JPH09225501A - チタンまたはチタン合金製細径線材の製造方法 - Google Patents

チタンまたはチタン合金製細径線材の製造方法

Info

Publication number
JPH09225501A
JPH09225501A JP3380496A JP3380496A JPH09225501A JP H09225501 A JPH09225501 A JP H09225501A JP 3380496 A JP3380496 A JP 3380496A JP 3380496 A JP3380496 A JP 3380496A JP H09225501 A JPH09225501 A JP H09225501A
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
wire
titanium
heat treatment
titanium alloy
cold
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Pending
Application number
JP3380496A
Other languages
English (en)
Inventor
Yoichi Imamura
陽一 今村
Koichi Kuroda
浩一 黒田
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Nippon Steel Corp
Original Assignee
Sumitomo Metal Industries Ltd
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Sumitomo Metal Industries Ltd filed Critical Sumitomo Metal Industries Ltd
Priority to JP3380496A priority Critical patent/JPH09225501A/ja
Publication of JPH09225501A publication Critical patent/JPH09225501A/ja
Pending legal-status Critical Current

Links

Landscapes

  • Metal Rolling (AREA)

Abstract

(57)【要約】 【課題】外径5mm以下のチタンまたはチタン合金製細
径線材の製造方法を提供する。 【解決手段】円形孔型を画成する4個一対の孔型ロール
を備える複数の4ロールスタンドを、隣合う各ロールス
タンドの円形孔型での非拘束部分が重ならないようにパ
スライン方向に連設してなる連続圧延機を用いて素線材
の外径を25〜60%の断面減少率で冷間圧延した後、
無酸化雰囲気中でβ変態点〜(β変態点+150℃)の
温度域に10〜90秒間加熱保持する熱処理を施す。前
記の熱処理に際し、加熱保持後の線材は強制冷却するの
が好ましい。また、熱処理と強制冷却は通線可能な連続
炉と冷却装置を用いて施すのが好ましい。 【効果】表面が美麗で、かつ2次冷間加工性に優れた高
寸法精度の細径線材を効能率に製造することが可能であ
る。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、細径、具体的には
直径が5mm以下の表面が美麗な2次冷間加工性に優れ
るチタンまたはチタン合金製細径線材の製造方法に関す
る。
【0002】
【従来の技術】直径が5mm以下のチタンまたはチタン
合金製の細径線材は、通常、次のようにして製造され
る。まず、2個一対の孔型ロールを備える2ロールスタ
ンドをパスライン方向に複数スタンド連設してなる熱間
連続線材圧延機を用い、直径が6〜9mmの素線材を得
る。次いで、ダイスピーリング法またはバイトピーリン
グ法により冷間にて素線材表面の疵取りを行う。しかる
後、冷間にて、タングステンカーバイト(WC)製など
からなる孔ダイスに素線材を通して出側から引抜いて外
径を縮径する、いわゆるダイス伸線法によって所定外径
の細径線材製品に仕上げる。
【0003】上記ダイス伸線法による加工に際し、炭素
鋼や低合金鋼などの伸線加工時に、通常用いられる硫化
油脂などを用いた油潤滑伸線や金属石鹸などを用いた粉
潤滑伸線を行うと、チタンが焼付き易い材料であるた
め、被加工材料であるチタンと孔ダイスとの間で焼付き
が多発する。このため、チタン系材料のダイス伸線加工
に際しては、前処理として素線材表面に酸化スケール被
膜を生成させ、その酸化スケール被膜を潤滑被膜として
伸線加工が行われる。
【0004】しかし、上記チタンの酸化スケールは非常
に硬く、この硬い酸化スケールの粉が線材表面に押し込
まれながら加工が進行する。この結果、伸線後の線材は
その表面肌が荒れた表面性状の非常に劣るものとなる。
従って、これを製品とするには、伸線加工後に残存する
酸化スケールの除去に加え、表面性状の向上を目的とす
る研磨等の仕上加工が必要になることが多い。
【0005】このように、従来のチタン系材料の細径線
材の製造方法は、潤滑酸化スケール被膜の生成処理、伸
線加工後における酸化スケール除去、さらには仕上のた
めの研磨加工が必要で、これらに要する工数が多大なた
めに製品のコスト高を招くという欠点があった。
【0006】上記ダイス伸線法の欠点は、本願出願人が
先に提案した特開平6−501号公報に示される装置を
用いることによって解消することができる。
【0007】すなわち、その装置は、円形孔型を画成す
る4個一対の駆動孔型ロールを備える4ロールスタンド
を、隣合う各ロールスタンドの円形孔型での非拘束部分
が重ならないようにパスライン方向に複数スタンド連設
してなり、各スタンド間の中心間距離をそこを通過する
被圧延材外径の50倍以下に設定してなる連続圧延機
と、この連続圧延機の出側に近接配置した巻取り機とか
らなっている。そして、その加工は、被圧延材料の先端
が巻取り機に到達するまでは低速で冷間圧延し、しかる
後に高速で冷間圧延して縮径仕上げ加工される。
【0008】この方法によれば、その加工が圧延である
ので、ダイス伸線法に比べて工具(孔型ロール)と材料
との間の相対滑りがないか、仮にあっても極めて小さ
い。このため、チタン系材料であってもその表面に潤滑
酸化スケール被膜を施すことなく加工することができ
る。この結果、加工後の線材表面には、酸化スケール粉
の押し込みに起因する肌荒れが発生することがない。従
って、その製品は、光沢のある表面性状を有するものと
なる。
【0009】また、チタン系材料をダイス伸線法で引抜
く場合は、チタンが難加工性材料で断線し易いため、1
パス当たりの加工度を断面減少率で高々20%程度まで
にしかできない。これに対し、上記特開平6−501号
公報に示される装置を用いて上記のようにして仕上げ加
工する場合には、冷間圧延時における1パス当たりの加
工度を断面減少率で最大90%程度にまで高めることが
でき、生産性を格段に高め得るほか、製品の寸法精度を
も高め得るという利点もある。
【0010】ところで、上記特開平6−501号公報に
示される装置を用いて冷間圧延する場合、前述したよう
に、その加工度を断面減少率で最大90%程度まで高め
得るが、その最大値は当然のことながら材料特性(化学
成分や加工履歴など)に応じて変わる。
【0011】すなわち、熱間圧延して得られた素線材か
ら1パスの冷間圧延で所望外径の製品を得ることができ
ない場合には、2パス以上の冷間圧延を行うことが必要
になる。この場合、被加工材料は1次冷間加工である1
パス目の加工によって加工硬化し、その冷間加工特性が
劣化する。この加工硬化した材料をそのまま2次冷間加
工である2パス目以降の冷間圧延に供する場合には、2
パス目で付与できる最大加工度は1パス目のそれよりも
必然的に小さくなる。さらには、2パス目の圧延時に、
材料表面に割れなどが発生するほか、断線する恐れもあ
る。このように、2パス目以降の2次冷間加工時に付与
できる加工度は、1次冷間加工時(1パス目)のそれよ
り小さくする必要がある。このため、付与可能な加工度
の最大値が異なることになる。
【0012】また、1パスの仕上げ冷間圧延のみで所望
外径の製品が得られ、その仕上げ冷間圧延ままの製品に
曲げ加工や異形線材加工などの2次冷間加工を施す場合
においても上記と同様で、2次冷間加工時に付与できる
加工度を1次冷間加工時のそれより小さくする必要があ
るために付与可能な加工度の最大値は異なる。
【0013】従って、通常、2パス以上の冷間圧延を行
う場合は、そのパス繰り返し間で軟化のための焼鈍を施
す一方、最終パス後に製品品質を整えるための焼鈍が施
される。また、1パスの仕上げ冷間圧延を行う場合は、
その仕上げ冷間圧延後に製品品質を整えるための焼鈍が
施される。
【0014】上記の焼鈍は、従来、連続圧延機の出側に
配置した巻取り機で巻取ったコイル状の製品線材をその
まま無酸化雰囲気のバッチ式熱処理炉に装入し、β変態
点〜(β+100℃)の温度域に30〜60分間均熱保
持して行うこととしていた。
【0015】しかし、チタン系材料は、熱処理での再結
晶後における結晶粒の成長が速く、特に外径が5mm以
下の細径線材を上記の条件で熱処理すると結晶粒が著し
く粗大化して冷間加工性が低下し、2パス目以降の冷間
圧延などの2次冷間加工時に強加工を施すと、表面肌が
荒れたり、割れが発生したりするため、2次冷間加工時
に付与する加工度を低くせざるを得ない。そのため、表
面性状に優れるものの、その製品の適用範囲が限られる
という問題があった。
【0016】また、素線材として熱間圧延材を用いる
が、その表面には熱間圧延時に生じた酸化スケールなど
の異物に起因する押込疵が残留していることが多く、こ
の押込疵が原因で冷間圧延時に断線が発生することがし
ばしばあり、これを回避するためには加工度を低くして
複数パス圧延を行わざるを得ないという問題もあった。
【0017】以上のことから、表面が美麗で、かつ2次
冷間加工時における加工度を可及的に高め得る外径5m
m以下のチタンまたはチタン合金製の細径線材の製造方
法の確立が望まれていた。
【0018】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、上記の実情
に鑑みなされたもので、その課題は、表面が美麗で、か
つ2次冷間加工時に付与できる加工度が可及的に大き
い、いわゆる2次冷間加工性に優れた外径5mm以下の
チタンまたはチタン合金製の細径線材を得ることのでき
る製造方法を提供することにある。
【0019】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、表面が美
麗な2次冷間加工性に優れる外径5mm以下のチタンま
たはチタン合金製の細径線材を得るべく種々実験を重ね
た結果、以下のことを知見し、本発明を完成するに到っ
た。
【0020】すなわち、表面が美麗で、しかも2次冷間
加工時に付与できる加工度を可及的に大きくできるよう
にするためには、1次冷間加工を断面減少率で25〜5
0%の加工度で行う必要があり、この1次冷間加工後に
無酸化雰囲気中でβ変態点〜(β変態点+150℃)の
温度域に10〜90秒間均熱保持する短時間熱処理を施
す必要があることを知見した。
【0021】上記知見に基づく本発明の要旨は、次のチ
タンまたはチタン合金製細径線材の製造方法にある。
【0022】円形孔型を画成する4個一対の孔型ロール
を備える複数の4ロールスタンドを、隣合う各ロールス
タンドの円形孔型での非拘束部分が重ならないようにパ
スライン方向に連設してなる連続圧延機を用い、チタン
またはチタン合金製の素線材の外径を縮径圧延する方法
において、25〜60%の断面減少率で冷間圧延を施し
た後、無酸化雰囲気中でβ変態点〜(β変態点+150
℃)の温度域に10〜90秒間加熱保持する熱処理を施
すことを特徴とするチタンまたはチタン合金製細径線材
の製造方法。
【0023】上記本発明の製造方法においては、その熱
処理に際し、加熱保持後の線材を強制冷却するのが好ま
しい。また、その熱処理は通線可能な連続炉を用いて施
すのが好ましい。さらに、強制冷却は通線可能な連続炉
の出側に近接配置した通線可能な冷却装置を用いて施す
のが好ましい。また更に、連続圧延機としては、前後の
スタンド中心間間隔を当該スタンド間を通る線材外径の
50倍以下になるよう設定したものを用いるのが好まし
い。
【0024】上記本発明の製造方法では、断面減少率で
25〜60%の加工度を付与しての1次冷間加工によっ
て材料の結晶粒組織に予備歪みを加え、しかる後に無酸
化雰囲気中でβ変態点〜(β変態点+150℃)の温度
域に10〜90秒間加熱保持する短時間熱処理を施すこ
とにより、結晶粒が再結晶すると同時に再結晶した結晶
粒が成長して粗大化する前に熱処理が完了する。この結
果、短時間熱処理後の線材は、均一微細な結晶粒組織を
有し、その冷間加工性が可及的に向上したものになる。
また、その線材表面は、適正な1次冷間加工時の加工度
と無酸化雰囲気中での短時間熱処理との相乗効果によ
り、酸化スケール被膜のない美麗なものとなる。
【0025】
【発明の実施の形態】以下、本発明の製造方法について
添付図面を参照して詳細に説明する。
【0026】まず、冷間圧延による加工方法とその条件
について説明する。
【0027】図1は本発明の冷間圧延状態を示す模式的
側面図であり、図中、符号1は巻戻機を示す。巻戻機1
には、分塊圧延により得られたビレットを粗圧延機群、
中間および仕上圧延機群にて順次熱間圧延して製造され
た断面が円形である直径6mm以上の素線材Wが巻付け
られており、素線材Wの一端を引張ることにより解ける
ようになっている。
【0028】解かれた素線材Wは、入側ガイド2に導か
れ、図示しないモータにより、例えば0.1m/sec
の速度で線材が進行する程度の低速にて駆動される連続
圧延機3に通線されて、その先端部分が巻取機4に巻取
られる。その後、素線材Wは、高速駆動に切り換えられ
た連続圧延機3を通る間に次第に冷間縮径され、その出
側において所定の直径を有する細径線材SWとなり、巻
取機4に順次巻取られる。
【0029】連続圧延機3は、パスライン周りに4個の
孔型ロールを配してその円形孔型を画成する複数のロー
ルスタンド3aをタンデムに連設配置したものである。
【0030】図2は、連続圧延機3を構成するロールス
タンド3aのうち、入側の第1スタンドと第2スタンド
を示す模式的正面図であり、同図(a)は第1スタン
ド、同図(b)は第2スタンドを示している。
【0031】図2に示すように、各ロールスタンド3a
には、正面視形状が八角形のハウジング10の中央部に
開設された縦横十文字の穴10aが設けられている。こ
の穴10a内には、4個一対の孔型ロール11、12、
13および14がロール軸11a、12a、13aおよ
び14aで両端軸支して配設されており、これによって
円形のロール孔型15が画成されるように構成されてい
る。
【0032】4個一対の孔型ロール11、12、13お
よび14は、各ロールの両側面に固定装着された相互に
歯合する傘歯車17により、図示しないモータに伝達機
構を介して接続された駆動軸11aの回転に伴って同方
向に駆動回転するようになっている。
【0033】また、第1スタンドと第2スタンドとは、
同図(a)および(b)に示すように、そのロール孔型
15の溝底方向を45°位相させて配置してあり、前段
スタンドのロール孔型のフランジ部分に対向した圧下を
受けない材料部分が後段スタンドのロール孔型15の溝
底部分で圧下を受けるようにされている。すなわち、4
個一対の孔型ロール11、12、13および14は、奇
数スタンドでは同図(a)、偶数スタンドでは同図
(b)の状態に順次配置されており、そのロール孔型1
5の大きさが、前段スタンドから後段スタンドに向かう
に従って順次小さくされており、これによって素線材W
の直径を順次縮小して所定の直径に仕上げるようになっ
ている。
【0034】さらに、各スタンドは、その中心間間隔M
(図1参照)を当該両スタンド間を通過する材料外径の
50倍以下になるようにそれぞれ連設配置されており、
これによって材料に圧下を受けない部分が生じないよう
になっている。これは、各スタンドの連設間隔を上記の
ように設定しない場合には、前段スタンドを出た線材が
後段スタンドにねじれて噛み込み、圧下を受けない材料
部分が生じ、製品の寸法精度が悪化することがあるため
である。従って、連続圧延機としては、そのスタンド中
心間間隔を上記のように定めたものを用いるのが好まし
い。なお、前後のロールスタンドを構成するハウジング
10は、2個以上の適宜な数を共通な一体ハウジングと
してもよい。
【0035】また更に、各スタンドのロール孔型15
は、図3に示すように、フランジ部間の隙間16に材料
が噛み出さないようにするため、溝底間直径Dmよりも
フランジ間直径Dnのほうが若干大きい形状にされてい
る。すなわち、各スタンドとも、溝底間直径Dmを1と
した場合、フランジ間直径Dnは1.02〜1.06倍
程度にされている。
【0036】これは、フランジ間直径Dnが溝底間直径
Dmの1.02倍未満になると、材料がフランジ間隙に
噛み出すのを抑制した状態での圧延可能な1スタンド当
たりに付与できる加工度が小さくなり過ぎる結果、総ス
タンドを増やす必要が生じて実用的でなくなるのを防ぐ
ためである。逆に、その値が1.06を超えると、得ら
れた製品の寸法精度が急激に悪化するようになるからで
ある。
【0037】上記のように構成された連続圧延機を用
い、直径が6mm以上のチタンまたはチタン合金製の素
線材Wに冷間にて圧延加工を施すが、本発明では付与す
る加工度を断面減少率で25〜60%とする必要があ
る。すなわち、付与する加工度が断面減少率で25%未
満では、十分な変形歪みが材料中心部にまで加わらず、
後述する熱処理を施しても材料断面全体での再結晶によ
る結晶粒の細粒化が不十分で、2次冷間加工性の向上が
図れないためである。また、付与する加工度が断面減少
率で60%を超えると材料に加わる変形歪みが過度にな
り、後述する熱処理を施した場合に均一で微細な再結晶
組織が得られず、上記同様に2次冷間加工性の向上が図
れないためである。また更に、付与する加工度が断面減
少率で60%を超えると、素線材Wの表面に熱間圧延時
に生成した酸化スケールなどの異物に起因する押込疵が
残留している場合、この押込疵が原因で圧延中に断線す
ることがある。しかし、加工度を断面減少率で60%以
下にするとその恐れが殆どなくなる。以上のことから、
本発明では冷間圧延時に付与する加工度を断面減少率で
25〜60%の範囲に限定した。
【0038】このようにして、冷間圧延加工によって直
径5mm以下の細径線材SWを製造する場合には、特開
昭63−168202号公報に示されるように、何らの
問題もなく寸法精度に優れた製品を高能率に製造するこ
とができるのに加え、適正な変形歪みがその中心部にま
で付与される。
【0039】次に、熱処理方法とその条件について説明
する。
【0040】上記のようにして所望の直径にまで冷間加
工された細径線材SWは、2次冷間加工性を向上させる
ための熱処理が施される。
【0041】しかし、この熱処理に際して通常用いられ
る熱処理方法、すなわち巻取られたコイル状の細径線材
SW全体をバッチ式や連続式の熱処理炉に装入して熱処
理する方法を適用したのでは、チタン系材料の再結晶後
における結晶粒の成長速度が速いために、2次冷間加工
性を向上させることはできない。これは、コイル状の細
径線材SW全体を熱処理炉に装入して熱処理する方法の
場合、均熱保持時間を短くしようと試みてもコイル全体
が昇温するのに要する時間や冷却に要する時間が長くか
かる。従って、細径線材SWをその長手方向にみると、
均熱保持時間が必然的に長くなる部分が生じる。その結
果、均熱保持時間が長くなる部分では、一旦再結晶して
細粒となった結晶粒が容易に粗大化する。このため、細
径線材SWの軸長方向全長にわたって均一微細な結晶粒
組織を得ることが不可能になるためである。
【0042】そこで、本発明では、以下に述べる方法と
条件によって熱処理を施す。
【0043】図4は本発明の熱処理状態を示す模式的側
面図であり、図中、符号5は巻戻機を示す。巻戻機5に
は、上記冷間圧延して得られた断面が円形である直径5
mm以下の細径線材SWが巻付けられており、細径線材
SWの一端を引張ることにより解けるようになってい
る。
【0044】解かれた細径線材SWは、その先端が入側
ガイド6に導かれ、その出側において、巻取機9に巻取
られてその一端部が通線可能な熱処理炉7および冷却装
置8に通されたダミー線材DWと接続された後、巻取機
9を所定の通線速度となるように回転駆動し、熱処理炉
7および冷却装置8内に順次連続的に通線させることに
よって熱処理される。
【0045】熱処理炉7は、ステンレス鋼やNi基合金
などの金属製からなる長尺円筒状のマッフル7aを備え
る一方、その外部に高周波加熱コイルなどの適宜な加熱
手段7bが設けられており、均熱ゾーンの長さがLにな
るように構成されている。そして、マッフル7a内に
は、Arガスなどの不活性ガスが供給され、無酸化雰囲
気とされており、これによってその表面に酸化スケール
が発生しないようになっている。
【0046】冷却装置8は、上記熱処理炉7のマッフル
7aに接続されたステンレス鋼やNi基合金などの金属
製からなる円筒8aを備える一方、その外部に冷却水を
噴射するヘッダ8bが設けられており、加熱保持後の細
径線材SWを強制冷却するようになっている。
【0047】上記のように構成された熱処理設備を用
い、直径が5mm以下のチタンまたはチタン合金製の冷
間加工された細径線材SWに対して2次冷間加工性を付
与向上させるための熱処理を施す。このとき、その熱処
理条件は、β変態点〜(β変態点+150℃)の温度域
に10〜90秒間均熱保持とする必要がある。
【0048】すなわち、均熱保持温度がβ変態点未満で
は再結晶しないからであり、逆に均熱保持温度が(β変
態点+150℃)を超えると、再結晶して一旦微細とな
った結晶粒が成長して粗大化し、2次冷間加工性の向上
が図れないためである。
【0049】また、均熱保持時間が10秒未満では、再
結晶が完全に完了せず、線材断面全体が均一に軟化され
なくなり、2次冷間加工性の向上が図れないからであ
る。逆に、均熱保持時間が90秒を超えると、均熱保持
温度が高い場合と同様に再結晶して一旦微細となった結
晶粒が成長して粗大化し、2次冷間加工性の向上が図れ
ないためである。よって、本発明では、その均熱保持温
度と保持時間を上記の範囲に限定した。
【0050】なお、β変態点は、チタンまたはチタン合
金に含まれる成分とその含有量によって異なり、例えば
JIS−H4600に規定されている1種チタンのβ変
態点は約900℃であり、15%V−3%Al−3%S
n−3%Cr−Tiのチタン合金のβ変態点は約780
℃である。
【0051】上記の方法と条件の基に熱処理された細径
線材SWは、その全長にわたって中心部まで均一で微細
な結晶粒組織を有し、その表面に酸化スケールを有しな
いものとなるので、表面が美麗でかつ2次冷間加工性に
優れた製品となる。
【0052】なお、上記図1の図示例では、連続圧延機
3の入側に巻戻機1を設ける一方、出側に巻取機4を設
置し、コイルからコイルへの冷間加工の場合を示した
が、製品が溶接棒のような短尺線材である場合には、上
記巻取機4に代えてフライイング切断装置を配置し、圧
延後の線材を定尺切断するようにしてもよい。
【0053】また、細径線材SWは、無酸化雰囲気のマ
ッフル7a中を通る間に上記の温度域に昇温され、かつ
均熱されるが、その昇温時間t1 (sec)は細径線材
SWの直径d(mm)によって変化する。そして、その
昇温時間t1 は、発明者らの実験結果によれば下記式
で求めることができることが明らかとなった。
【0054】 t1 =f(d)=9.3d1.32・・・・・ 従って、上記マッフル7aの均熱ゾーンの長さL(m)
は、均熱保持時間をt2 (10〜90sec)、通線速
度をV(m/min)とすると、下記式を満たす長さ
にする必要がある。
【0055】 {V(9.3d1.32+10)}/60≦L≦ {V(9.3d1.32+90)}/60・・・・ さらに、上記熱処理炉7による熱処理後の細径線材SW
は放冷してよいが、細径線材SWの直径が太く、その中
央部まで冷えるのに時間がかかって中央部の結晶粒が粗
大化する恐れがある場合には、上記熱処理炉7の後段に
配置した冷却装置8によって強制冷却するのが好まし
い。この場合、冷却装置8は、図示例の如く、円筒8a
を備え、その外部に冷却水を噴射するヘッダ8bを設け
た間接冷却装置に代えて、冷却水を細径線材SWに直接
吹き付けるようにしたものであってもよい。しかし、こ
の場合、線材表面に酸化スケールが発生し、表面性状が
悪化するので、図示例の間接冷却装置とするのが好まし
い。
【0056】さらに、図示例では冷間圧延加工と熱処理
とを独立した別ラインで行う場合について示したが、上
記の式を満たし得る場合には、図1の連続圧延機3と
巻取機4との間に図4に示す熱処理炉7を、必要に応じ
さらに冷却装置8をも介設し、冷間圧延加工と熱処理と
を同一ライン上で行うようにしてもよいことは勿論であ
る。
【0057】
【実施例】
[実施例1]素線材として、熱間圧延にて直径6mmに
仕上げた後、ダイスピーリングにより直径5.7mmに
外径を調整したβ変態点が900℃のJIS−H460
0に規定されている1種チタン製の線材(以下、純チタ
ン線材という)と、15%V−3%Al−3%Sn−3
%Cr−残部Tiおよび不可避的不純物からなるβ変態
点が780℃のチタン合金製の線材(以下、チタン合金
線材という)を準備した。
【0058】また、連続圧延機として、図3に示すDn
がDmの1.04倍の孔型を有し、最大外径が100m
m以下の孔型ロールを備えるスタンドを100mmのス
タンド中心間間隔で10スタンド連設する一方、その後
段に最大外径が60mm以下の孔型ロールを備えるスタ
ンドを60mmのスタンド中心間間隔で13スタンド連
設してなり、各スタンドでの加工度を断面減少率でいず
れも10%以下に設定したものを準備した。
【0059】そして、上記各素線材に対して、圧下スタ
ンド数を変えて種々の加工度(断面減少率で0〜90
%)を付与して冷間にて縮径加工を施した後、図4に示
す装置を用い、いずれの線材もβ変態点温度に30秒間
保持する熱処理を施した。
【0060】なお、連続圧延機による圧延時、ソルブル
油を孔型ロールと被圧延材料との両方に吹きかけて潤滑
を行った。また、熱処理炉としては、内径21.6m
m、肉厚2.8mm、均熱ゾーンの長さLが3mのステ
ンレス鋼製のマッフルを備え、そのマッフル内部にAr
ガスを4.8×10-3Nm3 /minで供給して無酸化
雰囲気としたものを用いた。さらに、加熱保持後の線材
は、上記熱処理炉のマッフルに接続して配置した内径2
1.6mm、肉厚2.8mm、長さ2mのステンレス鋼
製の円筒を備え、その外部に冷却水を3.0リットル/
minで供給した間接冷却装置を用いて強制した。
【0061】しかる後、各線材に2次冷間加工として、
上記同様の連続圧延機を用いて冷間圧延加工を施し、付
与可能な加工度の最大値を調べた。なお、付与可能な最
大加工度は、加工後の線材表面に割れ疵が発生するかも
しくは断線するかによって判定した。その結果を、表1
に示した。
【0062】
【表1】
【0063】表1に示す結果から明らかなように、いず
れの線材も連続圧延機による冷間仕上げ加工時の加工度
が本発明で規定する25〜60%の加工度である場合に
おいて、2次冷間加工時に付与できる加工度が大きくな
っている。
【0064】[実施例2]実施例1おいて断面減少率5
0%で縮径加工を施した純チタン線材とチタン合金線材
を対象に、β変態点温度での保持時間を種々変化(0〜
180秒)させて熱処理を施した。しかる後、各線材に
2次冷間加工として、実施例1と同様の冷間圧延加工を
施し、付与可能な加工度の最大値を実施例1と同じ方法
によって調べた。その結果を、表2に示した。
【0065】
【表2】
【0066】表2に示す結果から明らかなように、いず
れの線材も熱処理時の保持時間が本発明で規定する10
〜90秒である場合において、2次冷間加工時に付与で
きる加工度が大きくなっている。
【0067】[実施例3]実施例1おいて断面減少率5
0%で縮径加工を施した純チタン線材とチタン合金線材
を対象に、その保持時間を一定の30秒にするととも
に、保持温度を種々変化{(β変態点−100℃)〜
(β変態点+300℃)}させて熱処理を施した。その
後、各線材に2次冷間加工として、実施例1と同様の冷
間圧延加工を施し、付与可能な加工度の最大値を実施例
1と同じ方法によって調べた。その結果を、表3に示し
た。
【0068】
【表3】
【0069】表3に示す結果から明らかなように、いず
れの線材も熱処理時の保持温度が本発明で規定するβ変
態点〜(β変態点+150℃)である場合において、2
次冷間加工時に付与できる加工度が大きくなっている。
【0070】なお、いずれの実施例においても、得られ
た製品の表面性状は、本発明の方法によったものの方が
美麗であった。
【0071】
【発明の効果】本発明の方法によれば、冷間仕上げ加工
を4個一対の孔型ロールを備えるロールスタンドを複数
連設した連続圧延機を用いて適正な加工度を付与して仕
上げ加工を行い、次いで無酸化雰囲気中で短時間熱処理
を施すので、仕上げ加工に際しての素線材表面に対する
潤滑皮膜の付着処理工程が省略できる。この結果、表面
に割れ疵がなく美麗であり、かつ曲げ加工や異形線材へ
の加工、さらには1パスでの仕上げ加工が不可能な場合
でも多パス仕上げ加工などの2次冷間加時に付与できる
加工度が高い細径線材が得られる。このように、本発明
の方法によれば、2次冷間工性に優れ、適用範囲の広い
外径5mm以下の寸法精度の高いチタンまたはチタン合
金製の細径線材を高能率に製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の冷間仕上げの実施状態の一例を示す模
式的側面図である。
【図2】連続圧延機を構成するロールスタンドの孔型ロ
ール配置とロールスタンドの連設態様を説明する模式的
正面図である。
【図3】ロール孔型の形状を説明する模式的正面図であ
る。
【図4】本発明の熱処理の実施状態の一例を示す模式的
側面図である。
【符号の説明】
1、5:巻戻機、 2、6:入側ガイド、 3:連続圧延機、 3a:ロールスタンド、 4、9:巻取機、 W:素線材、 SW:細径線材、 7:熱処理炉、 7a:マッフル、 7b:加熱手段、 8:冷却装置、 8a:円筒、 8b:ヘッダ、 10:ハウジング、 10a:穴、 11、12、13、14:孔型ロール、 11a、12a、13a、14a:ロール軸、 15:ロール孔型、 16:隙間、 17:傘歯車。

Claims (5)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】円形孔型を画成する4個一対の孔型ロール
    を備える複数の4ロールスタンドを、隣合うロールスタ
    ンドの円形孔型での非拘束部分が重ならないようにパス
    ライン方向に連設してなる連続圧延機を用い、チタンま
    たはチタン合金製の素線材の外径を縮径圧延する方法に
    おいて、25〜60%の断面減少率で冷間圧延を施した
    後、無酸化雰囲気中でβ変態点〜(β変態点+150
    ℃)の温度域に10〜90秒間加熱保持する熱処理を施
    すことを特徴とするチタンまたはチタン合金製細径線材
    の製造方法。
  2. 【請求項2】上記の熱処理における加熱保持の後、線材
    を強制冷却することを特徴とする請求項1に記載のチタ
    ンまたはチタン合金製細径線材の製造方法。
  3. 【請求項3】上記の熱処理を、通線可能な連続炉を用い
    て施すことを特徴とする請求項1または請求項2に記載
    のチタンまたはチタン合金製細径線材の製造方法。
  4. 【請求項4】上記の強制冷却を、通線可能な連続炉の出
    側に近接配置した通線可能な冷却装置を用いて施すこと
    を特徴とする請求項1から請求項3のいずれかに記載の
    チタンまたはチタン合金製細径線材の製造方法。
  5. 【請求項5】連続圧延機として、前後のスタンド中心間
    間隔を当該スタンド間を通る線材外径の50倍以下にな
    るようにパスライン方向に連設してなるものを用いるこ
    とを特徴とする請求項1から請求項4のいずれかに記載
    のチタンまたはチタン合金製細径線材の製造方法。
JP3380496A 1996-02-21 1996-02-21 チタンまたはチタン合金製細径線材の製造方法 Pending JPH09225501A (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP3380496A JPH09225501A (ja) 1996-02-21 1996-02-21 チタンまたはチタン合金製細径線材の製造方法

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP3380496A JPH09225501A (ja) 1996-02-21 1996-02-21 チタンまたはチタン合金製細径線材の製造方法

Publications (1)

Publication Number Publication Date
JPH09225501A true JPH09225501A (ja) 1997-09-02

Family

ID=12396673

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP3380496A Pending JPH09225501A (ja) 1996-02-21 1996-02-21 チタンまたはチタン合金製細径線材の製造方法

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JPH09225501A (ja)

Cited By (2)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
CN105710127A (zh) * 2016-03-17 2016-06-29 武钢集团昆明钢铁股份有限公司 一种半连轧生产工业纯钛棒材的方法
CN112517659A (zh) * 2020-11-17 2021-03-19 中国航发北京航空材料研究院 一种等离子弧/电弧增材制造用钛合金丝材加工方法

Cited By (2)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
CN105710127A (zh) * 2016-03-17 2016-06-29 武钢集团昆明钢铁股份有限公司 一种半连轧生产工业纯钛棒材的方法
CN112517659A (zh) * 2020-11-17 2021-03-19 中国航发北京航空材料研究院 一种等离子弧/电弧增材制造用钛合金丝材加工方法

Similar Documents

Publication Publication Date Title
US7201812B2 (en) Method for manufacturing seamless steel tube
FI77057C (fi) Foerfarande foer framstaellning av roer, staenger och band.
JPH0364202B2 (ja)
JPWO2004071686A1 (ja) ドライブシャフト用継目無鋼管およびその製造方法
GB2055650A (en) Process for producing bars or wire rods by rolling billets or blooms
JP6432614B2 (ja) 金属管の冷間圧延方法および製造方法
JP2001040462A (ja) チタンまたはチタン合金細径線材の製造方法
WO2002092250A1 (fr) Fil d'acier deforme par traitement thermique et procede et appareil de fabrication d'un tel fil d'acier
US3702629A (en) Method for the continuous hot shaping of copper bars
JPH10121133A (ja) ステンレス鋼ストリップの製造法
JPH09225501A (ja) チタンまたはチタン合金製細径線材の製造方法
JP4306079B2 (ja) 電縫鋼管の製造方法および設備列
US20040007033A1 (en) Method and apparatus for manufacturing tubes
CN112974523B (zh) 一种用于密封垫的309s极薄精密不锈带钢的生产方法
JPH071009A (ja) 管の冷間圧延方法
JPH06346146A (ja) 冷間成形コイルばね用線材の製造方法と装置
JP4182556B2 (ja) 継目無鋼管の製造方法
JP3605971B2 (ja) Sus303線材の縮径加工方法
JPH1099902A (ja) 細線材の圧延方法および細線材の圧延装置
JP2020059050A (ja) 圧延設備及び鋼板の圧延方法
JP2002167619A (ja) フェライト系ステンレス鋼線およびその製造方法
Naizabekov et al. Evolution of the brass microstructure during rolling in relief and smooth rolls
JP2003027138A (ja) 熱処理異形鋼線とその製造方法及び装置
JPS6159378B2 (ja)
JPH0156126B2 (ja)