開口部の平均径Dは、例えば図1のような鋼板表面の
電子顕微鏡写真から求めることができる。また、ピット
の平均深さHは、例えば図2のような鋼板断面の電子顕
微鏡写真から求めることができる。
中での交番電解で形成できる理由については、次のよう
に考えられる。図3に、本発明の塩化第二鉄水溶液中で
の交番電解によるステンレス鋼板表面のピット形成過程
を模式的に示す。まず、アノード電解でピットが発生す
る。そして、次のカソード電解でH2の発生が起きる
と、フラットな部分に比べピット内部では一時的にFe
3++3OH-→Fe(OH)3の反応が起こる領域までp
Hが上昇し、この時に、ピット内壁はFe(OH)3に
よって覆われる。そして、再びアノード電解が行われる
時に、このFe(OH)3が保護作用をし、すでに形成
されているピット内部よりも、H2発生により活性化さ
れているフラットな部分が優先的に溶解され、その結
果、フラットな部分に新たなピットが形成されることに
なる。以上のことが繰り返し行われることにより、本発
明では比較的短時間で微細かつ緻密なピットをステンレ
ス鋼板表面に均一に施すことができると考えられる。以
下、本発明における交番電解処理の条件について説明す
る。
む電解液を使用することが必須要件である。これは、本
発明の交番電解では、前述のとおり、ピット内でFe3+
+3OH-→Fe(OH)3の反応を起こしてピット内壁
をFe(OH)3で保護し、フラットな部分に新たなピ
ットを形成させるというメカニズムを利用するからであ
る。したがって、Fe3+を含まない塩化第一鉄,硝酸,
塩酸,硫酸等の電解液中での交番電解では、上記メカニ
ズムを利用した電解粗面化が行えない。さらに、本発明
ではステンレス鋼を対象とするので、電解液中にはステ
ンレスの酸化作用を促進するNO3 -,SO4 2-といった
イオンが含まれていないことも、孔食、すなわちピット
形成を容易にさせ、短時間での粗面化処理を可能にする
ための重要な条件となる。このような観点から、本発明
ではFe3+を含む塩化第二鉄水溶液を使用する。
ッチング力が低下するため、ステンレス鋼板表面に理想
的な半球状に近い形状のピットを形成することが困難と
なり、アンカー効果に乏しいおわん型の浅いピットとな
る。このため、前記D値とH値の間にH≧D/3の関係
を成立させるに足るだけの塩化第二鉄濃度に管理する必
要がある。一方、塩化第二鉄濃度が高すぎると、エッチ
ング力が強くなりすぎるため全面溶解型の腐食形態とな
り、ピットの形成が行えない。エッチング力に及ぼす塩
化第二鉄濃度の影響は、オーステナイト系ステンレス鋼
に含まれる化学成分によって多少異なるが、電解液中に
含まれるFe3+イオンの濃度が30〜120g/Lとな
るように塩化第二鉄濃度をコントロールすることが望ま
しい。
電解時にH2の発生とともにFe3++e-→Fe2+なる還
元反応が起こる。一方、アノード電解時にステンレス鋼
から溶出するFeはFe2+であることから、処理時間の
経過とともに電解液中では粗面化処理に必要なFe3+の
濃度が低下する。したがって、工業的規模での連続生産
に対応していくためには、Fe3+濃度を常に30〜12
0g/Lに保つような操作が必要となる。そのためには
例えば、Fe3+の消費に合わせて新液を添加する、ある
いは電解液中に生成したFe2+をFe3+に酸化する周知
の方法を用いる等によってFe3+濃度を調整すればよ
い。なお、アノード電解時にステンレス鋼からはFe以
外にCr,Niの溶出もあるが、Fe3+濃度調整時に電
解液は希釈されることから、粗面化処理に影響をおよぼ
す濃度までは上昇しない。
を伴うことから、電解処理時間の経過とともに電解液の
pH上昇が認められる。このとき、pH上昇による粗面
化形態への影響はないものの、pHが約1.8近傍まで
上昇すると電解液中でFe3+がFe(OH)3となって
沈殿し始めるので、このようなpH領域の電解液では液
管理が難しくなる。したがって、電解液のpHは1.8
より低い領域に保つことが望ましく、そのためには例え
ばHClを添加すればよい。
テンレス鋼板表面にピットを形成させることである。ア
ノード電流密度が1.0kA/m2未満では活性溶解が
起こるだけでステンレス鋼板表面にピットを形成するこ
とができない。一方、10.0kA/m2を超えるとC
l-イオンの分解反応をともなうようになり、作業効率
と作業環境がともに悪化する。したがって、アノード電
流密度は1.0〜10.0kA/m2の範囲とすること
が望ましい。また、交番電解1サイクルあたりのアノー
ド通電時間は、ステンレス鋼板表面に形成される球面状
のピットのサイズと直接関係し、1サイクルあたりのア
ノード通電時間が長くなるほどピット径はアノード電流
密度とは無関係に増大する。本発明で規定する前記
(1)式および(2)式の条件を満足するサイズのピッ
トを得るためには、1サイクルあたりのアノード通電時
間を0.05〜0.5secとする必要がある。
前述したように、ステンレス鋼板表面でH2を発生さ
せ、ピット内壁にFe(OH)3の保護皮膜を形成させ
ること、およびピット未発生部分を活性化させることで
ある。そのためカソード電流密度の下限は、電解液中の
Fe3+の還元反応の限界電流密度より高くしてH2発生
領域の値となるように設定しなければならず、塩化第二
鉄濃度,液温あるいは流速等によって多少変動するが、
ほぼ、0.5kA/m2以上あればよい。一方、カソー
ド電流密度が3.0kA/m2を超えると、過剰なH2発
生が起こりピット内壁に形成したFe(OH)3の保護
皮膜をも取り去る恐れがある。このような事態が生じる
と、ステンレス鋼表面に良好な球面状のピットを隙間な
く形成させることができなくなる。したがって、カソー
ド電流密度は0.5〜3.0kA/m2の範囲とするこ
とが望ましい。また、カソード電解の目的を達成するた
めの交番電解1サイクルあたりのカソード通電時間は
0.01sec以上必要である。
あたりの適正通電時間は、アノード電解で0.05〜
0.5sec、カソード電解では0.01sec以上で
あればよいことを述べたが、工業的規模での交番電源を
考慮した場合、アノードとカソードの通電時間は1:1
とすることがコスト的な面から望ましい。このことか
ら、交番電解のサイクルは1〜10Hzの範囲に規定し
た。
間が10secに満たないと、ステンレス鋼板表面にピ
ット未発生箇所が残り、無機系塗膜との密着性が不十分
となる恐れがある。一方、120secを超えて電解し
ても粗面化形態および無機系塗膜との密着性に大きな差
はなく、それ以上の処理は経済上不利になる。したがっ
て、本発明の交番電解に要する処理時間は10〜120
secと規定した。これは、工業的規模での連続生産に
十分対応できる処理時間といえる。
げ材に通常の電解脱脂・酸洗を施した材料について、液
温が50℃,Fe3+を75g/L含む塩化第二鉄水溶液
を用いて、アノード電流密度を3.0kA/m2,カソ
ード電流密度を2.0kA/m2,処理時間を60se
cと一定にして、交番電解サイクルを0.25〜20H
zの範囲内で変えた条件で電解処理を行い、ピットの開
口部の平均径が0.5〜15μmの種々の段階にあるサ
ンプルを作製した。いずれのサンプルも球面状のピット
が鋼板表面に隙間なく形成しており、ピットの形態は、
開口部の平均径Dと平均深さHの間にD/3≦H≦D/
2の関係が成立している半球状に近いものであった。各
サンプルにつき、90°V曲げ加工(曲げコーナー部;
1R)を行い、加工部(凸側)および未加工部にセラミ
ックス塗料をスプレー塗布したのち160℃×20mi
nの焼付処理を行い、膜厚約20μmの塗膜を付着させ
た。そして、加工部(凸側)および未加工部にカッター
ガイド間隔1mmの碁盤目を刻み、その部分にセロテー
プを貼付後剥離する方法(以下、碁盤目セロテープ剥離
試験という)により塗膜残存状況を調査して塗膜密着性
を評価した。なお、ここで使用したセラミックス塗料
は、中国塗料(株)製の商品名;エコルトンA3(白色
タイプ)のオルガノポリシロキサンを主成分としたもの
である。
よるピット開口部の平均径とセラミックス塗膜との密着
性の関係を示す。図4中、未加工部については碁盤目1
00マス目のうちの塗膜残存率を、加工部については塗
膜剥離の有無を示す。ピット開口部の平均径が1μm未
満だと加工の有無に関係なくセラミックス塗膜との密着
性は乏しい。一方、ピット開口部の平均径が5μmを超
えて大きくなると、未加工部の密着性は良好に維持され
るものの、加工部の密着性が低下するのがわかる。これ
は、先に述べたように、ピット開口部の径が大きくなる
ほど加工時にピットの広がりが助長され、その結果塗膜
とのアンカー効果が少なくなるためであると考えられ
る。
1の2B仕上げ材に通常の電解脱脂・酸洗を施した材料
について、液温が50℃,Fe3+を100g/L含む塩
化第二鉄水溶液を用いて、アノード電流密度を5.0k
A/m2,カソード電流密度を2.0kA/m2,処理時
間を30secと一定にして、交番電解サイクルを0.
25〜20Hzの範囲内で変えた条件で電解処理を行
い、ピットの開口部の平均径が0.5〜15μmの種々
の段階にあるサンプルを作製した。いずれのサンプルも
球面状のピットが鋼板表面に隙間なく形成しており、ピ
ットの形態は、開口部の平均径Dと平均深さHの間にD
/3≦H≦D/2の関係が成立している半球状に近いも
のであった。各サンプルにつき、焼成後の膜厚が100
μmとなるようにほうろうを施した。そして、エリクセ
ン押し込み高さ4mmを与えた後の塗膜残存状況を調査
する方法(以下、エリクセン押し込み試験という)によ
り塗膜密着性を評価した。なお、ここで使用したほうろ
う用フリットは、日本フェロー(株)製の上ぐすり用
(チタン白)でSiO2,Al2O3を主成分としたもの
であり、焼成は820℃×3minで行った。
るピット開口部の平均径とほうろう塗膜との密着性の関
係を示す。ほうろうとの密着性においても、ピット開口
部の平均径が1〜5μmの範囲で塗膜残存率80%以上
と非常に良好な密着性を示すことがわかる。
6,SUS309Sの2B仕上げ材の各種ステンレス鋼
板に通常の電解脱脂・酸洗を施した材料について、塩化
第二鉄水溶液の温度および電解液中に含まれるFe3+の
濃度を塩化第二鉄により変えた種々の条件の電解液を使
用して、アノード電流密度を5.0kA/m2,カソー
ド電流密度を1.0kA/m2,交番電解サイクルを5
Hz,処理時間を60secと一定にした条件で電解処
理を行い、それぞれの鋼種について適正な電解液の条件
を調査した。
とに枠で囲まれた領域が、その鋼種についての適正な電
解液条件の範囲を表す。一般的に不動態化作用が強いと
される鋼種ほど適正範囲は高濃度・高液温側にある。こ
の結果は前述したように、ある程度のエッチング力と不
動態化力が本発明の粗面化形態を施すためには必要であ
ることと一致している。したがって、本発明によれば電
解液の液温と塩化第二鉄濃度を調整することにより各種
オーステナイト系ステンレス鋼板表面に同様の粗面化形
態が安定して施せるといえる。工業的に管理しやすい液
温30〜70℃の範囲においては、電解液中に含まれる
Fe3+の濃度を30〜120g/Lにコントロールする
ことが望ましい。
上げ材に通常の電解脱脂・酸洗を施した材料について、
種々の条件で電解処理を行って、実施例1と同様の90
°V曲げ加工を行った加工部におけるセラミックス塗膜
の密着性を調査した。その結果を、表1,表2に示す。
使用した電解液は、液温が50℃,Fe3+を75g/L
含む塩化第二鉄水溶液である。使用したセラミックス塗
料およびその塗装方法は実施例1と同じである。また、
塗膜密着性は実施例1と同様の碁盤目セロテープ剥離試
験による塗膜剥離の有無を調査することで評価した。な
お、表中に記載したアノード電流密度およびカソード電
流密度は、台形波または正弦波(交流波)を交番電源と
して用いた場合については、その最大電流密度の値を示
した。さらに、比較のために、塩化第二鉄以外の電解液
を用いて表面を粗面化したサンプルも準備し、同様の方
法で特性を評価した。その結果を表3に示す。
たNo.1〜10のサンプルは、いずれも請求項1に示
した(1)式および(2)式の関係を満たす半球状に近
い形状のピットを鋼板表面に隙間なく形成しており、そ
の結果、加工部においてもセラミックス塗膜との密着性
が良好であった。交番電源波形は、矩形波,台形波,正
弦波(交流波)等の各種交番波形が利用できることがわ
かる。
に、本発明の規定範囲を外れる条件で電解処理を行った
サンプルでは、加工部においてセラミックス塗膜との密
着性が不十分であった。なお、これらのうち、No.1
6のサンプルはピット開口部の平均径が1μm未満のも
の、No.15のサンプルはピット開口部の平均径が5
μmを超えるもの、No.11,14のサンプルはピッ
ト開口部の平均径D(μm)とピットの平均深さH(μ
m)の関係がH<D/3となったもの、No.12,1
3,17のサンプルは鋼板表面に未電解部分が残り、隙
間なくピットを形成させることができなかったものであ
る。
S321のNo.4仕上げ材に通常の電解脱脂・酸洗を
施した材料について、液温が70℃,Fe3+を75g/
L含む塩化第二鉄水溶液を用いて、アノード電流密度を
5.0kA/m2,カソード電流密度を1.5kA/
m2,交番電解サイクルを2.5Hzと一定にし、処理
時間を変えた条件で電解処理を行い、得られたサンプル
についてほうろう塗膜の密着性を調査した。その結果を
表4に示す。使用したほうろう用フリットおよびほうろ
う塗膜の焼成方法は実施例2と同じである。塗膜密着性
は、エリクセン押し込み高さを5mmとしたエリクセン
押し込み試験を行って評価した。さらに、比較のため
に、No.4仕上げ材,ダルロール圧延仕上げ材(2D
R),サンドブラスト仕上げ材,ショットブラスト仕上
げ材,液体ホーニング仕上げ材(いずれもSUS32
1)についても、それぞれ通常の電解脱脂・酸洗を施し
た後に同様にほうろう塗膜との密着性評価を試みた。そ
の結果も表4中に併せて記載した。
理を施したNo.31〜35のサンプルの鋼板表面は、
請求項1に示した(1)式および(2)式の関係を満た
す半球状に近い形状のピットが隙間なく形成しており、
いずれもほうろう塗膜残存率が80%以上と良好な密着
性を示した。これに対し、No.36のSUS321の
No.4仕上げ材のサンプル、およびNo.37のダル
ロール圧延仕上げ材のサンプルでは、ほうろう塗膜の残
存は認められなかった。また、No.38〜40のサン
ドブラスト仕上げ材および液体ホーニング仕上げ材で
は、鋼板の反りかえりが大きく、ほうろう用フリットを
吹き付けるまでに至らなかった。
S304の2B仕上げ材に通常の電解脱脂・酸洗を施し
た後に本発明による電解処理を行ったサンプルと、2B
仕上げ材に通常の電解脱脂・酸洗を施したままのサンプ
ルを準備し、セラミックス塗装を施した後に耐食性試験
を行った。使用したセラミックス塗料およびその塗装方
法は実施例1と同じであるが、塗装前に加工は行ってい
ない。耐食性試験片はいずれも7×15cmで、端面は
露出したままとした。耐食性試験は、SST35℃×2
h→温風乾燥60℃×4h→BBT50℃×2hを1サ
イクルとして、これを200サイクル実施した。
接セラミックス塗料を塗布したサンプルでは、端面から
の腐食が著しく激しい塗膜剥離が生じたが、本発明によ
る粗面化処理を施した表面にセラミックス塗料を塗布し
たサンプルでは、塗膜の剥離が一切みられず、塗装後の
耐食性向上にも十分効果があることが認められた。
加工部においても高い密着性を有するオーステナイト系
ステンレス鋼板を安定して供給することが可能となっ
た。しかも本発明によれば、連続生産が可能な短い処理
時間で、薄ゲージ材にも適用可能な方法で無機系塗膜と
の密着性の高いステンレス鋼板を製造することができ
る。したがって、本発明は、無機系塗膜特有の機能を要
求される用途においても意匠性の高い塗装ステンレス鋼
板の適用を可能とし、塗装ステンレス鋼板の普及に寄与
するものである。
EM)写真を示す図。
EM)写真を示す図。
レス鋼板表面のピット形成過程を示す模式図。
レス鋼板について、セラミックス塗膜の密着性に及ぼす
球面状ピット開口部の平均径の影響を表すグラフ。
レス鋼板について、ほうろう塗膜の密着性に及ぼす球面
状ピット開口部の平均径の影響を表すグラフ。
して使用する塩化第二鉄水溶液の温度と濃度の適正範囲
を表すグラフ。
Claims (2)
- 【請求項1】 鋼板表面に球面状のピットが隙間なく形
成しており、これらピットの開口部の平均径D(μm)
とピットの平均深さH(μm)が、下記(1)式および
(2)式の関係を満足している無機系塗膜との密着性に
優れたオーステナイト系ステンレス鋼板。 1≦D≦5 -----(1) D/3≦H≦D/2 -----(2) - 【請求項2】 Fe3+を30〜120g/L含む塩化第
二鉄水溶液中で、アノード電解時の電流密度を1.0〜
10.0kA/m2、カソード電解時の電流密度を0.
5〜3.0kA/m2とした1〜10Hzの交番電解を
ステンレス鋼板に10〜120秒間施す、請求項1に記
載の無機系塗膜との密着性に優れたオーステナイト系ス
テンレス鋼板の製造方法。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
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Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
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JP2005350734A (ja) * | 2004-06-10 | 2005-12-22 | Nippon Steel & Sumikin Stainless Steel Corp | 塗装密着性の良好なフェライト系ステンレス鋼帯の製造方法 |
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1996
- 1996-03-11 JP JP08052896A patent/JP3664537B2/ja not_active Expired - Lifetime
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Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
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JP2005350734A (ja) * | 2004-06-10 | 2005-12-22 | Nippon Steel & Sumikin Stainless Steel Corp | 塗装密着性の良好なフェライト系ステンレス鋼帯の製造方法 |
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