JPH09209034A - 無脱炭オーステンパー処理鋳鉄およびその製造方法 - Google Patents

無脱炭オーステンパー処理鋳鉄およびその製造方法

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JPH09209034A
JPH09209034A JP2082996A JP2082996A JPH09209034A JP H09209034 A JPH09209034 A JP H09209034A JP 2082996 A JP2082996 A JP 2082996A JP 2082996 A JP2082996 A JP 2082996A JP H09209034 A JPH09209034 A JP H09209034A
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cast
decarburized
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Masahiro Takahashi
雅寛 高橋
Akitoshi Nakamura
彰利 中村
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Hitachi Metals Ltd
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 脱炭層の生成を防止したオーステンパー処理
鋳鉄鋳造品を提供することである。 【解決手段】 真空度が少なくとも10-1torr、望
ましくは2×10-2torr以上の炉内雰囲気を有する
熱処理炉内で、鋳鉄鋳造品をオーステナイト化温度に保
持均熱した後、前記熱処理炉から取り出し、直ちに恒温
変態処理を施すことにより、前記鋳鉄鋳造品の表層部で
の脱炭層の生成を防止した無脱炭オーステンパー処理鋳
鉄およびその製造方法である。オーステナイト化温度
は、800〜950°C、恒温変態処理を250〜40
0°C溶融ソルトバスで行う。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は耐摩耗性を要求され
る使用条件下で用いられる部品、例えば自動車用ヘリカ
ルギヤーケース等、に適した鋳鉄特に外表面に脱炭層が
存在しないオーステンパー処理球状黒鉛鋳鉄に関するも
のである。
【0002】
【従来の技術】鋼や鋳鉄製の部材や部品は、その用途目
的に応じて、種々の温度で熱処理を施される場合が多
い。例えば、工具鋼の焼入や耐熱鋼の溶体化その他拡散
を目的とした熱処理のための加熱は、1200〜130
0℃もの高温度となる。この場合、化学組成の変化があ
ってはならないので、高温度の加熱の際には鋼表面で酸
化、脱炭等が起こらぬようにせねばならない。そのため
には、なるべく熱処理部品を大気中で高温度に加熱する
ことは避けた方がよいとされている。加熱のガス雰囲気
として、下記〜等が知られており、これらの単独ま
たは適宜組み合わせて熱処理時加熱される。 アルゴンは不働(inert )の点でよいが、高価につ
く。 窒素は不活性であるが、酸素が混入し易くて酸化性
になることが多い。 水蒸気を含まない水素中で加熱することは酸化が起
こらなくてよいが脱炭が起こる。特に水素に水蒸気が混
合していると一層脱炭し易くなる。 水素と窒素との混合ガスでは、無水の液体のアンモ
ニア(NH3 )をN2 とH2に分解させて、鋼の酸化脱
炭の危険は少なくてよい。 メタン(CH4 )、エタン(C26 )、プロパン
(C38 )等に空気を混合し、Ni触媒を用いて分解
し、生じたH2Oを除去したCO約20%、H2約40
%、N2約40%の組成の吸熱型ガス(エンドガスまた
はRXガスとよばれる。)中で処理品を加熱する。この
ガスにCH4などを添加することがあり、これはエンリ
ッチガスとよばれる。 一種またはそれ以上の塩類を溶かしておき、その中
に熱処理部品を浸漬する塩浴も用いられる。熱処理温度
や滲炭、窒化等の表面硬化を行なうか否かで塩の種類が
選定される。例えば、鋼の焼戻し等の200〜500℃
の低温度のところは硝酸塩や亜硝酸塩を単独または混合
物として用いられる。また、500〜1000℃の中温
度用塩浴には、NaCl(融点:803℃)、CaCl
2 (融点:770℃)、Na2 CO3 (融点:856
℃)の混合塩が通常用いられる。 光沢ある鋼の表面の酸化、脱炭を防止しながら行な
う熱処理は、総称して光輝熱処理として知られている。
光輝熱処理は、適当な還元性または中性雰囲気炉もしく
は真空炉中で加熱、冷却することによって行なわれ、主
として薄板または仕上がり部品などの焼鈍に用いられて
いる。
【0003】鋳造品に通常の熱処理を施した場合、その
表層部には脱炭層(フェライト層)が生成するので、部
品の用途によっては機械加工により除去せざるをえない
が、特開昭55−158249号公報においては、
「C:3.3〜3.6%、Si:1.6〜2.1%、M
n:0.5〜1.0%、残留Mg:0.03〜0.06
%、Cu:0.8〜1.2%、Cr:0.1〜0.6
%、残部Feよりなり、鋳物表面における脱炭層(フェ
ライト層)の生成を防止した鋳放しパーライト球状黒鉛
鋳鉄鋳物。」を提案している。
【0004】上記特開昭55−158249号公報にお
ける提案は、パーライト系球状黒鉛鋳鉄は、鋳放しで安
定して80%以上のパーライト化率を有することが難し
いため、通常は鋳造後900℃前後に加熱、続いて空冷
するいわゆる焼ならし熱処理によって製作されている。
この場合、鋳物表面に脱炭層(フェライト層)が生成さ
れる。鋳物表面にフェライト層が生成された場合、パー
ライト地に比べて機械的性質、疲労強度が低下し、更に
構造用部品などの表面に亀裂が発生して疲労破壊の原因
となる等の課題があった。
【0005】そこで、この提案においては、化学組成特
にCr量を0.1〜0.6%と数値限定することによ
り、鋳物表面に脱炭層(フェライト層)の生成を防止す
る、としている。すなわち、Cr量の下限を0.1%未
満とすると鋳物表面に脱炭層(フェライト層)が生成さ
れて機械的性質、疲労強度の低下を招き、Cr量の上限
を0.6%以上にするとセメンタイト量が増加して鋳物
の材質が硬く、かつもろくなるため加工性が低下し、機
械材料として使用できないようになるためである、とし
ている。しかし、この提案においては熱処理炉の加熱雰
囲気等を含めた熱処理条件については何等記載なく、ま
た示唆もない。
【0006】また、特開昭56−116853号公報に
おいては、Mo 0.03〜0.09%,Cu 0.3
〜1.5%を含有した球状黒鉛鋳物をオーステンパー処
理することによって、ギヤ類等に使用することができる
球状黒鉛鋳鉄の製法を提案している。
【0007】また、特開昭59−43844号公報にお
いては、ディファレンシャルギアケースとリングギヤの
2部材を球状黒鉛鋳鉄材の一体鋳造部材として形成し、
この一体鋳造部材に粒状パーライト化処理を施し、リン
グギヤ部分に歯切り加工を行なった後、該リングギヤ部
分にオーステンパー処理による表面硬化焼入れ(高周波
局部加熱焼入れ)を施してベーナイト組織とし、次いで
ギヤ部の仕上げ加工を行うことにより製作する車両用デ
ィファレンシャル部材を提案している。
【0008】なお、上記特開昭59−43844号公報
における提案での球状黒鉛鋳鉄材は、C 2.6〜4.
0重量%、Si 1.5〜3.5重量%、Mn 0.1
〜1.0重量%、P 0.15重量%以下、S 0.0
3重量%以下、Cu 0.3〜1.5重量%又はSn
0.03〜0.16重量%、Mo 0.03〜0.1重
量%、Mg 0.025〜0.1重量%、残部Feより
なる化学組成を有するものである、としている。しか
し、この提案においては、一体鋳造部材の粒状パーライ
ト化処理、歯切り加工、オ−ステンパー処理、次いで仕
上げ加工を行うという製作工数が多く、コスト高を招く
という課題を有すると思料される。
【0009】また、特開昭54−133420号公報に
おいては、「C:2.6〜4.0重量%、Si:1.5
〜3.5重量%、Mn:0.1〜1.0重量%、Ni:
0.8〜2.0重量%、Mo:0.1〜1.5重量%、
Mg:0.02〜0.1重量%、残部が実質的にFeか
らなる球状黒鉛鋳鉄を、760〜950℃で0.5〜
4.0時間加熱保持して後に徐冷する1次熱処理を行な
い、ついで、機械加工を行ない、その後、850〜10
00℃で4時間以内加熱保持した後に200〜400℃
に急冷し、該温度で30分以上加熱保持するオーステン
パー処理を行う球状黒鉛鋳鉄部品の熱処理方法。」およ
び「前記オーステンパー処理を行った後、ショットピー
ニングを行う球状黒鉛鋳鉄部品の熱処理方法。」を提案
している。
【0010】上記特開昭54−133420号公報に記
載のこの提案内容は、「周知の如く、球状黒鉛鋳鉄をオ
ーステンパー処理すると耐摩耗性及び疲労強度が向上す
るため、ギヤ、スプロケット及びカム等の高度の耐摩耗
性及び疲労強度が要求されるものに好適に採用される。
しかしながら、通常、製品(部品)を機械加工した後に
オーステンパー処理をしており、該処理時に部品を加熱
及び冷却した際に部品の変形を生じる。従って、高精度
を要求する製品の製造時には、オーステンパー処理の後
にさらに機械加工あるいは研磨する必要があるが、高硬
度で高耐摩耗性を有するため、上記機械加工及び研磨作
業が難しく、かつ、該作業に非常に手間がかかり、必然
的に生産性が低下し、コスト高になる課題がある。そこ
で、球状黒鉛鋳鉄素材を、1次熱処理した後、機械加工
を行い、その後、オーステンパー処理を行うものであ
る。以上述べたように、各種各様の提案がなされてい
る。
【0011】
【発明が解決しようとする課題】自動車用ギヤーケース
等には耐摩耗性を付与するために、浸炭処理や窒化(軟
窒化)された鍛造品が使用されているが、鍛造品は鋳
造品よりコスト高である。鍛造品では振動音を軽減で
きないので、騒音上課題を有する。一方、鋳鉄鋳造品
は鍛造品に比べて安価に製造できること。鋳鉄では振
動のエネルギーが組織中の黒鉛に吸収されるため減衰能
が高く、部材相互のかみあい音、振動音を軽減できる等
の利点がある。従来部品の製作は、まず鋳造品を粗加工
した後、オーステンパー処理を施し、次いで仕上げ加工
を行っていた。該オーステンパー処理は大気雰囲気を有
する熱処理炉中で加熱後、ソルトバス中に浸漬して恒温
変態処理が施されていた。このため、鋳造品の表層部に
硬度が低く、耐摩耗性に劣る脱炭層(フェライト層)が
生成し、オーステンパー処理後に、機械加工により脱炭
層(フェライト層)の削除を余儀なくされていた。な
お、鋳造品の表層部の脱炭を防止または軽減するため
に、鋳造品の表面に前もって脱炭防止剤を塗布した後、
大気雰囲気を有する熱処理炉中で加熱したとしても、熱
処理後に脱炭防止剤の除去工程を必要とする課題もあっ
た。
【0012】本発明者等は、鋳造品の表層部に生成する
数10ミクロン厚さの脱炭層が大気雰囲気を有する熱処
理炉内での鋳造品の加熱中に生ずることをつきとめ、鋳
造品を真空中で加熱処理する熱処理を施すことにより鋳
造品の表層部での脱炭層の生成を未然に防止する手段等
に関し、鋭意研究の結果本発明をなした。本発明の目的
は、鋳鉄鋳造品、特に球状黒鉛鋳鉄鋳造品、を加工した
後、該鋳造品を真空雰囲気を有する熱処理炉内での加熱
工程を含むオ−ステンパー処理を施すことにより、該鋳
造品の表層部での脱炭層の生成を防止した無脱炭オース
テンパー処理鋳鉄およびその製造方法を提供することに
ある。
【0013】
【課題を解決するための手段】本発明の無脱炭オーステ
ンパー処理鋳鉄は、真空度が少なくとも10-1tor
r、望ましくは2×10-2torr以上の炉内雰囲気を
有する熱処理炉内で、鋳鉄鋳造品をオーステナイト化温
度に保持均熱した後、前記熱処理炉から取り出し、直ち
に恒温変態処理を施すことにより、前記鋳鉄鋳造品の表
層部での脱炭層の生成を防止することを特徴とする。オ
ーステナイト化温度は800〜950°Cの温度範囲と
し、鋳鉄鋳造品を均一オーステナイト化するため真空雰
囲気を有する熱処理炉内で保持均熱した後、前記熱処理
炉から取り出し、直ちに恒温変態処理を施すことによ
り、前記鋳鉄鋳造品の表層部での脱炭層の生成を防止す
ることを特徴とする。前記恒温変態処理は、250〜4
00°Cに溶融したソルトバスに前記鋳鉄鋳造品を所定
時間浸漬した後、放冷する。前記鋳鉄鋳造品が球状黒鉛
鋳鉄である。
【0014】本発明の無脱炭オーステンパー処理鋳鉄の
製造方法は、熱処理炉の炉内真空度を少なくとも10-1
torr、望ましくは2×10-2torr以上とし、該
熱処理炉内に鋳鉄鋳造品を装入し、800〜950の炉
内雰囲気中で前記鋳鉄鋳造品を保持均熱して均一オース
テナイト化した後、前記熱処理炉から取り出し、直ちに
250〜400°Cに溶融したソルトバスに前記鋳鉄鋳
造品を浸漬して恒温変態処理を施した後、放冷すること
を特徴とする。前記鋳鉄鋳造品が球状黒鉛鋳鉄である。
【0015】オーステナイト化温度については、800
°C未満の温度では均一なオーステナイトが得られず、
950°Cを越える温度ではオーステナイト結晶粒の粗
大化を招くので、800〜950°Cに設定する。ま
た、恒温変態処理のためのソルトバス温度については、
250°C未満の温度ではマルテンサイト変態を伴い靱
性が低下し、400°Cを越える温度では均一なベーナ
イト基地が得られないため、250〜400°Cに溶融
ソルトバスの温度を設定する。なお、オーステナイト化
温度および恒温変態処理での保持時間については、熱処
理する鋳造品の大きさによって適宜設定する必要がある
が、大略0.5〜3時間である。
【0016】
【発明の実施の形態】以下、本発明の実施の形態につい
て実施例に基づいて比較例と共に説明する。本発明にお
いては、鋳鉄鋳造品、特に球状黒鉛鋳鉄鋳造品、の表層
部での脱炭層の生成を防止するために、真空雰囲気を有
する熱処理炉内で保持加熱し、次いでソルトバス内で恒
温変態処理を施すが、この熱処理を図1に示す熱処理パ
ターンにより説明する。ここで、図1の横軸は時間、縦
軸は温度を示し、熱処理パターン上のAはオーステナイ
ト化加熱工程、Bは熱処理炉を開蓋して鋳造品を取り出
し、ソルトバスに浸漬するまでの時間、Cはソルトバス
中での浸漬保持による恒温変態処理工程、Dは放冷工程
を示している。本発明においては熱処理炉を真空にしな
がら、あるいは真空とした後、加工した鋳造品を熱処理
炉内に装入し、800〜950°Cの温度で均一オース
テナイトとなし、次いで該鋳造品を取り出し、直ちに2
50〜400°Cに溶融のソルトバスに浸漬保持して恒
温変態処理を施した後、放冷する。この熱処理を施すこ
とにより、鋳鉄鋳造品の表層部での脱炭層の生成を防止
することができ、熱処理後の機械加工を必要としない鋳
鉄鋳造品を得ることができる。
【0017】
【実施例】重量比率で、C3.6%、Si2.4%、M
n0.4%、Cu0.5%、Mg0.041%、残部実
質的にFeよりなる組成の球状黒鉛鋳鉄のテストピース
(図2に示すように寸法が20mm×20mm×100
mm)を、該テストピースの表面処理状態は、脱脂な
し、脱炭防止剤なし、の条件で以下の(1)〜(4)の
工程でオーステンパー処理を施した。 (1)熱処理炉を真空ポンプで真空にしながら、該テス
トピースを熱処理炉内に装入し、600°Cまで昇温し
た。この時間経過時点(図1に示すX)での真空度は1
-1torrを越える程度になっていた。 (2)熱処理炉の真空度が2×10-2となり、炉内温度
が875°Cにおいて60分間保持均熱してオーステナ
イトとした。 (3)次いで、熱処理炉を開蓋し、該テストピースを熱
処理炉から取り出し、直ちに380°Cの溶融ソルトバ
スに60分間浸漬保持して恒温変態処理した。なお、熱
処理炉の開蓋から該テストピースを取り出して搬送し、
溶融ソルトバスに浸漬するまでの時間は55秒を要し
た。ソルトバスへ浸漬される以前に、該テストピースが
大気に触れ、表層の変態がCCT曲線のパーライトノー
ズをかすめる虞れがあるため、可能な限り短い時間内に
浸漬することが望ましい。 (4)その後、該テストピースを放冷した。
【0018】以上の熱処理を施した図2に示すテストピ
ースの点線位置を切断して、20mm×20mm×20
mmの試験片を採取し、硬度(Hv)および組織写真を
調査した。図4は試験片の表面から0.1mm(100
ミクロン)毎の硬度(Hv)の変化を示し、実線で示す
硬度変化は真空雰囲気熱処理炉内で加熱してオーステン
パー処理を施した本実施例の結果である。なお、点線で
示す硬度変化は後述の比較例のRXガス雰囲気熱処理炉
内で加熱してオーステンパー処理を施した結果を示す。
また、本実施例の試験片の断面の組織写真は、図5(倍
率:100倍)、図6(倍率:400倍)、図7(倍
率:1000倍)に示すように、表層部での脱炭層の生
成を確認できなっかった。本実施例では、鋳鉄の内球状
黒鉛鋳鉄について述べたが、ネズミ鋳鉄や合金元素を含
有する合金鋳鉄等についても本発明を適用できることは
当然である。
【0019】
【比較例】オーステンパー処理にRXガス雰囲気熱処理
炉を適用した以外は、前述の実施例と同様の条件で熱処
理を施した。なお、熱処理炉の開蓋から該テストピース
を取り出して搬送し、溶融ソルトバスに浸漬するまでの
時間は45秒を要した。表面からの硬度(Hv)変化に
ついては、前述のとおりである。また、本比較例の試験
片の断面の組織写真は、図8(倍率:100倍)、図9
(倍率:400倍)、図10(倍率:1000倍)に示
すように、表層部での脱炭層の生成が確認された。この
ことは、図4出示す硬度(Hv)の変化において、表面
から0.3mmまでの範囲で硬度が低下していることか
らも実証できる。熱処理炉の開蓋から該テストピースを
取り出して搬送し、溶融ソルトバスに浸漬するまでの時
間は、比較例では45秒で、実施例での55秒よりも短
い時間内に浸漬したにもかかわらず、表層部での脱炭層
の生成が確認されたことは、熱処理炉内でのオーステナ
イト化加熱雰囲気が影響していると考えられる。
【0020】
【発明の効果】以上説明したように、真空雰囲気熱処理
炉を適用してオーステンパー処理を施す本発明によれ
ば、鋳造品の表層部での脱炭層の生成を防止できるの
で、熱処理後の機械加工を必要とせず、工数低減が可能
である。また熱処理後の鋳造品は機械的性質に優れるた
め、鋳鉄本来の特性を発揮する各種部材や部品に適用で
きる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る真空雰囲気での熱処理パターンを
示す図である。
【図2】本発明に係る実施例に供したテストピースの寸
法を示す図である。
【図3】図2に示すテストピースから採取した試験片の
寸法を示す図である。
【図4】オーステナイト化炉内雰囲気の差による硬度分
布を示す図である。
【図5】本発明の実施例の熱処理後の試験片断面の組織
写真(倍率:100倍)である。
【図6】本発明の実施例の熱処理後の試験片断面の組織
写真(倍率:400倍)である。
【図7】本発明の実施例の熱処理後の試験片断面の組織
写真(倍率:1000倍)である。
【図8】比較例の熱処理後の試験片断面の組織写真(倍
率:100倍)である。
【図9】比較例の熱処理後の試験片断面の組織写真(倍
率:400倍)である。
【図10】比較例の熱処理後の試験片断面の組織写真
(倍率:1000倍)である。
【符号の説明】
A オーステナイト化加熱工程 B 熱処理炉の開蓋からソルトバスに鋳造品を浸漬す
るまでの時間 C ソルトバス中での浸漬保持による恒温変態処理工
程 D 放冷工程 X 熱処理炉の600°Cに達する迄の経過時間

Claims (6)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 真空度が少なくとも10-1torr、望
    ましくは2×10-2torr以上の炉内雰囲気を有する
    熱処理炉内で、鋳鉄鋳造品をオーステナイト化温度に保
    持均熱した後、前記熱処理炉から取り出し、直ちに恒温
    変態処理を施すことにより、前記鋳鉄鋳造品の表層部で
    の脱炭層の生成を防止したことを特徴とする無脱炭オー
    ステンパー処理鋳鉄。
  2. 【請求項2】 真空度が少なくとも10-1torr、望
    ましくは2×10-2torr以上の炉内雰囲気を有する
    熱処理炉内で、鋳鉄鋳造品を800〜950°Cの温度
    で均一オーステナイト化した後、前記熱処理炉から取り
    出し、直ちに恒温変態処理を施すことにより、前記鋳鉄
    鋳造品の表層部での脱炭層の生成を防止したことを特徴
    とする無脱炭オーステンパー処理鋳鉄。
  3. 【請求項3】 前記恒温変態処理が、250〜400°
    Cに溶融したソルトバスに前記鋳鉄鋳造品を所定時間浸
    漬した後、放冷することを特徴とする請求項1または2
    記載の無脱炭オーステンパー処理鋳鉄。
  4. 【請求項4】 前記鋳鉄鋳造品が球状黒鉛鋳鉄であるこ
    とを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれかに記載
    の無脱炭オーステンパー処理鋳鉄。
  5. 【請求項5】 熱処理炉の炉内真空度を少なくとも10
    -1torr、望ましくは2×10-2torr以上とし、
    該熱処理炉内に鋳鉄鋳造品を装入し、800〜950の
    炉内雰囲気中で前記鋳鉄鋳造品を保持均熱して均一オー
    ステナイト化した後、前記熱処理炉から取り出し、直ち
    に250〜400°Cに溶融したソルトバスに前記鋳鉄
    鋳造品を浸漬して恒温変態処理を施した後、放冷するこ
    とを特徴とする無脱炭オーステンパー処理鋳鉄の製造方
    法。
  6. 【請求項6】 前記鋳鉄鋳造品が球状黒鉛鋳鉄であるこ
    とを特徴とする請求項5に記載の無脱炭オーステンパー
    処理鋳鉄の製造方法。
JP2082996A 1996-02-07 1996-02-07 無脱炭オーステンパー処理鋳鉄およびその製造方法 Pending JPH09209034A (ja)

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Cited By (1)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2001303167A (ja) * 2000-04-26 2001-10-31 Yuichi Tanaka オーステンパ球状黒鉛鋳鉄からなる耐摩耗性材料

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JP2001303167A (ja) * 2000-04-26 2001-10-31 Yuichi Tanaka オーステンパ球状黒鉛鋳鉄からなる耐摩耗性材料

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