JPH09267652A - 4輪駆動車用駆動装置 - Google Patents

4輪駆動車用駆動装置

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JPH09267652A
JPH09267652A JP8034896A JP8034896A JPH09267652A JP H09267652 A JPH09267652 A JP H09267652A JP 8034896 A JP8034896 A JP 8034896A JP 8034896 A JP8034896 A JP 8034896A JP H09267652 A JPH09267652 A JP H09267652A
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transmission
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gear
engagement element
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Toshio Kobayashi
利雄 小林
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Abstract

(57)【要約】 【目的】 コンパクトで充分な居住空間及びクラッシュ
ストローク、作業空間が確保でき、かつ構成の簡素化が
得られる4輪駆動車用駆動装置を提供する。 【構成】 縦置きエンジン10、トルクコンバータ1
3、ベルト式無段変速機20を順次連結し、エンジン1
0のクランク軸11に対して平行配置するフロントドラ
イブ軸51及びリヤドライブ軸52、フロントドライブ
軸51にサンギヤ56が結合されたダブルピニオン式プ
ラネタリギヤ55、第1、第2、第3、第4、第5の各
多板クラッチ68、78、84、93、102を有し、
各多板クラッチを選択的に作動せしめて変速機20から
の出力をフロントドライブ軸51及びリヤドライブ軸5
2に動力配分及び前後進切換して動力伝達する。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、縦置きエンジンに
用いられる4輪駆動車用駆動装置に関する。
【0002】
【従来の技術】従来、エンジンを縦置き配置した無段変
速機付4輪駆動車の駆動装置に関しては特開平2−15
0539号公報の先行技術がある。この先行技術には、
エンジン、トルクコンバータ、1組のダブルピニオン式
プラネタリギヤを具備する前後進切換装置及びベルト式
無段変速機を車体前後方向に同軸上に設け、無段変速機
のセカンダリ軸の後部にもう1組のダブルピニオン式プ
ラネタリギヤを具備する減速装置を同軸上に設け、この
減速装置からリヤディファレンシャル装置に、また無段
変速機のセカンダリ軸の前方を減速手段を介してフロン
トディファレンシャル装置に各々伝動構成することが示
されている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】しかし、上記先行技術
のものにあっては、縦置きに配置されるエンジンに、こ
のエンジンのクランクシャフトと同軸上にトルクコンバ
ータ、前後進切換装置、ベルト式無段変速機が設けら
れ、更にベルト式無段変速機の後部に減速機が設けら
れ、これらが一体構成されたトランスミッションケース
が接合されることから、駆動装置、特にトランスミッシ
ョンケース全長やセカンダリプーリ後端部が突出して前
後方向に長大となり、この大きなトランスミッションケ
ースの後部が車室下部に形成されるトンネル内に大きく
張り出した状態でエンジンルーム内に収容設置される。
トランスミッションケースの張り出しに伴ってトンネル
が車室内に大きく張り出し、かつエンジンルームと車室
とを区画するトーボードが車室側に押しやられて車室内
の居住空間が制限されて居住性に影響を及ぼすととも
に、トランスミッションケースとトーボードとが接近配
置され、前面衝突時のクラッシュストロークを充分に確
保しようとすると更に居住性に影響を与え、またエンジ
ンルーム内の作業空間が得難く、トランスミッション脱
着時や整備等の円滑な作業が妨げられるおそれがある。
【0004】一方前後進切換装置及び減速装置に各々別
個にダブルピニオン式プラネタリギヤを設けることから
構造及びそれらを制御する制御装置が複雑になり、コス
トの高騰を招く等の不具合がある。
【0005】また、同一形状のエンジンルーム構造内に
ベルト式無段変速機、手動変速機械(マニュアルトラン
スミッション、MT)及び自動変速機(オートマッチク
トランスミッション、AT)等との車載互換性を有する
ことが望ましく、比較的コンパクトに設計可能な手動変
速機と全長寸法やトランスミッションケース外周寸法、
所謂胴廻り寸法を略同一にすれば車載搭載の支持部材や
排気系の共用化が可能になる。
【0006】従って、本発明の目的は、駆動装置、特に
トランスミッションケースの車体前後方向の短縮を図
り、充分な居住空間及びクラッシュストローク、トラン
スミッション脱着時等の作業空間を確保しつつ従来のエ
ンジンルームに搭載可能でしかも、構造及びその制御装
置の簡素化が得られる4輪駆動車用駆動装置を提供する
ことにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成する本発
明による4輪駆動車用駆動装置は、縦置きエンジンと、
このエンジンからの出力が入力される変速機と、前記エ
ンジンのクランク軸に対して各々平行配置されて一方の
ディファレンシャル装置及び他方のディファレンシャル
装置に各々動力伝達する第1及び第2のドライブ軸と、
前記変速機からの入力を選択的に所定の比率で動力配分
及び前後進切換して第1及び第2のドライブ軸に動力伝
達するダブルピニオン式プラネタリギヤとを有すること
を特徴とするものである。
【0008】また上記目的を達成する本発明による他の
4輪駆動車用駆動装置は、縦置きエンジンと、このエン
ジンからの出力が入力される変速機と、前記エンジンの
クランク軸に対して各々平行配置されて一方のディファ
レンシャル装置及び他方のディファレンシャル装置に各
々動力伝達する第1及び第2のドライブ軸と、ダブルピ
ニオン式プラネタリギヤと、このプラネタリギヤのリン
グギヤ及びキャリヤに変速機からの出力を選択的に動力
伝達する入力切換手段と、前記プラネタリギヤのサンギ
ヤからの出力を第1のドライブ軸に動力伝達する手段
と、前記プラネタリギヤのキャリヤからの出力を第2の
ドライブ軸に選択的に動力伝達する第3の摩擦係合要素
と、第1のドライブ軸と第2のドライブ軸との間を選択
的に動力伝達する第4の摩擦係合要素と、プラネタリギ
ヤのリングギヤ回転を選択的に係止する第5の摩擦係合
要素とを有し、上記入力切換手段及び各摩擦係合要素を
選択的に作動せしめて前記変速機からの入力を前記プラ
ネタリギヤを介して所定の比率で動力配分及び前後進切
換して第1及び第2のドライブ軸に動力伝達することを
特徴とするものであり、前進段は、前記入力切換手段が
変速機からの出力をリングギヤへ動力伝達状態であっ
て、第5の摩擦係合要素が解放したリングギヤ回転許容
状態でありダブルピニオン式プラネタリギヤがキャリヤ
とサンギヤに所定の比率で動力配分するセンタディファ
レンシャル装置として機能し、第3の摩擦係合要素が動
力伝達状態にあり、第4の摩擦係合要素が走行状態に基
づいて伝達トルクを可変制御して動力伝達し、かつ後退
段において前記入力切換手段が変速機からの出力をキャ
リヤへ動力伝達状態であって、第5の摩擦係合要素が締
結してリングギヤ回転係止状態であり第3の摩擦係合要
素が解放状態で、ダブルピニオン式プラネタリギヤが変
速動力をサンギヤに出力し、第4の摩擦係合要素が走行
状態に基づいて伝達トルクを可変制御して動力伝達する
ものである。
【0009】
【発明の実施の形態】以下、本発明の実施の形態を図面
に基づいて説明する。
【0010】図1において、本発明が適用される4輪駆
動車用駆動装置としてベルト式無段変速機付4輪駆動車
用駆動装置の駆動系について説明する。縦置きエンジン
に接合される第1のケース1、この第1のケース1の後
方に位置して後述するベルト式無段変速機20を収容す
る第2のケース2、この第2のケース2の後方に位置し
てトランスファユニット50を収容する第3のケース3
及びこの第3のケース3の後方に位置してトランスファ
ユニット50からの出力を後輪へ伝達する動力伝達機構
を収容する第4のケース4が順次接合し、第2のケース
2の下方に区画形成されてフロントディファレンシャル
装置30を収容する第5のケース5が接合されてトラン
スミッションケース6が形成され、トランスミッション
ケース6の下部にはオイルパンが取付けられる。
【0011】符号10は縦置きエンジンであり、このエ
ンジン10のクランク軸11が第1のケース1内部のロ
ックアップクラッチ12を備えたトルクコンバータ13
に連結し、トルクコンバータ13からの入力軸14が第
2のケース2内部に配置されるベルト式無段変速機20
のプライマリ軸21に入力する。トルクコンバータ13
からの入力軸14及びプライマリ軸21は、エンジン1
0のクランク軸11に対して同軸上に配置され、トラン
スミッションケース6にベアリングを介して回転可能に
支持される。
【0012】無段変速機20は、プライマリ軸21に対
してセカンダリ軸22がその側方に平行に配置され、プ
ライマリ軸21、セカンダリ軸22に各々プライマリプ
ーリ23、セカンダリプーリ24がプライマリシリンダ
26、セカンダリシリンダ27によりプーリ間隙を可変
にして設けられ、プライマリプーリ23、セカンダリプ
ーリ24間に駆動ベルト25が巻装される。そして油圧
制御系によりプライマリプーリ23、セカンダリプーリ
24のプーリ間隙を変えることにより駆動ベルト25の
プライマリプーリ23、セカンダリプーリ24に対する
巻付け径の比率を変えて無段変速した動力をセカンダリ
軸22に出力するように構成される。
【0013】セカンダリ軸22にはプライマリリダクシ
ョンギヤ28が設けられ、プライマリリダクションギヤ
28に噛合うプライマリドリブンギヤ29を介して第3
のケース3及び第4のケース4内部に配置されるトラン
スファユニット50に入力され、トランスファユニット
50によって第5のケース5内の一方のディファレンシ
ャル装置、例えばフロントディファレンシャル装置30
を介して前輪に伝動構成する一方、プロペラ軸37及び
他方のディファレンシャル装置、例えばリヤディファレ
ンシャル装置38等を介して後輪に伝動構成される。
【0014】フロントディファレンシャル装置30は、
図2に要部断面図を示し、図3にトランスミッションケ
ース6を省略した要部斜視図を示すように、第5のケー
ス5内でデフケース本体31aと、このデフケース本体
31aと一体形成された略円筒状のクラウンギヤ取付部
材31bとからなるデフケース31が複数のベアリング
32を介して車体左右方向に向けて第5のケース5に回
転自在に設置され、クラウンギヤ取付部材31bのフラ
ンジ部31cに取付けたクラウンギヤ33に後述するフ
ロントドライブ軸51が交差して噛合っている。
【0015】一方デフケース本体31a内にはピニオン
軸34aにより一対のピニオン34bが設けられ、両ピ
ニオン34bに噛合う左右のサイドギヤ34c、34d
によってディファレンシャルギヤ34を構成している。
一方のサイドギヤ34cに連結する駆動軸35は、デフ
ケース本体31aからクラウンギヤ取付部材31b内を
貫通して等速継手、アクスル軸等を介して一方の前車輪
に動力伝達し、他方のサイドギヤ34dに連結する駆動
軸36はデフケース本体31aから突出して等速継手、
アクスル軸等を介して他方の前車輪に動力伝達する。
【0016】そして、無段変速機20の下方において平
面視プライマリ軸21とセカンダリ軸22との間にクラ
ウンギヤ33が位置し、プライマリ軸21を隔ててクラ
ウンギヤ33とデフケース本体31aが各々左右に分離
配置されるよう第5のケース5内に設置される。従って
このクラウンギヤ33はディファレンシャルギヤを収容
するデフケース外周に取付形成される従来のクラウンギ
ヤに比べて小径に形成でき、フロントディファレンシャ
ル装置30全体が小径に構成され、かつクラウンギヤ3
3とデフケース本体31aとの間の小径となるデフケー
ス31の中央部をプライマリ軸21と対向配置すること
により無段変速機20とフロントディファレンシャル装
置30とを近接配置することが可能に構成される。な
お、第2のケース2内にはトルクコンバータ13のステ
ータ軸15と連結して常に駆動されるオイルポンプ16
が設けられ、オイルポンプ16により常時油圧を発生し
てトルクコンバータ13等に給油し、無段変速機20の
油圧制御を可能にし、かつ車速センサ41、スロットル
センサ42、シフトスイッチ43、前輪回転数センサ4
4、後輪回転数センサ45、舵角センサ46等からの各
信号に基づいて油圧制御回路47によって制御してトラ
ンスファユニット50の油圧制御を可能にしている。
【0017】次に図4及び図4の要部拡大を示す図5に
よってトランスファユニット50の部分について述べ
る。
【0018】トランスファユニット50は、エンジン1
0のクランク軸11、入力軸14、プライマリ軸21及
びセカンダリ軸22等に対して平行配置される第1のド
ライブ軸となるフロントドライブ軸51及び第2のドラ
イブ軸となるリヤドライブ軸52を有している。
【0019】互に平行配置されるクランク軸11、プラ
イマリ軸21、セカンダリ軸22、フロントドライブ軸
51及びリヤドライブ軸52等は、図4における矢視A
方向からの配置を示す図6に示すよう、略車体幅中心軸
上にクランク軸11の回転軸芯11a、及びプライマリ
軸21が車体前後方向に同軸上に位置し、セカンダリ軸
22とプライマリ軸21が略同一高さで側方に平行配置
されてプライマリプーリ23とセカンダリプーリ24と
が略同一高さで配置される。そして前記のようにフロン
トドライブ軸51が平面視プライマリ軸21とセカンダ
リ軸22との間で、かつ下方に配置されて前記クラウン
ギヤ33に噛合することにより無段変速機20との接合
性を良好にして全体の上下方向寸法を抑えてコンパクト
化を図っている。
【0020】またリヤドライブ軸52をプライマリ軸2
1と平面視同軸上でプライマリ軸21に対して下方位置
に配置することによりトンネル49内への収納性を良好
にし、手動変速機、自動変速機搭載車体との互換性の向
上を図っている。
【0021】フロントドライブ軸51の先端にフロント
ディファレンシャル装置30のクラウンギヤ33と常時
噛み合うピニオン部51aが形成され、先端部はテーパ
ベアリング51eを介在して、後端部はニードルベアリ
ング51fを介在して各々トランスミッションケース6
の第3のケース3及び第4のケース4に回転自在に軸支
されている。
【0022】またフロントドライブ軸51の軸方向中央
部外周にはダブルピニオン式プラネタリギヤ55のサン
ギヤ56が噛合するスプライン51bが、軸方向後端部
外周には第4の摩擦係合要素となる多板クラッチ93の
ドラム94が嵌合するスプライン51cが各々形成さ
れ、かつ一端が後端に開孔する中空状で他端が後述する
オイル室65A、ラジアルベアリング61b及びニード
ルベアリング82bに対応して各々開孔する油路51d
が形成されている。
【0023】更にピニオン部51aとフロントドライブ
軸51に螺合するロックナット51gとによりテーパベ
アリング51eのインナレースを挾持してフロントドラ
イブ軸51の軸方向の移動を防止している。
【0024】一方プロペラ軸37に自在継手を介して一
端が連結するリヤドライブ軸52の他端にはトランスフ
ァドリブンギヤ52aが形成され、複数のボールベアリ
ング52bによってトランスミッションケース6の第3
のケース3及び第4のケース4に回転自在に軸支されて
いる。
【0025】フロントドライブ軸51の軸方向中央部外
周に形成されるスプライン51bに嵌合して結合される
ダブルピニオン式プラネタリギヤ55は、スプライン5
1bにスプライン結合されるサンギヤ56と、リングギ
ヤ57と、サンギヤ56及びリングギヤ57に各々が噛
み合いかつ互に噛み合う第1及び第2のピニオン58、
59と、第1及び第2のピニオン58、59をニードル
ベアリング60aを介して回転自在に支持するキャリヤ
60によって構成され、リングギヤ57に入力する動力
をサンギヤ56とリングギヤ57との歯車諸元によるト
ルク配分でサンギヤ56とキャリヤ60に伝達し、リン
グギヤ57をトランスミッションケース6に係止するこ
とによりキャリヤ60に入力する動力によってサンギヤ
56をキャリヤ60に対して逆方向に回転せしめる機能
を有する。
【0026】このダブルピニオン式プラネタリギヤ55
は、トランスミッションケース6に固定される固定軸6
2、スラストベアリング62a及びドラム69を介して
トランスミッションケース6の第3のケース3に支持さ
れるスラストベアリング61aと、第4の摩擦係合要素
となる第4の多板クラッチ93、スラストベアリング8
2a及びトランスファドライブギヤ82を介してトラン
スミッションケース6の第4のケース4に支持されるス
ラストベアリング61bとによってサンギヤ56を挾持
することによって軸方向への移動が防止される。
【0027】固定軸62は、フロントドライブ軸51を
囲む略円筒状であって、基端に設けられるフランジ部を
ボルト62aによってトランスミッションケース6の第
3のケース3に固定することで取付けられ、固定軸62
の内周面とフロントドライブ軸51との間をオイルシー
ル65により閉じてオイル室65Aが形成され、固定軸
62にはオイル室65Aに連通する油圧路62bが形成
されるとともに固定軸62の外周にも油圧路62cが形
成される。
【0028】固定軸62にはプライマリリダクションギ
ヤ28に噛合するプライマリドリブンギヤ29がニード
ルベアリング29aを介して回転自在に設けられ、プラ
イマリドリブンギヤ29と前記ダブルピニオン式プラネ
タリギヤ55との間に選択的にプライマリドリブンギヤ
29からの出力をリングギヤ57或いはキャリヤ60に
入力する第1の摩擦係合要素となる第1の多板クラッチ
68、第2の摩擦係合要素となる第2の多板クラッチ7
8とを有する入力切換手段67が設けられている。
【0029】第1の多板クラッチ68について述べる
と、固定軸62にブッシュ69aを介して回転自在に軸
支されたドラム69がプライマリドリブンギヤ29に結
合し、ハブ70がダブルピニオン式プラネタリギヤ55
のリングギヤ57に結合する。このようにして第1の多
板クラッチ68は、プライマリドリブンギヤ29とリン
グギヤ57との間にバイパスして動力伝達可能に介設さ
れる。そして油圧室71の油圧でピストン72を介して
ドラム69内に固定したスナップリング73dに当接す
るリテーニングプレート73c及びドリブンプレート7
3bとハブ70との間のドライブプレート73aを押圧
して動力伝達するよう構成される。符号72aはピスト
ン72とドラム69との間を摺動可能でかつ液密的に保
持するシールである。またピストン72の油圧室71と
反対側にはピストン74を介してリテーナ75aが設け
られ、ピストン72にはピストン74を介してリターン
スプリング76の押圧力が付勢される。
【0030】第2の多板クラッチ78について述べる
と、ドラム69を第1の多板クラッチ68と共用し、ハ
ブ79がダブルピニオン式プラネタリギヤ55のキャリ
ヤ60に結合する。こうして第2の多板クラッチ78は
プライマリドリブンギヤ29とキャリヤ60との間にバ
イパスして動力伝達可能に介設される。そして油圧室8
0の油圧でピストン74を介してピストン72に固定し
たスナップリング81dに当接するリテーニングプレー
ト81c及びドリブンプレート81bとハブ79との間
のドライブプレート81aを押圧して動力伝達するよう
に構成される。符号74aはピストン72とピストン7
4との間及びピストン74とドラム69との間を摺動可
能でかつ液密的に保持するシールである。前記同様油圧
室80に発生する遠心油圧は、バランス油圧室75の油
圧によって相殺され、ピストン74にはリターンスプリ
ング76の押圧力が付勢される。
【0031】ダブルピニオン式プラネタリギヤ55に対
して入力切換手段67と反対側には、ボールベアリング
82aを介して回転自在にトランスミッションケース6
の第3のケース3に軸支され、かつニードルベアリング
82bを介してフロントドライブ軸51に回転自在にト
ランスファドライブギヤ82が軸支され、リヤドライブ
軸52のトランスファドリブンギヤ52aが動力伝達可
能に噛合している。
【0032】ダブルピニオン式プラネタリギヤ55とト
ランスファドライブギヤ82との間にはダブルピニオン
式プラネタリギヤ55のキャリヤ60からの出力をトラ
ンスファドライブギヤ82に選択的に動力伝達する第3
の摩擦係合要素となる第3の多板クラッチ84が設けら
れる。
【0033】第3の多板クラッチ84は、ドラム85が
トランスファドライブギヤ82にスプライン結合し、ハ
ブ86がダブルピニオン式プラネタリギヤ55のキャリ
ヤ60に結合する。こうして第3の多板クラッチ84は
キャリヤ60とトランスファドライブギヤ82との間に
バイパスして動力伝達可能に介設される。そして油圧室
87の油圧でピストン88を介してドラム85内に固定
したスナップリング89dに当接するリテーニングプレ
ート89c及びドリブンプレート89bとハブ86との
間のドライブプレート89aを押圧して動力伝達するよ
う構成される。ピストン88の油圧室87と反対側には
リテーナ90により油圧室87に発生する遠心力油圧を
相殺するバランス油圧室91が設けられ、ピストン88
によりリターンスプリング92の圧力が付勢される。
【0034】フロントドライブ軸51の後端部とトラン
スファドライブギヤ82との間にはフロントドライブ軸
51とトランスファドライブギヤ82とを選択的に動力
伝達する第4の摩擦係合要素となる第4の多板クラッチ
93が配設される。
【0035】第4の多板クラッチ93はドラム94がフ
ロントドライブ軸51のスプライン51cにスプライン
結合し、ハブ95がトランスファドライブギヤ82に結
合してフロントドライブ軸51とトランスファドライブ
ギヤ82との間に動力伝達可能に介設される。そして油
圧室96の油圧でピストン97を介してドラム94内に
固定したスナップリング98dに当接するリテーニング
プレート98c及びドリブンプレート98bとハブ95
との間のドライブプレート98aを押圧して動力伝達す
るよう構成され、かつリテーナ99により油圧室96に
よる遠心力油圧を相殺するバランス油圧室100が設け
られ、ピストン97にはリターンスプリング101の圧
力が付勢される。
【0036】トランスミッションケース6の第3のケー
ス3とダブルピニオン式プラネタリギヤ55のリングギ
ヤ57との間には選択的にトランスミッションケース6
に係止してリングギヤ57を固定するための第5の摩擦
係合要素となる第5の多板クラッチ102が配設され
る。
【0037】第5の多板クラッチ102は、油圧室10
3の油圧でピストン104を介してトランスミッション
ケース6内に固定したスナップリング105dに当接す
るリテーニングプレート105c及びドリブンレート1
05bとリングギヤ57に設けられたハブ70との間の
ドライブプレート105aを押圧してリングギヤ57を
トランスミッションケース6に係止固定するよう構成さ
れ、かつピストン104にはリターンスプリング106
の押圧力が付勢される。
【0038】トランスミッションケース6の下部に設け
られるオイルパン109内には、オイルポンプ16から
の油圧を車速センサ41、スロットルセンサ42、シフ
トスイッチ43、前輪回転数センサ44、後輪回転数セ
ンサ45、舵角センサ46等からの信号に基づく油圧制
御回路47によって制御され、上記入力切換手段67、
第3、第4、第5の多板クラッチ84、93、102の
各油圧室71、80、87、96、103及び無段変速
機20に選択的に切換供給するためのコントロールバル
ブ110が設けられている。
【0039】次にこのように構成された4輪駆動車用駆
動装置の作用を図7乃至図11に示す概略説明図及び図
12に示す各走行レンジにおける第1、第2、第3、第
4、第5の各多板クラッチ68、78、84、93、1
02の連結状態を示す摩擦係合要素作動説明図に従って
説明する。この一覧表において印は、対応する多板クラ
ッチが係合或いは作動していることを示し、()は後述
する必要に応じて係合或いは作動していることを示して
いる。
【0040】先ずエンジン10の動力は、クランク軸1
1からトルクコンバータ13を介して無段変速機20の
プライマリ軸21に入力する。そしてプライマリ軸2
1、プライマリプーリ23、駆動ベルト25及びセカン
ダリプーリ24により変速してセカンダリ軸22に出力
する。セカンダリ軸22からの変速出力は、プライマリ
リダクションギヤ28、プライマリドリブンギヤ29に
よって減速されてドラム69を介して第1の多板クラッ
チ68及び第2の多板クラッチ78へ入力される。ここ
でニュートラル(N)、パーキング(P)レンジでは第
1及び第2の多板クラッチ68、78は解放されて動力
伝達遮断状態となり、これ以降の動力伝達はしなくな
る。
【0041】前進段となるドライブ(D)レンジでは、
第1の多板クラッチ68及び第3の多板クラッチ84が
係合し、図7に動力伝達状態を太線で示すようになる。
すなわち油圧室71へコントロールバルブ110から油
圧が供給され、ピストン72を介してドラム69内に固
定したスナップリング73dに当接するリテーニングプ
レート73c、ドリブンプレート73b及びドライブプ
レート73aを押圧し、係合した第1の多板クラッチ6
8によりプライマリドリブンギヤ29からダブルピニオ
ン式プラネタリギヤ55のリングギヤ57に動力伝達す
るとともに、油圧室87へ供給される油圧によりピスト
ン88を介して第3の多板クラッチ84のリテーニング
プレート89c、ドリブンプレート89b及びドライブ
プレート89aを押圧して係合する第3の多板クラッチ
84によりダブルピニオン式プラネタリギヤ55のキャ
リヤ60とトランスファドライブギヤ82とを動力伝達
可能に連結する。
【0042】従って、ダブルピニオン式プラネタリギヤ
55は図8に示すように入力側のリングギヤ57が第1
のピニオン58に噛合い、第1のピニオン58に噛合う
第2のピニオン59がサンギヤ56に噛合いサンギヤ5
6及びキャリヤ60をリングギヤ57と同一方向に回転
させてサンギヤ56とキャリヤ60とに所定の配分比で
トルクが伝達しながら差動回転するように構成され、サ
ンギヤ56とスプライン結合するフロントドライブ軸5
1及びキャリヤ60に動力伝達可能に結合するトランス
ファドライブギヤ82とをリングギヤ57と同一方向に
回転せしめ、トランスファドライブギヤ82に噛合うト
ランスファドリブンギヤ52aに出力してリヤドライブ
軸52をリングギヤ57と逆方向に回転駆動する。そし
てトルク伝達時に第1及び第2のピニオン58、59の
自転と公転とによりサンギヤ56とキャリア60との回
転差を吸収する所謂センタディファレンシャル装置とし
て機能する。
【0043】ここで図8の略図を用いてダブルピニオン
式プラネタリギヤ55のトルク配分について説明する。
【0044】リングギヤ57の入力トルクをTi、サン
ギヤ56によるフロント側トルクをTF、キャリヤ60
によるリヤ側トルクをTR、サンギヤ56の歯数をZ
S、リングギヤ57の歯数をZRとすると、 Ti=TF+TR TF:TR=ZS:(ZR−ZS) が成立する。このことからサンギヤ56の歯数ZSとリ
ングギヤ57の歯数ZRとを適切に設定することでフロ
ント側トルクTF及びリヤ側トルクTRの基準トルク配
分を自由に設定し得ることがわかる。
【0045】ここでZS=37、ZR=82にすると、 TF:TR=37:(82−37) になる。従って前後輪トルク配分率は TF:TR≒45:55 になり、前輪に略45%、後輪に略55%各々配分され
充分に後輪偏重の基準トルク配分に設定し得る。
【0046】一方第4の多板クラッチ93は油圧室96
の油圧でピストン97を介してスナップリング98d、
リテーニングプレート98c、ドリブンプレート98b
及びドライブプレート98aを押圧してクラッチトルク
Tcを生じるように構成され、制御回路48によって制
御されるコントロールバルブ110からの油圧によって
クラッチトルクTcを可変制御する。
【0047】ここで、前輪回転数センサ44及び後輪回
転数センサ45により検出された前輪回転数NF、後輪
回転数NRは、制御回路47に入力されるが滑り易い路
面走行時にはTF<TRの後輪偏重の基準トルク配分で
常に後輪が先にスリップすることから、スリップ率S=
NF/NR(S>O)に算出される。このスリップ率S
と舵角センサ46から制御回路に入力される舵角ψとは
制御回路48の図9に示すマップからクラッチ圧Pcを
検索する。ここでS≧1のノンスリップではクラッチ圧
Pcは低い値に設定されてあり、S<1のスリップ状態
でスリップ率の減少に応じてクラッチ圧Pcを増大し、
スリップ率Sが設定値S1 以下になるとPmax に定め
る。このクラッチ圧Pcにライン圧が調圧され第4の多
板ラッチ93のクラッチトルクTcを可変制御する。
【0048】従って第4の多板クラッチ93によってサ
ンギヤ56からフロントドライブ軸51、トランスファ
ドライブギヤ82を介してサンギヤ56に至るバイパス
系111が各別に構成される。このバイパス系111で
は、後輪がスリップすると、トランスファユニット50
内で後輪回転数NR>リングギヤ57の回転数>前輪回
転数NFの差動機能が成立し、クラッチトルクTcに応
じてフロントドライブ軸51は、トランスファドライブ
ギヤ82から第4の多板クラッチ93を介しフロントド
ライブ軸51にトルクがTcだけ増加して伝達し、更に
トランスファドライブギヤ82に噛合うトランスファド
リブンギヤ52aには前輪に流れたクラッチトルクTc
分を減じたトルクが入力してリヤドライブ軸52にもト
ルクが伝達するものであり、この結果、前後輪トルクT
F、TRは以下のようになる。 TF=0.45Ti+Tc TR=0.55Ti−Tc
【0049】従ってノンスリップ状態では、クラッチト
ルクTcが零のためTF:TR=45:55の後輪偏重
にトルク配分され、後輪スリップ発生時にクラッチトル
クTcが生じると、このクラッチトルクTcに応じてク
ラッチトルクTcが大きい程バイパス系111を経由し
て入力トルクTiが前輪側に流れ、図9に示すようT
F:TR=TF1 :TR1 に変化して前輪トルクが積極
的に増大制御され、後輪トルクは減じてスリップを生じ
なくなり走破性も良好になる。そして上述のスリップS
が設定値以下になると、第4の多板クラッチ93の油圧
と共に差動制限トルクが最大になってサンギヤ56とキ
ャリヤ60とを直結する。このためトランスファユニッ
ト50はディファレンシャルロックされ、前後輪の軸重
配分に相当したトルク配分の直結式4輪駆動走行になり
走破性が最大に発揮される。
【0050】一方前輪がスリップすると、トランスファ
ユニット50内で後輪回転数NR<リングギヤ57の回
転数<前輪回転数NFの差動機能が成立し、クラッチト
ルクTcに応じてフロントドライブ軸51からトランス
ファドライブギヤ82にトルクが伝達し、かつフロント
ドライブ軸51から前輪には後輪に流れたクラッチトル
クTc分を減じたトルクが伝達するものであり、この結
果前後輪トルクTF、TRは以下のようになる。 TF=0.45Ti−Tc TR=0.55Ti+Tc
【0051】従ってノンスリップ状態では、クラッチト
ルクTcが零のためTF:TR=45:55の後輪偏重
にトルク配分され、前輪スリップ発生時にクラッチトル
クTcが生じると、このクラッチトルクTcに応じて入
力トルクTiが後輪側に流れて後輪トルクが積極的に増
大制御され、前輪トルクは減じてスリップを生じなくな
り走破性も良好になる。またスリップ率が設定値以下に
なると、第4の多板クラッチ53の油圧と共に差動制限
トルクが最大になってサンギヤ56とキャリヤ70が直
結するため、前後輪の軸重配分に相当したトルク配分の
直結式4輪駆動走行になり走破性が充分に発揮される。
こうしてスリップ状態に応じ、それを回避すべく幅広く
前後輪へのトルクが制御される。
【0052】また、上述のスリップの発生に伴うトルク
配分制御において旋回する場合にはその舵角ψにより第
4の多板クラッチ53の差動制限トルクが減少補正され
る。このためトランスファユニット50の差動制限は減
じて回転数差を充分に吸収することが可能になり、タイ
トコーナーブレーキング現象が回避され、操縦性が良好
に確保される。
【0053】後退段となるリバース(R)レンジでは、
第1の多板クラッチ68及び第3の多板クラッチ84が
解放され、第2の多板クラッチ78、第4の多板クラッ
チ93及び第5の多板クラッチ102が係合して図10
に示す動力伝達状態を太線で示すようになる。すなわち
油圧室へコントロールバルブ110から油圧を供給して
ピストン74を介してスナップリング81d、リテーニ
ングプレート81c、ドリブンプレート81b及びドラ
イブプレート81aを押圧して第2の多板クラッチ78
を係合してプライマリドリブンギヤ29からダブルピニ
オン式プラネタリギヤ55のキャリヤ60に動力伝達す
るとともに、油圧室103へ供給する油圧によりピスト
ン104を介してスナップリング105d、リテーニン
グプレート105c、ドライブプレート105a、ドリ
ブンプレート105bを押圧して係合する第5の多板ク
ラッチ102によりリングギヤ57をトランスミッショ
ンケース6に係止固定する。そしてピストン97を介し
てスナップリング98d、リテーニングプレート98
c、ドリブンプレート98b及びドライブプレート98
aを押圧して第4の多板クラッチ93によりフロントド
ライブ軸51からトランスファドライブギヤ82に動力
伝達可能にする。
【0054】従って、ダブルピニオン式プラネタリギヤ
55は図11に示すように入力側のキャリヤ60の回転
により互に噛合した第1及び第2のピニオン58、59
は互に逆回転しつつリングギヤ57に沿って回転してサ
ンギヤ56をキャリヤ60と逆方向に回転してフロント
ドライブ軸51を入力側に対して逆方向に回転せしめ、
かつフロントドライブ軸51は第4の多板クラッチ93
を介してトランスファドライブギヤ82に動力伝達し、
リヤドライブ軸52をフロントドライブ軸51と逆方向
に回転駆動する。
【0055】従って、プライマリドリブンギヤ29から
の入力は、ダブルピニオン式プラネタリギヤ55のリン
グギヤ57を第5の多板クラッチ102によってトラン
スミッションケース6に係止することによりドライブ
(D)レンジ状態と逆方向にフロントドライブ軸51及
びリヤドライブ軸52に出力され、このダブルピニオン
式プラネタリギヤ55は前後進切換機能を有する。
【0056】この場合、キャリヤ60の入力に対するフ
ロントドライブ軸51及びリヤドライブ52に出力され
る変速比は次式で設定される。
【0057】変速比=[ZS+(−ZR)]/ZS ここで前記同様ZS=37、ZR=82にすると、 変速比=[37+(−82)]/37=1.216 となり、リバース(R)レンジでの減速比が適切に確保
される。
【0058】一方、キャリヤ60に入力するトルクTi
はクラッチTcに応じてトランスファドライブギヤ82
に伝達し、前輪には後輪に伝達したクラッチトルクTc
分を減じたトルクが入力され、この結果前後輪トルクT
F、TRは以下のようになる。 Ti=TF+TR TF=Ti−Tc TR=Tc
【0059】従って後輪スリップ発生時にクラッチトル
クTcを減じることにより入力トルクTiを前輪側に流
し、前輪トルクを積極的に増大制御し、後輪トルクを減
じてスリップを生じなくして走破性を良好にし、かつ前
輪スリップ時にはクラッチトルクTcを増大させること
により入力トルクTiを後輪側に流し、後輪トルクを積
極的に増大制御して前輪トルクを減じてスリップを生じ
なくして走破性を良好にする。またスリップ率が設定値
以下になると、第4の多板クラッチ93の油圧と共に差
動制限トルクTcを最大にしてフロントドライブ軸51
とトランスファドライブギヤ82を直結にして前後輪の
軸重配分に相当したトルク配分の直結式4輪駆動走行に
して走破性が最大に発揮される。更に旋回する場合に
は、その舵角ψにより第4の多板クラッチ93の差動制
限トルクが減少され、回転数差を充分に吸収することが
可能になり、タイトコーナーブレーキング現象が回避さ
れ、操縦性が良好になる。
【0060】従って、以上説明した本実施の形態では、
ベルト式無段変速機20の出力側に伝動構成したフロン
トディファレンシャル装置30或いはリヤディファレン
シャル装置58に各々動力伝達するフロントドライブ軸
51及びリヤドライブ軸52を縦置きエンジン10のク
ランク軸11に対して平行配置し、フロントドライブ軸
51にサンギヤ56が結合するダブルピニオン式プラネ
タリギヤ55を設け、無段変速機20からの出力をリン
グギヤ57に伝達する第1の多板クラッチ68、キャリ
ヤ60に伝達する第2の多板クラッチ78、キャリヤ6
0とトランスファドライブギヤ82とを動力伝達可能に
連結する第3の多板クラッチ84、フロントドライブ軸
51とリヤドライブ軸52とを動力伝達可能に連結する
第4の多板クラッチ93及びリングギヤ57を係止する
第5の多板クラッチ102を設け、これら第1、第2、
第3、第4及び第5の各多板クラッチ68、78、8
4、93、102を選択的に制御することにより前進段
であるドライブ(D)レンジ及び後退段であるリバース
(R)レンジではフロントドライブ軸51及びリヤドラ
イブ軸52へ適切なトルク配分及び差動制限を可能にす
るセンターディファレンシャル装置として機能して良好
な走行性が得られ、かつドライブ(D)レンジ、リバー
ス(R)レンジへの切換時の前後進切換装置として機能
する。
【0061】よって従来センターディファレンシャル装
置用及び前後進切換装置用として各単独機能する各々専
用のダブルピニオン式プラネタリギヤを要したが、単一
のダブルピニオン式プラネタリギヤによって両機能が達
成され、高性能を維持しつつ駆動装置の構成及び制御の
簡素化及び軽量化が可能になり、コスト低減及びコンパ
クト化、特に全長が短縮され、このコンパクト化に伴
い、車載状態において車室下方のトンネル内への突出量
が極めて小或いはなくすることが可能になり車室内へ突
出するトンネル断面積が大幅に削減され、かつトーボー
ドと駆動装置との間が充分に離間し、車室内の居住空間
が充分に確保されて居住性の向上がもたらされる。
【0062】またトーボードと駆動装置との間、すなわ
ちトーボードの前面空間の増大に伴って衝突時のクラッ
シュストロークが確保され、かつトランスミッション脱
着時の作業空間として充分に有効活用できる。更にエン
ジンフードを下げるいわゆるスラントノーズ化が可能に
なる等車両設計の自由度が増大する。
【0063】更にトルクコンバータ13に代えて発進ク
ラッチとして電磁クラッチや湿式クラッチを用いること
も可能であり、この場合ニュートラル(N)、パーキン
グ(P)レンジにおいてベルト式無段変速機20のプラ
イマリ軸21への入力を遮断して無段変速機20以降の
動力伝達はなくなる。
【0064】更に本実施の形態における4輪駆動装置に
あっては、図13に示すように第1、第2、第4の各多
板クラッチ68、78、93及びトランスファドライブ
ギヤ82、リヤドライブギヤ52等の後輪駆動部を廃止
し、変更した連結部材120によりダブルピニオン式プ
ラネタリギヤ55のキャリヤ60に直接入力し、かつ第
3の多板クラッチ84のドラム85とフロントドライブ
軸51のスプライン51cとをフロントドライブ軸51
に回転自在に嵌合する中空軸121により連結するとと
もに第4のケース4を2輪駆動用の第6のケース122
に変更することにより2輪駆動車用駆動装置に容易に変
更し得る。なお123はパーキングギヤである。
【0065】この2輪駆動車用駆動装置への変更にあた
り、図4と対応する部分に同一符号を付けることで詳細
な説明は省略するが、上記した連結部材120、中空軸
121、第6のケース122以外の多くの部品は4輪駆
動車用駆動装置との共用化が得られる。
【0066】このように形成された2輪駆動車用駆動装
置は、前進段となるドライブ(D)レンジにおいて第3
の多板クラッチ84が係合し、図14に動力伝達状態を
太線で示すようになる。すなわち油圧室87へ油圧を供
給し、ピストン85を介してスナップリング89d、リ
テーニングクラッチ89c、ドリブンプレート89b及
びドライブプレート89aを押圧して第3の多板クラッ
チ84を係合することにより、プライマリドリブンギヤ
29からの入力はダブルピニオン式プラネタリギヤ55
のキャリヤ60、第3の多板クラッチ84を介して動力
伝達され、プライマリドリブンギヤ29と同方向に回転
駆動する。
【0067】一方後退段となるリバース(R)レンジで
は第3の多板クラッチ84の係合を解除し、油圧室10
3に油圧を供給して第5の多板クラッチ102によりダ
ブルピニオン式プラネタリギヤ55のリングギヤ57を
トランスミッションケース6に係止することにより図1
5に動力伝達状態を太線で示すようにする。これにより
プライマリドリブンギヤ29からダブルピニオン式プラ
ネタリギヤ55のキャリヤ60ヘ入力によるキャリヤ6
0の回転により互に噛合した第1及び第2のピニオン5
8、59は互に逆回転しつつリングギヤ57に沿って回
転してサンギヤをキャリヤと逆方向に回転してフロント
ドライブ軸51を入力側に対して逆方向に回転駆動す
る。
【0068】この場合キャリヤ60の入力に対するフロ
ントドライブ軸51に出力される変速比は前記同様次式
で設定される。
【0069】変速比=[ZS+(−ZR)]/ZS ここでZS=37、ZR=82であることから 変速比=[37+(−82)]/37=1.216 となりリバース(R)レンジでの減速比が適切に確保さ
れる。
【0070】従ってダブルピニオン式プラネタリギヤ5
5及び第3及び第5の多板クラッチ102を主要部とす
る前後進切換装置が構成される。
【0071】
【発明の効果】以上説明した本発明の4輪駆動車用駆動
装置によれば、縦置きエンジンのクランク軸に対して一
方及び他方のディファレンシャル装置に各々動力伝達す
る第1及び第2のドライブ軸を平行配置し、エンジン側
からの入力を単一のダブルピニオン式プラネタリギヤに
より選択的に動力配分及び前後進切換した第1及び第2
のドライブ軸に動力伝達することから単一のダブルピニ
オン式プラネタリギヤによってセンターディファレンシ
ャル装置及び前後進切換装置としての両機能が達成さ
れ、高性能を維持しつつ駆動装置の構成及び制御の簡素
化、軽量化、コンパクト化が得られ、コンパクト化に伴
い車載状態において車室下方のトンネル内への突出量の
削減によるトンネル断面積の削減が可能で車室内の居住
空間が確保され居住性の向上がもたらされる。また衝突
時のクラッシュストローク及び組立て、整備等の作業空
間を確保しつつ、従来のエンジンルームにも搭載可能で
ある等本発明特有の効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明による4輪駆動車用駆動装置の一実施の
形態の概要を説明する駆動系を示す図である。
【図2】本実施の形態に用いるフロントディファレンシ
ャル装置を説明する要部断面図である。
【図3】同じく、フロントディファレンシャル装置とベ
ルト式無段変速機の配置状態を説明する要部斜視図であ
る。
【図4】同じく、4輪駆動車用駆動装置を説明する断面
図である。
【図5】同じく、図4に示す断面図の要部拡大図であ
る。
【図6】同じく、図4における矢視A方向から見た要部
配置説明図である。
【図7】同じく、作用を示す概略説明図である。
【図8】同じく、作用を示す概略説明図である。
【図9】同じく、作用を示す概略説明図である。
【図10】同じく、作用を示す概略説明図である。
【図11】同じく、作用を示す概略説明図である。
【図12】同じく、作用を示す摩擦係合要素作動説明図
である。
【図13】同じく、本発明の4輪駆動車用駆動装置を2
輪駆動車用駆動装置への転用を説明する図である。
【図14】図13に示す2輪駆動車用駆動装置の作用を
示す概略説明図である。
【図15】同じく、2輪駆動車用駆動装置の作用を示す
概略説明図である。
【符号の説明】
10 エンジン 11 クランク軸 20 ベルト式無段変速機 21 プライマリ軸 22 セカンダリ軸 23 プライマリプーリ 24 セカンダリプーリ 25 駆動ベルト 30 フロントディファレンシャル装置 38 リヤディファレンシャル装置 51 フロントドライブ軸 52 リヤドライブ軸 55 ダブルピニオン式プラネタリギヤ 56 サンギヤ 57 リングギヤ 58 第1のピニオン 59 第2のピニオン 60 キャリヤ 67 入力切換手段 68 第1の多板クラッチ 78 第2の多板クラッチ 84 第3の多板クラッチ 93 第4の多板クラッチ 102 第5の多板クラッチ
─────────────────────────────────────────────────────
【手続補正書】
【提出日】平成8年4月24日
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0057
【補正方法】変更
【補正内容】
【0057】変速比=[ZS+(−ZR)]/ZS ここで前記同様ZS=37、ZR=82にすると、 変速比=[37+(−82)]/37=−1.216 となり、リバース(R)レンジでの減速比が適切に確保
される。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0069
【補正方法】変更
【補正内容】
【0069】変速比=[ZS+(−ZR)]/ZS ここでZS=37、ZR=82であることから、 変速比=[37+(−82)]/37=−1.216 となり、リバース(R)レンジでの減速比が適切に確保
される。

Claims (9)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 縦置きエンジンと、このエンジンからの
    出力が入力される変速機と、前記エンジンのクランク軸
    に対して各々平行配置されて一方のディファレンシャル
    装置及び他方のディファレンシャル装置に各々動力伝達
    する第1及び第2のドライブ軸と、前記変速機からの入
    力を選択的に所定の比率で動力配分及び前後進切換して
    第1及び第2のドライブ軸に動力伝達するダブルピニオ
    ン式プラネタリギヤとを有することを特徴とする4輪駆
    動車用駆動装置。
  2. 【請求項2】 ダブルピニオン式プラネタリギヤが複数
    の摩擦係合要素の選択的制御によって変速機からの入力
    を所定の比率で動力配分及び前後進切換して第1及び第
    2のドライブ軸に動力伝達する請求項1に記載の4輪駆
    動車用駆動装置。
  3. 【請求項3】 縦置きエンジンと、このエンジンからの
    出力が入力される変速機と、前記エンジンのクランク軸
    に対して各々平行配置されて一方のディファレンシャル
    装置及び他方のディファレンシャル装置に各々動力伝達
    する第1及び第2のドライブ軸と、ダブルピニオン式プ
    ラネタリギヤと、このプラネタリギヤのリングギヤ及び
    キャリヤに変速機からの出力を選択的に動力伝達する入
    力切換手段と、前記プラネタリギヤのサンギヤからの出
    力を第1のドライブ軸に動力伝達する手段と、前記プラ
    ネタリギヤのキャリヤからの出力を第2のドライブ軸に
    選択的に動力伝達する第3の摩擦係合要素と、第1のド
    ライブ軸と第2のドライブ軸との間を選択的に動力伝達
    する第4の摩擦係合要素と、プラネタリギヤのリングギ
    ヤ回転を選択的に係止する第5の摩擦係合要素とを有
    し、上記入力切換手段及び各摩擦係合要素を選択的に作
    動せしめて前記変速機からの入力を前記プラネタリギヤ
    を介して所定の比率で動力配分及び前後進切換して第1
    及び第2のドライブ軸に動力伝達することを特徴とする
    4輪駆動車用駆動装置。
  4. 【請求項4】 前進段は、前記入力切換手段が変速機か
    らの出力をリングギヤへ動力伝達状態であって、第5の
    摩擦係合要素が解放したリングギヤ回転許容状態であり
    ダブルピニオン式プラネタリギヤがキャリヤとサンギヤ
    に所定の比率で動力配分するセンタディファレンシャル
    装置として機能し、第3の摩擦係合要素が動力伝達状態
    にあり、かつ第4の摩擦係合要素を動力伝達状態にして
    キャリヤとサンギヤとの間の差動制限を行う請求項3に
    記載の4輪駆動車用駆動装置。
  5. 【請求項5】 前進段において、第4の摩擦係合要素が
    走行状態に基づいて伝達トルクを可変制御して動力伝達
    する請求項4に記載の4輪駆動車用駆動装置。
  6. 【請求項6】 後退段は、前記入力切換手段が変速機か
    らの出力をキャリヤへ動力伝達状態であって、第5の摩
    擦係合要素が締結してリングギヤ回転係止状態であり第
    3の摩擦係合要素が解放状態で、ダブルピニオン式プラ
    ネタリギヤが変速動力をサンギヤに出力し、第4の摩擦
    係合要素が動力伝達状態である請求項3〜5のいずれか
    1つに記載の4輪駆動車用駆動装置。
  7. 【請求項7】 後退段において、第4の摩擦係合要素が
    走行状態に基づいて伝達トルクを可変制御して動力伝達
    する請求項6に記載の4輪駆動車用駆動装置。
  8. 【請求項8】 入力切換手段が、前進段において係合し
    て変速機からの出力をリングギヤへ動力伝達する第1の
    摩擦係合要素及び後退段において係合して変速機からの
    出力をキャリヤへ動力伝達する第2の摩擦係合要素を有
    する請求項3〜7のいずれか1つに記載の4輪駆動車用
    駆動装置。
  9. 【請求項9】 変速機がプライマリ軸と、このプライマ
    リ軸と平行配置されたセカンダリ軸と、プライマリ軸及
    びセカンダリ軸に各々設けられたプライマリプーリ及び
    セカンダリプーリと、プライマリプーリとセカンダリプ
    ーリとの間に巻き掛けられた駆動ベルトとを有し、駆動
    ベルトのプライマリプーリとセカンダリプーリとに対す
    る巻付径の比率を変えて無段階に変速するベルト式無段
    変速機である請求項1〜8のいずれか1つに記載の4輪
    駆動車用駆動装置。
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