JPH10156835A - 断熱金型およびその製造法 - Google Patents

断熱金型およびその製造法

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JPH10156835A
JPH10156835A JP31775496A JP31775496A JPH10156835A JP H10156835 A JPH10156835 A JP H10156835A JP 31775496 A JP31775496 A JP 31775496A JP 31775496 A JP31775496 A JP 31775496A JP H10156835 A JPH10156835 A JP H10156835A
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JP
Japan
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heat
mold
insulating layer
layer
heat insulating
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JP31775496A
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English (en)
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Takeshi Ikematsu
武司 池松
Motoo Noguchi
始男 野口
Nobuyoshi Umeniwa
信義 梅庭
Isao Umei
勇雄 梅井
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Asahi Chemical Industry Co Ltd
Original Assignee
Asahi Chemical Industry Co Ltd
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 優れた成形性を有すると共に、成形加工時の
厳しいシェアーストレスや冷熱サイクルに対する耐久性
に優れる、端部まで均一厚みの断熱層を有する断熱金型
およびその製造法を提供する。 【解決手段】 型キャビティを構成する型表面に、0.
05〜3mmの厚み範囲で耐熱性重合体からなる断熱層
を有し、且つ該断熱層が型表面の端部まで実質的に均一
な厚みである断熱金型。耐熱性重合体の溶液、耐熱性重
合体の前駆体溶液または耐熱性重合体の単量体を型表面
に塗布して形成する主断熱層と、型表面の端部およびそ
の周辺に塗布して形成する補助断熱層とを積層して得ら
れる断熱層を、切削および/あるいは研磨して端部まで
均一な断熱層を得る断熱金型の製造法。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は断熱金型及びその製
造法に関する。
【0002】
【従来の技術】近年、合成樹脂の射出成形品やブロー成
形品においては、塗装等の後加工を省略することで製造
コストを低下、塗装時の溶剤蒸発等による環境破壊の低
減等のため、表面状態を改良して無塗装にしたいという
要望が強い。電気機器、電子機器、事務機器等の合成樹
脂製ハウジング等については、この後加工を省略するこ
との要望が特に強い。
【0003】熱可塑性樹脂を金型キャビティへ射出して
成形し、型表面状態の再現性改良や成形品の外観等の表
面状態改良には、樹脂温度や金型温度を高くしたり、射
出圧力を高くする等の成形条件による対応が通常選ばれ
る。ブロー成形においても同様で、成形品の外観の改良
には樹脂温度や金型温度を高くしたり、ブローガス圧力
を高くする等の成形条件による対応が通常選ばれる。
【0004】これ等の要因の中で、特に大きな影響があ
るのは金型温度である。金型温度を高くする程、これ等
の外観等の性能は改良できる。しかし、金型温度を高く
すると、可塑化された樹脂の冷却固化に要する時間が長
くなり、一般に成形能率は低下する。それ故、金型温度
を高くすることなく型表面の再現性を良くする方法、ま
たは金型温度を高くしても冷却時間が長くならない方法
が強く要求されている。
【0005】例えば、金型に加熱用、冷却用の穴をそれ
ぞれ取付けておき交互に熱媒、冷媒を流して金型の加
熱、冷却を繰り返す方法が、Plastic Tech
nology,June,P.151(1988)等に
開示されているが、この方法では熱エネルギーの消費量
が多く、成形能率も十分には上がらない。金型キャビテ
ィを形成する型表面を熱伝導率の小さい物質による断熱
層で被覆した金型、即ち断熱金型についてWO・93/
06980等で開示されている。また、断熱層表面をさ
らに薄肉金属層で被覆した金型も公知である。例えば、
特開昭53−86754号公報には金属製の金型表面に
断熱層を被覆し、さらにその断熱層表面に薄肉金属層を
被覆した断熱金型が開示されている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】金型表面を断熱層で被
覆するところの金型の型キャビティは通常は単なる平面
ではない。複雑な形状をしており、耐熱性重合体の溶液
等を均一な厚みに塗布することは極めて困難である。例
えば、主金型の固定側を1個以上の金型入れ子で構成す
る場合、各金型入れ子は別々に耐熱性重合体の溶液等を
塗布して断熱層を積層した後、金型に組み立てられる。
各金型入れ子間で、または金型入れ子と固定側主金型の
間で、合わせ部に断熱層の厚みむらによる段差が生じや
すく、これを用いて射出成形を行うと、ウェルドライン
が目立って良好な成形体は得られない。
【0007】即ち、各金型入れ子の端部は、耐熱性重合
体の溶液等の塗布時、液の表面張力や液垂れのためか、
金型端部には液がのり難く、断熱層の均一厚み積層は極
めて困難であるという金型制作における問題があった。
また、このような困難を何らかの方法で回避して達成し
た断熱金型にもさらなる問題がある。即ち、この断熱金
型を用いることによって、成形性は顕著に改良でたとし
ても、断熱層と金属層は成形時の冷熱サイクルやシェア
ーストレスにより剥離しやすく、特に金型端部の耐久性
等にも問題があった。
【0008】本発明の目的は、金属から成る基金型の型
キャビティ壁面に、耐熱重合体からなる断熱層を積層し
た断熱金型、必要によりさらに金属層を積層した断熱金
型における断熱層積層法の改善手段の提供にある。また
今一つの目的は断熱金型の成形加工における金型の耐久
性を改善するための手段の提供にある。
【0009】
【課題を解決するための手段】本発明は以下のとおりで
ある。 1. 金属からなる基金型の型キャビティを構成する型
表面に、0.05〜3mmの厚み範囲で耐熱性重合体か
らなる断熱層を積層した断熱金型であって、且つ型表面
の端部まで均一な厚みの断熱層を有する断熱金型。 2. 金属からなる基金型の型キャビティを構成する型
表面に、耐熱性重合体の溶液、耐熱性重合体の前駆体溶
液または耐熱性重合体の単量体を塗布して主断熱層を形
成する工程を少なくとも一回、及び型キャビティを構成
する型表面の端部及びその周辺に上記耐熱性重合体と同
一あるいは異なる種類の耐熱性重合体の溶液、耐熱性重
合体の前駆体溶液または耐熱性重合体の単量体を塗布し
て補助断熱層を形成する工程を少なくとも一回行って断
熱層を積層した後に、該断熱層を切削および/あるいは
研磨して型表面の端部まで実質的に均一な厚みにする上
記1の断熱金型の製造法。 3. 断熱層形成工程が、型キャビティを構成する型表
面全体に主断熱層を形成する工程を行った後に補助断熱
層を形成する工程を行う上記2の断熱金型の製造法。 4. 断熱層形成工程が、補助断熱層を形成する工程を
行った後に型キャビティを構成する型表面全体に主断熱
層を形成する工程を行う上記2の断熱金型の製造法。 5. 補助断熱層の弾性率が、主断熱層の弾性率の2倍
以上である上記3または4の断熱金型の製造法。 6. 断熱金型の端部を構成する断熱層の平均弾性率
が、断熱金型の端部およびその周辺以外を構成する断熱
層の平均弾性率の2倍以上である上記1の断熱金型。 7. 型キャビティを構成する型表面の端部以外に耐熱
性重合体の溶液、耐熱性重合体の前駆体溶液または耐熱
性重合体の単量体を塗布して主断熱層を作成し、且つ補
助断熱層の弾性率が、主断熱層の弾性率の2倍以上であ
る上記2の断熱金型の製造法。 8. 上記2、3、4、6または7の断熱金型の製造法
で得られた断熱金型の断熱層上に、1〜300μmの厚
みでかつ該断熱層の厚みの1/3以下の金属層を形成す
る断熱金型の製造法。 9. 断熱層の少なくとも最上層に無機フィラーを分散
した断熱層を形成し、エッチングした後に金属層を形成
する上記8の断熱金型の製造法。 10. 上記2、3、4、5、7、8または9の断熱金
型の製造法により得られる断熱金型。
【0010】本発明において、断熱金型の端部とは、断
熱金型間の型キャビティ合わせ部、あるいは断熱金型と
金属のみから成る金型との型キャビティ合わせ部を構成
する断熱金型の部位をいう。基金型とは断熱層や金属層
を積層前の金型をいう。また、切削および/あるいは研
磨とは何ら削り方の限定を意味しない。切削とは断熱層
表面を刃物で削り取ること、研磨とは砥石や研磨紙で擦
り取ることをイメージしているが、要は何らかの方法で
所定の厚みまで、不要な断熱層を除去できればよい。
【0011】主断熱層と補助断熱層との定義は、型キャ
ビティの型表面の端部およびその周辺に塗布し、形成さ
れる断熱層が補助断熱層、型キャビティの型表面の全体
あるいは端部以外に塗布し、形成される断熱層が主断熱
層である。また、単に断熱層という場合は断熱層全体を
意味する。次に、本発明の概略を図を用いて具体的に説
明する。
【0012】図1は金型入れ子の基金型1の型表面2に
断熱層3を均一厚みに積層した本発明が目的とする断熱
金型の一例である。図2は金型入れ子の基金型1の型表
面2に断熱層3を均一厚みに積層した後、さらに金属層
4を積層した本発明が目的とする断熱金型の一例であ
る。図3は金型入れ子の基金型が端部に堤構造(基金型
端部の突起)を有し、型表面2に断熱層3が均一になる
ように積層した後、さらに金属層4を積層した本発明が
目的とする断熱金型の今一つの例である。ここに金型入
れ子は基金型、断熱層さらには必要により金属層から成
る。
【0013】図4は従来技術に基づく断熱金型およびそ
の製造法の問題点を示す。図4−1において金型入れ子
の基金型1の型表面2に耐熱性重合体の溶液等を塗布
し、加熱等により固化して断熱層3を積層する。基金型
の端部6に断熱層の薄肉部位7が発生し、場合により端
部より内に入った部位に断熱層の厚肉部位8が発生す
る。図4−2に示す如く、この断熱金型を切削して平滑
にしても端部6の断熱層部位7が薄肉の断熱層になり、
図1に示す端部まで均一な厚みの断熱金型は得られな
い。この断熱金型の入れ子を用いて射出成形すると、断
熱層の薄肉部位7に対応する箇所は成形体部位が膨れた
形状になり、実用にならない。断熱材を通常の方法で塗
布することにより断熱層を積層すればこの不良が発生す
る。
【0014】図5は本発明の断熱金型及び断熱金型の製
造法一つの態様を示す。図5−1において金型入れ子の
基金型1の型表面2に耐熱性重合体の溶液等を塗布し、
加熱等により固化して主断熱層9を積層する。基金型の
端部6およびその周辺に断熱層の薄肉部位7が発生し、
場合により端部より内に入った部位に厚肉の断熱層の部
位8が発生する。その後さらに端部およびその周辺に上
記耐熱性重合体と同一あるいは異なる種類の耐熱性重合
体の溶液等を塗布し、加熱等により固化して補助断熱層
10を積層する。図5−2は得られた断熱層を切削およ
び/あるいは研磨した本発明の断熱金型の一例である。
金型入れ子の基金型1の型表面2に主断熱層9並びに端
部およびその周辺に補助断熱層10が積層されている。
【0015】図6は本発明の断熱金型及びその製造法の
一つの態様を示す。図6は図5と主断熱層と補助断熱層
との積層順序が逆になっている。図6−1において予
め、金型入れ子の基金型1の型表面2の端部6およびそ
の周辺のみに耐熱性重合体の溶液等を塗布し、加熱等に
より固化して補助断熱層10を先ず積層する。次いで型
表面全体に該耐熱性重合体と同一あるいは異なる種類の
耐熱性重合体の溶液等を塗布し、加熱等により固化して
補助断熱層9を積層する。図6−2は得られた断熱層を
切削して得た本発明の断熱金型である。金型入れ子の基
金型1の型表面2に主断熱層9並びに端部およびその周
辺に補助断熱層10が積層されている。
【0016】図7は本発明の断熱金型およびその製造法
の一つの態様を示す。図5および6と比較して図7にお
いては基金型の端部6およびその周辺に主断熱層を全く
積層しないで、補助断熱層10のみを積層する。図7−
1において端部6およびその周辺を除く、金型入れ子の
基金型1の型表面2に耐熱性重合体の溶液等を塗布し、
加熱等により固化して主断熱層9を積層する。その後さ
らに端部およびその周辺に該耐熱性重合体と同一あるい
は異なる種類の耐熱性重合体の溶液等を塗布し、加熱等
により固化して補助断熱層10を積層する。図7−2は
得られた断熱層が積層した金型を研削した本発明の断熱
金型の一例である。金型入れ子の基金型1の型表面2に
主断熱層9並びに端部およびその周辺に補助断熱層10
が積層されている。また、主断熱層と補助断熱層の積層
順序を逆にすることも可能である。
【0017】図8に本発明の断熱金型およびその製造法
のもう一つの態様を示す。図8において、金型入れ子の
基金型1の型表面に主断熱層9、9′および補助断熱層
10、10′とが交互に複数層積層されている。次に本
発明をさらに詳細に説明する。本発明の断熱金型を構成
する基金型の材質は、鉄または鉄を主成分とする鋼材、
アルミニウムまたはアルミニウムを主成分とする合金、
ZAS等の亜鉛合金、ベリリウム−銅合金等の一般に合
成樹脂の成形に使用されている金属からなる金型を広く
包含する範囲から選ばれる。特に鋼材からなる金型は安
価でかつ良好に使用できる。これ等の金属からなる基金
型の断熱層と接する型表面は硬質クロムやニッケル等で
メッキされていることが好ましい。基金型の形体は、目
的とする合成樹脂成形体の形状によって異なる。
【0018】基金型に必要により設けられる堤構造は基
金型作成時に通常の金属加工法により作ることができ
る。例えば、フライス盤による切り出し、あるいは堤を
溶接後に仕上げる等の加工法が利用できる。図3におけ
る堤構造の高さhは0〜(d3−10μm)の範囲、好
ましくは(d3)/2〜(d3−40μm)の範囲であ
る。堤の頂部幅wは好ましくは0.1〜10mmであ
り、さらに好ましくは0.2〜5mm、特に好ましくは
0.3〜1mmの範囲である。ここに、d3は断熱層の
厚みである。
【0019】hが大きいと金型端部の耐久性は向上し、
hが小さいと金型端部の成形性、即ち型表面再現性等は
向上する。また、wが余りに小さいと堤構造を設けるこ
との目的である耐久性向上効果が十分に達成できない。
また、余りに広いと金型端部の成形性が低下して好まし
くない。通常、本断熱金型の代表的用途である射出成形
は一度の成形で複雑な形状の型物が得られることが最大
の長所であり、型キャビティは一般に単なる平面ではな
く、複雑な形状を有する。この複雑な形状の型キャビテ
ィ表面に均一厚みで、平滑に断熱層等で被覆することは
難しい。そのため所定の厚み以上に被覆した断熱層をフ
ライス盤等の加工機器で削つたり、表面研磨して平滑に
仕上げる方法は好ましく利用できる。
【0020】特に、厚く積層した断熱層を、切削および
/あるいは研磨して型表面の端部まで実質的に均一な厚
みにするには、数値制御フライス盤等の数値制御機器は
特に好ましく利用できる。この場合、制御数値データー
は断熱層の積層前の基金型の形状データーを入力してお
く、または断熱層厚みを測定しながら切削および/ある
いは研磨する等の対応が必要である。
【0021】しかしながら、単なる塗布方法では型表面
端部には断熱層の薄肉部位が発生し、場合により端部よ
り内に入った部位に断熱層の肉厚部位が発生する。この
断熱層を切削して平滑にしても端部の断熱層部位は薄肉
層になり(図4−2)、本発明の目的とする型表面の端
部まで実質的に均一な厚みの断熱層を有する断熱金型は
得られない。それ故、主断熱層の積層に先立って、ある
いは積層の後に、薄肉部分を補完する目的で補助断熱層
を薄肉発生部位である端部およびその周辺に積層する事
が必要である。
【0022】即ち、本発明の断熱金型の断熱層は主断熱
層と補助断熱層とに分割して積層する。主断熱層と補助
断熱層とは強固に密着していることが必要であり、十分
な密着強度が達成されれば、両層に用いる耐熱性重合体
は同一あるいは異なる種類から選ぶことができる。これ
等の断熱層は耐熱性重合体の溶液、耐熱性重合体の前駆
体溶液または耐熱性重合体の単量体を塗布し、乾燥、硬
化あるいは重合することよって積層される。
【0023】断熱層に用いられる耐熱性重合体の破断伸
度は好ましくは4%以上、さらに好ましくは5%以上、
特に好ましくは10%以上である。破断伸度の測定法は
ASTMD638に準じて行い、測定時の引っ張り速度
は5mm/分である。断熱層は成形加工時の圧力やシェ
アーストレスによる変形に耐えるために高弾性率である
ことが必要である。また、冷熱サイクル等による熱膨張
あるいは収縮に耐えるにはある程度の伸びも必要であ
る。すなわち、靱性の高い重合体が好ましい。しかしな
がら、弾性率が高い事と伸びが大きい事とは、一般に相
反する特性である。
【0024】断熱層を主断熱層と補助断熱層に分割して
積層するに際し、補助断熱層の弾性率は主断熱層の弾性
率より高い事が好ましく、さらには2倍以上、特に5倍
以上であることが好ましい。これは、金型端部及びその
周辺の断熱層は、シェアーストレスによる変形や磨耗へ
の耐性が特に必要であり、高い弾性率が求められる。反
面、その積層幅が狭いために冷熱サイクルに伴う膨張、
収縮サイクルによる耐久性への影響が相対的に小さい。
そして、金型の端部を除く大半を占める断熱層には丁度
この逆が言える。弾性率はJIS・K7161−199
4に示される引っ張り弾性率で測定される。
【0025】このように金型の端部を除く大半を占める
断熱層が相対的に柔軟性の高い主断熱層からなり、型表
面の周辺部位が高い弾性率の補助断熱層からなる本発明
の断熱金型は、成形加工時の冷熱サイクルとシェアース
トレスの両者に対する極めて高い耐性を示す。本発明の
断熱金型製造における主断熱層と補助断熱層の積層の順
序は、主断熱層を形成した後に補助断熱層を形成して
も、補助断熱層を形成した後に主断熱層を形成しても良
いが、金型作成の容易さの点からは主断熱層、補助断熱
層の積層順であることが好ましい。即ち、主断熱層を目
標厚みに塗布した後、薄肉部位辺に補助断熱層を積層す
ることは、金型作成時の操作性に優れる。しかしながら
金型の耐久性向上の点では補助断熱層、主断熱層の積層
の順であることが好ましく、特に補助断熱層の弾性率が
主断熱層の弾性率より高い時に、耐久性が効果的に発揮
される。即ち、高弾性な補助断熱層を基金型に末広がり
に強固に金型端部を固め、その内側を相対的に柔軟性に
富む主断熱層を積層することは、特に好ましい態様であ
る。このようにして得られた断熱金型の端部の断熱層の
弾性率が、断熱金型の端部およびその周辺を除く断熱層
の弾性率より高いことが好ましく、2倍以上高いことが
より好ましく、5倍以上であることが特に好ましい。ま
た、補助断熱層と主断熱層とを交互に積層を重ねる方法
も好ましい態様である。
【0026】本発明の断熱金型を構成する断熱層は、耐
熱性重合体から成る。耐熱性重合体は、成形される合成
樹脂の成形温度より高い軟化温度の熱可塑性重合体や、
成形温度より高い耐熱性の硬化性樹脂から選ばれる。好
ましくは、成形される合成樹脂の成形温度より軟化温度
が高く、かつガラス転移温度が140℃以上、さらに好
ましくは160℃以上、特に好ましくは190℃以上お
よび/または融点が200℃以上、さらに好ましくは2
50℃以上の重合体である。
【0027】合成樹脂の軟化温度とは合成樹脂が容易に
変形し得る温度である。非結晶性樹脂ではビカット軟化
温度(ASTM D1525)、硬質結晶性樹脂では熱
変形温度(ASTM D648 荷重18.6kg/c
2 )、軟質結晶性樹脂では熱変形温度(ASTM D
648 荷重4.6kg/cm2 )でそれぞれ示される
温度とする。非結晶性樹脂とは、例えばポリスチレン、
ゴム強化ポリスチレン、AS樹脂、ABS樹脂、ポリカ
ーボネート、メタクリル樹脂、塩化ビニル樹脂、ポリフ
ェニレンエーテル等であり、硬質結晶性樹脂とは、例え
ばポリオキシメチレン、ナイロン6、ナイロン66等で
あり、軟質結晶性樹脂とは、例えば各種ポリエチレン、
ポリプロピレン等である。成形温度とはキャビティに注
入される樹脂温度である。
【0028】本発明の断熱層として使用できる耐熱性重
合体は上記の軟化温度の耐熱性重合体から広く選ぶこと
ができるが、特に好ましい耐熱性重合体は、主鎖に芳香
環を有する耐熱性重合体である。各種芳香族系の非結晶
性あるいは結晶性の耐熱性重合体、例えばポリイミドや
芳香族複素環状ポリマー、エポキシ樹脂、ポリスルホ
ン、ポリエーテルスルホン等が良好に使用できる。
【0029】ポリイミドとしては、各種直鎖型非熱可塑
ポリイミド樹脂、直鎖型熱可塑ポリイミド樹脂および熱
硬化型ポリイミド樹脂が広く利用できる。直鎖型非熱可
塑ポリイミド樹脂として、例えばポリピロメリット酸イ
ミド系、ポリフェニルテトラカルボン酸イミド系、ポリ
ベンゾフェノンテトラカルボン酸イミド系、ポリアミド
イミド、ポリエーテルイミドが挙げられ、直鎖型熱可塑
ポリイミド樹脂としてポリベンゾフェノンテトラカルボ
ン酸イミド系、ポリビフェニルテロラカルボン酸イミド
系が挙げられ、熱硬化型ポリイミド樹脂としてビスマレ
イミド系樹脂、ナジック変成ポリイミド、ディールスア
ルダー型ポリイミド等が挙げられる。
【0030】一般に高分子量の直鎖型ポリイミドは破断
伸度が大きく強靱で、耐久性に優れ、フッ素含有ポリイ
ミドは耐湿性(断熱層の耐湿性が改善され、樹脂中に残
存する水分量が低くなり、水分の発泡による断熱層や金
属層の剥離が押さえられる。)に優れ、場合により好ま
しく使用できる。芳香族複素環状ポリマーとしてはポリ
ベンゾアゾール類(例えばポリベンゾイミダゾール、ポ
リベンゾオキサゾール、ポリベンゾチアゾール、ポリエ
ーテルベンゾオキサゾール)、ポリヒダントイン類(例
えばポリイミダゾリジン−2,4−ジオン)およびポリ
パラバン酸類(例えばポリイミダゾリジン−2,4,5
−トリオン)等を挙げることができる。
【0031】これ等の耐熱性重合体は、成形時の冷熱サ
イクルに対する耐性を向上するために、無機フィラー、
ウィスカー、無機繊維等の充填材を配合することで熱膨
張係数を低下させることができる。この熱膨張係数を低
下させた耐熱性重合体は、断熱層として好ましく使用で
きる。これ等の充填材を配合した耐熱性重合体は、その
配合量にもよるが弾性率が顕著に高くなる。それ故、補
助断熱層として特に好ましく利用でき、上記充填材の配
合量を調節することにより好ましい弾性率の耐熱性重合
体を得ることができる。
【0032】無機フィラーの例としては炭酸カルシウ
ム、酸化ケイ素、ケイ酸カルシウム、タルク、アタパル
ジャイト、アスベスト、酸化マグネシウム、水酸化マグ
ネシウム、塩基性炭酸マグネシウム、ハイドロタルサイ
ト、アルミナ、水酸化アルミニウム、酸化アルミニウ
ム、ベントナイト、ゼオライト、カオリンクレー、パイ
ロフィライト、セリサイト、マイカ、硫酸カルシウム、
亜硫酸カルシウム、酸化チタン(ルチル、アナター
ゼ)、チタン酸カリウム、炭酸バリウム、硫酸バリウ
ム、チタン酸バリウム、酸化亜鉛、酸化ジルコン、ケイ
酸ジルコン、酸化鉄、二硫化モリブデン、三酸化アンチ
モン、窒化ケイ素、炭化ケイ素、カーボンブラック、黒
鉛粉末、炭素繊維等の無機物微粉末が挙げられる。
【0033】ウィスカーの例としてはホウ酸アルミニウ
ム、炭化ケイ素、窒化ケイ素、チタン酸カリウム、塩基
性硫酸マグネシウム、酸化亜鉛、グラファイト、マグネ
シア、硫酸カルシウム、Na2 Ca2 2 8 、ホウ酸
マグネシウム、酸化チタン、α−アルミナ、クリソタイ
ル、クラストナイト等が挙げられる。無機繊維の例とし
てはEガラス繊維、シリカアルミナガラス繊維、シリカ
ガラス繊維等の非晶質繊維およびチラノ繊維、炭化ケイ
素繊維、ジルコニア繊維、アルミナ繊維、炭素繊維等の
結晶質繊維が挙げられる。
【0034】また、熱膨張係数の小さいエポキシ樹脂ま
たは各種充填材を適量配合したエポキシ樹脂等も好まし
く使用できる。一般にエポキシ樹脂は熱膨張係数が大き
いために、金属金型との熱膨張係数の差は大きく、冷熱
サイクルによる劣化を受けやすい。しかし、熱膨張係数
が小さい、例えばガラス、シリカ、タルク、クレー、ケ
イ酸ジルコニウム、ケイ酸リチウム、炭酸カルシウム、
アルミナ、マイカ等の粉体や粒子、ガラス繊維、ウィス
カー、炭素繊維等の適量を配合し、金属金型との熱膨張
係数の差を小さくした充填材配合エポキシ樹脂は、本発
明の断熱層として良好に使用できる。また、エポキシ樹
脂あるいは充填材配合エポキシ樹脂に、さらにナイロン
等の強靱な熱可塑性樹脂、ゴム等の強靱性を与える各種
配合物を加えた配合エポキシ樹脂も良好に使用できる。
さらにエポキシ樹脂にポリイミド等を配合して硬化した
ポリマーアロイは靱性に優れ、良好に使用できる。
【0035】これ等の耐熱性重合体の熱伝導率は、一般
に0.0001〜0.002cal/cm・sec・℃
と、金属より大幅に小さく断熱層として効果的に働く。
しかし、無機フィラーや熱伝導度の高い充填材を多量に
混合することは、断熱層の熱伝導率や熱容量を上げて好
ましくない場合がある。無機フィラーを充填材として混
合した組成物を用いる場合、熱伝導率は、好ましくは
0.01cal/cm・sec・℃以下、さらに好まし
くは0.005cal/cm・sec・℃以下、特に好
ましくは0.002cal/cm・sec・℃以下に押
さえる。
【0036】基金型表面に耐熱性重合体の溶液、耐熱性
重合体の前駆体溶液または耐熱性重合体の前駆体溶液を
塗布する方法は、金型表面に液をなるべく均一に塗れば
よいのであって、特に限定するものではない。例えば、
液塗り塗布法あるいはスプレー塗布法が好ましく利用で
きる。液塗り法あるいはスプレー法は耐熱性重合体溶
液、耐熱性重合体前駆体溶液または液状前駆体を液塗り
あるいはスプレーし、次いで加熱乾燥あるいは硬化して
耐熱性重合体の断熱層を積層させる方法であり、実用的
に利用できる。この方法においては、用いる耐熱性重合
体あるいは耐熱性重合体の前駆体は溶剤に溶解できる
か、液状であることが必要である。例えば、ポリイミド
の前駆体であるポリアミド酸の溶液を塗布し、次いで乾
燥、加熱キュアを行い型表面上にポリイミド層を積層す
る方法は良好に使用できる。積層を重ねる場合、もしく
は主断熱層と補助断熱層とを重ねる場合、各積層段階で
完全に乾燥、硬化あるいは重合する前に積層を重ねるこ
とが、層間の剥離を防ぐ点で好ましい。
【0037】本発明の断熱金型においては断熱層と基金
型の密着力、および断熱層と必要により設けられる金属
層との密着力は十分大きいことが必要である。具体的に
は一万回を超える合成樹脂の成形で引き起こされるシェ
アーストレスや冷熱サイクルで剥離が起こらないことが
好ましい。これを達成するには断熱層と基金型の密着
力、および断熱層と金属層との密着力は室温で0.5k
g/10mm幅以上であることが好ましく、さらに好ま
しくは0.8kg/10mm幅以上、最も好ましくは1
kg/10mm幅以上である。本発明に述べる密着力は
金型の主要部の密着力の最小値である。
【0038】基金型と断熱層との密着力を向上させるた
め、基金型の表面に微細な凸凹状を形成したり、各種メ
ッキをしたり、プライマー処理をする等の一般の金属/
重合体接着技術で公知の方法が利用できる。CO基や、
SO2 基を多く含むポリイミド、例えばポリベンゾフェ
ノンテトラカルボン酸イミド、ポリアミドイミド、ポリ
イミドスルホン等は金属表面に特に密着しやすい。しか
し、これ等のポリイミド樹脂は密着性に優れるものの耐
熱性にはやや劣ることから、この薄層をプライマー層と
して用い、この上に高耐熱性のポリイミドからなる主断
熱層もしくは補助断熱層を被覆する方法が特に好ましく
利用できる。この場合も、プライマー層のイミド化を完
結させずに高耐熱性ポリイミドを塗ることが、密着力を
高める上で好ましい。
【0039】本発明の断熱金型の断熱層の厚みは一般に
は0.05〜3mmの範囲で選択される。好ましくは
0.1〜0.8mmの極めて狭い範囲内で適度に選択さ
れる。その好ましい厚みは成形法に依存し、射出成形に
おいては好ましくは0.1〜0.5mm、さらに好まし
くは0.12〜0.3mmである。またブロー成形にお
いては好ましくは0.3〜0.8mmであり、さらに好
ましくは0.35〜0.7mmである。0.05mm未
満の薄い断熱層では成形品の型表面再現性等の成形性の
改良効果が小さい。3mmを超える断熱層厚みでは成形
時の冷却時間が長くなり、成形効率が低下する。
【0040】本発明の断熱金型に必要により設けられる
金属層は、基金型表面に耐熱性重合体から成る断熱層を
挟んで被覆積層される。本発明における金属層の被覆方
法として、一般には金属を貼り付ける方法および基金型
に積層した断熱層にメッキ積層する方法等を挙げること
ができる。貼り付け法としては、断熱層を積層した基金
型に金属フィルムを接着することによって積層する方
法、金属フィルムに断熱層の一部を予め積層し、基金型
に接着する方法等が挙げられる。ここでいう金属フィル
ムとは必ずしも平面フィルムに限定しない。例えば、目
的とする成形体の形状に予め形態を付与した金属フィル
ムを、相対する形状の基金型に接着する場合も包含す
る。金属フィルムの接着法としては、断熱層の耐熱性重
合体が熱可塑性重合体であれば加熱溶融接着、硬化性重
合体であれば接着硬化、あるいは別に接着剤を利用して
接着する方法が利用できる。何れの接着方法を利用する
にせよ、その耐熱性が成形温度に耐えるものでなければ
ならないことは当然である。
【0041】これに対してメッキ積層法は、金属層を断
熱層に強固に密着できる点、および複雑な金型形状に容
易に対応できる点で特に好ましく利用できる。本発明の
断熱金型の金属層の積層方法の好ましい態様を、メッキ
積層法を例として具体的に説明する。メッキ積層法で本
発明の断熱金型を製造するにおいては、公知の樹脂メッ
キ技術が利用できる。例えば、断熱層の少なくとも上層
にエッチング助剤を分散させておき、エッチングしてか
らメッキすることによって、密着した金属層を作成する
ことができる。エッチング助剤は断熱層全体に分散させ
ておいても、断熱層の上層部(金属層側)にのみ分散さ
せておいてもよい。断熱層の上層部にのみエッチング助
剤を分散させる場合、エッチング助剤を含有しない断熱
層(以後、基断熱層という。)に使用する耐熱性重合体
と、エッチング助剤含有断熱層に使用する耐熱性重合体
とは同一でも異なるものでもよい。
【0042】断熱層の上層または全体に予めエッチング
助剤を分散しておき、これをエッチングすると、断熱層
表面に穴状、溝状あるいはこれを発生源としたクラック
状の深いエッチング傷をつけることができる。そして、
これに化学メッキすることによって、断熱層に強固に結
合した金属層を得ることができる。それ故、断熱層の金
属層側は、耐熱性重合体をマトリックス(連続相)と
し、金属層から延びた金属が穴、溝またはクラックに沿
って嵌入してなる重合体と金属の複合層となっている。
この複合層を十分な厚み、好ましくは0.1μm以上の
厚みで作ることが、耐久性のある金属層を積層する上で
重要である。
【0043】基断熱層上にエッチング助剤含有断熱層を
重ねて積層するには、基断熱層にエッチング助剤を分散
して含有する耐熱性重合体溶液、耐熱性重合体の前駆体
溶液あるいは液状前駆体を液塗りあるいはスプレーする
方法が利用できる。次に、好ましい態様として耐熱性重
合体がポリイミド、積層構造が図6の構成で、エッチン
グ助剤が無機フィラーの場合を例に、断熱層積層方法を
具体的かつ詳細に説明する。
【0044】基金型のキャビティを構成する型表面の端
部およびその周辺に、最終的に高弾性率となるポリイミ
ド前駆体であるポリアミド酸の溶液を塗布し、完全には
イミド化しない状態で加熱乾燥、塗布を繰り返して所定
の厚みまで積層する。次いで、端部を含む型表面全面
に、最終的に高い伸びを示すポリイミドの前駆体である
ポリアミド酸の溶液を塗布し、完全にはイミド化しない
状態で加熱乾燥、塗布を繰り返して所定の厚みまで積層
する。その後、表面を切削および研磨して型表面の端部
まで実質的に均一な厚みの断熱層とする。さらに、無機
フィラーを分散して含有する同一のポリイミドの前駆体
溶液を重ねて塗布する。その後加熱してイミド化を完結
してエッチング助剤分散層を作る。また、各段階で必要
により表面を切削、研磨を行うこともできる。
【0045】これにより、ポリイミドから成る断熱層の
上層に無機フィラーが分散した構造が達成できる。エッ
チング助剤としての無機フィラーが分散した層の厚みは
通常1〜100μm、好ましくは5〜50μm、さらに
好ましくは10〜40μmにする。余りに薄いとその後
のメッキの剥離強度が十分には達成できない。余りに厚
いとその厚みむらのためフィラー分散層の切削、研磨が
必要になり、その場合削り過ぎによりフィラー分散層が
無くなることに注意しなければならない。
【0046】断熱層の積層後は必要により切削もしくは
研磨等の加工法により寸法出しや平滑化を行った場合、
続くメッキ工程をスムーズに行うために、加熱により断
熱層表面をアニール処理することが好ましい。その表面
を強酸、強アルカリ溶液、強酸化剤溶液、強還元剤溶液
あるいはこれ等の組み合わせで、表層を分解しながらエ
ッチングして、ポリイミド層表面を深い凹凸状にする。
次いで、中和、感受性化処理、活性化処理を経て、化学
メッキを行うことで、断熱層に金属層から伸びた金属
(アンカー)が嵌入してなる複合層を作成する。その後
熱処理し、さらに金属層を電解メッキすることにより、
断熱層と強固に結合した金属層を作成できる。エッチン
グに用いる強酸としては、例えば塩酸、硫酸、硝酸の水
またはアルコール混液等が挙げられる。強アルカリとし
ては、例えば水酸化ナトリウム、水酸化カリウムあるい
は水酸化バリウム等の水またはアルコール溶液が挙げら
れる。強酸化剤としては、例えば過マンガン酸塩やクロ
ム酸塩等が挙げられ、強還元剤としては、例えばヒドラ
ジン等が挙げられる。またエッチング反応時に、耐熱性
重合体と親和性が高く、かつエッチング剤溶液とも親和
性のある溶剤で、予め耐熱性重合体表面を膨潤させてお
くことは、エッチング反応を促進させる上で好ましい場
合がある。
【0047】具体的なエッチング助剤の種類とエッチン
グ方法を次に述べる。耐熱性重合体からなる断熱層の全
層あるいは上層に無機フィラー、有機フィラーあるいは
非相溶性の有機化合物等をエッチング助剤としてできる
だけ均一に分散させておき、エッチング助剤を溶解ある
いは分解除去する方法。この方法においてはエッチング
助剤はエッチング液で溶解あるいは分解しなければなら
ない。耐熱性重合体からなる断熱層の全層あるいは上層
に無機フィラーあるいは有機フィラー等をエッチング助
剤としてできるだけ均一に分散させておき、エッチング
助剤との界面にエッチング液を浸透させて、マトリック
ス相を部分的に侵食する方法。この方法においてはエッ
チング助剤はエッチング液で必ずしも溶解あるいは分解
する必要はない。エッチング液で分解あるいは抽出され
やすい重合体を混合、あるいはグラフトまたはブロック
共重合しておき、その後これをエッチングする方法。
【0048】無機フィラーの例としては炭酸カルシウ
ム、酸化ケイ素、ケイ酸カルシウム、タルク、アタパル
ジャイト、アスベスト、酸化マグネシウム、水酸化マグ
ネシウム、塩基性炭酸マグネシウム、ハイドロタルサイ
ト、アルミナ、水酸化アルミニウム、酸化アルミニウ
ム、ベントナイト、ゼオライト、カオリンクレー、パイ
ロフィライト、セリサイト、マイカ、硫酸カルシウム、
亜硫酸カルシウム、酸化チタン(ルチル、アナター
ゼ)、チタン酸カリウム、炭酸バリウム、硫酸バリウ
ム、チタン酸バリウム、酸化亜鉛、酸化ジルコン、ケイ
酸ジルコン、酸化鉄、二硫化モリブデン、三酸化アンチ
モン、窒化ケイ素、炭化ケイ素、カーボンブラック、黒
鉛粉末、炭素繊維等の無機物微粉末が挙げられる。好ま
しい無機フィラーは炭酸カルシウム、酸化ケイ素、硫酸
バリウム、酸化ジルコン、酸化アルミニウムおよび酸化
チタンであり、特に好ましくは酸化チタン、酸化ジルコ
ンおよび酸化アルミニウムが挙げられる。有機フィラー
の例としてはマトリックス非相溶性の粉体状ポリイミ
ド、粉体ポリフェニレンエーテル等の高軟化温度の重合
体の粉体が挙げられる。
【0049】これ等の無機および有機フィラーの粒径
は、エッチングのポアーサイズ、ひいては複合層の金属
の嵌入構造のサイズに影響するため、好ましくは平均粒
径0.005〜5μm、より好ましくは0.01〜0.
5μm、特に好ましくは0.01〜0.1μmの範囲で
選ばれる。粒径が大きいと、得られる金属メッキ層の剥
離に対する耐性が十分に発現し難い。
【0050】非相溶性有機化合物とはマトリックスの耐
熱性重合体に非相溶な有機化合物であり、一般に結晶性
の有機化合物である。この非相溶性有機化合物およびエ
ッチングされやすい重合体等のエッチング助剤の耐熱性
重合体への分散は、通常耐熱性重合体との均一溶液を基
断熱層に塗布し、溶剤の乾燥を通してエッチング助剤を
不溶化、析出させることで達成できる。
【0051】非相溶性有機化合物の例としては、各種の
結晶性有機酸化合物およびその無機塩、アミド化合物お
よびエステル化合物等を挙げることができる。具体的な
例としてはステアリン酸やベヘン酸等の脂肪族のカルボ
ン酸や芳香族カルボン酸のカルシウム塩やポリアミド化
合物、ポリエステル化合物等が挙げられる。エッチング
されやすい重合体とは、エッチング液の組成、断熱層の
耐熱性重合体や複合層のマトリックス重合体にも関係
し、これ等マトリックス重合体よりも相対的にエッチン
グされやすい、即ち溶出もしくは分解されやすい重合体
から広く選ぶことができる。例えばポリイミドを複合層
を含む断熱層に用いる場合、それよりエッチングされや
すい他のポリイミド、ポリアミド、ポリエステル、各種
共役ジエン重合体およびビニル重合体等が挙げられる。
【0052】これ等断熱層の耐熱性重合体に分散させる
エッチング助剤の使用量は、エッチング助剤含有断熱層
(断熱層全体にエッチング助剤を含有させる時には全断
熱層)の体積の一般に0.1〜50体積%の範囲、好ま
しくは1〜30体積%、さらに好ましくは3〜15体積
%である。エチング助剤の量が余りに少なくとも、また
余りに多くとも金属層の剥離に対する耐性の高い金属メ
ッキを達成し難い。
【0053】本発明の断熱金型を構成する金属層は、断
熱層の上に幾つかの金属層を順次メッキすることにより
積層される。ここに述べるメッキ法は化学メッキ(無電
解メッキ)と電解メッキである。例えば連続して、化学
メッキおよび/または電解メッキして得られる。用いら
れる金属は、一般の金属メッキに用いられる金属であ
り、例えばクロム、ニッケル、銅等の1種または2種以
上である。良好に使用できるのは、例えば化学ニッケル
メッキ、電解ニッケルメッキ、化学銅メッキ、電解銅メ
ッキ、電解クロムメッキ等である。
【0054】次に金属層の作成方法について、エッチン
グ後の金属メッキ方法の例を挙げて具体的に説明する。
一般には次の工程のいくつかを経てメッキはなされる。
先ずエッチング助剤含有断熱層をエッチングした後、化
学メッキを行う。メッキ工程は、例えば、前処理→化学
腐食(酸やアルカリによる化学エッチング)→中和→感
受性化処理(合成樹脂表面に還元力のある金属塩を吸着
させて活性化する。)→活性化処理(触媒作用を有する
パラジウム等の貴金属を樹脂表面に付与する。)→化学
メッキ(化学ニッケルメッキ、化学銅メッキ等)→加熱
乾燥→電解メッキ(電解ニッケルメッキ、電解銅メッ
キ、電解クロムメッキ等)の順で一般には行われる。
【0055】特に、この種の化学メッキ後の加熱乾燥
は、剥離強度向上に顕著な効果をもたらす場合があるの
で、十分な温度と時間をとることが好ましい。この化学
メッキ(例えば化学ニッケルメッキ)の上には各種のメ
ッキ層をさらに付けることができる。その好ましい具体
例を次に示す。これ等のメッキから選択された少なくと
も1層が被覆されることが好ましい。 化学ニッケルメッキ 電解ニッケルメッキ 化学銅メッキ 電解銅メッキ 電解クロムメッキ 特に好ましい金属層構造の態様は、断熱層の上に化学ニ
ッケル、化学および/または電気銅メッキ、化学および
/または電気ニッケルメッキを順次積層してなる構造で
ある。さらに必要により、この上にクロムメッキ等の性
能の異なる他のメッキを重ねることも好ましい。
【0056】本発明の断熱金型においては、その金属層
の表面は鏡面状、艶消し状、しぼ状の何れでも良く、目
的に応じて選択される。なお、良好に使用できるしぼ形
状は、例えば革しぼ状、木目しぼ状、ヘアーライン状等
のしぼパターンである。このしぼ状にする方法は種々の
方法で行うことができる。エッチング法は良好に使用で
き、酸によるエッチング法は最も良好に使用できる。断
熱金型の最表面層が電解ニッケルメッキ、電解銅メッ
キ、燐含量の少ない化学ニッケルメッキ等の酸溶液でエ
ッチングできる金属であれば、一般の金属金型のしぼ化
に使用されているエッチング法と同様の方法でしぼ化が
できる。即ち、金属層表面を紫外線硬化樹脂を用いてし
ぼ状にマスキングし、次いで酸エッチングでしぼ化する
方法は良好に使用できる。
【0057】金属層の厚みは、1〜300μmでかつ断
熱層の厚みの1/3以下であることが好ましい。さらに
好ましい厚みは型表面が鏡面状、艶消し状、しぼ状の何
れかにより異なる。また、用いる成形法が射出成形、ブ
ロー成形等の何れかによっても異なる。代表的な成形法
におけるより好ましい断熱層の厚みとより好ましい金属
層の厚みの関係を次に示す。
【0058】射出成形法で鏡面状あるいは艶消し状成形
品を成形する場合には、より好ましくは断熱層の厚みが
0.1〜0.5mmで、金属層の厚みが断熱層厚みの1
/5以下で、かつ2〜40μmである。特に好ましくは
断熱層の厚みが0.12〜0.3mmで、金属層の厚み
が断熱層の厚みの1/100〜1/10で、かつ2〜3
0μmである。
【0059】射出成形法でしぼ状成形品を成形する場合
には、より好ましくは断熱層の厚みが0.1〜0.5m
mで、金属層の凸部の厚みが断熱層厚みの1/5以下
で、かつ10〜50μmであり、しぼ形状凹部の深さが
5〜40μmである。特に好ましくは断熱層の厚みが
0.12〜0.3mmであり、金属層の凸部の厚みが断
熱層厚みの1/5以下で、かつ10〜40μmであり、
しぼ形状凹部の深さが5〜35μmである。凹部の深さ
が大き過ぎると、凹部と凸部の型表面再現性に大きな差
が生じやすい。また、凹部の深さが小さ過ぎると、しぼ
形状にする効果が小さくなる。
【0060】ブロー成形で鏡面状あるいは艶消し状成形
品を成形する場合には、より好ましくは断熱層の厚みが
0.3〜0.8mmで、金属層の厚みが断熱層厚みの1
/5以下で、かつ2〜50μmである。特に好ましくは
断熱層の厚みが0.35〜0.7mmで、金属層の厚み
が断熱層の厚みの1/100〜1/5で、かつ2〜40
μmである。
【0061】ブロー成形でしぼ状成形品を成形する場合
には、より好ましくは断熱層の厚みが0.3〜0.8m
mであり、金属層の凸部の厚みが断熱層厚みの1/5以
下で、かつ10〜50μmであり、しぼ形状凹部の深さ
が5〜40μmである。特に好ましくは断熱層の厚みが
0.3〜0.7mmであり、金属層の凸部の厚みが断熱
層厚みの1/5以下で、かつ10〜40μmであり、し
ぼ形状凹部の深さが5〜35μmである。
【0062】本発明の断熱金型において、金属層表面が
艶消し状の場合には、金属層の平均厚みを金属層の厚み
とする。即ち、JIS・B0601で測定した平均線か
ら複合層との界面までの厚みを平均厚みとする。また、
金属層表面がしぼ状凸凹の場合には、しぼ形状を形成す
る金属層凸部から断熱層との界面までの厚みを金属層厚
みとする。金属層表面にしぼ状凸凹を有する場合に、し
ぼ形状を形成する金属層凸部の厚みを金属層厚みとする
のは、凸部の型表面再現性を良好にして、成形品全体の
ウエルドライン等の目立ちを低減するためである。しぼ
形状は凸部と凹部の一方が鏡面で、他方が艶消し面であ
ることが外観上好ましい。
【0063】金属層の厚みは均一であることが好まし
く、厚みのばらつきは好ましくは±10%以下、さらに
好ましくは±5%以下である。金属層表面がしぼ状の凸
凹の場合には、凸部の金属層厚みあるいは凹部の金属層
の厚みが、それぞれ均一であることが好ましい。それぞ
れの厚みのばらつきは好ましくは±10%以下、さらに
好ましくは±5%以下である。金属層厚みのばらつきが
大きいと、金属層の厚い部分の型表面再現性が悪くな
り、型表面再現性が良い部分と悪い部分が同一成形品表
面に現れ、むらを生じやすい。
【0064】断熱金型において、断熱層と基金型の間、
あるいは断熱層と金属層の間の剥離の原因は熱膨張係数
の差だけではないが、熱膨張係数の差は大きな要因であ
る。断熱層と基金型および金属層との密着力が大きく、
低弾性率かつ高破断伸度の断熱層であれば、熱膨張係数
の差が若干大きくても剥離は生じない。しかし、断熱層
に適した材質、即ち高耐熱性かつ高硬度な断熱材は一般
に弾性率が大きく、特に主鎖に芳香環を有する耐熱性合
成樹脂がそれに該当する。耐熱性合成樹脂層を基金型お
よび/または金属層に密着させ、剥離を防ぐには熱膨張
係数の差が小さいことが好ましい。
【0065】射出成形やブロー成形等では成形される加
熱樹脂に接触する型表面は、成形毎に厳しい冷熱サイク
ルに曝される。一般に耐熱性重合体からなる断熱層より
金属層は熱膨張係数が小さく、熱膨張係数は大きく異な
る。そのため界面では成形毎に繰り返し応力が発生し、
剥離の一因となる。断熱層と接する基金型および金属層
と断熱層との熱膨張係数の差を小さくすることで剥離を
押さえることができる。
【0066】本発明の断熱金型において、断熱層と接す
る基金型および金属層の熱膨張係数と、断熱層の熱膨張
係数との差は4×10-5/℃未満であることが成形加工
時の冷熱サイクルに対する耐性の点で好ましい。さらに
好ましくは3×10-5/℃未満である。一般に金属は重
合体より熱膨張係数が小さいので、熱膨張係数が小さい
耐熱性重合体を選択することが好ましい。
【0067】ここに述べる熱膨張係数は線膨張係数であ
る。断熱層の熱膨張係数は断熱層の面方向の線膨張係数
であり、JIS・K7197−1991に示される方法
で測定し、50℃と250℃の温度間の平均値、あるい
は断熱層のガラス転移温度が250℃以下の場合には、
50℃と該ガラス転移温度間の平均値で示す。即ち、平
滑な平板状金属の上に断熱層を積層し、次いで該断熱層
を剥離し、その断熱層の50℃と250℃の間、あるい
は50℃とガラス転移温度の間の平均熱膨張係数を測定
する。
【0068】また、基金型および金属層の熱膨張係数が
大きくなれば、相対的に熱膨張係数の大きい断熱層が使
用できる。金型材質として鋼鉄が最も多く使用されてい
るが、最近アルミニウム合金や亜鉛合金も使用される。
本発明では熱膨張係数が近ければ近い程好ましく、基金
型に鋼鉄を使用した場合には熱膨張係数が極めて小さい
低熱膨張型ポリイミド等は特に良好に使用できる。
【0069】次ぎに本発明の断熱金型の端部の構造の好
ましい範囲について述べる。端部の構造の具体例を図
1、図2および図3に示す。各部のサイズは次ぎのとお
りである。s1およびs2は金属層の厚みであり、その
範囲は1〜300μmでかつ断熱層の厚みの1/3以下
である。d1、d2およびd3は断熱層の厚みであり、
その範囲は0.05〜3mmである。
【0070】hは堤の高さで、その範囲は0〜(d3−
10μm)の範囲、好ましくは(d3)/2〜(d3−
40μm)の範囲である。hが小さいと金型端部の耐久
性は低下し、hが大きいと金型端部の成形性、即ち型表
面再現性等は低下することになる。wは堤の幅(上面部
で示す。)であり、その好ましい範囲は0.1〜10m
mであり、さらに好ましくは0.2〜5mm、特に好ま
しくは0.3〜1mmである。余りに狭いと金型端部の
耐久性が著しく低下し、余りに広いと金型の断熱性、ひ
いては成形性、即ち型表面再現性等が低下して好ましく
ない。
【0071】本発明の断熱金型の性能を効果的に生かし
て合成樹脂を成形するには、金型温度条件の選定は重要
である。好ましくは金型温度を室温〜(合成樹脂の軟化
温度−20℃)に設定する。さらに好ましくは(室温+
5℃)〜(合成樹脂の軟化温度−30℃)に設定して成
形する。このような金型温度とすることで、成形品は型
表面形状の再現性や外観に優れる成形体が得られる。こ
こに述べる金型温度は、断熱層と接する部分の基金型の
成形時の温度である。金型温度をこの範囲より高くする
と成形サイクルが長くなり、金型温度を室温以下にする
と型表面に結露等が起こり好ましくない。
【0072】本発明の断熱金型を用いる成形方法により
成形できる合成樹脂は、一般の射出成形やブロー成形に
使用できる熱可塑性樹脂である。例えばポリエチレン、
ポリプロピレン等のポリオレフィン、ポリスチレン、ス
チレン−アクリロニトリル共重合体、ゴム強化ポリスチ
レン、ABS樹脂等のスチレン系樹脂、ポリアミド、ポ
リエステル、ポリカーボネート、メタクリル樹脂、塩化
ビニル樹脂、ポリフェニレンエーテル等である。
【0073】合成樹脂には1〜60重量%の樹脂強化物
を含有させることもできる。樹脂強化物とは各種ゴム、
ガラス繊維、カーボン繊維等の各種繊維、タルク、炭酸
カルシウム、カオリン等の無機粉末等である。本発明の
断熱金型が特に有効に使用できるのは、ゴム強化ポリス
チレン樹脂、ナイロン66、ナイロン6等のポリアミド
樹脂、アクリロニトリル含量が多いアクリロニトリル−
スチレン共重合体、該共重合体をマトリックスとするA
BS樹脂およびガラス繊維含量が15〜60重量%の各
種合成樹脂等である。
【0074】本発明の断熱金型の成形性改良効果発現の
基本原理の考え方を次に示す。断熱金型は金型表面が断
熱層で被覆されており、例えば射出成形時に、その表面
に射出された加熱樹脂が接触すると、型表面は樹脂の熱
を受けて昇温する。それ故、断熱層の断熱性が大きいほ
ど型表面温度は高くなり、金型温度を高くした場合と同
様に成形性は改良されることになる。
【0075】本発明の断熱金型を用いる射出成形法に
は、その原理を利用して他の各種成形技術と組み合わせ
ることもできる。例えば、ガスアシスト射出成形、射出
圧縮成形等の、成形時に合成樹脂が型壁面を押し付ける
圧力が低い、および/または合成樹脂の型内流動速度が
遅い低圧射出成形との組み合わせも含まれる。また、各
種ブロー成形法に利用する場合、パリソンが型表面に接
触してから、ブロー圧力が成形品内面に十分にかかるま
での時間が長いブロー成形に使用した場合に改良効果が
特に発揮される。
【0076】本発明の断熱金型は、例えば、弱電機器、
電子機器、事務機器等のハウジング、各種自動車部品、
各種日用品、各種工業部品等の一般の合成樹脂射出成形
品の成形加工に用いることができる。特に、ウエルドラ
インが出やすい電子機器、電気機器、事務機器のハウジ
ング等に用いると、極めて優れた型再現性と外観によっ
て、塗装等の後工程の省略や製造コストの低下等の効果
を達成できる。
【0077】また、本発明の断熱金型を用いる成形法の
特長である型再現性と外観特性を生かすには、即ち断熱
金型被覆層の金属表面状態、特にしぼ状態等をより効果
的に再現するには、従来の金属金型に比較してその抜き
勾配を大きくすることが好ましい。しかし、一般に家電
機器や事務機器の筐型ハウジングを成形する場合、デザ
イン上、抜き勾配を大きくすることには問題が多い。こ
の様な場合には、断熱層および金属層を積層した型キャ
ビティ面に、分割面を有する分割金型であって、該分割
面を構成する基金型の端部に堤構造を有することが好ま
しい。
【0078】このような断熱層および金属層を積層した
型キャビティ面に分割面を有する分割金型は、弱電機
器、電子機器、事務機器等のハウジング、特に金型から
成形体を取り出す時に、側面部の深さ10cm以上、さ
らには15cm以上の筐型ハウジングを成形する場合
に、特に好ましく利用できる。
【0079】
【発明の実施の形態】以下に本発明を実施例を挙げて説
明する。本実施例における金属層の製法、特性のタイプ
および得られた断熱金型の評価基準を次にまとめて示
す。 <金属層の製法、特性のタイプ> 金属層A:次亜燐酸ソーダを還元剤とし、低温、弱アル
カリ状態、低速度で化学ニッケルメッキを行い積層した
燐含量が少ない化学ニッケルメッキ 金属層D:硫黄含有量が少ない半光沢電解ニッケルメッ
キ 金属層E:硫黄含有量が多い光沢電解ニッケルメッキ 金属層F:硫酸銅を用いる銅ストライクメッキ 金属層G:硫酸銅メッキ浴を用いる電気銅メッキ 上記の各ニッケルメッキ層の熱膨張係数は、何れもほぼ
1.3×10-5/℃である。また、上記の各銅メッキ層
の熱膨張係数は、ほぼ1.7×10-5/℃である。 <各評価基準> ・金型表面の耐久性:金型の傷つき、具体的には金属層
および断熱層等の金型キャビティ面の剥離、傷つきの程
度により評価している。
【0080】○ 金型の耐久性良好。成形テスト30
00回で金型および成形体の両者の変形は実用的に認め
られない。 ◎ 金型の耐久性は極めて良好。成形テスト3000
回で金型および成形体の両者に変形は全く認められな
い。 ・金型表面の再現性:成形体表面が金型キャビティ表面
状態をどの程度忠実に再現しているかにより評価してい
る。
【0081】× 型表面の再現性は著しく劣る。 ○ 型表面の再現性良好、端面部付近の再現性もほぼ
良好。 ・合わせ部状態:成形時の打ち込まれた樹脂の圧力およ
び流動によって、金型の端部の角が潰れる場合がある。
これが起こると実用性能としては、成形体の合わせ部相
当部位にバリや盛り上がりが発生する等の問題が起こ
る。即ち、金型端部の耐久性を型合わせ部の成形状態に
より評価した。
【0082】× 合わせ部の状態が劣る。成形体の合
わせ部にバリや盛り上がりが成形当初から認められる。 ○ 成形1000回で良好。合わせ部に微小な盛り上
がりが認めれる程度、実用上問題ない。 ◎ 成形1000回で極めて良好。合わせ部の形状変
化は全く認められない。
【0083】
【実施例1】 1.断熱金型の製造方法 (1)金型構成 鋼鉄(S55C)製の筐型成形体(ハウジング)の射出
成形用の金型であり、該鋼鉄の熱膨張係数は1.1×1
-5/℃である。図8に示す如く、固定側取付け板I、
割型ブロックJ、可動側板KおよびコアーLに囲まれて
キャビティGが存在する。固定側取付け板Iおよび割型
ブロックJのキャビティ表面は基金型、断熱層および金
属層から構成されている。各割型ブロック間および割型
ブロックと固定側取付け板Iの分割面は、図2に示す端
部構造を有している。基金型の断熱層被覆面は銅−ニッ
ケル−クロムメッキを重ねている。 (2)断熱層 プライマー層:割型ブロックJの基金型表面にプライマ
ーとしてCO基含量の多い直鎖型ポリイミド前駆体の1
0重量%N−メチルピロリドンを主体とする溶剤溶液を
スプレーして約1μmの厚さに塗り、160℃で20分
間乾燥および部分的にイミド化反応を行った。 補助断熱層:基金型端部およびその周辺、即ち端部から
10mm程度の幅に、そのプライマー上に、全芳香族ポ
リイミド系ワニス(トレニース#3000 東レ(株)
製 商品名)に、ポリイミド100重量部に対してホウ
酸アルミニウムウィスカ(アルボレックスYS3 四国
化成工業(株)製 商品名)20重量部を含む混液を繰
り返しスプレー塗布した。各スプレー塗布後は160℃
で20分間加熱した。この塗布、加熱を繰り返して20
0μmを越える厚みにした。 主断熱層:さらにその上に、上記全芳香族ポリイミド系
ワニスを繰り返しスプレーし型表面の全面に塗布した。
各スプレー塗布後は160℃で20分間加熱した。この
塗布、加熱を繰り返して200μmを越える厚みにし
た。 切削、研磨:断熱層塗装面を数値制御フライス盤を用い
て、均一に200μm厚みに切削した。 エッチング助剤含有層:最後にエッチング助剤として酸
化チタンをポリイミド100重量部に対して11重量部
分散したトレニース#3000を含む混液をスプレー塗
布して、10μmの厚みのエッチング助剤含有層で最表
面を被覆し、次いで290℃に加熱してポリイミド層を
完成した。 (3)メッキ方法 エッチング方法:得られた断熱層で被覆された金型は重
クロム酸カリウムと硫酸との混液を用い、攪拌しながら
エッチングを行った。 メッキ方法:得られた金型の断熱層面を感受性化処理、
活性化処理の順で処理し、次いで化学ニッケルメッキす
ることにより0.5μm厚の金属層Aを被覆し、その表
面上に1μmの金属層F、4μmの金属層G、5μmの
金属層Dを被覆し、さらにその表面上に金属層E15μ
mを被覆した。用いた主断熱層と補助断熱層の断熱材の
弾性率比(補助断熱層/主断熱層)=3.1であった。
これらの弾性率は、断熱金型と並行して同条件で主断熱
層を構成する断熱材もしくは補助断熱層を構成する断熱
材のみからなるモデル積層金型を作成し、乾燥、硬化後
断熱層を引き剥がし、JIS・K7161−1994に
基づき引張弾性率を測定した。 2.断熱金型の性能評価 得られた断熱金型を用いて、熱可塑性樹脂としてゴム強
化ポリスチレン樹脂(旭化成ポリスチレン492 旭化
成工業(株)製 商品名)を成形温度230℃、金型温
度30℃で射出成形を行った。得られた結果を表1に示
す。
【0084】
【実施例2】補助断熱層と主断熱層の積層の順番を逆、
即ち、図5に示すように主断熱層を積層後に補助断熱層
を積層した図5−2の端部構造とする以外は、実施例1
と同様に金型作成、性能評価を行った。用いられた主断
熱層と補助断熱層の断熱材の弾性率比(補助断熱層/主
断熱層)=3.1であった。得られた結果を表1に示
す。
【0085】
【実施例3】補助断熱層に混合したウィスカーを無くす
以外実施例1と同様にして断熱金型を作成した。この場
合の主断熱層と補助断熱層の断熱材の弾性率比(補助断
熱層/主断熱層)=1であった。得られた結果を表1に
示す。
【0086】
【実施例4】基金型を堤を有する金型、即ち図3の構造
にする以外は実施例1と同様にして断熱金型を作成し
た。主断熱層と補助断熱層の断熱材の弾性率比(補助断
熱層/主断熱層)=3.1であった。ここにh=d3/
3、w=1.0mmである。得られた結果を表1に示
す。
【0087】
【実施例5】実施例1の条件で補助断熱層および主断熱
層を作成し、均一に200μm厚みに切削した。エッチ
ング助剤含有層および金属層の積層はない。これを用い
て実施例1と同様に成形評価した結果を表1に示す。
【0088】
【比較例1】補助断熱層の積層工程を無くす以外は実施
例1と同様にして断熱金型を作成した。また同様に性能
を評価した。得られた結果を表1に示す。
【0089】
【比較例2】断熱層の全く積層されていない従来金型を
用いて同様に性能を評価した。得られた結果を表1に示
す。
【0090】
【表1】
【0091】
【発明の効果】本発明の断熱性金型は優れた成形性を有
すると共に、成形加工時の厳しいシェアーストレスや冷
熱サイクルに対する耐性にも優れる。即ち、これを用い
て成形することにより、合成樹脂成形体の型表面形状の
再現性が良くなり、金型合わせ部の目立ちを低減できる
等の外観良好な成形品を成形でる。断熱層および金属層
が単に積層された従来の断熱金型に比較して、金型端面
部の耐久性、ひいては断熱層の耐久性は顕著に優れる。
これにより、金型の合わせ部や端部を中心に、成形の繰
り返しにともなう変形、破損を原因に、合成樹脂成形品
の対応する個所の成形体欠陥が目立ってくる等の問題を
避けることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の目的とする断熱層のみを被覆した断熱
金型の型表面の端部の部分断面図である。
【図2】本発明が目的とする断熱層および金属層を被覆
した断熱金型の型表面の端部の部分断面図である。
【図3】本発明が目的とする断熱層のみを被覆した、基
金型が端部に堤構造を有する断熱金型の型表面の端部の
部分断面図である。
【図4】比較例で用いた断熱金型の端部構造を説明する
部分断面図である。
【図5】本発明の断熱金型の端部構造の一例を示す部分
断面図である。
【図6】本発明の断熱金型の端部構造の一例を示す部分
断面図である。
【図7】本発明の断熱金型の端部構造の一例を示す部分
断面図である。
【図8】本発明の断熱金型の端部構造の一例を示す部分
断面図である。
【図9】成形評価に用いた断熱金型の一式の主要部分を
示す断面図である。
【符号の説明】
1 金型入れ子の基金型 2 型表面 3 断熱層 4 金属層 5 基金型の端部堤構造 6 金型の端部 7 断熱層の薄肉部 8 断熱層の厚肉部 9、9’ 主断熱層 10、10’ 補助断熱層 11 主金型 12 金型入れ子 13 金型入れ子 14 金型入れ子の合わせ部 h 堤構造の高さ w 堤構造の頂部幅 G 型キャビティ H ローケートリング I 固定側取付け板 J 割型ブロック K 可動側板 L コアー M スプールブシュ N アンギュラーピン O スプール
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 梅井 勇雄 神奈川県川崎市川崎区夜光1丁目3番1号 旭化成工業株式会社内

Claims (10)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 金属からなる基金型の型キャビティを構
    成する型表面に、0.05〜3mmの厚み範囲で耐熱性
    重合体からなる断熱層を積層した断熱金型であって、且
    つ型表面の端部まで均一な厚みの断熱層を有する断熱金
    型。
  2. 【請求項2】 金属からなる基金型の型キャビティを構
    成する型表面に、耐熱性重合体の溶液、耐熱性重合体の
    前駆体溶液または耐熱性重合体の単量体を塗布して主断
    熱層を形成する工程を少なくとも一回、及び型キャビテ
    ィを構成する型表面の端部及びその周辺に上記耐熱性重
    合体と同一あるいは異なる種類の耐熱性重合体の溶液、
    耐熱性重合体の前駆体溶液または耐熱性重合体の単量体
    を塗布して補助断熱層を形成する工程を少なくとも一回
    行って断熱層を積層した後に、該断熱層を切削および/
    あるいは研磨して型表面の端部まで実質的に均一な厚み
    にする請求項1記載の断熱金型の製造法。
  3. 【請求項3】 断熱層形成工程が、型キャビティを構成
    する型表面全体に主断熱層を形成する工程を行った後に
    補助断熱層を形成する工程を行う請求項2記載の断熱金
    型の製造法。
  4. 【請求項4】 断熱層形成工程が、補助断熱層を形成す
    る工程を行った後に型キャビティを構成する型表面全体
    に主断熱層を形成する工程を行う請求項2記載の断熱金
    型の製造法。
  5. 【請求項5】 補助断熱層の弾性率が、主断熱層の弾性
    率の2倍以上である請求項3または4記載の断熱金型の
    製造法。
  6. 【請求項6】 断熱金型の端部を構成する断熱層の平均
    弾性率が、断熱金型の端部およびその周辺以外を構成す
    る断熱層の平均弾性率の2倍以上である請求項1記載の
    断熱金型。
  7. 【請求項7】 型キャビティを構成する型表面の端部以
    外に耐熱性重合体の溶液、耐熱性重合体の前駆体溶液ま
    たは耐熱性重合体の単量体を塗布して主断熱層を作成
    し、且つ補助断熱層の弾性率が、主断熱層の弾性率の2
    倍以上である請求項2記載の断熱金型の製造法。
  8. 【請求項8】 請求項2、3、4、6または7記載の断
    熱金型の製造法で得られた断熱金型の断熱層上に、1〜
    300μmの厚みでかつ該断熱層の厚みの1/3以下の
    金属層を形成する断熱金型の製造法。
  9. 【請求項9】 断熱層の少なくとも最上層に無機フィラ
    ーを分散した断熱層を形成し、エッチングした後に金属
    層を形成する請求項8記載の断熱金型の製造法。
  10. 【請求項10】 請求項2、3、4、5、7、8または
    9記載の断熱金型の製造法により得られる断熱金型。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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WO2020170506A1 (ja) * 2019-02-20 2020-08-27 河西工業株式会社 成形用金型、成形用金型の製造方法、射出成形装置及び成形品の製造方法

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* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
WO2020170506A1 (ja) * 2019-02-20 2020-08-27 河西工業株式会社 成形用金型、成形用金型の製造方法、射出成形装置及び成形品の製造方法
US11712828B2 (en) 2019-02-20 2023-08-01 Kasai Kogyo Cg., Ltd. Mold die, method of manufacturing mold die, injection molding apparatus, and method of manufacturing mold product

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