JPH09249924A - 耐焼付性にすぐれた銅合金及びすべり軸受 - Google Patents
耐焼付性にすぐれた銅合金及びすべり軸受Info
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Abstract
の摺動性能を高めるとともに、オーバレイを初期なじみ
に必要な程度以上の厚さとしなくとも軸受性能を保つこ
とができるようにする。 【解決手段】 Ag,Sn,Sb,In,Mn,Fe,
Bi,Zn,Ni及び/又はCrをCuマトリックス中
に固溶し、これらの元素の二次相が実質的に形成されて
いない銅合金。すべり軸受は、Ag,Snななどの元素
を濃縮した銅合金表層3を有し、この層3に連続する銅
合金バルク部2は、少なくとも該層3との界面及びその
近傍2aにおいてAg,Snなどを固溶しかつこれらの
元素の二次相が実質的に生成されていない銅合金固溶体
からなる。
Description
関するものであり、さらに詳しく述べるならば、従来の
ケルメットよりも摺動特性がすぐれたすべり軸受用銅合
金及びこの合金を使用するすべり軸受に関するものであ
る。
は、軟質金属又は樹脂からなるオーバレイを一般に10
〜20μmを被着してエンジン部品に使用されている。
すべり軸受の使用初期にオーバレイは相手軸となじんで
摩耗し軸と軸受の焼付を起こり難くする。このようにオ
ーバレイの機能はなじみ性にある。また、オーバレイの
下地としてNiめっき(「Niバリヤー」と言われる)
をケルメット(「ライニング」と言われる)に設けるこ
とも一般に行われている。オーバレイが消失して下地の
ケルメットもしくはNiめっきが露出すると、焼付が起
こり易くなるために、従来のすべり軸受はオーバレイを
なじみに必要な厚さ以上に被着していた。
により引き伸ばされて摺動面で軟質膜を作り、焼付を防
止する作用をもつのであるが、近年ますます過酷になる
摺動条件では、この作用だけでは不十分であるのが実際
である。したがって、従来のケルメットの耐焼付性を向
上させるために、P,AlなどのCuマトリックスを強
化する元素を添加する、なじみ性が優れたBiなどを添
加する、グラファイトなどの耐焼付性向上成分を添加す
る、アルミナなどの耐摩耗性成分を添加する、樹脂を含
浸させた樹脂含浸焼結材料とするなどの提案がなされ、
それなりの成果を達成している。
る潤滑油としては、エンジンオイル、トランスミッショ
ンオイル、ギヤオイル等があり、これらには硫黄系添加
剤が添加されていることが多い。
ジンオイルの酸化劣化を防止するためのジアルキルモノ
サルファイド、エンジンオイルの酸化により発生するス
ラッジを洗浄するスルフォネート系もしくはフェネート
系金属洗浄剤、低粘度エンジンオイルの泡立ちを防止す
るジチオフォスフェートモリブデン化合物、ジチオカー
バメイトモリブデン化合物等が添加される。上記のジア
ルキルモノサルファイドは基油の酸化により生成するハ
イドロパーオキサイドをイオン的に分解すると考えられ
ている。しかしながら、これらの添加剤の副作用も指摘
されており、例えば、金属系洗浄剤は硫酸灰分スラッジ
を生成するために使用量が制限されている。また、泡立
ち防止剤もすべり軸受の性能に悪影響を及ぼすこともあ
ると言われている。
摩耗対策としてZnDTP(ジアルキルジチオりん酸亜
鉛)が添加される。ロータリーエンジンオイルには、硫
黄系極圧添加剤としては、硫化オレフィン、硫化油脂等
が、また有機金属系摩耗防止剤としてはチオりん酸亜
鉛、硫化モリブデンジチオカルバメートがそれぞれ添加
される。
には、硫黄系極圧添加剤として硫化オレフィン、硫化油
脂等が、また有機金属系摩耗防止剤としてチオりん酸亜
鉛、硫化モリブデンジチオカルバメート、及び/または
りん系摩耗防止剤としてりん酸エステルアミン塩などが
添加されている。これらのオイル中のイオウ濃度は現在
の市販油では0.37〜1.7%であり、またこれらの
添加剤の量が多いと銅の腐食が起こると言われている。
動材料は潤滑油による腐食の問題が起こることが知られ
ており、その腐食対策として本出願人は次のような特許
出願を行った。
エンジンに使用されるすべり軸受のCu−Pb系焼結合
金中のスケルトン内部の間隙に存在するPb相が劣化油
により腐食するのを防止するためにInをPb相に添加
する。
を超え40%以下、黒鉛−0.5〜6%、及びAl2 O
3 ,SiO2 ,Fe3 Pの1種以上−0.5〜6%,残
部Cuからなる焼結銅合金系摺動部材。この出願では劣
化トランスミッションオイルが銅合金表面にCuSを形
成することによる腐食を防止するために上記した量のZ
nを添加している。
用されるケルメットのPbが劣化潤滑油により腐食して
表面が粗れ易い;Pbが潤滑油中に溶出してしまい、P
bが存在した部分が空孔になり、ライニングの強度が低
下して座屈するなどの理由によりケルメットは耐焼付性
が低い。なお、硫黄系添加剤を添加した潤滑油を用いか
つ実機の使用条件をほぼ再現する条件で銅系摺動材料の
摺動試験を本発明者等が行ったところ、潤滑油の全酸価
が次のように著しく増大することが認められ、これと並
行して鉛の腐食が進行する。
ーバレイをなじみに必要な最小限の厚さで被着すること
はできなかった。
たNiバリヤーはケルメット中のSnの拡散を阻止して
ケルメットの耐食性を良好に保つ役割を担っていた。し
かし、その反面Niバリヤーが露出した時には、Niが
耐焼付性が低いために焼付が起こり易くなるという問題
がある。
摩擦によりアモルファス化することを利用して各種金属
材料の表面の耐摩耗性を高めることができるとの研究が
発表され(トライボロジスト、Vol.41,No.2, 1996,pp11
5 〜120)ているので、今後かかる観点からの材料開発が
活発になることが予測されるが、本発明者は夙に銅合金
の特定添加元素により銅合金表面の摺動特性を高める研
究を鋭意行ってきた。上述したような技術の現況に鑑
み、本発明の第1の目的は耐焼付性がすぐれた銅合金及
びすべり軸受を提供することにある。本発明の第2の目
的は、オーバレイの厚さを薄くしても耐焼付性を良好に
することができる銅系すべり軸受を提供することにあ
る。本発明の第3の目的は、Niバリヤーがなくても耐
食性が良好に保たれる銅系すべり軸受を提供することに
ある。
リックスに固溶している特定の元素を含む銅合金を使用
したライニングの最表面に特定元素の濃縮層が形成され
ることにより上記第1〜第3の目的を達成することがで
きることを解明した。かかる新しい知見に基づいて為さ
れた本発明は、Ag,Sn,Sb,In,Mn,Fe,
Bi,Zn,Ni及びCrからなる群より選択される少
なくとも1種の元素をCuマトリックス中に固溶し、こ
れらの元素からなるあるいはこれらの元素を含む二次相
が実質的に形成されていない銅合金及びこの銅合金を裏
金に接着したすべり軸受もしくは接着しないソリッドす
べり軸受に関する。
加元素は摩擦熱の発生やライニング表面組織の変化と並
行してライニング表面に移動して、部分的に添加元素の
濃縮層を形成し、これがさらに潤滑油中の硫黄系添加剤
と反応して硫黄系化合物となり、また潤滑油中の酸素と
添加元素が反応して酸素系化合物となる。これらの濃縮
層及び硫黄系化合物などは固体潤滑作用が優れており、
高面圧下でも摺動特性が優れており、かつ耐食性も良好
である。
結果を説明する。表1の組成をもつ合金板もしくは金属
板を試験片(面積1cm2 ,粗さ1.0〜1.5μmR
z)に加工し、これを次の条件の耐焼付試験に供した。
さ;0.5〜0.8μmRz
シリンダー、7は試験片、8はディスク、9はバランス
ウェイト、10はロードセルである。試験結果を表1に
示す。
よりも〜の化合物もしくは共晶組成がおよそ1.5
倍以上の耐焼付性をもつことがわかる。
及び凝着摩耗を測定する基礎試験を行なった。 試験機:図3に示すバウデン・テーバー式スティックス
リップ試験機 すべり速度:0.06m/s 荷重:5N 潤滑条件:オイル塗布 相手材:SUJ2(直径8mm) 図3において、11はピン、12は試験片、13はヒー
ターである。試験結果を表2に示す。 (以下余白)
凝着しがたいことが分かる。Ag−Snはこれに次ぐ
耐凝着性をもっている。純Ag及びCu−Sn,は
やや良好な耐凝着性をもっており、純Cuの耐凝着性は
最も不良である。以上の基礎実験により、上記の化合物
もしくは化合物に相当する高濃度のAg,Snなどをラ
イニングの表面に形成することにより、ライニングの耐
焼付性を高めることができるとの着想に到着した。
は使用前のライニング中で一旦固溶していることが重要
であり、上記添加元素は使用前に二次相を形成してはな
らないことが分かった。具体的には後述のX線回折条件
で二次相が摺動に関係する合金の表面部位に認められて
はならない。二次相が形成されているCu合金のマトリ
ックスでは添加元素が平衡状態で固溶しているかあるい
は非平衡状態で固溶しているのいずれにせよ、摺動後の
ランニング表面に濃縮しない。
化物を形成し易い、(ロ)銅と合金され易くかつ銅を著
しく硬化させない、(ハ)劣化潤滑油に対する耐食性が
良好である、(ニ)ライニング表面に濃縮され易い,
(ホ)濃縮物の摩擦係数、耐食性、非疑着性などの特性
がすぐれている、(ヘ)固溶が可能である、(ト)析出
し難いなどである。上記添加元素以外のCa,Naなど
は(イ)は満足するが銅と合金されないので(ロ)を満
足せず、Pbは(ハ)の面で採用できず、Ti,VはC
u自体より硫化物を生成し難いから(イ)を満足しな
い。Wは質量が大きいために銅合金中を移動し難く
(ニ)を満足しない。また、Pbは鋳造中の重力偏析を
解消する均一化が不可能であり、(ヘ)を満足しない。
Mgは(イ)を満足するが(ホ)を満足しない。
用中の銅合金中にある程度の期間固溶状態を保ってお
り、摩擦が進行する;軸とランニングの固体接触がひん
ぱんになるなどの状態に至ってから、添加元素がライニ
ング摺動面で濃縮し、次に硫黄、酸素などと反応するこ
とが必要である。したがって、析出し易い添加元素は容
易に二次相を形成するために濃縮物の供給源となる固溶
元素が不足する不都合を招く。したがって(ト)の特徴
も重要であり、公知の析出型合金の添加元素は本発明か
らは除外されている。なお、NiはSiと共存すると析
出することはよく知られているが、本発明ではSiは不
純物であるので、Niは析出型元素とはならない。本発
明による上記添加元素はこれら(イ)〜(ヘ)を全て満
足するが、特にAgは(ロ)〜(ホ)の性質が優れてい
る。SnはAgには総合的性能では及ばないが、(ホ)
が良好である。したがって、本発明においてはAgを必
須添加元素とし、その他の元素、特にSnを添加するこ
とが好ましい。
には総量で0.1wt%以上を含有させることが好まし
い。添加元素が固溶しているならば、その上限は特に数
値的に限定されない。しかしながら、Ag:0.1〜2
wt%,Sn:1〜10wt%,Cd:0.1〜5wt
%,Mn:0.1〜5wt%,Fe:0.01〜10w
t%,Bi:1〜30wt%、Zn:1〜30%,N
i:5〜50%、及びCr:1〜5%の範囲が好まし
い。より好ましくは、Ag:0.3〜1.0wt%,S
n:1〜7wt%,Cd:0.3〜3wt%,Mn:2
0〜30wt%,Fe:0.01〜5wt%,Bi:1
〜20%、Zn:15〜20%,Ni:1〜3%、及び
Cr:1〜3%である。
素を除いて添加元素はCuマトリックス中に非平衡に固
溶させることが濃縮層形成の面で有利である。これは、
添加元素が析出しようとするエネルギーなどが濃縮を促
進するためと考えられるが、本発明者が発見した濃縮現
象は一般的な析出現象では完全に説明できないことも言
及する。上記した元素の平衡固溶量は、二元系合金は状
態図(M. Hansen,Constitution of Binary Alloys, Mcg
rawhill Book Company, New York, 1964)より定められ
る固溶量である。例えば、200℃付近でAgは0.1
wt%,Snは1.3wt%,Cdは0.5wt%,C
rは0.05wt%である。また三元系合金では、上記
元素の何れか1種が二元系合金の平衡固溶量を超えた組
成の合金は非平衡固溶量の添加元素を含有しているもの
と実用的に扱ってよい。
た銅合金の製造方法は鋳造法またはアトマイズ法による
ことが好ましい。鋳造法の場合は溶湯を100℃/分以
上の冷却速度で冷却することにより添加元素を強制的に
固溶させる方法によることができる。その後の工程では
添加元素が析出しないような条件で加工などを行うこと
ができるが、細心の条件管理が必要になるので連続鋳造
帯などをそのままライニングとして使用することが好ま
しい。焼結法の場合は、アトマイズ粉は銅合金液体を高
速冷却し、その後焼結を添加元素の固溶温度域で行いそ
の後例えば50℃/分の冷却速度で急速冷却を行う。
のPを脱酸剤もしくは焼結促進剤として添加することが
できる。上記組成の残部はCuの他にSi、Oなどの銅
に通常含まれる不純物である。銅の純度は竿銅、電気
銅、電解精製銅,OFHCなどいずれであってもよい。
なお、不純物として許容されるSはCuに対して殆ど固
溶度がないために、Cu−S系二次相として存在する
が、S量が不純物程度であると添加成分の硫黄系化合物
層の形成は妨げられない。
場合は、焼結空孔に樹脂を含浸させることができる。こ
の含浸樹脂としては摺動材料として使用されるほとんど
の樹脂を使用することができるが、PI,PAI,PE
I,PEEK,芳香族PA,フェノール樹脂、エポキシ
樹脂、PTFE、及び他のフッ素系樹脂(PFA、ET
FE,FEP)などを好ましく使用することができる。
樹脂の量は30〜80体積%であることが好ましく、よ
り好ましくは40〜60体積%である。焼結材料の空孔
率は70〜20体積%であることが好ましく、より好ま
しくは60〜40体積%である。
等も混合することができる。これらは具体的には、グラ
ファイト、PTFE、Pb,Pb−Sn合金、フッ化カ
ーボン、フッ化Pbなどの固体潤滑剤、Al2 O3 ,S
iO2 ,Si3 N4 ,クレイ、タルク、TiO2 ,ムラ
イト、炭化カルシウム、Zn,AlN,Fe3 P,Fe
2 B,Ni2 B,FeB,などの耐摩耗性添加剤、ガラ
ス繊維、カーボン繊維、チタン酸カリウム繊維などの無
機繊維、芳香族PAなどの有機繊維、SiCウィスカな
どのウィスカ、Cu繊維、ステンレス繊維などの金属繊
維である。
くは焼結材を裏金に接着してすべり軸受とすることがで
きる、また裏金に接着しないソリッド軸受とすることも
できる。本発明に係る銅合金はブシュ用の場合はオーバ
レイを被着しないで使用され、エンジン各用種軸受、コ
ンロッド軸受、その他の内燃機関用軸受の場合はオーバ
レイを被着してすべり軸受として使用される。潤滑油中
で高温下で摺動することによりオーバレイが初期なじみ
で摩耗し、下地ライニングが露出すると、あるいはオー
バレイなしの銅合金が次第に摩耗すると添加元素が表面
近傍に次第に移動し、部分的に薄膜に添加元素リッチ相
を形成する。
次イオン質量分析Secondary Ion Mass Spectroscopy )
法で添加元素を分析すると、これらが濃縮している領域
が認められる。このような濃縮層では添加元素が合金バ
ルク中よりも例えば濃度比で1.3倍以上と高められて
おり、容易に分析により検出可能である。この濃縮層は
1μm以下と非常に薄いので物質の同定が困難である
が、化合物であると考えられる。さらに摺動が進むと、
濃縮層が潤滑油中の硫黄と反応して添加元素及び硫黄の
濃縮層が形成される。
る潤滑油の基油及び添加剤は全く制限がない。添加剤と
して含有されることがある硫黄系添加剤は、(ポリ)サ
ルファイド(スルフィド)、スルフォネート、スルフィ
ネート、スルフェネート、フェネート系(図9参照),
(ジ)チオフォスフェート化合物、チオケトン、チオア
セタール、チオカルボン酸とその誘導体、スルホキシド
とその誘導体、スルフォニル、スルフィニル、スルフェ
ニル、ZnDTP等の化合物がある。すなわち、これら
の有機硫黄化合物は何れもすべり軸受の摺動温度である
100〜160℃において反応性がある硫酸系酸に分解
し、銅合金表面の濃縮物と反応する。
り軸受は裏金に接着されたもしくは接着されない銅合金
の表面をオーバレイで被覆してなるすべり軸受におい
て、オーバレイが初期なじみにより部分的に摩滅して表
出された銅合金の摺動面が、少なくとも部分的に、A
g,Sn,Sb,In,Mn,Fe,Bi,Zn,Ni
及びCrからなる群より選択された少なくとも1種の元
素ならびにS及びOの1種又は2種を濃縮した銅合金表
層あるいは少なくとも1種の元素に加えて硫黄及び酸素
の1種又は2種を濃縮した銅合金表層よりなり、この銅
合金表層に連続する銅合金バルク部は、少なくとも該銅
合金表層との界面及びその近傍において少なくとも1種
の元素を固溶しかつ該少なくとも1種の元素からなるも
しくはこの元素を含む二次相が実質的に生成されていな
い銅合金固溶体からなることを特徴とするすべり軸受。
模式的に示す。1は鋼板などよりなる裏金であり、2は
裏金に圧接、焼結などにより接合されたライニングであ
り、オーバレイは摩滅した結果ライニングの表面が露出
されている。ライニング1の表面には1μm以下のA
g,Sn,Oなどの濃縮した層3、すなわち銅合金表層
(以下「濃縮層」と言う)が形成されており、その一部
に硫黄系化合物4が存在し、これが摺動方向に薄く伸ば
されている。これらが耐焼付性、耐凝着性、耐摩耗性、
耐食性などを従来のケルメットを大幅に上回るレベルま
で向上させる。裏金1は軟鋼板、合金鋼板あるいはその
表面処理(ショットブラスト、酸洗、めっきなど)板で
ある。
する固溶体組織をもつ合金からなる。濃縮層3はバルク
2aから供給されたAg,Snなどが濃縮したものであ
り、図1に示した状態よりさらにライニングが摩耗する
と、より内部のバルク2aから供給されるAg,Snに
より新しい濃縮層3が形成されるために、長期に亘って
すぐれた性能が発揮される。このような濃縮を可能にす
るためには固溶元素が濃縮層3との界面及び近傍に存在
することが必要である。ここで近傍とはライニングの摩
滅量とAg,Snなどの移動距離に関連するが、自動車
エンジン用軸受で前者を最大20μmとすると使用前ラ
イニングの表面から約30μm程度である。したがっ
て、前記表面から30μmより深い部分2bではAg,
Snは一部析出していても本発明のすべり軸受の性能が
低下することはない。
を確保するオーバレイは、ライニングの耐焼付性不足を
補うように厚く被着する必要はない。すなわち、本発明
の銅合金は耐焼付性が優秀であり、事実露出することに
より上記の濃縮層が形成されるのでオーバレイを厚く被
着する必要はない。したがって、オーバレイは初期なじ
みの目的のみに薄く形成することが、オーバレイによる
コスト増大を抑える面からも好ましい。オーバレイの厚
さは1〜25μmが好ましく、より好ましくは2〜8μ
mである。オーバレイとしてはPb基、Sn基等の金属
オーバレイ、あるいは樹脂系オーバレイを使用すること
ができる。以下、実施例により本発明をより詳しく説明
する。
た後合金表面に形成される添加元素の濃縮層は耐食性が
優れているために、銅合金中のスズによりライニングの
耐食性を高めることは必須ではない。したがって、ライ
ニングの銅合金がスズを含有する場合でも従来のように
Niバリヤーをオーバレイとライニングの間に施す必要
はない。このために、オーバレイが摩耗してNiバリヤ
ーが露出した際の焼付のおそれがなくなる。但し、相手
軸の加工精度が低い場合などには、オーバレイを厚くし
たNiバリヤーを設けて、Snの拡散を防止することが
好ましい。以下、実施例により本発明をより詳しく説明
する。
m以下)を板厚1.5mmの鋼板(SPCC)に厚さが
2mmとなるように散布し、水素ガス雰囲気中で850
℃、35分の条件で焼結し、その後実施例については5
0℃/min以上の速度で急冷し、比較例については8
℃/minの冷却速度で冷却し、その後圧延し(板厚減
少率7%)、焼結層の厚さが0.3mmのバイメタル状
軸受素材を製造した。
元素のオージェ分析による強度比で表した濃度である。
前にX線回折(条件:Cu管球、30KV、150m
A)を行った結果をそれぞれ図4(拡大図6)及び図5
(拡大図7)にそれぞれ示す。比較例の組織はCuの
ピークの他に、Cu−Sn金属間化合物Ag及びSnの
ピークが認められる。したがって、この銅合金はAg,
Snを固溶したCu固溶体と二次相としてのCu−Sn
金属間化合物Ag及びSnから構成されていることが分
かる。一方図4,6(本発明実施例)にはCuのピー
クのみが認められる。
付試験の試験片に加工し、ピンオンディスク式焼付試験
を行い、焼付荷重を求めまた焼付発生時の表面をオージ
ェ分析して表層濃度を求めた結果を表3に示す。
では摺動中に添加元素が表層に濃縮して耐焼付性を高め
ているが、一方固溶体と二次相の組織を有する銅合金で
は摺動中の添加元素の表層への濃縮が起こらないので耐
焼付性が不良であることが分かる。
化電気めっき浴によりPb−Sn−Cuめっき層を形成
し、その後Inめっき層を電気めっきより形成し、続い
て150℃で40分間の拡散を行った。なお、予備実験
によりこの熱処理では図8(表4)に示す実施例合金で
はAg,SnはCu固溶体中に留められており、二次相
として分離しないことを確認しておいた。銅合金の組成
及びオーバーレイの組成、厚さは図8(表4)に示した
ものである。表4に構成を示したすべり軸受を下記条件
で実機試験を行った。 エンジン:L4−2リッターディーゼルエンジン(ター
ボチャージャー付き) 回転数:4000rpm 軸受面圧:70MPa 潤滑油種:CD10W−30 油温:125℃ 試験時間:400h
のすべり軸受はオーバレイの厚さが薄いにも拘らず摩耗
量が少ない。比較例のすべり軸受は焼付が起こるかある
いは摩耗量が著しく多い。
来のすべり軸受が直面していた諸問題を抜本的に解決す
るので、内燃機関用などの部品として従来のケルメット
を代替することが期待される。
ある。
機の図である。
示す図表(表4)である。
Claims (20)
- 【請求項1】 Ag,Sn,Sb,In,Mn,Fe,
Bi,Zn,Ni及びCrからなる群より選択される少
なくとも1種の元素をCuマトリックス中に固溶し、こ
れらの元素からなるあるいはこれらの元素を含む二次相
が実質的に形成されていないことを特徴とする耐焼付性
にすぐれた銅合金。 - 【請求項2】 前記少なくとも1種の元素の総量が0.
1wt%以上である請求項1記載の耐焼付性にすぐれた
銅合金。 - 【請求項3】 前記少なくとも1種の元素が非平衡にC
uマトリックス中に固溶していることを特徴とする請求
項1又は2記載の耐焼付性にすぐれた銅合金。 - 【請求項4】 前記少なくとも1種の元素がAgとAg
以外の元素の2種以上である請求項1から3までの何れ
か1項に記載の耐焼付性にすぐれた銅合金。 - 【請求項5】 前記少なくとも1種の元素がさらにSn
を含む2種以上である請求項4記載の耐焼付性にすぐれ
た銅合金。 - 【請求項6】 さらに0.01〜0.5wt%のPを含
むことを特徴とする請求項1から5までの何れか1項記
載の耐焼付性にすぐれた銅合金。 - 【請求項7】 請求項1から6までの何れか1項記載の
銅合金を裏金に接着したすべり軸受。 - 【請求項8】 請求項1から6までの何れか1項記載の
銅合金を裏金に接着しないでソリッド形態で使用するす
べり軸受。 - 【請求項9】 厚さが1〜25μmのオーバレイにより
前記銅合金を被覆したことを特徴とする請求項7又は8
記載のすべり軸受。 - 【請求項10】 オーバレイの厚さが2〜8μmである
請求項9記載のすべり軸受。 - 【請求項11】 オーバレイが前記銅合金に直接接着さ
れていることを特徴とする請求項9又は10記載のすべ
り軸受。 - 【請求項12】 銅合金の表面をオーバレイで被覆して
なるすべり軸受において、前記オーバレイが初期なじみ
により部分的に摩滅して表出された前記銅合金の摺動面
が、少なくとも部分的に、Ag,Sn,Sb,In,M
n,Fe,Bi,Zn,Ni及びCrからなる群より選
択された少なくとも1種の元素を濃縮した銅合金表層よ
りなり、この銅合金表層に連続する銅合金バルク部は、
少なくとも該銅合金表層との界面及びその近傍において
前記少なくとも1種の元素を固溶しかつ該少なくとも1
種の元素からなるもしくはこの元素を含む二次相が実質
的に生成されていない銅合金固溶体からなることを特徴
とするすべり軸受。 - 【請求項13】 銅合金の表面をオーバレイで被覆して
なるすべり軸受において、前記オーバレイが初期なじみ
により部分的に摩滅して表出された前記銅合金の摺動面
が、少なくとも部分的に、Ag,Sn,Sb,In,M
n,Fe,Bi,Zn,Ni及びCrからなる群より選
択された少なくとも1種の元素ならびにS及びOの1種
又は2種を濃縮した銅合金表層よりなり、この銅合金表
層に連続する銅合金バルク部は、少なくとも該銅合金表
層との界面及びその近傍において前記少なくとも1種の
元素を固溶しかつ該少なくとも1種の元素からなるもし
くはこの元素を含む二次相が実質的に生成されていない
銅合金固溶体からなることを特徴とするすべり軸受。 - 【請求項14】 前記少なくとも1種の元素の総量が
0.1wt%以上である請求項12又は13記載のすべ
り軸受。 - 【請求項15】 前記少なくとも1種の元素が前記バル
ク部においてCuマトリックス中に非平衡に固溶してい
ることを特徴とする請求項14記載のすべり軸受。 - 【請求項16】 前記少なくとも1種の元素がAgとA
g以外の元素の2種以上である請求項14又は15記載
のすべり軸受。 - 【請求項17】 前記少なくとも1種の元素がさらにS
nを含む2種以上である請求項16記載のすべり軸受。 - 【請求項18】 前記銅合金がさらに0.01〜0.5
wt%のPを含むことを特徴とする請求項12から18
までの何れか1項記載のすべり軸受。 - 【請求項19】 前記オーバレイが直接銅合金に被着さ
れていることを特徴とする請求項12から18までの何
れか1項記載のすべり軸受。 - 【請求項20】 前記少なくとも1種の元素が前記銅合
金のバルクの濃度に対して1.3倍以上銅合金表層に濃
縮されている請求項12から19までの何れか1項記載
のすべり軸受。
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