JPH0927419A - 電気・機械運動変換磁気回路 - Google Patents

電気・機械運動変換磁気回路

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JPH0927419A
JPH0927419A JP20054995A JP20054995A JPH0927419A JP H0927419 A JPH0927419 A JP H0927419A JP 20054995 A JP20054995 A JP 20054995A JP 20054995 A JP20054995 A JP 20054995A JP H0927419 A JPH0927419 A JP H0927419A
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JP
Japan
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magnetic
phase
magnetic circuit
hard
nanocomposite
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Application number
JP20054995A
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English (en)
Inventor
Satoru Hirozawa
哲 広沢
Hirokazu Kanekiyo
裕和 金清
Seiichi Hosokawa
誠一 細川
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Hitachi Metals Ltd
Original Assignee
Sumitomo Special Metals Co Ltd
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Publication date
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 リコイル透磁率並びに保磁力にすぐれた永久
磁石を効果的に使用し、電気・機械運動変換磁気回路に
おいて、磁気特性の安定性にすぐれ、構成部品としての
充分な機械強度と高い寸法精度を有し、一段と機器の小
型化が達成できる構成。 【解決手段】 磁気回路の一部をバネなどにより弾性的
に運動する可動部として構成した電気・機械運動変換磁
気回路に、軟質磁性相の磁化が硬質磁性相の磁化と交換
相互作用により結合して外部減磁磁界の印加にともない
軟質磁性相内の磁化だけがこれに応答して可逆的に回転
するナノコンポジット磁性体を用いることにより、入力
電気信号の機械運動への変換能率を大幅に改善できる。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】この発明は、磁気回路の一部
をバネなどにより弾性的に運動する可動部として構成し
た電気・機械運動変換磁気回路に係り、リコイル透磁率
並びに保磁力にすぐれたナノコンポジット磁性体を用い
ることにより、磁気特性の安定性にすぐれ、構成部品と
しての充分な機械強度と高い寸法精度を有し、変換効率
にすぐれ機器の小型化が達成できる電気・機械運動変換
磁気回路に関する。
【0002】
【従来の技術】ブザーなど、入力信号に対し線形の応答
が必ずしも必要でない運動を交流または脈流電流によっ
て作り出す場合には、ボイスコイルを持った可動部で構
成する他、磁気回路の一部をバネなどにより弾性的に運
動する可動部として構成し、これを動かすことにより所
望の応答運動を作り出すことができる。この場合、永久
磁石を用いて磁束を発生させ、この磁束を可動部に導い
て可動部に磁気誘導によるバイアス力を働かせた状態を
作り、コイルにより可動部近傍の磁束を変調させて可動
部を運動させる磁気回路が用いられる。
【0003】かかる電気・機械運動変換磁気回路は、例
えば小型軽量化が求められている電子機器の発音体とし
て圧電素子と並んで広く用いられている。さらに具体的
にいえば、携帯電話の呼出音を発生させるためのブザー
には、従来、消費電力が小さいことから圧電素子が使わ
れていたが、最近では機器の小型化に対応できる電磁変
換式の本方式の磁気回路を用いたブザーが使われてい
る。
【0004】この磁気回路では磁気ギャップが可動部の
弾性的復元力と磁気力によるバイアス力とのバランスで
決まる構造であるため、そこに用いられる永久磁石材料
は磁気特性の安定性のほかに、構成部品としての充分な
機械強度と高い寸法精度を有することが求められる。従
って現在では射出成形したハードフェライトの樹脂結合
磁石がこの磁気回路に用いられている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】この電気・機械運動変
換磁気回路では、永久磁石を貫通する磁束量がコイルが
発生する磁束量の変化にともない絶えず変動することが
特徴であり、磁束と磁界は磁石の磁束対磁界(B−H)
曲線のマイナーループに沿って変動する。コイルによっ
て発生される変調磁界の振幅ΔHが一定とすると、マイ
ナーループの傾きΔB/μ0ΔH、すなわちリコイル透
磁率(μrec)が大きい方が大きな磁束量の変化ΔBを
得ることができると期待される。
【0006】上記のリコイル透磁率が大きく、かつ保磁
力HCBが大きな磁性材料が開発されれば、本方式の磁気
回路の性能、すなわち変換特性を改善でき、電子機器の
さらなる小型軽量化、省電力化に寄与できると考えられ
る。ところが、現在本方式の磁気回路に用いられている
永久磁石材料すなわちハードフェライトあるいは希土類
磁石のリコイル透磁率は1.0から1.2の範囲にあ
り、1.5を越えるものは知られていなかった。
【0007】一方、アルニコ磁石や鉄クロムコバルト磁
石のリコイル透磁率は6に達する大きな値が知られてい
るが、保磁力が小さすぎるため要求される性能を発揮す
るには磁気回路が大型にならざるを得ない上、金属磁石
であるため充分な精度に加工するための多くの工程を要
し、先の小型化の問題とともに実用されていない。
【0008】この発明は、ブザー、スピーカー、加振
器、地震計、電磁弁、流量調整弁、アクチュエーター、
リレーなどの用途で用い入られ、磁気回路の一部をバネ
などにより弾性的に運動する可動部として構成した電気
・機械運動変換磁気回路において、磁気特性の安定性に
すぐれ、構成部品としての充分な機械強度と高い寸法精
度を有し、一段と機器の小型化が達成できる構成を目的
とし、リコイル透磁率並びに保磁力にすぐれた永久磁石
を効果的に使用した構成からなる電気・機械運動変換磁
気回路の提供を目的としている。
【0009】
【課題を解決するための手段】発明者は、電気・機械運
動変換磁気回路の小型、軽量化ならびに効率の向上を目
的に最適な磁性材として、前述のごとく、高いリコイル
透磁率を有しかつ高保磁力であることが必要であること
に着目し、種々検討したところ、軟質磁性相の磁化が硬
質磁性相の磁化と粒子界面での交換相互作用により結合
して外部減磁磁界の印加にともない軟質磁性相内の磁化
だけがこれに応答して可逆的に回転するナノコンポジッ
ト磁性体が、リコイル透磁率が1.5から2.5と従来
の高保磁力磁石材料と比較して大きく、この磁性材料を
使用して、上述した磁気回路における可動部の強磁性体
がほぼ飽和しているか、あるいは、大部分の磁束が漏洩
せず可動部を通るようにすれば、入力電気信号の機械運
動への変換能率を大幅に改善可能であることを知見し、
この発明を完成した。
【0010】すなわち、この発明は、リコイル透磁率が
1.5以上で保磁力HCBが160kA/m(2kOe)
以上の硬質磁性体より発生した磁束にて所要空間に磁界
を発生させ、その磁界を磁気回路内に設けたコイルへ流
す電流にて変調可能に構成したことを特徴とする電気・
機械運動変換磁気回路である。
【0011】また、この発明は、上記の構成において、
磁気回路の可動部が軟質磁性体で構成されたこと、硬質
磁性体が平均結晶粒径50nm以下の軟質磁性相と硬質
磁性相とで構成される多相の金属組織を有するナノコン
ポジット磁性体を体積率で50%以上含み、結合剤とし
て樹脂または金属を用いたボンデッド磁石であること、
をそれぞれ特徴とする電気・機械運動変換磁気回路を併
せて提案する。
【0012】さらに、この発明は、上記の構成におい
て、ナノコンポジット磁性体を構成する軟質磁性相が体
心立方鉄およびホウ化鉄化合物を含み、硬質磁性相がN
2Fe14B型結晶構造を有し、かつ、組成式がRx(F
1-uCou100-x-yyzで表され、RはPr、N
d、Dyの1種または2種以上、MはAl、Si、V、
Cr、Mn、Ni、Cu、Zn、Gaの1種または2種
以上であって、組成を限定するx、y、z、v、uが下
記の範囲であることを特徴とする電気・機械運動変換磁
気回路を併せて提案する。 3at%≦x≦6at%、10at%≦y≦30at
%、0≦z≦7at%、0≦u≦0.5
【0013】この発明は、硬質磁性体により磁束を発生
し、特定の空間に磁界を発生させ、その磁界をコイルに
交流電流または変調された脈流電流を流すことにより変
調し、磁気回路の一部を構成する弾性運動する強磁性体
可動部を往復ないしは振動運動させるが、かかる磁気回
路の効率を大きく向上させるには、リコイル透磁率は少
なくとも1.5以上は必要であり、また、保磁力HCB
コイルで変調できる磁界の上限値を制限するパラメータ
ーとなり、160kA/m(2kOe)以上が必要であ
る。
【0014】すなわち、フェライト射出成形磁石の平均
的特性は磁気エネルギー積が1.2〜2MGOe、保磁
力HCBは2kOe程度、リコイル透磁率は1.0〜1.
2である。また、強磁性金属相の形状磁気異方性により
保磁力を発現させる合金磁石、例えばアルニコ、キュニ
フェ、鉄クロムコバルト磁石などはリコイル透磁率は高
いが保磁力が小さく、この発明の目的には使用できな
い。一方、結晶磁気異方性を利用し、単磁区粒子臨界径
近くまで結晶粒子を粉砕して保磁力を発現させる近代磁
石では、充分大きな保磁力は得られるが、正方向を向い
た磁化が真性保磁力に等しい減磁界で負方向に逆転する
磁化反転機構であるため、I−H曲線はメインループも
マイナーループもともに磁界軸にほぼ平行となり、リコ
イル透磁率は1よりも僅かに大きい程度であり、この発
明の目的には使用できない。
【0015】電気・機械運動変換磁気回路に使用する磁
束発生源には、発明者らが先に提案した軟質磁性相と硬
質磁性相とによって構成されるナノコンポジット磁性体
(特願平6−60324号、特願平6−60325号、
特願平6−74465号、特願平6−76543号)で
ある低希土類の鉄基永久磁石材料を使用することができ
る。この磁性体は、超急冷法で得た非晶質金属を熱処理
により結晶化して得られ、さらにこれを粉砕して粉末と
した後、樹脂と混合、成形して樹脂結合磁石として利用
するが、軟質磁性相の磁化が硬質磁性相の磁化と交換相
互作用により結合しており、外部減磁磁界の印可にとも
ない軟質磁性相内の磁化だけがこれに応答して可逆的に
回転するため、リコイル透磁率が1.5から2.5と従
来の高保磁力磁石材料と比較して大きいという特徴を持
っている。
【0016】かかる新規なナノコンポジット磁性体は、
軟質磁性相と硬質磁性相との少なくとも2相からなる多
相組織の磁性体が単に異なる保磁力を持った強磁性体の
混合物に特有な2段階の減磁挙動を示さずに、あたかも
単一の硬質磁性相からなる磁性体のような滑らかな減磁
曲線を有するためにはそれぞれの相の原子磁気モーメン
トの向きが揃った領域の大きさの指標である交換結合距
離(Lex)の程度にそれぞれの相の結晶粒径を小さく
し、しかも軟質磁性相と硬質磁性相との間の交換結合を
確保するために非磁性の粒界相を挟まない結晶粒界を持
った金属組織を作る必要がある。
【0017】交換結合距離Lexの大きさは体心立方鉄
の場合約20nmの程度であり、両側を硬質磁性相で挟
まれた体心立方鉄は20nm×2=40nm程度の大き
さであれば硬質磁性相の磁化の方向と同じ向きに磁化を
保つことができるが、現実的には、平均粒径が50nm
程度であっても、この発明の磁気回路の目的に適合する
リコイル透磁率と保磁力が得られるので、平均結晶粒径
を50nm以下に限定する。
【0018】ナノコンポジット磁性体を工業的に安定し
て製造するには、それを構成する軟質磁性相並びに硬質
磁性相の選択が重要な技術課題となる。すなわち、両者
は熱平衡的ないしは準安定的に共存し得る相関係になけ
ればならず、しかも結晶粒成長を起こし難いことが必要
である。軟質磁性相として磁化の高い体心立方鉄あるい
はその鉄の一部をCoで置換してさらに磁化を高めたC
oを30at%程度含む体心立方構造のFe−Co合金
相を用いることが理想的であると想像できる。それらと
共存し得る硬質磁性相としてはNd2Fe14B型化合物
ないしSm2Fe17Nが考えられるが、この発明で用い
る硬質磁性ナノコンポジット磁性材料の相構成は、軟質
磁性相として体心立方鉄及び強磁性ホウ化鉄化合物を含
み、硬質磁性相としてNd2Fe14B型化合物の組み合
せを基本とする系に限定する。
【0019】すなわち、Sm2Fe17Nは窒化処理とい
う工程が必要であり、原料もSmがNdに対して高価で
あるほか蒸気圧が高温で高くなり、溶解時の組成の制御
がより煩雑になるなどの問題点があり、Smの高温での
蒸発に関しては機械的合金化(メカニカルアロイング)
法により鉄とサマリウムとを超微細に混合、合金化する
方法が提案されるが、大量の非常に活性な超微細金属粉
末を貯蔵し取り扱うことに伴う危険性を回避するために
厳密な雰囲気制御を課する必要性を有するために、現状
では工業的量産法としては確立されていない。
【0020】ナノコンポジット磁性体の具体的製造方法
としては、超急冷法などによって作製される非晶質金属
を結晶化させる方法が提案できるが、その組成は原料金
属の価格の観点から鉄を多く含み大きなシングルイオン
結晶磁気異方性を有する希土類元素を含むものが望まし
い。鉄基の低希土類合金は希土類を多く含有する合金に
比べて非晶質化することがはるかに困難であり、非晶質
化を促進するためにはホウ素、炭素、リンなどの非晶質
形成促進元素を添加する必要がある。
【0021】発明者は希土類RとしてNdまたはPrを
主体とする場合に希土類3〜6原子パーセント(at
%)の範囲でホウ素を10〜30at%添加すると目的
とする磁石材料が超急冷法とそれに続く結晶熱処理とを
経由することによって安定的に得られること、さらに、
Rの構成成分としてDyを含む場合に真性保磁力の効果
的な増加が可能であることを知見した。
【0022】ホウ素(B)を多量に添加すると結晶化の
際に体心立方鉄の他に鉄のホウ化物が生成するが、後者
は良好な軟質磁性相として許容できる磁気的性質を有し
ている。硬質磁性相としてはNd2Fe14B型化合物が
析出する。従って、この発明では構成相を体心立方鉄と
ホウ化鉄並びにNd2Fe14B型化合物に限定する。B
は10at%〜30at%とするが、これは、3〜6a
t%の希土類を含む鉄−希土類−ホウ素系合金におい
て、B量が10at%未満では、アモルファス形成能が
低くなりアモルファス相を得ることができず、粗大なF
e相が晶出して十分な磁石特性が得られなくなり、ま
た、B量が30at%を越えると、Nd2Fe14B相が
晶出せず硬質磁性が得られないためである。さらに好ま
しい範囲は15〜20at%であり、この範囲において
はFe3B相が晶出して高残留磁束密度(Br)と高保
磁力(iHc)を備えた材料が得られる。
【0023】RとしてLaおよびCeは磁性を担わない
ので好ましくなく、重希土類は磁気モーメントがNdと
は逆方向に向く性質からその使用を限定する必要があ
る。重希土類元素のうちTbとHoは、Dyと同じく真
性保磁力を増大させる効果があるが、自然存在比が少な
く生産量も僅かであり、高価であるため選択しない。S
m、Er、Tm、Ybは、2次のスティーブンス因子が
Pr、Nd、Tb、Dy、Hoなどとは逆符号であるた
めシングルイオン結晶磁気異方性が逆符号となり、Nd
2Fe14B型化合物の結晶磁気異方性への寄与がNd等
とは逆符号となり互いに相殺するので、これらの希土類
の添加は好ましくない。従ってRとしてはPr、Nd、
Dyに限定する。
【0024】希土類RとしてPr、Nd、Dyの少なく
とも1種を選択し、R濃度が3at%未満では2kOe
よりも高いHcBが得られず、6at%を越えると構成
相が変化して上記の体心立方鉄、ホウ化鉄、Nd2Fe
14B型化合物の組み合わせによるナノコンポジット磁性
体の製造が困難になるため、その範囲を3〜6at%に
限定する。
【0025】さらに、工業的スケールでの量産を容易に
し、磁気特性、わけても真性保磁力を高めるためにA
l、Si、V、Cr、Mn、Ni、Cu、Zn、Gaの
7at%までの添加が効果的である。Mの添加量が7a
t%を越えると磁化が低下すると共に減磁曲線の角型性
が著しく損なわれるので、Mの添加量上限は7at%に
限定する。MはFeとCoとの総和を置換するように添
加する。
【0026】鉄Feは、上記組成の残余を占め、Feの
一部をコバルト(Co)で50%以下を置換することは
何等磁気特性を損なわず、キューリー温度の増加による
磁気特性の熱的安定性の向上など好ましい結果を生ずる
が、置換量が50%を越えると磁化が無添加の場合より
も減少するので、CoによるFeの置換率は最高50%
に限定する。Coは上記構成相の中で鉄の一部を置換し
て存在し、その格子常数を若干小さくするが、上記組成
範囲内では構成相の結晶構造を変えることはない。
【0027】ナノコンポジット磁性体は、超急冷法によ
り製造される上記組成の非晶質合金を熱処理して結晶化
させ、さらに粉砕して粉末となし、樹脂や金属などの結
合剤より結合してボンデッド磁石として使用可能であ
る。さらに、射出成形法を採用することにより、寸法精
度に優れた硬質磁性体構造部品を容易に作製することが
できるため、この発明による磁気回路は容易に工業的生
産が可能であり、例えば、携帯電子機器の発音体、スピ
ーカー、加振器、地震計、電磁弁、流量調整弁、アクチ
ュエーター、リレーなどの用途等に広く応用可能なもの
である。
【0028】上記の組成範囲内で好適な製造条件により
製造した磁石粉末を使用した場合、樹脂結合磁石での磁
気特性は、(Br、HcJ)平面上で(0.95T、2
20kA/m)、(0.6T、610kA/m)、
(0.2T、620kA/m)、(0.5T、220k
A/m)で囲まれる範囲におおむね含まれる。磁気特性
は主として組成、とりわけ希土類元素Rの濃度xと添加
元素Mの濃度zおよび磁石粉末と結合剤(すなわち樹脂
または金属)との体積比率に依存する。すなわち、xお
よびzが小さいほどBrは大きくなり、HcJは小さく
なる。
【0029】磁性体に占める磁粉の比率が大きいほどB
rは大きいが、磁粉の比率には磁粉粒度にともなう制約
があり、磁粉粒度が小さいほど充填可能な磁粉比率も低
下する傾向が磁粉粒度100μm以下では顕著に認めら
れる。多くの場合、射出成形機のゲート口径により使用
可能な磁粉の最大粒度が決定され、10〜60μmの範
囲で最大粒度を制約されることもあるので、要求に合わ
せて粒度範囲を適時選択する必要がある。しかし、磁粉
の充填体積率は50%よりも高くないと現在用いられて
いるハードフェライト射出成形ボンデッド磁石に比べて
高い磁化が得られない。従って、ボンデッド磁石として
用いる場合には、ナノコンポジット磁性体を体積率で5
0%以上含むことが必要である。
【0030】
【発明の実施の形態】この発明の作用を図面に基づいて
詳述する。図1はこの発明による電気・機械運動変換磁
気回路の一例を示す説明図である。図2は永久磁石の減
磁曲線を示すグラフである。電気・機械運動変換磁気回
路は、図1に示すように磁気回路はナノコンポジット磁
性体1を起磁源とし強磁性体から成り弾性的に運動でき
る可動部2を磁気回路の磁路の一部分として含み、磁気
回路の磁路の他の部分を構成する強磁性体3と可動部2
との間にギャップが存在し、更にギャップの磁束密度を
変調するためのコイル4とで構成される。尚、可動部で
は、強磁性体がほぼ飽和しているが、外部の漏えい磁束
は少ないものとする。
【0031】コイルに電流を流さない状態ではギャップ
に蓄えられている静磁エネルギーと可動部2の弾性エネ
ルギーとの和を最小にするように可動部2が移動して平
衡位置で停止する。ナノコンポジット磁性体の減磁曲線
を図2に示すと、平衡状態のBとHの値はそれぞれ図中
のB0とH0に対応する。次にコイル4に電流を流して永
久磁石の磁束と逆方向の磁界を発生させると、ギャップ
の磁束密度は減少して静磁エネルギーは減少し、可動部
の平衡点は静磁エネルギーと釣り合う弾性エネルギーを
減じるように運動してギャップは広がる。この時の磁性
体中のBとHの値はそれぞれ図2のB1とH1とに移動す
る。
【0032】逆に、コイルにナノコンポジット磁性体の
磁束と同一方向に磁界を発生させるように電流を流す
と、ギャップは狭まる。磁石中のBとHはそれぞれB2
とH2とに移動する。コイルの動きは変調磁界ΔH=H0
−H1(ここでi=1または2)を発生させることであ
り、磁性体材料のリコイル透磁率が大きいほど、同じΔ
Hに対して大きな磁束変化ΔB=B0−B1(ここでi=
1または2)を生じさせることができ、従って大きな可
動部の運動を発生させることができる。すなわち、可動
部の運動振幅の入力電流に対する変換効率の優れた磁気
回路である。
【0033】前述の選定された硬質磁性材料は、バイン
ダである樹脂または低融点金属と混合して金型中への圧
縮成形法または射出成形法により直接磁気部品として製
造されるが、その場合、磁気回路の構造部品として磁気
ギャップに蓄えられる静磁エネルギーにより発生する可
動部と固定極との吸引力を保持する機能をも同時に担う
ことができるし、あるいは磁気回路の電子回路基板への
実装の際に高温に加熱されてバインダが軟化し機械強度
が低下して磁気的吸引力を保持する機能が果たせない場
合には、単に起磁源としてのみの機能を負わせて他に支
持部品を設けることも可能である。
【0034】弾性的に運動する可動部は磁気回路の一部
を構成し、運動を可能にするために適当な空間をその周
囲に設けることが必要である。この空間は磁気ギャップ
として機能し、そこに蓄えられる静磁エネルギーをコイ
ルに流す電流により変化させることにより可動部の運動
が誘起される。磁気ギャップの大きさは可動部の振幅を
下回らない範囲でできるだけ小さいことが磁気回路の小
型化と能率向上のために好ましい。すなわち、磁気ギャ
ップが小さい方が磁石内部のパーミアンス係数(−B/
H)が大きくなり、磁石厚みを薄く設計することが可能
になる。
【0035】可動部を弾性的に運動させるためには、可
動部自身を弾性係数の高い板バネ形状にするか、または
磁気回路外にバネを設けて可動部と結合する方法が可能
である。可動部の質量を小さくし、また、この部分が磁
気的に飽和しないようにすることが変換能率の向上につ
ながり、そのためには、前者の方法ではできるだけ飽和
磁束密度の高い軟質磁性材料を板状に加工したものが好
ましい。尚、軟質磁性材料としては、パーメンジュール
等のFe−Co系合金、ケイ素鋼板、バネ鋼などが好ま
しい。
【0036】コイルは、その発生する磁界がコイル中心
軸上で磁気回路の磁束と平衡になるように磁気回路の周
囲に巻かれる。例えば小型ブザーの場合、組立の容易さ
を考慮して、硬質磁性体を中央コアが両端コアより短い
E型コアを対照軸の回りに回転した回転体形状に成形
し、可動部を珪素鋼板の圧延薄板を打ち抜いた円盤と
し、コイルを中央コアに挿入した後、この円盤を装着し
て磁気回路を構成すると良い。また、用途や磁気回路に
応じて、ナノコンポジット磁性体にコイルを配置するこ
とも可能である。
【0037】この発明による磁気回路は、上述の種々構
成がブザー、スピーカー、加振器、地震計、電磁弁、流
量調整弁、アクチュエーター、リレーなどの用途に用い
られる場合に、それぞれ最適な回路構成を採用する際に
種々変更されるが、いずれも軟質磁性相の磁化が硬質磁
性相の磁化と交換相互作用により結合しており、外部減
磁磁界の印加にともない軟質磁性相内の磁化だけがこれ
に応答して可逆的に回転するというこの発明の特徴を有
効に利用するよう構成されることが望ましい。
【0038】
【実施例】
実施例1 純度99%以上の原料金属を用いて、Nd3.5at
%、Dy1.0at%、Fe73at%、B18.5a
t%、Co3.0at%、Ga1.0at%なるナノコ
ンポジット磁石粉末を、超急冷による非晶質合金の作
製、結晶化熱処理、微粉砕の各工程を経て作製した。粒
度25〜300μmの範囲でこの磁粉の磁気特性は、
(BH)max=110kJ/m3、Br=1.07
T、HCB=310kA/mであった。
【0039】この粉末73wt%に対してナイロン12
を27wt%の割合で混合し、230℃で混練した後、
100℃の金型内に射出成形してφ2mm×2mmの円
柱に成形した。このナノコンポジット磁石は磁気的には
等方性で、その磁気特性は(BH)max=17kJ/
3、Br=0.30T、HCB=170kA/mであっ
た。リコイル透磁率は−200kA/mから0kA/m
の磁界範囲で2.2であった。尚、リコイル透磁率によ
る動作の違いを立証するため、磁石特性はあえて、下記
の比較例とほぼ同等に設定した。
【0040】前述の図1に示す磁気回路を可動部には厚
さ0.1mmのパーメンジュールを用い、ヨーク部分は
低炭素鋼を用いて作製した。コイルは空心時に中心に8
0kA/mの磁界を発生できるようにφ0.05mmの
絶縁被覆付き銅線を用いてヨーク部分に巻き付けた。こ
の磁気回路に上記のナノコンポジット磁石を装着し、コ
イルに2kHzの交流電流を流し、可動鉄片の振動振幅
を写真撮影により測定した。
【0041】比較例1 市販の射出成形用ハードフェライトコンパウンドを用い
て射出成形を磁界中で行い、得られた磁石は異方性でそ
の磁気特性は(BH)max=15kJ/m3、Br=
0.28T、HCB=180kA/m、リコイル透磁率は
1.2であった。ギャップでの磁束量が実施例1とほぼ
等しくなるようにφ2.3mm×2mmの磁石を成形
し、図1の磁気回路に装着し、コイルに2kHzの交流
電流を流し、可動鉄片の振動振幅を写真撮影により測定
した。
【0042】実施例の磁気回路の振幅は比較例の磁気回
路と比べて、同一の入力に対してより大きな応答(+2
20%)が得られた。したがって、比較例と同一の振幅
で良い場合、実施例の磁気回路の小型化(−50%)が
可能である。
【0043】実施例2 実施例1と同じ磁粉を用い、磁粉90wt%に対しナイ
ロン12を10wt%の割合で混練し、外径8mm、内
径6.4mm、高さ0.69mmのリング磁石を作製し
た。この磁石の磁気特性は、Br=0.59T、HcB
=170kA/m、(BH)max=42kJ/m3
あった。この磁石をリング軸方向に着磁した後、ひとつ
の磁極の側に直径1.2mm、高さ0.68mmの軟鉄
製磁極片を中心に固定した直径が8mm、厚みが0.4
mmの軟鉄製円盤を磁石と磁極の中心線が一致するよう
に固定し、さらに磁極片に直径0.045mmの銅線で
作製した50ターンのコイルを取付け、もうひとつの磁
極の側に厚さ0.33mmのパーメンジュール製の円板
を取付け、電磁型ブザーを作製した。このブザーの音響
的共振周波数である2.2kHz、10mWのパルス波
を入力し、音圧を測定したところ、90dBであった。
【0044】比較例2 比較例1と同じ異方性フェライト射出成形磁石を外径8
mm、内径4mm、高さ1mmのリング磁石に成形し、
軸方向に着磁した。中心の磁極片の高さが0.99mm
であること以外は実施例2と同じ円板をひとつの磁極に
取付け、コイル、振動板も同一のものを取り付けて電磁
型ブザーを作製した。このブザーに2.2kHz、10
mWのパルス波を入力したときの音圧は実施例と同一条
件で測定した場合、87dBであった。
【0045】従って、本発明に従えば、磁石の体積を約
1/3にでき、磁気回路の厚みを約70%に小型化でき
る。さらに、リコイル透磁率が大きいので、音圧を2倍
に高めることができる。また、リング磁石の内径が大き
く設計できるので、ターン数の大きいコイルを巻くこと
もでき、さらに音圧を高めることも可能である。
【0046】
【発明の効果】この発明は、磁気回路の一部をバネなど
により弾性的に運動する可動部として構成した電気・機
械運動変換磁気回路に係り、リコイル透磁率並びに保磁
力にすぐれたナノコンポジット磁性体を用いることによ
り、磁気特性の安定性にすぐれ、構成部品としての充分
な機械強度と高い寸法精度を有し、一段と機器の小型化
が達成できる、ブザー、スピーカー、加振器、地震計、
電磁弁、流量調整弁、アクチュエーター、リレーなどの
電気・機械運動変換磁気回路の用途で、より小型、高効
率化が可能になる。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明による電気・機械運動変換磁気回路の
一例を示す説明図である。
【図2】永久磁石の減磁曲線を示すグラフである。
【符号の説明】 1 ナノコンポジット磁性体 2 可動部 3 強磁性体 4 コイル

Claims (4)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 リコイル透磁率が1.5以上で保磁力H
    CBが160kA/m以上の硬質磁性体と、弾性的に運動
    可能な可動部と、コイルとを含む磁気回路であって、硬
    質磁性体と可動部との間に形成された所定空間に、硬質
    磁性体より発生した磁束を導いて磁界を発生させ、該磁
    界をコイルへ流す電流にて変調可能に構成したことを特
    徴とする電気・機械運動変換磁気回路。
  2. 【請求項2】 請求項1において、可動部が軟質磁性体
    で構成されたことを特徴とする電気・機械運動変換磁気
    回路。
  3. 【請求項3】 請求項1において、硬質磁性体が平均結
    晶粒径50μm以下の軟質磁性相と硬質磁性相とで構成
    される多相の金属組織を有するナノコンポジット磁性体
    であることを特徴とする電気・機械運動変換磁気回路。
  4. 【請求項4】 請求項3において、ナノコンポジット磁
    性体を構成する軟質磁性相が、体心立方鉄およびホウ化
    鉄化合物を含み、硬質磁性相がNd2Fe14B型結晶構
    造を有し、かつ、組成式がRx(Fe1-uCou100-x-y
    yzで表され、RはPr、Nd、Dyの1種または2
    種以上、MはAl、Si、V、Cr、Mn、Ni、C
    u、Zn、Gaの1種または2種以上であって、組成を
    限定するx、y、z、uが下記の範囲であることを特徴
    とする電気・機械運動変換磁気回路。 3at%≦x≦6at%、10at%≦y≦30at
    %、0≦z≦7at%、0≦u≦0.5
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Cited By (2)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2003181376A (ja) * 2001-12-21 2003-07-02 Matsushita Electric Ind Co Ltd 振動リニアアクチュエータ
JP2007090349A (ja) * 2006-12-27 2007-04-12 Matsushita Electric Ind Co Ltd 振動リニアアクチュエータ

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