JPH09262838A - 断熱金型およびそれを用いる樹脂成形方法 - Google Patents

断熱金型およびそれを用いる樹脂成形方法

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JPH09262838A
JPH09262838A JP7371196A JP7371196A JPH09262838A JP H09262838 A JPH09262838 A JP H09262838A JP 7371196 A JP7371196 A JP 7371196A JP 7371196 A JP7371196 A JP 7371196A JP H09262838 A JPH09262838 A JP H09262838A
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JP
Japan
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mold
heat insulating
heat
layer
insulating layer
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Withdrawn
Application number
JP7371196A
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English (en)
Inventor
Takeshi Ikematsu
武司 池松
Nobuyoshi Umeniwa
信義 梅庭
Isao Umei
勇雄 梅井
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Asahi Chemical Industry Co Ltd
Original Assignee
Asahi Chemical Industry Co Ltd
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Publication date
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 断熱金型の耐久性、特に金型端面の耐久性の
向上を目的とする。 【解決手段】 金属からなる基金型Aの型キャビティ壁
面に耐熱性重合体からなる断熱層Bおよび金属層Cを順
次積層した金型であって、上記基金型の端面部が断熱層
Bおよび金属層Cからなる被覆層で被覆される。 【効果】 優れた成形性を有すると共に、成形加工時の
厳しいシェアーストレスや冷熱サイクルに対する耐性に
優れる。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は耐久性に優れる断熱
金型およびそれを用いる樹脂成形法に関する。詳しく
は、合成樹脂の射出成形、ブロー成形等の各成形用途に
おいて成形性に優れると共に、成形加工時の樹脂による
シェアーストレスや冷熱サイクルに対する耐久性に優れ
る断熱金型およびそれを用いる樹脂成形方法に関するも
のである。
【0002】
【従来の技術】近年、合成樹脂の射出成形品やブロー成
形品においては、塗装等の後加工を省略することで製造
コストを低下、塗装時の溶剤蒸発等による環境破壊の低
減等のため、表面状態を改良して無塗装にしたいという
要望が強い。電気機器、電子機器、事務機器等の合成樹
脂製ハウジング等については、この後加工を省略するこ
との要望が特に強い。
【0003】熱可塑性樹脂を金型キャビティへ射出して
成形し、型表面状態の再現性改良や成形品の外観等の表
面状態改良には、樹脂温度や金型温度を高くしたり、射
出圧力を高くする等の成形条件による対応が通常選ばれ
る。ブロー成形においても同様で、成形品の外観の改良
には樹脂温度や金型温度を高くしたり、ブローガス圧力
を高くする等の成形条件による対応が通常選ばれる。
【0004】これらの要因の中で、特に大きな影響があ
るのは金型温度である。金型温度を高くする程、これら
の外観等の性能は改良できる。しかし、金型温度を高く
すると、可塑化された樹脂の冷却固化に要する時間が長
くなり、一般に成形能率は低下する。それ故、金型温度
を高くすることなく型表面の再現性を良くする方法、ま
たは金型温度を高くしても冷却時間が長くならない方法
が強く要求される。
【0005】例えば、金型に加熱用、冷却用の孔をそれ
ぞれ取り付けておき交互に熱媒、冷媒を流して金型の加
熱、冷却を繰り返す方法が、Plastic Tech
nology,June,P.151(1988)等に
開示されているが、この方法は熱エネルギーの消費量が
多く、成形能率も十分には上がらない。金型キャビティ
を形成する型壁面を熱伝導率の小さい物質による断熱層
で被覆した金型、即ち断熱金型についてWO・93/0
6980等で開示がある。重合体からなる断熱層を金型
の最表面に用いて成形性を改良した場合、成形性は改良
できるが、断熱層は使用中に傷がつきやすい。また、成
形される合成樹脂の種類によっては、成形時に金型から
の離型が困難になる等の問題がある。
【0006】また、この改良として、上記したように断
熱層表面を更に薄肉金属層で被覆した金型も公知であ
る。例えば、特開昭53−86754号公報には金属製
の金型壁面に断熱層を被覆し、更にその断熱層表面に薄
肉金属層を被覆した断熱金型が開示されている。これに
より断熱層表面の耐傷性および成形時の離型性は改良で
きるが、金属層と断熱層は成形時の冷熱サイクルやシェ
アーストレスにより剥離しやすく、耐久性等に問題があ
る。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】断熱層表面を更に薄肉
金属層で被覆した断熱金型においては、被覆層、即ち金
属層および断熱層と基金型の十分強固な密着は困難であ
り、被覆層の剥離問題の解決は大きな課題である。特
に、被覆層は金型の端部から剥離や変形等の破損が開始
しやすい。それにも関わらず、金型の端面部構造に関す
る開示、特に端面部構造改良による金型の成形性や耐久
性の向上に関する具体的開示はこれまでになかった。
【0008】本発明の課題は、金属からなる基金型の型
キャビティ壁面に、耐熱重合体からなる断熱層および金
属層を順次積層した断熱金型において、断熱金型として
の特性、即ち合成樹脂の射出成形、ブロー成形等の各成
形用途における成形性に優れると共に、成形時の冷熱サ
イクルやシェアーストレスによる、被覆層の剥離や変形
等に対する耐久性に優れる断熱金型およびそれを用いる
樹脂成形法を提供することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】本発明者は、金属からな
る基金型の型キャビティ壁面に、断熱層および金属層を
順次積層した金型において、基金型の端面部を断熱層お
よび金属層からなる被覆層で被覆し、更にその断熱金型
としての構造を適正化することで、断熱金型としての優
れた特長を保持したまま、金型の耐久性を顕著に改良で
きることを見出し、本発明を完成した。
【0010】すなわち、本発明は以下の通りである。 (1) 金属からなる基金型の型キャビティ壁面に、耐
熱性重合体からなる断熱層および金属層を順次積層した
金型であって、該基金型の端面部が該断熱層および該金
属層からなる被覆層で被覆されている断熱金型。 (2) 上記1の断熱金型が、耐熱性重合体からなる断
熱層および金属層を順次積層した型キャビティ面に分割
面を有する分割金型であって、該分割面を構成する基金
型の端面部が、上記断熱層および金属層からなる被覆層
で被覆されている断熱金型。 (3) 断熱層の厚みが0.05〜3mm、金属層の厚
みが1〜300μmで、かつ断熱層の厚みの1/3以下
である上記1または2の断熱金型。 (4) 基金型が0.1〜10mm幅の堤構造を有する
上記1、2または3の断熱金型。 (5) 耐熱性重合体の軟化温度が成形温度より高く、
かつ140℃以上である上記1、2、3または4の断熱
金型。 (6) 金属層が化学メッキおよび/または電気メッキ
により作成された金属層である上記1、2、3、4また
は5の断熱金型。 (7) 断熱層を構成する耐熱性重合体がポリイミドで
ある上記1、2、3、4、5または6の断熱金型。 (8) 上記1、2、3、4、5、6または7の断熱金
型を用いて成形する樹脂成形方法。 (9) 家電機器、事務機器の筐型ハウジングを成形す
る上記8の樹脂成形方法。
【0011】本発明において、基金型の端面部とは、断
熱金型間の型キャビティ合せ部、あるいは断熱金型と金
属のみからなる金型の型キャビティ合せ部を構成する断
熱金型合せ面をいう。即ち、型キャビティ面ではなく、
その側面をいう。また、堤構造とは、基金型の型キャビ
ティ面において端面部に接して設けられる基金型の堤状
の凸構造体である。
【0012】また、本発明の断熱金型を用いる成形法の
特長である型再現性と外観特性を生かすには、即ち断熱
金型被覆層の金属表面状態、特にしぼ状態等をより効果
的に再現するには、従来の金属金型に比較してその抜き
勾配を大きくすることが好ましい。しかし、一般に家電
機器や事務機器の筐型ハウジングを成形する場合、デザ
イン上、抜き勾配を大きくすることは問題が多い。この
様な場合には、断熱層および金属層を積層した型キャビ
ティ面に分割面を有する分割金型であって、該分割面を
構成する基金型の端面部が、被覆層で被覆されている断
熱金型が好ましい。
【0013】本発明の断熱金型は基金型と金属層との間
に、金属と比較して弾性率が顕著に低く、熱膨張率も大
きく異なる重合体からなる断熱層を挟んでおり、各層間
の密着強度はさほど大きなものとはならない。それ故、
成形時の冷熱サイクルやシェアーストレスにより、被覆
層は剥離や変形等の破損を受けやすい。これらの破損は
特に基金型の端部から開始し、これが広がって金型とし
ての致命的な破損を来す場合が多いことを、本発明者は
見い出した。
【0014】本発明の断熱金型においては、基金型の端
面部は断熱層および金属層からなる被覆層で被覆されて
いることが必要である。基金型の端面部を被覆層で被覆
することにより、被覆層の破損が基金型端部から開始す
ること防ぎ、断熱金型の耐久性を顕著に改良できる。し
かも、金属層と基金型の直接的接触を無くすことで、断
熱金型の本来の目的である断熱性も十分保持することが
できる。更にその断熱金型としての構造を適性化するこ
とで、断熱金型としての優れた特長を保持したまま、金
型の耐久性を顕著に改良できることを見い出したもので
ある。
【0015】以下、本発明について詳細に説明する。本
発明の断熱金型構造の具体例の部分断面図を用いて説明
する。図1および図2に本発明の基金型の端面部型表面
の部分断面図を示す。図3に比較例として基金型の端面
部が被覆されていない断熱金型、図4に比較例として基
金型の端面部が金属層で直接被覆されている断熱金型の
部分断面図を示す。
【0016】図1は、金属からなる基金型Aの型キャビ
ティを構成する型表面に耐熱性重合体からなる断熱層B
が存在し、その上に金属層Cが存在する。基金型の端面
部には切り欠きがあり、切り欠き部も断熱層Bおよび金
属層Cで順次被覆されている。ここにd1は断熱層の厚
みであり、s1は金属層の厚み、E1は基金型の切り欠
き深さ、F1は切り欠きの幅、f1は端面部を被覆する
金属層の幅、b1は端面部を被覆する断熱層の厚み、e
1は端面部を被覆する金属層の厚みである。
【0017】図2は、更に金型端面部に堤構造A′があ
る。金属からなる基金型Aの型キャビティを構成する型
表面に、耐熱性重合体からなる断熱層Bが存在し、その
上に金属層Cが存在する。切り欠き部も断熱層Bおよび
金属層Cで順次被覆されている。ここにd2は断熱層の
厚みであって、s2は金属層の厚み、d0は堤の高さ、
w2は堤の幅、E2は基金型の切り欠き深さ、F2は切
り欠きの幅、f2は端面部を被覆する金属層の幅、b2
は端面部を被覆する断熱層の厚み、e2は端面部を被覆
する金属層の厚みである。
【0018】これに対して図3は比較例に挙げてある従
来の断熱金型であり、基金型Aの型キャビティを構成す
る型表面上に断熱層Bおよび金属層Cが単に層状に載っ
ている。ここにd3は断熱層の厚み、s3は金属層の厚
みである。図4も比較例に挙げてある断熱金型であり、
金属からなる基金型Aの型キャビティを構成する型表面
に、耐熱性重合体からなる断熱層Bが存在し、その上に
金属層Cが存在する。基金型の端面部には切り欠きがあ
り、金属層Cで直接被覆されている。ここにd4は断熱
層の厚みであり、s4は金属層の厚み、E4は基金型の
切り欠き深さ、F4は切り欠きの幅、f4は端面部を被
覆する金属層の幅、e4は端面部を被覆する金属層の厚
みである。
【0019】本発明の断熱金型を構成する基金型は、鉄
または鉄を主成分とする鋼材、アルミニウムまたはアル
ミニウムを主成分とする合金、ZAS等の亜鉛合金、ベ
リリウム−銅合金等の一般に合成樹脂の成形に使用され
ている金属からなる金型を広く包含する範囲から選ばれ
る。特に鋼材からなる金型は安価でかつ良好に使用でき
る。これらの金属からなる基金型の断熱層と接する型表
面は硬質クロムやニッケル等でメッキされていることが
好ましい。
【0020】基金型が堤構造を有する場合、堤は基金型
作成時に通常の金属加工法により作ることができる。例
えば、フライス盤による切り出し、あるいは堤を溶接後
に仕上げ加工等が利用できる。基金型に堤構造を設ける
ことは得られる断熱金型の耐久性を向上させる効果があ
り、場合により好ましい。基金型の形体は、目的とする
合成樹脂成形体の形状によって異なる。
【0021】本発明の断熱金型を構成する断熱層は耐熱
性重合体からなる。耐熱性重合体は、成形される合成樹
脂の成形温度より高い軟化温度の熱可塑性重合体や、成
形温度より高い耐熱性の硬化性樹脂から選ばれる。好ま
しくは、成形される合成樹脂の成形温度より軟化温度が
高く、かつガラス転移温度が140℃以上、更に好まし
くは160℃以上、特に好ましくは190℃以上および
/または融点が200℃以上、更に好ましくは250℃
以上の重合体である。
【0022】合成樹脂の軟化温度とは合成樹脂が容易に
変形し得る温度である。非結晶性樹脂ではビカット軟化
温度(ASTM D1525)、硬質結晶性樹脂では熱
変形温度(ASTM D648 荷重18.6kg/c
2 )、軟質結晶性樹脂では熱変形温度(ASTM D
648 荷重4.6kg/cm2 )でそれぞれ示される
温度とする。非結晶性樹脂とは、例えばポリスチレン、
ゴム強化ポリスチレン、AS樹脂、ABS樹脂、ポリカ
ーボネート、メタクリル樹脂、塩化ビニル樹脂、ポリフ
ェニレンエーテル等であり、硬質結晶性樹脂とは、例え
ばポリオキシメチレン、ナイロン6、ナイロン66等で
あり、軟質結晶性樹脂とは、例えば各種ポリエチレン、
ポリプロピレン等である。成形温度とはキャビティに注
入される樹脂温度である。
【0023】また、断熱層に用いられる耐熱性重合体の
破断伸度は4%以上、好ましくは5%以上、更に好まし
くは10%以上の靱性のある重合体が好ましい。破断伸
度の測定法はASTMD638に準じて行い、測定時の
引っ張り速度は5mm/分である。本発明の断熱層とし
て使用できる耐熱性重合体は上記の軟化温度の耐熱性重
合体から広く選ぶことができるが、特に好ましい耐熱性
重合体は、主鎖に芳香環を有する耐熱性重合体である。
各種芳香族系の非結晶性あるいは結晶性の耐熱性重合
体、例えばポリイミドや芳香族複素環状ポリマー、エポ
キシ樹脂、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン等が良
好に使用できる。
【0024】ポリイミドとしては、各種直鎖型非熱可塑
ポリイミド樹脂、直鎖型熱可塑ポリイミド樹脂および熱
硬化型ポリイミド樹脂が広く利用できる。直鎖型非熱可
塑ポリイミド樹脂として、例えばポリピロメリット酸イ
ミド系、ポリフェニルテトラカルボン酸イミド系、ポリ
ベンゾフェノンテトラカルボン酸イミド系、ポリアミド
イミド、ポリエーテルイミドが挙げられ、直鎖型熱可塑
ポリイミド樹脂としてポリベンゾフェノンテトラカルボ
ン酸イミド系、ポリビフェニルテロラカルボン酸イミド
系が挙げられ、熱硬化型ポリイミド樹脂としてビスマレ
イミド系樹脂、ナジック変成ポリイミド、ディールスア
ルダー型ポリイミド等が挙げられる。
【0025】一般に高分子量の直鎖型ポリイミドは破断
伸度が大きく強靱で、耐久性に優れ、フッ素含有ポリイ
ミドは耐湿性(断熱層の耐湿性が改善され、樹脂中に残
存する水分量が低くなり、水分の発泡による断熱層や金
属層の剥離が押さえられる。)に優れ、場合により好ま
しく使用できる。芳香族複素環状ポリマーとしてはポリ
ベンゾアゾール類(例えばポリベンゾイミダゾール、ポ
リベンゾオキサゾール、ポリベンゾチアゾール、ポリエ
ーテルベンゾオキサゾール)、ポリヒダントイン類(例
えばポリイミダゾリジン−2,4−ジオン)およびポリ
パラバン酸類(例えばポリイミダゾリジン−2,4,5
−トリオン)等を挙げることができる。
【0026】これらの耐熱性重合体は、成形時の冷熱サ
イクルに対する耐性を向上するために、各種フィラーや
カーボン繊維等の充填材を配合することで熱膨張係数を
低下させることができる。この熱膨張係数を低下させた
耐熱性重合体は、断熱層として好ましく使用できる。ま
た、熱膨張係数の小さいエポキシ樹脂または各種充填材
を適量配合したエポキシ樹脂等も好ましく使用できる。
一般にエポキシ樹脂は熱膨張係数が大きいために、金属
金型との熱膨張係数の差は大きく、冷熱サイクルによる
劣化を受けやすい。しかし、熱膨張係数が小さい、例え
ばガラス、シリカ、タルク、クレー、珪酸ジルコニウ
ム、珪酸リチウム、炭酸カルシウム、アルミナ、マイカ
等の粉体や粒子、ガラス繊維、ウィスカー、炭素繊維等
の適量を配合し、金属金型との熱膨張係数の差を小さく
した充填材配合エポキシ樹脂は、本発明の断熱層として
良好に使用できる。また、エポキシ樹脂あるいは充填材
配合エポキシ樹脂に、更にナイロン等の強靱な熱可塑性
樹脂、ゴム等の強靱性を与える各種配合物を加えた配合
エポキシ樹脂も良好に使用できる。更にエポキシ樹脂に
ポリイミド等を配合して硬化したポリマーアロイは靱性
に優れ、良好に使用できる。
【0027】これらの耐熱性重合体の熱伝導率は、一般
に0.0001〜0.002cal/cm・sec・℃
と、金属より大幅に小さく断熱層として効果的に働く。
しかし、無機フィラーや熱伝導度の高い充填材を多量に
混合することは、断熱層の熱伝導率や熱容量を上げて好
ましくない場合がある。無機フィラーを充填材として混
合した組成物を用いる場合、熱伝導率は、好ましくは
0.01cal/cm・sec・℃以下、更に好ましく
は0.005cal/cm・sec・℃以下、特に好ま
しくは0.002cal/cm・sec・℃以下に押さ
える。
【0028】基金型表面を耐熱性重合体で被覆し、かつ
これを強固に密着させるには、耐熱性重合体のシートを
貼り付けたり、耐熱性重合体の粉体を吹き付けて溶融接
着することもできるが、金属表面への蒸着重合法、塗布
法あるいはスプレー法が好ましく利用できる。蒸着重合
法は基本的にはモノマー(酸二無水物とジアミン等)を
蒸発させ金属表面に蒸着、重合するもので、密着性や複
雑な形状に対応できる点で優れた方法である。例えば
「ポリイミド樹脂」技術情報協会(1991)p.29
9に、この方法の詳細な記載がある。
【0029】塗布法あるいはスプレー法は耐熱性重合体
溶液、耐熱性重合体前駆体溶液または液状前駆体を塗布
あるいはスプレーし、次いで加熱乾燥あるいは硬化して
耐熱性重合体の断熱層を形成させる方法であり、実用的
に特に好ましく利用できる。この方法においては、用い
る耐熱性重合体あるいは耐熱性重合体の前駆体は溶剤に
溶解できるか、液状であることが好ましい。例えば、ポ
リイミドの前駆体であるポリアミド酸の溶液を塗布し、
次いで乾燥、加熱キュアを行い型表面上にポリイミド層
を形成する方法は良好に使用できる。
【0030】本発明の断熱金型においては断熱層と基金
型の密着力、および断熱層と金属層との密着力は十分大
きいことが必要である。具体的には一万回を超える合成
樹脂の成形で引き起こされるシェアーストレスや冷熱サ
イクルで剥離が起こらないことが好ましい。これを達成
するには断熱層と基金型の密着力、および断熱層と金属
層との密着力は室温で0.5kg/10mm幅以上であ
ることが好ましく、更に好ましくは0.8kg/10m
m幅以上、最も好ましくは1kg/10mm幅以上であ
る。本発明に述べる密着力は金型の主要部の密着力の最
小値である。
【0031】基金型と断熱層との密着力を向上させるた
め、基金型の表面に微細な凸凹状を形成したり、各種メ
ッキをしたり、プライマー処理をする等の一般の金属/
重合体接着技術で公知の方法が利用できる。CO基や、
SO2 基を多く含むポリイミド、例えばポリベンゾフェ
ノンテトラカルボン酸イミド、ポリアミドイミド、ポリ
イミドスルホン等は金属表面に特に密着しやすい。しか
し、これらのポリイミド樹脂は密着性に優れるものの耐
熱性にはやや劣ることから、この薄層をプライマー層と
して用い、この上に高耐熱性のポリイミドを被覆する方
法が特に好ましく利用できる。この場合も、プライマー
層のイミド化を完結させずに高耐熱性ポリイミドを塗る
ことが、密着力を高める上で好ましい。
【0032】本発明の断熱金型の断熱層の厚みは一般に
は0.05〜3mmの範囲で選択される。好ましくは
0.1〜0.8mmの極めて狭い範囲内で適度に選択さ
れる。その好ましい厚みは成形法に依存し、射出成形に
おいては好ましくは0.1〜0.5mm、更に好ましく
は0.12〜0.3mmである。またブロー成形におい
ては好ましくは0.3〜0.8mmであり、更に好まし
くは0.35〜0.7mmである。0.05mm未満の
薄い断熱層では成形品の型表面再現性等の成形性の改良
効果が小さい。3mmを超える断熱層厚みでは成形時の
冷却時間が長くなり、成形効率が低下する。
【0033】射出成形は一度の成形で複雑な形状の型物
が得られることが最大の長所であり、型キャビティは一
般に複雑な形状を有する。この複雑な形状の型キャビテ
ィ表面を鏡面状に断熱層等で被覆することは難しい。そ
のため被覆した断熱層を後から表面研磨したり、数値制
御フライス盤等の数値制御工作機械で削つた後に表面研
磨して鏡面状に仕上げることは良好な方法である。
【0034】本発明の断熱金型を構成する金属層は、基
金型表面に耐熱性重合体からなる断熱層を挟んで被覆積
層される。本発明における金属層の被覆方法として、一
般には金属を貼り付ける方法および基金型に積層した断
熱層にメッキ積層する方法等を挙げることができる。貼
り付け法としては、断熱層を積層した基金型に金属フィ
ルムを接着することによって積層する方法、または金属
フィルムに断熱層の全層もしくは部分層を予め積層し、
基金型に接着する方法等が挙げられる。ここで言う金属
フィルムとは必ずしも平面フィルムに限定しない。例え
ば、目的とする成形体の形状に予め形態を付与した金属
フィルムを、相対する形状の基金型に接着する場合も包
含する。
【0035】金属フィルムの接着法としては、断熱層の
耐熱性重合体が熱可塑性重合体であれば加熱溶融接着、
硬化性重合体であれば接着硬化、あるいは別に接着剤を
利用して接着する方法が利用できる。何れの接着方法を
利用するにせよ、その耐熱性が成形温度に耐えるもので
なければならないことは当然である。これに対してメッ
キ積層法は、金属層を断熱層に強固に密着できる点、お
よび複雑な金型形状に容易に対応できる点で特に好まし
く利用できる。本発明の断熱金型の金属層の積層方法の
好ましい態様を、メッキ積層法を例として具体的に説明
する。
【0036】メッキ積層法で本発明の断熱金型を製造す
るにおいては、公知の樹脂メッキ技術が利用できる。例
えば、断熱層の少なくとも上層にエッチング助剤を分散
させておき、エッチングしてからメッキすることによっ
て、密着した金属層を作成することができる。エッチン
グ助剤は断熱層全体に分散させておいても、断熱層の上
層部(金属層側)にのみ分散させておいてもよい。断熱
層の上層部にのみエッチング助剤を分散させる場合、エ
ッチング助剤を含有しない断熱層(以後、基断熱層とい
う。)に使用する耐熱性重合体と、エッチング助剤含有
断熱層に使用する耐熱性重合体とは同一でも異なるもの
でもよい。
【0037】断熱層の上層または全体に予めエッチング
助剤を分散しておき、これをエッチングすると、断熱層
表面に穴状、溝状あるいはこれを発生源としたクラック
状の深いエッチング傷をつけることができる。そして、
これに化学メッキすることによって、断熱層に強固に結
合した金属層を得ることができる。それ故、断熱層の金
属層側は、耐熱性重合体をマトリックス(連続相)と
し、金属層から延びた金属が穴、溝またはクラックに沿
って嵌入してなる重合体と金属の複合層となっている。
この複合層を十分な厚み、好ましくは0.1μm以上の
厚みで作ることが、耐久性のある金属層を積層する上で
重要である。
【0038】基断熱層上にエッチング助剤含有断熱層を
重ねて積層するには、基断熱層にエッチング助剤を分散
して含有する耐熱性重合体溶液、耐熱性重合体の前駆体
溶液あるいは液状前駆体を塗布あるいはスプレーする方
法が利用できる。好ましい態様として、耐熱性重合体が
ポリイミドでエッチング助剤が無機フィラーの場合を例
に、断熱層積層方法を詳細に説明する。
【0039】基金型のキャビティおよび基金型端面部
に、ポリイミド前駆体であるポリアミド酸の溶液を塗布
し、完全にはイミド化しない状態で加熱乾燥、塗布を繰
り返して所定の厚みまで積層する。次いで、無機フィラ
ーを分散して含有する同一のポリイミドの前駆体溶液を
重ねて塗布する。その後加熱してイミド化を完結してエ
ッチング助剤分散層を作る。また更に、各段階で必要に
より表面を研磨し平面だしを行う。これにより、ポリイ
ミドから成る断熱層の上層に無機フィラーが分散した構
造が達成できる。
【0040】その表面を強酸、強アルカリ溶液、強酸化
剤溶液、強還元剤溶液あるいはこれらの組み合わせで、
表層を分解しながらエッチングして、ポリイミド層表面
を深い凸凹状にする。次いで、中和、感受性化処理、活
性化処理を経て、化学メッキを行うことで、断熱層に金
属層から伸びた金属(アンカー)が嵌入してなる複合層
を作成する。その後熱処理し、更に金属層を電解メッキ
することにより、断熱層と強固に結合した金属層を作成
できる。
【0041】エッチングに用いる強酸としては、例えば
塩酸、硫酸、硝酸の水またはアルコール混液等が挙げら
れる。強アルカリとしては、例えば水酸化ナトリウム、
水酸化カリウムあるいは水酸化バリウム等の水またはア
ルコール溶液が挙げられる。強酸化剤としては、例えば
過マンガン酸塩やクロム酸塩等が挙げられ、強還元剤と
しては、例えばヒドラジン等が挙げられる。またエッチ
ング反応時に、耐熱性重合体と親和性が高く、かつエッ
チング剤溶液とも親和性のある溶剤で、予め耐熱性重合
体表面を膨潤させておくことは、エッチング反応を促進
させる上で好ましい場合がある。
【0042】具体的なエッチング助剤の種類とエッチン
グ方法を次に述べる。耐熱性重合体からなる断熱層の全
層あるいは上層に無機フィラー、有機フィラーあるいは
非相溶性の有機化合物等をエッチング助剤としてできる
だけ均一に分散させておき、エッチング助剤を溶解ある
いは分解除去する方法。この方法においてはエッチング
助剤はエッチング液で溶解あるいは分解しなければなら
ない。耐熱性重合体から成る断熱層の全層あるいは上層
に無機フィラーあるいは有機フィラー等をエッチング助
剤としてできるだけ均一に分散させておき、エッチング
助剤との界面にエッチング液を浸透させて、マトリック
ス相を部分的に侵食する方法。この方法においてはエッ
チング助剤はエッチング液で必ずしも溶解あるいは分解
する必要はない。エッチング液で分解あるいは抽出され
やすい重合体を混合、あるいはグラフトまたはブロック
共重合しておき、その後これをエッチングする方法。
【0043】無機フィラーの例としては炭酸カルシウ
ム、酸化ケイ素、ケイ酸カルシウム、タルク、アタパル
ジャイト、アスベスト、酸化マグネシウム、水酸化マグ
ネシウム、塩基性炭酸マグネシウム、ハイドロタルサイ
ト、アルミナ、水酸化アルミニウム、酸化アルミニウ
ム、ベントナイト、ゼオライト、カオリンクレー、パイ
ロフィライト、セリサイト、マイカ、硫酸カルシウム、
亜硫酸カルシウム、酸化チタン(ルチル、アナター
ゼ)、チタン酸カリウム、炭酸バリウム、硫酸バリウ
ム、チタン酸バリウム、酸化亜鉛、酸化ジルコン、ケイ
酸ジルコン、酸化鉄、二硫化モリブデン、三酸化アンチ
モン、窒化ケイ素、炭化ケイ素、カーボンブラック、黒
鉛粉末、炭素繊維等の無機物微粉末が挙げられる。好ま
しい無機フィラーは炭酸カルシウム、酸化ケイ素、硫酸
バリウム、酸化ジルコン、酸化アルミニウムおよび酸化
チタンであり、特に好ましくは酸化チタン、酸化ジルコ
ンおよび酸化アルミニウムが挙げられる。有機フィラー
の例としてはマトリックス非相溶性の粉体状ポリイミ
ド、粉体ポリフェニレンエーテル等の高軟化温度の重合
体の粉体が挙げられる。
【0044】これらの無機および有機フィラーの粒径
は、エッチングのポアーサイズ、ひいては複合層の金属
の嵌入構造のサイズに影響するため、好ましくは平均粒
径0.005〜5μm、より好ましくは0.01〜0.
5μm、特に好ましくは0.01〜0.1μmの範囲で
選ばれる。粒径が大きいと、得られる金属メッキ層の剥
離に対する耐性が十分に発現し難い。
【0045】非相溶性有機化合物とはマトリックスの耐
熱性重合体に非相溶な有機化合物であり、一般に結晶性
の有機化合物である。この非相溶性有機化合物およびエ
ッチングされやすい重合体等のエッチング助剤の耐熱性
重合体への分散は、通常耐熱性重合体との均一溶液を基
断熱層に塗布し、溶剤の乾燥を通してエッチング助剤を
不溶化、析出させることで達成できる。
【0046】非相溶性有機化合物の例としては、各種の
結晶性有機酸化合物およびその無機塩、アミド化合物お
よびエステル化合物等を挙げることができる。具体的な
例としてはステアリン酸やベヘン酸等の脂肪族のカルボ
ン酸や芳香族カルボン酸のカルシウム塩やポリアミド化
合物、ポリエステル化合物等が挙げられる。エッチング
されやすい重合体とは、エッチング液の組成、断熱層の
耐熱性重合体や複合層のマトリックス重合体にも関係
し、これらマトリックス重合体よりも相対的にエッチン
グされやすい、即ち溶出もしくは分解されやすい重合体
から広く選ぶことができる。例えばポリイミドを複合層
を含む断熱層に用いる場合、それよりエッチングされや
すい他のポリイミド、ポリアミド、ポリエステル、各種
共役ジエン重合体およびビニル重合体等が挙げられる。
【0047】これら断熱層の耐熱性重合体に分散させる
エッチング助剤の使用量は、エッチング助剤含有断熱層
(断熱層全体にエッチング助剤を含有させる時には全断
熱層)の体積の一般に0.1〜50体積%の範囲、好ま
しくは1〜30体積%、更に好ましくは3〜15体積%
である。エチング助剤の量が余りに少なくとも、また余
りに多くとも金属層の剥離に対する耐性の高い金属メッ
キを達成し難い。
【0048】本発明の断熱金型を構成する金属層は、断
熱層の上に幾つかの金属層を順次メッキすることにより
形成される。ここに述べるメッキ法は化学メッキ(無電
解メッキ)と電解メッキである。例えば連続して、化学
メッキおよび/または電解メッキして得られる。用いら
れる金属は、一般の金属メッキに用いられる金属であ
り、例えばクロム、ニッケル、銅等の1種または2種以
上である。良好に使用できるのは、例えば化学ニッケル
メッキ、電解ニッケルメッキ、化学銅メッキ、電解銅メ
ッキ、電解クロムメッキ等である。
【0049】次に金属層の作成方法について、エッチン
グ後の金属メッキ方法の例を挙げて具体的に説明する。
一般には次の工程のいくつかを経てメッキはなされる。
先ずエッチング助剤含有断熱層をエッチングした後、化
学メッキを行う。メッキ工程は、例えば、前処理→化学
腐食(酸やアルカリによる化学エッチング)→中和→感
受性化処理(合成樹脂表面に還元力のある金属塩を吸着
させて活性化する。)→活性化処理(触媒作用を有する
パラジウム等の貴金属を樹脂表面に付与する。)→化学
メッキ(化学ニッケルメッキ、化学銅メッキ等)→加熱
乾燥→電解メッキ(電解ニッケルメッキ、電解銅メッ
キ、電解クロムメッキ等)の順で一般には行われる。こ
の化学メッキ(例えば化学ニッケルメッキ)の上には各
種のメッキ層を更に付けることができる。その好ましい
具体例を次に示す。これ等のメッキから選択された少な
くとも1層が被覆されることが好ましい。 化学ニッケルメッキ 電解クロムメッキ 電解ニッケルメッキ 化学銅メッキ 電解銅メッキ 本発明の断熱金型においては、その金属層の表面は鏡面
状、艶消し状、しぼ状の何れでも良く、目的に応じて選
択される。なお、良好に使用できるしぼ形状は、例えば
革しぼ状、木目しぼ状、ヘアーライン状等のしぼパター
ンである。
【0050】このしぼ状にする方法は種々の方法で行う
ことができる。エッチング法は良好に使用でき、酸によ
るエッチング法は最も良好に使用できる。断熱金型の最
表面層が電解ニッケルメッキ、電解銅メッキ、燐含量の
少ない化学ニッケルメッキ等の酸溶液でエッチングでき
る金属であれば、一般の金属金型のしぼ化に使用されて
いるエッチング法と同様の方法でしぼ化ができる。即
ち、金属層表面を紫外線硬化樹脂を用いてしぼ状にマス
キングし、次いで酸エッチングでしぼ化する方法は良好
に使用できる。
【0051】金属層の厚みは、1〜300μmでかつ断
熱層の厚みの1/3以下であることが好ましい。更に好
ましい厚みは型表面が鏡面状、艶消し状、しぼ状の何れ
かにより異なる。また、用いる成形法が射出成形、ブロ
ー成形等の何れかによっても異なる。代表的な成形法に
おけるより好ましい断熱層の厚みとより好ましい金属層
の厚みの関係を次に示す。
【0052】射出成形法で鏡面状あるいは艶消し状成形
品を成形する場合には、より好ましくは断熱層の厚みが
0.1〜0.5mmで、金属層の厚みが断熱層厚みの1
/5以下で、かつ2〜40μmである。特に好ましくは
断熱層の厚みが0.12〜0.3mmで、金属層の厚み
が断熱層の厚みの1/100〜1/10で、かつ2〜3
0μmである。
【0053】射出成形法でしぼ状成形品を成形する場合
には、より好ましくは断熱層の厚みが0.1〜0.5m
mで、金属層の凸部の厚みが断熱層厚みの1/5以下
で、かつ10〜50μmであり、しぼ形状凹部の深さが
5〜40μmである。特に好ましくは断熱層の厚みが
0.12〜0.3mmであり、金属層の凸部の厚みが断
熱層厚みの1/5以下で、かつ10〜40μmであり、
しぼ形状凹部の深さが5〜35μmである。凹部の深さ
が大き過ぎると、凹部と凸部の型表面再現性に大きな差
が生じやすい。また、凹部の深さが小さ過ぎると、しぼ
形状にする効果が小さくなる。
【0054】ブロー成形で鏡面状あるいは艶消し状成形
品を成形する場合には、より好ましくは断熱層の厚みが
0.3〜0.8mmで、金属層の厚みが断熱層厚みの1
/5以下で、かつ2〜50μmである。特に好ましくは
断熱層の厚みが0.35〜0.7mmで、金属層の厚み
が断熱層の厚みの1/100〜1/5で、かつ2〜40
μmである。
【0055】ブロー成形でしぼ状成形品を成形する場合
には、より好ましくは断熱層の厚みが0.3〜0.8m
mであり、金属層の凸部の厚みが断熱層厚みの1/5以
下で、かつ10〜50μmであり、しぼ形状凹部の深さ
が5〜40μmである。特に好ましくは断熱層の厚みが
0.3〜0.7mmであり、金属層の凸部の厚みが断熱
層厚みの1/5以下で、かつ10〜40μmであり、し
ぼ形状凹部の深さが5〜35μmである。
【0056】本発明の断熱金型において、金属層表面が
艶消し状の場合には、金属層の平均厚みを金属層の厚み
とする。即ち、JIS・B0601で測定した平均線か
ら複合層との界面までの厚みを平均厚みとする。また、
金属層表面がしぼ状凸凹の場合には、しぼ形状を形成す
る金属層凸部から断熱層との界面までの厚みを金属層厚
みとする。金属層表面にしぼ状凸凹を有する場合に、し
ぼ形状を形成する金属層凸部の厚みを金属層厚みとする
のは、凸部の型表面再現性を良好にして、成形品全体の
ウエルドライン等の目立ちを低減するためである。しぼ
形状は凸部と凹部の一方が鏡面で、他方が艶消し面であ
ることが外観上好ましい。
【0057】金属層の厚みは均一であることが好まし
く、厚みのばらつきは好ましくは±10%以下、更に好
ましくは±5%以下である。金属層表面がしぼ状の凸凹
の場合には、凸部の金属層厚みあるいは凹部の金属層の
厚みが、それぞれ均一であることが好ましく、それぞれ
の厚みのばらつきは好ましくは±10%以下、更に好ま
しくは±5%以下である。金属層厚みのばらつきが大き
いと、金属層の厚い部分の型表面再現性が悪くなり、型
表面再現性が良い部分と悪い部分が同一成形品表面に現
れ、むらを生じやすい。
【0058】断熱金型において、断熱層と基金型の間、
あるいは断熱層と金属層の間の剥離の原因は熱膨張係数
の差だけではないが、熱膨張係数の差は大きな要因であ
る。断熱層と基金型および金属層との密着力が大きく、
低弾性率かつ高破断伸度の断熱層であれば、熱膨張係数
の差が若干大きくても剥離は生じない。しかし、断熱層
に適した材質、即ち高耐熱性かつ高硬度な断熱材は一般
に弾性率が大きく、特に主鎖に芳香環を有する耐熱性合
成樹脂がそれに該当する。耐熱性合成樹脂層を基金型お
よび/または金属層に密着させ、剥離を防ぐには熱膨張
係数の差が小さいことが好ましい。
【0059】射出成形やブロー成形等では成形される加
熱樹脂に接触する型表面は、成形毎に厳しい冷熱サイク
ルに曝される。一般に耐熱性重合体からなる断熱層より
金属層は熱膨張係数が小さく、熱膨張係数は大きく異な
る。そのため界面では成形毎に繰り返し応力が発生し、
剥離の一因となる。断熱層と接する基金型および金属層
と断熱層との熱膨張係数の差を小さくすることで剥離を
押さえることができる。
【0060】本発明の断熱金型において、断熱層と接す
る基金型および金属層の熱膨張係数と、断熱層の熱膨張
係数との差は4×10-5/℃未満であることが成形加工
時の冷熱サイクルに対する耐性の点で好ましい。更に好
ましくは3×10-5/℃未満である。一般に金属は重合
体より熱膨張係数が小さいので、熱膨張係数が小さい耐
熱性重合体を選択することが好ましい。
【0061】ここに述べる熱膨張係数は線膨張係数であ
る。断熱層の熱膨張係数は断熱層の面方向の線膨張係数
であり、JIS・K7197−1991に示される方法
で測定し、50℃と250℃の温度間の平均値、あるい
は断熱層のガラス転移温度が250℃以下の場合には、
50℃と該ガラス転移温度間の平均値で示す。即ち、平
滑な平板状金属の上に断熱層を形成し、次いで該断熱層
を剥離し、その断熱層の50℃と250℃の間、あるい
は50℃とガラス転移温度の間の平均熱膨張係数を測定
する。
【0062】本発明に良好に使用できる基金型の金属、
最表面に被覆する金属層の金属、断熱層の耐熱性重合体
および一般の合成樹脂の熱膨張係数を表1に示す。
【0063】
【表1】
【0064】※ これらの樹脂にはカーボン繊維を配合
することにより熱膨張係数を4×10 -5/℃付近まで低
減できる。また、基金型および金属層の熱膨張係数が大
きくなれば、相対的に熱膨張係数の大きい断熱層が使用
できる。金型材質として鋼鉄が最も多く使用されている
が、最近アルミニウム合金や亜鉛合金も使用される。本
発明では熱膨張係数が近ければ近い程好ましく、基金型
に鋼鉄を使用した場合には熱膨張係数が極めて小さい低
熱膨張型ポリイミド等は特に良好に使用できる。
【0065】次ぎに本発明の断熱金型の端面部の構造の
好ましい範囲について述べる。端面部の構造の好ましい
例を図1および2に示す。各部のサイズは次ぎのとおり
である。s1、s2は金属層の厚みであり、その好まし
い範囲は1〜300μmである。d1、d2は断熱層の
厚みであり、その好ましい範囲は0.05〜3mmであ
る。d0は堤の高さで、その範囲は0から(d2−10
μm)の範囲であり、特に好ましくはd2/2から(d
2−40μm)の範囲である。d0が0の場合図2は図
1の端面部の構造と同一になる。d0が大きいと金型端
部の耐久性は向上し、d0が小さいと金型端部の成形
性、即ち型表面再現性等は向上することになる。w2は
堤の幅(上面部で示す。)であり、その好ましい範囲は
0.1〜10mmであり、更に好ましくは0.2〜5m
m、特に好ましくは0.3〜1mmである。余りに狭い
と金型端部の耐久性が著しく低下し、余りに広いと金型
の断熱性、ひいては成形性、即ち型表面再現性等が低下
して好ましくない。
【0066】E1、E2は基金型の切り欠きの深さであ
る。ここに断熱層および金属層が順次積層されるので、
その断熱層および金属層からなる被覆層の厚み程度にな
るが、一般には50μm〜3mmの範囲で選ばれる。b
1、b2は切り欠き部に被覆される断熱層の厚みであ
る。通常は型キャビティ壁面に積層される断熱層の厚み
程度になるが、被覆時に断熱層を研磨して調整できる。
一般には0.01〜3mmの範囲で自由に選べるが、特
に好ましくは0.02〜0.2mmである。0.01m
m未満では端面部の断熱性が低下して好ましくなく、3
mmを超えると端面部の耐久性が低下して好ましくな
い。e1、e2は切り欠き部に被覆される金属層の厚み
である。通常は型キャビティ壁面に積層される金属層の
厚み程度になるが、被覆後に金属層を研磨して調整でき
る。一般には5〜1000μmの範囲で自由に選べ、好
ましくは10〜50μmである。5μm未満では端面部
の耐久性が低下して好ましくなく、1000μmを超え
ると端面部の断熱性が低下して好ましくない。
【0067】但しE1−(b1+e1)およびE2−
(b2+e2)の差値が好ましくは0〜100μm、更
に好ましくは0〜50μmの範囲である。この値が0よ
り小さいと合わせ部等で金属層が直接ぶつかったり、擦
れたりして金型断熱層の変形や破壊を来す原因となり好
ましくない。100μmを越えると合わせ部のバリ等の
成形問題が目立ち好ましくない。
【0068】F1、F2は基金型の切り欠きの幅であ
り、0.5mm以上、基金型の厚み未満の範囲で広く選
ぶことができるが、好ましくは1〜30mm、特に好ま
しくは2〜10mmの範囲である。余りに狭いと端面部
の被覆層の耐久性が低下して好ましくなく、余りに広い
と金型合わせ部の接触面積が小さくなり、基金型の強度
を低下させて好ましくない。
【0069】f1、f2は基金型端面部を被覆する金属
層の幅で0.2mm以上、基金型切り欠き幅未満であ
る。0.2mm未満では端面部の耐久性が著しく低下し
て好ましくなく、また金属層が基金型に直接接触すると
断熱性が低下して好ましくない。さらに端面部に積層さ
れる断熱層の幅は、金属層の幅を越えることが好まし
い。これが金属層の幅より小さいと、金属層と基金型の
直接接触が起りやすく、断熱性低下の原因となりやはり
好ましない。
【0070】本発明の断熱金型の性能を効果的に生かし
て合成樹脂を成形するには、金型温度条件の選定は重要
である。好ましくは金型温度を室温〜(合成樹脂の軟化
温度−20℃)に設定する。更に好ましくは(室温+5
℃)〜(合成樹脂の軟化温度−30℃)に設定して成形
する。このような金型温度とすることで、成形品は型表
面形状の再現性や外観に優れる成形体が得られる。ここ
に述べる金型温度は、断熱層と接する部分の基金型の成
形時の温度である。金型温度をこの範囲より高くすると
成形サイクルが長くなり、金型温度を室温以下にすると
型表面に結露等が起こり好ましくない。
【0071】本発明の断熱金型を用いる成形方法により
成形できる合成樹脂は、一般の射出成形やブロー成形に
使用できる熱可塑性樹脂である。例えばポリエチレン、
ポリプロピレン等のポリオレフィン、ポリスチレン、ス
チレン−アクリロニトリル共重合体、ゴム強化ポリスチ
レン、ABS樹脂等のスチレン系樹脂、ポリアミド、ポ
リエステル、ポリカーボネート、メタクリル樹脂、塩化
ビニル樹脂、ポリフェニレンエーテル等である。
【0072】合成樹脂には1〜60重量%の樹脂強化物
を含有させることができる。樹脂強化物とは各種ゴム、
ガラス繊維、カーボン繊維等の各種繊維、タルク、炭酸
カルシウム、カオリン等の無機粉末等である。本発明の
断熱金型が特に有効に使用できるのは、ゴム強化ポリス
チレン樹脂、ガラス繊維含量が15〜60重量%の各種
合成樹脂、ナイロン66、ナイロン6等のポリアミド樹
脂、アクリロニトリル含量が多いアクリロニトリル−ス
チレン共重合体、および該共重合体をマトリックスとす
るABS樹脂等である。
【0073】本発明の断熱金型は金型表面が断熱層で被
覆されており、例えば射出成形時に、その表面に射出さ
れた加熱樹脂が接触すると、型表面は樹脂の熱を受けて
昇温する。それ故、断熱層の断熱性が大きいほど型表面
温度は高くなり、成形性は改良されることになる。本発
明の断熱金型を用いる射出成形法には、ガスアシスト射
出成形、射出圧縮成形等の、成形時に合成樹脂が型壁面
を押し付ける圧力が低い、および/または合成樹脂の型
内流動速度が遅い低圧射出成形との組み合わせも含まれ
る。また、各種ブロー成形法においては、パリソンが型
表面に接触してから、ブロー圧力が成形品内面に十分に
かかるまでの時間が長いブロー成形に使用した場合に改
良効果が特に発揮される。
【0074】本発明の断熱金型は、例えば、弱電機器、
電子機器、事務機器等のハウジング、各種自動車部品、
各種日用品、各種工業部品等の一般の合成樹脂射出成形
品の成形加工に用いることができる。特に、ウエルドラ
インが出やすい電子機器、電気機器、事務機器のハウジ
ング等に用いると、極めて優れた型再現性と外観によっ
て、塗装等の後工程の省略や製造コストの低下等の効果
を達成できる。
【0075】また、本発明の断熱金型を用いる成形法の
特長である型再現性と外観特性を生かすには、即ち断熱
金型被覆層の金属表面状態、特にしぼ状態等をより効果
的に再現するには、従来の金属金型に比較してその抜き
勾配が大きいことが好ましい。しかし、一般に筐型ハウ
ジングを成形する場合、デザイン上、抜き勾配を大きく
することは問題が多い。この様な場合、本発明の断熱金
型が断熱層および金属層を順次積層した型キャビティ面
に分割面を有する分割金型であって、該分割面を構成す
る基金型の端面部が、断熱層および金属層からなる被覆
層で被覆されていることが好ましい。
【0076】このような断熱層および金属層を積層した
型キャビティ面に分割面を有する分割金型は、弱電機
器、電子機器、事務機器等のハウジング、特に金型から
成形体を取り出す時に、側面部の深さ10cm以上、さ
らには15cm以上の筐型ハウジングを成形する場合
に、特に好ましく利用できる。
【0077】
【発明の実施の形態】以下に本発明を実施例を挙げて説
明する。本実施例における金属層の製法、特性のタイプ
を次にまとめて示す。 金属層A:次亜燐酸ソーダを還元剤とし、低温、弱アル
カリ状態、低速度で化学ニッケルメッキを行い形成し
た、燐含量が少ない低燐化学ニッケルメッキ。
【0078】金属層B:次亜燐酸ソーダを還元剤とし、
高温、酸性状態、高速度で化学ニッケルメッキを行い形
成した、燐含量が比較的多い中燐化学ニッケルメッキ。 金属層C:次亜燐酸ソーダを還元剤とし、高温、酸性状
態、高速度で化学ニッケルメッキを行い形成した、燐含
量が多い高燐化学ニッケルメッキ。 金属層D:硫黄含有量が少ない半光沢電解ニッケルメッ
キ。
【0079】金属層E:硫黄含有量が多い光沢電解ニッ
ケルメッキ。 上記の各ニッケルメッキ層の熱膨張係数は、何れもほぼ
1.3×10-5/℃である。
【0080】
【実施例1】 1.断熱金型の製造方法 (1)金型構成 鋼鉄(S55C)製の筐型成形体(ハウジング)の射出
成形用の金型である。該金型の熱膨張係数は1.1×1
-5/℃である。図5に示す如く、固定側取付け板I、
割型ブロックJ、可動側板KおよびコアーLに囲まれて
キャビティGが存在する。固定側取付け板Iおよび割型
ブロックJのキャビティ表面は断熱層が積層されてい
て、基金型、断熱層および金属層から構成される。各割
型ブロック間および割型ブロックと固定側取付け板Iの
分割面は、本願に係る端面部構造を有している。基金型
の断熱層被覆面は銅−ニッケル−クロムメッキを重ねて
いる。 (2)断熱層 プライマー層:割型ブロックJの基金型表面にプライマ
ーとしてCO基含量の多い直鎖型ポリイミド前駆体の1
0重量%N−メチルピロリドンを主体とする溶剤溶液を
スプレーして約1μmの厚さに塗り、160℃で20分
間乾燥および部分的にイミド化反応を行った。 断熱層:そのプライマー上に、全芳香族ポリイミド系ワ
ニス(トレニース#3000 東レ(株)製 商品名)
を含む混液を繰り返しスプレー塗布した。各スプレー塗
布後は160℃で20分間加熱した。この塗布、加熱を
繰り返して200μmの厚みにした。 エッチング助剤含有層:最後に複合層を作るために、エ
ッチング助剤として酸化チタンをポリイミド100重量
部に対して11.0重量部分散したトレニース#300
0を含む混液をスプレー塗布して、10μmの厚みのエ
ッチング助剤含有層で最表面を被覆し、次いで290℃
に加熱してポリイミド層を完成した。 (3)メッキ方法 エッチング方法:得られた断熱層で被覆された金型は重
クロム酸カリウムと硫酸との混液を用い、攪拌しながら
エッチングを行った。 メッキ方法:得られた金型の断熱層面を感受性化処理、
活性化処理の順で処理し、次いで化学ニッケルメッキす
ることにより0.5μm厚の金属層Aを被覆し、その表
面上に5μmの金属層Dを被覆し、更にその表面上に金
属層E20μmを被覆した。 (4)パターンエッチング方法:得られた金属層被覆断
熱金型のキャビティ面の全面に、公知のエッチング法に
よりエッチングパターンシボを切った。鏡面部に対する
エッチング部の平均深さは約10μmであった。 (5)この様にして作成した断熱金型は端面部構造は図
1に示すとおりであった。各部の構造は次のとおりであ
る。 d1:断熱層厚みで200μm s1:金属層の厚みで30μm E1:切り欠きの深さで60μm b1:端面部の断熱層の厚みで30μm e1:端面部の金属層の厚みで20μm F1:切り欠きの幅で10mm f1:端面部の金属層被覆幅で5mm 2.断熱金型の性能評価 得られた断熱金型を用いて、熱可塑性樹脂としてゴム強
化ポリスチレン樹脂(旭化成ポリスチレン492 旭化
成工業(株)製 商品名)を成形温度230℃、金型温
度25℃で射出成形を行った。得られた結果を表2に示
す。
【0081】
【実施例2】割型ブロックJの端面部構造が図2に示す
ところであり、それ以外実施例1と同様の断熱金型構造
である。各部の構造は次ぎのとおりである。 d0:堤の高さで180μm d2:断熱層の厚みで200μm s2:金属層の厚みで30μm w2:堤の幅で1.0mm E2:切り欠きの深さで55μm b2:端面部の断熱層の厚みで30μm e2:端面部の金属層の厚みで20μm F2:切り欠きの幅で10mm f2:端面部の金属層被覆幅で8mm これを用いて実施例1と同様に成形評価した結果を表2
に示す。
【0082】
【実施例3】金属層Dにかえて金属層B、金属層Eにか
えて金属層Cにする以外は、実施例2と同様の断熱金型
構造を作成する。各部の構造は次ぎのとおりである。 d0:堤の高さで180μm d2:断熱層の厚みで200μm s2:金属層の厚みで25μm w2:堤の幅で1.0mm E2:切り欠きの深さで60μm b2:端面部の断熱層の厚みで30μm e2:端面部の金属層の厚みで22μm F2:切り欠きの幅で10mm f2:端面部の金属層被覆幅で4mm これを用いて実施例1と同様に成形評価した結果を表2
に示す。
【0083】
【比較例1】割型ブロックJの端面部構造が図3に示す
ところである。それ以外実施例1と同様の断熱金型構造
である。各部の構造は次ぎのとおりである。 d3:断熱層の厚みで200μm s3:金属層の厚みで25μm これを用いて実施例1と同様に成形評価した結果を表2
に示す。
【0084】
【比較例2】割型ブロックJの端面部構造が図4に示す
ところである。それ以外実施例1と同様の断熱金型構造
である。各部の構造は次ぎのとおりである。 d4:断熱層の厚みで200μm s4:金属層の厚みで25μm E4:切り欠きの深さで25μm e4:端面部の金属層の厚みで20μm F4:切り欠きの幅で10mm f4:端面部の金属層被覆幅で8mm これを用いて実施例1と同様に成形評価した結果を表2
に示す。
【0085】
【比較例3】割型ブロックJに断熱層を全く含まない単
なる金属金型を用い、実施例1と同様に成形評価した結
果を表2に示す。
【0086】
【表2】
【0087】<各評価の基準> ・金型耐久性 × 成形100回で金型端面部に一部断熱層剥離。 ○ 成形テスト3000回で金型および成形体の両者の
変形は実用的に認められない。 ◎ 成形テスト3000回で金型および成形体の両者に
変形は全く認められない。 ・パターン再現性 × パターン再現性は著しく劣る。 △ パターン再現性良好だが、端面部付近の再現性は劣
る。 ○ パターン再現性良好、端面部付近の再現性もほぼ良
好。 ◎ 全面に渡ってパターン再現性良好。 ・合わせ部状態 △ 成形100回目のサンプルで合わせ部に小さなバリ
上の盛り上がりが認めれた。 ○ 成形3000回で良好で、合わせ部に微小な盛り上
がりが認めれる程度。 ◎ 成形3000回で良好で、合わせ部のラインが認め
られる程度。
【0088】
【発明の効果】本発明の断熱性金型は優れた成形性を有
すると共に、成形加工時の厳しいシェアーストレスや冷
熱サイクルに対する耐性にも優れる。即ち、これを用い
て成形することにより、合成樹脂成形体の型表面形状の
再現性が良くなり、金型合わせ部の目立ちを低減できる
等の外観良好な成形品を成形でる。
【0089】また、断熱層および金属層が単に積層され
た断熱金型に比較して、金型端面部の耐久性、ひいては
断熱層の耐久性は顕著に優れる。これにより、金型の合
わせ部や端部を中心に、成形の繰り返しにともなう変
形、破損を原因に、合成樹脂成形品の対応する個所の成
形体欠陥が目立ってくる等の問題を避けることができ
る。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の断熱金型の端面部構造の一例を示す部
分断面図である。
【図2】本発明の断熱金型の端面部構造の一例を示す部
分断面図である。
【図3】比較例の従来公知の断熱金型の端面部構造の例
を示す部分断面図である。
【図4】比較例の断熱金型の端面部構造の例を示す部分
断面図である。
【図5】実施例および比較例で用いた割型部を有する射
出成形金型の主要部分を示す断面図である。
【符号の説明】
A 金属から成る基金型 A′ 基金型の堤部位 B 耐熱性重合体からなる断熱層 C 金属層 s1〜s4 金属層の厚み d0 堤の高さ d1〜d4 断熱層の厚み w2 堤の幅(上面幅で示す) E1、E2、E4 基金型の切り欠きの深さ F1、F2、F3 基金型の切り欠きの幅 f1、f2、f4 端面部の金属層被覆幅 e1、e2、e4 端面部の金属層の厚み G キャビティ H ロケートリング I 固定側取付け板 J 割型ブロック K 可動側板 L コアー M スプールブッシュ N アンギュラピン O スプール

Claims (9)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 金属からなる基金型の型キャビティ壁面
    に、耐熱性重合体からなる断熱層および金属層を順次積
    層した金型であって、該基金型の端面部が該断熱層およ
    び該金属層からなる被覆層で被覆されている断熱金型。
  2. 【請求項2】 請求項1記載の断熱金型が、耐熱性重合
    体からなる断熱層および金属層を順次積層した型キャビ
    ティ面に分割面を有する分割金型であって、該分割面を
    構成する基金型の端面部が、上記断熱層および金属層か
    らなる被覆層で被覆されている断熱金型。
  3. 【請求項3】 断熱層の厚みが0.05〜3mm、金属
    層の厚みが1〜300μmで、かつ断熱層の厚みの1/
    3以下である請求項1または2記載の断熱金型。
  4. 【請求項4】 基金型が0.1〜10mm幅の堤構造を
    有する請求項1、2または3記載の断熱金型。
  5. 【請求項5】 耐熱性重合体の軟化温度が成形温度より
    高く、かつ140℃以上である請求項1、2、3または
    4記載の断熱金型。
  6. 【請求項6】 金属層が化学メッキおよび/または電気
    メッキにより作成された金属層である請求項1、2、
    3、4または5記載の断熱金型。
  7. 【請求項7】 断熱層を構成する耐熱性重合体がポリイ
    ミドである請求項1、2、3、4、5または6記載の断
    熱金型。
  8. 【請求項8】 請求項1、2、3、4、5、6または7
    記載の断熱金型を用いて成形する樹脂成形方法。
  9. 【請求項9】 家電機器、事務機器の筐型ハウジングを
    成形する請求項8の樹脂成形方法。
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