JPH09254741A - 自動車用シートベルト構造 - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 【課題】 リクライニング機構を備えた３人掛け座席に
も適用できるようにする。 【解決手段】 シートベルト２０の巻取り・繰出しを行
うとともに前後方向の衝撃を検知してシートベルト２０
の繰出し不能にロックするリトラクタ２１を、シートク
ッション１２に設けた。シートクッション１２は車室床
面１５に固定されたままだから、リクライニング機構１
１によってシートバック１７の傾斜角度を変えてもリト
ラクタ２１の姿勢は変化せず、前後方向の衝撃検知が確
実に行われる。よって、衝撃検知機能を維持しつつ３人
掛け座席１０の中央の席１０Ｃにも３点式シートベルト
を採用することができる。

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【発明の属する技術分野】本発明は、自動車のシートベ
ルト構造、特に３点式のシートベルト構造に関する。

【０００２】

【従来の技術】自動車の運転席や助手席の３点式シート
ベルト構造では、車室壁面内に設けたリトラクタからシ
ートベルトを引き出して襷状に掛け渡すようになってい
る。これに対し、３人掛け用の座席における中央の座席
に３点式のシートベルト構造を採用する場合には、その
中央の座席が車内壁面から離れているため、運転席や助
手席の３点式シートベルトのように車室壁面内にリトラ
クタを設けることができない。そこで、従来は、図８に
示すように、リトラクタ１をシートバック２の上端部に
設けた構成としている。シートベルト３を使用する際に
は、リトラクタ１から引き出されたシートベルト３を襷
状に掛け渡し、そのシートベルト３に連結したタングプ
レート４をシートクッション５に設けたバックル６に結
合する。

【０００３】

【発明が解決しようとする課題】リトラクタ１には、前
後方向の受けた衝撃を検知してシートベルト３を繰出し
不能にロックするため衝撃センサ（図示せず）が備えら
れているが、この衝撃センサは、走行中の振動等による
上下方向の衝撃に対しては作動せずに前後方向の衝撃に
対してのみ確実に作動を行うようにするために検知動作
の方向性が決められている。そのため、リクライニング
機構を備えた座席に対しては、シートバック２の傾斜角
度を変えたときに衝撃センサの姿勢が変動して衝撃検知
機能の信頼性低下を招く虞があることから、上記のよう
にリトラクタ１をシートバック２の上端に配置する構造
を適用することができなかった。本願発明は上記事情に
鑑みて創案されたものであって、衝撃検知機能を維持し
たままでリクライニング機構を備えた座席にも適用でき
る３点式のシートベルト構造を提供することを目的とす
る。

【０００４】

【課題を解決するための手段】本発明は、シートベルト
の巻取り・繰出しを行うと共に前後方向の衝撃を検知し
てシートベルトを繰出し不能にロックするリトラクタ
を、搭乗者を下から支えるシートクッションの一方の側
縁部に設け、リトラクタから引き出した前記シートベル
トの引出端を、搭乗者を背面側から支えるシートバック
の上端又は車室壁面に連結し、シートベルトを、シート
クッションの他方の側縁部で転向させることにより搭乗
者の腰部前面を横切ると共に搭乗者の上体前面を襷掛け
する経路で張り渡して使用する構成としたところに特徴
を有する。

【０００５】

【発明の作用及び効果】本発明においては、リトラクタ
が車体に対して常に一定の姿勢をとるシートクッション
に設けられているから、リクライニング機構によってシ
ートバックの傾斜角度を変化させても、リトラクタの姿
勢は変化しない。したがって、リトラクタが備えている
前後方向の衝撃検知機能は確実に発揮される。このよう
に本発明のシートベルト構造は衝撃検知機能を維持した
ままでリクライニング機構を備えた座席にも適用するこ
とができる。

【０００６】

【発明の実施の形態】以下、本発明を具体化した一実施
形態を図１乃至図７を参照して説明する。本実施形態の
自動車用シートベルト構造は、リクライニング機構１１
を備えた３人掛けの後部座席１０のうちの中央座席１０
Ｃに設けたものである。座席１０Ｃの搭乗者を下から支
えるためのシートクッション１２は、その前端縁におい
てヒンジ１３により車室床面１５に連結支持されてい
て、ヒンジ１３の回動軸１４を中心として前方へ跳ね上
げるようにして折り畳むことができるようになってい
る。また、シートクッション１２を車室床面１５上に載
置して着座可能とした状態では、後述するロック部材３
０が車室床面１５のストライカ１６に係止することによ
り浮き上がり規制状態にロックされる。

【０００７】本実施形態のシートベルト構造は、シート
ベルト２０とこのシートベルト２０の巻取り・繰出しを
行うリトラクタ２１とを備えて構成されている。リトラ
クタ２１は、中央座席１０Ｃのシートクッション１２の
進行方向における右側の側縁部に配置されている。ま
た、リトラクタ２１から引き出されたシートベルト２０
の引出端は、中央座席１０Ｃの搭乗者を背面側から支え
るためのシートバック１７の上端部右位置、即ちリトラ
クタ２１のほぼ真上の位置に連結されている。

【０００８】次に、リトラクタ２１の取付け構造を図３
乃至図５を参照して説明する。シートクッション１２の
後縁に沿って設けたパイプ状をなす左右方向のシートフ
レーム２２には、ブラケット２３が溶接により固定され
ている。ブラケット２３は、シートフレーム２２の前方
へ突出する左右一対の軸受２４と、シートフレーム２２
の後方へ突出する受け部２５を有し、受け部２５にはそ
のボルト孔２７と整合するナット２９が軸線を上下に向
けて固着されている。この受け部２５とシートフレーム
２２の上にリトラクタ２１が載置され、リトラクタ２１
のボルト孔２６と受け部２５のボルト孔２７を通したボ
ルト２８がナット２９に螺合され、もってリトラクタ２
１がシートフレーム２２に固定されている。このリトラ
クタ２１からは、シートベルト２０がその表裏両面を水
平に向けた姿勢で前方へ水平に引き出されている。尚、
このリトラクタ２１には、車体が受けた前後方向の衝撃
を検知してシートベルト２０を繰出し不能にロックする
ための衝撃センサ（図示せず）が内蔵されている。この
衝撃センサは、前後方向の衝撃は検知するが、走行中の
振動などに起因する上下方向の衝撃に対しては検知動作
を行わないように検知方向が設定されている。

【０００９】ブラケット２３の両軸受２４の間には、シ
ートクッション１２を車室床面１５に固定状態にロック
するためのロック部材３０が取り付けられている。この
ロック部材３０は、左右一対の支持板３１の間に、車室
床面１５のストライカ１６と係止可能なロック爪３２
と、このロック爪３２のロック解除方向への変位を規制
するための作動爪３３と、作動爪３３を規制状態に保持
するための引張りコイルバネ３４とを備えた構造にな
る。両支持板３１の上端に形成した軸孔３５は軸受２４
の軸孔３６に整合され、この両軸孔３５，３６には、支
持軸３７及びこの支持軸３７を包囲するようにゴムまた
は合成樹脂製の筒状をなすブッシュ３８が貫通され、も
ってロック部材３０がブラケット２３に対して回動可能
に取り付けられている。尚、支持軸３７は、その先端の
雄ネジ部３７Ａを一方の軸受２４に固定したナット３９
に螺合することによって取り付けられている。

【００１０】このロック部材３０の作動爪３３にはケー
ブル４１の一端が連結され、このケーブル４１の他端は
シートクッション１２の前端縁下部に設けたロック解除
レバー（図示せず）に連結されている。このロック解除
レバーを引き操作すると、作動爪３３が引張りコイルバ
ネ３４を引き伸ばしつつ回動してロック爪３２から解離
され、ロック爪３２が引張りコイルバネ３４の弾性復元
力によりロック解除方向に回動して車室床面１５のスト
ライカ１６から外れ、もってシートクッション１２が折
り畳み可能となる。

【００１１】さらに、支持板３１にはリンク４２の一端
が連結軸４３により相対回動自由に連結され、このリン
ク４２の他端が連結軸４４によりヒンジ１３に相対回動
自由に連結されている。ロック部材３０における連結軸
４３はシートクッション１２に対するロック部材３０の
回動中心である支持軸３７のほぼ真下に位置しており、
一方のヒンジ１３における連結軸４４は車室床面１５に
対するシートクッション１２の回動中心である回動軸１
４のほぼ真下に位置している。したがって、シートクッ
ション１２を図７に実線で示す着座可能状態と同図に想
像線で示す折り畳み状態との間で回動変位させると、上
記リンク４２によりロック部材３０がシートクッション
１２に対して相対回動することにより車室床面１５に対
してほぼ一定の姿勢を保ちつつ変位する。これにより、
シートクッション１２を折り畳んだときにロック部材３
０がシートクッション１２の底面から後方へ突出するこ
となく、シートクッション１２の内部に収容される状態
となる。

【００１２】さて、ロック部材３０の両支持板３１の間
には、ベルトガイド４５の左右一対の軸受４６が配置さ
れており、このベルトガイド４５の軸受４６の軸孔４７
に上記支持軸３７とブッシュ３８が貫通されている。こ
のようにベルトガイド４５はロック部材３０と同軸に連
結支持されている。ベルトガイド４５の上端部には、リ
トラクタ２１におけるシートベルト２０の引出口と対応
するガイドリング４８が連結されている。リトラクタ２
１から引き出されたシートベルト２０はこのガイドリン
グ４８に通されることによって上方へ転向される。

【００１３】また、リトラクタ２１から引き出されたシ
ートベルト２０を使用状態にロックするためのバックル
４９は、中央座席１０Ｃのシートクッション１２の進行
方向に向かって左側の側縁後部に取り付けられている。
このバックル４９にはシートベルト２０を引き通したタ
ングプレート５０が連結されるようになっている。尚、
図３、５、６では省略しているが、ブラケット２３の軸
受２４には、進行方向に向かって右側の座席用のシート
ベルト（図示せず）を使用状態にロックするためのバッ
クル５１が、ロック部材３０及びベルトガイド４５と共
に支持軸３７によって支持されている。

【００１４】次に本実施形態の作用について説明する。
シートベルト２０を使用する際には、タングプレート５
０を把持してシートベルト２０をリトラクタ２１から引
き出し、タングプレート５０をバックル４９に連結すれ
ばよい。このとき、リトラクタ２１から前方へ引き出さ
れたシートベルト２０は、ベルトガイド４５により左向
きに転向させられ、シートクッション１２の右側縁から
左側縁に向かって搭乗者（図示せず）の腰部前面を横切
り、シートクッション１２の左側縁においてバックル４
９との連結部分において斜め右上方向に転向指せられ、
搭乗者の上体前面を襷掛けするようにして張り渡され
る。

【００１５】本実施形態では、リトラクタ２１がシート
バック１７ではなくてシートクッション１２に取り付け
られているが、リクライニング機構１１によってシート
バック１７の傾斜角度を変化させてもシートクッション
１２は使用の際に車体に対して固定されるようになって
いることから、リトラクタ２１も車体に対して常に一定
の姿勢に保持されている。したがって、リトラクタ２１
が備えている前後方向の衝撃検知機能が確実に発揮され
る。このように本実施形態のシートベルト構造は、衝撃
検知機能を維持しながらリクライニング機構１１を備え
た３人掛け座席１０における中央の座席１０Ｃにも適用
することができる。

【００１６】また、シートベルト２０に作用する荷重は
最終的に車室床面１５で受けるようになっているが、本
実施形態では、このシートベルト２０から車室床面１５
への荷重の伝達経路は、リトラクタ２１、シートフレー
ム２２及びブラケット２３を通る経路とベルトガイド４
５を通る経路とに分岐した後に、支持軸３７及びロック
部材３０を経て車室床面１５に至るようになっている。
このように、荷重伝達経路が分岐しているため、リトラ
クタ２１やベルトガイド４５に対する負荷が軽減されて
いる。

【００１７】また、嵩大になるリトラクタ２１を厚さの
限られているシートバック１７内に収容しようとする
と、その分だけシートバック１７内のクッション部材を
除去する必要があって、その結果クッション性の低下を
招くことになるのであるが、本実施形態では、リトラク
タ２１を比較的厚さに余裕のあるシートクッション１２
内に収容するようにしたから、上記のような不具合を来
さずに済んでおり、シートクッション１２の高いクッシ
ョン性が維持されている。

【００１８】また、本実施形態では、シートクッション
１２を折り畳んだ状態では、リンク機構によりロック部
材３０がシートクッション１２内に格納されて荷物室側
へ突出しないようになっているから、ロック部材３０の
突出に起因して荷物室内にデッドスペースが形成される
ということがなく、荷物室のスペースを有効に利用する
ことができるようになっている。 ＜他の実施形態＞本発明は上記記述及び図面によって説
明した実施形態に限定されるものではなく、例えば次の
ような実施態様も本発明の技術的範囲に含まれ、さら
に、下記以外にも要旨を逸脱しない範囲内で種々変更し
て実施することができる。

【００１９】（１）本発明によれば、リトラクタ２１を
上記実施形態とは逆に中央座席１０Ｃの左側縁部に配置
してもよい。 （２）本発明によれば、リトラクタ２１からのシートベ
ルト２０の繰出し姿勢・方向は、シートベルト２０の表
裏両面が左右方向を向く姿勢で、且つ斜め上方方向に繰
り出されるようにしてもよい。この場合、シートベルト
がリトラクタの繰出し口の近傍で捻られることがないか
ら、シートベルトが自然に搭乗者の腰部に沿うように引
き出されるようになる。

【００２０】（３）本発明は、左右両側の座席にも適用
することができる。この場合、シートベルトの繰出端を
車室壁面の上部位置に連結してもよい。 （４）本発明は、座席が折り畳み可能ではなくて車室床
面に固定されている場合にも適用することができる。 （５）本発明は、リクライニング機構を備えていない座
席にも適用することができる。

【図面の簡単な説明】

【図１】本発明の一実施形態においてシートベルトを使
用していない状態をあらわす外観斜視図

【図２】シートベルトを使用している状態をあらわす外
観斜視図

【図３】リトラクタ及びその取付け構造をあらわす一部
切欠部分側面図

【図４】リトラクタ及びその取付け構造をあらわす分解
斜視図

【図５】リトラクタ及びその取付け構造をあらわす組付
け状態の斜視図

【図６】ベルトガイドの使用時におけるベルトガイド及
びシートベルトの状態をあらわす部分平面図

【図７】シートクッション及びシートバックの着座可能
状態と折り畳み状態をあらわす側面図

【図８】従来例の外観斜視図

【符号の説明】

１２…シートクッション １７…シートバック ２０…シートベルト ２１…リトラクタ

Claims (1)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】 シートベルトの巻取り・繰出しを行うと
   共に前後方向の衝撃を検知して前記シートベルトを繰出
   し不能にロックするリトラクタを、搭乗者を下から支え
   るシートクッションの一方の側縁部に設け、前記リトラ
   クタから引き出した前記シートベルトの引出端を、搭乗
   者を背面側から支えるシートバックの上端又は車室壁面
   に連結し、前記シートベルトを、前記シートクッション
   の他方の側縁部で転向させることにより搭乗者の腰部前
   面を横切ると共に搭乗者の上体前面を襷掛けする経路で
   張り渡して使用する構成としたことを特徴とする自動車
   用シートベルト構造。